JP3858283B2 - ネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電気光学的表示材料として有用なネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子の代表的なものにTN-LCD(ツイスティッド・ネマチック液晶表示素子)があり、時計、電卓、電子手帳、ポケットコンピュータ、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどに使用されている。一方、OA機器の処理情報の増加に伴い、一画面に表示される情報量が増大しており、シェファー(Scheffer)等[SID '85 Digest, 120頁(1985年)]、あるいは衣川等[SID '86 Digest, 122頁(1986年)]によって、STN(スーパー・ツイスティッド・ネマチック)−LCDが開発され、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどの高情報処理用の表示に広く普及しはじめている。
【0003】
最近、STN-LCDでの応答特性を改善する目的でアクティブアドレッシング駆動方式が提案されている。(Proc.12th International Display Research Conference p.503 1992年)この様な液晶材料として、弾性定数比K33/K11が1.5前後、誘電率異方性△εや粘性が比較的小さいことと併せて、特に複屈折率△nが大きいものが要求されている。また、カラーフィルター層を用いないでカラー表示ができる方法として、液晶と位相差板の複屈折性を利用した新規反射型カラー液晶表示方式が提案されている。(テレビジョン学会技術報告 vol.14 No10.p.51 1990年)この様な液晶材料として、光の波長の違いによってより大きな位相差が現れるものがよいことから、特に複屈折率Δnが大きいものが要求されている。
【0004】
また、その表示品質が優れていることから、アクティブ・マトリクス形液晶表示装置が液晶テレビ、プロジェクター表示、コンピューター等のディスプレイの応用分野に有力なものとして市場に出されている。アクティブ・マトリクス表示方式は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)あるいはMIM(メタル・インシュレータ・メタル)等のスイッチング素子が使われており、この方式には漏れ電流の小さな高電圧保持率が重要視されている。
【0005】
更に、ワードプロセッサ、パーソナルコンピューター等の情報量の多いSTN-LCDに用いられる従来の液晶材料の場合、一般的に、調製された初期あるいは促進テスト後の抵抗値が低いことが知られている。このために、暗い画質を補う目的で補助光源が付加されたバックライト方式のSTN-LCDには、耐熱性等の化学的安定性に優れている液晶材料が新たに必要とされている。
【0006】
上述のようなTN-LCDやSTN-LCDの電気光学特性を改善するために、複屈折率(Δn)の大きい液晶材料としては、例えば、以下のような化合物を挙げることができる。
【0007】
【化5】
【0008】
(式中、R及びR’はそれぞれアルキル基、アルコキシル基等を表わす。)
しかしながら、これらの化合物を用いて液晶材料の複屈折率(Δn)を大きくすることにより、電気光学特性を改善することができても、液晶材料のより高い化学的安定性、液晶表示の高速応答性及び駆動温度範囲等の特性については、依然として問題が残されたままである。例えば、上記一般式(a)〜(c)の化合物のうちの任意成分と一般式(d)で表わされる化合物を混合した場合、得られる液晶組成物の複屈折率(△n)は大きくなるものの、スメクチック相が出現しやすい傾向を有するため、このような化合物を用いても電気光学特性に優れ、且つ広い温度範囲で駆動可能な液晶表示装置を作製することは非常に困難である。
【0009】
また、例えば、TFT-LCDにおいては、複屈折率(Δn)の大きい液晶材料として、シアノ基を有する液晶材料が用いられていた。しかしながら、このような液晶材料では、均一で高いコントラストを得るために必要な高い電圧保持率や高い比抵抗値を得ることを困難にさせる傾向を有していた。そこで、例えば、下記のような化合物が用いられてきた。
【0010】
【化6】
【0011】
(式中、Rは前述と同じ意味を表わす。)
