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JP3626577B2 - 重合体組成物ならびにその成形品および用途 - Google Patents

重合体組成物ならびにその成形品および用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と特定のブロック共重合体からなる重合体組成物、該重合体組成物からなる成形品および該重合体組成物の用途に関する。
本発明の重合体組成物は、気体、有機液体等に対する遮断性と柔軟性の両方に優れる。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、気体、有機液体等に対して高度の遮断性を有し、しかも、塩化ビニリデン樹脂や塩化ビニル樹脂のように焼却処分時に有害なガスを発生することがないため、食品包装材等の種々の用途に展開されつつある。
しかしながら、エチレン−ビニルアルコール系共重合体は柔軟性に劣るために、ポリオレフィン等の軟質樹脂との組成物または積層体の形で使用されるのが一般的である。
【0003】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の樹脂とは、通常、親和性が低く相溶性が不良であるために、エチレン−ビニルアルコール系共重合体に軟質樹脂を配合してなる組成物では、エチレン−ビニルアルコール系共重合体本来の遮断性などが大幅に損なわれることが多い。また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の層に対して軟質樹脂の層を積層してなる積層体においては、該エチレン−ビニルアルコール系共重合体層単独に比較して柔軟性が向上しているものの、用途に応じてはまだ柔軟性が不足している場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、第1に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の長所である気体、有機液体等に対する高度の遮断性などを活用し、かつ、その欠点である柔軟性不足を改善することによって、遮断性と柔軟性の両方に優れたエチレン−ビニルアルコール系共重合体組成物を提供することにある。
本発明の目的は、第2に、上記の優れた性質が有効に発揮される成形品を提供することにある。
また、本発明の目的は、第3に、上記の優れた性質が有効に発揮される上記組成物の各種用途を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と特定のイソブチレン系ブロック共重合体とを特定の状態で溶融混練した場合、遮断性と柔軟性とを両立し得る重合体組成物が得られることを見いだし、さらに検討を重ねた後に本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明によれば、上記第1の目的は、
(1)下記(A)成分からなる相および下記(B)成分からなる相を含有し;
【0007】
(A)成分:エチレン−ビニルアルコール系共重合体;
(B)成分:主としてビニル芳香族モノマー単位からなる重合体ブロック(b1)と主としてイソブチレン単位からなる重合体ブロック(b2)とを有するブロック共重合体;
【0008】
(2)50倍重量のトルエン中に20℃で1時間浸漬した後において非溶解および非分散の状態で残存している部分の割合が15重量%以上であり;かつ、
【0009】
(3)50倍重量のイソプロピルアルコール/水混合溶媒(容積比35/65)中に70℃で72時間浸漬した後において非溶解および非分散の状態で残存している部分の割合が15重量%以上であり;
(4)溶融混練に供する(A)成分および(B)成分について、重合体組成物中の含有率をそれぞれφA(重量%)およびφB(重量%)で表し、温度230℃、せん断速度100sec −1 の条件下における溶融粘度をそれぞれηA(ポアズ)およびηB(ポアズ)で表す場合、φA、φB、ηAおよびηBが下記式(f1)、(f2)および(f3)を満足するような条件によって、製造される;
15 ≦ φA ≦ 85 (f1)
15 ≦ φB ≦ 85 (f2)
1.0≦(φB/φA)×(ηA/ηB)≦8.0 (f3)
【0010】
ことを特徴とする重合体組成物を提供することによって達成される。
【0011】
本発明によれば、上記第2の目的は、上記重合体組成物からなる成形品、および該重合体組成物からなる少なくとも1つの層と他の素材からなる少なくとも1つの層との積層構造を有する成形品を、それぞれ提供することによって達成される。
【0012】
本発明によれば、上記第3の目的は、下記(1)〜(9)に示す上記重合体組成物の用途をそれぞれ提供することによって達成される。
【0013】
(1)上記重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する飲食品用包装材。
【0014】
(2)上記重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する容器。
【0015】
(3)上記重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する内袋を有するバッグインボックス。
【0016】
(4)上記重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する容器用パッキング。
【0017】
(5)上記重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する医療用輸液バッグ。
【0018】
(6)上記重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する有機液体貯蔵用タンク。
【0019】
(7)上記重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する有機液体輸送用パイプ。
【0020】
(8)上記重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する暖房用温水パイプ。
【0021】
(9)上記重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する樹脂製壁紙。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明の重合体組成物は、上記(A)成分および(B)成分からなる。
【0024】
