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JP3771782B2 - ユニット式建物 - Google Patents

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JP3771782B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柱のない大空間を形成するために、四本の柱のうちの一本が省略された箱状の建物ユニットを複数備え、これらのうち隣接する建物ユニット間に補強梁が設けられたユニット式建物に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、工場で製造した箱状の建物ユニットを、建築現場で複数連結させて建築されるユニット式建物が利用されている。
このユニット式建物を形成する建物ユニットとしては、四隅の柱の上下端を天井梁および床梁で連結した箱状のフレームを有するものが一般的である。フレームには、天井梁に支持される天井面材、床梁に支持される床面材および部屋を仕切る間仕切壁等の内装材や、軽量気泡コンクリート等で形成された外壁等の外装材が工場で組付けられる。
このようなユニット式建物によれば、工場において箱状のフレームに内装材や外装材の取り付け作業まで行って建物ユニットを製造した後、その建物ユニットを現場に運搬して連結作業を行うだけで建物が完成するから、建築現場での作業が大幅に削減され、工事を短期間で完了できるというメリットが得られる。
【0003】
一方、建物ユニットを上下積層して形成したユニット式建物(以降、積層ユニット式建物と呼ぶ)において、下側建物ユニットの内部に、広い居間等のような柱のない大空間を形成する場合がある。この場合、例えば、通常の建物ユニットのフレームに設けられた四本の柱のうちの一つを省略して大空間用建物ユニットとし、この大空間用建物ユニットの柱が省略された角隅部を四つ寄せ合わせて大空間を形成する。
【0004】
この際、一の柱が省略されるので、大空間用建物ユニットの剛性が低下するため、柱が省略された角隅部を挟んでその両側に配置される柱の間に、通常の2スパン分の長さを有する補強梁を設けて剛性を補っている(特開平8−277580号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開平8−277580号公報に開示された発明によれば、下側建物ユニット、あるいは、下側建物ユニットと上側建物ユニットとの両方に補強梁が接続されることによって、柱が省略された角隅部が補強されているが、上側建物ユニットの荷重が下側建物ユニットの天井梁に作用する構造であるため、補強梁の中間部分が撓む可能性があった。
一般に、積層ユニット式建物において、下側建物ユニットを大空間用建物ユニットで形成した場合、補強梁が設けられていても、補強梁が支持する建物ユニットの荷重によって補強梁の中間部分が下に撓む。特に、補強梁の中央部分は、大空間用建物ユニットの柱が省略された角隅部に位置しているから、撓みが最大となる。その結果、大空間用建物ユニットの天井面中央の垂れ下がりや、その上階床面の凹みが発生し、別途修正が必要になる可能性があった。
【0006】
本発明の目的は、内部に大空間を形成し、かつこの大空間の天井面中央の垂れ下がりやこの大空間の上階床面の凹みの発生を抑える補強梁を備えたユニット式建物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のユニット式建物は、次の構成を採用する。
本発明を図面を参照して説明すると、請求項1に記載のユニット式建物は、四隅の柱41の上下端を天井梁42および床梁43で連結して箱状に形成されたフレームを有する通常の建物ユニット20Aから柱が一本省略された大空間用建物ユニット20Bを複数有し、これら大空間用建物ユニットの前記柱が省略された角隅部20Dを寄せ合わせて配置された複数の下側建物ユニット20Bと、この下側建物ユニットの上に積層された上側建物ユニット30Aとを備え、前記角隅部を補強する補強梁70が設けられたユニット式建物であって、
