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JP3854909B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents

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JP3854909B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原料ガスをプラズマ化し、活性化した粒子の物理又は化学的相互作用により半導体等の固体材料の表面を処理するためのプラズマ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体材料の表面を処理するためのプラズマの均一性や安定性等、性能向上を目的としたプラズマ処理装置が以下のとおり知られている。
特開平6-111996号公報にはN個の電極を回転対称に配置し、各電極に位相が360度/Nずつ異なるRF帯(13.56MHz)の高周波を印加する方法が記載されている。
特開平11-135438号公報には中心から放射状に配置され、外周部を接地した直線状導体にRF帯の高周波を印加する方法が記載されている。
特開平10-125663号公報には中心から螺旋状に伸びた導電性巻き線にRF帯の高周波を印加する方法が記載されている。
特開2000-111996号公報には印加する高周波の波長の1/4の長さの回転対称に配置したN個のアンテナ素子にそれぞれ360度/Nずつ位相の異なるUHF帯の高周波を印加する方法が記載されている。
特開平10-70108号公報には印加する高周波の波長の1/4の長さの放射状に伸びた棒状導体と、外周円環状導体から中心に向かって伸びた棒状導体によるアンテナ素子にそれぞれ180度位相が異なるUHF帯の高周波を印加する発明が記載されている。
【0003】
数MHzから100MHzの周波数帯の放電方式としては、これまで平行平板形の容量結合方式やループコイルを用いたICPなどの誘導結合方式等がある。
圧力と電極間距離の積と絶縁破壊電圧の関係を示したパッシェン則により、エッチングプロセスに必要な圧力域では、低圧になるほど高い放電維持電圧が必要になる (S.Kakuta,et.al.,Jpn.J.Appl.Phys.33(1994)pp.4335-4339)。
そのため、上記数MHzから100MHzの周波数帯において、平行平板形では低圧力域で均一、高密度なプラズマを維持するのは困難であり、低圧力域のプロセスウインドウが制約される。
誘導結合方式は、ループアンテナに電流を流し、誘起された誘導磁界により、プラズマ内部に誘導電界を生成する方式である。平行平板形は電子の軌跡が電極間距離で規定されるのに対し、誘導結合型では電子の軌跡が円を描くため、電子の移動距離が伸び、原理的に平行平板形に比べ、低圧力で高プラズマ密度を実現できる。
しかし、高周波電源として数MHzから100MHzの低い周波数帯を使用した場合、ループアンテナ直下でプラズマ内に強いシース電界が形成され、誘電体窓のループアンテナ直下付近に高エネルギーイオンが入射し、誘電体窓が磨耗される原因となる。
一方、100MHz以上の周波数帯では、電子は時間変化する電界にトラップされ、拡散による損失が減少することにより、100MHz以下の周波数帯を使用した場合に比べ、低圧力域でもプラズマを安定に維持することが可能となり、プロセスウインドウを低圧力域に拡大できる。(S.Kakuta,et.al.,Jpn.J.Appl.Phys.33(1994)pp.4335-4339)。
また、100MHz以上ではシース電界が弱くなり、誘電体窓に入射するイオンのエネルギーが減少するため誘電体窓の磨耗も低減できる。(T.Kitajima, et.al.,
Appl.Phys.Lett.77(2000)pp.489-491)
さらに、100MHz以上の周波数帯を用いた放電形式も含めて考えると、従来の平行平板形方式や誘導結合方式に加え、複数アンテナ素子に異なる位相の電力を印加する方式(位相制御型)や、アンテナ長を印加する高周波の波長の1/4の整数倍にする方式(アンテナ長制御型)等がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
