JP3752348B2 - 多段遠心圧縮機装置およびその運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は遠心圧縮機装置及びその運転方法に係り、特に多段の遠心圧縮機装置及びその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
発火性を有するガスまたは有害なガスを取り扱う遠心圧縮機装置では、ケーシングの外部にガスの漏洩を防止するシールリングを軸封機構として使用している。この軸封機構は、大気側のシールリングとガス側のシールリングを備えており、それぞれのリングとスリーブのすき間に油を供給してガスが外部に漏れるのを防止している。この油の供給用として給油装置を備えている。
【0003】
この一般に用いられている遠心圧縮機装置の軸封機構に用いられる給油方式の一例がエー・ピー・アイ スタンダード 614(API Standard 614, " Lubri-cation, Shaft-Sealing, and Control-Oil Systems for Special-Purpose Appl-ications" , Third Edition, August 1992, American Petroleum Institute)の第42及び49頁に記載されている。この従来技術においては、オイルポンプで昇圧された油はオイルクーラおよびオイルフィルタを経て、調節弁で油量が調節された後シールリングに必要な量だけ供給されている。また、シールオイルヘッドタンクに所定量の油を蓄えるとともに、取扱ガスの配管をヘッドタンクの上部に接続してタンク内部の圧力が常にガス圧と等しくなるように、このタンクを遠心圧縮機の軸封機構より垂直方向に高い適切な位置に設置している。
【0004】
遠心圧縮機装置の軸封機構の他の例が、特開平5−195987号公報に記載されている。この公報に記載のものは、上記した軸封機構にさらに大気側シールリングを冷却するための給油ラインおよび排油ラインを設け、大気側フロートリングに冷却用の油を供給している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の多段遠心圧縮機装置に用いられる軸封機構においては、ガス側に配設したシールリングに供給される軸封油と作動ガスの差圧を所定圧力に保つため、シール用のオイルヘッドタンクを遠心圧縮機装置の軸封機構よりも垂直方向に高い適当な位置に設置している。これにより、タンク内部の液面が一定位置に保たれ、所定差圧を発生する。その結果、シールリングを流れる油量は作動ガスの圧力が変動してもほぼ一定に制御される。
【0006】
ところで、大気側のシールリングには軸封油の圧力と大気圧との差圧が加わるので、作動ガスの圧力が変動するとそれに伴って供給軸封油の圧力も変化し、大気側のシールリングを流れる油量が大きく変化する。軸封油の圧力(供給圧力)に対する大気側シールリングの排油温度及び油の流量との関係は、図3にその一例を示すように表される。図3から明らかなように、軸封油の供給圧力が低いと排油温度が高くなり、逆に供給圧力が高いと排油温度が下がるが油量は増加する。
【0007】
作動ガスの圧力の変動幅が大きい遠心圧縮機装置において、大気側シールリングとスリーブ間のすき間を小さくすると、作動ガスの圧力が低くなったときに排油温度が高くなり、シールリングの焼損限界値T1を越える恐れを生じる。逆に、上記すき間を大きくすると、作動ガスの圧力が大きくなった時に油量がQ2で表される量まで大きくなり、オイルポンプやタンクのサイズを大きくする必要が生じる。このため、作動ガスの圧力変動が大きい遠心圧縮機装置に、オイルフィルムシールを適用するのは困難であった。
【0008】