前記補強梁は、前記角隅部の両側に配置される柱の間に架け渡される梁本体71と、この梁本体の略中央に設けられた中央接続部73と、前記梁本体の端部に設けられた端部接続部74とを備え、前記各接続部は、前記梁本体に接続される梁本体接続部分731,741と、前記梁本体の両側に隣接する前記上側建物ユニットおよび下側建物ユニットのうち少なくとも一方に接続されるユニット接続部分732,742とを備えるとともに、前記中央接続部のユニット接続部分は、前記端部接続部のユニット接続部分より高い位置に設けられ、かつ前記各ユニット接続部分が前記建物ユニットに接続された状態において、前記各ユニット接続部分は、前記建物ユニットに対する相対高さ位置が略一定であり、前記端部接続部は前記建物ユニットに対して下向きの力が生じ、前記中央接続部は前記建物ユニットに対して上向きの力が生じるよう設定されていることを特徴とする。
【0008】
補強梁を端部接続部と中央接続部とを介して建物ユニットに連結した場合、補強梁は、端部接続部と中央接続部とを介して上側建物ユニットの荷重を受けるが、中央部分の柱が省略されているので、この状態では上側建物ユニットの床梁や下側建物ユニットの天井梁が撓む。
この発明によれば、建物ユニットに対して下向きの力が端部接続部に、上向きの力が中央接続部に生じるように設定したので、この上向きの力が上側建物ユニットの荷重と釣り合って、上側建物ユニットが支持される。よって、大空間用建物ユニットを用いて内部に大空間を形成しても、この大空間の天井面中央の垂れ下がりやその上階床面の凹みの発生を抑えることができる。
【0010】
具体的には、中央接続部のユニット接続部分を端部接続部のユニット接続部分より高い位置に形成したので、これらのユニット接続部分を建物ユニットに接続していくと、中央接続部が下方に押し下げられ、つまり、補強梁の中央部分が下方に撓んで、各ユニット接続部分の建物ユニットに対する高さ位置が一定になる。すなわち、補強梁の中央部分が弾性変形して撓むことによって補強梁に内部応力が発生し、中央接続部には上向きの力を、端部接続部に下向きの力を得ることができ、上側建物ユニットの荷重を支持することができる。
【0011】
例えば、中央接続部のユニット接続部分と端部接続部のユニット接続部分との高さ寸法の差を、上側建物ユニットによって生ずる補強梁中央の撓み寸法に等しく設定すれば、ユニット接続部分の高さ位置が略水平になった状態で、上側建物ユニットの荷重と補強梁に発生する内部応力が釣り合うことになる。
したがって、特に剛性の高い材料で補強梁を形成しなくても、予め計算することによって、必要な上向きおよび下向きの力を容易に得ることができる。
【0012】
請求項に記載のユニット式建物は、請求項に記載のユニット式建物において、前記梁本体は直線状であることを特徴とする。
この発明によれば、梁本体を直線状に形成したので、梁本体の製作が容易にできる。
【0013】
請求項に記載のユニット式建物は、請求項に記載のユニット式建物において、前記各接続部は板状材で形成され、かつ前記梁本体接続部分の高さ位置が前記中央接続部と前記端部接続部とで異なっていることを特徴とする。
この発明によれば、接続部が板状材であるので、梁本体にスリットを形成するだけで接続部を梁本体に容易に固定できる。また、各接続部の梁本体接続部分、つまりスリットの高さ位置を調整することによってユニット接続部分の高さ位置を調整するから、接続部を平板状に形成することができ、接続部の製作が容易にできる。
【0014】
請求項に記載のユニット式建物は、請求項に記載のユニット式建物において、前記各接続部は板状材で形成され、かつ前記各接続部の前記梁本体接続部分の高さ位置が一定であることを特徴とする。
この発明によれば、各接続部が板状材であるので、梁本体にスリットを形成するだけで各接続部を梁本体に容易に固定できる。また、各接続部の梁本体接続部分、つまりスリットの高さ位置が一定なので、梁本体を連続加工により容易に製作できる。この際、折り曲げ加工によって各接続部のユニット接続部分と梁本体接続部分との高さ位置を変えて製作することが容易にできる。
【0015】
請求項に記載のユニット式建物は、請求項に記載のユニット式建物において、前記梁本体は、その軸線の中央が端部より高い位置になるよう屈曲されていることを特徴とする。
