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JP3748559B2 - ステージ装置、露光装置、荷電ビーム描画装置、デバイス製造方法、基板電位測定方法及び静電チャック - Google Patents

ステージ装置、露光装置、荷電ビーム描画装置、デバイス製造方法、基板電位測定方法及び静電チャック Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロデバイス等のデバイスの製造、特にフォトリソグラフィー、等における基板の保持に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイス等の微細パターンを有するデバイスの製造に用いられる荷電ビーム描画装置においては、描画中にウエハの電位(以下、電位はアース電位を基準とする相対電位を、電圧はアース電位との電位差をそれぞれ意味するものとする)が0Vでないと、荷電ビームの軌道に影響を与え描画精度を悪化させてしまう。そのため、従来では、図10に示すように、導電性ダイヤモンド針等でウエハ202にアースピン218を刺すことで直接接地している(特許文献1)が、ウエハを傷つけてしまう欠点がある。そのため、図11に示すようにウエハ202の表面に非接触電位計308のプローブ305を対向させてウエハ202の表面電位を測定し、その値をもとにウエハチャック301の電極303への印加電圧を可変することでウエハ電位を0に制御する構成が開示されている(特許文献2)。306は電極303への印加電圧を可変制御する制御回路である。
【0003】
また、上記特許文献1には、ステージ209上の試料202を静電チャック201に吸着した状態で静電チャック201ごと交換する技術、および静電チャック201をステージ209へ固定する技術が開示されている。この特許文献1では、図10に示すように、3点の支持部材204で構成された静電吸着手段をステージ209に設置して、基板保持用の静電チャック201をステージ209に固定する構成を開示している。
【0004】
【特許文献1】
特許第3076727号公報
【特許文献2】
特開平4−250615号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図11のような構成にすると、アースピンをウエハ202に物理的に刺す必要がなくなる利点があるが、荷電ビーム310はウエハ202全面に渡って走査されるため、荷電ビーム310の軌道上を避けつつ、かつ露光中常にウエハ202に対向して電位を計測できる位置に非接触電位計308のプローブ305を配置することは難しい。そのため、描画の邪魔にならないように、荷電ビーム310の軌道とウエハ202との相対位置に合わせてプローブ305を移動させる機構を設けることも考えられるが、構造が複雑になってしまう。また、ウエハ202の斜め上方にプローブ305を配置することで、荷電ビーム310の軌道と干渉することは避けられる。しかし、ウエハ202と荷電ビーム310との相対位置によっては、ウエハ202が非接触電位計308の測定範囲、すなわちウエハ202とプローブ305が対向する範囲から外れてしまい電位測定が出来なくなるので、複数のプローブ305を配置し、これらを切り替えて測定する必要が生じる。
【0006】
このように図11に示すような構成は、実現しようとするとシステムの複雑化を招くため、実際には電子線描画装置の静電チャックとして実用化されるには至っていない。また非接触電位計のプローブ305は、少なからず電気配線や冷却配管を有し、さらに測定中常に振動しているチョッパを有しているため、粗微動ステージを有する位置決め装置において、非接触電位計プローブ305を微動ステージ側に設置すると、配線や配管、さらにはチョッパの振動の影響で位置決め精度の悪化を招いてしまうという不都合もあった。
【0007】
さらに、ウエハの表面にはレジストと呼ばれる感光塗料が塗布されているのが通常であり、このレジストがウエハ電位の測定に対し誤差を発生させる要因となる。非接触の表面電位計は通常、チョッパを介して電位計プローブと計測対象物(この場合ウエハ)との間の静電容量を測定し、その値をAC変調して電位として出力する場合が多い。このため、例えばレジストの膜厚にばらつきがあるとウエハとプローブとの間の静電容量が変化してしまい、出力が安定しないという不都合もあった。
【0008】
また、静電チャックのステージ等への固定方法として従来技術である図10のような構成を考えた時、3点支持によるチャック201の自重歪の再現性を確保するために、3点支持部204の面積はなるべく小さくしたほうが良い。しかし逆に、ステージ209の加減速時にもチャック201が動かないようにしっかり固定するためには、静電吸着力を発生している3点支持部204の面積は大きくしたい。そのため、3点支持によるチャック歪の再現性を確保しつつ、きちんとした固定力を確保することが難しく、設計条件によっては3点支持部材204の設計が不可能になることも生じている。
