JP3854565B2 - D−システノール酸抽出物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、D-システノール酸を含有する海藻からD-システノール酸を高濃度に含有する抽出物の製造方法、および前記製造方法により製造されるD-システノール酸抽出物に関する。本発明のD-システノール酸抽出物は、健康食品、機能性飼料、および医薬品に含有させることができる。
【0002】
【従来の技術】
D-システノール酸は、血栓防止効果の他、本発明者らによって、中性脂肪や体重抑制効果、一重項酸素、フェントン反応などの活性酸素に対し抑制効果が見い出された機能性の含硫アミノ酸の一種である。
【0003】
このD-システノール酸は、海藻の一種であるアオサ、シオグサ、ミル、ウスバアオノリ、イトグサ等に含まれる微量成分である。しかし、一度にこれらの海藻を大量に摂取することは難しく、事実上D-システノール酸を有効量摂取することは困難となっていた。
【0004】
このD-システノール酸の抽出形態としては、熱水やエタノールなどの有機溶媒抽出、さらに濃度を上げるにはイオン交換クロマトによる分別が発明されている(特許文献1参照)。
【0005】
一方、超臨界抽出を用いた有効成分の濃縮については、シナモン芋や、野菜からの脂溶性のビタミンであるビタミンK抽出の事例があるが(特許文献2および特許文献3参照)、超臨界抽出による海藻からの水溶性アミノ酸であるD-システノール酸の抽出事例は報告されていない。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−046051号公報
【特許文献2】
特開平10−165139号公報
【特許文献3】
特開平11−147831号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
D-システノール酸は、比較的安定なアミノ酸であるが、本発明の目的は、有害な物質の残留やD-システノール酸の変性の恐れがない抽出方法を提供し、この抽出物を食品、飼料、医薬品の原料として配合することにある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、従来から食料として使用され、既に人体に対する安全性が確認されている材料である海藻のうち、D-システノール酸を含む海藻から、効率的にD-システノール酸を抽出し、機能性食品(健康食品および健康飲料)、飼料、医薬品に配合することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、食品や飼料、医薬品へのD-システノール酸強化に適した天然素材の簡便な加工法について鋭意研究を重ねたところ、D-システノール酸を含む海藻に液状化二酸化炭素を抽出溶剤として接触させ、適切な条件で水を加えてD-システノール酸を抽出することにより、初めて前記目的が達成することを見出し、本発明に到った。即ち、本発明の食品、飼料、医薬品用D-システノール酸補給組成物の製造方法は、好ましくは、海藻を異物除去しながら水洗し、乾燥、粉砕した後、超臨界状態にある液状化した二酸化炭素を用いて抽出処理することを特徴とする。
【0010】
即ち、本発明は以下に示す手段を採用する。
【0011】
(1)D-システノール酸を含有する海藻を、超臨界状態にある二酸化炭素を用いて抽出することを特徴とするD-システノール酸抽出物の製造方法。
(2)D-システノール酸を含有する粉砕状態にある乾燥海藻に水を海藻重量比4.5〜8倍に加えた原料を、超臨界状態にある二酸化炭素を用いて抽出することを特徴とするD-システノール酸抽出物の製造方法。
(3)(1)または(2)記載の製造方法により製造される海藻由来のD-システノール酸抽出物。
【0012】
(4)(2)記載の製造方法により製造される海藻由来のD-システノール酸抽出物を活性成分として含むことを特徴とする機能性食品。
(5)(2)記載の製造方法により製造される海藻由来のD-システノール酸抽出物を活性成分として含むことを特徴とする機能性飼料。
(6)(2)記載の製造方法により製造される海藻由来のD-システノール酸抽出物を活性成分として含むことを特徴とする医薬組成物。
【0013】