この発明によれば、中央接続部のユニット接続部分と端部接続部のユニット接続部分との高さ寸法の差に合わせて梁本体を屈曲させるので、各接続部の梁本体接続部分の高さ位置を梁本体の軸線に対して一定の高さに形成できる。したがって、梁本体を連続加工により容易に形成できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態に係るユニット式建物10が示されている。このユニット式建物10は、基礎11と、この基礎11の上に形成される建物本体12と、この建物本体12の上に形成される屋根13とを備えている。
このうち、建物本体12は、箱状に形成された建物ユニットが複数組合わせて形成され、下側建物ユニットとしての1階建物ユニット20と、上側建物ユニットとしての2階建物ユニット30とを備えている。
【0017】
1階建物ユニット20は、図2に示すように、建物本体12の外周縁に沿ってL字形状に配置された5個の通常の建物ユニット20Aと、一点鎖線のハッチングで示すように、通常の建物ユニット20Aが形成するL字の入隅部分に配置された4個の大空間用建物ユニット20Bとで構成されている。
2階建物ユニット30は、通常の建物ユニット20Aと同一形状である9個の通常の建物ユニット30Aで構成されている。
【0018】
通常の建物ユニット20A、30Aは、図3に示すように、四隅の柱41の上下端を連結する天井梁42および床梁43を有する箱状のフレーム40を備えている。このうち、柱41と天井梁42とは、柱41の柱頭側に配置される柱頭接合部材45を介して連結され、柱41と床梁43とは、柱41の柱脚側に配置される柱脚接合部材46を介して連結されている。
天井梁42としては、長さの異なる短辺天井梁42Aおよび長辺天井梁42Bの二種類が設けられ、床梁43としては、長さの異なる短辺床梁43Aおよび長辺床梁43Bの二種類が設けられている。また、対向する長辺天井梁42Bの間には、天井面材を支持するための天井小梁が架け渡され(図示省略)、また、対向する長辺床梁43Bの間には、床を形成するパーチクルボード等の床面材を支持するための複数の根太が架け渡されている(図示省略)。
【0019】
図4には、通常の建物ユニット20A、30Aの連結部分の分解斜視図が示されている。
柱頭接合部材45の上面には、位置決めピン45Aと、挿通孔45Bとが設けられ、柱脚接合部材46の下面には、図示しない位置決め孔と、挿通孔46Bとが設けられている。
また、通常の建物ユニット20A、30A同士の連結には、平板状の通常のシアプレート60が用いられる。通常のシアプレート60が、1階建物ユニット20Aの隣接する複数の柱頭接合部材45と、これらの柱頭接合部材45の上に配置される2階建物ユニット30Aの柱脚接合部材46との間に介在されることにより、上下方向および水平方向に隣接する建物ユニット20A、30A同士が連結される。建物ユニット20A、30A同士の連結には、緊締具81としてのボルト81Aとナット81Bが用いられている。
【0020】
具体的には、通常のシアプレート60には、位置決め孔60Aと挿通孔60Bとが設けられている。1階建物ユニット20Aの柱頭接合部材45の位置決めピン45Aが、通常のシアプレート60の位置決め孔60Aに挿通されて、2階建物ユニット30Aの柱脚接合部材46の位置決め孔に嵌合されることにより、建物ユニット20A、30A同士の位置が決定される。そして、1階建物ユニット20Aの柱頭接合部材45の挿通孔45B、通常のシアプレート60の挿通孔60Bおよび2階建物ユニット30Aの柱脚接合部材46の挿通孔46Bにボルト81Aが挿通され、このボルト81Aにナット81Bが螺合されて緊締されることにより、建物ユニット20A、30A同士が連結される。
【0021】
図5には、大空間用建物ユニット20Bの分解斜視図が示されている。
大空間用建物ユニット20Bは、通常の建物ユニット20Aのフレーム40の1本の柱41が省略された角隅部20Dを備えた箱状の大空間用フレーム50を備え、各々の1つの角隅部20D同士が寄せ合わされた状態で隣接配置されている。
これにより、4個の建物ユニット20Bの内部には、天井と床との間に柱41等の突出物が何ら存在しない広い大空間が形成される。
また、大空間用建物ユニット20Bは、柱41が省略されかつ寄せ合わされた角隅部20Dを間において、その短辺方向両側に角隅部20Cを備えており、この角隅部20Cに配置される柱41の間には補強梁70が架け渡されている。
【0022】
図6には、補強梁70の全体斜視図が示されている。
