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JP3775884B2 - 半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムおよび半導体ウエハの裏面研削方法 - Google Patents

半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムおよび半導体ウエハの裏面研削方法 Download PDF

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JP3775884B2 JP07325497A JP7325497A JP3775884B2 JP 3775884 B2 JP3775884 B2 JP 3775884B2 JP 07325497 A JP07325497 A JP 07325497A JP 7325497 A JP7325497 A JP 7325497A JP 3775884 B2 JP3775884 B2 JP 3775884B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムおよび該フィルムを用いた半導体ウエハの裏面研削方法に関する。詳しくは、温度変化によって粘着力が劇的に変化する粘着剤層を有した半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムおよび、該粘着フィルムを、シリコンウエハ等の半導体ウエハの集積回路が組み込まれた側の面(以下、ウエハ表面という)に貼付して該半導体ウエハの他の面(以下、ウエハ裏面という)を研削し、研削終了後に剥離する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、半導体集積回路は、高純度シリコン単結晶等をスライスしてウエハとした後、イオン注入、エッチング等によりその表面に集積回路を形成し、更にウエハの裏面をグラインディング、ポリッシング、ラッピング等により研削し、ウエハの厚さを100〜600μm程度まで薄くしてから、ダイシングしてチップ化する方法で製造されている。これらの工程の中で、半導体ウエハ裏面の研削時に半導体ウエハの破損を防止したり、研削加工を容易にするため、粘着フィルムをその粘着剤層を介してウエハ表面に貼付して保護する方法が用いられている。
【0003】
粘着フィルムをウエハ表面に貼着してウエハ裏面を研削する場合、該粘着フィルムに求められる性能の一つに、半導体ウエハ表面に対する粘着特性が挙げられる。具体的には、ウエハ裏面研削時には剥離しない程度の高い粘着力を有し、また剥離時には作業性がよく且つ半導体ウエハを破損しない程度の低い粘着力が必要とされている。
【0004】
しかし、近年、大容量化、高集積化、半導体チップの量産化、小型軽量化等が図られるに伴い、半導体ウエハは大口径化し、また半導体ウエハの厚みはさらに薄く成る傾向があり、半導体ウエハ裏面研削時の表面保護と、剥離の際の作業性、非破損性のバランスを保つことが難しくなってきている。
【0005】
これらの問題を解決する方法として、例えば、特開昭60−189938号公報には、半導体ウエハの裏面を研磨するにあたり、このウエハの表面に感圧性接着フィルムを貼り付け、上記の研磨後この接着フィルムを剥離する半導体ウエハの保護方法において、上記の感圧性接着フィルムが光透過性の支持体とこの支持体上に設けられた光照射により硬化し三次元網状化する性質を有する感圧性接着剤層とからなり、研磨後この接着フィルムを剥離する前にこの接着フィルムに光照射することを特徴とする半導体ウエハの保護方法が開示されている。
【0006】
しかし、該発明に開示されている光照射により硬化し三次元網状化する性質を有する感圧性接着剤層(粘着剤層)は、ラジカル重合により重合する粘着剤層であるため、ウエハと粘着剤層の間に酸素が入り込んだ場合には、酸素の重合禁止効果により硬化反応が十分に進まず、半導体ウエハ裏面研磨後の剥離時に凝集力の低い未硬化の粘着剤がウエハ表面を汚染することがあった。集積回路が形成された半導体ウエハ表面には複雑な凹凸があり、空気(酸素)を全く挟み込まずに貼付することは不可能である。また、貼付のために酸素を除いた系を作り出すには大掛かりな装置と大きなコストが必要となる。この様な粘着剤層に起因する汚染は、溶剤等による洗浄で除去できる場合もあるが、ほとんどの場合、完全に除去できないのが現状である。
【0007】
また、上記発明は、感圧性接着フィルム(粘着フィルム)を剥離する際に照射する光として実質的に紫外線を用いている。しかし、この紫外線は、其自体が皮膚癌を誘発する等の疾患の原因になったり、オゾンを発生させたりする等、作業環境衛生上の問題からは使用しない方が望ましいとされている。
【0008】
近年、半導体ウエハの大口径化、薄層化およびICの高性能化に伴い、半導体ウエハ表面への汚染が少なく、且つ、ウエハ裏面の研削時や粘着フィルムの剥離時にウエハを破損せず、尚かつ、作業環境を悪化させない半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムおよび該フィルムを用いた裏面研削方法が望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上の点に鑑み、本発明の目的は、半導体ウエハの裏面研削時には強い粘着力でウエハ表面を保護し、剥離の際には冷却することにより粘着力が低下して半導体ウエハを破損させずに剥離することができ、尚かつ、剥離後に粘着剤層からの半導体ウエハ表面に付着する汚染物が殆どない特定の粘着フィルムを使用することにより、半導体ウエハの大口径化、薄層化およびICの高性能化に対応できる半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムおよび該フィルムを用いた裏面研削方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のモノマーを共重合したベースポリマーを架橋剤によって架橋した構成の粘着剤層を有し、温度変化に対して特定の粘着特性を有する様に調整された粘着フィルムを用いて、特定の温度範囲内において、ウエハ表面に貼付して裏面研削を行い、研削終了後、特定の低温領域に冷却しながら剥離することにより、ウエハを破損したり、表面を汚染することもなく、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明に到った。
