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JP3623367B2 - 巨大磁気抵抗効果素子を備えたポテンショメータ - Google Patents

巨大磁気抵抗効果素子を備えたポテンショメータ Download PDF

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JP3623367B2 JP20406798A JP20406798A JP3623367B2 JP 3623367 B2 JP3623367 B2 JP 3623367B2 JP 20406798 A JP20406798 A JP 20406798A JP 20406798 A JP20406798 A JP 20406798A JP 3623367 B2 JP3623367 B2 JP 3623367B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、外部磁界の変化に応じて大きな抵抗変化を示す巨大磁気抵抗効果素子を備えたポテンショメータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、巨大磁気抵抗効果素子を用いた磁界センサとして、特開平8−226960号公報に開示の如く、4つの巨大磁気抵抗効果素子をブリッジ接続してなる構成のものが知られている。
この公報に開示された磁界センサAは、図17に示すように、離間して配置された巨大磁気抵抗効果素子1、2、3、4を備え、巨大磁気抵抗効果素子1、2を導線5で接続し、巨大磁気抵抗効果素子1、3を導線6で接続し、巨大磁気抵抗効果素子3、4を導線7で接続し、巨大磁気抵抗効果素子2、4を導線8で接続し、導線6に入力端子10を導線8に入力端子11を各々接続して設け、導線5に出力端子12を導線7に出力端子13を接続して構成されている。
【0003】
また、巨大磁気抵抗効果素子1、2、3、4は、それぞれ非磁性層15の上下に強磁性層16、17を設けたサンドイッチ構造とされ、一方の強磁性層(ピン止め磁性層)16上に反強磁性体層などの交換バイアス層18が設けられ、この交換バイアス層18による交換結合を生じさせて強磁性層16の磁化の向きを一方向にピン止めして構成されている。また、他方の強磁性層(フリー磁性層)17の磁化の向きは外部磁界の向きに応じて回転自在、例えば、強磁性層17を含む水平面に沿って回転自在にされている。
【0004】
更に、図17に示す構造の磁界センサAにあっては、巨大磁気抵抗効果素子1のピン止め磁性層16の磁化の向きが図17の矢印20に示すように手前側向きとされ、巨大磁気抵抗効果素子2のピン止め磁性層16の磁化の向きが矢印21に示すように奥向きとされ、巨大磁気抵抗効果素子3のピン止め磁性層16の磁化の向きが矢印23に示すように奥向きとされ、巨大磁気抵抗効果素子4のピン止め磁性層16の磁化の向きが手前側向きとされている。また、巨大磁気抵抗効果素子1、2、3、4のフリー磁性層17の磁化の向きは外部磁界が作用しない状態においてそれぞれ図17の矢印24に示すように右向きとされている。
【0005】
図17に示す磁界センサAにおいて外部磁界Hが作用すると、外部磁界Hに合わせて、例えば第1、第4の巨大磁気抵抗効果素子1、4においてフリー磁性層17の磁化の向き24が図18に示すように所定の角度dだけ回転するので、ピン止め磁性層16の磁化の向き20との角度関係が変わる結果、抵抗変化が生じる。また、第1と第4の巨大磁気抵抗効果素子1、4のピン止め磁性層16の磁化の向きと、第2、第3の巨大磁気抵抗効果素子2、3のピン止め磁性層16の磁化の向きが180゜反対であるため、位相の異なる抵抗変化を得ることができる。
【0006】
図17に示すブリッジ接続型の磁界センサAにあって、これらの磁化の向きを各矢印に示すように規定しているのは、外部磁界Hに感応してフリー磁性層17の磁化の向きが変化した場合に、巨大磁気抵抗効果素子1、2、3、4から差動出力を得る必要があるので、図17の上下左右に位置する巨大磁気抵抗効果素子1、2、3、4において隣り合う隣接するものどうしで180゜方向が異なる反平行向きに磁化の向きをピン止めする必要があるためである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図17に示す構造を実現するためには、基板上に巨大磁気抵抗効果素子1、2、3、4を隣接させて形成し、隣接する巨大磁気抵抗効果素子のピン止め磁性層16の磁化の向きをそれぞれ180゜異なる方向に固定しなくてはならない。
【0008】
また、この種のピン止め磁性層16の磁化の向きを制御するために交換バイアス層18の格子磁化を調整するには、強磁性が消失するブロッキング温度と呼ばれる温度以上に加熱した状態で交換バイアス層18に所定の向きの磁界を印加しておき、この磁界を印加したままで冷却する熱処理を行わなくてはならない。
ところが、図17に示す構造においては、巨大磁気抵抗効果素子1、2、3、4毎に交換バイアス層18の磁化の向きを180゜変えなくてはならないので、基板上に隣接状態で形成されている巨大磁気抵抗効果素子毎に磁界の向きを制御しなくてはならないことになり、単に外部から電磁石等の磁場発生装置で磁界を印加する方法では、磁界を1方向にしか印加できないので、図17に示す構造を製造することが困難な問題があった。
【0009】
このため、特開平8−226960号公報に開示の技術によれば、基板上に隣接状態で形成される巨大磁気抵抗効果素子1、2、3、4に沿ってそれぞれ導体層を積層し、これらの導体層の各々に異なる向きの電流を流して各導体層から個別に向きの異なる磁界を発生させながら前述の熱処理を行うことによって図17に示す構造を実現できると記載されている。ところが、交換バイアス層18の格子磁化を制御するために導体膜に大きな電流を印加して大きな磁界を発生させたくとも、基板上に巨大磁気抵抗効果素子とともに積層した薄膜状の導体膜に大きな電流を流すことは難しく、導体膜から発生できる磁界では強い磁界を印加して効率良く処理することができない問題がある。更に、基板上に隣接状態で設けられている巨大磁気抵抗効果素子1、2、3、4に複数の導体膜から別々の向きの磁界が作用することになるので、個々の巨大磁気抵抗効果素子の交換バイアス層18に個別に強い磁界を作用させることは極めて困難な問題があった。
