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JP3623881B2 - 広域空燃比センサの異常診断装置 - Google Patents

広域空燃比センサの異常診断装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所謂広域空燃比センサの異常診断を行う装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、所謂広域空燃比センサの異常診断装置としては、本願出願人等が先に提案した特願平8−331015号のようなものがある。
このものは、例えば、目標空燃比を所定周期で変化させ、その時の広域空燃比センサの出力変化の様子を観察することで、広域空燃比センサの応答劣化を診断するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のものでは、広域空燃比センサの診断時においても、通常の空燃比制御領域と同様の空燃比制御定数(P(比例)分,I(積分)分,D(微分)分)を用いるようにしていたので、広域空燃比センサの製品バラツキ、診断開始時(空燃比切換時)の空燃比バラツキ等の影響で広域空燃比センサの出力が目標空燃比相当値に到達(或いは収束)するまでの時間バラツキ(応答バラツキ)等によって誤診断してしまう惧れがあり(図7参照)、診断精度がやや低く、一層の診断精度向上が望まれる。なお、通常の空燃比制御領域における空燃比制御定数は、空燃比制御の振幅と制御収束性(発散度合い)に基づいて、通常の空燃比制御領域で要求される所望の特性(制御安定性や排気性能等)が得られるように定められるものである(図8参照)。
【0004】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、比較的簡単な構成で、一層高精度に広域空燃比センサが正常に作動できているか否かを診断することができる広域空燃比センサの異常診断装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため請求項1に記載の発明にかかる広域空燃比センサの異常診断装置は、図1に示すように、
空燃比を広範囲に亘って検出できる広域空燃比センサの異常診断装置であって
前記広域空燃比センサの検出結果、機関吸入混合気の空燃比が目標空燃比となるように、空燃比制御対象を所定の制御ゲインによって増減補正する空燃比フィードバック制御手段に提供されるものにおいて
前記目標空燃比を切り換える目標空燃比切換手段と、
前記目標空燃比切換手段による目標空燃比の切換時における前記広域空燃比センサの出力の応答時間を検出する応答時間検出手段と、
応答時間検出手段の検出結果に基づいて、前記広域空燃比センサの異常を診断する異常診断手段と
前記異常診断手段における広域空燃比センサの異常診断中、前記空燃比フィードバック制御手段における制御ゲインを、通常時のものより大きく設定する診断用制御ゲイン設定手段と、を含んで構成した。
【0006】
かかる構成とすれば、広域空燃比センサの検出結果に基づく空燃比フィードバック制御中に、目標空燃比が切り換わった場合の広域空燃比センサの出力の応答時間に基づいて広域空燃比センサの異常診断を行うものにおいて、広域空燃比センサの異常診断中、空燃比フィードバック制御の制御ゲイン(制御定数)を応答性の高い診断用のものに設定変更することができるので、広域空燃比センサの製品バラツキや診断開始時(空燃比切換時)の空燃比バラツキ等の影響による誤診断を抑制でき、延いては診断精度を向上させることができる。
【0007】
また、診断中だけ診断用制御ゲインに変更するから、通常の空燃比制御領域においては通常通りの空燃比フィードバック制御が行えるので、必要以上に、空燃比振幅や制御収束性等を乱すことがないので、運転性、排気性能等の低下を最小限に留めることができる。
請求項2に記載の発明では、前記診断用制御ゲイン設定手段が、前記空燃比フィードバック制御手段による増減補正に関するP分,I分,D分の何れかを設定変更することで、制御ゲインを設定変更する構成とした。
【0008】
かかる構成とすれば、P分,I分,D分の何れかの設定を変えて、診断用制御ゲインを設定変更できるので、空燃比フィードバック制御の応答性、収束性等の設定自由度を拡大することができるので、診断精度の向上と、要求される他の諸特性(例えば所望の運転性、排気性能等の維持など様々の要求特性がある)と、の両立を図るうえで、有利なものとなる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、前記目標空燃比切換手段が、強制的に目標空燃比を振幅させる手段であることを特徴とする。