【0009】
また、一般に静電チャックは電極に電位を付与するためにステージ等のベース部材とチャックとの間で電気的な受け渡し(接続)が必要である。このため、通常は、この間に板バネ等で構成された接触式コネクタを用いることが多い。しかし、電気的接続を確保するために板バネのバネ定数を大きくすると、この部分でのベース部材とチャックとの間の剛性が無視できなくなり、最悪の場合チャックを3点で支持固定しているとはいえなくなり、3点支持構成の目的を果たせなくなる恐れがある。そのため、チャックの歪の再現性を確保しつつ、確実な電気的接続を可能とする構成が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記従来例における問題点に鑑み、基板保持に係る効果的な技術を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段および作用】
上記の課題を解決するために、本発明のステージ装置は、基板を搭載して移動するステージを備えたステージ装置であって、
前記ステージは、基板保持部材を搭載する微動ステージと、前記微動ステージを搭載する粗動ステージとを備え、前記粗動ステージが、前記ステージに搭載された基板の電位を非接触で計測する非接触電位計のプローブを、前記基板の素地が露出した前記基板の部分に対向させて支持することを特徴とする。
【0012】
この第1の局面において、プローブを基板の素地が露出した部分に対向させて支持するには、例えば、前記ステージが、前記ステージに搭載された基板保持部材に設けられた開口または切り欠きを通して前記基板の裏面に対向させるべく前記プローブを支持する。また、前記ステージが、基板保持部材を搭載する微動ステージと、前記微動ステージを搭載する粗動ステージとを備えたものである場合、前記粗動ステージが、前記基板保持部材および前記微動ステージにそれぞれ対応して設けられた開口または切り欠きを通して前記基板の裏面に対向させるべく前記プローブを支持する。ここで、前記基板保持部材に設けられた前記開口は、前記基板を前記基板保持部材に真空吸着するための真空排気孔として利用可能である。
【0013】
あるいは、前記プローブを基板の素地が露出した部分に対向させるため、前記ステージが、前記基板の側面に対向させるべく前記プローブを支持する。前記ステージが、基板保持部材を搭載する微動ステージと、前記微動ステージを搭載する粗動ステージとを備えたものである場合、前記粗動ステージが、前記微動ステージに設けられた開口または切り欠きを通して前記基板の側面に対向させるべく前記プローブを支持する。
【0014】
前記第1の局面において、好ましくは、さらに、前記基板保持部材に設けられた、前記基板と絶縁体または誘電体を介して対面する複数の面状電極の電位を、前記非接触電位計の出力に基づいて調整することにより、前記基板の電位を制御する制御手段を有する。前記複数の面状電極は、前記基板を吸着保持するための静電吸着電極として兼用される。また、前記複数の面状電極のそれぞれの面積と電位との積の総和が0になるように、前記それぞれの面積と電位とを設定されている。前記制御手段は、前記電位の絶対値が最も小さい前記面状電極、または、前記面積が最も大きい電極の電位を制御する。
【0015】
上記の構成によれば、非接触電位計のプローブを、基板の素地が露出した部分に対向させてその基板の電位を測定するようにしたため、基板表面の載置物または塗布物の影響を受けることなく正確な電位計測が可能となり、かつ荷電粒子線描画装置の荷電粒子線や露光装置の露光光等と干渉することなく基板の電位を測定することができる。ここで、一例として、前記基板は感光剤を塗布された半導体ウエハであり、前記基板の素地が露出した部分は感光剤が付着していない部分、すなわち前記半導体ウエハの感光剤を塗布しなかった部分または塗布した感光剤を洗浄により除去した部分である。
【0020】
さらに、本発明の静電チャックは、基板を真空吸着するための真空排気用の貫通穴と、非接触電位計プローブ用の貫通穴とに兼用される開口を備えたことを特徴とする。この静電チャックは、好ましくは、前記基板と絶縁体または誘電体を介して対面する複数の面状電極を備える。前記複数の面状電極は、前記基板の静電吸着と前記基板の電位の制御とに兼用される。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態では、複雑な機構を設けずに、ステージ上の基板電位を非接触で正確に測定できるようにすることを課題とし、それを解決する構成を提案する。本実施形態では、基板はレジストを塗布したウエハであり、ウエハのレジストが付着していない部分に対して非接触電位計を用いてウエハ電位を測定する電位測定法を行うこと、およびそれに適した以下のようなチャック構成を提案する。すなわち、ウエハ電位をウエハ裏面から非接触で計測する非接触電位計を配置するための開口もしくは切り欠きを静電チャックに設けて、描画の邪魔にならず常にウエハの電位を測定出来る構成にした。そして、この静電チャックの吸着用電極を双極型に構成し、非接触電位計の出力をもとに電極への印加電圧を可変することで、ウエハ電位を0に制御して、ウエハへアースピンを刺す構成を不要とした。