【0010】
以上のごとく図17に示す磁界センサAは優れた磁界センサとしての機能を有する反面、実際に基板上に成膜処理を施して磁界センサAを製造するためには、極めて微妙な磁界印加処理と熱処理とを施す必要があり、製造が難しいので、広い用途に供するには問題を有する構造であった。
【0011】
更に、図17に示す構造の磁界センサAの用途に関し、特開平8−226960号公報によれば、リニア及びロータリ符号化器、近接検出器あるいは地磁気磁力計等への示唆がなされているのみであり、磁界センサAの構造を具体的にどのような方面の機器にどのように応用するべきかの示唆は全くなされていない。
【0012】
一方、従来から磁気応用製品の一例としてホール素子を用いた磁気式ポテンショメータが知られており、この種のポテンショメータは磁界の変化に感応するホール素子を検出素子として用いたものであるが、この種のホール素子で得られる信号出力は極めて小さいので、大きな信号出力を得ることができる構造が望まれていた。
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、従来の磁界センサとは異なる発想を基にして巨大磁気抵抗効果素子を利用する試みを種々行うことによりなされたもので、巨大磁気抵抗効果素子を用いた特異な構造を採用することによって磁気コード部材の回転角度を検出することができるようにするとともに、大きな出力を得ることができるポテンショメータの提供を目的とするものである。
また、本発明は、4つの巨大磁気抵抗効果素子の交換バイアス層の磁化を個々にブリッジ接続型として好ましい方向に確実に制御できるとともに、その制御が容易にできる構造を採用して製造を容易にしたポテンショメータを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するために、交換バイアス層と、この交換バイアス層により磁化の方向が一方向に固定されたピン止め磁性層と、非磁性層と、外部磁界によって磁化の方向が回転自在にされたフリー磁性層とを少なくとも具備する巨大磁気抵抗効果素子が一対以上備えられ、前記対になる巨大磁気抵抗効果素子が、各々のピン止め磁性層の磁化の向きを180゜反対向きに向けて相互に電気的に接続されて基体上に設けられるとともに、前記基体上の巨大磁気抵抗効果素子に対向状態で回転自在に磁気コード部材が設けられ、前記磁気コード部材の回転中心が前記対になる巨大磁気抵抗効果素子の中間位置を通過するように配置され、前記磁気コード部材にはその回転方向に沿って少なくとも2つの磁極が形成されてなることを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記対になる巨大磁気抵抗効果素子が基体上で相互に離間して設けられ、それら巨大磁気抵抗効果素子の中心位置と前記磁気コード部材の回転中心軸位置が一致されてなることを特徴とする構成でも良い。
本発明において、第1の直線に沿って第1の巨大磁気抵抗効果素子と第2の巨大磁気抵抗効果素子とが配置され、前記第1の直線に平行な第2の直線に沿って第3の巨大磁気抵抗効果素子と第4の巨大磁気抵抗効果素子とが配置されるとともに、これら4つの巨大磁気抵抗効果素子の中心位置と前記磁気コード部材の回転中心軸位置とが一致されてなることを特徴とする構成でも良い。
【0016】
次に本発明において、前記第1と第2と第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子の内、ピン止め磁性層の磁化の向きが異なるものどうしが接続されてホイートストンブリッジが構成されてなるものでも良い。
更に本発明において、前記第1と第2と第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子の各接続部分の内、2つに入力側の端子部が残り2つに出力側の端子部が形成されてなることを特徴とする構成とすることもできる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポテンショメータの第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態のポテンショメータに備えられる巨大磁気抵抗効果素子の接続状態とそれに対向する磁気コード部材の配置関係を示す回路図、図2は第1実施形態のポテンショメータの断面構造を示す図である。
図1に示す回路おいて外部磁界に応じて電気抵抗が変化する巨大磁気抵抗効果素子26、27の一端26a、27aが導体28により接続され、接続部分の導体28に出力側の端子部28Aが形成され、巨大磁気抵抗効果素子26の他端26bに入力側の端子部26Aが、巨大磁気抵抗効果素子27の他端27bにアース側の端子部27Aが形成されている。換言すると、図1に示す回路構造においては、直列接続された巨大磁気抵抗効果素子26、27の接続中間点と一方の端部に出力側の端子部が、他方の端部に入力側の端子部が各々設けられた構造とされている。
【0018】
図1に示す回路は、実際には図2に示すポテンショメータM1に内蔵された基板Kの一面に形成されていて、基板K上で巨大磁気抵抗効果素子26と巨大磁気抵抗効果素子27とは所定距離離間して互いに平行に、かつ、巨大磁気抵抗効果素子26の一端26aと巨大磁気抵抗効果素子27の一端27aを接近させた互い違いの位置に設けられるとともに、巨大磁気抵抗効果素子26、27に設けられる後述のピン止め磁性層の磁化の向きe、hを互いに180゜異なる方向に向けて設けられている。
【0019】
図2に示すポテンショメータM1は、回転軸80と、この回転軸80を軸回りに回転自在に支持する円盤状の軸受部材81と、この軸受部材81の裏面側に装着されたキャップ状のカバー部材82と、このカバー部材82で覆われた軸受部材81の裏面側に設けられた磁気コード部材83と基板(基体)Kとを主体として構成されている。前記軸受部材81は例えば黄銅製の円盤状部材から、前記カバー部材82は例えば金属板を絞り加工して得られたものから形成される。
【0020】