【0011】
すなわち、本発明の第1発明は、基材フィルムの片面に粘着剤層が設けられた半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムであって、該粘着剤層が、一般式(1)〔化2〕
【0012】
【化2】
Figure 0003775884
(式中、R1は−Hまたは−CH3、Xは−COOR2、−CONHR3、−OR4、−OCOR5、−R6または−C64−R7を示す。ここで、R2〜R6は炭素数が10〜50の脂肪族基、または少なくとも一部がフッ素置換された炭素数が6〜50の脂肪族基、R7は炭素数が8〜24のアルキル基を示す)
の構造を有するモノマー群から選ばれた少なくとも一種のモノマー(I)40〜98重量%、架橋剤と架橋反応しうる官能基を有するモノマー(II)1〜30重量%、及び、モノマー(I)及び(II)と共重合可能なモノマー(III)1〜59重量%を必須成分として含むモノマー混合物を共重合して得られたベースポリマー100重量部、並びに、架橋剤0.1〜5重量部を含み、A℃〜40℃(0℃<A℃<40℃)の温度範囲においてSUS304−BA板に貼着したときの該温度範囲における粘着力が150〜2,000g/25mm、前記温度範囲でSUS304−BA板に貼着した状態でB℃〜C℃〔−50℃≦B℃≦C℃≦(A−3)℃〕の温度範囲に冷却したときのSUS304−BA板に対する粘着力が100g/25mm以下であることを特徴とする半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムである。
【0013】
本発明の第2発明は、半導体ウエハの裏面研削時に粘着フィルムをその表面に貼着し、研削終了後に剥離する半導体ウエハの裏面研削方法であって、半導体ウエハの表面に上記の半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムをA℃〜40℃(0℃<A℃<40℃)の温度範囲において貼着して、該温度範囲に保たれた冷却水をかけながら半導体ウエハの裏面を研削し、次いで、B℃〜C℃〔−50℃≦B℃≦C℃≦(A−3)℃〕の温度範囲に冷却した後に半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを剥離することを特徴とする半導体ウエハの裏面研削方法である。
【0014】
本発明の半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムは、A℃〜40℃(0℃<A℃<40℃)の温度範囲において半導体ウエハの裏面を研削する際には、強い粘着力でウエハ表面に貼着してそれを保護し、ウエハの破損等を防止する。また、裏面研削終了後、該粘着フィルムを剥離する際には、B℃〜C℃〔−50℃≦B℃≦C℃≦(A−3)℃〕の温度範囲に冷却することにより粘着力を低下させ得る。
【0015】
そのため、剥離応力による半導体ウエハの破損を防止することができる。さらに、粘着フィルムを剥離した後には、ウエハ表面に粘着剤層に起因する汚染物が殆ど付着することがなく、ウエハ表面の汚染防止にも優れた効果を発揮する。従って、本発明によれば、半導体ウエハの大口径化、薄層化、及びICの高性能化に対応できる半導体ウエハの裏面研削方法が提供される。また、作業環境を悪化させることもない。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の第1発明は、粘着力が温度変化に対して劇的に変化しうる半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルム(以下、粘着フィルムという)である。第2発明は、粘着フィルムを、A℃〜40℃(0℃<A℃<40℃)の温度範囲において粘着剤層を介して半導体ウエハの表面に貼着し、さらに該温度範囲内の冷却水をかけながらウエハ裏面を研削することによりウエハ表面を保護し、次いで、該温度範囲より低温領域であるB℃〜C℃〔−50℃≦B℃≦C℃≦(A−3)℃〕の温度範囲に冷却し、冷却状態を維持しながら、該粘着フィルムを剥離することを特徴とする半導体ウエハの裏面研削方法である。
【0017】
先ず、本発明の粘着フィルムの製造方法について説明する。本発明の粘着フィルムは、基材フィルムに粘着剤層を構成する成分を含有した粘着剤溶液またはエマルジョン液(以下、粘着剤塗布液という)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成することにより製造される。この場合、環境に起因する汚染等から粘着剤層を保護するために粘着剤層の表面に剥離フィルムを貼着することが好ましい。また、剥離フィルムの片表面に粘着剤を塗布、乾燥して粘着剤層を形成した後、粘着剤層の表面に基材フィルムを貼付して粘着剤層を基材フィルム側に転着する方法によっても製造される。この場合は、粘着剤層を乾燥する際等において粘着剤層表面が汚染されない利点がある。
【0018】
