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JP3711208B2 - 熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法 - Google Patents

熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1,4−ブタンジオール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)とテレフタル酸又はその低級アルキルエステルとを反応させるポリエステルエラストマーの製造方法に関するものである。詳しくは、特定の重合触媒の組合せでかつ比較的低い温度条件で溶融重合を行うことよりなる熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法に関するものであり、本製造方法により高重合度のポリエステルエラストマーが得られ、ブローグレードの開発が可能となり、更には増し仕込みが可能となり生産性の向上に寄与し得る。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルエラストマー(以下、TPEEと称することもある)は耐熱性が高く、成形性に優れるためエンジニアリング熱可塑性エラストマーとして有用で大きな市場を形成しつつある。
【0003】
しかしながら、TPEEはその分子構造上、熱安定性が必ずしも十分でなく、特にチタン化合物が存在すると分解反応が促進され、末端COOH基の濃度が増大し、耐加水分解性が悪化し、また、着色等の色調も悪くなるという問題があった。
また、TPEEは熱安定性に劣るため、成形時の熱に基因して成形後の製品の末端COOH基の濃度が大きく増大し、そのため、製品の耐加水分解性が更に劣るという問題があり、加えて成形後の分子量の低下も激しいので、力学特性が更に悪化するという欠点もあった。
【0004】
また、TPEEはその主な用途が等速ジョイントブーツのようなブロー成形でえられる製品が多いため、高溶融粘度、高溶融テンションが必要とされるにもかかわらず、重合活性が低く、しかも副反応の生起により高重合体が得られないので、高溶融粘度体が得られず、他方、副反応を抑えようと触媒量を低下させると主反応の活性が低く、やはり高重合度体が得られなかった。そのため、鎖延長剤を重合末期に添加したりしているが、生産時に取扱いが煩雑となったり、安全上の問題も生じている。
特開昭57−125218によると、Ti/Mg比を6/1〜30/1(モル比)にすると熱安定性がよくなり、それ以上のマグネシウム量を用いて反応を行うと生成したTPEEの熱安定性が悪化することが示されているが、このモル比の範囲でも、耐加水分解性、着色、重合度、重合速度の点で難があった。また、特公昭55ー27097では、Mg/Tiの組み合わせ触媒を使用しているが、この場合、マグネシウム添加による効果が何ら示唆されていない。
【0005】
先に、本発明者等は、PBTについて、重合触媒としてTi化合物とMg化合物の組合せの触媒系を提案し(特開平8−20638号公報)、またポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)に関してもTi化合物とMg化合物の組合せの触媒系を提案している(特開平7−216066号公報)。更に、特開昭53−25695号公報では、ポリエチレンテレフタレート(PET)に関し、Mg化合物とTi化合物の組合せからなる触媒が示されているものの、その具体的実施例では、Mn化合物、Mg化合物及びTi化合物の3元系の触媒が使用されているに過ぎない。これらは、いずれもPBT、PHT、PETに関するものであり、これらとは重合反応性が異なるTPEEについては何等言及されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、溶融重合における反応速度が高く、生成したTPEEの末端COOH基の濃度が低く、そのため重合活性が高く、高重合度が達成され、かつ耐加水分解性や熱安定性が良好で、更に、成形後のエラストマーの、末端COOH基の濃度の増大度が低く、そのため、製品の耐加水分解性や熱安定性が良好で、しかも色調に優れている熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造する方法を提供することにある。また成形後の分子量の低下の度合が小さく、それによって製品の力学特性の低下が小さい熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、そのの要旨は、1,4−ブタンジオール及び分子量500〜6000のポリテトラメチレンエーテルグリコールを主成分とするグリコール成分とテレフタール酸を主成分とする二官能性カルボン酸又はジメチルテレフタレートを主成分とする二官能性カルボン酸の低級アルキルエステル成分とを反応させ、該ポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分を33〜80重量%有し、且つ下記(1)の特性を有するする熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法であって、重合触媒として、[A]チタン化合物及び[B]該チタン化合物のチタンに対しマグネシウムとして0.2〜3モル倍のマグネシウム化合物の存在下、245℃未満の温度で溶融重合を行うことを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法の存する。