このようにすると、例えば、触媒パータベーション制御の目標空燃比振幅によって排気浄化触媒の浄化性能を高めながら、同時に、該目標空燃比振幅を利用して広域空燃比センサの異常診断を行うことができる。従って、簡単な構成で、排気性能を高く維持しながら、従来に増して、迅速かつ高精度に広域空燃比センサの異常の有無を診断することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、前記異常診断手段が、前記目標空燃比切換手段によって目標空燃比が切り換えられたときから、広域空燃比センサの検出値が、所定値若しくは前記目標空燃比切換手段によって切り換えられた後の目標空燃比に相当する値に到達するまでの所要時間に基づいて、広域空燃比センサの異常を診断することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明では、前記異常診断手段が、前記目標空燃比切換手段によって目標空燃比が切り換えられたときから、広域空燃比センサの検出値が前記目標空燃比切換手段によって切り換えられた後の目標空燃比に相当する値に収束するまでの所要時間に基づいて、広域空燃比センサの異常を診断することを特徴とする。
【0012】
請求項4、請求項5に記載の発明によれば、簡単な構成で、高精度に広域空燃比センサの異常を診断することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態を、添付の図面に基づいて説明する。
本実施形態では、内燃機関の排気空燃比を検出する場合に広域空燃比センサを適用した場合における広域空燃比センサの異常診断方法を代表して説明することにする。
【0014】
本発明の一実施形態の全体構成を示す図2において、機関11の吸気通路12には吸入空気流量Qaを検出するエアフローメータ13及びアクセルペダルと連動して吸入空気流量Qaを制御する絞り弁14が設けられ、下流のマニホールド部分には気筒毎に電磁式の燃料噴射弁15が設けられる。
燃料噴射弁15は、後述するようにしてコントロールユニット50において設定される駆動パルス信号によって開弁駆動され、図示しない燃料ポンプから圧送されてプレッシャレギュレータ(図示せず)により所定圧力に制御された燃料を噴射供給する。更に、機関11の冷却ジャケット内の冷却水温度(機関温度)Twを検出する水温センサ16が設けられる。一方、排気通路17にはマニホールド集合部近傍に、排気中の特定成分(例えば酸素)濃度に基づいて吸入混合気の空燃比を検出する広域空燃比センサ18(本発明の広域空燃比センサに相当する。以下、単に空燃比センサとも言う。)が設けられ、その下流側に、例えば理論空燃比(A/F(空気重量/燃料重量)≒14.7、空気過剰率λ=1)近傍において排気中のCO,HCの酸化とNOの還元を良好に行って排気を浄化する排気浄化触媒としての三元触媒19が介装されている。なお、排気浄化触媒としては、例えばリーン(希薄空燃比)領域でNOx を還元する所謂リーンNOx 触媒を採用しても良いし、一般的な酸化触媒を採用するものであっても構わない。
【0015】
ところで、本実施形態において用いる空燃比センサ18は、図2で示した従来同様のものと同様の検出原理を利用するものであれば如何なるものであって構わない。
ここで、空燃比センサ18の構造及び空燃比検出原理について説明しておく。
即ち、図5に示すように、ヒータ部2を備えた本体(例えば酸素イオン伝導性を有するジルコニアZr等の耐熱性多孔質絶縁材料等で形成される)1内に、大気(標準ガス)と連通する大気導入孔3を設けると共に、検出対象ガス(例えば内燃機関の排気等)と検出対象ガス導入孔4、保護層5等を介して連通するガス拡散層(或いはガス拡散ギャップ)6が設けられている。センシング部電極7A、7Bは大気導入孔3とガス拡散層6に臨んで設けられると共に、酸素ポンプ電極8A、8Bはガス拡散層6と、これに対応する本体1の周囲と、に設けられるようになっている。
【0016】
なお、センシング部電極7A、7B(センサ部)は、ガス拡散層6内の酸素イオン濃度(酸素分圧)によって影響されるセンシング部電極間の酸素分圧比に応じて発生する電圧を検出するようになっている。一方、酸素ポンプ電極8A、8B(特定成分ポンプ部)には、所定電圧が印加されるようになっている。