補強梁70は、断面縦長の長方形であって、継目なく一体成形された直線状の筒状部材である梁本体71と、この梁本体71の高さ方向中間の所定位置に設けられた平板状の接続部72とを備えている。接続部72は、角隅部20Dに対応した位置であって梁本体71の中央に設けられた中央接続部73と、角隅部20Dの両側の角隅部20Cに対応した位置であって梁本体71の端部に設けられた端部接続部74とを含んで構成されている。
【0023】
中央接続部73は、梁本体71の上端から高さ寸法Xだけ下がった箇所にスリットが設けられ、このスリットに通常のシアプレート60が挿通されて溶接固定されることによって形成されている。また、中央接続部73は、梁本体71に接続される梁本体接続部分731と、この梁本体接続部分731の両端部であって、1階建物ユニット20Bおよび2階建物ユニット30Aに接続されるユニット接続部分732とを備えている。ユニット接続部分732には、複数の位置決め孔73Aおよび挿通孔73Bが設けられている。
【0024】
端部接続部74は、梁本体71の上端から高さ寸法Yだけ下がった箇所にスリットが設けられ、このスリットに通常のシアプレート60が挿通されて溶接固定されることによって形成されている。また、端部接続部74は、梁本体71に接続される梁本体接続部分741と、この梁本体接続部分741の両端部であって、1階建物ユニット20Bおよび2階建物ユニット30Aに接続されるユニット接続部分742とを備えている。ユニット接続部分742には、複数の位置決め孔74Aおよび挿通孔74Bが設けられている。
【0025】
ここで、高さ寸法Xは高さ寸法Yより小さい値に設定されている。つまり、中央接続部73の梁本体接続部分731が、端部接続部74の梁本体接続部分741より、梁本体71に対して高さ寸法の差Y−Xだけ高い位置となっている。よって、各接続部72は平板状であるから、中央接続部73のユニット接続部分732と、端部接続部74のユニット接続部分742との高さ寸法の差もY−Xとなっている。
高さ寸法の差Y−Xは、2階建物ユニット30Aの荷重によって生ずる補強梁70中央の撓みに等しく設定され、実験等により適宜決められてよい。
【0026】
図7には、補強梁70の中央接続部73の拡大断面図が示され、図8には、補強梁70と大空間用建物ユニット20Bとの連結部分の分解斜視図が示されている。
梁本体71の梁幅Wは、隣接する2階建物ユニット30Aの間に形成される隙間より僅かに狭くなっている。また、梁本体71の梁背Hは、補強梁70に必要な剛性によって適宜決められてよい。
【0027】
中央接続部73のユニット接続部分732は、通常のシアプレート60と同様に、1階建物ユニット20Bの隣接する複数の柱頭接合部材45と、これらの柱頭接合部材45の上に配置される2階建物ユニット30Aの隣接する複数の柱脚接合部材46との間に介在されて連結されている。
具体的には、1階建物ユニット20Bの柱頭接合部材45の位置決めピン45Aが、中央接続部73の位置決め孔73Aに挿通されて、2階建物ユニット30Aの柱脚接合部材46の位置決め孔に嵌合されている。また、1階建物ユニット20Bの柱頭接合部材45の挿通孔45B、中央接続部73の挿通孔73Bおよび2階建物ユニット30Aの柱脚接合部材46の挿通孔46Bにボルト81Aが挿通されてナット81Bで緊締されている。
【0028】
端部接続部74のユニット接続部分742は、中央接続部73のユニット接続部分732と同様に、1階建物ユニット20Bおよび2階建物ユニット30Aに連結されている。
具体的には、1階建物ユニット20Bの柱頭接合部材45の位置決めピン45Aが、端部接続部74の位置決め孔74Aに挿通されて、2階建物ユニット30Aの柱脚接合部材46の位置決め孔に嵌合されている。また、1階建物ユニット20Bの柱頭接合部材45の挿通孔45B、端部接続部74の挿通孔74Bおよび2階建物ユニット30Aの柱脚接合部材46の挿通孔46Bにボルト81Aが挿通されてナット81Bで緊締されている。
【0029】
次に、柱41等の突出物が何ら存在しない広い大空間の組立手順を説明する。
まず、大空間用建物ユニット20Bを、建物ユニット20A、30Aおよび補強梁70と同様に工場で製作した後、建築現場に運搬する。運搬の際、建物ユニット20Bの大空間用フレーム50の変形を防止するために、角隅部20Dに図示しない仮柱を設けておく。仮柱は、柱脚接合部材46と、柱頭接合部材45とに着脱可能に連結されている。そして、図9に示すように、4つの大空間用建物ユニット20Bの角隅部20Dを寄せ合わせて隣接配置する。