100MHz以上の周波数帯を用いても、平行平板形のように電極間方向の電界がプラズマ生成電界の主成分である場合、プラズマ密度の増加と共にプラズマ境界面に垂直な成分は遮蔽されるため、高密度域のプロセスウインドウが制約される。一方、高密度域までプロセスウインドウを拡大するには、ループ電流による誘導磁界から、ループ状誘導電界を生成する誘導結合方式を用いるのが好ましいが、従来のループアンテナに100MHz以上の周波数帯を適用した場合、アンテナ内に定在波が励起されるため、ループ状誘導電界が生成できない。また、複数の素子に異なる位相の高周波を印加する方式においても、ループ状誘導電界を形成することができない。
【0005】
近年、半導体の製造において利用するプラズマに対して、大口径で均一な処理性能はもとより、ゲート電極、金属膜や絶縁膜の加工を対象とした、異方性や選択比が高く、微細化に対応できるエッチング工程をはじめ、エッチング前のBARC(Bottom Anti-reflective Coating)やBARL(Bottom Anti-reflective layer)等の反射防止膜加工工程、酸化膜や窒化膜などからなるハードマスクの加工工程、マスクの寸法を制御するための細線化工程、形状の角度や丸み等の幅広い制御性が必要とされるトレンチ加工工程、さらには、加工後のレジスト、エッチング残渣やダメージ層を除去する後処理工程や、スパッタリング等に至るまで、幅広いアプリケーションが要求される。
【0006】
例えば、トランジスタのゲート形成に関わる周辺のエッチング工程だけでも、上述のトレンチ加工、反射防止膜加工、マスク加工、これに伴うマスクの細線化加工、ゲートそのものの加工、その後のスペーサ加工に至るまで多くの工程があり、またスループット向上、大気による劣化防止のため、これら全てを行うことのできる能力を有する装置が求められている。
また、配線層形成に関わるエッチング工程では、配線層の多層化により、膜厚の厚い上層部金属膜の高速加工が求められている。また金属膜加工においても反射防止膜加工、拡散防止膜加工、マスク加工などの工程があり、ゲート電極形成と同様にこれら全てを行うことのできる能力を有する装置が求められている。
加えて、近年の少量多品種生産への要求や、システムLSIのように複数の素子構造が同一ウェハ上に混載した品種に対する適用の必要性からも、様々なガス種に対して、処理圧力では0.1Pa〜10Pa、ウェハへのイオン入射電流では0.3〜3mA/cm2といった桁をまたいだ広い条件範囲で、大口径のウェハを処理するための極めて均一性の高いプラズマ生成が必要とされる。
広範囲のガス種、密度、圧力において、大口径の均一性を維持しながら安定で連続的なプラズマ生成特性を得るためには、UHF帯(100MHzから3GHz)の高周波電源を利用し、低電子温度で低解離プラズマを生成するのが好ましく、また広範囲のプロセスウインドウが必要になる。しかし、従来のRF帯(13.56MHz)を用いた誘導結合方式のループアンテナにUHF電力を供給した場合、ループアンテナ内に定在波が励起され、ループ電流が生成出来ず、誘導電界を形成できないため、高密度域のプラズマを生成できない。
本発明の目的は、広範囲の密度、圧力、ガス種において、大口径の均一性を維持しながら安定で連続的なプラズマ生成特性が得られ、長期的な量産処理にも耐え得る、プラズマ処理装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、減圧雰囲気が保たれる容器と、該容器内に位置した被加工物を載置する処理台と、該被加工物と対面ように配置された誘電体窓と、該誘電体窓の背面に位置し、所定のガスをプラズマ化するための電磁波を該容器内に導入するアンテナ素子とを有し、
該アンテナ素子は回転対称に配置された少なくとも二個以上のアンテナ素子で構成され、
該アンテナ素子のそれぞれは片端が接地され、他端は高周波電源に同位相またはほぼ同位相で電気的接続されることを特徴とする。
本発明では複数のアンテナ素子(特に素子の長さが高周波電力の波長の1/4より短い)を用いることで、定在波の発生を抑え、ループ状誘導電界を生成できるようになった。
また、本発明により、低圧力域、高密度域へのプロセスウインドウの拡大および、容量結合成分による内壁部材の磨耗低減を両立できるようになった。
【0008】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
まずはじめに、本発明の特徴としているアンテナ素子構造について、図1から図5を参照して説明する。