前記回転軸80は、樹脂あるいは非磁性ステンレス鋼などの非磁性体からなる棒状のもので、回転軸80の一端部側が軸受部材81を貫通して裏面側に突出され、その一端部に円盤状の磁気コード部材83が回転軸80と直角向きに取り付けられている。この磁気コード部材83はその一面の中心軸Oを通過する1本の中心線84を境界として一側(図1では左側)がS極に、他側(図1では右側)がN極にされた磁石板から構成されている。
従って磁気コード部材83にはその周方向に沿って複数の磁極が形成されていることになる。なお、磁気コード部材83はその周方向に2つ以上の異なる磁極が形成されていれば良いので、本実施形態のようにS極とN極の2つのみではなく、それ以上の数の磁極を設けても良い。また、回転軸80は軟磁性材の鉄からなるものでも良いし、磁気コード部材、巨大磁気抵抗効果素子27、27との距離が十分に離れている場合は強磁性体からなるものでも良い。
【0021】
軸受部材81の裏面側にはホルダ部材85によって支持された状態で取付基板86が前記磁気コード部材83と平行にギャップをあけて設けられ、この取付基板86の磁気コード部材側の面の中央部に基板Kが取り付けられている。この基板Kの一面には、図1に示す回路図の如く巨大磁気抵抗効果素子26、27が形成されているが、これらは、前記磁気コード部材83の中心線84の中央部をそれに対向する巨大磁気抵抗効果素子26、27の間の中間部分に位置させるように取付基板86に固定されている。なお、図1に示すように巨大磁気抵抗効果素子26、27の間の中央位置に収まるように磁気コード部材83の中心線84を対向させた場合に、磁気コード部材83の中心軸Oを基準として巨大磁気抵抗効果素子26、27が点対称位置になるように配置されることが最も望ましい。
【0022】
また、磁気コード部材83と基板Kの間の距離(ギャップ)は、磁気コード部材83が発生させる磁界によって巨大磁気抵抗効果素子26、27が飽和する領域で使用されるための距離とされるので、通常は数mm〜10数mm程度とされる。
【0023】
図3は本実施形態の巨大磁気抵抗効果素子26、27の具体的な積層構造と、それら各層の磁化の向きを明らかにするためのもので、巨大磁気抵抗効果素子26、27はいずれも同等の構造とされ、基本的には図2に示すように強磁性層(フリー磁性層)aと非磁性層bと強磁性層(ピン止め磁性層)cと交換バイアス層(反強磁性体層)dを積層して構成されている。また、巨大磁気抵抗効果素子26、27は平面視線状に細長く形成されていることが好ましい。従って図1に示す接続回路の場合において巨大磁気抵抗効果素子26、27を回路記号の波線で略記した状態において、波線の長さ方向(図1では上下方向、あるいは、図1に示す位置の中心線84と平行な方向)に線状の巨大磁気抵抗効果素子26、27を配置することが好ましい。
【0024】
図3に示す積層構造において、交換バイアス層dに隣接しているピン止め磁性層cは、交換バイアス層dによって磁化の向きがピン止めされている。具体的には、巨大磁気抵抗効果素子26において交換バイアス層dとピン止め層cの磁化の向きが矢印eに示すように右向きに、巨大磁気抵抗効果素子27において交換バイアス層dとピン止め層cの磁化の向きが矢印hに示すように左向きに設定されている。従って巨大磁気抵抗効果素子26、27のピン止め磁性層cの磁化の向きは、互いに180゜反対方向に向けられている。
【0025】
図4は基板K上に具体的に各層を堆積して巨大磁気抵抗効果素子26を形成した場合の詳細構造の一例を示す。
この例の巨大磁気抵抗効果素子26は、基板K上に下から順に交換バイアス層(反強磁性体層)dとピン止め磁性層cと副強磁性体層mと非磁性層bと副強磁性体層nとフリー磁性層aを積層して断面等脚台形状に形成され、これら積層体の側面側に各層に接するように導体E1、E2が接続されている。これらの導体E1、E2が巨大磁気抵抗効果素子どうしを電気的に接続する導体となる。なお、図4に示す断面構造において各積層体の端部と導体E1、E2との接合部分にフリー磁性層aを単磁区化するためのバイアス層を適宜設けて構成しても良い。
【0026】
この図4の構造において副強磁性層mとnは磁気抵抗効果をより効率良く発揮させるために設けられるCoやCo合金等の強磁性体からなる層であるが、これらは省略しても差し支えない層である。また、交換バイアス層dとピン止め磁性層cと副強磁性体層mと非磁性層bと副強磁性体層nとフリー磁性層aの積層順序はこの例の逆の順序でも差し支えない。
【0027】
なお、より具体的な巨大磁気抵抗効果素子の積層構造として、α−Fe層(交換バイアス層)/NiFe層(ピン止め磁性層)/Co層(副強磁性体層)/Cu層(非磁性層)/Co層(副強磁性体層)/NiFe層(フリー磁性層)を例示することができる。また、必要に応じてα−Fe層の下に電流シャント層としてAl層を設けても良い。更に、以上の構造の外に、α−Fe層/Co層/Cu層/Co層/NiFe層/Co層/Cu層/Co層/α−Fe層の積層構造の巨大磁気抵抗効果素子を例示することもできる。更に、交換バイアス層は、それに隣接するピン止め磁性層の磁化の向きをピン止めできるものであれば、公知のもののいずれを用いても良いので、α−Fe層の外に、FeMn層、NiMn層、NiO層、IrMn層、CrPtMn、PdPtMn、MnRhRu、PtMn等を用いても良い。
【0028】
図1〜図4に示す構造を有するポテンショメータM1において回転軸80が回転された場合、入力側の端子部26Aから回路に電圧を印加しておき、出力側の端子部28Aと端子部27Aとの間の電圧を測定するならば、一対の巨大磁気抵抗効果素子26、27の電気抵抗が磁界の作用によって変化して抵抗変化に応じて生じる中点電圧変化を計測することができる。そして、この電圧変化は回転軸80の回転角度に応じて正弦波を描くので、この正弦波から逆に回転軸80の回転角度を検出してポテンショメータとして使用することができる。
また、巨大磁気抵抗効果素子26、27を用いているので、大きな抵抗変化を検出用として利用できる結果、大きな正弦波出力を得ることができる。
更に、図1に示すように巨大磁気抵抗効果素子26、27の間の中間位置と磁気コード部材83の中心軸Oの位置を位置合わせしてポテンショメータM1を構成しておくならば、得られる正弦波出力を振幅と周期が一定の整った正弦波出力とすることができるので出力信号解析を正確に行い易くなる。