【0030】
その後、角隅部20Cに配置される柱41間に補強梁70を配置し、大空間用建物ユニット20Bの柱頭接合部材45の位置決めピン45Aを端部接続部74の位置決め孔74Aに挿通して、補強梁70の位置を決定する。この時、中央接続部73のユニット接続部分732は、梁本体71に対して、端部接続部74のユニット接続部分742よりY−Xだけ高い位置にあるから、角隅部20Dの柱頭接合部材45の上方に僅かに離れて位置している。
【0031】
それから、2階建物ユニット30Aを大空間用建物ユニット20Bの上に積層する。すると、中央接続部73が2階建物ユニット30Aの荷重により下方に押し下げられ、つまり、補強梁70の中央部分が撓んで、各ユニット接続部分732,742の2階建物ユニット30Aに対する高さ位置が一定になる。この補強梁70の中央部分が弾性変形して撓むことによって、補強梁70に2階建物ユニット30Aに対する内部応力が発生し、中央接続部73には2階建物ユニット30Aに対して上向きの力を、端部接続部74には下向きの力を得る。そして、中央接続部73が角隅部20Dの柱頭接合部材45にほぼ当接する位まで押し下げられた位置で、大空間用建物ユニット20Bの荷重と補強梁70に生じる内部応力とがほぼ釣り合う。この状態で、2階建物ユニット30A、大空間用建物ユニット20Bおよび補強梁70を緊締具81で連結して一体化させる。この後、仮柱を取外すと、天井および床との間に柱41等の突出物が何ら存在しない広い大空間が形成される。
【0032】
したがって、本実施形態によれば以下の効果がある。
(1)補強梁70を端部接続部74と中央接続部73とを介して建物ユニット20B、30Aに連結した場合、補強梁は、端部接続部74と中央接続部73とを介して2階建物ユニット30Aの荷重を受けるが、中央部分の柱41が省略されているので、この状態では2階建物ユニット30Aの床梁43や1階建物ユニット20Bの天井梁42が撓む。この発明によれば、2階建物ユニット30Aに対して下向きの力が端部接続部74に、上向きの力が中央接続部73に生じるように設定したので、この上向きの力が2階建物ユニット30Aの荷重と釣り合って、2階建物ユニット30Aが支持される。よって、内部に大空間を形成し、かつこの大空間の天井面中央の垂れ下がりやその上階床面の凹みの発生を抑えることができる。
【0033】
(2)中央接続部73のユニット接続部分732と端部接続部74のユニット接続部分742との高さ寸法の差Y−Xを、2階建物ユニット30Aによって生ずる補強梁中央の撓み寸法に等しく設定形成したので、これらのユニット接続部分732,742を建物ユニットに接続していくと、中央接続部73が下方に押し下げられ、つまり、補強梁70の中央部分が下方に撓んで、各ユニット接続部分732,742の建物ユニット20B、30Aに対する高さ位置が一定になる。この状態で、2階建物ユニット30Aの荷重と補強梁70に発生する内部応力が釣り合うことになる。すなわち、補強梁70の中央部分が弾性変形して撓むことによって補強梁70に内部応力が発生し、中央接続部73には上向きの力を、端部接続部74に下向きの力を得ることができ、2階建物ユニット30Aの荷重を支持することができる。
したがって、特に剛性の高い材料で補強梁を形成しなくても、予め計算することによって、必要な上向きおよび下向きの力を容易に得ることができる。
【0034】
(3)梁本体71を直線状に形成したので、梁本体71の製作が容易にできる。
【0035】
(4)接続部72が板状材であるので、梁本体71にスリットを形成するだけで接続部72を梁本体71に容易に固定できる。また、各接続部72の梁本体接続部分731,741、つまりスリットの高さ位置を調整することによってユニット接続部分732,742の高さ位置を調整するから、接続部72を平板状に形成することができ、接続部72の製作が容易にできる。
【0036】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、各接続部72に通常のシアプレート60を使用して、梁本体接続部分731,741の高さ位置をユニット接続部分732,742と同一の高さにしたが、梁本体接続部分731,741の高さ位置を一定にして、ユニット接続部分732,742とは異なる高さに形成してもよい。