基材フィルムまたは剥離フィルムのいずれの片表面に粘着剤塗布液を塗布するかは、基材フィルム及び剥離フィルムの耐熱性、表面張力、半導体ウエハ表面への汚染性等を考慮して決める。例えば、剥離フィルムの耐熱性が基材フィルムのそれより優れている場合は、剥離フィルムの表面に粘着剤層を設けた後、基材フィルムへ転写する。耐熱性が同等または基材フィルムの方が優れている場合は、基材フィルムの表面に粘着剤層を設け、その表面に剥離フィルムを貼付する。しかし、粘着フィルムは、剥離フィルムを剥離したときに露出する粘着剤層の表面を介して半導体ウエハ表面に貼付されることを考慮し、粘着剤層による半導体ウエハ表面の汚染防止を図るためには、耐熱性の良好な剥離フィルムを使用し、その表面に粘着剤塗布液を塗布、乾燥して粘着剤層を形成する方法が好ましい。
【0019】
本発明の粘着フィルムに用いる基材フィルムとして、合成樹脂、天然ゴム、合成ゴム等から製造されたフィルムが挙げられる。具体的に例示するならば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリブタジエン、軟質塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、アイオノマー等の樹脂、およびそれらの共重合体エラストマー、およびジエン系、ニトリル系、シリコーン系、アクリル系等の合成ゴム等のフィルムが挙げられる。基材フィルムは単層体であっても、また、積層体であってもよい。
【0020】
基材フィルムの厚みは、半導体ウエハ裏面を研削する際のウエハの破損防止、ウエハ表面への貼付作業性および剥離作業性等に影響する。かかる観点から、基材フィルムの厚みは、通常、30〜600μmである。好ましくは100〜300μmである。基材フィルムの厚み精度は、粘着フィルムの厚み精度に影響を与え、ひいては裏面研削後の半導体ウエハの厚み精度に影響を与える。従って、基材フィルムは上記範囲の厚みにおいて±5μm以内の精度で作成されたものが好ましい。さらに好ましくは±3μm以内である。
【0021】
裏面を研削する際の半導体ウエハの破損防止を考慮すると、基材フィルムの硬度は、ASTM−D−2240に規定されるショアーD型硬度が40以下である樹脂をフィルム状に成形加工した弾性フィルム、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリブタジエンフィルム等が好ましく用いられる。この場合、基材フィルムの粘着剤層が設けられる面の反対側の面に、これより硬いフィルム、具体的には、ショアーD型硬度が40を超える樹脂をフィルム状に成形加工したフィルムを積層することが好ましい。そのことにより、粘着フィルムの剛性が増し、貼付作業性及び剥離作業性が改善される。
【0022】
また、半導体ウエハの裏面を研削した後に施される酸やアルカリ等のエッチング液によるエッチング処理の際にも引続き、半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを貼付して半導体ウエハの表面を保護する場合には、耐薬品性に優れた基材フィルムを使用することが好ましい。耐薬品性フィルムを基材フィルムの粘着剤層と反対側に積層してもよい。耐薬品性のフィルムしては、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等が挙げられる。
【0023】
基材フィルムと粘着剤層との接着力を向上させるため、基材フィルムの粘着剤層を設ける面にはコロナ放電処理または化学処理等を施すことが好ましい。また、基材フィルムと粘着剤層の間に下塗り剤を用いてもよい。
【0024】
本発明の粘着フィルムの粘着剤層表面に配設する剥離フィルムとして、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが挙げられる。必要に応じてその表面にシリコーン処理等が施されたものが好ましい。剥離フィルムの厚みは、通常20〜300μmである。好ましくは30〜100μmである。
【0025】
本発明の粘着フィルムに用いる粘着剤層は、特定の構成のモノマー混合物を共重合したベースポリマーを特定量の架橋剤によって架橋した構成の粘着剤層であり、粘着フィルムが、A℃〜40℃(0℃<A℃<40℃)の温度範囲においてウエハ裏面研削時に表面を保護するに充分な粘着力を示し、剥離時に該温度範囲外の低温領域であるB℃〜C℃〔−50℃≦B℃≦C℃≦(A−3)℃〕の温度範囲に冷却することにより、粘着力が低下しウエハを破損せずに剥離する性質を有する。
【0026】
ベースポリマーは、一般式(1)〔化3〕
【0027】
【化3】
Figure 0003775884
(式中、R1は−Hまたは−CH3、Xは−COOR2、−CONHR3、−OR4、−OCOR5、−R6または−C64−R7を示す。ここで、R2〜R6は炭素数が10〜50の脂肪族基、または少なくとも一部がフッ素置換された炭素数が6〜50の脂肪族基、R7は炭素数が8〜24のアルキル基を示す)
の構造を有するモノマー群から選ばれた少なくとも一種のモノマー(I)、架橋剤と架橋反応しうる官能基を有するモノマー(II)、並びに、モノマー(I)及び(II)と共重合可能なモノマー(III)を必須成分として含むモノマー混合物を共重合することにより得られる。
【0028】
モノマー(I)の具体例としては、炭素数10〜50の脂肪族基、または少なくとも一部がフッ素置換された炭素数6〜50の脂肪族基を有するアクリレート、同メタクリレート、同アクリルアミド誘導体、同メタクリルアミド誘導体、同ビニルエーテル誘導体、同ビニルエステル誘導体、α−オレフィンおよびその誘導体、並びに、炭素数8〜24のアルキル基を有するスチレン誘導体等から選ばれた少なくとも1種のモノマーが挙げられる。
【0029】
これらの内、粘着特性の温度依存性、重合反応性、モノマーの入手し易さ等を考慮すると、炭素数14〜50の線状脂肪族基を有するアクリレート、同メタクリレート、同アクリルアミド誘導体、同メタクリルアミド誘導体等が好ましい。さらに好ましくは、炭素数14〜22の線状脂肪族基を有するアクリレート、同メタクリレート、同アクリルアミド誘導体、同メタクリルアミド誘導体等である。特に好ましくは、炭素数14〜18の線状脂肪族基を有するアクリレート及びメタクリレートである。
【0030】