【0029】
図5Aは第2実施形態のポテンショメータに用いる巨大磁気抵抗効果素子の回路構成を示すもので、この形態の回路構成では、巨大磁気抵抗効果素子88、89が先の実施形態の場合と同様に図2に示す基板K上に設けられているが、それらの配置構造が一部異なる。
巨大磁気抵抗効果素子88の他端88bに入力側の端子部90が接続され、一端88aに導体91によって巨大磁気抵抗効果素子89の一端89aが接続されるとともに、導体91に出力側の端子部92が接続され、巨大磁気抵抗効果素子89の他端89bにアース側の端子部93が接続されている。また、この例では巨大磁気抵抗効果素子88、89が基板K上において導体91を介して平面視7の字状になるように配置されている。
【0030】
また、巨大磁気抵抗効果素子88のピン止め磁性層cの磁化の向きは図5Aの左向き、巨大磁気抵抗効果素子89のピン止め磁性層cの磁化の向きは図5Aの右向きとされているので、個々の巨大磁気抵抗効果素子88、89の磁化の向きは先の第1実施形態の巨大磁気抵抗効果素子26、27の場合と逆であるが、対になる巨大磁気抵抗効果素子88、89のピン止め磁性層cの磁化の向きが180゜反対向きである点は同等なので、ポテンショメータとして第1実施形態の構造と同じように回転軸80の回転に応じて正弦波出力を得ることができる。
従って、図5Aに示す回路構造によっても先の第2実施形態の場合と同様にポテンショメータとしての効果を得ることができる。
【0031】
更に図5Bは図5Aに示す回路の変形例を示すもので、この例の如く巨大磁気抵抗効果素子88、89を左右対向位置に設けて巨大磁気抵抗効果素子88の一端88aと巨大磁気抵抗効果素子89の一端89aを導体94で接続し、この導体94に出力側の端子部92を設け、巨大磁気抵抗効果素子88の他端側に端子部90を巨大磁気抵抗効果素子89の他端側に端子部93を設けて巨大磁気抵抗効果素子88、89をコ字状に配置して構成しても良い。
更にこの構成において、磁気コード部材830の中心の両側に磁極を配置するのではなく、円盤状の磁気コード部材83の一面の弦840を境界としてN極とS極を配置した構造を採用しても良い。この場合、両磁極の境界となる図5Bに示す弦840が磁気コード部材83の回転中の規定の位置において、巨大磁気抵抗効果素子88、89の中間位置を通過するように構成すれば良い。
【0032】
以上のように構成する場合、得られる出力は、周期と振幅がそれぞれ一定の正確な正弦波出力ではなく、周期に応じて振幅の異なるカーブから構成される合成波出力が得られるが、この合成波出力からでも磁気コード部材83の回転位置の特定はできるので、ポテンショメータとして使用することができるのは勿論である。
【0033】
図6は本発明の第3実施形態のポテンショメータに用いる巨大磁気抵抗効果素子の回路構造を示すもので、巨大磁気抵抗効果素子95の一端95aに入力側の端子部95Aを接続し、他端95bに抵抗97を接続し、抵抗97の他端にアース側の端子部97Aを設け、巨大磁気抵抗効果素子96の他端96bに入力側の端子部96Aを接続し、一端96aに抵抗98を接続し、抵抗98の他端にアース側の端子部98Aを設け、巨大磁気抵抗効果素子95と抵抗97の中点を増幅器99に接続し、巨大磁気抵抗効果素子96と抵抗98の中点を増幅器99に接続して構成し、中点出力の差動増幅ができるように構成したものである。
【0034】
図6に示す回路構造を図2に示す基板Kに設けてポテンショメータを構成するとともに、端子部97A、95Aと端子部96A、98Aにそれぞれ電圧を印加することで増幅器99から回転軸80の回転角度に応じた正弦波出力の増幅信号を得ることでポテンショメータとして作動させることができ、先の第1実施形態の場合と同様に回転軸80の回転に伴う正弦波出力を得ることができる。また、この形態では増幅器99で出力を増幅できるので、先の第1実施形態の場合よりも大きな出力を得ることができる。
【0035】
図7は本発明の第4実施形態のポテンショメータに用いられる巨大磁気抵抗効果素子の回路図、図8は同回路の基本概念を示す概略構成図、図9は同巨大磁気抵抗効果素子を実際の基板K4上に形成してなる構造の一例を示す平面図である。 第4実施形態のポテンショメータに備えられる基板K4には、図7において左上側に配置された第1の巨大磁気抵抗効果素子31と、同図の左下側に配置された第2の巨大磁気抵抗効果素子32と、同図の右上側に配置された第3の巨大磁気抵抗効果素子33と、同図の右下側に配置された第4の巨大磁気抵抗効果素子34とを具備して構成されている。
また、これらの巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34はいずれも後述する如く薄膜の積層体からなり、線状の細長い形状とされ、第1と第2の巨大磁気抵抗効果素子31、32は図7に示す第1の直線L1に沿って配置されるとともに、第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子33、34は、前記第1の直線L1に離間して平行に設けられた第2の直線L2に沿って配置されている。
【0036】
更に、前記第1と第3の巨大磁気抵抗効果素子31、33が左右に対向する位置に、前記第2と第4の巨大磁気抵抗効果素子32、34が左右に対向する位置にそれぞれ配置されている。
なお、この実施形態においては第1、第2の巨大磁気抵抗効果素子31、32が同一直線上に、第3、第4の巨大磁気抵抗効果素子33、34が同一直線上にそれぞれ配置されているが、これらは平行関係を保ったままで横方向に多少位置ずれしていても良く、個々に多少傾斜していても良い。
【0037】
図8は本実施形態の巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34の積層構造と、それら各層の磁化の向きを明らかにするためのもので、巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34はいずれも同等の構造とされ、基本的には図8に示すように強磁性層(フリー磁性層)aと非磁性層bと強磁性層(ピン止め磁性層)cと交換バイアス層(反強磁性体層)dを積層して構成されている。