【0023】
ここで、各電極面積と印加電圧との積の総和が0になるように電極面積もしくは印加電圧を設定することで、印加電圧の可変量を小さくすることが出来る。また、印加電圧が可変される電極の面積を電極の中で最も大きくすることで、印加電圧の可変量を小さくすることが出来る。さらに、印加電圧の絶対値が相対的に小さい電極に対して、印加電圧を可変させれば、静電吸着力変動による基板の吸着への影響を抑制できる。また、このような静電チャックを真空チャックと兼用する場合、非接触電位計用の開口を真空吸着を行うための真空排気孔として兼用することで構成が単純になる。また、粗微動ステージを有する位置決め装置においては、非接触電位計を粗動ステージ側に設置するのが好ましい。
【0024】
さらに、本発明の好ましい別の実施の形態では、静電チャック等の基板保持部材を3点で支持する構成の利点を生かしつつ、基板保持部材をステージに固定するのに必要な吸着力を確保することを課題とし、それを解決した構成を提案する。本実施形態では、チャックをステージ手段等のベース部材に固定する方法として、チャックの裏側に3つの支持部材を有し、その支持部材周辺に非接触の静電吸着力を働かせるための電極をさらに設けることで、吸着力を確保出来るようにした。また、3つの支持部材はそれぞれ1つの突起を設けた構造であると特に良い。そして、基板吸着を行うための電極と非接触の静電吸着力を働かせる電極とを電気的に接続して、ベース部材とチャックとの間で受け渡すのに必要な電気配線およびコネクタの数を減らした。そして、非接触の静電吸着力を有するための電極は単極構成にすれば、さらに電気配線およびコネクタの数を減らすことができる。
【0025】
また、上述の3つの突起を有する静電チャックにおいて、これらの突起もしくはその周辺または双方を静電チャックを固定するベース部材との電気的な接続を行う端子として用いることで、チャックの3点支持固定の利点を最大限に生かすことが可能となる。上記本発明の好ましい実施の形態および好ましい別の実施の形態は、組み合わせて実施することも可能である。
【0026】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
[第1の実施例]
図1は本発明の一実施例に係る露光装置用ステージ装置の構成を示す。図1において、1はチャック(基板保持部材)、2はウエハ(基板)、5は非接触電位計のプローブ、6はチャック1の中央に設けられた貫通穴(開口)、9は微動ステージ、7は微動ステージ9に前記貫通穴6に対応して設けられた貫通穴(開口)、16は粗動ステージ、17はリニアモータである。チャック1は微動ステージ9上に固定されており、表面にレジストが塗布された半導体ウエハ2等の基板が搭載されてそれを保持する。微動ステージ9は、粗動ステージ16に対して、不図示の非接触型自重補償機構で浮上しており、また、リニアモータ17を介して非接触に位置決めが行われる。これにより、粗動ステージ16と微動ステージ9間の振動絶縁が達成できる。
【0027】
非接触電位計プローブ5は、粗動ステージ16上に設置され、チャック1に設けられた貫通穴6を通って、チャック1上のウエハ2の裏面に非接触で対向する。これにより、非接触電位計プローブ5に接続された不図示の非接触電位計により、ウエハ2に非接触でウエハ2の裏面からウエハ2の電位を測定することが可能になる。また、電位測定中常時振動しているチョッパを有する非接触電位計プローブ5を粗動ステージ16上に設置し、かつ非接触電位計プローブ5に接続または付随する配線または冷却配管等(不図示)を粗動ステージ16に設置することにより、微動ステージ9の位置決め精度の悪化を防いでいる。
【0028】
従来技術つまりウエハ2の表面側から電位を測定した場合、荷電ビームの軌道を妨げることなく描画中常にウエハ2の電位を測定することは困難であったが、本実施例の構成により容易にウエハ電位の測定ができるようになった。ここで、ウエハ2は、非接触電位計プローブ5とウエハ2との間のギャップと比べれば、電気的に導体とみなせ、よってウエハ2全体は同電位とみなせるため、ウエハ2の裏面の電位を測定してこれをウエハ2の表面の電位とみなしても何ら問題はない。また、ウエハの裏面は電位測定での誤差要因となりうるレジストがないため、裏面からの電位測定は従来例のような表面からの測定よりも正確に測定ができる。
