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JP3787208B2 - 塗料ベース剤及び重防食用塗料組成物 - Google Patents

塗料ベース剤及び重防食用塗料組成物 Download PDF

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JP3787208B2 JP02305397A JP2305397A JP3787208B2 JP 3787208 B2 JP3787208 B2 JP 3787208B2 JP 02305397 A JP02305397 A JP 02305397A JP 2305397 A JP2305397 A JP 2305397A JP 3787208 B2 JP3787208 B2 JP 3787208B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼構造物、船舶、鋼管等のノンタール系重防食用塗料として広く利用可能なウレタン樹脂系とエポキシ樹脂系の改良された重防食用塗料組成物に関するものであり、詳しくは、ビスフェノールAの製造工程から副生するオリゴマー成分を改質剤として含有する塗料ベース剤、及び良好な防食性能を維持し且つ、安価な二液型の重防食用塗料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋼構造物、船舶、海洋構造物、鋼管等の重防食用塗料としては、タールエポキシ樹脂塗料やタールウレタン樹脂塗料が使用されてきた。これらのタール系塗料は、非常に廉価である他、乾燥硬化性が良好で水分や酸素に対する優れた環境遮断性を有し、重防食用途において要求される耐久性、耐水性及び防食性に優れていることから、永年にわたり使用されてきており、使用実績も蓄積されている。しかしこうしたタール系塗料は暗色であるため、特に屋内での塗装において見えにくくなるため作業に熟練を要する。そのため淡色系の重防食用合成樹脂塗料のニーズが高まって来ているが、タールは黒色であるため改質剤として使用できず、明色可能なノンタール系重防食用塗料の開発が望まれている。
【0003】
この種のノンタール系塗料の一つとして、ビヒクル成分としてエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤だけからなるいわゆるピュアエポキシ樹脂塗料、或いはビヒクル成分としてポリオール樹脂及びイソシアネート系硬化剤だけからなる、いわゆるピュアウレタン樹脂塗料がある。しかしこうしたピュア樹脂塗料では、タール固有の特性である撥水性と浸透性が作用した耐水、耐海水性の飛躍的向上と悪素地面への適合性が低く、環境遮断性が必ずしも十分とはいえない。このために、キシレン樹脂、トルエン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂等の改質剤をビヒクル構成成分として利用したいわゆる変性エポキシ樹脂塗料、変性ウレタン樹脂塗料が、特に防食性を要求される用途に用いられていることは良く知られている。
【0004】
例えば、上水道内面用塗料について、フェノール(アルキル誘導体)変性クマロン樹脂若しくはフェノール変性石油樹脂、スチレン化フェノール樹脂又は変性シクロペンタジエン系樹脂から選択される改質剤を配合してなるウレタン系塗料やエポキシ系塗料が既に知られている(特開昭63-183967 号公報)。
しかし、これら従来の改質剤を使用したノンタール系塗料では、改質剤として使用される樹脂と主剤として使用される架橋性樹脂との相溶性に問題があるため、添加量に制限があり、十分な防食性能を得ることができない。またこれらの改質剤として使用される樹脂を化学修飾することにより、架橋樹脂との相溶性を改良した樹脂も塗料用改質剤として市販されているが、高価であり一部の用途の塗料にしか使用できない。そのため、塗り替え等のメンテナンス費用がコスト高となっているため防食性の向上が可能で、より安価な改質剤からなるノンタール系重防食用塗料の開発が望まれていた。
【0005】
ところでビスフェノールAは、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の原料として広く用いられており、通常、酸触媒下2モルのフェノールと1モルのアセトンから合成される。工業的プロセスでは、ビスフェノールA(4,4'-BPA) の選択性を向上させるためフェノールを化学量論量より過剰に存在させることから、かかる反応系では多くの副生成物が生成する。特にビスフェノールAの異性化物や重質成分は、異性化反応や分解反応を行い大部分は有効な成分に変換しリサイクルさせるが、一部異性化物や重質成分等は反応系に蓄積させないように系外へパージされ廃棄物として処理されている。