そこで、圧力変動が大きい遠心圧縮機装置にオイルフィルムシールを適用可能にするため、例えば特開平5−195987号公報に記載のものにおいては、大気側フロートリングの排油ラインに温度コントローラを取付け、排油温度が限界値を越えたときに、大気側フロートリングを冷却する給油ラインおよび排油ラインを新たに設けている。そして、この両ラインに調節弁を取り付け、この調節弁に温度コントローラから排油温度を下げる信号を送っている。しかしながら、この公報に記載のものは、新たに給油ラインと排油ラインを設ける必要がある上、遠心圧縮機装置のシールハウジング内部にも冷却用の内部配管を装備する必要があり、遠心圧縮機装置及び給油装置の構造が複雑になっている。
【0009】
本発明の目的は、簡単な構造で作動ガスのシールが可能な軸封システムを備えた遠心圧縮機装置及びその運転方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、作動ガスのシールの信頼性を高めた軸封システムを備えた遠心圧縮機装置及びその運転方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、遠心圧縮機装置の軸封システムを構成する給油ポンプやタンク等の構成機器を小型化した遠心圧縮機装置及びその運転方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、遠心圧縮機装置の軸封システムに用いられるシールリングの焼損を防止することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、回転軸と、この回転軸に取り付けられた複数の遠心羽根車と、この回転軸を支持し回転軸の両端部に設けられた軸受手段と、前記複数の遠心羽根車を囲むケーシングと、を有する遠心圧縮機本体と、前記軸受手段近傍に設けられ遠心圧縮機本体が圧縮する作動ガスが遠心圧縮機本体から漏洩するのを防止する軸封手段とを備えた多段遠心圧縮機装置において、前記軸封手段に軸封油を供給するオイルポンプを有する軸封油供給手段と、この軸封油の油量を制御する制御弁と、前記軸封油供給手段が供給する軸封油を加圧するために軸封油供給手段中に開閉弁を介して配設されたヘッドタンクと、このヘッドタンク内の軸封油のレベルを検出するレベルコントローラと、ヘッドタンクと軸封油供給手段との間の軸封油の流通を制御する遮断弁と、前記軸封手段から排出される軸封油の温度を検出する温度検出手段と、この温度検出手段が検出した温度に基づいて前記制御弁を制御する制御手段とを設け、前記ヘッドタンクの上部は圧力検出手段を取り付けた配管を介して前記軸封手段に接続されこの配管内に軸封手段に流入する漏洩ガスが導かれ、ヘッドタンクの下部には前記オイルポンプから吐出された軸封油が導かれ、前記制御手段は前記温度検出手段が検出した温度が予め定めた値以下であれば前記レベルコントローラが検出する液面が一定になるように前記制御弁を制御し、この温度検出手段が検出した温度が予め定めた値よりも低く、前記圧力検出手段が検出した圧力が予め定めた値を超えているときは前記遮断弁を開けて、前記レベルコントローラが検出する液面が一定になるよう制御弁を制御するものである。
【0011】
上記目的を達成するための本発明の第2の態様は、ヘッドタンクとオイルポンプとを用いて多段遠心圧縮機装置が有する軸封手段に加圧した軸封油を導いて作動ガスが圧縮機本体から漏洩するのを防止する多段遠心圧縮機装置の運転方法において、前記軸封手段で軸封に用いられた軸封油の排油温度が第1の設定値(T0)以下のときにはヘッドタンクの液面が一定となるように軸封油の流量を制御する液面レベル制御モードと、排油温度が第1の設定値を超えたときにヘッドタンクからの軸封油の流入を止め、レベルタンクの液面一定の制御を止め排油温度が第1の設定値(T0)よりも低い第2の設定値(T3)になるようにオイルポンプからの軸封油の流量を増大させる排油温度制御モードとを備え、排油温度制御モードにおいて軸封手段に漏洩する作動ガスの圧力が予め定めた値を超えたら前記液面レベル制御モードに戻すものである。
【0013】
また第2の特徴において好ましくは、前記液面レベル制御モードと排油温度制御モードとの切り替え後は、予め定めた速度で調整弁の開度を変化させて軸封油の圧力の急変を防止するバンプレス切り替えモードを備えるものである。