【0029】
このように、ウエハ2の電位を測定した結果をもとに、特許文献2(特開平4−250615号公報)に記載されたように、ウエハ2の下面に絶縁体(または誘電体)を介して設置された不図示の電極に印加する電位を調整することにより、ウエハ2の電位を0V(接地電位)にすることができる。なお、チャック1がウエハ吸着用の電極を備えた静電チャックである場合には、このウエハ吸着用の電極を上記ウエハ電位調整用電極として兼用することができる。
【0030】
[第2の実施例]
図2は、本発明の第2の実施例に係るステージ装置の構成を示す。同図において、図1と共通または対応する部材には、図1と同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。図2において、8はウエハ電位制御装置、3a〜3cはウエハ吸着用の電極(第1の静電吸着電極)である。ウエハ電位制御装置8は、ウエハ吸着用の電極3cへの印加電圧V1を微調整する。これにより、電極3a〜3c間の電位のバランスを調節してウエハ2の電位を0V(接地電位)に調整することが可能となっている。
【0031】
図3に、ウエハ2吸着用の電極配置と印加電圧との関係を示す。同心円状に3つの電極3a〜3cが配置されており、印加電圧V1〜V3はウエハ2の吸着保持に必要な吸着力をもとに設定されている。例えば、ウエハ2を安定して吸着保持するには、チャック最外周の領域(電極3cに対応する領域)に大きな吸着力が求められる。逆に内周側の領域(電極3aに対応する領域)では、それほど大きな吸着力が必要とされない。また、その間の領域(電極3bに対応する領域)では、その中間の吸着力が必要とされる。以上より、必要吸着力に対応させて、各電極(3a,3b,3c)への印加電圧はV2≧V3≧V1に設定されている。
【0032】
しかし、このように必要吸着力に対応させて各電極へ電圧を印加しただけでは、ウエハの電位を0Vにするのは困難である。つまり、印加電圧のバランスによってはV1の調整幅が大きくなってしまい、ウエハ2の電位を0Vにすると電極3aに対応する領域の吸着力が設計値(必要な吸着力)と大きく異なってしまう可能性がある。そのため、必要吸着力により設定された印加電圧(V1〜V3)をもとにウエハ電位がほぼ0Vになるような、電極構成にする必要がある。このような事情より本実施例では、各電極の印加電圧と面積との積の総和が0になるように、電極面積を設計している。つまり、数式で示すと
【0033】
【数1】
Figure 0003748559
となるように電極を設計している。ここで、Sは電極面積、Vは電極への印加電圧、添え字のiは各電極の番号に対応させている。
【0034】
例えば、必要吸着力から算出された各電極(3a、3b、3c)の印加電圧が1000:500:−350[V]と決定された場合、各電極面積比(3a:3b:3c)を1:5:10にすれば、上記電圧を印加したときにウエハ電位を理論的に0Vにすることができる。ただし、ウエハ2とチャック1の接触状態などに起因する接触電気抵抗等のばらつきや、描画時にウエハ2に流入する荷電粒子の影響でウエハ電位は完全に0Vにはならないので、電極3aの印加電圧V1を微調整してウエハ電位を0Vに制御する。ちなみにV1の調整量は、電極の設計次第で電圧V1の10%以下程度にすることは十分可能である。
【0035】
また、電極3aへの印加電圧を可変したのは、電極3aに対応する領域の必要吸着力が相対的に小さいからである。つまり、この領域では、印加電圧を可変することによる吸着力の変動の影響をあまり受けないことより、印加電圧を可変する電極として電極3aを選んでいる。さらに、前述の数式から分かるように、電圧を可変する電極に対する電圧可変量を小さくしたい場合、電極Sを大きくすることが有効であり、また必要な静電吸着力が最も少ない領域の電極を電圧可変電極に選択した場合には、その電極の面積を最も大きくすれば、最も電圧可変量を小さくすることができる。
【0036】
露光装置では、露光ごとにウエハのみを交換するのではなくて、特開2003−142393号公報などに開示されているように、ウエハをチャックに載せた状態で交換する、つまりチャック搬送をウエハ交換ごとに行うシステムも考えられる。この場合、露光空間の外でウエハをチャックに予め保持することが可能で、しかも大気中で保持動作が可能であるため、ウエハの真空吸着が可能である。真空吸着を行うには、ウエハとチャックとの隙間を真空引きする貫通穴が必要となるが、本実施例では、静電チャック1に設けられた前述の非接触電位計用の貫通穴6を用いて、真空吸着を行っている。これにより、非常にシンプルな構造で静電チャックと真空チャックとを兼用することが可能となっている。
【0037】