図8に示す積層構造において、第1の巨大磁気抵抗効果素子31において交換バイアス層dとピン止め層cの磁化の向きが矢印eに示すように右向きに、第2の巨大磁気抵抗効果素子32において交換バイアス層dとピン止め層cの磁化の向きが矢印fに示すように右向きに設定されている。
【0038】
前記第3の巨大磁気抵抗効果素子33において交換バイアス層dとピン止め層cの磁化の向きが矢印gに示すように左向きに、第4の巨大磁気抵抗効果素子34において交換バイアス層dとピン止め層cの磁化の向きが矢印hに示すように左向きに設定されている。従って、第1と第2の巨大磁気抵抗効果素子31、32のピン止め磁性層cの磁化の向きは互いに平行であり、第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子33、34のピン止め磁性層cの磁化の向きは互いに平行にされているとともに、第1と第2の巨大磁気抵抗効果素子31、32のピン止め磁性層cの磁化の向きと、第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子33、34のピン止め磁性層cの磁化の向きは、互いに180゜反対方向に向けられている。
【0039】
前記の第1と第2と第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34のフリー磁性層aの磁化の向きは、外部磁界が作用しない状態においては不特定の方向に向けられている。
【0040】
次に、前記第1の巨大磁気抵抗効果素子31の一側31aと第4の巨大磁気抵抗効果素子34の一側34aとが導体42で接続され、この導体42が接続部とされ、導体42からなる接続部に出力側の端子部43が接続されるとともに、第2の巨大磁気抵抗効果素子32の一側32aと第3の巨大磁気抵抗効果素子33の一側33aとが導体45で接続され、この導体45が接続部とされ、この導体45に出力側の端子部46が接続されている。更に、第1の巨大磁気抵抗効果素子31の他側31bと第3の巨大磁気抵抗効果素子33の他側33bとが導体40で接続され、この導体40が接続部とされ、この導体40に入力側の端子部41が接続されるとともに、第2の巨大磁気抵抗効果素子32の他側32bと第4の巨大磁気抵抗効果素子34の他側34bが導体47で接続され、この導体47が接続部とされ、この導体47に入力側の端子部48が接続されている。
【0041】
従って、第1の巨大磁気抵抗効果素子31と第4の巨大磁気抵抗効果素子34とが直列接続されて第1の接続対P1が構成され、第2の巨大磁気抵抗効果素子32と第3の巨大磁気抵抗効果素子33とが直列接続されて第2の接続対P2が構成されている。
【0042】
図9は、図7と図8に示す基本構造の巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34と、導体40、42、45、47と端子部41、43、46、48を実際に基板K4の上に積層してなる構造の一例を示す。
この例の構造において、前記基板K4はSi基板等の非磁性の材料からなり、基板上面に平坦化あるいは絶縁性向上等の目的でAl等からなる下地膜を被覆したものなどが好適に用いられる。
【0043】
前記基板K4上に基本的に図8に示す積層構造を有し、図7に示すように直線L1とL2に沿うように配置された線状の巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34が形成され、それらを接続するCr、Cu等の導電性金属材料からなる導体40、42、45、47が形成され、基板Kのコーナ部分側に位置するように端子部41、43、46、48が形成されている。この形態の巨大磁気抵抗効果素子31の詳細断面構造は先に図4を基に説明した巨大磁気抵抗効果素子26の構造と同等とされている。
【0044】
図7と図8に示すに対して回転軸80の回転によって外部磁界H、H、H、Hが作用すると、これらの磁界H、H、H、Hに合わせて巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34の各フリー磁性層aの磁化の向きが回転する結果、その回転角度に応じて電気抵抗変化を生じる。
この電気抵抗変化を測定するには、端子部41と端子部48を入力側と見て所定の電圧を印加し、端子部43、46を出力側と見て抵抗変化に伴う電圧測定を行うことで実現できる。
【0045】
図10は、前記構造のポテンショメータにおいて、ピン止め磁性層cの磁化の向きをeとして一方向(右向き)に固定した場合に、フリー磁性層aの磁化の回転に応じた抵抗変化特性を示すもので、抵抗変化は、ピン止め磁性層cの磁化の向きeとフリー磁性層aの磁化の向きkが同方向の際に最小値を示し、反平行の場合に最大値を示し、その間の変化は図10に示す正弦波を示す。
これは、本実施例のように、飽和磁界以上が加わっている場合、巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34の抵抗値は磁界強度に関係なく、ピン止め磁性層cとフリー磁性層aの磁化の向きがなす角によって一定の値となり、この値は逆向きとなった場合に最大値をとり、更にその値は斜めになるに従って小さくなり、同方向で最小値をとるという特性に起因する。
【0046】
従って、抵抗変化の中間点を原点とみなすと、抵抗変化の極性(増加する方向を+、減少する方向を−とする。)はピン止め磁性層dの磁化の向きが同じにされた巨大磁気抵抗効果素子31、32どうしでは同極性であり、巨大磁気抵抗効果素子33、34どうしでは同極性であるが、巨大磁気抵抗効果素子31と巨大磁気抵抗効果素子33では逆極性に、巨大磁気抵抗効果素子32と巨大磁気抵抗効果素子34では逆極性になるので、図7と図8に示す接続構造で巨大磁気抵抗効果素子のホイートストーンブリッジが構成されたことなりポテンショメータとして有効に作動する。また、この形態の構造においては、巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34によってホイートストーンブリッジを構成したので、先の例のように2つの巨大磁気抵抗効果素子を設けた場合に比べて出力の増大(抵抗変化率の増大)、磁界環境変化による磁気的ノイズ成分の打消効果(地磁気の方向や磁気的ノイズ成分等による巨大磁気抵抗効果素子毎の雑音成分の除去)を得ることができる。