(7)D-システノール酸を含有する粉砕状態にある乾燥海藻に水を海藻重量比4.5〜8倍に加えた原料を、超臨界状態にある二酸化炭素を用いて抽出する工程と、前記工程により得られたD-システノール酸抽出物を機能性食品に加工または添加する工程とを具備することを特徴とする機能性食品の製造方法。
(8)D-システノール酸を含有する粉砕状態にある乾燥海藻に水を海藻重量比4.5〜8倍に加えた原料を、超臨界状態にある二酸化炭素を用いて抽出する工程と、前記工程により得られたD-システノール酸抽出物を機能性飼料に加工または添加する工程とを具備することを特徴とする機能性飼料の製造方法。
(9)D-システノール酸を含有する粉砕状態にある乾燥海藻に水を海藻重量比4.5〜8倍に加えた原料を、超臨界状態にある二酸化炭素を用いて抽出する工程と、前記工程により得られたD-システノール酸抽出物を医薬品に加工または添加する工程とを具備することを特徴とする医薬組成物の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、本発明者がD-システノール酸を含む海藻から超臨界状態にある二酸化炭素を用いて、かつ水を一定条件加えたD-システノール酸を効率的に抽出することを発見したことに基づく。
【0015】
一般に、食品や飼料、それに医薬品にD-システノール酸を補給するためには、D-システノール酸含量が高い天然素材からD-システノール酸を抽出することが好ましい。
【0016】
本発明のD-システール酸を含む天然素材としてはアオサ、シオグサ、ミル、ウスバアオノリ、イトグサ等が挙げられ、特に、この中で、アオサは、その含有率が高いので、天然素材として好まれるが、これに限定されるものではない。
【0017】
D-システノール酸は、比較的安定なアミノ酸であるが、本発明は、有害な物質の残留やD-システノール酸の変性の恐れがない抽出方法として、超臨界状態にある二酸化炭素を用いてD-システノール酸を効率的に抽出し、この抽出物を食品、飼料、医薬品の原料として配合するものである。
【0018】
以下、本発明の実施の形態については、アオサを天然素材として用いた事例により説明する。本発明の製造方法において、海藻原料は、D-システノール酸を含有する海藻であれば任意のものを使用することができ、アオサに限定されないことはいうまでもない。
【0019】
本発明形態における「アオサ」とは、内湾等の海に浮遊して自然界に存在するアオサ(Ulva)属に属する藻類であり、その中で例えば年間を通して安定に培養生産が可能な不稔性アオサ(Ulva lactuca)を用いることができる。適用は、この株に限定されるものでもないが、不稔性アオサは一部で食品として利用され、アオサの中でも安定に培養生産可能な品種である。
【0020】
本発明の一事例としては不稔性アオサMH1−ATRC−1株が挙げられるが、この株は工業技術院生命工学工業技術研究所(当時)に寄託申請したが、「緑藻であるため」との理由により受託を拒否されている(平成10年6月29日)。そのため、本株は出願人の責任において出願人の管理下に保存されている。
【0021】
[D-システノール酸抽出物の製造方法]
以下、本発明のD-システノール酸抽出物の製造方法の一実施形態について説明する。
【0022】
本発明の一実施形態において、アオサを5mm程度に粉砕し、アオサの細胞内成分を露呈しやすくした状態で、添加物として水を加え、上述のように超臨界状態の二酸化炭素を該アオサに接触させ、D-システノール酸を抽出する。
【0023】
本発明の海藻を原料とする一実施形態に係るD-システノール酸抽出物製造方法は、図1に示すように海藻の水洗・異物除去工程、海藻の乾燥工程、海藻の粉砕工程、添加物添加工程、海藻の超臨界抽出工程、抽出物の分別工程、抽出物の目的物への配合工程からなるものである。
【0024】
海藻の水洗・異物除去工程は、海藻に付着した泥や木葉、小枝、タバコの吸殻、プラスチック等の混入物を分別しながら、洗浄するもので、例えばアオサの場合には、海苔の洗浄工程を流用することができる。
【0025】
このように異物を除去したアオサは、次に、加熱・風乾するもので、200℃以下、望ましくは100℃以下、50℃以上で乾燥させるのがよい。
【0026】
このようにして乾燥して得たアオサ(海藻)は数ミリ程度の大きさにミルなどの粉砕機により粉砕・調製する粉砕工程を経て、添加物として脱イオン水を加えた後、超臨界抽出に供される。