本発明における(A)成分であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH」と称する)は、主としてエチレン単位(−CHCH−)とビニルアルコール単位(−CH−CH(OH)−)とからなる共重合体である。本発明において使用されるEVOHとしては、特に限定されることなく、例えば、成形用途で使用されるような公知のものを挙げることができる。ただし、EVOHのエチレン単位の含量は、気体、有機液体等に対する遮断性の高さと成形加工性の良好さの点から、10〜99モル%であることが好ましく、20〜75モル%であることがより好ましく、25〜60モル%であることがより好ましく、25〜50モル%であることが特に好ましい。EVOHは、後述するように、代表的にはエチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体ケン化物であるが、エチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体ケン化物の場合、脂肪酸ビニルエステル単位のケン化度は、得られるEVOHの遮断性と熱安定性の高さの点から、50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることが特に好ましい。
EVOHのメルトフローレート(温度210℃、荷重2.16kgの条件下に、ASTM D1238に記載の方法で測定)は、成形加工性の良好さの点から、0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.5〜50g/10分であることがより好ましく、1〜20g/10分であることが特に好ましい。また、EVOHの極限粘度は、フェノール85重量%および水15重量%の混合溶媒中、30℃の温度において、0.1〜5dl/gであることが好ましく、0.2〜2dl/gであることがより好ましい。
【0025】
EVOHには、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、少量(好ましくは、全構成単位に対して10モル%以下)であれば、他の構成単位を有していてもよい。他の構成単位としては、プロピレン、イソブチレン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、バーサチック酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニルエステル、バレリン酸ビニルエステル、カプリン酸ビニルエステル、安息香酸ビニルエステル等のカルボン酸ビニルエステル;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸またはその誘導体(例:塩、エステル、ニトリル、アミド、無水物など);ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;N−メチルピロリドン等から誘導される単位などを挙げることができる。またEVOHは、アルキルチオ基などの官能基を末端に有していてもよい。
【0026】
EVOHの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の方法に従って、エチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体を製造し、次いで、これをケン化することによってEVOHを製造することができる。エチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体は、例えば、主としてエチレンと脂肪酸ビニルエステルとからなるモノマーを、メタノール、t−ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒中、加圧下に、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を用いて重合させることによって得られる。該脂肪酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、バーサチック酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニルエステル、バレリン酸ビニルエステル、カプリン酸ビニルエステルなどを使用することができるが、これらの中でも酢酸ビニルエステルが好ましい。エチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体のケン化では、酸触媒またはアルカリ触媒を使用することができる。
【0027】
上記(B)成分とは、主としてビニル芳香族モノマー単位からなる重合体ブロック(b1)と、主としてイソブチレン単位からなる重合体ブロック(b2)とを有するブロック共重合体(以下、「b1/b2ブロック共重合体」と称する)である。
【0028】
重合体ブロック(b1)の主たる構成単位であるビニル芳香族モノマー単位は、付加重合によりビニル芳香族モノマーから誘導される単位である。該ビニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、t−ブトキシスチレン等のスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類などのビニル基含有芳香族化合物;インデン、アセナフチレン等のビニレン基含有芳香族化合物などを挙げることができる。重合体ブロック(b1)を構成するビニル芳香族モノマー単位は1種のみでもよく、2種類以上であってもよい。ただし、中でも、重合体ブロック(b1)がスチレンから誘導される単位よりなっているのが特に好ましい。
【0029】
また、重合体ブロック(b1)は数平均分子量が2500〜400000であることが好ましく、5000〜200000であることがより好ましい。重合体ブロック(b1)の数平均分子量が2500以上、とりわけ5000以上の場合には、b1/b2ブロック共重合体の機械的特性が良好となり、(A)成分との組成物においてもやはり機械的特性が良好となる。一方、重合体ブロック(b1)の数平均分子量が400000以下、とりわけ200000以下であると、b1/b2ブロック共重合体の溶融粘度が高くなりすぎず、(A)成分との混合も容易となり、得られた高分子組成物の成形性や加工性も良好となる。
【0030】
b1/b2ブロック共重合体における重合体ブロック(b2)の主たる構成単位であるイソブチレン単位は、付加重合によりイソブチレンから誘導される単位(−C(CH−CH−)である。重合体ブロック(b2)の数平均分子量は10000〜400000であることが好ましい。重合体ブロック(b2)の数平均分子量が10000以上の場合には、b1/b2ブロック共重合体の気体、有機液体等に対する遮断性が特に良好となり、(A)成分との組成物においてもやはり遮断性が特に良好となる。一方、重合体ブロック(b2)の数平均分子量が400000以下であると、b1/b2ブロック共重合体の流動性が良好であり、(A)成分との重合体組成物の成形性や加工性が良好である。