【0047】
図11、図12は本発明に係るポテンショメータ用の巨大磁気抵抗効果素子の構成を示すもので、この形態の構成において先の図7と図9に示す構造と同じ構造には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
この接続構造の巨大磁気抵抗効果素子を備えたポテンショメータにおいても先の形態のポテンショメータと同様に、基板K5上に巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34が設けられており、それらのピン止め磁性層の磁化の向きも同等とされているが、導体による接続構造が一部のみ異なっている。
【0048】
第1の巨大磁気抵抗効果素子31の他端31bが、図7と図9の構造の場合と同様に導体40によって第3の巨大磁気抵抗効果素子33の他端33bに接続され、巨大磁気抵抗効果素子31の一端31bが図7と図9の構造と同様に導体42によって第4の巨大磁気抵抗効果素子34の一端34aに接続されている。また、第2の巨大磁気抵抗効果素子32の一端32aは導体60によって第4の巨大磁気抵抗効果素子34の他端34bに接続され、第2の巨大磁気抵抗効果素子32の他端32bは導体61によって第3の巨大磁気抵抗効果素子33の一端33aに接続されている。また、導体60の一部を基板K5のコーナ部分に延長して入力用の端子部(アース側)62が形成されるとともに、導体61の途中部分において基板K5のコーナ部分に位置する箇所に出力用の端子部63が形成されている。
【0049】
図11と図12に示す巨大磁気抵抗効果素子の接続構造を用いたポテンショメータにおいても巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34によってホイートストンブリッジが構成されているので、先の実施形態の構造と同様に回転軸80の回転角に応じて正弦波出力を得ることができ、ポテンショメータとして使用することができる。
【0050】
次に、図12に示す構造の巨大磁気抵抗効果素子31、32、33、34の各々のピン止め磁性層cの磁化のピン止め方法について以下に説明する。
図12に示す構造の基板K5を製造するには、Si基板等の基板上に必要な膜を積層し、必要に応じて膜の積層工程に合わせて適宜フォトリソ工程を行い、パターニングを施して製造することができる。
【0051】
まず、基板上に目的とする巨大磁気抵抗効果素子の積層構造に合わせて必要な薄膜を積層する。巨大磁気抵抗効果素子が5層構造の場合は5層の薄膜を積層し6層構造の場合は6層の薄膜を積層し7層構造の場合は7層の薄膜を積層する。次にこれら積層膜の上にレジストを塗布してフォトリソ工程を施し、必要部分のみを線状の巨大磁気抵抗効果素子として残す。
次に これら巨大磁気抵抗効果素子の上にレジストを形成してから電極膜を形成し、続いて電極膜をフォトリソ工程で所望の形状に加工して図12に示すように導体を形成し、続いて後述するように磁界印加を行うならば図12に示す回路を備えた基板K5を製造することができる。
【0052】
磁界印加処理を行う場合、一例として図13、図14に示す製造装置Zを用いる。この例の製造装置Zは、ポテンショメータ用の基板K5を嵌め込み設置可能な幅の凹部70を備えた基台71と、この凹部70の底面部に設置されたループ型の導体72と、導体72に接続された電源73を主体として構成されている。前記導体72は、直線状の第1の導体75と、この第1の導体75に平行な直線状の第2の導体76と、これら第1の導体75と第2の導体76を連結する接続導体77とからループ状に構成されている。
【0053】
そして、基板Kを凹部70に嵌め込み挿入した場合に図14に示すように第1の導体75の上方に巨大磁気抵抗効果素子31、32が位置し、第2の導体76の上方に巨大磁気抵抗効果素子33、34が位置するように形成されている。また、電源73は第1の導体75側から第2の導体76側に流れる直流電流を印加できるものである。
【0054】
図13と図14に示すように基板K5を凹部70に嵌め込み挿入した後、電源から直流電流を流すと、導体75を流れる電流により図14に示す導体75を中心とする時計回りの磁界が生じるとともに導体76を流れる電流により導体76を中心とする反時計回りの磁界が生じるので、第1と第2の巨大磁気抵抗効果素子31、32の交換バイアス層dを図13の矢印e、fに示す方向に、第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子33Aと34Aの交換バイアス層dを図13の矢印g、hに示す方向にそれぞれ着磁することができ、各交換バイアス層dの交換結合力によってそれらに隣接するピン止め磁性層cの磁化の向きを各々の方向(e方向、f方向、g方向、h方向)にピン止めすることができる。着磁した後で導体77に流れる電流を停止すると、交換バイアス層dの着磁状態はそのまま保持されるので、各ピン止め磁性層cの磁化の向きもピン止めされたまま維持される。以上の工程を経ることにより、各ピン止め磁性層の磁化の向きを図13に示すように制御したポテンショメータ用の基板K5を得ることができる。
【0055】
前記第1の導体75と第2の導体76に電流を流して磁界を発生させる場合、両導体に流れる電流が時間的に100μsecでもずれて作用すると、第1、第2の巨大磁気抵抗効果素子31、32の交換バイアス層dの着磁状態と、第3、第4の巨大磁気抵抗効果素子33、34の交換バイアス層dの着磁状態が同一状態でなされないおそれがあるので、第1の導体75と第2の導体76を同一電源に接続して磁界印加の時間ずれをできる限り無くした状態で磁界発生させることが重要である。
ただし、磁界印加の時間ずれを無くすることができように2つの電源の同期をとって着磁できるならば、複数の電源に接続して別々の電源から第1の導体75と第2の導体76に電流を流しても差し支えない。
【0056】