【0006】
ビスフェノールAは大規模プロセスで製造されており、系外へパージされる大量の副生成物は、現在迄のところ有効な利用方法が見出されていないことから、廃棄処理されるか燃焼処理されており、ビスフェノールA製造プロセスの経済性の低下や、産業廃棄物による環境問題の原因となり大きな問題となっていた。発明者らは、かかる副生成物の中にエポキシ樹脂系やウレタン樹脂系の重防食用塗料改質剤として有用なものが存在していることを見出し本発明に至った。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状から本発明は、タール系塗料に匹敵する塗料特性(防食性能、塗装作業性)や価格を具備し、明色化可能であり、かつ特に船舶のバラストタンク等の高湿度環境下であっても良好な塗装ができるノンタール系塗料を提供することを目的とするものである。また本発明は、大規模プロセスで製造されるビスフェノールA製造工程で従来は燃焼処理又は廃棄処理されて環境問題の原因となっていた副生成物を、塗料分野において有効に活用することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のような課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、フェノールとアセトンを酸触媒下に反応させビスフェノールAを得るプロセスで発生する副生成物中のポリイソプロピリデンフェノールを主成分とするオリゴマー(樹脂)混合物がエポキシ樹脂系とウレタン樹脂系の塗料ベース剤の改質剤として優れ、且つ硬化剤との二液型の重防食塗料組成物として利用可能なことを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の請求項1記載の発明は、(a)主剤として、1分子中に水酸基を2個以上含むポリオール樹脂、及び
(b)フェノールとアセトンの反応によるビスフェノールA製造工程から副生された下記化学構造式(1)で示されるするポリイソプロピリデンフェノールを主成分する改質剤を必須成分として含有する塗料ベース剤である。
【化2】
Figure 0003787208
【0010】
本発明の請求項2記載の発明は、(a)主剤として、1分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂、及び
(b)フェノールとアセトンの反応によるビスフェノールA製造工程から副生された上記構造式(1)で示されるするポリイソプロピリデンフェノールを主成分する改質剤を必須成分として含有する塗料ベース剤である。
【0011】
上記本発明の塗料ベース剤中の(a)主剤100重量部に対して、(b)改質剤の構造式(1)で示されるポリイソプロピリデンフェノールを主成分とする改質剤は10〜200重量部の範囲で配合されることが好ましい。
又上記本発明の塗料ベース剤中の化学構造式(1)で示されるポリイソプロピリデンフェノールを主成分とする改質剤は、フェノールとアセトンの反応によるビスフェノールA製造工程から副生する分子量300〜1200、軟化点約120℃〜130℃、OH当量は100〜160からなるオリゴマー混合物が好ましい。
【0012】
また本発明の請求項5記載のウレタン系の重防食用塗料組成物は、上記請求項1記載の塗料ベース剤と、イソシアネート基(NCO基)/主剤のヒドロキシル基(OH基)のモル比で0.3〜1.5のイソシアネート系硬化剤との二液から配合調整されることを特徴とするものである。
【0013】
更にまた本発明の請求項6記載のエポキシ系の重防食用塗料組成物は、上記請求項2記載の塗料ベース剤と、アミン基(NH2基)/主剤のエポキシ基のモル比で0.5〜1.5のアミン系硬化剤との二液から配合調整されることを特徴とするものである。
なお上記本発明の重防食用塗料組成物には、塗料ベース剤の必須成分の他に、これに顔料、揺変剤、溶剤、従来からのクマロン樹脂、石油樹脂等の公知の防食性改質剤等を適宜混合分散させて使用されるものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の請求項1における塗料ベース剤の主剤(a)である、1分子中に水酸基を2個以上含むポリオール樹脂とは、架橋塗膜を形成することが可能な通常のポリオールでよく、水酸基当量は100〜2000程度からなるものを、液状樹脂、固形樹脂を問わずに使用できる。又、各種の変性ポリオール、例えばビスフェノールA型エポキシ骨格を有するエポキシポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、日増し油ポリオールでもよく、更には、キレート変性ポリオールやこれらの混合系でもよい。