図1に示すように、長さが高周波の波長λの1/4より短い、少なくとも2個以上のアンテナ素子101は導体板104に回転対称に配置されている。各アンテナ素子は二つの端子102a,102bをそれぞれ有する。一方の端子102aは導体棒103を介して導体板104に接地される。他方の端子102bは導体板104に開いた孔を通して、導体棒105により高周波分配部106により高周波電源に同位相またはほぼ同位相で電気的接続されている。すなわち、本発明のアンテナ素子構成によれば、各アンテナ素子101に流れる電流が全体として1つのループ電流を形成するように、各アンテナ素子101に対して位相がそろった高周波電源を接続している。このようにして、高周波(UHF帯)において誘導結合プラズマを生成することを可能にした。
本発明のアンテナ素子は、高周波電源からの高周波を同位相またはほぼ同位相で各アンテナ素子に給電するために、製作が容易な導体板で電力を分配する方式を採用したため、複雑な位相制御機構が不要である。
図2(A) (B)(C)に高周波電源201から各アンテナ素子202に接続端子203を介して電力を分配するデバイダの例をそれぞれ示す。図2(A)ように円盤型204が、構成が単純であり好ましい。しかしながら、図2(B)のように星型205でも同様の効果が得られる。また、図2(C)のように各アンテナ素子に流れる電流が同位相になるように伝送経路を設計した同軸ケーブル206により電力を分配しても同様の効果が得られる。
図1に戻り、導体板106を使用した場合、導体板からも電磁波が放射され、各アンテナ素子から放射される電磁波が乱される。このため、各アンテナ素子101と導体板106の間に接地した導体板104を挟み、アンテナ素子にはその接地した導電性平板にあけた孔を介して高周波が印加される構造を採用している。これによって、導体板106からの電磁波を遮蔽した。
各アンテナ素子はループ電流を形成することから図3(A)に示すように、二つの端子301をもつ円弧型302の形状で回転対象に配置するのが好ましい。しかしながら、図3(B)のように回転対象中心から接地端子間304での距離と給電端子305までの距離がそれぞれ異なるアンテナ素子303を回転対象に配置しても同様の効果が得られる。
また、各アンテナ素子の形状は、二つ以上の接続端子401を備えていれば電流を流すことが可能なため、図4(A)(B)(C)にそれぞれ示すように、楕円型のアンテナ素子402、多角形のアンテナ素子403、棒状のアンテナ素子404でも同じ効果が得られる。
さらに、各アンテナ素子の配置の一例として、図5(A)に示すように螺旋構造501や、図5(B)に示すように多重構造502でも同様の効果が得られる。
次に、エッチングシステムの全体構成を、図6を参照し説明する。
図6(A)において、プラズマエッチング用リアクタ(容器)601内に、プラズマ用チューナ603を介して、プラズマ用f=450MHz高周波電源602で発生した電磁波をアンテナ素子604に導入する。そして、磁場発生制御部605により発生した磁場を作用させることにより、高効率にプラズマを生成する。
アンテナ構造は、図1に示すように、長さが高周波の波長λの1/4より短い、少なくとも2個以上のアンテナ素子101を回転対称に配置されている。各アンテナ素子にある二つの端子102の、一方を導体棒103を介して導体板104に接地し、他方を導体板104に開いた孔を通して、導体棒105により高周波分配部106により高周波電源に同位相またはほぼ同位相で接続されている。
石英天板(誘電体窓)606の上部周辺に配置された定在波制御部607は、側壁近傍のプラズマ分布を制御する。
プロセスガスはガス導入部608により、シャワープレート609を通してプラズマエッチング用リアクタ601に導入される。
プラズマエッチング用リアクタ601と磁場発生制御部604とは、排気設備610を有するベースフレーム611上に搭載されている。具体的な排気設備610としてはターボ分子ポンプの如き真空排気装置より成る。この真空排気装置610によってプラズマエッチング用リアクタ(容器)601内は所定の圧力に減圧される。
この減圧が維持されたプラズマエッチング用リアクタ(容器)601内には処理されるべきウェハ(直径300mm)613が搬送され、上下機構を有する処理台612上に装填される。そして、そのウエハ613はバイアス用マッチングボックス615を介して、バイアス用400kHz電源614で発生した高周波が印加される。