【0018】
換言すれば、大気側シールリングの排油ラインに温度コントローラを取付け、排油温度が限界値に近づいたならば、シールオイルヘッドタンクへの給油を遮断し、給油量の制御をシールオイルヘッドタンクの液面一定制御から大気側フロートリングの排油温度一定制御に切替え、ガス圧とは無関係に温度コントローラの信号により給油量調節弁の開度を開方向に大きくする。そして好ましくは、モードの切り替え時に用いる給油圧の急変を防止するバンプレス切り替えモードを備えるか、または、大気側シールリング部から排出される軸封油の温度が上昇したら、遠心圧縮機の回転数に応じて軸封油の供給圧力を制御するようにしたものである。
【0019】
また、ガス圧力が低下した時、大気側シールリングに加わる差圧は小さくなり、大気側シールリングを流れる油の量が減少するため、排油温度が上昇し、シールリングの焼損限界値に近づく。排油温度が限界値に近づき、予め設定したしきい値を越えたならば給油ラインとシールオイルヘッドタンクとの間の遮断弁を全閉とし、同時に調節弁を開として軸封油の供給圧を上昇させ大気側シールリングへの油の供給量を増加し、排油温度を限界値以下の一定温度となるようにする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のいくつかの実施例を図1ないし図6により説明する。
図1に、本発明の第1の実施例に係る遠心圧縮機本体17の縦断面図と、この遠心圧縮機本体17に用いられる軸封システムの各機器の接続関係を模式的に示す。遠心圧縮機本体17は、多段の遠心圧縮機からなる。シャフト9には、多段の(図1では5枚の)遠心羽根車21が、取り付けられており、各段の羽根車21の上流側には吸込流路22が、下流側には羽根付きまたは羽根なしディフューザ23が形成されている。最終段を除く各段のディフューザ23のさらに下流には戻り流路24が形成されており、次段への作動ガスの円滑な流入を可能にしている。最終段のディフューザ23の下流には需要元へこの遠心圧縮機本体17で圧縮された作動ガスを導くためにスクロール部25が形成されている。吸込流路22、羽根車21、ディフューザ23、戻り流路24、およびスクロール部25の回りを囲んでケーシング26が配設されている。シャフト9の端部には、このシャフト9を回転支持するためラジアル軸受27a、27bおよびスラスト軸受28が取り付けられており、これら軸受は後述する軸封装置31に取り付けられた軸受箱32a、32bに保持される。このように構成した多段の遠心圧縮機本体17では、図示しない駆動機に接続されたシャフト9が回転駆動されると、吸込口29から吸い込まれた作動ガスは各段の羽根車21によりエネルギーを付与されて圧縮され、各段を経る毎に順次高圧となり、最終的に吐出口30より所定圧力(0.3Mpa〜20Mpa)で吐出される。
【0021】
ところで、作動ガスの一部は羽根車21の回転運動を円滑にするために遠心圧縮機本体17の内部に形成された隙間を通して遠心圧縮機本体17の外部へ漏れようとする漏れ流れとなる。すなわち、羽根車21のマウスリング部33や羽根車出口部34から漏れる高圧の作動ガスは、この作動ガスの流れを防止するためにケーシング26やシャフト9に取り付けられたラビリンスシール35、36等へ流入し、そこで降圧される。しかし、降圧されてもなお漏れガスの圧力が雰囲気圧力より高いと、作動ガスはシャフト9端部に設けられた軸封装置31へと流入する。
【0022】
この軸封装置31の詳細を図2に示す。
水素ガスや炭化水素系ガス等の発火性のガスまたは硫化水素等の有害ガスからの腐食や損傷を防止するために、シャフト9はステンレス鋼製のスリーブ10で覆われている。下流側から漏れてきた発火性または有害ガスは、回転するシャフト9を覆うスリーブ10とシールリングホルダ8の内周面側との間に形成される隙間から遠心圧縮機本体17の外部へ漏れようとする。この漏れ流れを阻止するために、軸受27a、27b、28等を潤滑する潤滑油の一部を軸封装置31に導き漏れ流れに対抗させている。なお、軸受潤滑油と軸封油は圧力レベル等を考慮して別に供給されてもよい。