【0015】
特に防食性の観点からは、エポキシポリオールが好ましい。具体的には、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂に付加反応させて得たエポキシポリオール、メタクリル酸のヒドロキシエステル等アルコール性水酸基を有するアクリルモノマーをビニル重合させて得たアクリルポリオール、フタル酸等の2塩基酸とグリセリン等の多価アルコールを重縮合させて得たポリエステルポリオール及び多価アルコールやビスフェノールA等の多価フェノール類にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加重合させて得たポリエーテルポリオール等が挙げられる。特にコストと性能のバランスの点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、アルカノールアミン、特にジイソプロパノールアミンを付加反応させて得たエポキシポリオールが好ましい。
【0016】
また本発明の請求項2におけるエポキシ系塗料ベース剤の主剤(a)である、1分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂とは、架橋塗膜を形成することが可能な2個以上のエポキシ基をもつ通常のビスフェノールA型エポキシ樹脂でよく、エポキシ当量が180〜2200からなるものを液状樹脂、固形樹脂を問わずに使用できる。特に、各種の変性エポキシ樹脂、例えばビスフェノールA型(2,2'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン型)、ビスフェノールF型(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン型)、ビスフェノールAD型(1,1'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン型)エポキシ樹脂、さらには、キレート変性エポキシ樹脂や、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、プロピレンオキサイド変性エポキシ樹脂、スルフィド含有エポキシ樹脂等の特殊エポキシ樹脂等の中から1種または、2種以上の混合系でもよい。又、無溶剤型塗料の場合は、低粘度化のため各種モノグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル等反応性希釈剤を併用出来る。
【0017】
本発明の塗料ベース剤は、前記した主剤(a)であるポリオール樹脂又はエポキシ樹脂等の架橋性樹脂に、改質剤(b)としてフェノールとアセトンの反応によるビスフェノールA製造工程から副生された下記化学構造式(1)からなるポリイソプロピリデンフェノールを主成分とするオリゴマー(樹脂)混合物を必須の含有成分として配合することに特徴を有する。
【化3】
Figure 0003787208
【0018】
ここで化学構造式(1)における、nは2〜10の範囲内であり、最適にはnが7〜8のものてある。
また化学構造式(1)からなるポリイソプロピリデンフェノールを主成分とするオリゴマー(樹脂)混合物は、特に平均分子量300〜1200、軟化点約120℃〜130℃、OH当量は100〜160、好ましくは120〜140からなるオリゴマー(樹脂)混合物が特に好ましいものとして挙げられる。
【0019】
かかるオリゴマー(樹脂)混合物は、現在工業的にビスフェノールAの製造方法として普及利用されているフェノールとアセトンを酸触媒下に反応させビスフェノールAを精製する工程で、副生成物として大量に発生している。即ちビスフェノールAの精製する工程で分離される異性化物や重質(樹脂)分は、フェノール、イソプロペニルフェノール等の有効成分を回収した後、系外へパージされている。こうしたパージされる副生成物には、ポリイソプロピリデンフェノール構造を有するオリゴマーを主成分とし、その他に各種の不純物、例えば 4,4'-BPA 、フェノール、サイクリックダイマー(CD)等を含有するものであるが、有用なビスフェノールAや誘導体等を回収した後のオリゴマー樹脂分は、これまで有効な利用方法が見出されていなかったため、再利用されず廃棄したり、燃焼処理しているのが現状であった。
