JP3844314B2 - ポリエチレン系樹脂成形材料及びフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温での衝撃強度および突き刺し強度に優れ、また脱気ボイル性が良好で高温殺菌が可能な、特に食品包装用フィルムに好適なポリエチレン樹脂組成物および該組成物からなるフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品包装フィルムは、衛生上の観点に加えて、商品パッケージ、貯蔵、輸送、および加熱ないし冷却処理に付したときなどに問題が生じないように、一定の品質が要求されている。その要求される品質としては、具体的には主に以下の4点を挙げることができる。
【0003】
第1は、脱気ボイル性あるいは耐熱性である。すなわち、加工肉等の固体状の商品は、包装用フィルムにより形成された袋に収容した後、通常、食品の腐食等を防止するため酸素除去を目的として脱気し、かつ食品の保存期間を延ばして長期保存を可能にするためフィルム内を真空にすることが行われるが、このような脱気・真空処理の後に、さらに包装した食品の殺菌を目的として、高温で煮沸する場合がある。その際、フィルムの最内層の面同士が高温により融着すると、中の食品を取り出すことができなくなり、また、袋の形状がつぶれる等の問題が生じることから、脱気・真空後の高温処理によりフィルム同士の融着が生じない性質、すなわち脱気ボイル性(耐熱性)を備えた食品包装フィルムが望まれている。
【0004】
第2は、耐衝撃性である。すなわち、例えば袋詰めされた食品を冷凍保存して輸送した場合に、フィルムが衝撃に弱い場合は、輸送中に袋同士の衝突や衝撃によって破袋し食品が損傷する等の問題が生じることから、そのような衝撃による破袋が生じない性質(耐衝撃性)、特に低温(例えば冷凍保存温度)での耐衝撃性に優れた食品包装フィルムが望まれている。
【0005】
第3は、耐突き刺し性である。すなわち、食品の中には水産品も多く、包装フィルムが尖鋭なものの突き刺しに対して弱い場合は、例えばカニやエビ等のハサミの先端や突起部分でフィルムが破袋する等の問題が生じる恐れがあることから、かかる突き刺しに対する耐性(耐突き刺し性)に優れた食品包装フィルムが望まれる。特に低温になると、突き刺しに対する耐性が低下する傾向にあることから、特に低温(例えば冷凍保存温度)での耐突き刺し性に優れたフィルムが望まれる。
【0006】
第4は、ヒートシール性、特に低温ヒートシール性である。従来のフィルムは十分なシール強度を得るために比較的高温でヒートシールする必要があるが、高温でシールすると、フィルムの収縮などにより外観的に満足する包装品が得られない。一方、かかる外観上の観点からヒートシール温度を下げると、シール強度が不十分となりシール面から破袋するといった問題が起こることがある。したがって、このような従来のフィルムではシール温度の調整が難しく、このため低温でヒートシールした場合でも十分なシール強度が得られる性質(低温ヒートシール性)を有する包装フィルムが望まれている。
【0007】
しかしながら、従来の技術では、例えば脱気ボイル性、すなわち耐熱性を向上させると、低温でのヒートシール性が低下するなど、上述した脱気ボイル性、耐衝撃性、耐突き刺し性、及び低温ヒートシール性のすべてを同時に向上させることは容易ではなく、これらの性質について全て満足しうる包装フィルムは未だ得られていなかった。
【0008】
食品包装フィルムは、単層のフィルムからなるものもあるが、基材にポリアミド、ポリエステル、プロピレン系重合体等のフィルムを用い、最内層にポリエチレン系樹脂フィルムを用いた3種3層、3種5層、4種5層等の構造をとる多層フィルムが一般的に使用されている。特に、かかる多層フィルムにおける最内層には、近年、脱気ボイル性や低温ヒートシール性が良好な線状低密度ポリエチレン(以下、単に「LLDPE」と略記する)が用いられている。
【0009】
しかしながら、このような最内層にLLDPEを用いた多層フィルムは、脱気ボイル性や低温ヒートシール性においては優れているものの、低温での耐衝撃性および耐突き刺し性に関しては必ずしも十分満足できるものではない。このため、冷凍保存・輸送時のフィルム破壊や穴あき等の問題が発生しやすい傾向にある。よって、少なくとも従来のLLDPEと同等以上の低温ヒートシール性を有し、かつ低温での耐衝撃性および耐突き刺し性が―層向上した包装フィルムの開発が必要とされている。
【0010】
このように、最内層にLLDPEを用いた多層フィルムでも、上述した脱気ボイル性、耐衝撃性、耐突き刺し性、及び低温ヒートシール性のすべてにおいて優れたものは未だに得られていないのが現状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、脱気ボイル性が良好で高温殺菌が可能であり、また低温での耐衝撃性及び耐突き刺し性に優れ、かつ低温ヒートシール性が良好なフィルムを形成しうる樹脂成形材料、及びかかる成形材料からなるフィルム、特に食品包装フィルムを提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定の性状を有する低結晶成分と高結晶成分からなるエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体を主成分とするポリエチレン系樹脂成形材料を用いることにより、食品包装用として優れた物性を有するフィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明のポリエチレン系樹脂成形材料は、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体を主成分とするポリエチレン系樹脂成形材料であって、前記共重合体が、担持または非担持メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物の組み合わせに基づく触媒を用いて製造される温度上昇溶離分別による溶出曲線における溶出ピーク温度が80℃以下の低結晶エチレン共重合体成分と、温度上昇溶離分別による溶出曲線における溶出ピーク温度が81℃以上の高結晶エチレン共重合体成分とを配合してなるものであり、かつ前記成形材料が下記(1)〜(6)に示す条件をすべて満たすことを特徴とする。