【0023】
シールリングホルダ8に保持されたガス側シールリング5と、シールリングホルダ7に保持された大気側シールリング6との2個のシールリングを、スリーブ10との間に隙間をもたせてほぼ並行に配置する。この2つのシールリング5、6間には圧縮バネが設けられており、このバネが各シールリング5、6をそれぞれのホルダ7、8に押しつけている。シールリングホルダー8には、ガス側シールリング5の背面に形成した溝部、このガス側シールリング5の外周部複数箇所に設けた軸方向スリット、2つのシールリング5、6間隙間、各シールリング5、6とスリーブ10間の隙間を順次軸封油が流れるように流路が形成されている。
【0024】
次に上述した軸封装置31への給油系を図1を用いて説明する。
オイルリザーバタンク16に保有された軸封油はオイルポンプ1により昇圧され、給油配管へと導かれる。オイルポンプ1を出た軸封油はオイルクーラ2で冷却水と熱交換して冷却され、オイルフィルタ3でごみ等を除かれた後、調節弁4へと導かれる。そして、調節弁4で軸封装置で必要な流量に流量制御された軸封油は、多段の遠心圧縮機本体17の両端部近傍に設けられた軸封装置31に導かれる。軸封装置31で作動ガスをシールした軸封油オイルリザーバタンク16に戻される。そして、以後この経路を循環する。
【0025】
ところで、調節弁4の下流には分岐部が設けられており、一方は上述した軸封装置31へ導かれるが、他方は遮断弁12を介してシールオイルヘッドタンク13の底部に導かれている。シールオイルヘッドタンク13には所定量の軸封油が蓄えられるとともに、シールオイルヘッドタンク13を軸封装置31よりも高い位置に設けている。この高さは、作動ガスの圧力にも依存するが、好ましくは、5ないし10m、より好ましくは7ないし8mの高さにシ−ルオイルヘッドタンク13内の液面がなるように設定する。なお、ヘッドタンク13そのものの高さは2m程度である。つまり、遮断弁12を開くことにより、シールオイルヘッドタンク13に貯蔵された軸封油のヘッドが軸封装置31に流入する軸封油に働き、作動ガスの外部への漏洩を防止する。シールオイルヘッドタンク13の上部は、外部へ漏洩しようとする作動ガスが流入する軸封装置31と配管18により連結されており、作動ガスの漏れ流れの圧力はシールオイルヘッドタンク13の内圧に等しくなる。すなわち、軸封油と作動ガスの漏れ流れの間にはシールオイルヘッドタンク14内の軸封油のヘッド分の差圧がある。
【0026】
したがって、シールオイルヘッドタンク13が軸封装置13の位置よりも垂直方向に高い位置に設置されているので、このシールオイルヘッドタンク13の内部の液面を一定位置に制御すればガス側シールリング5部の軸封油と作動ガスとの差圧を一定にすることができる。
【0027】
なお、軸封油の圧力と温度を制御するために、本発明に係る多段の遠心圧縮機装置では、シールオイルヘッドタンク13内の油面位置を検出するレベルコントローラ(LIC)14がシールオイルヘッドタンク13に付設されている。また、軸封装置31からオイルリザーバタンク16への戻り流路中には温度コントローラ(TIC)11が、シールオイルヘッドタンク16の上部と軸封装置31の作動ガス流入部とを連結する配管18中には圧力コントローラ(PIC)がそれぞれ設けられ、これらの検出値を用いて制御装置40が調節弁4Oおよび遮断弁12を制御する。
【0028】
次にこのように構成した本発明に係る多段の遠心圧縮機の動作について、図4のタイムチャートに沿って説明する。
【0029】
(I)液面レベル制御モード
圧縮機本体17内のガス圧力Pが高いと、大気側シールリング6と大気圧との差圧が大きくなり、大気側シールリング6をを流れる油量Qが増える。この結果、オイルリザーバタンク16に戻る排油の温度Tは低くなる。プロセスの変化によりガス圧力Pが低下すると、上記差圧も減少して大気側シールリング6を流れる油量が減少し、排油の温度Tは上昇する。そこで、排油の温度が予め設定したしきい値T0を越える前に、シールオイルヘッドタンク13の液面が一定になるよう、このシールオイルヘッドタンク13に付設した液面レベルコントローラ14の信号を用いて調節弁4の開度を制御装置40が調整する。