モノマー(I)は、ベースポリマーの原料となる全モノマーの総量中に、40〜98重量%含まれている事が好ましい。より好ましくは、50〜98重量%、さらに好ましくは、60〜98重量%である。粘着剤層中のモノマー(I)に起因する重量が多い程、B℃〜C℃の温度範囲に冷却した際の粘着力が低くなる傾向にある。
【0031】
架橋剤と架橋反応しうる官能基を有するモノマー(II)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル−ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル−ブチルアミノエチルメタクリレート等の中から選ばれた、少なくとも一種以上のものが挙げられる。モノマー(II)は、上記モノマー(I)の使用量を考慮して使用されるが、ベースポリマーの原料となる全モノマーの総量中に1〜30重量%の範囲で含有される様に使用される。
【0032】
モノマー(III)は、上記モノマー(I)およびモノマー(II)と共重合可能なものが挙げられる。具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等、炭素数が1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の中から選ばれた、少なくとも一種以上のものが挙げられる。
【0033】
これらの内、炭素数が1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルは、ベースポリマーの重合速度を増大させベースポリマーの製造コストを下げる効果、および、得られるベースポリマーの分子量を増大させる効果(ベースポリマーの分子量が増大することにより、粘着剤層がウエハを汚染しにくくなる)を有する点で好ましい。モノマー(III)は、上記モノマー(I)およびモノマー(II)の使用量を考慮して、ベースポリマーの原料となる全モノマーの総量中に1〜59重量%の範囲で含有される様に使用される。
【0034】
さらに、上記モノマー(I)、モノマー(II)およびモノマー(III)の他に、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イソシアネートエチルアクリレート、イソシアネートエチルメタクリレート、2−(1−アジリジニル)エチルアクリレート、2−(1−アジリジニル)エチルメタクリレート等の自己架橋性の官能基を持ったモノマー、さらには、ジビニルベンゼン、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、アクリル酸アリル、メアクリル酸アリル等の多官能性のモノマーを適宜組み合わせてもよい。
【0035】
ベースポリマーを重合する方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等既知の様々な方法が採用できる。重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられるが、製造コスト等を等慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−ターシャル−ブチルパーオキサイド、ジ−ターシャル−アミルパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物等が挙げられる。これらは、得られるベースポリマーの性質、重合方法に応じて適宜選択される。
【0036】
半導体ウエハ表面への汚染性を考慮すると、上記ベースポリマーは分子量が高い程好ましく、従って、その重量平均分子量は、ポリスチレン換算で300,000〜1,500,000が好ましい。より好ましくは500,000〜1,500,000である。
【0037】
本発明においては、粘着フィルムの粘着剤層に上記ベースポリマーの他に、架橋剤を必須成分として含有する。架橋剤の含有により、ベースポリマーが架橋し、ウエハ表面を汚染し難くなる。また、適量の架橋剤の含有は、ウエハの凹凸の状態によっても異なるが、ウエハ裏面研削後、冷却して粘着フィルムを剥離する際に、粘着力が低下し易くなる効果もある。
【0038】
架橋剤としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物、及びヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
架橋剤の含有量は、ベースリマー100重量部に対し、0.1〜5重量部である。より好ましくは0.1〜3重量部である。架橋剤の含有量が少ないと、粘着フィルム剥離時に、粘着剤層の一部がウエハ表面に残存して汚染する傾向がある。また含有量が多いと、A℃〜40℃において、ウエハ表面と粘着剤層の密着性が悪くなり、裏面研削中に、ウエハ表面と粘着剤層の間に水が浸入し、ウエハが破損する原因になる傾向がある。例え、ウエハが破損しなくても、水浸入に伴う、研削屑等の侵入によりウエハ表面が汚染されることがある。さらに、架橋剤の含有量が多過ぎることによっても、冷却時の粘着力の低下が不十分になることもあり、該フィルム剥離時にウエハを破損することもある。
【0040】
これらのことを考慮した上で、さらに、ベースポリマーの性質、粘着フィルムの使用条件(半導体ウエハの表面状態、形状、大きさ、裏面研削条件等)、後述する粘着剤層の厚み等を考慮して上記範囲内で適宜含有される。
【0041】
本発明の粘着フィルムの粘着剤層には、上記のベースポリマー、架橋剤の他に、適宜、可塑剤、粘着付与剤、安定剤、通常の粘着剤等を含有してもよい。
【0042】
粘着剤層の厚みは、半導体ウエハの表面状態、形状、裏面の研削方法等により適宣決められるが、半導体ウエハの裏面を研削している時の粘着力、研削が完了した後の剥離性等を勘案すると、通常2〜100μm程度である。好ましくは5〜70μmである。
【0043】