【0031】
少なくとも1個の重合体ブロック(b1)と少なくとも1個の重合体ブロック(b2)とを有するb1/b2ブロック共重合体は、その数平均分子量が20000〜500000であることが好ましく、30000〜400000であることがより好ましい。b1/b2ブロック共重合体の数平均分子量が20000以上、とりわけ30000以上の場合には、b1/b2ブロック共重合体、ひいては(A)成分との重合体組成物の強度、伸度などの機械的特性が良好となる。一方、b1/b2ブロック共重合体の数平均分子量が500000以下、とりわけ400000以下であると、b1/b2ブロック共重合体の流動性が良好であり、(A)成分との重合体組成物の成形性や加工性が良好となる。
b1/b2ブロック共重合体における重合体ブロック(b1)と重合体ブロック(b2)の割合は、b1/b2ブロック共重合体、重合体ブロック(b1)および重合体ブロック(b2)の数平均分子量などにも依存するが、一般に、b1/b2ブロック共重合体の重量に基づいて、重合体ブロック(b1)の割合が5〜80重量%であり、かつ重合体ブロック(b2)の割合が95〜20重量%であるのが好ましく、重合体ブロック(b1)の割合が10〜75重量%であり、かつ重合体ブロック(b2)の割合が90〜25重量%であるのがより好ましい。重合体ブロック(b1)の割合が5重量%以上、とりわけ10重量%以上の場合には、b1/b2ブロック共重合体、ひいては(A)成分との重合体組成物の強度などの機械的特性が良好となり、一方、重合体ブロック(b1)の割合が80重量%以下、とりわけ75重量%以下であると、溶融粘度が高くなりすぎず、(A)成分との重合体組成物の成形性や加工性が良好となる。なお、上記の重合体ブロック(b1)の重量%は、b1/b2ブロック共重合体が重合体ブロック(b1)を複数個有する場合には、各重合体ブロック(b1)の重量%の和である。同様に、上記の重合体ブロック(b2)の重量%は、b1/b2ブロック共重合体が重合体ブロック(b2)を複数個有する場合には、各重合体ブロック(b2)の重量%の和である。
【0032】
b1/b2ブロック共重合体は、分子中に、少なくとも1個の重合体ブロック(b1)と少なくとも1個の重合体ブロック(b2)を有していればよく、その構造は特に限定されない。例えば、b1/b2ブロック共重合体は、直鎖状、2以上に枝分かれした分岐鎖状または星型のいずれの分子鎖形態を有していてもよい。なお、b1/b2ブロック共重合体の典型例として下記の式(I)または式(II)で表される構造の分子鎖を有するものを挙げることができる。
【0033】
【化1】
Q−[C(R)(R)−(b2−b1)m−(b2)k−]n (I)
Q−[C(R)(R)−(b1−b2)m−(b1)k−]n (II)
【0034】
(上記式(I)および式(II)中、Qはn価の炭化水素基を表し、b1は重合体ブロック(b1)を表し、b2は重合体ブロック(b2)を表し、RおよびRはそれぞれ炭素数1〜20のアルキル基またはアラルキル基を表し、kは0または1を表し、mおよびnはそれぞれ1以上の整数を表す。ただし、mは1であるのが好ましい。)
【0035】
さらに、b1/b2ブロック共重合体には、本発明の重合体組成物の性能を損なわない範囲で、任意の方法により官能基が導入されていてもよい。導入され得る官能基の例としては、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、エポキシ基、エーテル基(例:アルコキシル基)、カルボキシル基、エステル基(例:アルコキシカルボニル基、アシロキシル基)、アミド基(例:カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アシルアミノ基)、ジカルボン酸無水物の構造を有する基(例:無水マレイン酸残基)等が挙げられる。
【0036】
b1/b2ブロック共重合体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、通常の方法に従い、重合開始剤系を用いて、不活性溶媒中で、主としてビニル芳香族モノマーからなるモノマーの重合操作と主としてイソブチレンからなるモノマーの重合操作とを任意の順序で段階的に行い、さらに所望に応じて、官能基を有する化合物等を用いて変性することによって製造することができる。
その場合の重合開始剤系の例としては、ルイス酸とルイス酸によってカチオン重合活性種を生成し得る有機化合物との混合系が挙げられる。ルイス酸としては、四塩化チタン、四塩化スズ、三塩化ホウ素、塩化アルミニウムなどが使用できる。また、ルイス酸によってカチオン重合活性種を生成し得る有機化合物としては、例えば、ビス(1−メトキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(1−アセトキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼンなどが使用可能である。さらに、上記のルイス酸および有機化合物と共に、必要に応じて、例えば、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、酢酸エチルなどのエステル類、ピリジン類、アミン類などを重合活性種の安定化剤として使用してもよい。また、重合用の不活性溶媒としてはヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、塩化メチル、塩化メチレンなどの有機溶媒を使用することができる。
【0037】
直鎖状のb1/b2ブロック共重合体は、例えば、(1)重合開始剤系として、ルイス酸およびカチオン重合活性種を生成し得る官能基を分子中に1個有する有機化合物を使用して、主としてイソブチレンからなるモノマーを反応系内に添加して重合させて重合体ブロック(b2)を形成した後、主としてビニル芳香族モノマーからなるモノマーを重合させて重合体ブロック(b1)を形成させる方法;(2)重合開始剤系として、ルイス酸およびカチオン重合活性種を生成し得る官能基を分子中に2個有する有機化合物を使用して、まず、主としてイソブチレンからなるモノマーを重合させて重合体ブロック(b2)を形成した後、反応系に、主としてビニル芳香族モノマーからなるモノマーを添加して重合を行って重合体ブロック(b1)を形成させる方法などにより製造することができる。