(1)該ポリエステルエラストマー中の末端COOH基数とポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分の重量%との積が2300eq/トン・wt%未満であり、且つ該ポリエステルエラストマーを260℃、1時間放置した後のポリエステルエラストマー中の末端COOH基数とポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分の重量%との積が4300eq/トン・wt%未満であること。
【0008】
本発明方法の好ましい態様は、上記熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法において、該チタン化合物がテトラアルキルチタネートであること;該マグネシウム化合物が酢酸マグネシウムであること、及び1,4−ブタンジオール及び該ポリテトラメチレンエーテルグリコールを主成分とするグリコール成分とジメチルテレフタレートを主成分とする二官能性カルボン酸の低級アルキルエステル成分とをエステル交換触媒としてチタン化合物を使用して反応させ、エステル交換後、重合反応以前にマグネシウム化合物とチタン化合物を追加添加し溶融重合を行うことを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられるグリコール成分としては、1,4−ブタンジオール成分及び分子量500〜6000のポリテトラメチレンエーテルグリコール成分を主成分とするが、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリメチレングリコール等のアルキレングリコールの1種、または2種以上を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができる。さらに少量のグリセリンのような多価アルコール成分を用いてもよい。また少量のエポキシ化合物を用いてもよい。
【0010】
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)の分子量(数平均分子量)は、500〜6000、好ましくは800〜3000、更に好ましくは800〜2500のものである。
PTMGの使用量は、全TPEEの33%以上(重量比)、好ましくは35%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上80%以下である。PTMGの使用量が33%未満の時は、エラストマー性が低く好ましくない。
ポリテトラメチレンエーテルグリコールの一部に代えて、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどの他のエーテル系のグリコールを使用してもよいが、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。
また、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの一部に代えて、ポリカプロラクトン(末端ジオール)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸(末端ジオール)などのエステル系の化合物を使用してもよい。特にポリカプロラクトンが好ましく、その場合耐熱性が向上する。
【0011】
本発明において用いられる二官能性カルボン酸成分としては、テレフタル酸を主成分とするが、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸等のジフェニルジカルボン酸等の芳香族のジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を少量添加して用いてもよく、これらは1種、または2種以上を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができる。
一方、二官能性カルボン酸の低級アルキルエステルとしては、ジメチルテレフタレートを主成分とするが、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸等のジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸の低級アルキルエステル、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステルを少量添加して用いてもよい。これらは1種または2種以上を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができる。
又、少量のトリメリツト酸のような三官能性以上のカルボン酸成分を用いてもよい。無水トリメリツト酸のような酸無水物を少量使用してもよい。
【0012】
低級アルキルエステル成分としては、メチルエステルを主成分とするが、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等の1種または2種以上を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができる。