【0014】
(1)前記ポリエチレン系樹脂成形材料の温度上昇溶離分別による溶出曲線において、低結晶エチレン共重合体成分の溶出ピーク温度が60〜80℃の範囲にある。
【0015】
(2)前記ポリエチレン系樹脂成形材料の温度上昇溶離分別による溶出曲線において、低結晶エチレン共重合体成分の溶出ピーク温度におけるピーク分子量《Mw》Aと、高結晶エチレン共重合体成分の溶出ピーク温度におけるピーク分子量《Mw》Bとの関係が、下記式(I)を満たす。
【0016】
【数2】
《Mw》A>《Mw》B ・・・(I)
【0017】
(3)前記ポリエチレン系樹脂成形材料の温度上昇溶離分別による溶出曲線において、低結晶エチレン共重合体成分のピークの高さをHとし、低結晶エチレン共重合体成分のピークと高結晶エチレン共重合体成分のピークとの間の最小谷間の高さをMとしたとき、H/Mの値が9以上である。
【0018】
(4)前記ポリエチレン系樹脂成形材料の温度上昇溶離分別による溶出曲線の全面積に対する低結晶エチレン共重合体成分の溶出ピーク温度以下の面積割合が35%以上である。
(5)前記成形材料のJIS−K7210に準拠して測定したMFRが0.8〜10g/10分である。
(6)前記成形材料の密度が0.912〜0.93g/cm3である。
【0019】
また、本発明のフィルムは、前記ポリエチレン系樹脂成形材料からなる層を少なくとも有することを特徴とする。
好ましくは、本発明のフィルムは、前記ポリエチレン系樹脂成形材料からなる層と、ポリアミド、ポリエステル及びプロピレン系重合体からなる群から選ばれる樹脂材料からなる層とを含む多層フィルムである。
【0020】
また、好ましくは、本発明のフィルムは食品包装フィルム、特に高温殺菌用食品包装フィルムである。
【0021】
本発明によれば、低温での衝撃強度および突き刺し強度に優れ、低温ヒートシール性も優れ、また脱気ボイル性が良好で高温殺菌が可能な、特に食品包装に好適なフィルムを得ることができる。
【0022】
さらに、本発明によるポリエチレン系樹脂成形材料をフィルム状にした層と基材層とからなる多層フィルムとして用いれば、剛性等の面からも食品包装フィルムとして―段と優れた機能を発揮する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
1.ポリエチレン系樹脂成形材料
本発明のポリエチレン系樹脂成形材料は、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体(以下、単に「本発明のエチレン共重合体」ということがある)であって、低結晶成分と高結晶成分とからなるものを主成分とする。
【0024】
ここで、低結晶成分と高結晶成分とからなるエチレン共重合体とは、同じ共重合体中の共重合成分として低結晶成分と高結晶成分とを含む形態をとるものであってもよく、また低結晶成分からなる低結晶エチレン共重合体と高結晶成分からなる高結晶エチレン共重合体との混合物の形態をとっていてもよい。さらに、共重合成分として低結晶成分と高結晶成分とを含むエチレン共重合体と、低結晶エチレン共重合体及び/又は高結晶エチレン共重合体との混合物の形態をとっていてもよい。
【0025】
なお、ここでいう「低結晶成分」とは、温度上昇溶離分別による溶出曲線における溶出ピーク温度が80℃以下、より好ましくは40〜80℃の範囲にある成分をいう。また、「高結晶成分」とは、温度上昇溶離分別による溶出曲線における溶出ピーク温度が81℃以上、より好ましくは81〜105℃の範囲にある成分をいう。
【0026】
したがって、本発明のエチレン共重合体としては、単独のエチレン・α−オレフィン共重合体からなるものであってもよく、また複数のエチレン・α−オレフィン共重合体の混合物からなるものであってもよい。
【0027】
本発明のエチレン共重合体のコモノマーとして用いられるα−オレフィンは、炭素数3〜18の1−オレフィン、好ましくは炭素数3〜12の1−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−へプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。
【0028】
本発明のエチレン共重合体においてコモノマーとして含まれるα−オレフィンは1種類に限られない。ターポリマーのようにコモノマーを2種類以上用いた多元系共重合体も、本発明のエチレン共重合体の好ましいものとして挙げられる。
【0029】
本発明のエチレン共重合体を構成するモノマー単位中、エチレン単位は全体の97〜70重量%であり、炭素数3〜18のα−オレフィンは3〜30重量%であるのが好ましい。
【0030】
本発明のエチレン共重合体の製造方法については、触媒や重合方法など特に制約はない。触媒としては、例えば、チーグラー型触媒(すなわち、担持または非担持ハロゲン含有チタン化合物と有機アルミニウム化合物の組み合わせに基づくもの)、フィリップス型触媒(すなわち、担持酸化クロム(Cr6+)に基づくもの)、カミンスキー型触媒(すなわち、担持または非担持メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物、特にアルモキサンの組み合わせに基づくもの)が挙げられる。