つまり、センシング部電極7A、7Bはセンシング部電極間の酸素分圧比によって発生する電圧を検出して、空燃比が理論空燃比(換言すると、空気過剰率λ=1)に対してリッチであるかリーンであるかを検出することができるようになっている。
【0017】
一方、図6のようなモデル図で示すことができる酸素ポンプ電極部8A、8Bにおいては、所定の電圧が印加されると、これに応じてガス拡散層6内の酸素イオンが移動され、酸素ポンプ電極部8A、8B間に電流が流れるようになっている。なお、酸素ポンプ電極部8A、8B間に、所定電圧を印加したときに該電極間を流れる電流値(限界電流)Ipは、ガス拡散層6内の酸素イオン濃度に影響されるので、電流値(限界電流)Ipを検出すれば、検出対象ガスの空燃比(換言すれば、空気過剰率λ)を検出できることになる。
【0018】
従って、例えば、図6のテーブルAに示すような酸素ポンプ電極間の電流・電圧と、検出対象ガスの空燃比(換言すれば、空気過剰率λ)と、の相関関係が得られることになる。
なお、センシング部電極7A、7Bのリッチ・リーン出力に基づいて、酸素ポンプ電極部8A、8Bに対する電圧の印加方向を反転させることで、リーン領域とリッチ領域との両方の空燃比領域において、酸素ポンプ電極部8A、8B間を流れる電流値(限界電流)Ipに基づく広範囲な空燃比の検出を可能にしているものである。
【0019】
以上のような空燃比検出原理により、酸素ポンプ電極部間の電流値Ipを検出して、例えば図6のテーブルBを参照すれば、広範囲に亘って検出対象ガスの実際の空燃比(空気過剰率λ)を検出することができることになる。
なお、センサ検出値Ipは、例えば次式により求めることもできる。
Ip=Do2・P・S/(T・L)・ln{1/(1−Po2/P)}
Do2:酸素ガスの多孔質層の拡散係数
S:陰極の電極面積
L:多孔質層の厚さ
P:全圧力
Po2:酸素分圧
T:温度
ここで全体の説明に戻る。
【0020】
また、図2で図示しない点火用配電器(ディストリビュータ)には、クランク角センサ20が内蔵されており、コントロールユニット50では、該クランク角センサ20から機関回転と同期して出力されるクランク単位角信号を一定時間カウントして、又は、クランク基準角信号の周期を計測して機関回転速度Neを検出する。
【0021】
ところで、本発明にかかるコントロールユニット50は、CPU,ROM,RAM,A/D変換器及び入出力インタフェイス等を含んで構成されるマイクロコンピュータからなり、各種センサからの入力信号を受け、以下のようにして、燃料噴射弁15の噴射量(即ち、空燃比制御量)を制御する。前記各種のセンサとしては、前述の空燃比センサ18、エアフローメータ13、水温センサ16、クランク角センサ20等がある。
【0022】
即ち、
エアフローメータ13からの電圧信号から求められる吸入空気流量Qaと、クランク角センサ20からの信号から求められる機関回転速度Neとから基本燃料噴射パルス幅(燃料噴射量に相当)Tp=c×Qa/Ne(cは定数)を演算すると共に、低水温時に強制的にリッチ側に補正する水温補正係数Kwや、始動及び始動後増量補正係数Kasや、空燃比フィードバック補正係数(空燃比フィードバック補正値)α等により、最終的な有効燃料噴射パルス幅Te=Tp×(1+Kw+Kas+・・・)×LAMBDA×Z+Tsを演算する。Zは目標空燃比、Tsは電圧補正分である。
【0023】
そして、この有効燃料噴射パルス幅Teが駆動パルス信号として前記燃料噴射弁15に送られて、所定量に調量された燃料が噴射供給されることになる。
上記空燃比フィードバック補正係数LAMBDAは、空燃比センサ18が検出する実際の空燃比(検出値)の目標空燃比からのズレを補正するための係数であり、これに基づきコントロールユニット50では基本燃料パルス幅Tpを補正し、燃焼用混合気の空燃比を目標空燃比(例えば理論空燃比)にフィードバック制御することになる。
【0024】
ところで、空燃比フィードバック補正係数LAMBDAは、以下のようにして設定されるようになっている。
LAMBDA=P+I+D−2.0
P=KP×DILMD …(1)
KPは、例えば、機関回転速度Ne(X軸)と負荷Tp(Y軸)に基づく3次元マップ(Z軸KP)から定まる値である。
【0025】
I=KI×DILMD …(2)
KIは、例えば、Ne(X軸)とTp(Y軸)に基づく3次元マップ(Z軸KI)から定まる値である。
D=KD×DDILMD …(3)