また、星型のb1/b2ブロック共重合体は、例えば、ルイス酸およびカチオン重合活性種を生成し得る官能基を分子中に3個以上有する有機化合物を重合開始剤系として使用して、まず、主としてイソブチレンからなるモノマーを重合させて重合体ブロック(b2)を形成し、次いで、主としてビニル芳香族モノマーからなるモノマーを添加して重合を行い重合体ブロック(b1)を形成させる方法などにより製造することができる。
【0038】
本発明の重合体組成物においては、(A)成分として2種以上のEVOHを使用してもよく、また、(B)成分として2種以上のb1/b2ブロック共重合体を使用してもよい。
【0039】
本発明の重合体組成物は、主として(A)成分からなる相と、主として(B)成分からなる相とを、独立に含有する。各相が独立して存在することは、次に示す溶媒中での浸漬処理の結果に基づいて確認することができる。
【0040】
本発明の重合体組成物においては、50倍重量のトルエン中に20℃で1時間浸漬した後に残存する非溶解かつ非分散の部分の割合が15重量%以上であり、かつ、50倍重量のイソプロピルアルコール/水混合溶媒(容積比35/65)中に70℃で72時間浸漬した後に残存する非溶解かつ非分散の部分の割合が15重量%以上である。
上記のトルエンまたはイソプロピルアルコール/水混合溶媒を用いた浸漬処理に供する試料としては、その形状は特に限定されるものではないが、例えば、重合体組成物から加熱下での圧縮成形法により厚さ1mmのシート状物を成形し、これを切り出して作製した重量1.00gの短冊状物を使用することができる。浸漬処理においては、所定の溶媒を、試料に対して50倍の重量(例えば、試料の重量が1.00gである場合には50.0g)使用する。浸漬処理は、試料をその全体が溶媒中に沈むように配置して、一定温度で所定時間(20℃で1時間または70℃で72時間)静置する。所定時間後、試料の残存物を静かに取り出す。浸漬処理中、試料の一部が、溶媒中に抽出されたり分散することがあるが、取り出す残存物とは、これらの抽出された成分および分散している成分を含まないものであり、浸漬処理後に実質的に一体的な形態を保持して残存している部分(非溶解かつ非分散の状態で残存している部分)である。取り出した残存物は、溶媒を蒸発させた後、重量を測定する。本発明の重合体組成物においては、試料の当初の重量に対する残存物の重量の割合が、いずれの溶媒を用いた浸漬処理後においても、15重量%以上である。
【0041】
本発明の重合体組成物では、トルエンを用いた浸漬処理において、(B)成分が抽出され、(A)成分を主体とする相が実質的に一体的な形態で残存する。一方、イソプロピルアルコール/水混合溶媒を用いた浸漬処理においては、逆に、(A)成分が抽出され、(B)成分を主体とする相が実質的に一体的な形態で残存する。したがって、重合体組成物が主として(A)成分および(B)成分から構成され、しかも上記の浸漬処理の両方において実質的に一体的な形態の残存物が確認されるならば、該重合体組成物は、主として(A)成分からなる連続相と主として(B)成分からなる連続相とが独立に存在しているということができる。
本発明の重合体組成物では、主として(A)成分からなる相と主として(B)成分からなる相とが相互侵入網目構造をなして分布しているため、トルエンを用いた浸漬処理およびイソプロピルアルコール/水混合溶媒を用いた浸漬処理の両方の場合で、残存している部分の割合が15重量%以上となるものと推定される。そして、本発明の重合体組成物においては、気体、有機液体等に対して極めて高度の遮断性を有する(A)成分からなる相と、気体等に対して良好な遮断性を有する(B)成分からなる相とがそれぞれ立体的な網目構造をなして均一に分布していることに由来して優れた遮断性を発揮することができ、また、優れた柔軟性を有する(B)成分からなる連続相が(A)成分からなる相の網目に侵入している構造を有することに由来して、優れた柔軟性を良好な強度を保持しながら発揮することができるものと推定される。
【0042】
なお、トルエンを用いた浸漬処理およびイソプロピルアルコール/水混合溶媒を用いた浸漬処理の両方において、残存している部分の割合が15重量%未満の場合には、(A)成分および(B)成分の含有率がいずれも低すぎるので、本発明の効果が奏されない。
【0043】
本発明の重合体組成物においては、上記のように、(A)成分および(B)成分がそれぞれ独立の連続相を構成して分布しており、かつ2種の浸漬処理後に残存する部分の割合がそれぞれ15重量%以上である限りにおいて、(A)成分と(B)成分との量的割合は特に限定されるものではない。ただし、遮断性と柔軟性とが総合的に特に優れる点から、一般に、(A)成分/(B)成分の重量比は、85/15〜15/85の範囲内であることが好ましく、80/20〜20/80の範囲内であることがより好ましく、65/35〜35/65の範囲内であることが特に好ましい。
【0044】
本発明の重合体組成物は、上記した(A)成分および(B)成分の他に、必要に応じて、本発明の効果を実質的に損なわない範囲で、他の重合体や添加剤を含有していてもよい。配合し得る他の重合体の例としては、EPR(エチレン−プロピレン系ゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム)、NR(天然ゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、IIR(ブチルゴム)等のゴム;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリアミド、ポリエステル等の樹脂などが挙げられる。また、添加剤の例としては、成形加工時の流動性を向上させるための鉱物油または軟化剤;無機粉末充填剤;ガラス繊維、金属繊維などの繊維状充填剤;熱安定剤;酸化防止剤;光安定剤;粘着付与剤;帯電防止剤;発泡剤などを添加してもよい。これらの他の重合体または添加剤は、主として(A)成分からなる相、主として(B)成分からなる相およびこれら以外の相のうちのどの相に含まれていてもよい。例えば、リン酸、ピロリン酸、亜リン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、クエン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、酢酸等の酸または多塩基酸の部分塩が、主として(A)成分からなる相中に含有されている場合には、重合体組成物製造のための溶融混練時または重合体組成物の溶融成形時におけるEVOHのゲル化が抑制され、色調の悪化を防止できることがある。
【0045】