【0031】
重合方法としては、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法(例えば、特開昭59ー23011号公報に記載の方法)や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm2以上、重合温度が130℃以上での高圧バルク重合法等が挙げられる。
【0032】
低結晶成分と高結晶成分とからなるエチレン共重合体を製造する方法については、例えば1つの反応槽で低結晶成分と高結晶成分を同時に形成させて低結晶成分と高結晶成分とからなるエチレン共重合体を製造する方法、2以上の反応槽を連結させて各槽で各々の成分を重合するようにして、多段重合により段階的に低結晶成分と高結晶成分とからなるエチレン共重合体を製造する方法、低結晶エチレン共重合体と高結晶エチレン共重合体とを別々に製造した後、両者を通常の樹脂組成物の製造方法と同様の方法に従って配合することによって製造する方法等を挙げることができる。
【0033】
別々に製造した低結晶エチレン共重合体と高結晶エチレン共重合体とを配合する方法としては、具体的には、低結晶エチレン共重合体と高結晶エチレン共重合体とを前もってドライブレンドし、そのままフィルム成形機のホッパーに投入して溶融混練しつつ成形することとしてもよく、また、押出機、ブラべンダープラストグラフ、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー等を用いて溶融混練し、通常用いられている方法でペレット状とした後フィルムを製造することとしてもよい。
【0034】
なお、本発明の低結晶成分は、結晶性において比較的狭い組成分布を有するものが望ましいので、低結晶エチレン共重合体を製造する場合は特にカミンスキー型触媒を用いることが好ましい。高結晶成分においても結晶性に関し比較的狭い組成分布を有するものが望ましいが、高結晶側では特に触媒差は見られないので、触媒に制約はない。
【0035】
本発明のポリエチレン系樹脂成形材料は上述したエチレン共重合体を主成分とするが、その他に、―般に成形用樹脂材料に用いられている補助添加成分、例えば、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、着色剤及び/又は接着剤等が配合されていてもよい。酸化防止剤としては、フェノール系およびリン系酸化防止剤が好ましい。
【0036】
別々に製造した低結晶エチレン共重合体と高結晶エチレン共重合体を配合する場合は、混合前、混合途中、あるいは混合後に、低結晶エチレン共重合体及び高結晶エチレン共重合体のいずれか一方、あるいは両方に上記補助添加成分を配合することができる。
【0037】
また、本発明のポリエチレン系樹脂成形材料には、低結晶成分と高結晶成分とからなるエチレン共重合体の総重量に対して、本発明の効果が損なわれない程度で、他のポリエチレン系樹脂材料、例えば高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等を5〜30重量%程度配合することもできる。
【0038】
本発明のポリエチレン系樹脂成形材料は、上述したエチレン共重合体を主成分とし、かつ下記(1)〜(6)に記載した条件をすべて満たすことを特徴とする。
【0039】
(1)温度上昇溶離分別(以下、「TREF」と略す)による溶出曲線において、低結晶成分の溶出ピーク温度が60〜80℃を示す。前記溶出ピーク温度が上記範囲より大きいと、低温ヒートシール性、透明性、耐衝撃性(衝撃強度)が悪化するので好ましくない。また、前記溶出ピーク温度が上記範囲より小さいと、脱気ボイル性(耐熱性)が悪化したり、フィルム表面にべたつきが生じるので好ましくない。
【0040】
ここで、本発明における温度上昇溶離分別(TREF)による溶出曲線とは、測定対象となる試料(ポリマー)を―度高温にて完全に溶解させた後に、ガラスビーズ等の不活性担体の存在下に冷却し、該不活性担体表面に析出させて薄いポリマー層を生成させ、次いで、温度を連続または段階的に昇温して各温度(溶出温度)で溶出した成分を回収し、溶出温度と各溶出温度での溶出量とによって描かれるグラフであり、ポリマーの組成分布(結晶性の分布)を表す。
【0041】
すなわち、本発明のポリエチレン系樹脂成形材料の主成分であるエチレン共重合体は、低結晶成分と高結晶成分とからなるものであり、前記TREFによる溶出曲線を求めた場合に、該溶出曲線中に低結晶成分の溶出ピークと高結晶成分の溶出ピークとが明瞭に存在し、両ピークの間に谷間部分が認められることを特徴とする。
【0042】
(2)低結晶成分のTREFによる溶出ピーク温度におけるピーク分子量《Mw》Aと、高結晶成分のTREFによる溶出ピーク温度におけるピーク分子量《Mw》Bとの関係が、下記式(I)を満たす。なお、ピーク分子量は、溶出ピーク温度における溶出成分の分子量である。
【0043】
【数3】
《Mw》A>《Mw》B ・・・(I)
【0044】
上記の関係を満たさない場合は、フィルム状にしたとき、耐衝撃性および耐突き刺し性(突き刺し強度)が低下するので好ましくない。
【0045】
(3)TREFによる溶出曲線において、低結晶成分のピークの高さをHとし、低結晶成分のピークと高結晶成分のピークとの間の最小谷間の高さをMとしたとき、H/Mの値が9以上、好ましくは9〜50である。H/Mの値が9より小さいと、耐衝撃性及び耐突き刺し性が低下するので好ましくない。
【0046】
(4)TREFによる溶出曲線の全面積に対する低結晶成分の溶出ピーク温度以下の面積割合が35%以上、好ましくは40〜70%である。上記の値が35%より小さいと、低温ヒートシール性、衝撃強度、突き刺し強度、透明性が悪化するので好ましくない。
【0047】