具体的には、図10(A)に示すように、ユニット接続部分732に対して、梁本体接続部分731が上方に位置するようにして中央接続部73を折り曲げ形成し、ユニット接続部分742に対して、梁本体接続部分741が下方に位置するように端部接続部74を折り曲げ形成する。
【0037】
このようにしても、前期実施形態で述べた(1)、(2)、(3)の効果に加え、以下のような効果がある。
(5)各接続部72が板状であるので、梁本体71にスリットを形成するだけで各接続部72を梁本体71に容易に固定できる。また、各接続部72の梁本体接続部分731,741、つまりスリットの高さ位置が一定なので、梁本体71を連続加工により容易に製作できる。この際、折り曲げ加工によって各接続部72のユニット接続部分732,742と梁本体接続部分731,741との高さ位置を変えて製作することが容易にできる。
【0038】
また、前記実施形態では、梁本体71を直線状に形成したが、梁本体をその軸線の中央が端部より高い位置になるように屈曲して形成してもよい。具体的には、図10(B)に示すように、梁本体71が断面長方形の筒状部材であって、その軸線が中央接続部73のユニット接続部分732と端部接続部74のユニット接続部分742との高さ寸法の差に合わせて、上向きに屈曲して形成されるとともに、各接続部72が平板状に形成され、その梁本体接続部分731,741の高さ位置が梁本体71の軸線に対して一定の高さに形成されている。
【0039】
このようにしても、前期実施形態で述べた(1)、(2)の効果に加え、以下のような効果がある。
(6)各接続部72のユニット接続部分732,742の高さ寸法の差に合わせて梁本体71を屈曲させるので、各接続部72の梁本体接続部分731,741の高さ位置を梁本体71の軸線に対して一定の高さに形成できる。したがって、梁本体71を連続加工により容易に形成できる。
【0040】
【発明の効果】
本発明のユニット式建物によれば、次のような効果が得られる。
請求項1に記載のユニット式建物によれば、補強梁を端部接続部と中央接続部とを介して建物ユニットに連結した場合、補強梁は、端部接続部と中央接続部とを介して上側建物ユニットの荷重を受けるが、中央部分の柱が省略されているので、この状態では上側建物ユニットの床梁や下側建物ユニットの天井梁が撓む。この発明によれば、建物ユニットに対して下向きの力が端部接続部に、上向きの力が中央接続部に生じるように設定したので、この上向きの力が上側建物ユニットの荷重と釣り合って、上側建物ユニットが支持される。よって、内部に大空間を形成し、かつこの大空間の天井面中央の垂れ下がりやその上階床面の凹みの発生を抑えることができる。
【0041】
具体的には、中央接続部のユニット接続部分を端部接続部のユニット接続部分より高い位置に形成したので、これらのユニット接続部分を建物ユニットに接続していくと、中央接続部が下方に押し下げられ、つまり、補強梁の中央部分が下方に撓んで、各ユニット接続部分の建物ユニットに対する高さ位置が一定になる。すなわち、補強梁の中央部分が弾性変形して撓むことによって補強梁に内部応力が発生し、中央接続部には上向きの力を、端部接続部に下向きの力を得ることができ、上側建物ユニットの荷重を支持することができる。
【0042】
例えば、中央接続部のユニット接続部分と端部接続部のユニット接続部分との高さ寸法の差を、上側建物ユニットによって生ずる補強梁中央の撓み寸法に等しく設定すれば、ユニット接続部分の高さ位置が略水平になった状態で、上側建物ユニットの荷重と補強梁に発生する内部応力が釣り合うことになる。
したがって、特に剛性の高い材料で補強梁を形成しなくても、予め計算することによって、必要な上向きおよび下向きの力を容易に得ることができる。
【0043】
請求項に記載のユニット式建物によれば、梁本体を直線状に形成したので、梁本体の製作が容易にできる。
【0044】
請求項に記載のユニット式建物によれば、接続部が板状材であるので、梁本体にスリットを形成するだけで接続部を梁本体に容易に固定できる。また、各接続部の梁本体接続部分、つまりスリットの高さ位置を調整することによってユニット接続部分の高さ位置を調整するから、接続部を平板状に形成することができ、接続部の製作が容易にできる。
【0045】
