JP3772434B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用空調装置において、特に燃焼式ヒータにて空調風の加熱を行う燃焼暖房モードと、ヒートポンプ冷凍サイクルの凝縮熱にて空調風の加熱を行うヒートポンプ暖房モードとが切換可能なものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記燃焼暖房モードとヒートポンプ暖房モードとが切換可能な車両用空調装置として、特開平8−197937号公報に記載されているものがある。そして、このものでは、2つの暖房モードの使用条件は、例えば外気温が非常に低いときには(−10℃以下)、上記燃焼暖房モードを使用することが記載されている。さらにこのように外気温が非常に低くて、車室内を急速に暖房する場合は、燃焼暖房モードとヒートポンプ暖房モードとを併用する併用モードを使用することが記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来装置では、上記燃焼暖房モードから上記ヒートポンプ暖房モードに、または上記ヒートポンプ暖房モードから燃焼暖房モードに切り換わるのであるが、本発明者らがこのモードの切り換わりを検討した結果、以下の問題が発生することが分かった。
【0004】
▲1▼ ヒートポンプ暖房モードから燃焼暖房モードに切り換える場合。
この場合において、単にヒートポンプ暖房モードから燃焼暖房単独モードに切り換えると、燃焼式ヒータは理想的な燃焼状態を得るために急激に燃料を増量して暖房能力を上げることができないので、直ぐには十分な暖房能力が発揮できない。従って、このようにヒートポンプ暖房モードから燃焼暖房モードに切り換えると、空調風の温度が低下してしまうという問題が発生する。
【0005】
▲2▼ 燃焼暖房モードからヒートポンプ暖房モードに切り換える場合。
この場合でも、単に燃焼暖房モードからヒートポンプ暖房モードに切り換えたとしても、ヒートポンプ暖房モードを行うためにコンプレッサを駆動してもコンプレッサが冷えきっていると熱容量等によって直ぐには十分な暖房能力が発揮できない。従って、この場合においても空調風の温度が低下してしまうという問題が発生する。
【0006】
そこで、本発明は燃焼暖房モードとヒートポンプ暖房モードとの間で暖房運転が切り換わるときに、空調風の温度の低下を抑制することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために本発明では、以下の技術的手段を採用する。
請求項1記載の発明では、燃焼式ヒータ暖房モードとヒートポンプ暖房モードとの切り換わり時には、所定時間両モードを併用することを特徴としている。
これにより、燃焼式ヒータ暖房モードとヒートポンプ暖房モードとの切り換わり時には、所定時間両モードを併用するので、切り換わり後の暖房モードにて十分な暖房能力が発揮できるまで、切り換わり前の暖房モードにて暖房能力を使用することができる。この結果、燃焼式ヒータ暖房モードとヒートポンプ暖房モードとの切り換わり時に、空調風の温度の低下を抑制できる。
【0008】
また、請求項1記載の発明では、少なくとも前記車室内温度および前記設定温度とに基づいて前記温水の目標水温(TWO)を算出する目標水温算出手段(251、254)と、温水温度(TW)が目標水温(TWO)となるように圧縮機(20)の回転速度を制御する制御手段(30、100)とを有し、
制御手段(30、100)は、ヒートポンプ暖房モードから前記燃焼式ヒータ暖房モードに切り換わるときに、温水温度と目標水温との偏差(ΔTW)が小さくなるにつれて、圧縮機(20)を回転速度が徐々に低下するようにして停止させることを特徴としている。
【0009】
これにより、ヒートポンプ暖房モードから前記燃焼式ヒータ暖房モードに切り換わると、温水が燃焼式ヒータによって加熱されるので、温水温度と目標水温との偏差(ΔTW)が小さくなっていく。従って、制御手段によって自動的に圧縮機の回転数速度が低下していき、速やかに圧縮機を停止させることができるとともに、燃焼暖房モードに切り換えることができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明では、送風制御手段(100)は、燃焼式ヒータ暖房モードとヒートポンプ暖房モードとの切り換わり時には、送風手段(3)の送風量を低下させることを特徴としている。これにより、ある暖房モードに切り換えたときにそれほど暖房能力が無くとも、送風量を低下させるので、空調風の温度の低下を抑制できる。
【0011】
また、請求項3記載の発明では、少なくとも車室内温度および設定温度とに基づいて温水の目標水温(TWO)を算出し、送風制御手段(100)は、温水温度(TW)と前記目標水温(TWO)との偏差(ΔTW)が大きくなるほど、送風手段(3)の送風量を低下させることを特徴としている。
【0012】
これにより、温水温度(TW)と前記目標水温(TWO)との偏差(ΔTW)が大きくほど、暖房能力が不足しているので、空調風の温度が下がり易い。従って、上記偏差が大きくなるほど、送風量を低下させることで空調風の温度の低下を良好に抑制できる。
【0013】
また、請求項4記載の発明では、燃焼式ヒータ(52)は、その作動を停止させるときには、燃料供給手段(56)から供給される燃料を所定量にまで減少させることで、燃焼室(104)内に残留する残留燃料を燃やしきる消火制御が行われるようになっており、
前記圧縮機(20)は、前記燃焼式ヒータ暖房モードから前記ヒートポンプ暖房モードに切り換わるときに、前記消火制御が開始されると、所定の低回転速度にて所定時間予備運転が行われることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の車両用空気調和装置を電気自動車用空気調和装置に適用した複数の実施形態に基づいて説明する。