(5)ポリエチレン系樹脂成形材料のJIS−K7210によるMFR(メルトフローレート:溶融流量)が0.8〜10g/10分である。該MFRが上記範囲より大きいと、脱気ボイル性(耐熱性)及びフィルム強度が低下し、フィルムの成膜が不安定となる。また、該MFRが上記範囲より小さいと、成形時に必要な樹脂圧力が高くなり、押し出し性が低下するので好ましくない。
【0048】
(6)ポリエチレン系樹脂成形材料のJIS−K7112による密度が0.912〜0.93g/cm3である。該密度が上記範囲より大きいと、低温ヒートシール性、耐衝撃性、耐突き刺し性および透明性が不良となる。また、該密度が小さすぎると、耐熱性が悪化し、脱気ボイルできなくなるので好ましくない。
【0049】
2.本発明のフィルム
本発明のフィルムは、上述したポリエチレン系樹脂成形材料からなる層を少なくとも有する。かかるフィルムは、前記ポリエチレン系樹脂成形材料からなる層のみからなる単層フィルムであってもよく、また前記ポリエチレン系樹脂成形材料からなる層と他の樹脂材料からなる層とを積層構造中に含む多層フィルムであってもよい。
【0050】
特に好ましくは、食品等の包装フィルムであって、被包装物品と接触する最内層となる層(以下、単に「最内層」という)を上記ポリエチレン系樹脂成形材料により構成し、フィルムの基材層を該ポリエチレン系樹脂成形材料以外の樹脂材料により構成した包装用の多層フィルムが挙げられる。
【0051】
かかる多層フィルムには、本発明のポリエチレン系樹脂材料からなる層(以下、単に「ポリエチレン系樹脂層」という)と基材層と各1層ずつからなるものの他に、上記両層いずれか一方あるいは両方が複数存在するもの、前記ポリエチレン系樹脂層と基材層とこれら両層以外であって目的に応じて適宜設けられる層ならびに部材とからなるもの等が含まれる。すなわち、包装フィルムの層構成は基本的にはどのような構成になっていても良いが、例えば、ポリエチレン系樹脂層を最内層(被包装物品との接触層)として用いた場合、ポリエチレン系樹脂層(最内層)/基材層、ポリエチレン系樹脂層(最内層)/基材層/基材層、ポリエチレン系樹脂層(最内層)/基材層/ポリエチレン系樹脂層等の層構成が考えられる。
【0052】
ポリエチレン系樹脂層の厚みは特に限定されないが、単層フィルムの場合は好ましくは30〜90μm程度であり、多層フィルムの場合は、一層の厚みとして20〜60μm程度である。また、基材層を設ける場合は、基材層の厚みは特に限定されないが、好ましくは10〜40μm程度である。
【0053】
なお、本発明の目的が達成される限りにおいて、前記ポリエチレン系樹脂層および基材層あるいはこれ以外の層ならびに部材は、本発明のフィルム全面に設けられている必要はない。従って本発明のフィルムには、そのような前記ポリエチレン系樹脂層および基材層あるいはこれ以外の層ならびに部材からなる構造が、フィルムの全面のみならず、一部のみを構成するものも含まれる。
【0054】
基材層の材質は、この種の包装フィルムに用いられているものの中から、目的に応じて任意のものを採用することができる。例えば、本発明では、ポリアミド、ポリエステル及びプロピレン重合体からなる群から選ばれる樹脂材料を用いることが好ましい。これら3種の樹脂材料の中から選択する樹脂材料は1種類のみであってもよく、また2種類もしくは3種類を選択し、複合的に積層することも可能である。
【0055】
具体的には、ポリアミドとしては、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン12、ナイロン610等が挙げられ、ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられ、プロピレン重合体としては、例えばポリプロピレン、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。
【0056】
本発明のフィルムが、前記ポリエチレン系樹脂成形材料からなる層のみにより構成される単層フィルムの場合、該フィルムの成形は、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション法、Tダイフィルム成形、水冷インフレーション成形等を採用することができる。
【0057】
また、ポリエチレン系樹脂層と基材層とを積層して多層フィルムを製造する方法としては、目的に応じて任意の方法を採用することができるが、従来の多層フィルムの成形方法に従って、例えば、各層をあらかじめ別々にフィルム状に形成した後それらを接着させて積層する方法、及び、押出法によって各層の形成および積層を同―工程で行う方法等がある。
【0058】
前者の各層をあらかじめ別々にフィルム状に形成する場合において、該フィルムの成形は、単層フィルムを成形する場合と同様に、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション法、Tダイフィルム成形、水冷インフレーション成形等を採用することができる。また、後者の押出法においては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出し法(接着層を設けない共押出し、接着層を設ける共押出し、接着樹脂を配合する共押出し等を含む)等の方法がある。本発明では、いずれの方法によっても各種の多層フィルムを得ることができる。
【0059】
本発明のフィルムの好ましい形態の一つとして、上述したポリエチレン系樹脂層とポリアミド、ポリエステル及びプロピレン重合体からなる群から選ばれる樹脂材料により構成される基材層とを積層して得られる多層フィルムが挙げられ、これは包装フィルムとして好適に用いることができる。本発明のポリエチレン系樹脂成形材料からなるポリエチレン系樹脂層は、単層フィルムとした場合でも十分本発明の効果を活かした包装フィルムとして用いることができるが、基材層と積層して使うことによって、その性能の特徴を十分発揮した機能性フィルムとすることができ、本発明特有の効果がより優れた形で発現される。