【0020】
しかるに、かかる副生成物を上記したエポキシ系やウレタン系の塗料組成物として適用することを検討したところ、塗料ベース剤(a)中の改質剤として配合することによって、硬化剤との組み合わせで防食性能が維持・向上することがわかった。この場合の配合量については、特に制限するものではないが、塗料ベース剤(a)中のポリオール樹脂100重量部、又はエポキシ樹脂100重量部(固形分)に対して、上記オリゴマーを改質剤として10〜200重量部添加するのが好ましい。10部以下の場合、防食性能の向上が認められず、200重量部以上になるとコスト的には有利であるがエポキシ樹脂やウレタン樹脂の特徴である密着力や、塗膜強度が低下する等、防食性を低下させる不具合が生じる。
【0021】
本発明の重防食用塗料組成物は、上記した塗料ベース剤と塗料硬化剤の二液から調整されるものであり、ここで当該塗料硬化剤について説明する。
先ず請求項5におけるウレタン系の重防食用塗料組成物に使用される塗料硬化剤としては、ポリイソシアナート系硬化剤が使用される。例えばイソシアナート基を1分子中に2個以上有する化合物であれば良く、汎用型、難黄変型(紫外線暴露下での変色性)、無黄変型(紫外線暴露下での変色性)など広く適用できる。まず汎用型としては、トリレンジイソシアナート(以下、TDIと略記する)、TDIのトリメチロールプロパン(以下、TMPと略記する)アダクト物、TDIの3量化物であるイソシアヌレート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(以下、MDIと略記する)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアナート(以下、ポリメリックMDIと略記する)が挙げられる。
【0022】
また、難黄変型としては、キシリレンジイソシアネート(以下、XDIと略記する)が挙げられる。更に無黄変型としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記する)、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記する)、水添XDI及び水添MDI等が挙げられる。特に、コストと性能のバランスの点から、TDIのTMPアダクト物及びポリメリックMDIが好ましい。ここで、ポリオール樹脂系の塗料ベース剤に対するイソシアナート硬化剤の使用量は、イソシアナート基(NCO基)/主剤のヒドロキシル基(OH基)のモル比で0.3〜1.5の範囲が良く、さらに塗膜性能の面から0.5〜1.0の範囲が好ましい。
【0023】
次に本発明の請求項6におけるエポキシ系の重防食用塗料組成物に使用される塗料硬化剤(b)としては、アミン系硬化剤が使用される。例えば、ポリアミド系硬化剤、脂肪族あるいは芳香族アミン、又はこれらの各種変性アミン(マンニッヒ変性、アダクト変性等)、ケチミン系硬化剤等が使用出来る。
ここでエポキシ樹脂系塗料ベース剤に対するアミン系硬化剤の使用量は、アミン(NH2基)/主剤のエポキシ基のモル比で0.5〜1.5の範囲が良く、さらに塗膜性能の面から0.5〜1.0が好ましい。
【0024】
これら本発明のウレタン系又は、エポキシ系の重防食用塗料組成物において、前記した塗料ベース剤にオリゴマー改質剤を含有させることにより、防食性能が向上する理由としては、架橋樹脂とオリゴマー改質剤の相溶性が極めて良好なことから、架橋分子間に本オリゴマー改質剤が入り、塗膜の硬化収縮を緩和したり、あるいは塗膜弾性率を下げることによる内部応力の低減効果により、結果的に塗膜と鉄面の二次密着性を向上させているものと考えられる。又、フェノール性水酸基を適度に含有することにより、鉄面との密着性向上に寄与しているものとも思われる。
【0025】
本発明の重防食用塗料組成物を調整する際には、前記した塗料ベース剤中には、上記したオリゴマー改質剤と共に、従来からエポキシ樹脂系またはウレタン樹脂系の塗料用改質剤として従来から知られているキシレン樹脂、トルエン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール及びそのアルキル誘導体より選択される成分一以上で変性されたクマロン樹脂等を併用して配合することができる。ここでクマロン樹脂とはインデン・クマロン・スチレンを主成分とする共重合樹脂であり、キシレン樹脂はm−キシレンとホルムアルデヒドを主成分とする付加縮合化合物である。また石油樹脂はアルキルスチレン、ビニルトルエン、、ジシクロペンタジエン、インデンのうち一以上の成分を主成分とする重合樹脂である。これらは架橋性樹脂との相溶性が不十分であり、添加量に制限があるが、オリゴマー改質剤と併用することにより更に増量することが可能となり、防食性を向上させることが出来る。なお、フェノール変性したクマロン樹脂を併用することは特に好ましい。