【0013】
本発明において用いられるチタン化合物としては、シュウ酸チタン酸カリウム、アルコキシチタン化合物、炭酸チタン化合物、ハロゲン化チタン化合物、チタンアセチルアセトネート等が挙げられる。中でもシュウ酸チタン酸カリウム、アルコキシチタン化合物、チタンアセチルアセトネートが好ましく、特にアルコキシチタン化合物が最も好ましい。この中でもテトラアルキルチタネート(テトラアルコキシチタン)が好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラーn−ブチルチタネート、テトラ−t一ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート、あるいはこれらの混合チタネートである。これらのうち特にテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートが好ましく、テトラ−n−ブチルチタネートが最も好ましい。又、これらのチタン化合物の2種以上を併用して用いてもよい。
チタン化合物の添加量はチタンの量として生成するポリエステルに対して10〜400ppm、好ましくは50〜350ppm、より好ましくは70〜300ppmである。
【0014】
本発明において用いられるマグネシウム化合物としては、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等が挙げられ、好ましくは酢酸マグネシウム又は水酸化マグネシウムであり、特に重合速度や1,4−ブタンジオールヘの溶解性(異物生成)等の点で酢酸マグネシウムが最も好ましい。
【0015】
マグネシウム化合物の使用量は、触媒金属の原子比、即ち、Mg/Tiの比で表して0.2〜3.0である。Mg/Ti<0.2の場合には、重合速度の向上は小さく、末端COOH基の濃度が高くなり、色調が悪化したりするので好ましくない。Mg/Ti>3.0の場合は重合速度が低下し、また、生成ポリエステルの耐加水分解性や色調も悪化するので好ましくない。
Mg/Ti比はより好ましくは0.22〜2.5、最も好ましくは0.25〜2.0である。この場合、色調、耐加水分解性、重合活性はTiのみ使用する場合よりも向上する。
更に、この特定割合のMg/Ti系触媒を用いて得られるTPEEでは、成形後のエラストマーの末端COOH基の濃度の増大度が低く、更には分子量の低下、すなわち主鎖の切断が起こりにくいため、成形後の製品の耐加水分解性や熱安定性がチタンの単独触媒を使用した場合のTPEEよりも良好である。
【0016】
本発明においては、1,4−ブタンジオール成分及びPTMG成分を主成分とするグリコール成分とジメチルテレフタレート成分を主成分とする二官能性カルボン酸の低級アルキルエステル成分とのエステル交換反応工程、または、1,4−ブタンジオール成分及びPTMG成分を主成分とするグリコール成分とテレフタル酸成分を主成分とする二官能性カルボン酸とのエステル化反応工程と、それに続く重縮合反応工程とを経由してTPEEの製造を行うが、これらの反応条件は重合触媒及び溶融重合時の温度を除いて、特に限定されるものでなく、公知の反応条件がそのまま適用される。
【0017】
例えば、エステル交換反応時のグリコール成分/二官能性カルボン酸の低級アルキルエステル成分のモル比は2.0以下、好ましくはl.0〜1.6とし、エステル交換反応として120〜245℃、好ましくは150〜230℃で、2〜4時間行われる。また、直接エステル化の場合は、グリコール成分/二官能性カルボン酸成分のモル比は2.5以下、好ましくはl.6〜2.2とし、エステル化応として120〜245℃、好ましくは150〜230℃で、2〜4時間行われる。
次いで重縮合反応を行うが、その条件は通常、3Torr以下の減圧下、230〜245℃未満であり、重合時間は、2〜8時間である。本発明では、重縮合反応温度を245℃未満に保持することが重要であり、特に、重合度が増大する重合後期においては、攪拌によるシェア発熱が伴うこともあるので設定温度に注意して内温を245℃未満、好ましくは243℃以下、最も好ましくは240℃未満に制御することが必要である。
【0018】
チタン化合物の添加時期はエステル交換の開始時、エステル交換中、エステル交換後、重縮合時等ありうるが、エステル交換開始時と重縮合反応前に分割して添加するのが好ましい。
マグネシウム化合物の添加時期もエステル交換の開始時、エステル交換中、エステル交換後、重縮合時等ありうるが、エステル交換終了時、重合開始前に添加するのが重合活性及ぴ色調等の点で好ましい。
【0019】
例えば、グリコール成分とジメチルテレフタレートを主成分とする二官能性カルボン酸の低級アルキルエステル成分とのエステル交換反応の場合においては、エステル交換触媒としてチタン化合物を使用することが好ましい。
即ち、エステル交換法の場合は、エステル交換触媒として、チタン化合物を使用し、エステル交換後、重合反応以前にマグネシウム化合物添加と更にチタン化合物を追加添加するのが好ましい。
テレフタル酸を主成分とする二官能性カルボン酸とグリコール成分とのエステル化反応の場合には、重縮合反応時にチタン化合物とマグネシウム化合物を添加するのがよい。この場合、エステル化時、又は重合時にスズ化合物や亜鉛化合物等を添加してもよい。
【0020】