【0030】
(II)制御モード切替え(チェンジオーバー)
温度コントローラ11が検出した排油温度Tがしきい値T0を越えた時には、それまで調節弁4の開度制御に用いられていた液面レベルコントローラ14の信号を無視し、代わりに大気側シールリング6から排油される排油の温度を検出する温度コントローラ11の信号を用いて調節弁4の開度を制御装置40が制御する。それとともにシールオイルヘッドタンク13の給油ラインに設置した遮断弁12を全開から全閉に切り換え、シールオイルヘッドタンク13への軸封油の供給を停止する。
【0031】
なお、シールオイルヘッドタンク13の液面制御から排油温度制御への切り換えを、漏れガスの圧力を基準として圧力コントローラ15を用いて行うことも可能である。この場合、排油温度コントローラ11を節減できる効果がある。
【0032】
(III)排油温度制御モードA
ステップ(II)で排油温度制御モードに切り換えた後に、排油温度Tを目標値T3に近づける過渡的なモードである。排油温度の目標値T3はしきい値T0よりも低いので調節弁4は制御装置40により開方向に制御され、油の供給量Qが増加する。供給される油量の増加に伴い大気側シールリング6部から排油される排油の温度Tが低下し、目標値T3に近づく。
【0033】
(IV)排油温度制御モードB
排油温度Tがほぼ目標値に達したときのモードであり、遮断弁12は全閉のままで、温度コントローラ11で検出された排油温度Tが目標値T3(一定値)となるように、制御装置40が調節弁4の開度を制御する。
【0034】
(V)制御モード切替え(チェンジオーバー)
圧縮機のガス圧力Pがしきい値P0にまで上昇して排油温度制御モード(IV)を用いなくてもよいときには、配管18中に設けた圧力コントローラ15が検出した圧力を用いて再び制御方式を排油温度制御からシールオイルヘッドタンク13の液面レベル制御に切り換える。すなわち、シールオイルヘッドタンク13のレベルコントローラ14の信号を温度コントローラ11の信号に優先させる。そして、制御装置40がレベルコントローラ11の出力に基づき、調節弁4の開度を決定するとともに、遮断弁12を全閉から全開に切り換える。
【0035】
(VI)液面レベル制御モード
ステップ(V)で液面レベル制御モードに切り換えた後に、ガス圧力が復帰したときの制御モードである。シールオイルヘッドタンク13の液面レベルが一定になるように、調節弁4の開度を制御装置40が制御する。これとともに制御装置40が遮断弁12を全開に制御する。
【0036】
上記のいずれのステップにおいてもシールオイルヘッドタンク13の液面レベルが危険レベル以下に低下した場合には、遮断弁12を全開にして圧縮機を停止させる。これにより、給油系の故障等に起因するガスの漏洩を防止できる。また、シールオイルヘッドタンク13の液面が必要以上に上昇し、オーバーフローレベルに近づいたときに、制御装置40が遮断弁12を全開にすることも可能である。この場合、給油系の異常等に起因してシールオイルヘッドタンク13から配管18に軸封油が侵入するのを防止できる。
【0037】
図5を用いて、本発明の他の実施例を説明する。
図5では、上記実施例と異なり、流量調節弁4を軸封油供給ラインから分岐したバイパスライン中に設けている。この場合、流量調整弁の開閉動作は上記第1の実施例とは逆になる。
【0038】
また、図6に示した参考例では軸封油の排油温度に基づく制御を省略している。つまり、排油温度コントローラを省略し代わりにシールオイルヘッドタンク13と軸封装置31とを結ぶ配管から分岐した所に設けられた圧力コントローラ15を用いて制御モードを切り換えるようにしている。大気側シールリング6部の軸封に使用された軸封油の排油温度は作動ガスの圧力とは相関関係がある。したがって、圧力コントローラ15で検出した圧力値を用いても、モード切り替えが可能である。