【0060】
本発明のフィルムのより好ましい形態は、上記多層フィルムにおいて、ポリエチレン系樹脂層が被包装物品と接触する面である最内層として設けられている袋状の包装フィルムの形態である。この形態では、ポリエチレン系樹脂層が対向していて、この間でヒートシールが行われているものが代表的である。
【0061】
以上述べたように、本発明のフィルムは、本発明のポリエチレン系樹脂成形材料からなる層を有するものであり、低温での耐衝撃性及び耐突き刺し性に優れ、また、脱気ボイル性が良好で高温殺菌が可能であり、低温ヒートシール性にも優れたフィルムである。このフィルムは、特に食品包装フィルム、就中高温殺菌用(具体的には、例えば95℃以上の高温殺菌処理に適した)食品包装フィルムとして好適に用いられる。
【0062】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。なお、これらの実施例における物性の測定とフィルム物性評価は、以下に示す方法によって実施したものである。
【0063】
1.ポリエチレン系樹脂成形材料の物性評価
(1)溶出曲線の測定
本実施例における溶出曲線の測定は、次のようにして行った。測定装置としてクロス分別装置(三菱化学(株)製、CFC−T150A)を使用し、付属の操作マニュアルの測定法に従って行った。このクロス分別装置は、溶解温度の差を利用して試料を分別する温度上昇溶離分別(TREF)機構と、分別された区分を更に分子サイズで分別するサイズ排除クロマトグラフ(Size Exclusion Chromatography:SEC)とをオンラインで接続した装置である。
【0064】
まず、測定すべきサンプル(ポリエチレン系樹脂成形材料)を、溶媒(O−ジクロロべンゼン)を用いて濃度が4mg/mlとなるように140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入した。以下の測定は、設定条件に従って自動的に行われた。
【0065】
サンプルループ内に保持された試料溶液は、溶解温度の差を利用して分別するTREFカラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された内径4mm、長さ150mmの装置付属のステンレス製カラム)に0.4ml注入された。次に、該サンプルは1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却された。その結果、上記不活性担体に析出したサンプルがコーティングされた。すなわち、このとき不活性担体表面には、高結晶成分(結晶しやすいもの)から低結晶成分(結晶しにくいもの)の順でポリマー層が形成された。
【0066】
TREFカラムを0℃(第1の溶出温度)で更に30分間保持した後、この溶出温度(0℃)で溶解している成分2mlが、1ml/分の流速でTREFカラムからSECカラム(昭和電工社製、AD80M−S:3本)へ注入された。SECで分子サイズでの分別が行われている間に、TREFカラムでは第2の溶出温度(5℃)に昇温され、カラムはその温度にて約30分間保持された。SECでの各溶出区分の測定は39分間隔で行われた。
【0067】
このような要領で、溶出温度が以下に示す温度となるように段階的に昇温された:0℃/5℃/10℃/15℃/20℃/25℃/30℃/35℃/40℃/45℃/49℃/52℃/55℃/58℃/61℃/64℃/67℃/70℃/73℃/76℃/79℃/82℃/85℃/88℃/91℃/94℃/97℃/100℃/102℃/120℃/140℃。
【0068】
一方、SECカラムで分子サイズによって分別された溶液は、装置付属の赤外分光光度計でポリマーの濃度に比例する吸光度が測定され(波長3.42μm、メチレンの伸縮振動で検出)、各溶出温度区分のクロマトグラムが得られた。内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのべースラインを引き、演算処理された。各クロマトグラムの面積が積分され、積分溶出曲線が計算された。また、この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が計算された。計算結果の作図はプリンターに出力された。出力された微分溶出曲線の作図は、横軸に溶出温度を100℃当たり89.3mm、縦軸に微分量(全積分溶出量を1.0に規格し、1℃の変化量を微分量とした)0.1当たり76.5mmで行った。
【0069】
次に、この微分溶出曲線から低結晶側のピークにおける温度を低結晶成分の溶出曲線の溶出ピーク温度とし、また、この微分溶出曲線の低結晶成分側のピーク高さをHとし、低結晶成分のピークと高結晶成分のピークとの間の最小谷間の高さをMとして、H/Mの値を算出した。さらに、上記の積分溶出曲線から、溶出曲線が形成する全面積に対する低結晶成分の溶出ピーク温度以下の面積割合を算出した。
【0070】
次いで、微分溶出曲線から低結晶成分と高結晶成分の溶出ピーク温度を読みとり、SECにより得られたデータから、各成分の溶出ピーク温度におけるピーク分子量を求め、低結晶成分の溶出ピーク温度におけるピーク分子量を《Mw》A、高結晶成分の溶出ピーク温度におけるピーク分子量を《Mw》Bとした。
【0071】
(2)MFRの測定
ポリエチレン系樹脂成形材料のMFRは、JlS−K7210に準拠して測定した(190℃、2.16kg荷重)。
【0072】
(3)密度の測定
ポリエチレン系樹脂成形材料の密度は、JISーK7112に準拠して測定した。
【0073】