ここで、静電チャックのステージへの固定方法を図2および図4〜6を用いて詳細に述べる。図2はチャックとステージを側面から見た断面図、図4はチャックの3点支持部をステージから少し浮かした状態での拡大図であり、点線11は、各電極と突起10との電気的な接続を示している。また、図5は表と裏からみたチャックの電極構成を示した図であり、図中左側は表(ウエハ吸着面)から見たウエハ吸着用(第2の静電吸着電極)の電極構成を、右側は裏(ステージ側)から見たチャック固定用(第1の静電吸着電極)の電極構成を示しており、また各電極への電気的な接続状態を示している。さらに、図6は、チャックに対向する部分に関するステージ側の構成であり、3点支持部材に対応する部材とアース電極構成およびそれらの電気的接続状態を示している。
【0038】
チャック1をステージ9に固定した時のチャック歪の再現性を確保するためにチャック1は極力小さい面積(例えばφ2mm以下)の3本の突起10でステージ9に支持されている。ピンの面積を小さくしたことで、チャック1とステージ9間の吸着力はほとんど期待ができないため、本実施例では、ピン10の周辺に非接触で吸着力が働くように、チャック支持部材4を誘電体にし電極(3d、3e、3f)を設けている。ここでは、電極を単純にするため、単極構成の電極にして、電極(3d、3e、3f)に対向するステージ側の部分にはアース電極12を設けている。そして、非接触でもこの電極によって吸着力が働くように、ピン10の高さは20μm以下に設定されている。
【0039】
従来例として挙げた図10では、ステージ1に誘電体および電極を配置し、静電吸着機能を作用させているが、本実施例では図4で示すように、チャック側に誘電体および電極(3d、3e、3f)を配置している。一般に静電チャックでは誘電体を流れる微小な電流によって発熱するため、誘電体と電極を配置した側に熱を生じることになる。つまり、従来例ではステージ1側に発熱体を設けることとなるが、その場合ステージの冷却手段が必要となる。しかし、そもそもウエハ吸着のための電極(3a、3b、3c)でのチャック発熱は避けられないことから、本実施例ではチャック固定用の静電吸着機構に関してもチャック側に発熱体、つまり誘電体と電極を配置した。そして、図示はしないが、特開2003−58258号公報で開示されているように、チャックは輻射によって冷却を行っているため、冷却対象を1つにまとめることで冷却機構がシンプルになる。また、チャックで発熱した熱は、ステージとの接触面を介してステージに流入するが、本実施例での構成ではステージとの接触面が3点でかつ面積を極力小さくしているため、ほとんどステージに熱は伝わらない。
【0040】
また、本実施例ではチャックの吸着面裏側に3つの突起を設けて3点支持を構成しているが、図10のようにステージ側に3つの突起を設けた構成でも構わない。つまり、3点支持部材の構成は本実施例の趣旨ではなく、3点支持部周辺に非接触吸着部を設けることで、吸着力を確保しつつ3点支持の効果を保てることが、本実施例の趣旨である。
【0041】
ここで、静電チャック1とステージ9との間の電気的な受け渡しについて説明する。図4および図5のように、ウエハ吸着用の電極(3a、3b、3c)は、3点支持部材4に設けられた導電性の突起10に電気的に接続されている。また、チャック固定用の電極(3d、3e、3f)は、すべてが電極3bに接続されており、つまりは導電性突起10に接続されている。このように、接続することでステージ9とチャック1間の電気的な受け渡しは3つになり、3本の突起に対応することが可能となっている。電極3cは、印加電圧を調整する関係上吸着力が変化し、電極3aは大きな印加電圧が設定されているため、印加電圧のバランスが良い電極3bに接続している。但し、本実施例は、なるべくステージ9とチャック1との間の電気的接続本数を減らすことを趣旨としたもので、設計の都合で、どの電極と接続しても構わないし、3aと3d、3bと3e、3cと3fというように各電極同士を接続しても構わない。また、ウエハ吸着用電極(3a、3b、3c)とチャック固定用電極(3d、3e、3f)とを必ずしも接続しなくても良く、例えばウエハ吸着用電極が2枚、チャック固定用電極が3枚でチャックが構成されている場合、ウエハ吸着用電極2枚がそれぞれ2つの導電性突起10に接続され、チャック固定用電極3枚がすべて1つの導電性突起10に接続される形でも構わない。
【0042】
次に、チャック1を固定支持するステージ9側の構成について説明する。ステージ9には、チャック1の導電性突起10に対応するように、導電性突起10と同寸かまたはより大きい径の給電端子13が設けられており、各電極に対応する電圧が印加出来るよう配線されている。また、チャック固定用の電極(3d,3e,3f)に対応するように、接地されたアース電極12が配置されている。そして、給電端子13とアース電極12との絶縁をとるために、絶縁部材14が給電端子13とアース電極12との間に設けられている。