【0026】
これら防食用改質剤の配合量としては塗料ベース剤中の主剤のポリオール系樹脂、又はエポキシ系樹脂100重量部(固形分)に対して、10〜200重量部、特に50〜200重量部の範囲が好ましい。10重量部未満では、素地との密着が悪く防食性が低下し、一方200重量部を越えるとコスト的には非常に有利であるが硬化しにくい傾向となり、いずれにしても好ましくない。
また本発明の重防食用塗料組成物には、一般的に配合される着色顔料、体質顔料、防錆顔料、及び溶剤等の各種成分を所定量配合することが出来る。ここで着色顔料としては、酸化チタンやカーボンブラック、弁柄、等の無機系着色顔料やアゾ系、シアニン系、キナクリドン系等の有機系着色顔料が利用できる。また、体質顔料としては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、シリカ、マイカ等が挙げられる。又、ステンレス、MIO等の鱗片状顔料も利用できる。
【0027】
防錆顔料としては、例えばアルカリ性顔料である亜酸化鉛、鉛丹等、酸化性防錆顔料であるジンククロメート、ストロンチウムクロメート等、安定な化合物による防錆被膜層を形成するリン酸亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、リン酸アルミニウム等が利用できる。顔料のビヒクルに対する配合割合についても特に限定されないが、防食性を左右する体質顔料の場合、配合量としては塗料ベース剤(a)中のエポキシ樹脂100重量部、又はポリオール樹脂100重量部(固形分)に対して、上記顔料は100〜600重量部の範囲に添加するのが好ましい。これは、防食性の目安となる塗膜の水蒸気透過率が前記体質顔料の配合割合範囲で最少となるためである。他方、着色顔料の場合は所望の着色度に応じて適宜割合で配合できるが、一般には樹脂成分に対して、0〜1000重量部の範囲にするとよい。
【0028】
塗料を希釈するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル系溶剤、その他、セロソルブ系溶剤、脂肪族炭化水素系等が使用出来る。溶剤の配合量としては塗料ベース剤(a)中のエポキシ樹脂100重量部、又はポリオール樹脂100重量部(固形分)に対して、1〜500重量部の範囲に添加するのが好ましい。
【0029】
さらに、本発明の塗料ベース剤、重防食塗料組成物には、その他の通常の各種添加剤を配合することができる。例えば、消泡剤、レベリング剤、タレ止め剤、揺変剤等の各種添加剤も適宜配合し利用できる。なお揺変剤は、塗装1回当たりの膜厚を大きくし、塗膜のタレを小さくし、更に塗装中の粘度を小さくし作業性を高める目的で添加されるものであり、具体的には酸化ポリエチレンワックス、脂肪酸アマイドワックス、有機ベントナイト等が使用される。
【0030】
本発明の二液型重防食用塗料組成物は、例えば次のように適用できる。
即ち、エポキシ樹脂、又はポリオール樹脂等の架橋性樹脂主剤(a)と、ポリイソプロピリデンフェノールを主成分とするオリゴマー改質剤(b)、及び顔料、溶剤その他通常の添加剤等をボールミル等で所定の配合割合で混合分散させて得られる塗料ベース剤と、溶剤で希釈した塗料硬化剤とを配合し撹拌・混合して重防食用塗料組成物を調整することができる。そして、この調整された重防食用塗料を塗布面に刷毛塗り、又は適宜の塗装機等で塗装し、塗膜を硬化させることにより、目的とする重防食用塗膜を形成することができる。また、こうした塗料ベース剤、塗料組成物の配合にあたり、脱水剤例えば無水石膏、ゼオライトを塗料組成物の全量に対して、1〜5重量%配合してもよい。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例/比較例によって得られた塗料の評価は、次のように実施した。
・塗料の各種評価は、JIS K5400に準じて1ケ月の促進試験を実施することにより行った。
・耐塩水噴霧性については、JIS K5400(9.1)にて外観以上の有無と下記の耐クロスカット剥離性で評価した。
○;小、 △; やや大きい、 ×;大きいで示す。
・耐湿性については、JIS K5400(9.2)にて、ふくれ、剥がれ等の外観異常の有無と下記の耐クロスカット剥離性で評価した。