【0027】
なお、超臨界抽出への試料(例えばアオサ)は、乾燥・粉末化した状態でD-システノール酸の含有が保証されたものであれば、これらを原料にして、直接以下の超臨界抽出工程に供することは可能である。なお、添加物としては脱イオン水、エタノール水溶液などが挙げられるが、利用する抽出物の形態により適宜選択することが可能である。
【0028】
超臨界状態にあり二酸化炭素を抽出溶剤とする本発明の抽出方法は、例えば、乾燥アオサ粉末に添加物として水を海藻の重量比4.5〜8倍になるよう加えて、液状二酸化炭素による超臨界抽出を行う。アオサ乾燥粉末1重量に対して、液状化二酸化炭素を10〜100重量部、好ましくは20〜60重量部を加えて抽出する。液状化二酸化炭素が重量比で10重量部未満であると、D-システノール酸の抽出が不十分であり、100重量部より多い場合には、抽出効果が殆ど向上せず、二酸化炭素の供給コストがかさむ。この際、温度10〜60℃、好ましくは30〜50℃、圧力100〜350kg/cm2の条件下で抽出を行うと、アオサ(海藻)からD-システノール酸を選択的に抽出することができる。上記設定の抽出条件から外れると、緑色のクロロフィル色素やエグ味成分であるポリフェノール類や有機酸が抽出されるため好ましくはない。
【0029】
超臨界抽出は、図2に示される超臨界抽出装置を用いて行うことができる。図2の超臨界抽出装置について説明する。バルブ1を開け、バルブ2を閉じた状態にし、CO2ボンベ内の液化CO2を、開放されたバルブ1を通って保圧弁と高圧ポンプにより熱交換器に搬送し、加圧および加温または冷却し適切な温度に調節し、超臨界状態の液状化二酸化炭素に液状化する。その後、バルブ2を開け、超臨界状態に保持された二酸化炭素を、開放されたバルブ2を通って抽出器内に搬送し、ここで海藻由来のD-システノール酸の抽出に用いる。CO2ボンベからのCO2の搬送量は、バルブ1の開閉により制御され、D-システノール酸の抽出に使用するための超臨界状態の二酸化炭素の抽出器への搬送量は、バルブ2の開閉により制御される。抽出後、抽出器内で海藻(原料)からD-システノール酸を抽出した液状化二酸化炭素を、バルブ3を開放することにより分離トラップを備えた分離器に搬送し、抽出が可能となる。その後、バルブ2を閉じ、バルブ4を開けて分離器内を減圧し、二酸化炭素をガス化し、これをバルブ4を経由して除去する。これにより得られたD-システノール酸抽出物(図中の「抽出物」)は、その後の利用に供される。
【0030】
上述の抽出処理によれば、抽出終了後に減圧することで、溶剤である二酸化炭素はガス化して抽出物から除去される。そのため、従来の蒸留やカラムクロマトグラフィー等のように、有機溶剤の分離に多大な熱エネルギーを必要としない。しかも、クロロフィル色素の変性に伴う有害物の発生を抑えられるなど、安全性を保ちながらD-システノール酸の抽出物を得ることができる。ここで得られたD-システノール酸抽出物を反応容器から分別する工程を経て、回収したD-システノール酸抽出物(以下、アオサエキスともいう)を食品、飼料、医薬品等へ配合することが可能である。
【0031】
アオサエキスの食品・医薬品・飼料への配合工程は、このアオサエキス(D-システノール酸抽出物)を配合する食品・医薬品・飼料が液状、粉末のいずれの場合にも適用ができる。例えば、液状の場合には該アオサエキス(D-システノール酸抽出物)を濃縮して、目的に応じてその濃度を調整することができる。また、粉末の場合には、該アオサエキスを粉末化して、重量・配合比を調整することで任意の濃度に配合することができる。この操作によってアオサに含まれる中性脂肪生成抑制等の効果を有するD-システノール酸を濃縮できるため、少量摂取にて、その効果を発揮する効果を引き出すものである。なお、アオサエキスを食品・医薬品・飼料に混合する割合は、何れも重量比で0.1〜2%が望ましい。
【0032】
[アオサエキスを含む医薬組成物]
以下に、本発明の医薬組成物について説明する。
【0033】