2.フィルム物性評価方法
(1)脱気ボイル性の評価
試験フィルム(厚さ40μm)を内面同士で合わせ、1辺100mmとして4方をヒートシールして袋状とした後、一つの角を切ってそこから真空ポンプで袋内を脱気した。次いで切り取った角を即座にヒートシールし、袋内を真空に近い状態にした。このようにして得られたサンプルを、恒温水槽(トーマス化学(株)製、THERMOSTATIC・OIL・BATH−F305)に入れ、各温度の水で15分ボイルした。
【0074】
その後、このサンプルから幅20mm、長さ60mmの短冊を切り出し、180度剥離融着強度を測定した。剥離融着強度が200g未満であれば簡単に剥がれるレべルであるので、剥離融着強度が100g/20mm幅の値のときを脱気ボイル温度とし、この脱気ボイル温度を求めることにより脱気ボイル性を評価した。なお、本評価は同一サンプルにつき3回ずつ行い、その平均値を脱気ボイル温度とした。
【0075】
(2)ヒートシール性の評価
15mm幅に裁断した試験フィルム(厚さ40μm)を2枚重ね、東洋精機製熱盤式ヒートシーラーにて、80℃から5℃間隔でシール圧力:2kg/cm2、シール時間:1秒、の条件でヒートシールし、引張試験機にて引張速度:500mm/分の速度で引っ張り、ヒートシール部の強度を測定した。ヒートシール部の強度が0.5kg/15mm幅を得られる温度を0.5kgヒートシール温度とし、これによりヒートシール性を評価した。
【0076】
(3)耐衝撃性の評価(−20℃打抜衝撃強度の測定)
(株)東洋精機製作所製フィルムインパクトテスター(FILM・IMPACT・TESTER:以下、単に「試験機」という)を用い、単位フィルム厚み当たりの貫通破壊に要した仕事量を測定した。具体的には、試験フィルム(厚さ40μm)と試験機を−20℃の冷凍庫内で約1日保存し、状態調節を行った後、−20℃の冷凍庫内で、試験機に試験フィルムを直径50mmのホルダーにて固定し、13.0mmの半球型金属を試験フィルムの内層面から貫通部で打撃させ、貫通破壊に要した仕事量を測定した。その時、荷重は除去し、最大目盛り(仕事量)が30kg・cmとなるようにした。そして、仕事量をフィルム厚みで除した値を、打抜衝撃強度値とした。
【0077】
(4)耐突き刺し性の評価(−20℃突き刺し強度の測定)
厚さ40μmのフィルムを試験片として島津製作所(株)製オートグラフDCS2000に円錐形の治具(先端角度;0.25R、底辺径;15.6mm、高さ;18.5mm)を取り付け、雰囲気を−20℃にした後、円錐形の治具を500mm/分の速度でフィルムに突き刺した。フィルムが破れたときの最大強度を突き刺し強度として耐突き刺し性を評価した。
【0078】
【実施例1】
(1)低結晶成分(成分A)の製造
触媒の調製は、特開昭61−130314号公報に記載された方法で実施した。すなわち、錯体エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド2.0mmolに、東洋ストウファー社製メチルアルモキサンを上記錯体に対し1000モル倍加え、トルエンで10リットルに希釈して、触媒溶液を調製し、以下の方法で重合を行った。
【0079】
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器に、エチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−へキセンの組成が75重量%となるように供給し、反応器内の圧力を1300kg/cm2に保ち、140℃の温度で反応を行った。反応終了後、TREFによるピーク分子量《Mw》Aが92000、溶出曲線の溶出ピーク温度が71℃であるエチレン・1−へキセン共重合体を得た。これを低結晶成分からなるエチレン共重合体(成分A)として用いた。
【0080】
(2)ポリエチレン系樹脂成形材料の調製
高結晶成分(成分B)として、日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HE580」(エチレンと1−ブテンとの共重合体、TREFによるピーク分子量《Mw》B:32000)を用い、(1)で得たエチレン・1−ヘキセン共重合体(成分A)と、配合比が成分A:成分B=70:30(重量比)となるようにブレンドし、40mmφ単軸押出機で190℃の温度にて溶融・混練してペレット状とし、低結晶成分(成分A)と高結晶成分(成分B)とからなるエチレン・1−ヘキセンとエチレン・1−ブテン共重合体との混合物を得た。
【0081】
得られた混合物は、低結晶成分(成分A)のピーク分子量《Mw》A;92000、TREFによる低結晶成分の溶出曲線の溶出ピーク温度;71℃、TREFによる溶出曲線の全面積に対する低結晶成分の溶出ピーク温度以下の面積割合;44%、高結晶成分(成分B)のピーク分子量《Mw》B;32000、H/M;32、組成物のMFR;1.9g/10分、密度;0.925g/cm3であった。
【0082】
得られた混合物に、フェノール系酸化防止剤(商品名イルガノックス1076:チバガイギー社製)およびリン系酸化防止剤(商品名P−EPQ:サンド社製)、アンチブロッキング剤(商品名ダイカライト・ホワイトフィラー:ラサ商事社製)、スリップ剤(オレイン酸アミド:日本化成(株)製)をドライブレンドにて適量配合し、ポリエチレン系樹脂成形材料を得た。
【0083】
(3)フィルムの成形
上記方法で調製したポリエチレン系樹脂成形材料を用い、以下の条件で水冷単層インフレーション成形を行って単層フィルムを成形した。
【0084】
(成形条件)
機種;水冷インフレーションフィルム成形機(プラコー社製)
スクリュー径;50mmφ
L/D;28
温度;180℃
ダイ径;100mmφ
ダイリップ;3mm
ダイス温度;190℃
ブロー比;1.4