図1は電気自動車用空気調和装置の全体構成図である。
電気自動車用空気調和装置1は、車室内への空気通路をなす空調ケース2、この空調ケース2内に車室内への送風空気を発生させる送風機3、冷媒が循環する冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)4、温水が循環する温水サイクル(温水回路)5、および図示しない車載電源の電力により作動し各空調機器をコントロールする電子制御装置(以下ECUと呼ぶ)100等から構成されている。
【0015】
空調ケース2は、電気自動車の車室内の前方側に配設されている。その空調ケース2の最も風上側は、内外気切替箱を構成する部分で、内気導入口7および外気導入口8を有している。さらに、内気導入口7および外気導入口8の内側には、内外気切替ダンパ9が回動自在に取り付けられている。この内外気切替ダンパ9は、サーボモータ等のアクチュエータ(図示せず)により駆動される。
【0016】
また、空調ケース2の風下側には、デフ吹出通路11、フェイス吹出通路12、フット吹出通路13が設けられている。さらに、それぞれの吹出口の内側にはモード切替ダンパ14〜16が回動自在に取り付けられている。それらのモード切替ダンパ14〜16は、サーボモータ等のアクチュエータ(図示せず)によりそれぞれ駆動される。
【0017】
送風機3は、空調ケース2の風上側を構成するスクロールケーシング内に設置されている。この送風機3は、ファン17と、このファン17を駆動するブロワモータ18とからなる。そして、送風機3は、ブロアモータ18によって回転速度が制御されるもので、内気導入口7または外気導入口8のいずれか開かれた導入口から車室内空気(以下内気と略す)または車室外空気(以下外気と略す)を吸引して車室内へ送風する。
【0018】
冷凍サイクル4は、いわゆるアキュームレータサイクルであって、冷媒圧縮機20、冷媒水熱交換器21、第1減圧手段22、室外熱交換器23、第2減圧手段24、冷媒蒸発器25、アキュームレータ26、冷媒流路切替弁31〜33およびこれらを接続する冷媒配管等から構成されている。
冷媒圧縮機20は、電動式の冷媒圧縮機であって、吸入口より内部に吸入したガス冷媒を圧縮して高温、高圧のガス冷媒を吐出口より吐出する圧縮部と、この圧縮部を駆動する駆動部としての電動モータ(図示せず)とからなる。この冷媒圧縮機20は、ECU100の出力信号に基づいて冷媒圧縮機20の回転速度を制御する回転速度制御手段としてのエアコン用インバータ30を備えている。
【0019】
そして、上記電動モータは、エアコン用インバータ30によって上記車載電源から印加される電力が連続的あるいは段階的に可変制御される。したがって、冷媒圧縮機20は、印加電力の変化による電動モータの回転速度の変化によって、冷媒吐出容量を変化させて冷凍サイクル4内を循環する冷媒の流量を調節することにより冷媒水熱交換器21の加熱能力や冷媒蒸発器25の冷房能力を制御する。
【0020】
冷媒水熱交換器21は、冷媒圧縮機20の吐出口より吐出された高温、高圧のガス冷媒と温水サイクル5内を循環する温水とを熱交換させて温水を加熱する熱交換器である。
第1減圧手段22は、キャピラリチューブ、オリフィス、膨張弁等よりなり、後述のヒートポンプ温水暖房モード時に内部を冷媒が流れる。この第1減圧手段22は、内部を流れる冷媒を減圧して気液二相状態の冷媒にするものである。
【0021】
室外熱交換器23は、車室外で電気自動車の走行風を受け易い場所に設置されている。この室外熱交換器23は、上記ヒートポンプ暖房モード時に第1減圧手段22で減圧された低温、低圧の気液二相状態の冷媒と電動ファンにより吹き付けられる外気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる蒸発器として働く。また、室外熱交換器23は、後述の冷房モード時に冷媒水熱交換器21より流入した高圧の冷媒と上記電動ファンにより吹き付けられる外気とを熱交換させて冷媒を凝縮させる凝縮器として働く。
【0022】
第2減圧手段24は、キャピラリチューブ、オリフィス、膨張弁等よりなり、冷房モード時に内部を冷媒が流れる。この第2減圧手段24は、内部を流れる冷媒を減圧して気液二相状態の冷媒にする。
冷媒蒸発器25は、冷房モード時に第2減圧手段24で減圧された低温、低圧の気液二相状態の冷媒と送風機3の作用により通過する空気とを熱交換させて空気を冷却すると共に冷媒を蒸発気化させる。
【0023】
アキュームレータ26は、内部に流入した冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離してガス冷媒のみ冷媒圧縮機20に供給する気液分離器として働く。なお、気液分離器として、レシーバを使用しても良い。このレシーバの設置場所は、冷媒水熱交換器21と第1減圧手段22との間に接続し、室外熱交換器23と第2減圧手段24との間に接続するようにすると良い。
【0024】
冷媒流路切替弁31〜33は、冷凍サイクル4内の冷媒の流れ方向を切り替える電磁式の冷媒流路切替手段であって、通電されると開弁し、通電が停止されると閉弁する。
温水サイクル5は、前述の冷媒水熱交換器21、温水ヒータコア51、燃焼式ヒータ52、ウォータポンプ53、およびこれらを接続する温水配管等から構成されている。この実施例では、温水として不凍液(例えばエチレングリコール水溶液)を利用している。
【0025】
温水ヒータコア52は、空調ケース2内において冷媒蒸発器25より風下側に設置され、すなわち、空調ケース2の吹出口切替箱を構成するヒータユニットケース内に設置されている。この温水ヒータコア52は、高温に加熱された温水と空調ケース2内を流れる空気とを熱交換させて空気を加熱する。