KDは、例えば、Ne(X軸)とTp(Y軸)に基づく3次元マップ(Z軸KD)から定まる値である。
【0026】
DILMD=AFLMD−TGLMD
AFLMD;広域センサ出力
TGLMD;目標空燃比
DDILMD=DILMD−DILMDOLD
DILMDOLD ;例えば10msecまえのDILMD
なお、本実施形態では、P分、I分、D分を備えてLAMBDAを算出する構成(PID制御)としたが、P分、I分、D分の何れかを用いてLAMBDAを算出する構成(例えば、PI制御、PD制御など)とすることもできる。
【0027】
ここで、本実施形態におけるコントロールユニット50により実行される空燃比センサの異常診断制御について、その基本的な考え方を説明する。
即ち、
本実施形態における空燃比センサの異常診断では、定常走行状態(機関11の定常状態)中、空燃比センサ18により検出される実際の空燃比(検出値)が目標空燃比となるように空燃比制御対象(燃料噴射量或いは吸入空気流量)をフィードバック制御している場合に、目標空燃比を変化させる(切り換える)ようにする。このとき、目標空燃比の変化に従って空燃比制御対象(燃料噴射量或いは吸入空気流量)が変化されるので、空燃比センサ18に異常がなければ、空燃比センサ18の検出値も目標空燃比の変化に追従して変化するはずである。従って、目標空燃比の変化に追従する空燃比センサ18の検出値の変化の様子を観察すれば、空燃比センサ18の異常の有無を診断できることになる
【0028】
具体的には、例えば、目標空燃比を変化させてから空燃比センサ18の検出値が目標空燃比に収束するまでの所要時間、或いは、目標空燃比を変化させてから空燃比センサ18の検出値が目標空燃比(若しくは予め定めた所定値でも良い)を横切るまでの所要時間(これらの所要時間は、空燃比センサ18の出力の「応答時間」に相当する)等によって、空燃比センサ18の異常の有無、特に応答性の低下(例えば、ガス拡散層6の目詰まり、各電極部の劣化、ヒータ部2のコントロール回路の故障等)の有無を高精度に診断できることになる。また、この「応答時間」に相関する指標として、目標空燃比を変化させてからの空燃比センサ18の検出値の変化の傾きを観察して、空燃比センサ18の異常を診断することも可能である。
【0029】
なお、空燃比センサ18の異常診断のために、無制限に目標空燃比を変化させてしまったのでは、三元触媒19(或いはリーンNOx 触媒や酸化触媒)の排気浄化性能を悪化させる惧れもあるので、目標空燃比を変化させる範囲を、三元触媒19(或いはリーンNOx 触媒や酸化触媒)の排気浄化性能変化を許容できる範囲に制限することは好ましいことである。
【0030】
また、本願出願人等が提案する触媒パータベーション制御{空燃比を広範囲に亘って検出できる広域空燃比センサを用いた空燃比フィードバック制御にあっては、理論空燃比に対してリッチかリーンかしか検出できない酸素センサを用いた空燃比フィードバック制御に比べ、排気空燃比がリッチ・リーン反転する機会が少ないため、触媒表面上での酸素分子の吸着・離脱が効果的に行われず3成分(NOx ,CO,HC)を同時に浄化する効率が低下してしまう惧れがあるが、これを抑制するために、広域空燃比センサを用いた空燃比フィードバック制御にあっては、図4に示すように、強制的に触媒入り口の空燃比(換言すれば、目標空燃比)を振幅させて3成分の浄化効率を最大限高めるようにする制御}の実行中に、排気浄化効率を高めるための強制的な目標空燃比の変化に対応した空燃比センサ18の出力の応答時間検出し、その検出結果により空燃比センサ18の異常の有無を診断するようにすれば、触媒パータベーション制御により触媒の持つ排気浄化性能を最大に高めながら、同時に空燃比センサ18の異常診断も高精度に行うことができることになるので効果的である。
【0031】
そして、本実施形態では、上記に加えて更に、空燃比センサ18の異常診断中は、空燃比センサ18の出力が空燃比切換後の空燃比に収束するまでの時間バラツキ(応答バラツキ)を極力無くして診断精度を向上させるために、前記空燃比制御定数(P,I,D延いてはLAMBDA。言い換えれば制御ゲイン)を、通常の空燃比制御時とは異なる値に設定することができるようになっている。
【0032】
即ち、本実施形態では、以下に説明するような空燃比センサの異常診断制御を実行するようになっている。