フィルム厚み;40μm
【0085】
得られたフィルムについて、上述した方法により各物性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0086】
【実施例2】
エチレン・1−ヘキセン共重合体の重合時における1−へキセンの組成及び重合温度を変えた以外は、実施例1の(1)記載の方法と同様の方法で触媒調製、重合を行い、エチレン・1−ヘキセン共重合体(低結晶成分A)を得た。
【0087】
得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体(成分A)と日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HE580」(成分B)とを、配合比が成分A:成分B=90:10(重量比)となるように配合し、実施例1と同様の方法でペレット化して、低結晶成分(成分A)のピーク分子量《Mw》A;80000、TREFによる低結晶成分の溶出曲線の溶出ピーク温度;75℃、TREFによる溶出曲線の全面積に対する低結晶成分の溶出ピーク温度以下の面積割合;57%、高結晶成分(成分B)のピーク分子量《Mw》B;32000、H/M;35、組成物のMFR;2.5g/10分、密度;0.919g/cm3の低結晶成分と高結晶成分からなるエチレン・1−へキセンとエチレン・1ーブテン共重合体の混合物を得た。
【0088】
そのペレットを用いて実施例1と同様の方法で水冷インフレーション成形を行い、得られたフィルムの各物性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0089】
【実施例3】
実施例2で用いたエチレン・1ーヘキセン共重合体(成分A)と日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HE580」(成分B)とを、配合比が成分A:成分B=80:20(重量比)となるように配合し、実施例1と同様の方法でペレット化し、低結晶成分(成分A)のピーク分子量《Mw》A;80000、TREFによる低結晶成分の溶出曲線の溶出ピーク温度;75℃、TREFによる溶出曲線の全面積に対する低結晶成分の溶出ピーク温度以下の面積割合;50%、高結晶成分(成分B)のピーク分子量《Mw》B;32000、H/M;35、組成物のMFR;2.9g/10分、密度;0.923g/cm3の低結晶成分と高結晶成分からなるエチレン・1−へキセンとエチレン・1−ブテン共重合体の混合物を得た。
【0090】
そのペレットを用いて実施例1と同様の方法で水冷インフレーション成形を行い、得られたフィルムの各物性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0091】
【比較例1】
エチレン・1−ヘキセン共重合体の重合時における1−へキセンの組成及び重合温度を変えた以外は、実施例1の(1)記載の方法と同様の方法で触媒調製、重合を行い、エチレン・1−ヘキセン共重合体(低結晶成分A)を得た。
【0092】
得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体(成分A)と日本ポリケム(株)製「ノバテックC6・SF941」(エチレン・1−ヘキセン共重合体:成分B)とを、配合比が成分A:成分B=70:30(重量比)となるように配合し、実施例1と同様の方法でペレット化し、低結晶成分(成分A)のピーク分子量《Mw》A;73000、TREFによる低結晶成分の溶出曲線の溶出ピーク温度;81℃、TREFによる溶出曲線の全面積に対する低結晶成分の溶出ピーク温度以下の面積割合;46%、高結晶成分(成分B)のピーク分子量《Mw》B;50000、H/M;14、組成物のMFR;2.7g/10分、密度;0.927g/cm3の低結晶成分と高結晶成分からなるエチレン・1−ヘキセン共重合体を得た。
【0093】
そのペレットを用いて実施例1と同様の方法で水冷インフレーション成形を行い、得られたフィルムの各物性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。このフィルムは、脱気ボイル性は良好であるが、低温ヒートシール性がかなり劣る。
【0094】
【比較例2】
エチレン・1−ヘキセン共重合体の重合時における1−へキセンの組成及び重合温度を変えた以外は、実施例1の(1)記載の方法と同様の方法で触媒調製、重合を行い、エチレン・1−ヘキセン共重合体(低結晶成分A)を得た。
【0095】
得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体(成分A)と日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HE580」(成分B)とを、配合比が成分A:成分B=45:55(重量比)となるように配合し、実施例1と同様の方法でペレット化し、低結晶成分(成分A)のピーク分子量《Mw》A;80000、TREFによる低結晶成分の溶出曲線の溶出ピーク温度;68℃、TREFによる溶出曲線の全面積に対する低結晶成分の溶出ピーク温度以下の面積割合32%、高結晶成分(成分B)のピーク分子量《Mw》B;32000、H/M;24、組成物のMFR;4.0g/10分、密度;0.936g/cm3の低結晶成分と高結晶成分からなるエチレン・1−ヘキセンとエチレン・1−ブテン共重合体の混合物を得た。
【0096】
そのペレットを用いて実施例1と同様の方法で水冷インフレーション成形を行い、得られたフィルムの各物性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。このフィルムは、脱気ボイル性は良好であるが、低温ヒートシール性、−20℃の衝撃強度、−20℃の突き刺し強度がかなり劣る。