基材フィルムまたは剥離フィルムの片表面に粘着剤を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロールコーター法、バーコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された被粘着剤塗布液の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜200℃において10秒〜10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは80〜170℃において15秒〜5分間乾燥する。架橋剤とベースポリマーとの架橋反応を十分に促進させるために、被粘着剤塗布液の乾燥が終了した後に、粘着フィルムを40℃〜80℃において5〜300時間程度加熱しても良い。
【0044】
かくして、上記の如くして製造される本発明に係わる粘着フィルムは、少なくともA℃〜40℃(0℃<A℃<40℃)の温度範囲においてSUS304−BA板に貼着したときの該温度範囲における粘着力が150〜2,000g/25mmであり、且つ、該粘着力が剥離時にB℃〜C℃〔−50℃≦B℃≦C℃≦(A−3)℃〕の温度範囲に冷却することにより100g/25mm以下に低下する性質を有するものである。温度範囲A℃〜40℃における粘着力は高い程好ましく、従って、好ましい粘着力は200〜2000g/25mm、より好ましくは250〜2000g/25mmである。また、上記該温度範囲より低温領域であるB℃〜C℃〔−50℃≦B℃≦C℃≦(A−3)℃〕の温度領域に冷却したときの粘着力は低ければ低い程好ましい。従って、B℃〜C℃まで冷却したときの好ましい粘着力は80g/25mm以下、より好ましくは50g/25mm以下である。
【0045】
粘着力は、研削する半導体ウエハの口径、研削時間、半導体ウエハの表面形状、研削後の厚み等種々を考慮して上記範囲内に適宜調整される。このことにより、半導体ウエハ表面に粘着フィルムを貼着する工程から該ウエハ裏面の研削工程を経て粘着フィルムを剥離する工程の直前に到るまでの間、剥離したり、ウエハ表面と粘着剤層との間に冷却水の侵入が生じず、剥離する際には、B℃〜C℃の温度範囲まで冷却することによりウエハを破損させずに剥離することができる。
【0046】
上記温度A℃、C℃の値は、粘着フィルムの粘着剤層の構成を変更させることにより調節することができる。その中で、特にA℃、C℃の値は、粘着剤層の構成に依存する傾向がある。特に、モノマー(I)の種類、量によって大きく変化する。例えば、モノマー(I)の一般式(1)におけるR2、R3、R4、R5、R6、R7の炭素数が大きくなれば、A℃の値は大きくなる傾向にある。従って、それに伴いCの値が大きくなる傾向になる。また、モノマー(I)の量が多いと、A℃〜(A−3)℃付近の温度変化における粘着フィルムの粘着特性変化が鋭敏になり、C℃は(A−3)℃に近づく傾向にある。
【0047】
本発明において、Aの範囲は、0℃<A℃<40℃の範囲になるように、粘着フィルムの特性を調整する必要がある。さらに該範囲内において、粘着フィルムを貼着する際の作業環境、裏面研削時に使用する冷却水の温度制御等を考慮すれば、0℃<A℃≦15℃の範囲に調整されることが好ましい。
【0048】
また、B℃およびC℃の範囲は、冷却に要する装置のコスト、冷却による半導体ウエハへの負担(ウエハを急冷することにより歪みが生じ、ひいてはウエハを破損する事がある。)等を考慮すれば、共に−50℃以上になるように、粘着フィルムの特性を調整することが好ましく、より好ましくは−10℃以上である。さらに0℃を超えた場合、冷却に必要なコストが安くなり特に好ましい。
【0049】
またB℃〜C℃の範囲は、広い方が冷却時の温度制御が容易となり好ましい。しかし、該範囲内に冷却した際に、粘着力が本願範囲内に低下するのであれば、B℃〜C℃の範囲は狭くてもよく、B℃=C℃であっても差し支えない。但し、該温度範囲が狭い場合は、冷却時の温度制御をより正確に行なうことが必要となってくる。
上記、最も好ましいA℃、B℃およびC℃の関係をまとめると、0℃<B℃≦C℃≦(A−3)℃、且つA℃≦15℃となる。
【0050】
本発明の粘着フィルムの製造方法は上記の通りであるが、半導体ウエハ表面の汚染防止の観点から、基材フィルム、剥離フィルム等の原料資材の製造環境、粘着剤塗布液の調整、保存、塗布及び乾燥環境は、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持されていることが好ましい。
【0051】
次に、本発明の半導体ウエハの裏面研削方法について説明する。本発明の半導体ウエハの裏面研削方法は、上記で説明した粘着フィルムを、特定の温度範囲A℃〜40℃(0℃<A℃<40℃)において半導体ウエハ表面に貼着し、該温度範囲の冷却水をかけながら裏面研削を行ない、さらに、裏面研削終了後に該粘着フィルムを剥離する際に、特定の温度範囲B℃〜C℃〔−50℃≦B℃≦C℃≦(A−3)℃〕に冷却した状態で剥離することに特徴がある。
【0052】
その詳細は、先ず、粘着フィルムの粘着剤層から剥離フィルムを剥離して粘着剤層表面を露出させ、A℃〜40℃(0℃<A℃<40℃)の温度範囲において、その粘着剤層を介して集積回路が形成された側の半導体ウエハの表面に貼着する。次いで、粘着フィルムの基材フィルム側を介して研削機のチャックテーブル等に半導体ウエハを固定し、A℃〜40℃の温度範囲の冷却水をかけながら半導体ウエハの裏面を研削する。研削が終了した後、B℃〜C℃〔−50℃≦B℃≦C℃≦(A−3)℃〕の温度領域まで冷却し、冷却した状態で該粘着フィルムを剥離する。
【0053】
半導体ウエハ裏面の研削が完了した後、粘着フィルムを剥離する前にケミカルエッチング工程を経ることもある。この場合、ケミカルエッチング層はA℃〜40℃の範囲内に管理することが好ましい。必要に応じて、粘着フィルム剥離後に、半導体ウエハ表面に対して、水洗、プラズマ洗浄等の洗浄処理が施される。