しかしながら、このような化合物を主成分として構成した液晶材料は、高い電圧保持率は得られるものの、液晶材料の複屈折率(Δn)もシアノ基を有する化合物の場合と比較するとかなり小さく、しきい値電圧を充分に低減させることも非常に困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、シアノ基を有しない液晶化合物からなる液晶組成物であって、複屈折率(Δn)が大きく、しかも駆動可能な温度範囲が広く、化学的安定性にすぐれ、低電圧駆動が可能なネマチック液晶組成物を提供することにある。更に、本発明の液晶組成物を構成材料として用いた、電気光学特性の改善された液晶表示装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、シアノ基を有しない液晶化合物からなる液晶組成物において、6成分以上の化合物を含有し、複屈折率Δnが0.235以上であり、誘電率異方性Δεが3以上であり、固体相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度が0℃以下であり、ネマチック相−等方性液体相転移温度が65℃以上であることを特徴とするネマチック液晶組成物を提供する。
【0014】
本発明の液晶組成物は、詳しくは、高い電圧保持率あるいは大きい複屈折率(Δn)を得ることができるものとして、シアノ基を有さない液晶化合物を用いることが好ましい。使用する液晶化合物としてはトラン系化合物、より好ましくはフルオロトラン系化合物であり、更に好ましくは3つの環を有するフルオロトラン系化合物を主構成成分として使用することである。特にフルオロトラン系化合物は大きな正の誘電率異方性(Δε)を有しており、低しきい値電圧特性を得るのに好ましい。この様な化合物を少なくとも6成分以上混合することによって得た液晶組成物は広い温度範囲でネマチック液晶相を示すものであり、この液晶組成物を液晶表示装置として用いる場合、より広い温度範囲で表示を可能とする。高い電圧保持率を得るためには、より高い比抵抗の液晶組成物が好ましく、比抵抗としては1011Ω・cm以上が好ましく、1012Ω・cm以上がより好ましく、1013Ω・cm以上が最も好ましい。
【0015】
また、本発明の液晶組成物は、0.235以上の高い複屈折率(Δn)を特徴としており、このネマチック液晶組成物をツイスティッド・ネマチックあるいはスーパー・ツイスティッド・ネマチック液晶表示装置に用いた場合、大きな複屈折率により液晶層の厚みdを低減でき、応答速度やしきい値電圧を改善できる。また、先にも述べたようにΔnの大きい本発明の液晶組成物は、カラーフィルター層を用いないでカラー表示を行う、液晶と位相差板の複屈折性を利用した新規反射型カラー液晶表示方式用の液晶材料としても有用なものである。
【0016】
更に詳しくは、この様なネマチック液晶組成物を得るに、例えば、(1)一般式(I-1)〜(I-3)
【0017】
【化7】
【0018】
(式中、R11はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基又はアルコキシ基を表わし、X11はそれぞれ独立的にフッ素原子、塩素原子、−OCF3、−CF3、−OCH3又は−CH3を表わす。)
で表わされる化合物からなる第1群から選ばれる化合物を含有する液晶組成物が好ましい。
【0019】
また、本発明は上記ネマチック液晶組成物に加える成分として、(2)一般式(II-1)〜(II-5)
【0020】
【化8】
【0021】
(式中、R21はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルケニル基又はCpH2p+1-O-CqH2qを表わし、p及びqはそれぞれ独立的に1〜5の整数を表わし、R22はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシ基を表わし、X21はそれぞれ独立的にフッ素原子、塩素原子、−OCF3又は−CF3を表わし、Y1〜Y3はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表わす。)
で表わされる化合物からなる第2群から選ばれる化合物を含有することが好ましい。
【0022】
更に、(3)一般式(III-1)、(III-2)
【0023】
【化9】
【0024】