本発明の医薬組成物は、その活性成分であるアオサエキス(D-システノール酸抽出物)により、例えば中性脂肪等が抑制され、それによってヒトやペットなどの生活習慣病とされる高脂血症、虚血性疾患、動脈硬化等の疾患を予防および/または治療することが可能である。また、本発明の医薬組成物は、アオサエキスと共に、治療および/または予防効果を有する様々な他の活性成分を含むことも可能である。本発明の医薬組成物は、D-システノール酸抽出物を有効量で含有し、例えば、単回投与量として約2mg/体重kgから約200mg/体重kgの範囲内で含有することが可能である。また、その投与は、1日当たりの投与量を1回で投与することも可能であるし、または数回に分割する方法で投与することも可能である。厳密な用量は、投与様式、投与薬の剤形、治療する対象の症状および体重等によって広範に変化し得るので、責任のある医師若しくは獣医師の経験と選択によって決定されるが、過度の摂取が無い限り、副作用は少なく、民間療法として適用可能であり、投与経路としては経口が好ましい。
【0034】
典型的な組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせた、本発明の活性成分を含む。医薬組成物の製造においては、該アオサエキスを、薬学的に使用可能な賦形剤および補助剤を含む担体と含有することが可能であり、それ自身公知の方法、例えば、慣用的な混合、穎粒化、糖衣形成、溶解または凍結乾燥工程のような方法で製造できる。例えば、該活性抽出物は、通常担体と混合し、担体により希釈し、または担体内に封入することができる。これらはアンプル、カプセル、紙またはその他の容器中に加えることができる。希釈剤として担体を用いるときは、その担体は、該活性抽出物のための媒体、賦形剤または媒介物となり得るような固体、半固体または液体材料等が当てはまる。適切な担体として、水、塩溶液、ポリエチレングリコール、アルコール、ひまし油、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、珪酸、脂肪酸モノグリセライドおよびジグリセライド、ペンダエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース並びにポリビニルピロリジン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0035】
薬学的製剤は、滅菌することができ、また所望とあれば、本発明の活性抽出物と無害に混合できるものである限り、如何なる補助剤、浸透圧調整用塩、乳化剤、緩衝液および/または着色剤等と共に混合することができる。経口剤に使用可能な薬学的製剤は、薬学的に経口剤として許容される限り、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、軟カプセル、糖衣錠、溶液、懸濁液、シロップ等の如何なるものも可能である。
【0036】
[アオサエキスを含む機能性食品]
以下に、本発明の食品への適用について説明する。
【0037】
本発明のアオサエキスは、中性脂肪等の抑制効果を有する添加剤として、如何なる種類、また如何なる形状の食品にも含ませることも可能である。該添加物を添加することにより、様々な食品を健康食品、保健食品、栄養強化食品等として使用することを可能にする。
【0038】
本発明の食品は、アオサエキスを、該活性化成分を含有しない食品(または少量含有する食品)に補うことにより、本発明の食品を摂取した健康な対象(ヒト)において、中性脂肪等の生成を抑制することによって健康を恒常的に維持することに寄与する。例えば、生活習慣病とされる高脂血症、動脈硬化、虚血性疾患等に関連する疾患を食品として穏やかに予防し、それにより健康の維持と体調の改善に寄与することが可能である。また、例えば、高脂血症、動脈硬化、虚血性疾患等に関連する疾患を罹患する対象が、本発明の食品を摂取すれば、中性脂肪の生成を抑制することにより、医師により施される医療効果や、民間療法での治療効果を補助することも可能であろう。本発明の食品には、アオサエキスを食品として相応しい有効量で添加することが適切である。当業者に周知のことであるように、前記罹患の対象に与える場合の本発明は、該疾患に悪影響を与えない組成にする必要がある。
【0039】