請求項に記載のユニット式建物によれば、各接続部が板状材であるので、梁本体にスリットを形成するだけで各接続部を梁本体に容易に固定できる。また、各接続部の梁本体接続部分、つまりスリットの高さ位置が一定なので、梁本体を連続加工により容易に製作できる。この際、折り曲げ加工によって各接続部のユニット接続部分と梁本体接続部分との高さ位置を変えて製作することが容易にできる。
【0046】
請求項に記載のユニット式建物によれば、中央接続部のユニット接続部分と端部接続部のユニット接続部分との高さ寸法の差に合わせて梁本体を屈曲させるので、各接続部の梁本体接続部分の高さ位置を梁本体の軸線に対して一定の高さに形成できる。したがって、梁本体を連続加工により容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るユニット式建物を示す全体斜視図である。
【図2】前記実施形態に係る1階概略平面図である。
【図3】前記実施形態に係る通常の建物ユニットのフレームを示す斜視図である。
【図4】前記実施形態に係る通常の建物ユニットの連結部分を示す分解斜視図である。
【図5】前記実施形態に係る大空間用建物ユニットを示す分解斜視図である。
【図6】前期実施形態に係る補強梁を示す全体斜視図である。
【図7】前記実施形態に係る補強梁と大空間用建物ユニットとの連結部分を示す断面図である。
【図8】前記実施形態に係る補強梁と大空間用建物ユニットとの連結部分を示す分解斜視図である。
【図9】前記実施形態に係る大空間用建物ユニットの連結方法を説明するための図である。
【図10】本発明の変形例および本発明の別の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 ユニット式建物
20 上側建物ユニットとしての1階建物ユニット
20A、30A 通常の建物ユニット
20B 大空間用建物ユニット
20D 柱が省略された角隅部
30 下側建物ユニットとしての2階建物ユニット
41 柱
42 天井梁
43 床梁
70 補強梁
71 梁本体
72 接続部
73 中央接続部
74 端部接続部
81 緊締具
731 中央接続部の梁本体接続部分
732 中央接続部のユニット接続部分
741 端部接続部の梁本体接続部分
742 端部接続部のユニット接続部分

Claims (5)

  1. 四隅の柱の上下端を天井梁および床梁で連結して箱状に形成されたフレームを有する通常の建物ユニットから柱が一本省略された大空間用建物ユニットを複数有し、これら大空間用建物ユニットの前記柱が省略された角隅部を寄せ合わせて配置された複数の下側建物ユニットと、この下側建物ユニットの上に積層された上側建物ユニットとを備え、前記角隅部を補強する補強梁が設けられたユニット式建物であって、
    前記補強梁は、前記角隅部の両側に配置される柱の間に架け渡される梁本体と、この梁本体の略中央に設けられた中央接続部と、前記梁本体の端部に設けられた端部接続部とを備え、
    前記各接続部は、前記梁本体に接続される梁本体接続部分と、前記梁本体の両側に隣接する前記上側建物ユニットおよび下側建物ユニットのうち少なくとも一方に接続されるユニット接続部分とを備えるとともに、
    前記中央接続部のユニット接続部分は、前記端部接続部のユニット接続部分より高い位置に設けられ、かつ前記各ユニット接続部分が前記建物ユニットに接続された状態において、前記各ユニット接続部分は、前記建物ユニットに対する相対高さ位置が略一定であり、
    前記端部接続部は前記建物ユニットに対して下向きの力が生じ、前記中央接続部は前記建物ユニットに対して上向きの力が生じるよう設定されている
    ことを特徴とするユニット式建物。
  2. 請求項1に記載のユニット式建物において、前記梁本体は直線状であることを特徴とするユニット式建物。
  3. 請求項2に記載のユニット式建物において、前記各接続部は板状材で形成され、かつ前記梁本体接続部分の高さ位置が前記中央接続部と前記端部接続部とで異なっていることを特徴とするユニット式建物。
  4. 請求項2に記載のユニット式建物において、前記各接続部は板状材で形成され、かつ前記各接続部の前記梁本体接続部分の高さ位置が一定であることを特徴とするユニット式建物。
  5. 請求項1に記載のユニット式建物において、前記梁本体は、その軸線の中央が端部より高い位置になるよう屈曲されていることを特徴とするユニット式建物。
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