以下、本実施形態のコントロールユニット50が行う空燃比センサの異常診断制御を、図3に示すフローチャートに従って説明する。なお、本発明にかかる空燃比フィードバック制御手段、目標空燃比切換手段、応答時間検出手段、異常診断手段、診断用制御ゲイン設定手段としての機能は、以下に説明するように、コントロールユニット50がソフトウェア的に備えるものである。
【0033】
ステップ(図では、Sと記してある。以下、同様。)1では、各種センサの出力(機関の冷却水温Tw、機関回転速度Ne、空燃比センサ18の検出値(出力VAFなど)、吸入空気流量Qa、吸気圧PB等)を読み込む。
ステップ2では、異常診断許可条件成立か否かを判定(判断)する。即ち、例えば、下記▲1▼〜▲4▼の条件が成立するまで、異常診断を許可しないようになっている。
【0034】
例えば、
▲1▼エンジンスタートがキーオン→オフ(Key on→off)後一定時間経過したか(換言すれば始動後所定時間経過したか)否かを判断し、経過していなければ診断開始を許可しないようになっている。例えば、始動時増量、壁流形成の影響による誤診断や、空燃比センサ18の不活性状態下において診断が行われることによる誤診断を防止する等のためである。
【0035】
▲2▼空燃比センサ(A/Fセンサ)活性判定終了か否かを判断し、終了していなければ異常診断を許可しないようになっている。空燃比センサ18の不活性状態下において診断が行われることによる誤診断を防止する等のためである。なお、かかる判断は、機関の冷却水温Tw、空燃比センサ18の出力VAF等に基づいて行うことができる。
【0036】
3)空燃比フィードバック制御(A/Fコントロール)条件(例えば、機関運転が定常状態)が成立し、前述した触媒パータベーション制御が実行されているか否かを判断し、実行されていなければ異常診断を許可しないようになっている。触媒パータベーション制御の実行中は、触媒19の入り口部の空燃比を所定周期で所定量振幅させて3成分(NOx 、CO,HC)の転換効率(浄化効率)を高めるようにするので、空燃比センサ18の出力の応答時間を検出(モニタ等)して異常の有無を診断する本実施形態における診断方法において診断精度を高めることが可能となるからである。また、排気性能を良好に維持しながら、高精度に異常診断を行うことができるからである。
【0037】
なお、かかる判断は、機関回転速度Ne、吸入空気流量Qa、吸気圧PB、車速VSP等が所定範囲内にあるか否か等に基づいて行うことができる。
▲4▼触媒19が活性化しているか否かを判断し、活性化していなければ診断開始を許可しないようになっている。触媒19が活性化していない場合には(触媒19の不活性中は、一般に、HCの排出量の低減や活性化促進のため空燃比をリーン側に維持するなどしているため)、空燃比を振幅させると却って排気性能を悪化させる惧れがあるからである。なお、かかる判断は、機関の冷却水温Tw、空燃比センサ18の出力VAF等に基づいて行うことができる。
【0038】
上記▲1▼〜▲4▼の条件が成立すると、ステップ3へ進むが、当該ステップ3では、診断用制御定数(診断用制御ゲイン)を設定し、これに基づいて空燃比フィードバック制御を行う。
即ち、
P分について、上記(1)式で算出したベースP分に対して診断用補正係数を乗算する(P←P×診断用補正係数)。
【0039】
I分について、上記(2)式で算出したベースI分に対して診断用補正係数を乗算する(I←I×診断用補正係数)。
D分について、上記(3)式で算出したベースD分に対して診断用補正係数を乗算する(D←D×診断用補正係数)。
そして、上記補正後のP,I,Dを用いて、診断用空燃比フィードバック補正係数LAMBDAを、下式により算出する。なお、診断用空燃比フィードバック補正係数LAMBDAは、通常の空燃比フィードバック補正係数LAMBDAに対して、約1.5倍程度の値にすることが、診断精度と制御特性(排気性能)等の両面を考慮すると好ましいことが実験等により確認されている(一例として、P←P×1.0、I←I×1.5、D←D×1.0とすること等が考えられる)。
【0040】
LAMBDA=P+I+D−2.0
そして、このように制御応答性(空燃比変化速度)を高めるように設定されたLAMBDAを用いて、制御応答性の高い空燃比フィードバック制御を行う。
続くステップ4では、空燃比センサ18の出力値をモニタする。例えば、目標空燃比のリッチ→リーン反転時における空燃比センサ18の出力値の応答(Rich→Lean応答)をモニタし、目標空燃比のリーン→リッチ反転時における空燃比センサ18の出力値の応答(Lean→Rich応答)をモニタする。