図6(B)は、ベースフレーム全体を上方向から見た概略図を示す。図6(A)に示したプラズマエッチング用リアクタ601は、ベースフレーム616上に載置されている。2つのプラズマエッチング用リアクタ601を有するエッチングシステムにより、量産においては、効率の良いパラレル処理が可能となっている。本実施の形態では、一方のリアクタを用いてエッチングの評価を行う。
また、同じベースフレーム上に、プラズマアッシング用リアクタ617が2つ搭載されており、レジストマスクやエッチング後の表面ポリマーの除去を行う。
さらに、ウェハカセット装填場所618には、エッチング前のウェハの待機場所とエッチング後のウェハの待機場所がある。ウェハはウェハ搬送ロボット619により各所に搬送される。
ここで、UHF帯を使用した従来方式と本実施の形態1との構成および特性(プラズマ生成部における電界成分の分布)の対比を説明する。
まず、図7(A)に、UHF帯を使用した従来方式の一例としてUHF-ECRプラズマ処理装置の
概略を示す。
石英天板(誘電体窓)700の上部には導電性平板で構成されたアンテナ素子701とアルミナ(Al2O3)製のアンテナスペーサ702とが設けられている。また、アンテナ素子周辺部にはL字型の導電性チョーク703とアルミナ(Al2O3)製のリング704とで構成された定在波制御部が設けられている。これにより側壁近傍のプラズマ分布が制御可能となる。
図7(B)は、図7(A)に示したシャワープレート705直下にあるプラズマ生成部706の電界成分の分布を計算により見積った例が示されている。
プラズマ密度が4.5×1010cm-3 (入射イオン電流(ICF)で1.2mA/cm2相当)の条件では、中心付近はz軸方向電界707が主成分であり、r方向成分708はアンテナ素子端で極大値をもち、中央部に寄った領域に電界強度の強い部分が表れることがわかる。また、θ方向電界は原理的に存在しない。この強い電界部分でプラズマが初期生成され、そのプラズマは拡散により外側に拡がり、ウェハ上には、均一なイオン電流が入射する。
ところが、プラズマ密度を9.0×1010cm-3(ICFで2.5mA/cm2相当)と増加させると、プラズマ境界面に垂直なz軸方向電界709がプラズマに反射されるようになり、アンテナ素子からの電磁波が、プラズマ中に伝播しなくなる。これにより、高パワー域ではプラズマ密度が入力電力に対し飽和傾向を示し、高プラズマ密度域に制約を受ける。
一方、本実施の形態1のプラズマ処理装置を図8(A)に示す。そして、シャワープレート801直下にあるプラズマ生成部802の電界成分分布を計算により見積った、本実施の形態における例を図8(B)に示す。この例では図1に示したアンテナ構成が用いられている。なお、石英天板800の周辺部に定在波制御部を有していない。
各アンテナ素子101で導体棒103,105の配置の位相がそろっているために、各アンテナ素子面には同じ回転方向に電流が流れる。各アンテナ素子に印加される電磁波の位相は同位相であることが好ましいが、位相差が±10度の範囲でも同様の効果が得られる。また、金属素子の熱膨張や加工精度により回転対称の誤差があっても、各アンテナ素子に流れる電流の回転方向が同じであれば同様の効果が得られる。この回転方向に流れる電流により、z軸方向に誘導磁界が生成され、その誘導電界により、θ方向の誘導電界が形成される。プラズマ密度が4.5×1010cm-3 (入射イオン電流(ICF)で1.2mA/cm2相当)の条件では、アンテナ素子の直下でθ方向電界805が極大値となる。
また、図7(A)に示した従来方式とは対照的に中心付近でz軸方向電界806がほとんどなく、側壁に近づくにつれて、r方向電界807が増加する。
さらに、プラズマ密度を9.0×1010cm-3(ICFで2.5mA/cm2相当)と増加させていくと、プラズマ境界面に平行なθ方向電界808が、プラズマに反射されることなく伝播するため、プラズマはこのθ方向電界により生成される。このことから本方式はθ方向電界により、高パワー域までプラズマを制御可能であり、高プラズマ密度を生成可能な方式である事が分かる。
図8(A)に示したプラズマ処理装置において、ウエハ803面への入射イオン電流(ICF)測定によりθ方向電界の存在を確認した。本装置では外部コイル804により磁場を印加可能である。そのコイル磁場の向きを反転することにより観測されたICF分布を図9に示す。