なお、交換バイアス層dをα−Fe層、NiO層、IrMn層、CrPtMnから構成した場合はこのような磁界印加手段で瞬時に着磁できるが、交換バイアス層dの構成材料としてNiMn層、PdPtMn層、MnRhRu層、PtMn層を選択した場合はブロッキング温度以上の温度に加熱後、先に述べたごとく着磁する必要があるので着磁作業が繁雑になるが、本発明に適用できるのは勿論である。
【0057】
図15は本発明に係るポテンショメータ用の基板の他の形態を示すもので、この形態の基板K6は、基本的な構造については図12に示す基板K5と同等であるが、異なっているのは、第1の巨大磁気抵抗効果素子31Bが第1番目の直線T1に沿って、第2の巨大磁気抵抗効果素子32Bが第2番目の直線T2に沿ってそれぞれ設けられている点と、第3の巨大磁気抵抗効果素子33Bが第3番目の直線T3に沿って、第4の巨大磁気抵抗効果素子34Bが第4番目の直線T4に沿ってそれぞれ設けられている点が異なる。第1番目、第2番目、第3番目、第4番目の直線T1、T2、T3、T4はいずれも平行であり、直線T1とT2が隣接配置され、直線T3とT4が隣接配置されている。
【0058】
その他の構造は先に図12に記載の基板K5と同等であり、この形態の基板K6を搭載したポテンショメータにおいても先の実施形態のポテンショメータと同等の効果を得ることができる。
また、基板K6を製造する際に用いる製造装置として図13、図14に示すものをそのまま用いることはできないので、第1の導体75を第1の巨大磁気抵抗効果素子31Bの位置と第2の巨大磁気抵抗効果素子32Bの位置に合うように折り曲げ変形させ、第2の導体76を第3の巨大磁気抵抗効果素子33Bの位置と第4の巨大磁気抵抗効果素子34Bの位置に合うように折り曲げ変形させて用いれば良い。
【0059】
具体的には、第1の導体75において電源73に近い側の直線部分と電源73から離れた側の直線部分の間(第1の巨大磁気抵抗効果素子31Bと第2の巨大磁気抵抗効果素子32Bとの間の部分の下方)に折曲部を形成し、第1の巨大磁気抵抗効果素子32Bと第2の巨大磁気抵抗効果素子33Bのいずれにも位置合わせできるように構成すると良い。また、第2の導体76に対しても第1の導体75の場合と同様に、第3の巨大磁気抵抗効果素子33Bと第4の巨大磁気抵抗効果素子34Bとの間の部分の下方に折曲部を設けて第2の導体761本で第3、第4の巨大磁気抵抗効果素子33B、34Bに位置合わせできるように構成すると良い。
【0060】
以上説明した各実施形態のように、4つの巨大磁気抵抗効果素子によってブリッジ回路を構成することを想定すると、第1と第2の巨大磁気抵抗効果素子を同一直線上に配置し、第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子を同一直線上に配置することが望ましいが、図15に示す形態のように多少位置ずれした状態で巨大磁気抵抗効果素子を配置しても差し支えない。また、巨大磁気抵抗効果素子をいずれも完全平行に配置する必要はなく、ブリッジ回路を構成する場合に位相の異なる抵抗を検出することに支障にならない程度傾斜させて配置しても良いのは勿論である。
【0061】
【実施例】
縦3.6mm×横3.6mmのサイズの厚さ0.5mmのSi基板上に、幅0.05mm、長さ1.75mmの4つの線状の巨大磁気抵抗効果素子を図12に示す位置に相互に平行位置に形成して基本構造の基板を形成した。
基板上の各巨大磁気抵抗効果素子は、Al層(1000Å厚)/α−Fe層(1000Å厚)/NiFe層(30Å厚)/Co層(10Å厚)/Cu層(22Å厚)/Co層(10Å厚)/NiFe層(77Å厚)/Ta(30Å厚)の8層からなる積層構造とした。各巨大磁気抵抗効果素子の端部どうしを接続する導体はCr膜から形成し、図12に示す導体接続形状とした。
【0062】
次に、図13と図14に示す装置に基板をセットし、太さ0.8〜0.9mmの銅線からなる第1の導体と第2の導体に100μsecの時間、3500Aの直流電流を同一電源から流して交換バイアス層の着磁を行ない、巨大磁気抵抗効果素子を得た。
【0063】
この基板を図2に示す構造のポテンショメータに組み込み、基板の表面側に11mmのギャップを介して円盤状の磁気コード部材を配置し、磁気コード部材の中心軸位置と基板上の4つの巨大磁気抵抗効果素子の中心位置を位置合わせして基板を固定し、基板の入力側の端子部に5Vの電圧を印加し、出力側の端子部で電圧を測定し、磁気コード部材をその周回りに回転させたところ、図16に示す電圧変化出力カーブを得ることができ、ポテンショメータとして使用可能であることを確認することができた。
これに対し、図2に示す基板の代わりに、GaAs系の半導体を用いたホール素子を用いたポテンショメータを用いて同様な実験を行ったところ、図16の鎖線に示す最大振幅50mVの出力を得ることができた。
これらの比較から、本発明に係る実施例のポテンショメータでは200mVの電圧差を有する正弦波を得ることができ、ホール素子を用いたポテンショメータよりも4倍程度大きな電圧変化を得ることができ、感度を向上できることが判明した。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のポテンショメータは、ピン止め磁性層の磁化の向きを180゜反対向きとした少なくとも一対の巨大磁気抵抗効果素子を基板上に設け、これら巨大磁気抵抗効果素子に対向させて磁極を有する磁気コード部材を回転自在に配置したので、磁気コード部材の回転角に応じて一対の巨大磁気抵抗効果素子の中点の電圧変化を測定することで磁気コード部材の回転状態を検出することができ、ポテンショメータとして使用することができる。
そして、巨大磁気抵抗効果素子を用いた構造であるので、大きな抵抗変化を得ることができる。
更に、対になる巨大磁気抵抗効果素子の間の中心位置と磁気コード部材の回転軸位置を揃えることで正確な正弦波出力を得ることができ、得られた出力波データの解析が容易になる特徴を有する。
【0065】
また、4つの巨大磁気抵抗効果素子によってホイートストンブリッジを構成したものにあっては、電圧変化の出力の増大化、環境ノイズ磁界が作用した場合のノイズ磁界の打消が容易にでき、正確な回転角度検出ができるポテンショメータを提供することができる。