【0041】
ステップ5では、応答判定を行う。例えば、図4に示すように、目標空燃比がリーン→リッチ反転した時点から空燃比センサ18の検出値(出力値)が目標空燃比(リッチ側目標値)を横切るまでの時間、或いはリッチ→リーン反転した時点から空燃比センサ18の検出値(出力値)が目標空燃比(リーン側目標値)を横切るまでの時間が、所定値(診断基準値)以内であるか否かに基づいて判定することができる。所定値(診断基準値)を越える(NOの)場合には、ステップ6へ進み、所定値(診断基準値)以内(YES)であればステップ7へ進む。
【0042】
なお、目標空燃比を変化させてから空燃比センサ18の検出値が変化後の目標空燃比に収束するまでの所要時間を計測し、その計測結果が所定値以内であるか否かに基づいて判定することもできる。
ステップ6では、検出応答性が悪いと判断できるので、空燃比センサ18の応答性は異常である(例えば、ガス拡散層6の目詰まり、各電極部の劣化、ヒータ部2のコントロール回路の故障等がある)と判断(NG判定)して、本フローを終了する。
【0043】
そして、NG判定が、例えば2回連続して生じた場合には、警告灯(MIL)を点灯等して運転者等に空燃比センサ18に何らかの異常がある旨を認知させ修理等の処置を促すようにする。また、運転性能や排気性能等の悪化を極力避けるべく、空燃比センサ18の検出結果に基づく空燃比フィードバック制御を禁止し、特にリーン燃焼制御等を強制的に禁止するようにしても良い。
【0044】
なお、このように2回連続して生じた場合に警告灯(MIL)を点灯等するようにすると、1回目にNG判定され次にOK判定されたような場合には、1回目のNG判定が誤判定であった惧れがあるが、このような誤判定を排除することができるので、空燃比センサ18の異常診断精度を一層高めることができる。なお、所定回数応答判定を行った際に、所定割合でNG判定が行われた場合に、警告灯(MIL)を点灯等して運転者等に空燃比センサ18に何らかの異常がある旨を認知させるようにすることもできる。また、勿論、1回でもNG判定されたら警告灯(MIL)を点灯させても良いものである。
【0045】
一方、ステップ7では、検出応答性が良いと判断できるので、空燃比センサ18の応答性は正常であると判断(OK判定)して、本フローを終了する。
このように、本実施形態によれば、空燃比センサ18による空燃比フィードバック制御中に、目標空燃比が切り換わった場合の空燃比センサ18の出力の応答時間に基づいて空燃比センサ18の異常診断を行うものにおいて、診断中、空燃比フィードバック制御の空燃比制御定数(P,I,D延いてはLAMBDA。制御ゲイン)を制御応答性の高い診断用の値に設定するようにしたので、空燃比センサ18の製品バラツキや診断開始時(空燃比切換時)の空燃比バラツキ等の影響による空燃比センサ18の出力が目標空燃比を横切るまでの時間(或いは目標空燃比相当値に収束するまでの時間)バラツキを小さくすることができるので、診断基準値の設定が容易となるから、誤診断を抑制でき、延いては診断精度を向上させることができる。
【0046】
また、診断中だけ診断用空燃比制御定数(制御ゲイン)を設定するから、通常の空燃比制御領域においては通常通りの空燃比フィードバック制御が行えるので、必要以上に、空燃比振幅や制御安定性等を乱すことがないので、運転性、排気性能等の低下も最小限に留めることができる。
なお、本実施形態のように、診断用空燃比制御定数(制御ゲイン)を、P分,I分,D分毎の設定を変えて設定できる構成とすれば、空燃比フィードバック制御の応答性、収束性等の設定自由度を広げることができるので、診断精度の向上と、要求される他の諸特性(例えば所望の運転性、排気性能等の維持など様々の要求特性がある)と、の両立を図るうえで、有利なものとなる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、広域空燃比センサの異常診断中、空燃比フィードバック制御の制御ゲインを応答性の高い診断用のものに設定変更するので、広域空燃比センサの製品バラツキや診断開始時(空燃比切換時)の空燃比バラツキ等の影響による誤診断を抑制でき、延いては診断精度を向上させることができる。
【0048】
また、診断中だけ診断用制御ゲインに変更するから、通常の空燃比制御領域においては通常通りの空燃比フィードバック制御が行えるので、必要以上に、空燃比振幅や制御収束性等を乱すことがないので、運転性、排気性能等の低下を最小限に留めることができる。