この温水ヒータコア52の空気の入口部および出口部には、温水ヒータコア52を通過する空気量と温水ヒータコア52を迂回する空気量とを調節して車室内へ吹き出す吹出空気の温度を調整するためのエアミックスダンパ54、55が回動自在に取り付けられている。これらエアミックスダンパ54、55は、駆動手段としてサーボモータ等のアクチュエータ(図示せず)によりそれぞれ駆動される。
【0026】
ここで、本実施形態における冷凍サイクル4の冷媒の流れ方について簡単に説明する。また、以下の2つの運転モードは外気温等によって自動的に切り換わるようになっている。
▲1▼冷房モード(図1中矢印Cで示す)
冷房モードでは、冷媒圧縮機20にて圧縮された冷媒は、冷媒水熱交換器21を通過したのち、室外熱交換器23に流入し、室外熱交換器23にて冷媒が凝縮液化される。なお、この冷房モードではエアミックスドア54、55は、温水ヒータコア51に空気が通過しないような作動位置となり、ウォーターポンプ53も停止している。従って、冷媒水熱交換器21では冷媒はほとんど凝縮しない。そして、室外熱交換器23を通過した冷媒は、第2減圧手段24にて減圧されたのち、冷媒蒸発器25に流入する。冷媒蒸発器25では、比較的高温の空気が通過することで、冷媒が蒸発気化され、その後アキュムレータ26に流入したのち、冷媒圧縮機20に還流する。
【0027】
▲2▼ヒートポンプ暖房モード(以下、暖房モード、図1中矢印Hで示す)
暖房モードでは、冷媒圧縮機20にて圧縮された冷媒は、冷媒水熱交換器21を通過して、この冷媒水熱交換器21にて冷媒と温水とが熱交換されて、温水が加熱される。なお、暖房モードではウォーターポンプ53が駆動される。その後、冷媒水熱交換器21にて凝縮液化された冷媒は、第1減圧手段21に流入して減圧されたのち、室外熱交換器23に流入して蒸発気化される。なお、この暖房モードではエアミックスドア54、55は、空調ケース2内の空気が全て温水ヒータコア51を通過するような作動位置となる。そして、室外熱交換器23を通過した冷媒は、アキュムレータ26に流入したのち、冷媒圧縮機20に還流する。
【0028】
図2は燃焼式ヒータ52の具体的構造を示すもので、燃焼式ヒータ52は、燃焼ガスと上記温水とを熱交換器102において熱交換して、温水を加熱するものである。そして、この加熱された温水をウォータポンプ53により温水ヒータコア51へ導かれる。なお、図3は燃焼式ヒータ52の全体構成を示すブロック図である。
【0029】
燃焼式ヒータ52は、大別して、上記熱交換器102、燃焼室104、着火装置105および燃焼空気用送風機106から構成されている。
以下、上記構成要素について具体的に説明する。
燃焼室104は略円筒形状のもので、燃焼空気と燃料蒸発成分との混合気を形成する混合筒141と、この混合筒141の下流側に接続された燃焼筒142とを有している。混合筒141の中心部には燃焼空気を供給する空気供給パイプ143が同心状に配設されている。そして、混合筒141には、その円周方向に複数の空気供給孔141aが開けられている。
【0030】
着火装置105は、燃焼室104の混合筒141部分の上方に設けられ、燃焼室104内の混合気を着火する。この着火装置105は、燃料着火用のグロープラグ151を有している。このグロープラグ151は、円筒状のグロープラグボス部152にビス止めされた取付板153のネジ孔153aにネジ止め固定されている。このグロープラグ151は、円柱形状の中心支持棒151aと、この中心支持棒151aの外周に沿って巻回されたコイル状の電気ヒータ151bとから構成されている。
【0031】
この電気ヒータ151bの表面はセラミック製の耐熱部材で覆われており、この電気ヒータ151bはグロープラグボス部152内に配置されている。グロープラグボス部152の内周面には、略円筒状の鋳込ヒータ107が配設され、さらにこの鋳込ヒータ107の内周面には、略円筒状の燃料吸収体(ウィック)108が配設されている。
【0032】
この鋳込ヒータ107は、耐熱性、熱伝導性に優れた金属材料(銅合金等)からなる円筒形状の筒状加熱部172に、コイル状の電気ヒータ171を内蔵したものからなる。これは、円筒状の所定鋳型にコイル状の電気ヒータ171を挿入し、この鋳型に、溶かした上記金属材料を流し込み、これを固めて形成される。そして、燃料吸収体108は、耐熱金属材料(ステンレス等)からなる平板状金網を略円筒状に変形させて、鋳込ヒータ107の内周面に沿って挿嵌させている。こうすることにより、燃料吸収体108の弾性力により鋳込ヒータ107の内周面に密接する。
【0033】
そして、この鋳込ヒータ107により、燃料吸収体108に吸収、滞留させた液体燃料(軽油、灯油等)を加熱して、この液体燃料の蒸発をさらに促進させている。また、燃焼室104の混合筒141の内壁面にも、上述の燃料吸収体108と同じ構造の燃料吸収体108’が配設されている。
そして、グロープラグボス部152において、グロープラグ151の根元部に位置する部分には、燃料吸収体108側に液体燃料を導入するための燃料パイプ154が形成されており、この燃料パイプ154には、燃料タンク155から燃料ポンプ156により液体燃料が導入されるようになっている。また、鋳込ヒータ107の筒状加熱部172において、燃料パイプ154に位置する部分には、燃料吸収体108に液体燃料を導入するための燃料通路孔172aが形成されている。
【0034】
燃焼空気用送風機106は、燃焼室104の燃焼筒142部分の下方に配設されており、送風ファン106aを有している。この送風機106は、空気取入口161からの空気を送風ファン106aにより、前述した空気供給パイプ143の入口部側へ送風するものである。また、送風機106により供給された燃焼空気の一部は、空気通路163を通って、混合筒141に開けられた空気孔141aより、直接、混合筒141内へ流入するようになっている。