【0097】
【比較例3】
エチレン・1−ヘキセン共重合体の重合時における1−へキセンの組成及び重合温度を変えた以外は、実施例1の(1)記載の方法と同様の方法で触媒調製、重合を行い、エチレン・1−ヘキセン共重合体(低結晶成分A)を得た。
【0098】
得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体(成分A)と日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HY330」(成分B)とを、配合比が成分A:成分B=70:30(重量比)となるように配合し、実施例1と同様の方法でペレット化し、低結晶成分(成分A)のピーク分子量《Mw》A;66000、TREFによる低結晶成分の溶出曲線の溶出ピーク温度;74℃、TREFによる溶出曲線の全面積に対する低結晶成分の溶出ピーク温度以下の面積割合;54%、高結晶成分(成分B)のピーク分子量《Mw》B;70000、H/M;34、組成物のMFR;2.2g/10分、密度;0.925g/cm3の低結晶成分と高結晶成分からなるエチレン・1−へキセンとエチレン・1ーブテン共重合体の混合物を得た。
【0099】
そのペレットを用いて実施例1と同様の方法で水冷インフレーション成形を行い、得られたフィルムの各物性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。このフィルムは、脱気ボイル性は良好であるが、−20℃の衝撃強度、−20℃の突き刺し強度が弱く、不十分である。
【0100】
【比較例4】
日本ポリケム(株)製「ノバテックLL・UF422」の物性を測定したところ、低結晶成分(成分A)のピーク分子量《Mw》A;68000、TREFによる低結晶成分の溶出曲線の溶出ピーク温度;77℃、TREFによる溶出曲線の全面積に対する低結晶成分の溶出ピーク温度以下の面積割合;53%、高結晶成分(成分B)のピーク分子量《Mw》B;67000、H/M;1.6、MFR;1.0g/10分、密度;0.927g/cm3の低結晶成分と高結晶成分からなるエチレン・1−ブテン共重合体であった。
【0101】
この材料を用いて実施例1と同様の方法で水冷インフレーション成形を行い、得られたフィルムの各物性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。このフィルムは、脱気ボイル性、低温ヒートシール性は良好であるが、−20℃の衝撃強度、−20℃の突き刺し強度が弱く、不十分である。
【0102】
【表1】
【0103】
【発明の効果】
本発明のポリエチレン系樹脂成形材料は、低温での耐衝撃性、低温での耐突き刺し性、及びヒートシール性に優れ、かつ脱気ボイル性が良好なフィルムを提供することができる。よって、これにより得られるフィルムは、高温処理が可能であり、食品包装フィルム、特に高温殺菌用食品包装フィルムに好適に用いられる。
Claims (6)
- エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体を主成分とするポリエチレン系樹脂成形材料であって、前記共重合体が、担持または非担持メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物の組み合わせに基づく触媒を用いて製造される温度上昇溶離分別による溶出曲線における溶出ピーク温度が80℃以下の低結晶エチレン共重合体成分と、温度上昇溶離分別による溶出曲線における溶出ピーク温度が81℃以上の高結晶エチレン共重合体成分との混合物であり、かつ前記成形材料が下記(1)〜(6)に示す条件をすべて満たすことを特徴とする、ポリエチレン系樹脂成形材料。
(1)前記ポリエチレン系樹脂成形材料の温度上昇溶離分別による溶出曲線において、低結晶エチレン共重合体成分の溶出ピーク温度が60〜80℃の範囲にある。
(2)前記ポリエチレン系樹脂成形材料の温度上昇溶離分別による溶出曲線において、低結晶エチレン共重合体成分の溶出ピーク温度におけるピーク分子量《Mw》Aと、高結晶エチレン共重合体成分の溶出ピーク温度におけるピーク分子量《Mw》Bとの関係が、下記式(I)を満たす。
【数1】
《Mw》A>《Mw》B・・・(I)
(3)前記ポリエチレン系樹脂成形材料の温度上昇溶離分別による溶出曲線において、低結晶エチレン共重合体成分のピークの高さをHとし、低結晶エチレン共重合体成分のピークと高結晶エチレン共重合体成分のピークとの間の最小谷間の高さをMとしたとき、H/Mの値が9以上である。
(4)前記ポリエチレン系樹脂成形材料の温度上昇溶離分別による溶出曲線の全面積に対する低結晶エチレン共重合体成分の溶出ピーク温度以下の面積割合が35%以上である。
(5)前記成形材料のJIS−K7210に準拠して測定したMFRが0.8〜10g/10分である。
(6)前記成形材料の密度が0.912〜0.93g/cm3である。 - 前記低結晶エチレン共重合体成分と高結晶エチレン共重合体成分の混合比が低結晶エチレン共重合体成分:高結晶エチレン共重合体成分=90:10〜70:30(重量比)である、請求項1記載のポリエチレン系樹脂成形材料。
- 請求項1又は2記載のポリエチレン系樹脂成形材料からなる層を少なくとも有することを特徴とするフィルム。
- 前記ポリエチレン系成形材料からなる層と、ポリアミド、ポリエステル及びプロピレン系重合体からなる群から選ばれる樹脂材料からなる層とを含む多層フィルムである、請求項3記載のフィルム。
- 食品包装フィルムである、請求項3又は4記載のフィルム。
- 高温殺菌用食品包装フィルムである、請求項5記載のフィルム。
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