原料のテレフタル酸を主成分とする化合物を反応させるに際しては、溶融重合を温度245℃未満で行うこと、また、主成分にテレフタル酸の低級アルキルエステル成分を使用する場合でも245℃未満、特に溶融重合終了時(末期)の内温を245℃未満で行うことが重要である。
245℃を超える温度になると、末端ビニル基や末端COOH基が増大し、耐加水分解性が悪化したり、熱安定性が悪化したりするし、又不要な副反応のために、高重合度体が生成し難いという欠点もある。好ましくは243℃以下、更に好ましくは235℃〜242℃であり、最も好ましくは237℃以上240℃未満である。この場合、溶融重合速度が高いために増し仕込みを行うことが可能となり、生産性の向上に寄与することができる。
重合活性は、溶融重合後の固有粘度IVを重合時間で割った指標(IV/hr)で表し、その値が0.5以上、好ましくは0.52以上、更に好ましくは0.54以上である。0.50未満では生産性があまり向上しない。
【0021】
上述したように、本発明は、TPEEの製造において、重合触媒としてチタン化合物とマグネシウム化合物とを用い、チタン化合物におけるチタンの量に対するマグネシウム化合物におけるマグネシウムの量を任意の割合にして、同時に溶融重合における反応温度を比較的低く、特に245℃未満にすることにより、重合速度を低下させることなしに得られるポリマーの末端COOH基の増大化を防ぎ、耐加水分解性、耐熱性および色調に優れたTPEEが得られること、特に成形後のエラストマーの末端COOH基の濃度の増大度が低く、そのため、製品の耐加水分解性や熱安定性がチタンのみを使用する場合よりも良好であることを見出したことに基づくものである。
【0022】
本発明において重合活性が高くなる理由として、マグネシウム化合物の添加によりマグネシウム化合物とチタン化合物との相互作用が生じ、チタン触媒の配位・結合構造が変化し、反応中、反応原料の分子がTi原子と相互作用できるような主反応の特定活性サイトを生じやすくする特定の構造が形成され、また、同相互作用によりチタン触媒の酸塩基性が変化することが考えられる。このことは、X線吸収端微細構造解析(XAFS:X-ray Absorption Fine Structure)のX線近吸収端構造(XANES:X-ray Absorption Near-Edge Structure)の測定結果から推定される。TPEEのXANESスペクトルにおいて、Tiの1sから3d軌道への遷移過程に帰属されるプリエッジピーク(4.965〜4.972keV付近の主ピーク)の強度は、Ti単独の触媒系よりも、Ti化合物にマグネシウム化合物を添加した触媒からのものの方が大きい。
これは、Ti元素近傍の配位・結合原子の点対称なオクタヘドラル構造が歪んでいる証拠であり、Tiへの配位数の減少が推定され、反応原料の分子がTi原子と相互作用できるような活性サイトが出来ていると推定されるのである。又チタン触媒の特定サイトの酸塩基性についてもXANESの結果より推定されている。
【0023】
本発明ではチタン触媒系へのマグネシウム化合物の添加によりマグネシウム化合物とチタン化合物との相互作用により、チタン触媒の特定サイトの酸性質が抑制され、不要な副反応及びそれに伴う副生物が抑制された良好な重合活性を有し、その結果として生成したポリマーの耐加水分解性、熱安定性、色調等が良好である。しかも溶融成形後のエラストマーの末端COOH基の濃度の増大度が低い上に、分子量の低下も生起し難いため、成形後の製品においても耐加水分解性及び熱安定性に優れ、力学特性の低下が小さいのである。
【0024】
末端COOH基は、ポリマー中のポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分の量と相関性を有し、ポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分の量が多くなるほど少なくなる。そこで、この関係を末端COOH基数とTPEE中のポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分の重量%との積で規定することにより表示する。
本発明方法によるTPEEでは末端COOH基数とTPEE中のポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分の重量%との積が2300eq/トン・wt%未満であり、好ましくは2000eq/トン・wt%未満、より好ましくは1700eq/トン・wt%未満である。末端COOH基数が少なくなると共に、耐加水分解性、熱安定性が向上する。
【0025】
本発明方法によるTPEEは、260℃で1時間放置した後、それの末端COOH基数とポリマー中のポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分の重量%との積が4300eq/トン・wt%未満であることが重要である。これはTPEEを溶融させても末端COOH基の増大度が小さければ、溶融成形により製造した製品の熱安定性をさほど低下させない、即ち力学特性や耐加水分解性の低下の度合いが小さいことをことを示す。
従って、260℃で1時間放置した後の末端COOH基数とポリマー中のポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分の重量%との積は4300eq/トン・wt%未満が好ましく、4100eq/トン・wt%未満がより好ましく、3800eq/トン・wt%未満が更に好ましく、3500eq/トン・wt%未満が最も好ましい。