アオサエキスを添加することが可能な食品には、豆類、麦類、米類、澱粉、小麦粉、砂糖、澱粉、糖、パン類、菓子類、麺類、食用油、乳製品(チーズ、バター、アイスクリーム、乳酸菌製品等)、豆製品、園芸加工品(ジャム、缶詰、乾燥果実、果実飲料等)、清涼飲料、発酵食品類(酒類、食酢、ソース、味噌、醤油、納豆、漬物等)、肉製品類(べーコン、ソーセージ、ハム、缶詰類)、水産食品類、卵製品、各種冷凍食品類、乾燥食品類、レトルト食品類、インスタント食品類等が例に挙げられ、また、調味料類、酵素製品類等に添加することも可能であるが、これらに限られるものではない。また、前記の食品への添加の方法は、当業者に公知の如何なる方法によっても可能である。
【0040】
[アオサエキスを含む機能性飼料]
以下に本発明の飼料への適用について説明する。
【0041】
本発明のアオサエキスを添加することが可能な飼料には、アオサエキスを、該活性化成分を含有しない飼料(または少量含有する飼料)に補うことにより、本発明の飼料を摂取した健康な対象において、中性脂肪等を抑制することによって健康を恒常的に維持することに寄与する。例えば、ペットなどの生活習慣病とされる高脂血症、動脈硬化、虚血性疾患、肥満等に関連する疾患を飼料として穏やかに予防し、それにより健康の維持と体調の改善に寄与することが可能である。また、例えば、高脂血症、動脈硬化、虚血性疾患、肥満等に関連する疾患を罹患する対象が、本発明の飼料添加剤を摂取すれば、中性脂肪の生成や肥満等を抑制することにより、獣医師により施される医療効果や、民間療法での治療効果を補助することも可能であろう。本発明の飼料添加剤には、アオサエキスを飼料として相応しい有効量で添加することが適切である。当業者に周知のことであるように、前記罹患の対象に与える場合の本発明は、該疾患に悪影響を与えない組成にする必要がある。
【0042】
アオサエキスを添加することが可能な飼料には、植物系の豆類、麦類、米類、トウモロコシ、菜種等が例に挙げられ、また、肉エキス、魚粉等の動物系飼料にも添加することも可能であるが、これらに限られるものではない。また、前記の飼料への添加の方法は、当業者に公知の如何なる方法によっても可能である。
D-システノール酸抽出物(アオサエキス)の配合に関する適用は、養鶏、養豚等の家畜や、養殖魚、それに犬、猫などのペット用にも適用することができる。
【0043】
【実施例】
次に本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0044】
(1)アオサ抽出物の製造の一例
横浜市金沢区八景島付近から入手したアオサMH1−ATRC−1株を水洗し、泥や、タバコの吸い殻、木の枝、貝殻等の異物を除去した後、50℃、送風機下で風乾させた。
【0045】
このアオサの乾燥物を粉砕機にて、約5mmに粉砕し、アオサの粉末を得た。このアオサ乾燥粉末に水を加え(アオサ重量比:水=1:6)、図2に示す超臨界抽出装置によるD-システノール酸抽出に供した。
【0046】
超臨界抽出は以下の条件で行った。即ち、このアオサ乾燥粉末1重量部に対して、水を6倍重量部加え、次に、液状化二酸化炭素をアオサ重量比50倍になるよう添加し、圧力200kg/cm2、温度40℃にて平衡化後、液状化二酸化炭素を1時間流通させ、抽出物を得た。
【0047】
次に、得られた超臨界抽出物におけるD-システノール酸の純度の評価はニンヒドリン発色によるHPLCアミノ酸分析によって行った。
【0048】
その結果、D-システノール酸は重量比(乾燥比)で1.2%になり、従来の熱水抽出による抽出重量比0.6%に比べ、アオサ粉末から効率的にD-システノール酸を高濃度に含むアオサエキスを製造することができた。
【0049】
また、上記と同様の操作で水の添加比を8倍にして、液状化二酸化炭素をアオサ重量比50倍になるよう加え、圧力200kg/cm2、温度40℃にて平衡化後、液状化二酸化炭素1時間流通させた操作においてもニンヒドリン発色性を示す抽出物を得ることができ、その抽出物中のD-システノール酸は重量比で1.2%になった。
【0050】
なお、このアオサ乾燥粉末1重量部に水を4倍重量部添加し、液状化二酸化炭素をアオサ重量比50倍加え、圧力200kg/cm2、温度40℃にて平衡化後、液状化二酸化炭素を1時間流通させた場合は、D-システノール酸抽出物を得ることができなかった。
【0051】
上記検証から、アオサ乾燥粉末に適量の水を加えた後、液状化二酸化炭素を溶媒とする超臨界抽出操作によって、初めてD-システノール酸が高濃度で抽出できることが明らかとなった。また、上述の処理によれば、抽出終了後に減圧することで、溶剤である二酸化炭素はガス化して抽出物から除去したので、臭いなどから判断すると特段の問題となる残留物も観察されなかった。