本実施の形態により生成される電界は図8(B)に示したように、θ方向電界805 と、r方向電界807とが存在するため、実プラズマ中での電界ベクトルは渦を巻いている。
図9(A)に示すように、磁界901が下向きの場合、プラズマ中の荷電粒子は径方向に振動する外力902を受けるため、高低差のあるICF分布903となる。ある一部分904の荷電粒子の挙動に注目すると、渦を巻いている電界905と垂直な方向にローレンツ力906が働く。この結果、プラズマ中の荷電粒子は外向きの力907を受ける。
次に、電磁波の位相が180度、異なる時は、渦を巻いている電界908は逆方向を向き、それと垂直な方向にローレンツ力909が働き、プラズマ中の荷電粒子は、磁界901が下向きの場合とは逆に、中心方向の力910を受ける。
結果として、磁界901が下向きの場合、プラズマ中の荷電粒子は半径方向に振動するような力902を受けるため、ICF分布903は拡散分布となる。
一方、図9(B)に示すように、磁界911が上向きの場合、プラズマ中の荷電粒子は回転方向に振動する外力912をうけるため、M型のICF分布913となる。ある一部分914の荷電粒子の挙動に注目すると、渦を巻いている電界915と垂直な方向にローレンツ力916が働く。この結果、プラズマ中の荷電粒子は回転方向の力917を受ける。
次に、電磁波の位相が180度、異なる時は、渦を巻いている電界918は逆方向を向き、それと垂直な方向にローレンツ力919が働き、プラズマ中の荷電粒子は、磁界911が上向きの場合とは逆に、回転方向の力920を受ける。
結果として、磁界911が上向きの場合、プラズマ中の荷電粒子は回転方向に振動するような力912を受けるため、ICF分布913はプラズマ生成部の分布を反映したM型分布が得られた。
以上により、本発明によりθ方向電界を生成可能であることが実証された。ICF分布を磁場の強弱だけでなく、磁界ベクトルの正負の向き、つまりコイル電流の正負により、選択可能である。また、永久磁石によりソレノイドコイルと同様な磁場を生成した場合でも、同様の効果が得られる。
【0009】
次に、図6に示した装置構成により得られるプラズマ特性を、従来のUHF-ECR(図7)と比較するため、ガスとしてCl2、HBrおよびO2を用い、圧力を0.4Paに設定した場合のICFの均一性と、電磁波のパワーに対するリニアリティを調べた例を図10に示す。
従来のUHF-ECRにより得られるICF分布1001(図10(A))は、500Wから800Wへ電磁波のパワーを増加させると、多少M型の分布であるが、ほぼ均一なICF分布のまま、飽和傾向を示しつつ、電流密度が増加する。
一方、本発明を用いた図6に示すプラズマ処理装置により得られるICF分布1002(図10(B))では、500Wから800Wまで電磁波のパワーを増加させると、多少、高低差のあるICF分布から、中心付近がほぼフラットな分布になり、電流密度が増加する。
両方式1001、1002におけるパワーに対するICFのリニアリティを確認するため、横軸にパワーを、縦軸にf300mm面内のICFの平均値をプロットした結果を図10(C)に示す。従来方式のUHF-ECRにおけるICF分布1004は、500W以上で飽和傾向を示すが、本実施の形態のICF分布1005は、指数関数的に増加する傾向が見られ、800W以上でもプラズマ密度が増加し、高プラズマ密度を生成できる。
次に、図6に示すプラズマ処理装置において、異なるガス系におけるICF分布を図11に示し、先に述べた多工程のシリーズ処理の能力を検討した。
図11(A)はpoly-Siのエッチング条件(ガスとしてはCl2、HBr およびO2)1101、図11(B)はBARCのエッチング条件(ガスとしてはAr、CF4、HBrおよびO2)1102を用いた場合のICF分布の測定結果を示す。 どちらのガス系も類似した分布が得られ、このガス系の違いによるICF分布の変化は少ないことから、多種材料加工への広いプロセスウインドウをもつと期待できる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2である半導体装置の製造方法を以下に説明する。
図6に示すプラズマ処理装置において、ゲート電極加工工程の一例として、単一の減圧容器を用いたゲート形成に関わるエッチングの一貫した処理について検討した。ゲート電極加工後の形状を図12に示す。
