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JP3729317B2 - 急硬性セメントコンクリート及び急結性セメントコンクリート - Google Patents

急硬性セメントコンクリート及び急結性セメントコンクリート Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、急硬性セメントコンクリートの製造方法及び急結性セメントコンクリートの製造方法に関するものである。
なお、本発明でいうセメントコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、及びコンクリートを総称する。
【0002】
【従来の技術】
従来、急硬セメントコンクリートは短時間強度の発現性に優れているので、一般工事、緊急工事、及び止水工事等に使用されている。
一方、山岳トンネル等においては、覆工体を形成すべくセメントコンクリートの打設工事や吹付け工事を行う場合には、当該セメントコンクリートの凝結や硬化を促進させ、強度を早期に発現させる点で、粉体又は液体の急結剤を添加する方法がとられている。
さらに、切羽の外周に沿って形成した掘削溝にセメントコンクリートを充填打設して切羽の前方に覆工体を構築する工法においては、切羽の手前で急硬セメントコンクリートに急結剤を供給することにより、充填打設後に速やかに硬化し、短時間で優れた強度発現性を得ている。
【0003】
そして、例えば、前記の工法を使用する場合、急硬セメントコンクリートの練混ぜから運搬にかかる時間や現場での段取りや打設にかかる作業時間等を考慮すると、少なくとも90分程度の可使時間が必要となってくる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、生コンプラントやコンクリート工場等で製造された急硬セメントコンクリートは、作業時間(可使時間)をコントロールすることが難しく、現場に到着したときには流動性が著しく損なわれてしまうという課題があった。
【0005】
本発明者は種々検討を重ねた結果、特定のスランプ保持材を使用することにより、前記課題が解決できるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、セメント、カルシウムアルミネート、及び無機硫酸塩を含有してなるセメントコンクリートに、アルカリ金属炭酸塩と有機酸類の混合物スラリーであるスランプ保持材を添加する急硬性セメントコンクリートの製造方法であり、アルカリ金属炭酸塩と有機酸類の混合物が、セメント、カルシウムアルミネート、及び無機硫酸塩の合計100重量部に対して0.1〜1.8重量部である該急硬性セメントコンクリートの製造方法であり、スランプ保持材が、スラリー水100重量部に対して、アルカリ金属炭酸塩と有機酸類の混合物1〜95重量部を含有してなる該急硬性セメントコンクリートの製造方法であり、該急硬性セメントコンクリートに、急結剤を添加してなる急結性セメントコンクリートの製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0008】
本発明で使用するカルシウムアルミネートとは、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料とを混合して、キルンでの焼成や、電気炉での溶融等の熱処理をして得られる、CaOとAl23とを主たる成分とし、水和活性を有する物質の総称であり、CaO及び/又はAl23の一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、あるいは、CaOとAl23とを主成分とするものに、これらが少量固溶した物質である。鉱物形態としては、結晶質、非晶質いずれであってもよい。
【0009】
これらの中では、反応活性の点で、12CaO・7Al23(以下C127という)組成に対応する熱処理物を急冷した非晶質カルシウムアルミネートが好ましい。
【0010】
カルシウムアルミネートの粒度は、急結性や初期強度発現性の点で、ブレーン値で4000cm2/g以上が好ましく、5000cm2/g以上がより好ましい。4000cm2/g未満だと急結性や初期強度発現性が低下するおそれがある。
【0011】
本発明で使用する無機硫酸塩としては、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、及び亜硫酸アルミニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。これらの中では、効果が大きい点で、硫酸カルシウムが好ましい。
硫酸カルシウムとしては、石膏が使用できる。これらの中では、II型無水石膏や天然石膏が好ましい。
【0012】
無機硫酸塩の粒度は、ブレーン値で3000cm2/g以上が好ましく、4000〜7000cm2/gがより好ましい。3000cm2/g未満だと初期強度発現性が低下するおそれがある。
【0013】
無機硫酸塩の使用量は、カルシウムアルミネート100重量部に対して、70〜150重量部が好ましく、90〜110重量部がより好ましい。70重量部未満だと、セメントコンクリートのスランプ保持が困難となり、初期強度の発現性が低下するおそれがあり、150重量部を越えると長期強度の発現性が低下するおそれがある。
【0014】
カルシウムアルミネートと無機硫酸塩の混合物の使用量は、セメント100重量部に対して、5〜25重量部が好ましく、10〜20重量部がより好ましい。5重量部未満だと凝結が遅れ、初期強度が低下するおそれがあり、25重量部を越えると凝結時間が短く、可使時間コントロールが困難となり、初期強度発現性が低下するおそれがある。
【0015】