【0043】
ここまで、チャックの3点支持構成を最も効果的に実現する構成について述べてきたが、実際にはチャックとステージとの電気的接続を3つ以内にすることが困難な場合も多い。その場合は図7のように、絶縁性の突起部10に複数の給電端子15を設けることにより対応出来る。さらに、図8のように突起部10の周辺に給電端子15を設けるのも可能である。これら2つの例においては、給電端子15との接続は、ステージ側に設けられた板バネなどで構成された端子を接触させて行う。これら2つの例は、理想的な3点支持構成からは外れるが、3点支持部およびその周辺の面積がチャック全体の面積に比べて非常に小さければ、3点支持構成のメリットをほとんど損なわないで構成出来る。また、複数の給電端子15は絶縁性突起部10のステージとの接触面に設けても良く、また絶縁性突起部10周辺(側面)の、ステージと対向する部分に設けても良い。
【0044】
[第3の実施例]
第3の実施例を図9に示す。ここでは、第1および第2の実施例がウエハ2の裏面に対して非接触電位計プローブ5を対向させる構成であったのに対し、ウエハ2の側面に対して非接触電位計プローブ5を対向させてウエハ電位を測定する構成を示している。プローブ5はステージ9の上面に配置された支柱20に直角に、ウエハの側面に対向するように支柱20に取り付けられている。なお、ステージ9が、図1に示すように、粗動ステージ16と微動ステージ9とを有するステージ装置の微動ステージである場合には、この微動ステージ9のウエハ2およびチャック1の外側に位置する部分に開口または切り欠きを設け、上記支柱20は、粗動ステージ16に配置して微動ステージ9の開口または切り欠きを通してウエハ2の高さまで達するものを用いるとよい。その他の構成は第1または第2の実施例と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0045】
ウエハは、通常、表面にレジストが塗布されているが、近年ではウエハとチャック間のゴミ噛みを防ぐ目的で、ウエハ裏面および側面の洗浄がなされており、側面と裏面のレジストは完全に排除されている。そのため、上記各実施例のように、ウエハ裏面もしくは側面を電位測定の測定範囲として用いることで、レジストの影響を排除出来るため、表面電位を測定する上での誤差要因を無くすことが可能となる。
【0046】
以上説明したように、第1および第2の実施例のようにチャックに電位計用の貫通穴を設けることで、荷電ビーム描画の邪魔にならず、かつ簡易な構成で非接触電位計を配置できるため、アース針を用いずにウエハ電位を0Vに制御する方式が適用しやすくなる。また、チャックの固定方法に関しては、第2の実施例のように、チャック支持部材周辺に非接触吸着力を機能させることで、支持部材を小さくしても吸着力を確保することが可能となる。さらに、チャック固定用と基板吸着用の電極間を接続することでベース部材との受け渡し配線または電気的接続部を少なくすることが出来る。また、チャック固定用の3点支持部材を給電端子として兼用することで、3点支持固定による利点を最大限に生かすことが可能となる。
【0047】
[第4の実施例]
次に、上記した露光装置を利用した半導体デバイスの製造プロセスを説明する。図12は半導体デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す図である。ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行う。ステップ2(マスク作製)では設計した回路パターンに基づいてマスクを作製する。
【0048】
一方、ステップ3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記のマスクとウエハを用いて、上記の露光装置によりリソグラフィ技術を利用してウエハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ5によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の組み立て工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、ステップ7でこれを出荷する。
【0049】