まず、O2とハロゲン混合系によるArFレジスト1201の細線化及びCF4ベースによるBARC1202のエッチングでは、高選択比が求められており、ハードマスクである窒化シリコン1203のエッチングでは比較的エッチングされにくい膜質なため、高いプラズマ密度が必要である。また、ポリシリコン1204のエッチングでは垂直形状を得るため低圧力下の処理が必要とされる。一方、オーバーエッチングではポリシリコン1204と下地酸化シリコン1205の高い選択比が要求されるため、高圧力下での処理が必要とされる。このように各層ごとに適した条件が大きく異なるため幅広いプロセスウィンドウが必要とされる。
本発明を適用したプラズマ処理装置により、高密度域までプロセスウインドウが拡大したため、上記多工程のシリーズ処理を効率良く行うことが可能となり、マスク材、反射防止膜、ゲート材料の同一チャンバ内一貫処理を高スループットで実現できる。一連の加工を、それぞれの工程の専用装置を用いて、装置間でウエハが行き来する場合や、複数の専用減圧容器を有する装置において行う場合と比べ、それぞれの専用装置もしくは減圧容器にウエハを出し入れするための余分な時間が節約できる。
また、レジスト膜や反射防止膜の種類が異なっても、同様に、その時間短縮の効果は得られる。このように単一の減圧容器の構成により、さまざまなプロセス条件への対応が広範囲で可能となる。このことは、量産の効率を向上させるにあたって極めて優位となる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3である半導体装置の製造方法を以下に説明する。
本発明を適用した構成の装置(図6)を用いて、ウエハ表面のメタル(アルミニウム)配線をエッチング形成した例を図13に示す。配線層は上からレジスト1301、反射防止膜1302、窒化チタン1303、アルミニウム1304、窒化チタン1303、酸化シリコン1305からの積層構造である。エッチングガスとしては塩素、三塩化ホウ素が用いられる。
まず、反射防止膜であるBARL1302の加工では上部レジスト1301との選択比が要求され、また、窒化チタン1303の加工では高バイアスが必要とされる。さらに、アルミニウム1304の加工では、高い垂直加工精度とともに高密度プラズマによる高速エッチングが要求されている。そしてさらに、オーバーエッチでは下地酸化膜1305との高選択比が必要となる。
本発明を適用したプラズマ処理装置により、高密度域までプロセスウインドウが拡大し、上記多工程のシリーズ処理により、マスク材、反射防止膜、メタル配線材料の高スループットな同一チャンバ内一貫処理が可能となる。
本発明を適用したプラズマ処理装置では、成膜CVDやスパッタリングなど、プラズマにより発生した種の物理的、化学的作用を利用した、その他の半導体処理においても広範囲な条件で均一な処理性能が発揮できる。
上記実施の形態2および実施の形態3により導き出される半導体装置の製造方法の特徴を列挙すると以下のとおりである。
【0010】
(1)減圧雰囲気が保たれる容器と、該容器内に位置したウエハ(半導体ウエハ)を載置するための処理台と、ウエハと対面するように配置された誘電体窓と、該誘電体窓の背面に位置し、所定のガスをプラズマ化するための電磁波を該容器内に導入するアンテナ素子とを有し、該アンテナ素子は回転対称に配置された少なくとも二個以上のアンテナ素子で構成され、該アンテナ素子のそれぞれは片端が接地され、他端は高周波電源に同位相またはほぼ同位相で電気的接続されたプラズマ処理装置を準備し、該処理台上に処理されるべきウエハを装填させ、該容器アンテナ素子に流れるループ状の電流を制御することにより、該ウエハに対して連続もしくは断続した表面処理を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(2) 前記(1)項において、アンテナ素子に流れるループ状の電流を制御することにより、少なくとも2種類以上の膜種または処理条件に対する連続もしくは断続した処理を、単一の減圧容器によって行うことを特徴とする。
(3) 前記(1)項において、アンテナ素子近傍のループ状の電界を制御することにより、少なくとも2種類以上の膜種または処理条件に対する連続もしくは断続した処理を行う。
(4) 前記(1)項において、アンテナ素子近傍のループ状の電界を制御することにより、少なくとも2種類以上の膜種または処理条件に対する連続もしくは断続した処理を、単一の減圧容器によって行う。