本発明で使用するスランプ保持材は、アルカリ金属炭酸塩と有機酸類の混合物スラリーであり、セメントコンクリートのハンドリングを調整するためのものである。ここでスラリーは、懸濁液でもよく、溶液でもよい。
【0016】
本発明で使用するアルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び重炭酸ナトリウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。これらの中では、効果が大きい点で、炭酸カリウムが好ましい。
【0017】
アルカリ金属炭酸塩の使用量は、アルカリ金属炭酸塩と有機酸類の合計100重量部中、50〜85重量部が好ましく、60〜80重量部がより好ましい。50重量部未満だとセメントコンクリートの可使時間は長くなるが、初期強度発現性が低下し、セメントコンクリートが硬化しにくいおそれがあり、85重量部を越えるとセメントコンクリートのスランプ保持が困難となり、初期強度発現性が低下するおそれがある。
【0018】
本発明で使用する有機酸類としては、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、及び乳酸又はこれらの塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。これらの中では、効果が大きい点で、クエン酸やグルコン酸又はこれらの塩が好ましい。
【0019】
有機酸類の使用量は、アルカリ金属炭酸塩と有機酸類の合計100重量部中、15〜50重量部が好ましく、20〜40重量部がより好ましい。15重量部未満だとセメントコンクリートのスランプ保持が困難となり、初期強度発現性が低下するおそれがあり、50重量部を越えるとセメントコンクリートの可使時間は長くなるが、初期強度発現性が低下し、セメントコンクリートが硬化しにくいおそれがある。
【0020】
スランプ保持材において、アルカリ金属炭酸塩と有機酸類の混合物の使用量は、スラリー水100重量部に対して、1〜95重量部であり、2〜10重量部が好ましい。1重量部未満だと、セメントコンクリートのスランプを保持するために必要とするスラリーの使用量が著しく多くなるために、結果的に水セメント比が高くなり強度発現性が低下するおそれがあり、95重量部を越えると濃度は高くなるが、使用量が少なくなるために、セメントコンクリート中での分散性が悪くなりスランプ保持ができなくなるおそれがある。
【0021】
スランプ保持材中の有効成分であるアルカリ金属炭酸塩と有機酸類の混合物の使用量は、施工温度(環境温度)により変わるので一義的には決まらないが、セメント、カルシウムアルミネート、及び無機硫酸塩の合計(以下結合材という)100重量部に対して、0.1〜1.8重量部が好ましく、1.0〜1.7重量部がより好ましい。0.1重量部未満だとスランプ保持ができないおそれがあり、1.8重量部を越えると可使時間が著しく長くなり、セメントコンクリートが硬化しにくく、初期強度発現性が低下するおそれがある。
【0022】
本発明ではさらに、セメントコンクリートの凝結や硬化を促進する点で、急結剤を使用することが好ましい。急結剤としては、粉体及び/又は液体のものが挙げられる。これらの中では、均一に分散しやすい点で、液体の急結剤が好ましい。
【0023】
急結剤としては、アルミン酸ナトリウムやアルミン酸カリウム等のアルミン酸塩、硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩、及びケイ酸ナトリウム(水ガラス)等が挙げられる。これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0024】
急結剤の使用量は、セメント100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。1重量部未満だと急結性に欠け、初期強度発現性が低下するおそれがあり、20重量部を越えると長期強度発現性が低下するおそれがある。
【0025】
本発明では、さらに、繊維、超微粉、及び減水剤を併用できる。
【0026】
水の使用量は、水/セメント比(以下W/Cという)で、35〜60%が好ましく、40〜50%がより好ましい。35%未満だとミキサーで混練りできないおそれがあり、60%を越えると強度発現性が小さく、強度発現性を出すために各材料の使用量が多くなりコスト高になるおそれがある。
【0027】
本発明で使用する粗骨材や細骨材等の骨材はセメントコンクリートに添加するものであり、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましいが、特に制限されるものではない。粗骨材としては最大直径5〜20mmが好ましく、圧送性の点で、最大寸法5〜15mmがより好ましく、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が使用できる。
細骨材としては最大直径5mm以下が好ましく、川砂、山砂、石灰砂、及び珪砂等が挙げられる。
【0028】
本発明において、急硬性セメントコンクリートの混合方法は特に限定されるものではなく、生コンプラントやコンクリート工場等で使用される各種混合機が使用可能である。
本発明において、急硬性セメントコンクリートに急結剤を添加して急結性セメントコンクリートとする方法としては、急結剤が急硬性セメントコンクリート中で均一に分散すれば特に限定されるものではなく、セメントコンクリート圧送管の途中に注入ノズルを設けて、添加する方法等が挙げられる。急結剤添加後、急結性セメントコンクリートは極短時間で凝結、硬化するために、急結剤は打設直前に添加することが好ましい。
【0029】
【実施例】