【0054】
この様な裏面研削操作において、半導体ウエハは、研削前の厚みが、通常、500〜1000μmであるのに対して、半導体チップの種類等に応じ、通常、100〜600μm程度まで研削される。研削する前の半導体ウエハの厚みは、半導体ウエハの口径、種類等により適宜決められ、研削後の厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類、等により適宜決められる。
【0055】
粘着フィルムを半導体ウエハに貼着する操作は人手により行われる場合もあるが、一般に、ロール状の粘着フィルムを取り付けた自動貼り機と称される装置によって行われる。この様な自動貼り機として、例えば、タカトリ(株)製ATM−1000B、同ATM−1100、帝国精機(株)製STLシリーズ等がある。貼り付け時の温度をA℃〜40℃(0℃<A℃<40℃)に制御する方法は、公知の様々な方法が取られるが、例えばAが通常の作業環境(15℃〜30℃程度)℃より低い場合、作業環境を該温度範囲になるようにコントロールする事が簡便であり、好ましい。
【0056】
裏面研削方式としては、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の研削方式が採用される。それぞれ、研削は冷却水をウエハ裏面や砥石にかけながら行われるが、この際、冷却水の温度をA℃〜40℃に管理する必要がある。冷却水の温度管理方法は、例えば、A℃〜40℃に管理された恒温槽の中に、冷却水を通したりする等、公知の様々な方法が挙げられる。
【0057】
裏面研削終了後、必要に応じてケミカルエッチングが行われる。ケミカルエッチングは弗化水素酸や硝酸、硫酸、酢酸等の単独もしくは混合液からなる酸性水溶液や、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液、なる群から選ばれたエッチング液に、粘着フィルムを貼着した状態で半導体ウエハを浸漬する等の方法により行われる。該エッチングは、半導体ウエハ裏面に生じた歪の除去、ウエハのさらなる薄層化、酸化膜等の除去、電極を裏面に形成する際の前処理、等を目的として行われる。エッチング液は、上記の目的に応じて適宜選択される。エッチング液の温度は、A℃〜40℃に管理されることが好ましい。
【0058】
裏面研削、ケミカルエッチング終了後、粘着フィルムをB℃〜C℃〔−50℃≦B℃≦C℃≦(A−3)℃〕の温度領域まで冷却し、冷却した状態で該粘着フィルムを剥離する。剥離操作は、人手により行われる場合もあるが、一般には、自動剥がし機と称される装置により行われる。粘着フィルムを冷却する方法としては、基材表面側から冷風を当てたり、半導体ウエハの裏面をB℃〜C℃に維持されたテーブルの上に置いたり、既知の様々な方法が挙げられる。市販の自動剥がし機〔タカトリ(株)製ATRM−2000B、同ATRM−2100、帝国精機(株)製STPシリーズ等〕のウエハ固定用のチャックテーブルを冷却ができる様に改良する方法もある。B℃〜C℃の温度が0℃を超える様に、粘着フィルムを調整した場合、チャックテーブルにB℃〜C℃の温度範囲の冷却水を通す様に改良することが、コスト面で有利となる。
【0059】
本発明によれば、半導体ウエハの裏面を研削する際には、粘着フィルムがウエハ表面をしっかりと保護するため、裏面研削中に粘着フィルムが剥離してウエハが破損することがない。また、粘着剤層とウエハ表面の間に研削時の冷却水が浸入することがなく、それに伴う、粘着剤層とウエハ表面の間への研削屑等の浸入もないので、ウエハ表面が研削屑等により汚染されることが殆どない。さらに、裏面研削終了後には冷却することによって、粘着フィルムの剥離粘着力が低下するため、粘着フィルムを剥離する際の応力によりウエハが破損する事もない。粘着フィルム剥離後のウエハ表面には粘着剤層に起因する汚染が殆どない。
【0060】
本発明が適用できる半導体ウエハとして、シリコンウエハのみならず、ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、ガリウム−リン、ガリウム−ヒ素−アルミニウム等のウエハが挙げられる。
【0061】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。
以下に示す実施例及び比較例の中で、半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムの製造(粘着剤塗布液の調製以降)および半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを用いた半導体ウエハの裏面研削は全て米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持された環境において実施した。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
尚、得られた粘着フィルムの性能および該フィルムを用いた半導体ウエハ裏面研削方法における各特性は、下記(1)〜(3)の方法により評価した。
【0062】
(1)裏面研削時の半導体シリコンウエハの破損数(枚数)
集積回路が形成された半導体シリコンウエハ(径:8インチ、厚み:600μm、表面の凹凸:約15μm、チップの大きさ:50mm2)の表面に、それぞれの実施例および比較例で得られた粘着フィルムを23℃において貼付し、研削機〔(株)ディスコ製:バックグラインダーDFG−82IF/8〕を用いて、23℃の水をかけて冷却しながら半導体シリコンウエハの裏面を該ウエハの厚みが180μmになるまで研削する。研削終了後、5℃まで冷却した後に該フィルムを剥離した。各実施例および比較例毎に半導体シリコンウエハを20枚使用し、研削を20回行い、裏面研削中に破損したウエハの枚数(研削中の粘着フィルムの剥離が原因)、粘着フィルムと半導体ウエハの間に水の浸入があったウエハの枚数、剥離時に破損したウエハの枚数を計数した。尚、周辺から水の浸入があったウエハについては、水浸入の程度を周辺から2mm未満(チップの歩留りに影響のでない程度)の場合と、2mm以上の場合にわけて計数した。