【0039】
さらに、大気側シールリング6部の軸封に使用された排油の温度は、作動ガス圧力と共に遠心圧縮機の回転速度にも依存する。つまり、低回転速度では軸封部の焼損限界温度が高くなるので、給油圧力の制御時に遠心圧縮機の回転数を考慮すればより高精度に軸封を制御でき遠心圧縮機装置の信頼性が向上する。
【0040】
ところで、上述した実施例において、制御モードを切り換えるときに調節弁の開度を大幅に変更する必要が生じると、切り替えの瞬間に弁の開度が急変し調節弁のハンチングや油量の急変という不具合を生じる恐れがある。これらを防止するために、制御モードの切り替え後は所定速度で調節弁の開度を変更するバンプレス切替えを用いれば、遠心圧縮機装置を安定に運転できる。
【0041】
上記実施例では、軸封油系統を潤滑油系統と別に設けているが、これらの系統をまとめて1つにすることも可能である。ただし、作動ガス側の軸封油中には、作動ガスの混入が避けられないので、軸封装置を経た作動ガス側の軸封油については加熱及び窒素バブリング処理による脱ガス処理を施している。しかし、炭素量の多いガス(炭素原子が4個以上含まれるもの)を扱う場合には、完全には脱ガスできないので、作動ガス側の軸封油を再循環させることは困難である。
【0042】
また、上記実施例は多段型の遠心圧縮機を例に挙げているが、単段型の遠心圧縮機でもよいし、また遠心型以外のターボ圧縮機であってもよい。
【0043】
以上述べたように本発明の実施例によれば、大気側シールリングの排油温度をモニタしているので、シールリングの焼損を防止できる、大気側シールリングとスリーブの隙間を最適にできるので余分な隙間を必要とせず、給油系が備えるポンプやタンク等の機器の小型化が可能となる、等の効果がある。
【0044】
さらに、シールオイルヘッドタンクへの油の供給ラインに遮断弁を設けたので、ヘッドタンクの液面が異常に上昇しても、軸封油の供給を停止可能であり、軸封油の作動ガスへの侵入を防止できる。
【0045】
なお、本発明は多段の遠心圧縮機装置において、作動ガスが発火性ガスや有害ガスであるときに、この作動ガスの圧縮機装置外部への漏れを防止し、かつ信頼性の高い軸封装置を提供するものであって、本発明は上記実施例に限るものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲の記載によって示されており、それらの記載の意味の中に入る全ての変形例は本発明に含まれるものである。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、軸封装置から排出される排油の温度が上昇したときに、大気側シールリングとスリーブの間を流れる軸封油の量を増やすことにより、排油温度を焼損限界値以下に保つことができ、簡単な構造で信頼性の高い作動ガスのシールが可能な軸封システムを備えた遠心圧縮機装置及びその運転方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る遠心圧縮機装置の一実施例を示す図で、軸封油を給油する軸封システムの詳細を示す図である。
【図2】 油膜式の軸封機構の詳細を示す縦断面図である。
【図3】 シールリングの特性を示す図である。
【図4】 本発明に係る軸封油を給油する装置の一実施例のタイムチャートである。
【図5】 本発明に係る遠心圧縮機装置の他の実施例を示す図であり、特に軸封油を給油する軸封システムの詳細を示す図である。
【図6】 本発明に係る遠心圧縮機装置の参考例を示す図であり、特に軸封油を給油する軸封システムの詳細を示す図である。
【符号の説明】
1…オイルポンプ、2…オイルクーラ、3…オイルフィルタ、
4…調節弁、5…ガス側シールリング、6…大気側シールリング、
7…シールリングホルダ、8…シールリングホルダ、9…シャフト、
10…スリーブ、11…温度コントローラ、12…遮断弁、