本発明の重合体組成物は、(A)成分および(B)成分を、所望により他の添加剤とともに、溶融条件下で十分なせん断力の下に混練することによって調製することができるが、その場合、(A)成分および(B)成分をその割合および溶融粘度が以下の条件を満足するような組み合わせで使用する。すなわち、本発明の重合体組成物は、溶融混練に供する(A)成分および(B)成分について、重合体組成物中の所望の含有率をそれぞれφA(重量%)およびφB(重量%)で表し、温度230℃、せん断速度100sec−1の条件下における溶融粘度をそれぞれηA(ポアズ)およびηB(ポアズ)で表す場合、φA、φB、ηAおよびηBが下記式(f1)、(f2)および(f3)を満足するような条件を採用することによって、製造することができる。
【0046】
【数1】
15 ≦ φA ≦ 85 (f1)
【0047】
【数2】
15 ≦ φB ≦ 85 (f2)
【0048】
【数3】
1.0 ≦ (φB/φA)×(ηA/ηB) ≦ 8.0 (f3)
【0049】
発明の重合体組成物は、組成物中における(A)成分の含有率φAとして、上記のとおり、15〜85重量%の範囲を選択するが、20〜80重量%の範囲を選択するのがより好ましく、35〜65重量%の範囲を選択するのが特に好ましい。また、同様の点において、組成物中における(B)成分の含有率φBとしては、上記のとおり、15〜85重量%の範囲を選択するが、20〜80重量%の範囲を選択するのがより好ましく、35〜65重量%の範囲を選択するのが特に好ましい。
【0051】
上記の溶融条件下における混練は、例えば、混練機、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合装置または混練装置を使用して行うことができる。混合または混練の時の温度は、使用する(A)成分の融点などに応じて適宜調節するのがよいが、通常、110〜300℃の温度範囲内の温度を採用すればよい。
【0052】
本発明の重合体組成物は、ペレット、粉末などの任意の形態にしておいて、成形材料として使用することができる。本発明の重合体組成物は、熱可塑性を有するので、一般の熱可塑性重合体に対して用いられている通常の成形加工方法や成形加工装置を用いて成形加工することができる。成形加工法としては、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの任意の方法を採用することができる。このような方法で製造される本発明の重合体組成物からなる成形品には、パイプ、シート、フィルム、円板、リング、袋状物、びん状物、紐状物、繊維状物などの多種多様の形状のものが包含され、また、他の素材との積層構造または複合構造の形態のものも包含される。他の素材との積層構造を採用することによって、成形品の耐湿性、機械的特性などを向上させることが可能である。
【0053】
本発明の重合体組成物からなる少なくとも1つの層と他の素材からなる少なくとも1つの層との積層構造を有する成形品において、該他の素材は、要求される特性、予定される用途などに応じて適宜好適なものを選択すればよい。該他の素材としては、例えば、ポリオレフィン(例:高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン等)、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(EEA)、ポリスチレン(PS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)などの熱可塑性重合体などを挙げることができる。
【0054】
該積層構造を有する成形品においては、本発明の重合体組成物からなる層と他の素材からなる基材層との間に接着剤層を介在させてもよい。接着剤層を介在させることによって、その両側の2層を強固に接合一体化させることができる。接着剤層において使用される接着剤としては、ジエン系重合体の酸無水物変性物;ポリオレフィンの酸無水物変性物;高分子ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール化合物とアジピン酸等の二塩基酸とを重縮合して得られるポリエステルポリオール;酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体の部分ケン化物など)とポリイソシアネート化合物(例えば、1,6−ヘキサメチレングリコール等のグリコール化合物と2,4−トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とのモル比1対2の反応生成物;トリメチロールプロパン等のトリオール化合物と2,4−トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とのモル比1対3の反応生成物など)との混合物等を使用することができる。なお、積層構造形成のために、共押出、共射出、押出コーティング等の公知の方法を使用することもできる。
【0055】
本発明の重合体組成物からなる成形品は、多くの気体、有機液体等に対する優れた遮断性と優れた柔軟性とを兼備しているので、これらの性質が要求される日用品、包装材、機械部品などとして使用することができる。本発明の重合体組成物の特長が特に効果的に発揮される用途の例としては、飲食品用包装材、容器、バッグインボックス用内袋、容器用パッキング、医療用輸液バッグ、有機液体貯蔵用タンク、有機液体輸送用パイプ、暖房用温水パイプ(床暖房用温水パイプ等)、樹脂製壁紙などが挙げられる。これらの用途に供するための成形品においては、該重合体組成物は少なくとも1つの層を形成していればよく、該重合体組成物からなる単層構造のもの、および該重合体組成物からなる少なくとも1つの層と他の素材からなる少なくとも1つの層との積層構造のものの中から適宜選ぶことができる。上記の飲食品用包装材、容器、バッグインボックス用内袋、容器用パッキングおよび医療用輸液バッグでは、大気中の酸素ガスの透過と内容物の揮発性成分の透過を阻止できることから、内容物の長期保存性に優れる。上記の有機液体貯蔵用タンクおよび有機液体輸送用パイプでは、脂肪族炭化水素、ケトン、ガソリン等の有機液体およびその蒸気を密閉できることから、金属製のタンクおよびパイプと同様の機能を具備し、しかも金属製のものに比べて、軽量化が可能であり、成形加工の容易さのため取り得る形状の自由度が高い。上記の暖房用温水パイプでは、長期間の使用においても、温水の浸透による劣化およびストレスクラックの発生が抑制されるため、温水漏れを防止することができる。また、上記の樹脂製壁紙では、本発明の重合体組成物からなる層と塩化ビニル樹脂等の軟質樹脂からなる基体層との積層構造をとることによって、軟質樹脂中の可塑剤の壁紙表面へのブリードアウトを阻止し、その結果、表面汚れの発生を防止することができる。
【0056】