【0035】
また、この送風機106により供給された燃焼空気の一部は、空気通路162を通って、グロープラグボス部152に開けられた複数の空気通路孔152bおよび鋳込ヒータ107の空気通路孔172bを通ってグロープラグ151側へ流入するようになっている。
そして、燃焼室104の燃焼筒142を通過した燃焼ガスは、燃焼筒142の下流端でUターンして、燃焼筒142の外周面側に円筒状に形成された排気通路145を通って排気口144から外部へ排出されるようになっている。
【0036】
燃焼ガスと水とを熱交換する熱交換器102は、上記円筒状の排気通路145のさらに外周側に円筒状に形成されており、図2に示すウォータポンプ53の作動により、132から温水を吸入し、熱交換器102の温水入口部121に温水を供給する。
熱交換器102内の温水通路122は図2の右側端部の温水入口部121から温水が流入し、温水が図2の右側から左側へ螺旋状に流れるようになっている。熱交換器102において、図1左側端部の上方に温水出口123が配設されており、この温水出口123から流出する温水が、温水ヒータコア51に循環するようになっている。また、109は混合筒141における炎の有無を検知するフレームセンサで、フォトダイオードよりなる。
【0037】
次に、上記構成における作動を図4に基づいて説明する。
燃焼式ヒータ52がオンされると、上記電気制御装置100によりグロープラグ151(電気ヒータ151b)、鋳込ヒータ107(電気ヒータ171)に通電される。なお、この際、ウォータポンプ53は作動している。また、グロープラグ151および鋳込ヒータ107が発熱を開始し、燃焼室104内および燃料吸収体108の予熱を行う(以下、予熱制御)。
【0038】
ここで、燃料吸収体108の外周に密接して鋳込ヒータ107が設けられているため、この鋳込ヒータ107の電気ヒータ171の発生する熱は、比較的熱伝導性に劣る空気をほとんど介さないで、熱伝導性に優れた金属材料からなる筒状加熱部172全体に伝えられて、金属製(比較的熱伝導性に優れている)の燃料吸収体108の外周面全面を均一に加熱することができる。これに加えて、グロープラグ151からの熱が燃料吸収体108の内周面に伝えられる。このようにして、燃料吸収体108に滞留している液体燃料を効率よく加熱し、効率よく蒸発させている。
【0039】
また、本実施形態では、燃焼式ヒータ52の最大能力は、6000Kcal/hとなっている。そして、所定時間t1 (例えば、60秒程度)の経過後、燃料ポンプ156および燃焼空気用送風機106に通電され、液体燃料および空気の供給を開始する。
これにより、燃料タンク155の液体燃料が、燃料パイプ154、燃料通路孔172aを通って、グロープラグボス部152内の燃料吸収体108に供給される。また、同時に、送風機106の送風空気が、燃焼室104に導入され、かつ、空気通路162、空気通路孔152bおよび鋳込ヒータ107の空気通路孔172bを通って、グロープラグボス部152内に導入される。すると、予熱された燃料吸収体108により、液体燃料が効率よく加熱されて蒸発する。
【0040】
そして、燃焼室104の混合筒141内にて、上記燃料蒸発成分と、送風機106から送られる空気との混合気が形成され、グロープラグ151により、この混合気の着火、燃焼を開始する。着火と同時に、フレームセンサ109が燃焼の炎を検知し、グロープラグ151への通電を遮断する。また、このフレームセンサ9が燃焼の炎を検知してから所定時間t2 (例えば、20〜30秒程度)経過後に鋳込ヒータ7への通電を遮断し、これ以後、定常燃焼状態に入る。
【0041】
ここで、上記炎の検知後、鋳込ヒータ107への通電を所定時間t2 続けることにより、混合気の燃焼の勢いが急速に低下することを防止している。こうすることにより、燃料の蒸発量が急速に低下することを防止し、燃焼の炎が消えてしまう恐れを防止している。
次に、燃焼式ヒータ52をオフする場合には、消火制御行う。ここで、この消火制御では、鋳込ヒータ107への通電を開始し、先ず所定時間t3 (例えば、120秒程度)の間、鋳込ヒータ7の作動を継続して燃料吸収体108の加熱を行い、その後に鋳込ヒータ107の作動を停止する。また、所定時間t4 (例えば、50秒程度)の間、燃料ポンプ56の作動を継続してグロープラグボス部152内への燃料供給を行い、その後に燃料ポンプ56の作動を停止する。
【0042】
なお、この所定時間t4 では燃料ポンプ56から燃焼室104に供給される燃料は、燃焼式ヒータ52の暖房能力が最大能力の約40%(2400Kcal/h)となるように減量される。
そして、所定時間t5 (例えば、300秒程度)の間、燃焼空気用送風機6およびウォータポンプ3の作動を継続して掃気運転(パージ運転)を行い、その後に燃焼空気用送風機7およびウォータポンプ3の作動を停止する。
【0043】
なお、燃焼式ヒータ52は、燃料ポンプ156から圧送される燃料量が多いときに燃焼量が大きくなり温水に与える熱量も大きくなり、燃料量が少ないときに燃焼量が小さくなり温水に与える熱量も小さくなる。また、本実施形態では、燃焼式ヒータ52が着火されても、暖房能力を毎秒50Kcalでしか上げることができない。この理由は、暖房能力を急激に上げるために供給される燃料を急激に増量しても、良好な燃焼状態とならずに有害ガスを多大に発生するからである。
【0044】
次に上記ECU100について図1に基づいて説明する。