【0026】
色調は、L値で80以上が明るさの点で好ましい。特に81以上が好ましい。80未満では見た目に暗く好ましくない。
b値は4.0以下が好ましく、4.0を超えると黄味があり汚く感じる。4.5を超えるとかなり印象が悪い。
【0027】
本発明のTPEE製造方法によれば、重合活性が大幅に向上し、高重合体を簡単に製造することが出来、しかも得られたTPEEは着色し難い利点を有している。更に本発明方法によるTPEEは、耐加水分解性、熱安定性、色調の点で充分満足することが出来ると共に、成形後のエラストマーの末端COOH基の増大度が低く、且つ分子量の低下度合いも小さいので、製品の耐加水分解性や熱安定性も良好で、力学特性の低下も小さい特徴を有している。
本発明の方法によると重合速度が従来法に比べて大幅に向上するので、仕込量を増量したりして更に生産性を向上することができる。一方仕込量を下げることも可能となり、その結果、更にTPEEの末端COOH基の濃度を下げることも可能になり、加えて色調もよくなる。
その他、ポリエステルの特性が損なわれない範囲において各種の添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、紫外線吸収剤等を添加してもよく、添加時期は特に制限されず、重合時でも重合後でもよい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の「部」とあるものは、「重量部」を表す。
本発明のTPEEにおける末端ビニル基、固有粘度lV、末端COOH基、色調、耐加水分解性、溶融重合性、及び溶融熱安定性は以下の方法に基づき実施した。
【0029】
(1) 末端ビニル基は、TPEEをへキサフルオロイソプロパノール/重水素化クロロホルム=3/7(vo1比)に溶解し、40OMHz H−NMRで測定した値であり、1×106g(トン)当たりのビニル基当量である。
(2) 固有粘度IVは、TPEEをフェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)中、30℃で測定した溶液粘度から求めたものである。
【0030】
(3) 末端COOH基は、TPEEをベンジルアルコールに溶解し0.1NNaOHにて滴定した値であり、1×106g当たりのCOOH基当量である。
(4) 耐加水分解性は、平山製作所製プレッシャークッカー装置にTPEEを入れ、120℃の加湿下(ゲージ圧:1.1kg/cm2)で96時間処理(PCT処理)し、処理前後のIVを測定し、IV保持率[(処理後のIV)/(処理前のIV)×100]にて評価を行った。
【0031】
(5)色調は円柱状チップサンプルを用いて日本電色工業(株)製測色色差計でL値、a値、b値を測定した。
(6) 溶融重合性は、溶融重合後のIVを溶融重合時間(Hr)で割った値IV/Hrで示した。
【0032】
(7)溶融熱安定性は、枝付き試験管にTPEEを入れ、N2下260℃で1時間処理後のIV及び末端COOH基数を測定し、IVの保持率[(処理後のIV)/(処理前のIV)×100]及び末端COOH基数の差[ΔCOOH=(処理後の末端COOH基)−(処理前の末端COOH基)]にて評価した。
【0033】
実施例1
ジメチルテレフタレート69.6部、1,4−ブタンジオール49.9部、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール78.0部にテトラブチルチタネート0.107部(100ppmTi/ポリマー)を加え、150℃から230℃まで3時間かけて昇温し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応終了15分前に、テトラブチルチタネート0.107部(100ppmTi/ポリマー)を加え、酢酸マグネシウム・四水塩0.1336部(101ppmMg/ポリマー;モル比(Mg/Ti)=1.0)を1,4−ブタンジオールに溶解して添加し、引き続き重縮合反応にはいった。
【0034】
重縮合反応は常圧から1Torrまで85分かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度242℃まで昇温し、以降所定重合温度242℃、1Torrで継続し、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了し、TPEEを取り出した。その際の重合時間、得られたTPEEの固有粘度,色調,溶融重合性、末端基(COOH基、ビニル基)、耐加水分解性及び溶融熱安定性を測定し、その結果を表−1に示した。
【0035】
実施例2
実施例1において、ジメチルテレフタレート90.1部、1,4−ブタンジオール70.9部、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール52.5部に変更した以外は実施例1と同様にして反応を行いTPEEを得た。
実施例3
実施例1において、ジメチルテレフタレート41.2部、1,4−ブタンジオール26.2部、分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール108.0部に変更した以外は実施例1と同様にして反応を行いTPEEを得た。
【0036】
実施例4