なお、本発明の重合体組成物からなる成形品のスクラップは、溶融し、必要に応じて(A)成分および/または(B)成分を追加することによって、再使用することができる。
【0057】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらにより限定されない。
【0058】
なお、以下の合成例において、ブロック共重合体の数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求め、ブロック共重合体中の各ブロックの数平均分子量は該ブロック共重合体の合成中間体であるポリイソブチレンのGPCに基づいて求め、ブロック共重合体中のスチレン単位の含有量はH−NMRにより求めた。また、温度230℃、せん断速度100sec−1の条件下におけるEVOHおよびブロック共重合体の溶融粘度は、キャピラリー型粘度計(株式会社東洋精機製作所製キャピログラフ1C)を用いて測定した。
【0059】
実施例において使用したEVOHは、以下の略号で示す。
[EVOH(S)]:エチレン単位含有率が32モル%であり、ケン化度が99モル%であり、温度230℃、せん断速度100sec−1の条件下における溶融粘度が1000ポアズであるエチレン−酢酸ビニルエステル共重合体のケン化物。
【0060】
[EVOH(T)]:エチレン単位含有率が44モル%であり、ケン化度が99モル%であり、温度230℃、せん断速度100sec−1の条件下における溶融粘度が480ポアズであるエチレン−酢酸ビニルエステル共重合体のケン化物。
【0061】
<合成例1>
窒素で置換した攪拌機付きの反応器中に、塩化メチレン1060重量部とメチルシクロヘキサン920重量部とからなる混合溶媒、および四塩化チタン2.7重量部と1,4−ビス(1−メトキシ−1−メチルエチル)ベンゼン0.91重量部とからなる重合開始剤系を仕込み、−65℃の冷却下に、イソブチレン150重量部を仕込んで4時間重合させた。−65℃の冷却下で、これにジメチルアセトアミド0.08重量部およびスチレン38重量部を添加し、更に4時間重合させた。得られた反応混合物をメタノールに再沈して、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(i)を製造した。
得られたトリブロック共重合体(i)の数平均分子量、各ブロックの数平均分子量、スチレン含有量および温度230℃、せん断速度100sec−1の条件下における溶融粘度を、下記の表1に示す。
【0062】
<合成例2、3>
スチレン、イソブチレンおよび1,4−ビス(1−メトキシ−1−メチルエチル)ベンゼンの仕込み割合を変更した以外は合成例1と同様の方法を用いて、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(ii)および(iii)を、それぞれ製造した。これらのトリブロック共重合体の数平均分子量、各ブロックの数平均分子量、スチレン含有量および温度230℃、せん断速度100sec−1の条件下における溶融粘度を、下記の表1に示す。
【0063】
【表1】
Figure 0003626577
【0064】
<実施例1〜5>
EVOH(S)もしくは(T)およびトリブロック共重合体(i)、(ii)もしくは(iii)を、下記の表2に示した割合で混合し、小型二軸押出機により200℃で溶融混練した後、押出し切断して、重合体組成物のペレットを製造した。 そのペレットを圧縮成形機により加熱下に圧縮成形し、厚さ1mmおよび100μmのシート状試験片を作製し、これらを用いて、それぞれ硬度(JIS D)および酸素透過係数の測定を行った。硬度はJIS K7215に準拠して測定を行った。酸素透過係数の測定はガス透過率測定装置(柳本製作所製「GTR−10」)を用いて、酸素圧3.5kg/cm、温度35℃、湿度0%RHの条件で行った。
さらに、上記のペレットを用いて、上記の手順に従って、圧縮成形機により加熱下に圧縮成形して厚さ1mmのシートとし、短冊状に切断して1.00gの試料を作製し、その試料を用いて、50倍重量のトルエン中に20℃で1時間浸漬した後における非溶解かつ非分散の残存部分の割合、および50倍重量のイソプロピルアルコール/水混合溶媒(容積比35/65)中に70℃で72時間浸漬した後における非溶解かつ非分散の残存部分の割合を、それぞれ求めた。
得られた測定結果を表2に示す。
【0065】
<比較例1〜4>
重合体組成物のシートの代わりに、ポリアミド(宇部興産株式会社製「UBEナイロン1013B」)の単独、EVOH(S)とイソプレン−スチレン系ブロック共重合体(SEPS)(株式会社クラレ製「セプトン2002」)との重合体組成物、EVOH(S)の単独、ならびにブロック共重合体(ii)の単独のそれぞれのシートを用いた以外は、実施例1と同様にして、硬度および酸素透過係数の測定ならびに浸漬処理後の残存割合の決定を行った。
得られた測定結果を表2に示す。
【0066】
<参考例1、2>
EVOH(T)およびトリブロック共重合体(ii)を下記の表2に示した割合で用いた以外は、実施例1と同様にして溶融混練した後、押出し切断して、重合体組成物のペレットを製造した。該ペレットを用いた以外は実施例1と同様にして各種シートを作製し、硬度および酸素透過係数の測定ならびに浸漬処理後の残存割合の決定を行った。
得られた測定結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
Figure 0003626577
【0068】
上記の表2から、実施例1〜5の本発明の重合体組成物は、酸素透過係数において約100〜約1000cc・20μm/m・day・atmの値を示したようにガスバリア性が良好であり、しかもJIS D硬度において30〜50の値を示したように柔軟性も良好であることが判る。また、上記各実施例の本発明の重合体組成物では、トルエン溶媒中およびイソプロピルアルコール/水混合溶媒中のどちらの場合においても溶媒浸漬処理後に非溶解かつ非分散の部分が残存したことから、使用した(A)成分および(B)成分は、それぞれ独立の連続相を形成していることが判る。
上記の表2から、比較例1のポリアミドの場合には、JIS D硬度において84の値を示したように柔軟性が不足していることが判る。比較例2のEVOHとイソプレン−スチレン系ブロック共重合体との重合体組成物の場合には、酸素透過係数において3200cc・20μm/m・day・atmの値を示したようにガスバリア性が不十分であり、またJIS D硬度において62の値を示したように柔軟性も不足気味であることが判る。比較例3の(A)成分(EVOH)単独の場合には、JIS D硬度において84を示したように柔軟性が不足していることが判る。また、比較例4の(B)成分単独の場合には、酸素透過係数において5700cc・20μm/m・day・atmの値を示したようにガスバリア性が不足していることが判る。