上記ECU100は、中央演算処理装置(以下CPUと言う)、ROM、RAM、A/D変換器、インターフェイス等を持ち、それ自体は周知のものである。また、ECU100は、上記車載電源より電力が供給されて作動する。
ECU100は、内気温センサ111、外気温センサ112、日射センサ113、冷媒圧力センサ114、エバ後温度センサ115、水温センサ116、117、吹出温センサ119および操作パネル200より入力される入力信号と予めインプットされた制御プログラムに基づいて、各空調機器を制御する。
【0045】
すなわち、ECU100は、各センサの検出値(検出信号)および操作パネル200の操作値(操作信号)などの入力信号と予めインプットされた制御プログラムに基づいて、内外気切替ダンパ9、モード切替ダンパ14〜16、送風機3のブロワモータ18、冷媒圧縮機20のエアコン用インバータ30、冷媒流路切替弁31〜33、燃焼式ヒータ55、ウォータポンプ56、エアミックスダンパ54、55および燃料ポンプ156の運転状態を制御する。
【0046】
内気温センサ111は、例えばサーミスタ等の感温素子よりなり、車室内の温度(内気温)を検出し、この検出値を内気温信号としてECU100へ出力する内気温検出手段である。外気温センサ112は、例えばサーミスタ等の感温素子よりなり、車室外の温度(外気温)を検出し、この検出値を外気温信号としてECU100へ出力する外気温検出手段である。
【0047】
日射センサ113は、車室内への日射量を検出し、この検出値を日射量信号としてECU100へ出力する日射量検出手段である。冷媒圧力センサ114は、冷媒圧縮機20の吐出圧力である冷凍サイクル4の高圧圧力(凝縮圧力)を検出し、この検出値を冷媒圧力信号としてECU100へ出力する冷媒圧力検出手段である。
【0048】
エバ後温度センサ115は、例えばサーミスタ等の感温素子よりなり、冷媒蒸発器25の空気出口温度を検出し、この検出値をエバ後温度信号としてECU100へ出力するエバ後温度検出手段、温水ヒータコア51の吸込温度検出手段である。水温センサ117は、例えばサーミスタ等の感温素子よりなり、燃焼式ヒータ52の下流側に設置され、燃焼式ヒータ52の出口水温(温水温度)を検出し、この検出値を温水温度信号としてECU100へ出力する温水温度検出手段、燃焼式ヒータ出口水温検出手段である。
【0049】
水温センサ116は、例えばサーミスタ等の感温素子よりなり、温水ヒータコア52の出口に設置され、温水ヒータコア51の出口水温(温水温度)を検出し、この検出値を温水温度信号としてECU100へ出力する温水温度検出手段である。吹出温センサ119は、例えばサーミスタ等の感温素子よりなり、空調ケース2より車室内へ吹き出す空気の吹出温度を検出し、この検出値を吹出温度信号としてECU100へ出力する吹出温度検出手段である。
【0050】
ここで、ECU100による燃焼式ヒータ52の制御の一例を説明する。ECU100は、上記水温センサ117が上限設定温度(例えば85℃)以上に上昇すると、燃料ポンプ156の駆動周波数を小さくして燃料の供給量を減少させる。
また、ECU100は、温水の水温が上限設定温度より高い過熱温度(例えば85℃)以上に上昇すると、図示しない運転灯等の報知手段を点滅させ、燃料ポンプ156の駆動を停止し、上記パージ運転を開始する。このとき、ウォータポンプ53を運転して温水サイクル5に温水を循環させる。また、水温センサ117が上限設定温度より低い下限設定温度(例えば70℃)以下に低下すると、再び燃焼式ヒータ52の運転を再開する。
【0051】
図5は操作パネルの一例を示した図である。操作パネル200には、空調風の吹出方向を切り替える吹出口モード切替スイッチ群201、車室内の設定温度を設定する温度設定レバー202、内外気をマニュアル操作にて切り替える内外気切替スイッチ203、空調風の吹出風量を手動により切り替えるブロワスイッチ204、および上記センサ等の値によって車室内を自動的に空調制御するオートスイッチ262、空調を停止する停止スイッチ261、および燃焼式ヒータ52を手動にて停止させる燃焼式ヒータオフスイッチ263が配置されている。
【0052】
吹出口モード切替スイッチ群201は、モード切替ダンパ14〜16を開閉制御することによって、乗員の頭胸部に送風するためのフェイスモード、乗員の頭胸部と足元の双方に送風するためのバイレベルモード、乗員の足元に送風するためのフットモード、乗員の足元と窓ガラスの双方に送風するためのフットデフモード、窓ガラスに送風するためのデフモードに各々切り替えるものであり、複数のスイッチ211〜215から構成されている。
【0053】
温度調整レバー202は、設定位置に応じて各空調モードにおける冷媒圧縮機20の回転速度の設定、またはエアミックスダンパ54、55の開度設定を行う吹出温度設定手段、温度設定手段である。温度調整レバー202は、ストローク量に応じた複数の設定ゾーンに分割され、選択された空調モードと設定ゾーンに応じて冷媒圧縮機20を駆動するエアコン用インバータ30の周波数を設定し回転速度制御が行われる。
【0054】
内外気切替スイッチ203は、内外気切替ダンパ9を開閉制御することによって内気導入口7から内気を導入する内気循環モード、外気導入口8から外気を導入する外気導入モードに切り替えるものである。
ここで、本実施形態では、上記ECU100によって暖房運転モードとして、上記暖房モードと燃焼暖房モードとが切換可能となっている。ここで、燃焼暖房モードとは冷媒圧縮機20を停止し、ウォーターポンプ53を駆動するとともに燃焼式ヒータ52にて温水を加熱するモードである。
【0055】
続いて、本発明の要部である上記2つの暖房モードの切換について図6のフローチャート(上記ECU100の処理内容)に基づいて説明する。なお、このフローチャートは、ECU100に電力が供給されているときに、上記オートスイッチがオンされたときに実行されるようになっている。