上記ステップ4のウエハプロセスは以下のステップを有する。ウエハの表面を酸化させる酸化ステップ、ウエハ表面に絶縁膜を成膜するCVDステップ、ウエハ上に電極を蒸着によって形成する電極形成ステップ、ウエハにイオンを打ち込むイオン打ち込みステップ、ウエハに感光剤を塗布するレジスト処理ステップ、上記の露光装置によって回路パターンをレジスト処理ステップ後のウエハに転写する露光ステップ、露光ステップで露光したウエハを現像する現像ステップ、現像ステップで現像したレジスト像以外の部分を削り取るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト剥離ステップ。これらのステップを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンを形成する。
[第5の実施例]
図13は、上記と同様の基板保持構造を備えたステージ装置をウエハステージとするデバイス製造用の露光装置を示す。
この露光装置は、半導体集積回路等の半導体デバイスや、マイクロマシン、薄膜磁気ヘッド等の微細なパターンが形成されたマイクロデバイス等のデバイスの製造に利用され、原版であるレチクルRを介して基板としての半導体ウエハW上に光源61からの露光エネルギーとしての露光光(この用語は、可視光、紫外光、EUV光、X線、電子線、荷電粒子線等の総称である)を投影系としての投影レンズ(この用語は、屈折レンズ、反射レンズ、反射屈折レンズシステム、荷電粒子レンズ等の総称である)62を介して照射することによって、基板上に所望のパターンを形成している。
【0050】
この露光装置は、定盤51上にガイド52とリニアモータ固定子21を固設している。リニアモータ固定子21は多相電磁コイルを、リニアモータ可動子31は永久磁石群を有している。リニアモータ可動子31を可動部53として、ステージである可動ガイド54に接続し、リニアモータM1の駆動によって可動ガイド54を紙面法線方向に移動させる。可動部53は、定盤51の上面を基準に静圧軸受55で、ガイド52の側面を基準に静圧軸受56で支持される。
【0051】
可動ガイド54を跨ぐようにして配置したステージである移動ステージ57は静圧軸受58によって支持されている。この移動ステージ57は、上記と同様のリニアモータM2によって駆動され、可動ガイド54を基準に移動ステージ57が紙面左右方向に移動する。移動ステージ57の動きは、移動ステージ57に固設したミラー59および干渉計60を用いて計測される。
【0052】
移動ステージ57に搭載したチャック上に基板であるウエハWを保持し、光源61、投影光学系62によって、原版であるレチクルRのパターンをウエハW上の各領域にステップアンドリピートもしくはステップアンドスキャンで縮小転写する。
なお、本実施例は、レチクルRを使用せず荷電ビームにより半導体ウエハ上に回路パターンを直接描画してレジストを露光するタイプの露光装置に特に好適に適用できる。
【0053】
【発明の適用範囲】
本発明は、上記の実施例に限定されることなく、本発明の思想の範囲内で適宜変形して実施することができる。例えば、上記実施例では、本発明を露光装置に適用したが、本発明は、電子ビームやイオンビーム等の荷電粒子線を用いて所望のパターンを基板上に描画する荷電粒子線描画装置、試料観察装置、精密計測器等にも適用可能である。試料観察装置において、前記基板は平板状の試料そのものまたは試料を載置した基板である。また、前記基板が半導体ウエハであれば、パターンが形成された部分も、レジストが塗布された部分と同様、基板の素地が露出していない部分に含まれる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、基板保持に係る優れて効果的な技術を提供している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る粗微動ステージ装置の構成を示す図である。
【図2】 本発明の第2の実施例に係るステージ装置の構成を示す図である。
【図3】 図2の装置における基板吸着用電極と印加電圧との関係を示す図である。
【図4】 図2の装置におけるチャック支持固定部の拡大図である。
【図5】 図2の装置におけるチャックの表裏面電極と給電端子との電気接続の関係を示す図である。
【図6】 図2の装置における支持部材と給電端子との電気接続の関係を示す図である。
【図7】 支持部材を絶縁材として支持部材に給電端子を設けた例を示す図である。
【図8】 支持部材を絶縁材として支持部材に給電端子を設けた他の例を示す図である。
【図9】 本発明の第3の実施例に係るステージ装置の構成を示す図である。
【図10】 チャック固定方法に関する従来技術を示す図である。
【図11】 ウエハの表面電位制御する方法に関する従来技術の引例
【図12】 デバイス製造プロセスを示すフローチャートである。
【図13】 デバイス製造用の露光装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1:静電チャック、2:ウエハ、3:電極、3a,3b,3c:基板吸着用電極、3d,3e,3f:チャック固定用電極、4:支持部材、5:非接触電位計プローブ、6:チャック貫通穴、7:ステージ部材貫通穴、8:ウエハ電位制御器、9:微動ステージ、10:チャック突起支持部、11:チャック内電気配線、12:アース電極、13:ステージ側給電端子、14:絶縁材、15:チャック側給電端子、16:粗動ステージ、17:リニアモータ、V1,V2,V3:印加電圧。