(式中、R31はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルケニル基又はCrH2r+1-O-CsH2sを表わし、r及びsはそれぞれ独立的に1〜5の整数を表わし、X31はそれぞれ独立的にフッ素原子、塩素原子、−OCF3又は−CF3を表わし、Y4はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表わし、Z1はそれぞれ独立的に単結合、−COO−、−C2H4−又は−C4H8−を表わし、環A1は1,4−シクロヘキシレン基又は1,4−フェニレン基を表わす。)
で表わされる化合物からなる第3群から選ばれる化合物及び/又は(4)一般式(IV-1)〜(IV-4)
【0025】
【化10】
【0026】
(式中、R41はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表わし、R42はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表わし、Y5は水素原子、フッ素原子又は−CH3を表わし、Y6はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表わし、Z2はそれぞれ独立的に単結合、−COO−、−C2H4−又は−C4H8−を表わし、環A2は1,4−シクロヘキシレン基又は1,4−フェニレン基を表わし、nは0又は1の整数を表わす。)
で表わされる化合物からなる第4群から選ばれる化合物を含有することが好ましい。
【0027】
本発明に係わる(1)一般式(I-1)〜(I-3)で表わされる化合物の代表的なものの例(No.1〜9)とその相転移温度を下記第1表に示す。
尚、下記表中、m.p.は結晶相から液晶相又は等方性液体相に相転移する温度を、c.p.は液晶相から等方性液体相に相転移する温度をそれぞれ表わす。また、各化合物は、蒸留、カラム精製、再結晶等の方法を用いて不純物を除去し、充分精製したものを使用した。
【0028】
【表1】
【0029】
本発明の液晶組成物は(1)一般式(I-1)〜(I-3)の第1群から選ばれる化合物を含有することが好ましい。この(1)一般式(I-1)〜(I-3)の第1群の化合物は、シアノ基を含有していないにもかかわらず、複屈折率(Δn)が従来になく非常に大きいという特徴を有しており、これら化合物を使用することによって得られる液晶組成物の複屈折率は非常に大きいものとなる。また、誘電率異方性(Δε)が大きく、電圧保持率が高いという特徴も有している。更に、(1)一般式(I-1)〜(I-3)の第1群の化合物は、これらの化合物と類似構造を有する下記化合物
【0030】
【化11】
【0031】
(式中、Rはそれぞれアルキル基、アルコキシル基等を表わす。)
と比較して、特段に高い相溶性を示している。
また、(1)一般式(I-1)〜(I-3)の第1群から選ばれる化合物を含有する液晶組成物加える成分として、(2)一般式(II-1)〜(II-5)で表わされる化合物からなる第2群から選ばれる化合物を含有することが好ましい。一般式(II-1)〜(II-5)で表わされる化合物の代表的なものの例及び第4群の代表的な化合物の例、その相転移温度を下記第2表に示す。尚、下記表中、m.p.は結晶相から液晶相又は等方性液体相に相転移する温度を、c.p.は液晶相から等方性液体相に相転移する温度をそれぞれ表わす。
【0032】
【表2】
【0033】
本発明のネマチック液晶組成物は、(1)一般式(I-1)〜(I-3)の第1群から選ばれる化合物を含有する液晶組成物に、(2)一般式(II-1)〜(II-5)の第2群から選ばれる化合物を含有することが好ましく、複屈折率(Δn)が大きい液晶組成物を得ることができる。また、同時にネマチック相の温度範囲もより広くさせる改善効果を示し、更には、駆動電圧を上昇させにくい傾向を有している。このような効果は(2)一般式(II-1)〜(II-5)の第2群の化合物がフルオロトラン構造を有し、化合物の弾性定数が小さいことによるものと考えられる。また、(1)一般式(I-1)〜(I-3)の第1群の化合物との相溶性にも優れているので、第1群の化合物の優れた特性をほとんど低減させることなく、良好なネマチック液晶組成物を得ることができる。
【0034】