13…シールオイルヘッドタンク、14…レベルコントローラ、
15…圧力コントローラ、16…オイルリザーバタンク、
17…遠心圧縮機本体、18…配管、31…軸封装置、40…制御装置。
Claims (3)
- 回転軸9と、この回転軸に取り付けられた複数の遠心羽根車21と、この回転軸を支持し回転軸の両端部に設けられた軸受手段27a,27b,28と、前記複数の遠心羽根車を囲むケーシング26と、を有する遠心圧縮機本体と、前記軸受手段近傍に設けられ遠心圧縮機本体が圧縮する作動ガスが遠心圧縮機本体から漏洩するのを防止する軸封手段31とを備えた多段遠心圧縮機装置において、前記軸封手段に軸封油を供給するオイルポンプ1を有する軸封油供給手段16,1,2,3と、この軸封油の油量を制御する制御弁4と、前記軸封油供給手段が供給する軸封油を加圧するために軸封油供給手段中に配設されたヘッドタンク13と、このヘッドタンク内の軸封油のレベルを検出するレベルコントローラ14と、ヘッドタンクと軸封油供給手段との間の軸封油の流通を制御する遮断弁12と、前記軸封手段から排出される軸封油の温度を検出する温度検出手段11と、この温度検出手段が検出した温度に基づいて前記制御弁を制御する制御手段40とを設け、前記ヘッドタンクの上部は圧力検出手段を取り付けた配管を介して前記軸封手段に接続されこの配管内に軸封手段に流入する漏洩ガスが導かれ、ヘッドタンクの下部には前記オイルポンプから吐出された軸封油が導かれ、前記制御手段は前記温度検出手段が検出した温度が予め定めた値以下であれば前記レベルコントローラが検出する液面が一定になるように前記制御弁を制御し、前記制御装置は、前記温度検出手段が検出した温度が予め定めた値を超えたら、前記遮断弁を閉じるとともに前記レベルコントローラの信号を無視し、温度検出手段が検出した排油の温度に基づいて制御弁を制御し、この温度検出手段が検出した温度が予め定めた値よりも低く前記圧力検出手段が検出した圧力が予め定めた値を超えているときは前記遮断弁を開けて前記レベルコントローラが検出する液面が一定になるよう制御弁を制御することを特徴とする多段遠心圧縮機装置。
- ヘッドタンクとオイルポンプとを用いて多段遠心圧縮機装置が有する軸封手段に加圧した軸封油を導いて作動ガスが圧縮機本体から漏洩するのを防止する多段遠心圧縮機装置の運転方法において、前記軸封手段で軸封に用いられた軸封油の排油温度が第1の設定値(T0)以下のときにはヘッドタンクの液面が一定となるように軸封油の流量を制御する液面レベル制御モードと、排油温度が第1の設定値を超えたときにヘッドタンクからの軸封油の流入を止め、レベルタンクの液面一定の制御を止め排油温度が第1の設定値(T0)よりも低い第2の設定値(T3)になるようにオイルポンプからの軸封油の流量を増大させる排油温度制御モードとを備え、排油温度制御モードにおいて軸封手段に漏洩する作動ガスの圧力が予め定めた値を超えたら前記液面レベル制御モードに戻すことを特徴とする多段遠心圧縮機装置の運転方法。
- 前記液面レベル制御モードと排油温度制御モードとの切り替え後は、予め定めた速度で調整弁の開度を変化させて軸封油の圧力の急変を防止するバンプレス切り替えモードを備えたことを特徴とする請求項2に記載の多段遠心圧縮機装置の運転方法。
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---|---|---|---|
JP06043097A JP3752348B2 (ja) | 1997-03-14 | 1997-03-14 | 多段遠心圧縮機装置およびその運転方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP06043097A JP3752348B2 (ja) | 1997-03-14 | 1997-03-14 | 多段遠心圧縮機装置およびその運転方法 |
Publications (2)
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