先ず、ステップS210では、各種情報読み込みとして、上記センサ111〜119のセンサ値および操作パネル200からの信号をデータとして読み込み記憶する。
【0056】
次にステップS220にて、暖房モードの設定を行う。ここで、本実施形態では、図6に示すようなヒステリシスを持った特性図から、暖房運転モードの設定が行われ、具体的にはステップS210にて読み込まれた外気温センサ112が検出した外気温Tamが、2℃より低い場合は燃焼暖房モードとなり、外気温Tamが3℃より高い場合には、上記暖房モードとなるように設定される。また、始めてこのフローチャートが実行されたときには、図6中上記特性図のの○で示した側の特性線にて暖房運転モードが設定される。
【0057】
続いて、ステップS230では、上記ステップS210にて読み込まれたデータに基づいて、車室内に吹き出す空調風の目標吹出温度TAO(以下、TAO)を以下の数式にて算出する。
【0058】
【数1】
TAO=A×Tset −B×Tr −C×Tam−D×Ts −E
ここで、Tset は温度設定レバー202にて設定された設定温度、Tr は内気温センサ111が検出した内気温、Tamは外気温センサ112が検出した外気温、Ts は日射センサ113が検出した日射量、A〜Dはゲイン、Eは定数である。
【0059】
そして、ステップS240に進んで、送風機3の送風量(ブロアレベル)の設定を行う。この送風量の設定は、図7に示す特性図から決定され、具体的には上記ステップS230にて算出されたTAOが大きくなるほど、送風量が大きく決定される。
ここで、図7に示すように上記燃焼暖房モードと上記暖房モードとでは、最低の送風量が異なっており、同じTAOであっても燃焼暖房モードにおける送風量は、暖房モードのそれより小さくなっている。このようにした理由は、燃焼暖房モードにおいて送風量をこれ以上小さくすると、水温が上記上限温度(85℃)に達してしまい、燃焼式ヒータ52が自動的にオフとなってしまうからである。
【0060】
続いて、ステップS250では、暖房水温制御として温水サイクル5内の温水温度を暖房負荷に応じて制御する。以下、この暖房水温制御について詳しく説明する。なお、この暖房水温制御は、上記燃焼暖房モードと上記暖房モードとで若干制御内容が異なる。
▲1▼燃焼暖房モード(図8参照、以下の内容を燃焼制御という)
先ず、ステップS251では、温水回路5の温水の目標水温TWOを以下の数式2にて算出する。
【0061】
【数2】
TWO=(TAO−TE)/φ+TE
ここで、TEは、上記エバ後温度センサ115で検出した吸込温度、φは、予め設定されたステップS240で決定された送風量(温水ヒータコア51を通過する風量)に基づいて決定された温度効率である。
次にステップS252にて、以下の数式3にて温度偏差Enを算出する。
【0062】
【数3】
En=TWO−TW
つまり、温度偏差Enは、上記目標水温TWOと、水温センサ117が検出する温水ヒータコア51の出口温度との偏差である。
続いて、ステップS253では、上記温度偏差Enに応じて燃焼式ヒータ52での燃焼能力(暖房能力)を制御する。具体的には温度偏差Enが大きくなるほど、燃料ポンプ156から供給される燃料が大きくなるように制御する。
【0063】
▲2▼暖房モード(図9参照、以下の制御内容をヒートポンプ制御という)
この内容は特開平8−197937号公報に記載されているものと同様であるので、さらに簡単に説明する。
ステップS254、255は、上記 ステップS251、252と同様であるので説明は省略する。
【0064】
続いて、ステップS256では、以下の数式4から偏差変化率Edotを算出する。
【0065】
【数4】
Edot=En−En- 1
ここで、Enは例えば4秒毎に更新されるため、En- 1 はEnに対して4秒前の値となる。
そして、ステップS257にて上記Edot、Enを用いて4秒前の冷媒圧縮機20の回転速度fn-1 (rpm)に対して増減する増減回転速度Δfをファジー理論によって求める。
【0066】
次にステップS258にて以下の数式5にて冷媒圧縮機20の目標回転速度fnを算出する。
【0067】
【数5】
fn =fn-1 +Δf
以上のように冷媒圧縮機20の実際の回転速度が、上記目標回転速度fnとなるようにエアコン用インバータ30を通電制御する。
次に本発明の要部である図6に示すステップS260における暖房モード切換制御の内容について説明する。
【0068】
先ず、本実施形態では、上述したように外気温Tamによって自動的に燃焼暖房モードと暖房モードとが切り換わる。そして、単に燃焼暖房モードと暖房モードとの間で切り換えると、発明が解決する課題にて述べたように空調風の温度が低下するという問題がある。そこで、本実施形態では以下のようにこの問題に対処している。
【0069】
先ず、暖房モードから燃焼暖房モードに切り換わる場合(外気温Tamが3℃以上から2℃以下になったとき)について図10に基づいて説明する。
この場合、図10に示すように燃焼式ヒータ52は上記グロー予熱が開始されるともに、このグロー予熱が行われる60秒間では燃焼式ヒータ52は燃焼していないので暖房能力は0である。従って、この間暖房能力を維持するために、冷媒圧縮機20は上記ヒートポンプ制御にて制御されている。そして、60秒後上記グロー予熱が停止されて、燃焼式ヒータ52が着火される。
【0070】
そして、燃焼式ヒータ52が着火されたのち2秒間は、冷媒圧縮機20は上記ヒートポンプ制御されている。つまり、燃焼式ヒータ52のグロー予熱開始後、62秒間は、水温低下を防止するために継続してヒートポンプ制御される。そして、燃焼式ヒータ52が着火されると、燃焼式ヒータ52は、上記燃焼制御にて制御される。