実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩の添加を0.0281部(21ppmMg/ポリマー;(Mg/Ti)モル比=0.21)に変更した以外は実施例1と同様にしてTPEEを得た。
実施例5
実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩の添加を0.2666部(202ppmMg/ポリマー;(Mg/Ti)モル比=2.0)に変更した以外は実施例1と同様にしてTPEEを得た。
【0037】
実施例6
実施例1において重合温度(内温)を232℃にして重合した以外は実施例1と同様にしてTPEEを得た。
実施例7
実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩の代わりに水酸化マグネシウムを0.0364部(101ppmMg/ポリマー;(Mg/Ti)モル比=1.0)添加した以外は実施例1と同様にしてTPEEを得た。
【0038】
実施例
実施例3において酢酸マグネシウム・四水塩の添加を0.0668部(51ppmMg/ホ゜リマー;(Mg/Ti)モル比=0.5)に変更し、また重合温度(内温)を239℃にした以外は実施例3と同様にしてTPEEを得た。
【0039】
比較例1
実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩を添加しない以外は実施例lと同様の反応を行ないTPEEを得た。
比較例2
実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩の添加を0.6665部(505ppmMg/ポリマー;(Mg/Ti)モル比=5.0)に変更した以外は実施例1と同様にしてTPEEを得た。
【0040】
比較例3
実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩の添加を0.0133部(10ppmMg/ホ゜リマー;(Mg/Ti)モル比=0.1)に変更し、重合温度を245℃とした以外は実施例1と同様にしてTPEEを得た。
比較例4
実施例1において重合温度(内温)を248℃に上げて重合した以外は実施例1と同様にしてTPEEを得た。
【0041】
【表1】
Figure 0003711208
【0042】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、重合速度が大きい、即ち溶融重合性が高いため、重合時間の短縮や増し仕込みが可能となり、生産性を著しく向上することができる。又、得られるポリエステルは末端COOH基が少ないために、熱安定性、耐加水分解性及び色調に優れるという特徴を有する。更に、成形後のポリマーも末端COOH基の増加が少ないために、製品の熱安定性、耐加水分解性及び色調に優れるという特徴を有する。

Claims (4)

  1. 1,4−ブタンジオール及び分子量500〜6000のポリテトラメチレンエーテルグリコールを主成分とするグリコール成分とテレフタール酸を主成分とする二官能性カルボン酸又はジメチルテレフタレートを主成分とする二官能性カルボン酸の低級アルキルエステル成分とを反応させ、該ポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分を33〜80重量%有し、且つ下記(1)の特性を有するする熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法であって、重合触媒として、[A]チタン化合物及び[B]該チタン化合物のチタンに対しマグネシウムとして0.2〜3モル倍のマグネシウム化合物の存在下、245℃未満の温度で溶融重合を行うことを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法。
    (1)該ポリエステルエラストマー中の末端COOH基数とポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分の重量%との積が2300eq/トン・wt%未満であり、且つ該ポリエステルエラストマーを260℃、1時間放置した後のポリエステルエラストマー中の末端COOH基数とポリテトラメチレンエーテルグリコール構成分の重量%との積が4300eq/トン・wt%未満であること。
  2. 該チタン化合物がテトラアルキルチタネートであることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法。
  3. 該マグネシウム化合物が酢酸マグネシウムであることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法。
  4. 1,4−ブタンジオール及び分子量500〜6000のポリテトラメチレンエーテルグリコールを主成分とするグリコール成分とジメチルテレフタレートを主成分とする二官能性カルボン酸の低級アルキルエステル成分とをエステル交換触媒としてチタン化合物を使用して反応させ、エステル交換後、重合反応以前にマグネシウム化合物とチタン化合物を追加添加し溶融重合を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法。
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