更に、本発明のネマチック液晶組成物は(3)一般式(III-1)、(III-2)の第3群から選ばれる化合物及び/又は(4)一般式(IV-1)〜(IV-4)の第4群から選ばれる化合物を上記の液晶組成物に加えることが好ましいが、これにより液晶組成物の複屈折率(Δn)を用途に応じて容易に最適化することができ、これにより液晶表示装置の色むらの低減、視角特性の向上、コントラスト比の増加を容易に達成することができる。この一般式(IV-4)の化合物は、前述の一般式(d)の化合物を包含するものである。一般式(d)の化合物は、他の化合物との相溶性があまりよくないため結晶相又はスメクチック相を示し易い傾向を有する。しかしながら、一般式(d)の化合物及び本発明の(1)一般式(I-1)〜(I-3)の第1群から選ばれる化合物を含有する本発明の液晶組成物との相溶性は良好であり、結晶相又はスメクチック相とネマチック相との相転移温度を低温側に拡大し易い傾向を示す。従って、第4群の化合物を加えることにより、優れた特性をほとんど低減させることなく、Δnの調製も容易に行えるため良好なネマチック液晶組成物を得ることができるのである。
【0035】
また、(3)一般式(III-1)及び(III-2)の第3群の化合物及び/又は(4)一般式(IV-1)〜(IV-4)の第4群の化合物を添加することにより大きなプレチルト角を形成できる液晶表示装置を提供することができる。または、(2)一般式(II-1)〜(II-5)の第2群の化合物において、側鎖基R1及びR2がアルコキシアルキル基を有している化合物、又は(3)一般式(III-1)及び(III-2)の第3群の化合物において、側鎖基がアルコキシアルキル基である化合物を含有することによっても、このプレチルト角を維持あるいは改善することができる。このようなプレチルト角が改善された本発明のネマチック液晶組成物は、TFT-LCDにおけるバックライトの放熱によるリバースチルトの発生、あるいはSTN-LCDにおけるストライプ・ドメインの発生を顕著に抑えることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0036】
本発明のネマチック液晶組成物における各化合物の含有量は、第1群の一般式(I-1)で表わされる化合物1種につき、それぞれ30重量%以下で含有することが好ましく、液晶組成物における総含有量は、少なくとも5重量%以上の範囲が好ましく、10〜80重量%の範囲がより好ましく、15〜50重量%の範囲が特により好ましい。一般式(I-2)及び(I-3)についても同様である。
【0037】
また、第2群の一般式(II-1)で表わされる化合物1種につき、それぞれ0〜30重量%の範囲で含有することが好ましく、液晶組成物における総含有量は、少なくとも90重量%以下の範囲が好ましく、0〜80重量%の範囲がより好ましく、10〜60重量%の範囲が特により好ましい。一般式(II-2)〜(II-5)についても同様である。
【0038】
更に、第3群の一般式(III-1)で表わされる化合物1種につき、それぞれ0〜20重量%の範囲で含有することが好ましく、液晶組成物中における総含有量は、少なくとも50重量%以下の範囲が好ましく、0〜40重量%の範囲がより好ましく、5〜30重量%の範囲が特により好ましい。一般式(III-2)についても同様である。
【0039】
一般式(IV-1)で表わされる化合物1種につき、それぞれ0〜30重量%の範囲で含有することが好ましく、液晶組成物中における総含有量は、少なくとも70重量%以下の範囲が好ましく、0〜60重量%の範囲がより好ましく、5〜50重量%の範囲が特により好ましい。一般式(IV-2)〜(IV-4)についても同様である。
【0040】
本発明の液晶組成物は、上記一般式(I-1)〜(I-3)、(II-1)〜(II-5)、(III-1)、(III-2)、(IV-1)〜(IV-4)で表わされる化合物以外にも、液晶組成物の特性を改善するために、液晶化合物として認識される通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有していてもよい。しかしながら、これらの化合物を多量に用いることはネマチック液晶組成物の特性が低減することになるので、添加量は得られるネマチック液晶組成物の要求特性に応じて制限されるものである。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は「重量%」を意味する。
【0042】
組成物の化学的安定性は、液晶組成物2gをアンプル管に入れ、真空脱気後窒素置換の処理をして封入し、150℃、1時間の加熱促進テストを行い、この液晶組成物の電圧保持率を測定した。実施例中、測定した特性は以下の通りである。
【0043】
TN-I : ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
T→N : 固体相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(℃)