【0071】
ここで、燃焼式ヒータ52が着火された後、2秒後、つまりグロー予熱が開始されてから62秒経過すると、冷媒圧縮機20の回転速度は、上記ヒートポンプ制御とは異なった切換制御が行われる。つまり、この切換制御では、上述したステップS255にて説明した温度偏差Enの算出方法が異なるものであって、以下の数式6にて温度偏差Enが算出される。
【0072】
【数6】
En=(TWO−5)−TW
ここで、この数式6における温度偏差Enは、数式3における温度偏差Enから5℃減算されたものである。これにより、実際の水温TWは燃焼制御によって目標水温TWOに近づき数式6における温度偏差Enは小さくなるとともに、上記減算によって、冷媒圧縮機20の回転速度は強制的に次第に低下していく。そして、本実施形態では冷媒圧縮機20の回転数が例えば1500回転より小さくなると、速やかに圧縮機を停止させるとともに、燃焼暖房モードに切り換えることができる。この結果、暖房運転モードは暖房モードから燃焼暖房モードとなる。
【0073】
つまり、本実施形態では、燃焼式ヒータ52が着火されても暖房能力を毎秒50Kcalでしか上げることができないので、本実施形態ではこの間に燃焼暖房モードと暖房モードとを併用運転し、暖房モードを上記数式6に基づいて冷媒圧縮機20を制御することで、燃焼式ヒータ52にて十分な暖房能力が発揮できるまで暖房モードにて暖房能力を使用することができる。
【0074】
この結果、燃焼暖房モードと暖房モードとの切り換わり時に、空調風の温度の低下を抑制でき、さらに速やかに冷媒圧縮機21を停止させて、燃焼暖房モードに切り換えることができる。
次に、燃焼暖房モードから暖房モードに切り換わる場合(外気温Tamが2℃以下から3℃以上になったとき)について図11に基づいて説明する。
【0075】
この場合、図11に示すように燃焼式ヒータ52は上記消火制御が開始されるとともに冷媒圧縮機20が駆動される。ここで冷媒圧縮機20の回転数は下限値である1500rpmに制御される。そして、この下限値は以下のような考え方にて決定されている。
つまり、暖房モードを行うために冷媒圧縮機20を駆動するのであるが、それ以前燃焼暖房モードにて水温がある程度暖められているので、冷媒水熱交換器221を通じて温水の熱によって冷媒の圧力が急激に上昇しやすい。そして、通常の冷凍サイクルでは設計上かならず限界高圧圧力が設定されており、高圧圧力がこの限界高圧圧力より高くなると、冷媒圧縮機20を停止させるようにしている。
【0076】
従って、この急激な高圧圧力の上昇によって冷媒圧縮機20が停止しないようにするために、冷媒圧縮機20の回転数を低回数である1500rpmとしてある。また、冷媒圧縮機20は車室外に設置されているので、冷媒圧縮機20は停止中ではかなり低温な状態となっている。これにより、この際、冷媒圧縮機20を駆動してもその熱容量によって冷媒圧縮機20の仕事により暖房能力はそれほど大きく無い。この結果、上述の冷媒圧縮機20の低回転運転は、冷媒圧縮機20の暖機運転(予備運転)となる。
【0077】
また、この冷媒圧縮機20の低回転運転は、燃焼式ヒータ52の消火制御が開始されてから、所定時間T(本実施形態では300秒)行われる。そして、所定時間T経過すると、冷媒圧縮機20の回転速度は、上記ヒートポンプ制御にて制御される。
ここで、燃焼式ヒータ52の消火制御は、暖房能力(燃料供給量)を最大の約40%(2400Kcal/h)にまで落とすと述べた。従って、燃焼式ヒータ52の消火制御が開始されると暖房能力が低下して空調風の温度が低下する。
【0078】
そこで、本実施形態では燃焼式ヒータ52の消火制御が開始されると、送風機3の送風量を低下させることで、空調風の温度の低下を抑制する。以下、図11に基づいてこれを説明する。
送風機2の送風量は、上記TAOに基づいて上述した図7に示す特性図から決定されているが、本実施形態ではこの送風量を上記目標水温TWOと実際の水温TWとの差ΔTW(Enとも言える)に応じて低下させる。具体的には差ΔTWの差が大きくなるほど、暖房能力が足りないので送風量の低下レベルを大きく算出する。従って、上記差ΔTWが小さいほど、送風機3の送風量は図7の特性にて決定された値に近づくことになる。これにより、燃焼式ヒータ52の消火制御中で、かつ冷媒圧縮機20の暖機運転中において、良好に空調風の温度の低下を抑制できる。
【0079】
また、本実施形態では上記低下レベルは、上記ΔTWが1℃に対して2〜10m3 /hとしてある。以下、このΔTW1℃に対する低下レベルを1レベルとして説明する。
このように燃焼式ヒータ52の消火制御が開始されると、送風機3の送風量低下制御が行われ、消火制御開始後50秒経過すると、燃焼式ヒータ52は上記パージ運転に切り換わる。そして、消火制御が終了すると、送風機3の送風量増加制御が行われる。以下、この送風量増加制御について説明する。
【0080】
消火制御が行われた後、上記パージ運転が開始されると、送風機3が駆動しているので水温TWは徐々に低下していく。そして、ECU100はこの間水温センサ117の検出温TWの最低値TWminを更新しながら記憶するようになっている。そして、一旦水温が低下した後、パージ運転の間でも上述したように冷媒圧縮機20は1500rpmで駆動し続けているので、冷媒水熱交換器21にて徐々に温水が加熱される。従って、検出温TWは上昇し、本実施形態では上記最低値TWminより検出温TWが2℃高くなると、2秒毎に1レベルづつ送風機3の送風量を増加させ、最終的に図7に示す特性図から決定された送風量となるまで増加させる。
【0081】
また、パージ運転の間に上記最低値TWminより検出温TWが2℃高くならなくとも、消火制御が開始されて300秒経過すると、冷媒圧縮機21の回転速度がヒートポンプ制御にて制御されるので、必ず水温は上昇する。