○;小、 △; やや大きい、 ×;大きいで示す。
・付着性については、 JIS K5400(8.5)の碁盤目テープ法により評価した。(剥離せず残った数を分子とし、その数が多い程付着性に優れる)
・重ね塗り適合性については、JIS 5400(6.8)に準じて、剥がれ等の異常の有無で下記のように評価した。
○;良好、 △;やや劣る、 ×;不良で示す。
・ビスフェノールA工程副生樹脂の有効利用性については、添加量による経済性の効果により評価した。
◎;極めて大きい、 ○;大きい、 △;小さい、 ×;殆どなしで示す。
【0032】
実施例1
主剤樹脂としてエポキシポリオール樹脂(旭電化工業(株)製、商品名、アデカレジンEP−6021:固形分60%、OH当量450)100重量部(固形分60重量部)、ビスフェノールA製造工程からの副生オリゴマー樹脂を改質剤として100重量部、体質顔料として扁平タルク200重量部、着色顔料としてカーボンブラック1重量部、酸化チタン15重量部、、溶剤としてトルエン150重量部、MEK10重量部を配合しディスパーで分散して塗料ベース剤(A)液を調整した。 なお本実施例で使用したビスフェノールA工程からの副生樹脂は、前記した化学構造式(1)で示されるポリイソピリデンフェノールを主成分とするオリゴマー混合物で、平均分子量1000、軟化点約120℃、OH当量は120である。上記塗料ベース剤に塗料硬化剤として、イソシアナート硬化剤であるTDIのTMPアダクト物(武田薬品工業(株)製、商品名、タケネートD103H)をNCO基/主剤のOH基の配合量が0.8(モル比)になるように配合し撹拌混合して塗料を調整した後、エアレス塗装機でブラスト鋼板に塗装して試験片を調整した。各種の試験項目における評価結果を表1に示す。
【0033】
実施例2
実施例1で使用したと同じ副生オリゴマー樹脂を改質剤として50重量部、通常の改質剤としてクマロン樹脂(新日鐵化学(株)製、商品名、エスクロン)を50重量部併用して添加した他は実施例1と同じ配合率・同様の方法で塗料を調整し、評価試験を行った結果を表1に示す。
【0034】
実施例3
実施例1で使用したと同じ副生オリゴマー樹脂を改質剤として50重量部、通常の改質剤としてキシレン樹脂(三菱ガス化学(株)製、商品名:ニカノール)50重量部併用して添加した他は実施例1と同じ配合率・同様の方法で塗料を調整し、評価試験を行った結果を表1に示す。
【0035】
実施例4
実施例1で使用したと同じ副生オリゴマー樹脂を改質剤として50重量部、通常の改質剤として石油樹脂(日本ゼオン(株)製シクロペンタジエン系樹脂、商品名:クイントン)50重量部併用して添加した他は実施例1と同じ配合率・同様の方法で塗料を調整し、評価試験を行った結果を表1に示す。
【0036】
実施例5
実施例1で使用したと同じ副生オリゴマー樹脂を改質剤として250重量部配合し、他の条件は実施例1と同様の方法で塗料を調整し評価試験を行った結果を表1に示す。
【0037】
比較例1
ビスフェノールA工程からの副生オリゴマー樹脂と通常の改質剤を用いず、他の条件は実施例1と同様の方法で塗料を調整し評価試験を行った結果を表1に示す。
【0038】
比較例2
実施例1で使用したビスフェノールA工程からの副生オリゴマー樹脂を使用せず通常の改質剤シクロペンタジエン樹脂だけを改質剤として100重量部配合し、他の条件は実施例1と同様の方法で塗料を調整し評価試験を行った結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
Figure 0003787208
【0040】
実施例6
主剤樹脂としてエポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名:エポトートYD−014、エポキシ当量950)100重量部、ビスフェノール製造工程からの副生オリゴマー樹脂(但し、前記した化学構造式(1)で示されるポリイソピリデンフェノールを主成分とするオリゴマー混合物で、平均分子量1000、軟化点約130℃、OH当量は140である。)を改質剤として100重量部、体質顔料として扁平タルク220重量部、着色顔料としてカーボンブラック1重量部、酸化チタン20重量部、、溶剤としてトルエン150重量部、MEK10重量部を配合しディスパーで分散して塗料ベース剤(A)液を調整した。上記塗料ベース剤に塗料硬化剤(B)としてアミン系硬化剤であるポリアミドアミン(三和化学工業(株)製、商品名:SUNMIDE#390−70)をNH基(活性水素基)/主剤のエポキシ基の配合量が0.8(モル比)になるように配合し撹拌混合して塗料を調整した後、エアレス塗装機でブラスト鋼板に塗装して試験片を調整した。得られた塗料の評価を実施例1と同様の評価方法で行った。各種の試験項目における評価結果を表2に示す。