更に、第1の直線に沿って第1と第2の巨大磁気抵抗効果素子を配置し、第2の直線に沿って第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子を配置し、それらを相互接続してホイートストンブリッジとした構成にあっては、出力の増大化、環境ノイズ磁界が作用した場合のノイズ磁界の打消が容易にでき、正確な回転角度検出ができるポテンショメータを提供することができると同時に、
第1と第2の巨大磁気抵抗効果素子の交換バイアス層の着磁を同一方向にまとめて同一磁界で着磁することができ、第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子の交換バイアス層の着磁を同一方向にまとめて同一磁界で着磁して製造できるので、
4つ別々な方向に着磁する必要のあった従来構造よりも格段に着磁作業を容易にすることができる効果がある。従って巨大磁気抵抗効果素子をブリッジ接続した構造を具備するポテンショメータであっても、生産性の良好なものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るポテンショメータに備えられる巨大磁気抵抗効果素子の接続構造を示す回路図。
【図2】図1に示す巨大磁気抵抗効果素子が形成された基板を備えた第1実施形態のポテンショメータの断面図。
【図3】図1に示す巨大磁気抵抗効果素子の基本構造と接続状態を示す構成図。
【図4】図3に基本構造を示すポテンショメータに適用された巨大磁気抵抗効果素子の積層構造と導体の接続部分を示す断面図。
【図5】図5Aは本発明に係るポテンショメータに備えられる巨大磁気抵抗効果素子の接続構造の第2の例を示す回路図、図5Bは第2の例の変形例を示す回路図。
【図6】本発明に係るポテンショメータに備えられる巨大磁気抵抗効果素子の接続構造の第3の例を示す回路図。
【図7】本発明に係るポテンショメータに備えられる巨大磁気抵抗効果素子の接続構造の第4の例を示す回路図。
【図8】図7に示す巨大磁気抵抗効果素子の基本構造とそれらの接続状態を示す概略構成図。
【図9】図7と図8に示す巨大磁気抵抗効果素子の接続構造を基板上に形成した一例を示す平面図。
【図10】図7と図8に示す巨大磁気抵抗効果素子の接続構造において得られる正弦波出力を示す図。
【図11】本発明に係るポテンショメータに備えられる巨大磁気抵抗効果素子の接続構造の第5の例を示す回路図。
【図12】図11に示す巨大磁気抵抗効果素子の接続構造を基板上に形成した一例を示す平面図。
【図13】図11に示す巨大磁気抵抗効果素子を製造装置により着磁している状態を示す図。
【図14】同状態の側面図。
【図15】本発明に係るポテンショメータに備えられる巨大磁気抵抗効果素子の接続構造の第6の例を示す図。
【図16】実施例のポテンショメータで得られた出力測定結果を示す図。
【図17】従来の磁界センサの一例を示す概略構成図。
【図18】図17に示す磁界センサに備えられている巨大磁気抵抗効果素子のピン止め磁性層の磁化の向きとフリー磁性層の磁化の向きの関係を示す図。
【符号の説明】
a・・・強磁性層(フリー磁性層)、b・・・非磁性層、c・・・強磁性層(ピン止め磁性層)、d・・・交換バイアス層(反強磁性体層)、e、f、g、h・・・磁化の向き、K、K4、K5、K6・・・基体(基板)、L1・・・第1の直線、L2・・・第2の直線、O・・・中心軸、26、27、88、89・・・巨大磁気抵抗効果素子、M1・・・ポテンショメータ、31・・・第1の巨大磁気抵抗効果素子、31a・・・一端、
31b・・・他端、32・・・第2の巨大磁気抵抗効果素子、32a・・・一端、
32b・・・他端、33・・・第3の巨大磁気抵抗効果素子、33a・・・一端、
33b・・・他端、34・・・第4の巨大磁気抵抗効果素子、34a・・・一端、
34b・・・他端、40、42、45、47・・・導体、26A、27A、28A、41、43、46、48、61、62、90、92、93・・・端子部、83・・・磁気コード部材。

Claims (5)

  1. 交換バイアス層と、この交換バイアス層により磁化の方向が一方向に固定されるピン止め磁性層と、非磁性層と、外部磁界によって磁化の方向が回転自在にされたフリー磁性層とを少なくとも具備する巨大磁気抵抗効果素子が一対以上備えられ、
    前記対になる巨大磁気抵抗効果素子が、各々のピン止め磁性層の磁化の向きを180゜反対向きに向けて相互に電気的に接続された状態で基体上に設けられるとともに、
    前記基体上の巨大磁気抵抗効果素子に対向状態で回転自在に磁気コード部材が設けられ、前記磁気コード部材の回転中心が前記対になる巨大磁気抵抗効果素子の中間位置を通過するように配置され、前記磁気コード部材にその回転方向に沿って少なくとも2つの磁極が形成されてなることを特徴とする巨大磁気抵抗効果素子を備えたポテンショメータ。
  2. 前記対になる巨大磁気抵抗効果素子が基体上に相互に離間して設けられ、それら巨大磁気抵抗効果素子の中心位置と前記磁気コード部材の回転中心軸位置が一致されてなることを特徴とする請求項1に記載の巨大磁気抵抗効果素子を備えたポテンショメータ。
  3. 第1の直線に沿って第1の巨大磁気抵抗効果素子と第2の巨大磁気抵抗効果素子とが配置され、前記第1の直線に平行な第2の直線に沿って第3の巨大磁気抵抗効果素子と第4の巨大磁気抵抗効果素子とが配置されるとともに、これら4つの巨大磁気抵抗効果素子の中心位置と前記磁気コード部材の回転中心軸位置とが一致されてなることを特徴とする請求項1に記載の巨大磁気抵抗効果素子を備えたポテンショメータ。
  4. 前記第1と第2と第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子の内、ピン止め磁性層の磁化の向きが異なるものどうしが接続されてホイートストンブリッジが構成されてなることを特徴とする請求項3に記載の巨大磁気抵抗効果素子を備えたポテンショメータ。
  5. 前記第1と第2と第3と第4の巨大磁気抵抗効果素子の各接続部分の内、2つに入力側の端子部が、残り2つに出力側の端子部が各々形成されてなることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の巨大磁気抵抗効果素子を備えたポテンショメータ。
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