(5)減圧雰囲気が保たれる容器と、該容器内に位置したウエハを載置するための処理台と、ウエハと対面するように配置された誘電体窓と、該誘電体窓の背面に位置し、所定のガスをプラズマ化するための電磁波を該容器内に導入するアンテナ素子とを有し、該アンテナ素子は回転対称に配置された少なくとも二個以上のアンテナ素子で構成され、該アンテナ素子のそれぞれは片端が接地され、他端は高周波電源に同位相またはほぼ同位相で電気的接続されたプラズマ処理装置を準備し、該処理台上にゲート電極加工すべきウエハを装填させ、該容器アンテナ素子に流れるループ状の電流を制御することにより、該ウエハに対して連続もしくは断続した表面処理を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0011】
【発明の効果】
本発明により、高周波を用いたプラズマ製造装置において、誘導結合方式でプラズマを生成することにより、広範囲のガス種、圧力、密度条件で、被処理試料に均一な加工を施すことができ、特に低圧力域および高プラズマ密度域にプロセスウインドウを拡大できた。また、ゲート電極加工やメタル配線加工などの多層膜および多数の工程に対し、単一の減圧容器で一貫して適用することで、生産効率を高めることができ、半導体装置の製造方法のスループット向上に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係わるアンテナ素子の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係わるアンテナ素子要部の変形例を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係わるアンテナ素子要部の変形例を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係わるアンテナ素子要部の変形例を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係わるアンテナ素子要部の変形例を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係わるプラズマ処理装置を示す説明図である。
【図7】従来のプラズマ処理装置の特性を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係わるプラズマ処理装置の特性を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係わるプラズマ処理装置におけるICF分布の磁界ベクトル方向依存性を表す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係わるプラズマ処理装置におけるICF分布の均一性とUHFパワーに対するリニアリティを説明するための特性図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係わるプラズマ処理装置におけるICF分布のガス系依存性を説明するための特性図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係わる半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係わる半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【符号の説明】
101・・・アンテナ素子、102・・・接続端子、103・・・導体棒、
104・・・導電性円盤、105・・・導体棒、106・・・高周波分配部、
107・・・高周波導入部、
201・・・高周波導入部、202・・・アンテナ素子の位置、203・・・接続端子、
204・・・円盤型高周波分配部、205・・・星型高周波分配部、
206・・・同軸線による高周波分配部、301・・・接続端子、
302・・・円弧型アンテナ素子、303・・・角度の異なるアンテナ素子、
304・・・回転対称の中心から接地端子までの距離、
304・・・回転対称の中心から給電端子までの距離、401・・・接続端子、
402・・・楕円型のアンテナ素子、403・・・多角形のアンテナ素子、
404・・・棒状のアンテナ素子、501・・・螺旋状に配置したアンテナ素子、