【0052】
(2)健康飲料への配合例
アオサ由来のD-システノール酸抽出物(アオサエキス)の配合は、抽出したアオサエキスを半透明な飲料(市販品)に混合した。混合比は乾燥物換算で添加濃度は1%(重量比)とした。
【0053】
上記ケースの混合形態において、ヒトが違和感なく、容易に飲むことが可能であり、アオサエキスを容易に摂取することが明らかとなった。
【0054】
(3)医薬品への配合例
アオサ由来のD-システノール酸抽出物(アオサエキス)の配合は、抽出したアオサエキスを黄褐色の医薬用飲料(市販品)に混合した。混合比は乾燥物換算で添加濃度は1.5%(重量比)とした。
【0055】
上記ケースの混合形態において、ヒトが違和感なく、容易に飲むことが可能であった。これにより中性脂肪抑制等の効果発現のため、アオサエキスを容易に摂取することが可能であった。
【0056】
(4)飼料への配合例
アオサ由来のD-システノール酸抽出物(アオサエキス)の配合は、抽出したアオサエキスを養鶏用配合飼料(市販品:組成比:穀類62%、植物性油粕19%、動物性飼料8%、そうこう類2%、その他9%)に混合した。混合比は乾燥物換算で添加濃度は1%(重量比)とした。
【0057】
上記ケースの混合形態において、鶏がこのアオサエキス入りの配合飼料を通常の配合飼料と変わりなく摂取することが観察され、アオサエキスが飼料に適用することが可能であった。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、乾燥、粉末化したアオサなどのD-システノール酸を含む海藻を原料に、添加物として水を加えた後、二酸化炭素を溶媒とし、超臨界抽出することで、D-システノール酸を高濃度に含む海藻エキスの抽出、即ち、抽出と濃縮が一つの操作で可能となった。さらに、このD-システノール酸を含む海藻エキスは、健康食品、医薬品、飼料への添加が可能で、添加する対象物によって、これまで明らかにした中性脂肪等物の低減効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るD-システノール酸抽出物の製造方法の各工程を示すフローチャート。
【図2】 液状化二酸化炭素を抽出溶媒として用いて本発明のD-システノール酸抽出物を製造する際に使用される超臨界抽出装置の一例を示す図。
Claims (8)
- D-システノール酸を含有する粉砕状態にある乾燥海藻に水を海藻重量比4.5〜8倍に加えた原料を、超臨界状態にある二酸化炭素を用いて抽出することを特徴とするD-システノール酸抽出物の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法により製造される海藻由来のD-システノール酸抽出物。
- 請求項1記載の製造方法により製造される海藻由来のD-システノール酸抽出物を活性成分として含むことを特徴とする機能性食品。
- 請求項1記載の製造方法により製造される海藻由来のD-システノール酸抽出物を活性成分として含むことを特徴とする機能性飼料。
- 請求項1記載の製造方法により製造される海藻由来のD-システノール酸抽出物を活性成分として含むことを特徴とする医薬組成物。
- D-システノール酸を含有する粉砕状態にある乾燥海藻に水を海藻重量比4.5〜8倍に加えた原料を、超臨界状態にある二酸化炭素を用いて抽出する工程と、前記工程により得られたD-システノール酸抽出物を機能性食品に加工または添加する工程とを具備することを特徴とする機能性食品の製造方法。
- D-システノール酸を含有する粉砕状態にある乾燥海藻に水を海藻重量比4.5〜8倍に加えた原料を、超臨界状態にある二酸化炭素を用いて抽出する工程と、前記工程により得られたD-システノール酸抽出物を機能性飼料に加工または添加する工程とを具備することを特徴とする機能性飼料の製造方法。
- D-システノール酸を含有する粉砕状態にある乾燥海藻に水を海藻重量比4.5〜8倍に加えた原料を、超臨界状態にある二酸化炭素を用いて抽出する工程と、前記工程により得られたD-システノール酸抽出物を医薬品に加工または添加する工程とを具備することを特徴とする医薬組成物の製造方法。
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