Claims (20)

  1. 基板を搭載して移動するステージを備えたステージ装置であって、
    前記ステージは、基板保持部材を搭載する微動ステージと、前記微動ステージを搭載する粗動ステージとを備え、前記粗動ステージが、前記ステージに搭載された基板の電位を非接触で計測する非接触電位計のプローブを、前記基板の素地が露出した前記基板の部分に対向させて支持することを特徴とするステージ装置。
  2. 前記粗動ステージが、前記基板保持部材および前記微動ステージにそれぞれ設けられた開口または切り欠きを通して前記基板の裏面に対向させるべく前記プローブを支持することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
  3. 前記基板保持部材に設けられた前記開口が、前記基板を前記基板保持部材に真空吸着するための真空排気孔として利用可能であることを特徴とする請求項に記載のステージ装置。
  4. 前記粗動ステージが、前記基板の側面に対向させるべく前記プローブを支持することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
  5. 前記粗動ステージが、前記微動ステージに設けられた開口または切り欠きを通して前記基板の側面に対向させるべく前記プローブを支持することを特徴とする請求項4に記載のステージ装置。
  6. 前記基板保持部材に設けられた、前記基板と絶縁体または誘電体を介して対面する複数の面状電極の電位を、前記非接触電位計の出力に基づいて調整することにより、前記基板の電位を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のステージ装置。
  7. 前記複数の面状電極は、前記基板を吸着保持するための静電吸着電極として兼用されることを特徴とする請求項に記載のステージ装置。
  8. 前記複数の面状電極のそれぞれの面積と電位との積の総和が0になるように、前記それぞれの面積と電位とを設定したことを特徴とする請求項に記載のステージ装置。
  9. 前記制御手段は、前記電位の絶対値が最も小さい前記面状電極の電位を制御することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載のステージ装置。
  10. 前記制御手段は、前記面積が最も大きい電極の電位を制御することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載のステージ装置。
  11. 前記素地が露出した前記基板の部分は、感光剤が付着していない部分であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載のステージ装置。
  12. 請求項1〜11のいずれか1つに記載のステージ装置に搭載された基板を用いた露光処理を行うことを特徴とする露光装置。
  13. 請求項1〜12のいずれか1つに記載のステージ装置に搭載された基板を用いた露光処理を行うことを特徴とする荷電ビーム描画装置。
  14. 請求項1〜12のいずれか1つに記載のステージ装置によって、前記基板としての被露光基板および原版の少なくとも一方を位置決めすることを特徴とする露光装置。
  15. 請求項12もしくは14に記載の露光装置または請求項13に記載の荷電ビーム描画装置を用いてデバイスを製造することを特徴とするデバイス製造方法。
  16. 粗動ステージに搭載された微動ステージ上に搭載された基板の電位を測定する基板電位測定方法であって、前記微動ステージに搭載された基板の電位を、前記基板の素地が露出した前記基板の部分に対向させるべく前記粗動ステージに支持された非接触電位計のプローブにより測定することを特徴とする基板電位測定方法。
  17. 基板を真空吸着するための真空排気用の貫通穴と、非接触電位計プローブ用の貫通穴とに兼用される開口を備えたことを特徴とする静電チャック。
  18. 前記基板と絶縁体または誘電体を介して対面する複数の面状電極を備えたことを特徴とする請求項17に記載の静電チャック。
  19. 前記複数の面状電極は、前記基板の静電吸着と前記基板の電位の制御とに兼用されることを特徴とする請求項18に記載の静電チャック。
  20. 請求項17〜19のいずれか1つに記載の静電チャックを用いてデバイスを製造することを特徴とするデバイス製造方法。
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