【0063】
(2)顕微鏡による半導体ウエハへの汚染性の観察(%)
上記(1)における半導体ウエハ裏面研削中、及び、粘着フィルムの剥離時に破損しなかったウエハに対して、ウエハ表面の集積回路を光学顕微鏡〔(株)ニコン製:OPTIPHOT2〕を用いて50〜1000倍の範囲でウエハ表面全体及び回路の微細部分まで観察し、汚染されているチップの割合を評価した。
【0064】
尚、汚染があった場合、その内容も調査した。
【0065】
(3)粘着力(g/25mm)特性
下記に規定した条件以外は、JIS Z 0237に記載される方法に準拠しした。実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた粘着フィルムをその粘着剤層を介して、23℃においてSUS304−BA板(縦:20cm、横:5cm)の表面に貼付し1時間放置する。放置後、−10℃、−5℃、0℃、3℃、7℃、10℃、15℃、23℃、40℃において、試料の一端を挟持し、剥離角度:180度、剥離速度:300mm/min.でSUS304−BA板の表面から試料を剥離し、剥離する際の応力を測定してg/25mmに換算した。
測定した粘着力から粘着力の高い温度範囲(A℃〜40℃)と低い温度範囲(B℃〜C℃)および、それぞれの温度範囲での粘着力を求めた。
尚、比較例4で得られた粘着フィルムの粘着力特性(23℃)についても、上記の方法に準じて測定した(詳細は比較例4に記載)。
【0066】
調製例
<ベースポリマー1の合成>
アクリル酸テトラデシル〔モノマー(I)〕75重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル〔モノマー(II)〕2重量部、アクリル酸〔モノマー(II)〕1重量部、アクリル酸ブチル〔モノマー(III)〕12重量部、アクリル酸エチル〔モノマー(III)〕10重量部を、開始剤として、アゾイソブチロニトリル(AIBN)0.05重量部を用いて、酢酸エチル100重量部中で窒素雰囲気下、70℃で重合し、ベースポリマー1の溶液(固形分50重量%)を得た。得られたベースポリマー1の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、ポリスチレン換算で約70万であった。
<ベースポリマー2〜5の合成>
〔表1〕に示したモノマー混合物を用いた以外、ベースポリマー1の合成と同様の方法で、〔表1〕に示した分子量のベースポリマー2〜5の溶液(固形分50重量%)を得た。それぞれのベースポリマーの重量平均分子量をベースポリマー1と同様の方法で測定し、結果を〔表1〕に示した。
【0067】
【表1】
Figure 0003775884
【0068】
実施例1
調製例で得られたベースポリマー1の溶液(固形分50重量%)100重量部に、酢酸エチル50重量部およびイソシアネート系架橋剤〔三井東圧化学(株)製、オレスターP−49−75S、(固形分75重量%)〕を0.2重量部(架橋剤固形分として0.15重量部)加えて粘着剤塗布液を調製した。この塗布液をロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)の片面に塗布し、120℃で1分間乾燥して厚さ20μmの粘着剤層を設けた。次いで、コロナ放電処理を施した厚さ120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(ショアーD型硬度:38)の該処理面を貼り合わせ押圧して、粘着剤層を転写させることにより粘着フィルムを製造した。
得られた粘着フィルムの粘着力特性は、15℃〜40℃の範囲で350g〜450g/25mmの粘着力を示した。さらに、23℃でSUS304−BA板に貼着し、3℃〜7℃まで冷却した場合の粘着力は30〜50g/25mmであった。
得られた粘着フィルムを23℃において集積回路が形成された半導体シリコンウエハの表面に貼付し、研削機〔(株)ディスコ製:バックグラインダーDFG−82IF/8〕を用いて、23℃の水をかけて冷却しながら半導体シリコンウエハの裏面を該ウエハの厚みが180μmになるまで研削した。研削終了後、5℃付近まで冷却した後、該フィルムを剥離した。半導体シリコンウエハを20枚使用し研削を20回行った。
裏面研削中に破損したウエハ、粘着剤層と半導体ウエハの間に水の侵入があったウエハおよび剥離時に破損したウエハは皆無であった。
粘着フィルム剥離後のウエハ表面を光学顕微鏡〔(株)ニコン製:OPTIPHOT2〕を用いて50〜1000倍の範囲でウエハ表面全体及び回路の微細部分まで観察したところ、汚染されたチップは皆無であった。結果を〔表2〕に示す。
【0069】
実施例2〜6、比較例1〜3
〔表2〕に示した条件以外は、全て実施例1と同様の操作で粘着フィルムを製造し、同様の操作でウエハ裏面を研削した。得られた粘着フィルムの物性、ウエハ裏面研削結果等を〔表2〕に示す。
【0070】
比較例4
アクリル酸ブチル91重量部、アクリロニトリル4.5重量部、アクリル酸4.5重量部をトルエン150重量部中で、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル(以下、AIBNという)1重量部を用いて窒素雰囲気下80℃において共重合して、ベースポリマー溶液(固形分40重量%)を得た。
このベースポリマー溶液(固形分40重量%)100重量部にイソシアネート系架橋剤〔三井東圧化学(株)製、オレスターP−49−75S、(固形分75重量%)〕を2重量部(架橋剤固形分として1.5重量部)、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート6重量部およびα−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.4重量部を添加して粘着剤塗布液を調製した。