Vth : セル厚8μmのTN-LCDを構成した時のしきい値電圧(V)
Δε : 誘電異方性
Δn : 複屈折率
【0044】
(実施例1)
【0045】
【化12】
【0046】
からなるネマチック液晶組成物No.18を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 113.4 ℃
T→N : −2.0 ℃
Vth : 1.41 V
Δε : 17.3
Δn : 0.238
比抵抗 : 1.0×1013 Ω・cm
テスト前の電圧保持率 : 99.2%
加熱促進テスト後電圧保持率 : 98.5%
このネマチック液晶組成物は加熱促進テスト後の電圧保持率が高いことから、熱に安定であることが理解できる。またこの組成物を構成材料とするアクティブ・マトリクス液晶表示装置を作製したところ、漏れ電流が小さくフリッカの発生しない優れたものであることが確認できた。
【0047】
また、同様にしてセル厚2.1μmのTN-LCD表示用セルの応答速度を測定したところ、立ち上がり、立ち下がりともに7ミリ秒であった。
更にこのネマチック液晶組成物にカイラル物質「S−811」(メルク社製)を添加して混合液晶を調製した。一方、対向する平面透明電極上に「サンエバー150」(日産化学社製)の有機膜をラビングして配向膜を形成し、ツイスト角220度のSTN-LCD表示用セルを作製した。上記の混合液晶をこのセルに注入して液晶表示装置を構成し、表示特性を測定した。その結果、応答速度は19ミリ秒と非常に速く、しきい値電圧が低く、高時分割特性に優れ、表示画面のちらつきやクロストーク現象が改善されたSTN-LCD表示特性を示す液晶表示装置が得られた。
【0048】
なお、カイラル物質はカイラル物質の添加による混合液晶の固有らせんピッチPと表示用セルのセル厚dが、Δn・d=0.85、d/P=0.53となるように添加した。
(実施例2)
【0049】
【化13】
【0050】
からなるネマチック液晶組成物No.19を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 110.2 ℃
T→N : −10.0 ℃
Vth : 1.42 V
Δε : 17.0
Δn : 0.236
比抵抗 : 1.4×1013 Ω・cm
テスト前の電圧保持率 : 99.1%
加熱促進テスト後電圧保持率 : 98.5%
このネマチック液晶組成物は加熱促進テスト後の電圧保持率が高いことから、熱に安定であることが理解できる。またこの組成物を構成材料とするアクティブ・マトリクス液晶表示装置を作製したところ、漏れ電流が小さくフリッカの発生しない優れたものであることが確認できた。
【0051】
更にこのネマチック液晶組成物にカイラル物質「S−811」(メルク社製)を添加して混合液晶を調製した。一方、対向する平面透明電極上に「サンエバー150」(日産化学社製)の有機膜をラビングして配向膜を形成し、ツイスト角220度のSTN-LCD表示用セルを作製した。上記の混合液晶をこのセルに注入して液晶表示装置を構成し、表示特性を測定した。その結果、応答速度が速く、しきい値電圧が低く、高時分割特性に優れ、表示画面のちらつきやクロストーク現象が改善されたSTN-LCD表示特性を示す液晶表示装置が得られた。
【0052】
なお、カイラル物質はカイラル物質の添加による混合液晶の固有らせんピッチPと表示用セルのセル厚dが、Δn・d=0.85、d/P=0.53となるように添加した。
(実施例3)
【0053】
【化14】
【0054】
からなるネマチック液晶組成物No.20を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 90.3 ℃
T→N : −35.0 ℃
Vth : 2.07 V
Δε : 7.0
Δn : 0.242
比抵抗 : 1.2×1013 Ω・cm
テスト前の電圧保持率 : 99.3%
加熱促進テスト後電圧保持率 : 98.7%
このネマチック液晶組成物は加熱促進テスト後の電圧保持率が高いことから、熱に安定であることが理解できる。またこの組成物を構成材料とするアクティブ・マトリクス液晶表示装置を作製したところ、漏れ電流が小さくフリッカの発生しない優れたものであることが確認できた。
【0055】
また、このネマチック液晶組成物の複屈折率の波長分散を測定したところ、光の波長650nmに対する400nmでの比が1.15以上であった。この液晶材料は、光の波長の違いによってより大きな位相差が現れていることから、カラーフィルター層を用いないでカラー表示を行う、液晶と位相差板の複屈折性を利用した新規反射型カラー液晶表示方式に有用なものである。