502・・・多重に同心円上に配置したアンテナ素子、
601・・・プラズマエッチング用リアクタ、
602・・・プラズマ用f=450MHz高周波電源、603・・・プラズマ用チューナ、
604・・・アンテナ素子、605・・・磁場制御部、606・・・石英天板、
607・・・定在波制御部、608・・・プロセスガス導入部、
609・・・シャワープレート、610・・・真空排気装置、611・・・ベースフレーム、612・・・処理台、613・・・φ300mmウェハ、614・・・バイアス用400kHz電源、615・・・バイアス用マッチングボックス、
616・・・プラズマエッチング用リアクタ、
617・・・プラズマアッシング用リアクタ、618・・・ウェハカセット装填場所、
619・・・ウェハ搬送ロボット、701・・・アンテナ素子、
1201・・・フォトレジスト、1202・・・反射防止膜、1203・・・窒化シリコン、
1204・・・ポリシリコン、1205・・・酸化シリコン、1301・・・フォトレジスト、
1302・・・反射防止膜、1303・・・窒化チタン、1304・・・アルミニウム、
1305・・・酸化シリコン。

Claims (4)

  1. 減圧雰囲気が保たれる容器と、
    該容器内に位置した被加工物を載置するための処理台と、
    該被加工物と対面する誘電体窓と、
    所定のガスをプラズマ化するための電磁波を該容器内に導入するアンテナ素子と、
    高周波電源とを有し、
    該アンテナ素子は回転対称に配置された複数のアンテナ素子で構成され、
    各々アンテナ素子の片端が接地され、他端が同位相またはほぼ同位相で前記高周波電源に電気的接続され
    更に、前記アンテナ素子に前記高周波電源からの電力を分配供給する高周波分配部を備え、
    前記アンテナ素子と前記高周波分配部との間に導電性板を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
  2. 容器と、
    該容器内を減圧雰囲気に保持する真空排気装置と、
    該容器内に位置した半導体ウエハを載置するための処理台と、
    該半導体ウエハと対面した下面を有する誘電体窓と、
    該誘電体窓上面に位置し、所定のガスをプラズマ化するための電磁波を該容器内に導入するアンテナ素子と、
    高周波電源とを有し、
    該アンテナ素子は回転対称に配置された複数のアンテナ素子で構成され、
    各々のアンテナ素子の端子の一方が接地され、他方は前記高周波電源に同位相またはほぼ同位相で給電され
    更に、前記アンテナ素子に前記高周波電源からの電力を分配供給する高周波分配部を備え、
    前記アンテナ素子と前記高周波分配部との間に導電性板を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
  3. 減圧雰囲気が保たれる容器と、
    該容器内に位置した被加工物を載置するための処理台と、
    該被加工物と対面する誘電体窓と、
    所定のガスをプラズマ化するための電磁波を該容器内に導入するアンテナ素子と、
    高周波電源とを有し、
    該アンテナ素子は回転対称に配置された複数のアンテナ素子で構成され、
    各々アンテナ素子の片端が接地され、他端が同位相またはほぼ同位相で前記高周波電源に電気的に接続され、
    かつ、前記アンテナ素子が少なくとも多重に同心円状に配置されていることを特徴とするプラズマ処理装置
  4. 容器と、
    該容器内を減圧雰囲気に保持する真空排気装置と、
    該容器内に位置した半導体ウエハを載置するための処理台と、
    該半導体ウエハと対面した下面を有する誘電体窓と、
    該誘電体窓上面に位置し、所定のガスをプラズマ化するための電磁波を該容器内に導入するアンテナ素子と、
    高周波電源とを有し、
    該アンテナ素子は回転対称に配置された複数のアンテナ素子で構成され、
    各々のアンテナ素子の端子の一方が接地され、他方は前記高周波電源に同位相またはほ ぼ同位相で給電され、
    かつ、前記アンテナ素子が少なくとも多重に同心円状に配置されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
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