なお、溶媒浸漬処理後の残存割合において本発明とは相違する参考例1の重合体組成物では、酸素透過係数において1600cc・20μm/m・day・atmの値を示したように、ガスバリア性の点で本発明のものより劣る傾向がある。また、参考例2の重合体組成物では、酸素透過係数において9cc・20μm/m・day・atmの値を示したように、ガスバリア性の点においては極めて優れているものの、JIS D硬度において57の値を示したように、柔軟性の程度においては本発明のものよりも低い傾向がある。
【0069】
<実施例6>
実施例2で得られたものと同じ重合体組成物を用いてペレットを製造し、このペレットを窒素気流下で3種5層共押出装置(重合体組成物用押出機の設定温度:230℃)に供給し、3種5層の多層フィルムを作製した。該フィルムの層構成は、一方の面から、高密度ポリエチレン層/接着剤層/重合体組成物層/接着剤層/高密度ポリエチレン層の順であり、また、各層の厚さは、両方の高密度ポリエチレン層ではいずれも約60μmであり、両方の接着剤層(マレイン酸変性ポリエチレン;三井石油化学工業株式会社製「アドマーNF−500」)ではいずれも約10μmであり、重合体組成物層では約10μmであった。
得られたフィルムをゲルボフレックステスターを用いて屈曲試験に供した。屈曲回数600回を越えた時に最初の貫通孔(ピンホール)が発生した。
【0070】
<比較例5>
重合体組成物の代わりにEVOH(S)を単独で使用した以外は実施例6と同様にして共押出しし、高密度ポリエチレン層(厚さ:約60μm)/接着剤層(厚さ:約10μm)/EVOH層(厚さ:約10μm)/接着剤層(厚さ:約10μm)/高密度ポリエチレン層(厚さ:約60μm)の層構成を有する3種5層の多層フィルムを作製した。
得られたフィルムを用いた以外は実施例6と同様にして、屈曲試験を行った。屈曲回数50回を越えた時に最初の貫通孔(ピンホール)が発生した。
【0071】
上記の実施例6と比較例5との対比から、本発明に従う実施例6の重合体組成物の層を有するフィルムは、本発明以外の比較例5のEVOHの層を有するフィルムと比較して、耐屈曲性が大幅に向上していることが判る。
【0072】
<実施例7>
実施例6と同様にして、実施例2で得られたものと同じ重合体組成物、高密度ポリエチレンおよび接着剤用樹脂を共押出しし、高密度ポリエチレン層(厚さ:約60μm)/接着剤層(厚さ:約10μm)/重合体組成物層(厚さ:約10μm)/接着剤層(厚さ:約10μm)/高密度ポリエチレン層(厚さ:約60μm)の層構成を有する3種5層の多層フィルムを作製した。
得られたフィルムを、テンター式二軸延伸機を用いて、70℃の温度、3倍×3倍の延伸倍率の条件で同時二軸延伸した。得られた延伸フィルムは、クラック、斑、偏肉がなく、外観および透明性は良好であった。
延伸フィルムを20℃、100%RHに調湿し、その酸素透過係数をガス透過測定装置(柳本製作所製GTR−30型)を用いて測定したところ、400cc・20μm/m・day・atmであった。
以上のことから、本実施例の延伸フィルムは、湿潤条件下でのガスバリア性が良好であることが判る。
【0073】
<実施例8>
実施例6と同様にして、実施例2で得られたものと同じ重合体組成物、高密度ポリエチレンおよび接着剤用樹脂を共押出しし、高密度ポリエチレン層(厚さ:約60μm)/接着剤層(厚さ:約10μm)/重合体組成物層(厚さ:約10μm)/接着剤層(厚さ:約10μm)/高密度ポリエチレン層(厚さ:約60μm)の層構成を有する3種5層の多層フィルムを作製した。
このフィルムを所定寸法の長方形に切断し、向かい合う2辺をヒートシーラーで熱圧着して筒状とし、さらに、この筒状フィルムの一端をヒートシーラーで熱圧着することにより、袋状物(食品包装材)を製造した。この袋状物に市販の味噌を充填し、袋の口をヒートシーラーで熱圧着し、密封した。その包装された味噌を室温で1箇月保存した後、袋の口を開けて内容物の色調および香りを確認したが、これらに変化は認められなかった。
【0074】
<実施例9>
ダイのリップ厚等の条件を変更した以外は実施例6と同様にして、実施例2で得られたものと同じ重合体組成物、高密度ポリエチレンおよび接着剤用樹脂を共押出しし、高密度ポリエチレン層(厚さ:約150μm)/接着剤層(厚さ:約20μm)/重合体組成物層(厚さ:約20μm)/接着剤層(厚さ:約20μm)/高密度ポリエチレン層(厚さ:約150μm)の層構成を有する3種5層の多層シートを作製した。
このシートを円板状に切断し、それをパッキング(容器用パッキング)として用いて、オレンジジュースの充填されたガラス製ビンに常法に従って、金属製王冠を被せて密封した。その密封されたオレンジジュースを室温で1箇月保存した後、王冠を開けて内容物の色調および香りを確認したが、これらに変化は認められなかった。
【0075】
<実施例10>
実施例8と同様にして、高密度ポリエチレン層(厚さ:約60μm)/接着剤層(厚さ:約10μm)/重合体組成物層(厚さ:約10μm)/接着剤層(厚さ:約10μm)/高密度ポリエチレン層(厚さ:約60μm)の層構成を有する3種5層の多層フィルムからなる袋状物を製造した。
この袋状物に点滴用薬液を充填し、袋の口をヒートシーラーで熱圧着し、密封した。この密封された点滴用薬液を10℃で1箇月保存したが、内容物のガスクロマトグラフィー分析結果、色調、匂い等に変化は認められなかった。
以上のことから、上記の重合体組成物が医療用輸液バッグの素材として有用であることが判る。
【0076】
<実施例11>
実施例2で得られたものと同じ重合体組成物を用いてペレットを製造し、このペレットを窒素気流下で3種5層共押出多層ダイレクトブロー装置(重合体組成物用押出機の設定温度:230℃)に供給し、3種5層の多層中空成形品(円筒状の胴部、該胴部の一端に連続して設けられた円筒状の首部、および該胴部の他端に連続して設けられた底部からなる内容積約1.5リットルの成形品)を作製した。該中空成形品の層構成は、外面側から、高密度ポリエチレン層/接着剤層/重合体組成物層/接着剤層/高密度ポリエチレン層の順であり、また、胴部における各層の厚さは、両方の高密度ポリエチレン層ではいずれも約850μmであり、両方の接着剤層(マレイン酸変性ポリエチレン;三井石油化学工業株式会社製「アドマーNF−500」)ではいずれも約100μmであり、重合体組成物層では約100μmであった。該中空成形品は、クラック、斑、偏肉がなく、外観および透明性は良好であった。
得られた中空成形品にガソリン1.0リットルを充填し密栓した後、40℃、65%RHの条件で暗所に3箇月静置した。静置している間、ガソリンの臭気漏れは認められなかった。この後、開栓してガソリンを抜き出し、中空成形品の状態を観察したが、クラック、変質等の異常の発生は認められなかった。また、ガソリンの回収量を調べたが、保存中における減量は実質上認められなかった。