この塗布液をロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)の片面に塗布し、120℃で1分間乾燥して厚さ20μmの粘着剤層を設けた。次いで、コロナ放電処理を施した厚さ120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(ショアーD型硬度:38)の該処理面を貼り合わせ押圧して、粘着剤層を転写させることにより粘着フィルムを製造した。
得られた粘着フィルムは、23℃で、SUS304−BA板に対して450g/25mmの粘着力を示した。さらに23℃で、SUS304−BA板に貼着し1時間放置後、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム側から高圧水銀ランプ(40W/cm)から発生する紫外線を15cmの距離から20秒間光照射した後、剥離した際の粘着力は80g/25mmであった。
23℃において、得られた粘着フィルムを、集積回路が形成された半導体シリコンウエハの表面に貼付し、研削機〔(株)ディスコ製:バックグラインダーDFG−82IF/8〕を用いて、23℃の水をかけて冷却しながら半導体シリコンウエハの裏面を該ウエハの厚みが180μmになるまで研削した。研削終了後、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム側から高圧水銀ランプ(40W/cm)で15cmの距離から20秒間光照射した後、該粘着フィルムを剥離した。半導体シリコンウエハを20枚使用し、研削を20回行った。裏面研削中に破損したウエハ、粘着剤層と半導体ウエハの間に水の侵入があったウエハおよび剥離時に破損したウエハは皆無であった。
粘着フィルム剥離後のウエハ表面を光学顕微鏡〔(株)ニコン製:OPTIPHOT2〕を用いて50〜1000倍の範囲でウエハ表面全体及び回路の微細部分まで観察したところ、5%のチップに粘着剤層に起因する汚染が生じていた。結果を〔表2〕に示す。
【0071】
【表2】
Figure 0003775884
【0072】
【発明の効果】
本発明の半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムは、特定の構成のベースポリマーおよび架橋剤含む粘着剤層を有し、半導体ウエハの裏面を研削する際には強い粘着力で半導体ウエハを保護し、剥離する際には冷却するだけで容易に粘着力が低下する性質を有する事を特徴する。そのため、該フィルムを用いて該ウエハの裏面を研削した場合、研削操作中には、半導体ウエハと粘着フィルムの間に冷却水が侵入することがない上、半導体ウエハが破損することがない。また、剥離応力が小さいので剥離する際に半導体ウエハが破損することがない。さらに、剥離した後に粘着剤層からの汚染物が半導体ウエハ表面に付着することが殆どない。従って、半導体ウエハの大口径化、薄層化およびICの高性能化にある当技術分野において優れた効果を発揮するものである。

Claims (4)

  1. 基材フィルムの片面に粘着剤層が設けられた半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムであって、該粘着剤層が、一般式(1)〔化1〕
    Figure 0003775884
    (式中、R1は−Hまたは−CH3、Xは−COOR2、−CONHR3、−OR4、−OCOR5、−R6または−C64−R7を示す。ここで、R2〜R6は炭素数が10〜50の脂肪族基、または少なくとも一部がフッ素置換された炭素数が6〜50の脂肪族基、R7は炭素数が8〜24のアルキル基を示す)の構造を有するモノマー群から選ばれた少なくとも一種のモノマー(I)40〜98重量%、架橋剤と架橋反応しうる官能基を有するモノマー(II)1〜30重量%、及び、モノマー(I)及び(II)と共重合可能なモノマー(III)1〜59重量%を必須成分として含むモノマー混合物を共重合して得られたベースポリマー100重量部、並びに、イソシアネート系架橋剤0.1〜5重量部を含み、A℃〜40℃(0℃<A℃<40℃)の温度範囲においてSUS304−BA板に貼着したときの該温度範囲における粘着力が150〜2,000g/25mm、前記温度範囲でSUS304−BA板に貼着した状態でB℃〜C℃〔−50≦B≦C≦(A−3)℃〕の温度範囲に冷却したときのSUS304−BA板に対する粘着力が100g/25mm以下であることを特徴とする半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルム。
  2. A℃、B℃およびC℃の関係が、0℃<B℃≦C℃≦(A−3)℃、且つA℃≦15℃である請求項1記載の半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルム。
  3. 半導体ウエハの裏面研削時に粘着フィルムをその表面に貼着し、研削終了後に剥離する半導体ウエハの裏面研削方法であって、半導体ウエハの表面に請求項1記載の半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムをA℃〜40℃(0℃<A℃<40℃)の温度範囲において貼着して、該温度範囲に保たれた冷却水をかけながら半導体ウエハの裏面を研削し、次いで、B℃〜C℃〔−50℃≦B℃≦C℃≦(A−3)℃〕の温度範囲に冷却した後に半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを剥離することを特徴とする半導体ウエハの裏面研削方法。
  4. A℃、B℃およびC℃の関係が、0℃<B℃≦C℃≦(A−3)℃、且つA℃≦15℃である請求項3記載の半導体ウエハの裏面研削方法。
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