請求項2に記載の発明によれば、P分,I分,D分の何れかの設定を変えて、診断用制御ゲインを設定変更できるので、空燃比フィードバック制御の応答性、収束性等の設定自由度を拡大することができ、以って診断精度の向上と、要求される他の諸特性(例えば所望の運転性、排気性能等の維持など様々の要求特性がある)と、の両立を図るうえで、有利なものとなる。
【0049】
請求項3に記載の発明によれば、例えば、触媒パータベーション制御の目標空燃比振幅によって排気浄化触媒の浄化性能を高めながら、同時に、該目標空燃比振幅を利用して広域空燃比センサの異常診断を行うことができる。従って、簡単な構成で、排気性能を高く維持しながら、従来に増して、迅速かつ高精度に広域空燃比センサの異常の有無を診断することができる。
【0050】
請求項4、請求項5に記載の発明によれば、簡単な構成で、高精度に広域空燃比センサの異常を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施形態の全体構成図
【図3】同上実施形態における空燃比センサの異常診断制御を説明するフローチャート
【図4】同上実施形態における目標空燃比の切り換えと、該切り換えに伴う空燃比センサの検出値の変化の様子を示すタイムチャート
【図5】広域空燃比センサの構造図
【図6】広域空燃比センサの空燃比検出原理を説明するための図
【図7】従来における問題点を説明するためのタイムチャート
【図8】通常の空燃比フィードバック制御における制御定数の設定の仕方を説明する図
【符号の説明】
1 空燃比センサ本体
2 ヒータ部
3 大気導入孔
4 検出対象ガス導入孔
5 保護層
6 ガス拡散層(或いはガス拡散ギャップ)
7A、7B センシング部電極
8A、8B 酸素ポンプ電極
11 内燃機関
13 エアフローメータ
17 排気通路
18 空燃比センサ
19 排気浄化触媒(三元触媒)
20 クランク角センサ
50 コントロールユニット

Claims (5)

  1. 空燃比を広範囲に亘って検出できる広域空燃比センサの異常診断装置であって
    前記広域空燃比センサの検出結果、機関吸入混合気の空燃比が目標空燃比となるように、空燃比制御対象を所定の制御ゲインによって増減補正する空燃比フィードバック制御手段に提供されるものにおいて
    前記目標空燃比を切り換える目標空燃比切換手段と、
    前記目標空燃比切換手段による目標空燃比の切換時における前記広域空燃比センサの出力の応答時間を検出する応答時間検出手段と、
    応答時間検出手段の検出結果に基づいて、前記広域空燃比センサの異常を診断する異常診断手段と
    前記異常診断手段における広域空燃比センサの異常診断中、前記空燃比フィードバック制御手段における制御ゲインを、通常時のものより大きく設定する診断用制御ゲイン設定手段と、を含んで構成した広域空燃比センサの異常診断装置。
  2. 前記診断用制御ゲイン設定手段が、前記空燃比フィードバック制御手段による増減補正に関するP分,I分,D分の何れかを設定変更することで、制御ゲインを設定変更することを特徴とする請求項1に記載の広域空燃比センサの異常診断装置。
  3. 前記目標空燃比切換手段が、強制的に目標空燃比を振幅させる手段であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の広域空燃比センサの異常診断装置。
  4. 前記異常診断手段が、前記目標空燃比切換手段によって目標空燃比が切り換えられたときから、前記広域空燃比センサの検出値が、所定値若しくは前記目標空燃比切換手段によって切り換えられた後の目標空燃比に相当する値に到達するまでの所要時間に基づいて、広域空燃比センサの異常を診断することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の広域空燃比センサの異常診断装置。
  5. 前記異常診断手段が、前記目標空燃比切換手段によって目標空燃比が切り換えられたときから、前記広域空燃比センサの検出値が前記目標空燃比切換手段によって切り換えられた後の目標空燃比に相当する値に収束するまでの所要時間に基づいて、広域空燃比センサの異常を診断することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の広域空燃比センサの異常診断装置。
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