(実施例4)
【0056】
【化15】
【0057】
からなるネマチック液晶組成物No.21を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 94.5 ℃
T→N : −31.0 ℃
Vth : 2.14 V
Δε : 6.9
Δn : 0.247
比抵抗 : 1.8×1013 Ω・cm
テスト前の電圧保持率 : 99.3%
加熱促進テスト後電圧保持率 : 98.6
このネマチック液晶組成物は加熱促進テスト後の電圧保持率が高いことから、熱に安定であることが理解できる。またこの組成物を構成材料とするアクティブ・マトリクス液晶表示装置を作製したところ、漏れ電流が小さくフリッカの発生しない優れたものであることが確認できた。
【0058】
また、このネマチック液晶組成物の複屈折率の波長分散を測定したところ、光の波長650nmに対する400nmでの比が1.15以上であった。この液晶材料は、光の波長の違いによってより大きな位相差が現れていることから、カラーフィルター層を用いないでカラー表示を行う、液晶と位相差板の複屈折性を利用した新規反射型カラー液晶表示方式に有用なものである。
(実施例5)
【0059】
【化16】
【0060】
からなるネマチック液晶組成物No.22を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 96.3 ℃
T→N : −2.0 ℃
Vth : 1.80 V
Δε : 10.2
Δn : 0.250
比抵抗 : 1.2×1013 Ω・cm
テスト前の電圧保持率 : 99.0%
加熱促進テスト後電圧保持率 : 98.5%
このネマチック液晶組成物は加熱促進テスト後の電圧保持率が高いことから、熱に安定であることが理解できる。またこの組成物を構成材料とするアクティブ・マトリクス液晶表示装置を作製したところ、漏れ電流が小さくフリッカの発生しない優れたものであることが確認できた。
【0061】
また、このネマチック液晶組成物の複屈折率の波長分散を測定したところ、光の波長650nmに対する400nmでの比が1.15以上であった。この液晶材料は、光の波長の違いによってより大きな位相差が現れていることから、カラーフィルター層を用いないでカラー表示を行う、液晶と位相差板の複屈折性を利用した新規反射型カラー液晶表示方式に有用なものである。
(実施例6〜9)
下記第3表に示すネマチック液晶組成物No.23〜No.26を調製した。
【0062】
【表3】
【0063】
(表中、数字は重量%を表わす。)
この組成物の諸特性を測定したところ、アクティブ・マトリクス液晶表示方式や新規反射型カラー液晶表示方式に有用なものであった。
【0064】
【発明の効果】
本発明のネマチック液晶組成物は、0.235以上と複屈折率(Δn)が大きく、広い温度範囲でネマチック相を示す。また、電圧保持率が高く、化学的安定性が高いことが明らかである。従って、本発明の液晶組成物を用いることにより、表示画面のちらつき、クロストーク現象の改善された液晶表示装置を得ることができ、大きな複屈折率により液晶層の厚みdを低減でき応答特性を改善でき、特に情報量の多いTN-LCD、STN-LCDあるいはアクティブ・マトリクス形液晶表示装置において良好な駆動特性及び表示特性が得られる。
Claims (5)
- シアノ基を有しない液晶化合物からなる液晶組成物において、6成分以上の化合物を含有し、(1)一般式( I-1 )〜( I-3 )
- (3)一般式(III-1)、(III-2)
- 請求項1、2又は3記載のネマチック液晶組成物を用いたアクティブ・マトリクス形液晶表示装置。
- 請求項1、2又は3記載のネマチック液晶組成物を用いたツイスティッド・ネマチックもしくはスーパー・ツイスティッド・ネマチック液晶表示装置。
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-
1995
- 1995-04-28 JP JP10624495A patent/JP3858283B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN103429705A (zh) * | 2011-03-24 | 2013-12-04 | 默克专利股份有限公司 | 具有c-c 三键的化合物 |
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