【0041】
実施例7
実施例1で使用したと同じ副生オリゴマー樹脂を改質剤として50重量部、通常の改質剤としてクマロン樹脂(新日鐵化学(株)製、商品名、エスクロン)を50重量部併用して添加した他は実施例5と同じ配合率・同様の方法で塗料を調整し、評価試験を行った結果を表2に示す。
【0042】
実施例8
実施例1で使用したと同じ副生オリゴマー樹脂を改質剤として50重量部、通常の改質剤としてキシレン樹脂(三菱ガス化学(株)製、商品名:ニカノール)50重量部併用して添加した他は実施例5と同じ配合率・同様の方法で塗料を調整し、評価試験を行った結果を表2に示す。
【0043】
実施例9
実施例1で使用したと同じ副生オリゴマー樹脂を改質剤として50重量部、通常の改質剤として石油樹脂(日本ゼオン(株)製シクロペンタジエン系樹脂、商品名:クイントン)50重量部併用して添加した他は実施例5と同じ配合率・同様の方法で塗料を調整し、評価試験を行った結果を表1に示す。
【0044】
実施例10
実施例1で使用したと同じ副生オリゴマー樹脂を改質剤として250重量部配合し、他の条件は実施例5と同様の方法で塗料を調整し評価試験を行った結果を表2に示す。
【0045】
比較例3
副生オリゴマー樹脂の改質剤と通常の改質剤を用いず、他の条件は実施例5と同様の方法で塗料を調整し評価試験を行った結果を表2に示す。
【0046】
比較例4
副生オリゴマー樹脂改質剤を使用せず通常の改質剤キシレン樹脂だけを改質剤として100重量部配合し、他の条件は実施例5と同様の方法で塗料を調整し評価試験を行った結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
Figure 0003787208
【0048】
【発明の効果】
以上説明した本発明のエポキシ樹脂系とウレタン樹脂系の重防食塗料組成物は、ビスフェノールA製造工程からの副生成物として利用価値がなかったオリゴマー樹脂を、塗料ベース剤の改質剤として使用することによって、従来から知られていたクマロン樹脂、石油樹脂等の改質剤と何ら遜色のない良好な防食性能を維持し得ることが明らかとなった。従って鋼構造物、船舶、鋼管その他の防食性が要求される分野において、ノンタール系の重防食塗料組成物として安価に提供することが可能となった。

Claims (6)

  1. (a)主剤として、1分子中に水酸基を2個以上含むポリオール樹脂、及び
    (b)フェノールとアセトンの反応によるビスフェノールA製造工程から副生された下記化学構造式(1)で示されるポリイソプロピリデンフェノールを主成分する改質剤を必須成分として含有することを特徴とする塗料ベース剤。
    Figure 0003787208
    (式中nは2〜10である)
  2. (a)主剤として、1分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂、及び
    (b)フェノールとアセトンの反応によるビスフェノールA製造工程から副生された、請求項1に記載の構造式(1)で示されるするポリイソプロピリデンフェノールを主成分とする改質剤を必須成分として含有することを特徴とする塗料ベース剤。
  3. 塗料ベース剤中の主剤100重量部に対して、構造式(1)で示されるポリイソプロピリデンフェノールを主成分する改質剤が10〜200重量部配合されてなる請求項1又は2記載の塗料ベース剤。
  4. 改質剤が、フェノールとアセトンの反応によるビスフェノールA製造工程から副生する平均分子量300〜1200、軟化点約120℃〜130℃、OH当量は100〜160からなるオリゴマー樹脂混合物を主成分とするものである請求項1又は2記載の塗料ベース剤。
  5. 請求項1に記載の塗料ベース剤と、イソシアネート基(NCO基)/主剤のヒドロキシル基(OH基)のモル比で0.3〜1.5のイソシアネート系硬化剤との二液から配合調整されることを特徴とするウレタン樹脂系の重防食用塗料組成物。
  6. 請求項2に記載の塗料ベース剤と、アミン基(NH2基)/主剤のエポキシ基のモル比で0.5〜1.5のアミン系硬化剤との二液から配合調整されることを特徴とするエポキシ樹脂系の重防食用塗料組成物。
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