(他の実施形態)
上記実施形態では、外気温Tamに応じて暖房モードと燃焼暖房モードとを切り換えたが、本発明はこれに限らず例えば上記TAOで行っても良い。
【0082】
また、上記各実施形態では、燃焼暖房モードから暖房モードに切り換えるときに消火制御を行い、この消火制御中に冷媒圧縮機20の予備運転を行ったが、燃焼暖房モードにおいて予備運転を行うようにしても良い。
また、上記各実施形態では、温水サイクル5の温水を冷媒水熱交換器21にて加熱するようにしたが、図12に示すように温水のような中間媒体を使用せずに冷媒の熱にて空調ケース2内の空気を加熱するようなものでも適用できる。なお、図12では、上記図1と同様な機能のものは同一の記号を付ける。また、200は逆止弁、201は室内熱交換器(凝縮器)、202は四方弁である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】上記実施形態における燃焼式ヒータ52の全体構成図である。
【図3】上記実施形態における燃焼式ヒータ52のブロック構成図である。
【図4】上記実施形態における燃焼式ヒータ52の作動を示すタイムチャートである。
【図5】上記実施形態におけるエアコン操作パネルを示す図である。
【図6】上記実施形態におけるECU100の制御内容を示す図である。
【図7】上記実施形態におけるTAOとブロアレベルとの関係を表す特性図である。
【図8】上記実施形態における暖房(ヒートポンプ)モードにおけるECU100の制御内容を示す図である。
【図9】上記実施形態における燃焼暖房モードにおけるECU100の制御内容を示す図である。
【図10】上記実施形態における暖房(ヒートポンプ)モードから燃焼暖房モードに切り換わるときにおけるECU100の制御内容を示す図である。
【図11】上記実施形態における燃焼暖房モードから暖房(ヒートポンプ)モードに切り換わるときにおけるECU100の制御内容を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
2…空調ケース、4…冷凍サイクル、20…圧縮機、21…冷媒水熱交換器
25…冷媒蒸発器、52…燃焼式ヒータ、100…ECU。
Claims (4)
- 車室内への空気通路をなす空調ケース(2)と、
前記空調ケース(2)内に設けられ、通過する空気を加熱する暖房用熱交換器(51)と、
この暖房用熱交換器(51)に温水を循環させる温水回路(5)と、
前記温水回路(5)を循環する温水を燃焼熱により加熱する燃焼式ヒータ(52)と、
冷媒を高温高圧に圧縮する圧縮機(20)、この圧縮機(20)にて圧縮された高温冷媒と前記温水とを熱交換して前記高温冷媒を凝縮するとともに前記温水を加熱する冷媒水熱交換器(21)、この冷媒水熱交換器(21)を通過した冷媒を減圧する減圧手段(22)、およびこの減圧手段(22)にて減圧された冷媒を蒸発気化する蒸発器(25)を有する冷凍サイクル(4)と、
車室内温度を検出する内気温度検出手段(111)と、
車室内の設定温度を設定する温度設定手段(202)と、
前記暖房用熱交換器に循環する温水温度(TW)を検出する温水温度検出手段(106)と、
少なくとも前記車室内温度および前記設定温度に基づいて前記温水の目標水温(TWO)を算出する目標水温算出手段(251、254)と、
前記温水温度(TW)が前記目標水温(TWO)となるように前記圧縮機(20)の回転速度を制御する制御手段(30、100)とを備え、
前記燃焼式ヒータ(52)にて前記暖房用熱交換器(51)を通じて前記空調ケース(2)内の空気を加熱する燃焼式ヒータ暖房モードと、前記冷凍サイクル(4)を作動させて前記冷媒水熱交換器(21)および前記暖房用熱交換器(51)を通じて前記空調ケース(2)内の空気を加熱するヒートポンプ暖房モードとが切換可能になっており、
前記燃焼式ヒータ暖房モードと前記ヒートポンプ暖房モードとの切り換わり時には、前記両モードを所定時間併用するようになっており、
さらに、前記制御手段(30、100)は、前記ヒートポンプ暖房モードから前記燃焼式ヒータ暖房モードに切り換わるときに、前記温水温度と前記目標水温との偏差(En)が小さくなるにつれて、前記圧縮機(20)を回転速度が徐々に低下するようにして停止させることを特徴とする車両用空調装置。 - 前記空調ケース(2)内に車室内への送風空気を発生する送風手段(3)と、前記送風手段の送風量を制御する送風制御手段(100)とを備え、
前記送風制御手段(100)は、前記燃焼式ヒータ暖房モードと前記ヒートポンプ暖房モードとの切り換わり時には、前記送風手段(3)の送風量を低下させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。 - 前記送風制御手段(100)は、前記温水温度(TW)と前記目標水温(TWO)との偏差(ΔTW)が大きくなるほど、前記送風手段(3)の送風量を低下させることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
- 前記燃焼式ヒータ(52)は、その作動を停止させるときには、燃料供給手段(56)から供給される燃料を所定量にまで減少させることで、燃焼室(104)内に残留する残留燃料を燃やしきる消火制御が行われるようになっており、
前記圧縮機(20)は、前記燃焼式ヒータ暖房モードから前記ヒートポンプ暖房モードに切り換わるときに、前記消火制御が開始されると、所定の低回転速度にて所定時間予備運転が行われることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
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