これらのことから、上記の重合体組成物からなる層を有する中空成形品は、有機液体用容器、有機液体貯蔵用タンクおよび有機液体輸送用パイプとして有用であることが判る。
【0077】
<実施例12>
実施例2で得られたものと同じ重合体組成物、高密度ポリエチレンおよび接着剤用樹脂を環状ダイからパイプ状に共押出成形して、高密度ポリエチレン層(厚さ:約3mm)/接着剤層(厚さ:約0.5mm)/重合体組成物層(厚さ:約0.5mm)/接着剤層(厚さ:約0.5mm)/高密度ポリエチレン層(厚さ:約3mm)の層構成を有する3種5層の多層パイプ(直径:約5cm)を作製した。
このパイプを所定長さに切断し、暖房用温水パイプとして1年間使用した。その間、割れの発生等に基づく温水漏れは認められなかった。
このことから、上記の重合体組成物からなる層を有するパイプは、暖房用温水パイプとして有用であることが判る。
【0078】
<実施例13>
実施例2で得られたものと同じ重合体組成物を用いてペレットを製造し、このペレットを窒素気流下に230℃で、Tダイを装着した2軸押出機に供給し、スクリュー回転速度200rpmで押出成形し、さらに70℃で3倍の延伸倍率で1軸延伸することによって、厚さ15μmのフィルムを得た。このフィルムの片面に、固形分濃度20重量%の主剤AD−585と硬化剤CAT−10とからなる2液型ウレタン系接着剤(東洋モートン製)を主剤対硬化剤の重量比が17対1となる割合で混合したものを塗布量(固形分基準)が2g/mとなるようにグラビアコーターで塗布し、110℃で1分間乾燥させた後、このフィルムを、塗布面を介して、可塑剤(ジ−2−エチルヘキシルフタレート)を38重量%含有する厚さ0.3mmの軟質ポリ塩化ビニルシートの片面に、110℃の温度条件下にドレイラミネーション法で積層一体化した。
得られた積層シートの一部をT型剥離試験に供したところポリ塩化ビニルシート層が破壊したことから、該積層シートは十分な接着強度を有していることが判明した。
この積層シートの重合体組成物フィルム層側の表面上に、一辺の長さが6cm、厚さが2mmの硬質ポリ塩化ビニル板(可塑剤無添加)を密着させて置き、硬質ポリ塩化ビニル板に2kgの荷重を加えた状態で、70℃で50時間静置した。その後、硬質ポリ塩化ビニル板の重量および積層シートの重合体組成物フィルム層側の表面状態を調べたが、重量の変化および表面のべたつき発生は認められなかった。これらのことから、積層シートの重合体組成物フィルム層側の表面への可塑剤の滲出はないことが確認された。
また、積層シートの重合体組成物フィルム層側の表面を濡れ雑巾で摩擦したが、表面に損傷の発生は認められなかった。
以上のことから、上記の重合体組成物からなる層を有する積層シートは、樹脂製壁紙として有用であることが判る。
【0079】
【発明の効果】
本発明の重合体組成物は、気体、有機液体等に対する遮断性および柔軟性の両方において良好な性質を有する。したがって、該重合体組成物は、これらの性質が要求される飲食品用包装材、容器、バッグインボックス用内袋、容器用パッキング、医療用輸液バッグ、有機液体貯蔵用タンク、有機液体輸送用パイプ、暖房用温水パイプ、樹脂製壁紙などの用途において有効に利用される。

Claims (12)

  1. (1)下記(A)成分からなる相および下記(B)成分からなる相を含有し;
    (A)成分:エチレン−ビニルアルコール系共重合体;
    (B)成分:主としてビニル芳香族モノマー単位からなる重合体ブロック(b1)と主としてイソブチレン単位からなる重合体ブロック(b2)とを有するブロック共重合体;
    (2)50倍重量のトルエン中に20℃で1時間浸漬した後において非溶解および非分散の状態で残存している部分の割合が15重量%以上であり
    (3)50倍重量のイソプロピルアルコール/水混合溶媒(容積比35/65)中に70℃で72時間浸漬した後において非溶解および非分散の状態で残存している部分の割合が15重量%以上であり;かつ、
    (4)溶融混練に供する(A)成分および(B)成分について、重合体組成物中の含有率をそれぞれφA(重量%)およびφB(重量%)で表し、温度230℃、せん断速度100sec −1 の条件下における溶融粘度をそれぞれηA(ポアズ)およびηB(ポアズ)で表す場合、φA、φB、ηAおよびηBが下記式(f1)、(f2)および(f3)を満足するような条件によって、製造される;
    15 ≦ φA ≦ 85 (f1)
    15 ≦ φB ≦ 85 (f2)
    1.0≦(φB/φA)×(ηA/ηB)≦8.0 (f3)
    ことを特徴とする重合体組成物。
  2. 請求項1記載の重合体組成物からなる成形品。
  3. 請求項1記載の重合体組成物からなる少なくとも1つの層と他の素材からなる少なくとも1つの層との積層構造を有する成形品。
  4. 請求項1記載の重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する飲食品用包装材。
  5. 請求項1記載の重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する容器。
  6. 請求項1記載の重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する内袋を有するバッグインボックス。
  7. 請求項1記載の重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する容器用パッキング。
  8. 請求項1記載の重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する医療用輸液バッグ。
  9. 請求項1記載の重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する有機液体貯蔵用タンク。
  10. 請求項1記載の重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する有機液体輸送用パイプ。
  11. 請求項1記載の重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する暖房用温水パイプ。
  12. 請求項1記載の重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する樹脂製壁紙。
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