以下、実験例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実験例に限定されるものではない。
【0030】
実験例1
各材料の単位量を、セメント200kg/m3、水344kg/m3、細骨材762kg/m3、及び粗骨材942kg/m3とした。これに、カルシウムアルミネート100重量部と表1に示す量の無機硫酸塩からなる混合物を、セメント100重量部に対して15重量部使用し、さらに、アルカリ金属炭酸塩70重量部と有機酸類30重量部からなる混合物を、セメント、カルシウムアルミネート、及び無機硫酸塩の合計(結合材)100重量部に対して1.5重量部で、かつ、スラリー水100重量部に対して3重量部となるように調製したスランプ保持材を添加して、急硬性コンクリートを調製した。この急硬性コンクリートに、急結剤をセメント100重量部に対して5重量部添加して、急結性コンクリートを調製し、物性を評価した。結果を表1に示す。
【0031】
(使用材料)
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値3200cm2/g、比重3.16
細骨材:千葉県君津産山砂、表乾状態、比重2.56、最大直径5mm以下
粗骨材:千葉県君津産砕石、表乾状態、比重2.59、最大寸法10mm
カルシウムアルミネート:主成分C127 、非晶質、ブレーン値6000cm2/g
無機硫酸塩:II型無水石膏、ブレーン値6050cm2/g
アルカリ金属炭酸塩:市販炭酸カリウム、粉末状
有機酸類:市販品、グルコン酸
急結剤:市販品、アルミン酸カリウム溶液
【0032】
(測定方法)
圧縮強度:所定材齢の急結性コンクリートを、JIS A 1108に従い、測定した。
スランプ:混練後、所定時間の急硬性コンクリートを、JIS A 1101に従い、測定した。
【0033】
【表1】
Figure 0003729317
【0034】
実験例2
カルシウムアルミネート100重量部と無機硫酸塩100重量部からなる混合物を、セメント100重量部に対して15重量部使用し、さらに、表2に示す量のアルカリ金属炭酸塩と有機酸類からなる混合物を、結合材100重量部に対して1.5重量部で、かつ、スラリー水100重量部に対して3重量部となるように調製したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0035】
(測定方法)
凝結時間▲1▼:急結性コンクリートを、ASTM C 403に従い、測定した。
【0036】
【表2】
Figure 0003729317
【0037】
実験例3
カルシウムアルミネート100重量部と無機硫酸塩100重量部からなる混合物を、セメント100重量部に対して15重量部使用し、さらに、アルカリ金属炭酸塩70重量部と有機酸類30重量部からなる混合物を、結合材100重量部に対して1.5重量部で、かつ、スラリー水100重量部に対して表3に示す量となるように調製したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
Figure 0003729317
【0039】
実験例4
カルシウムアルミネート100重量部と無機硫酸塩100重量部からなる混合物を、セメント100重量部に対して15重量部使用し、さらに、アルカリ金属炭酸塩70重量部と有機酸類30重量部からなる混合物を、結合材100重量部に対して表4に示す量で、かつ、スラリー水100重量部に対して3重量部となるように調製したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
Figure 0003729317
【0041】
実験例5
カルシウムアルミネート100重量部と無機硫酸塩100重量部からなる混合物を、セメント100重量部に対して表5に示す量使用したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表5に示す。
【0042】
(測定方法)
凝結時間▲2▼:急硬性コンクリートを、ASTM C 403に従い、測定した。
【0043】
【表5】
Figure 0003729317
【0044】
実験例6
カルシウムアルミネート100重量部と無機硫酸塩100重量部からなる混合物を、セメント100重量部に対して15重量部使用し、又、急結剤をセメント100重量部に対して表6に示す量使用したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表6に示す。
【0045】
【表6】
Figure 0003729317
【0046】
【発明の効果】
本発明の急硬性セメントコンクリートは期待される可使時間が確保できる。又、本発明の急結性セメントコンクリートは初期強度発現性等の機能を効率よく発揮できる。

Claims (4)

  1. セメント、カルシウムアルミネート、及び無機硫酸塩を含有してなるセメントコンクリートに、アルカリ金属炭酸塩と有機酸類の混合物スラリーであるスランプ保持材を添加する急硬性セメントコンクリートの製造方法
  2. アルカリ金属炭酸塩と有機酸類の混合物が、セメント、カルシウムアルミネート、及び無機硫酸塩の合計100重量部に対して0.1〜1.8重量部である請求項1記載の急硬性セメントコンクリートの製造方法
  3. スランプ保持材が、スラリー水100重量部に対して、アルカリ金属炭酸塩と有機酸類の混合物1〜95重量部を含有してなる請求項1又は2記載の急硬性セメントコンクリートの製造方法
  4. 求項1〜3記載のうちの1項記載の急硬性セメントコンクリートに、急結剤を添加してなる急結性セメントコンクリートの製造方法
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