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JP3621216B2 - タービンノズル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は蒸気タービンのノズル動翼間に生じる翼間損失を減少させてタービン内部効率を向上させるのに好適なタービンノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、蒸気タービンは性能向上に望ましい様々な技術開発の成果を取り入れて高い効率を達成することに成功している。性能向上に貢献した技術で注目されるのは内部効率の向上を目的としたもので、これはどのようなタービンサイクル、あるいは流体条件を採るものにも有効であり、適応範囲の広さから最も注目を集めることになる。タービン内部で生じる損失のうち、2次流れ損失は軸流タービンの多くの段落に共通して発生する損失であり、これに対する解決策の適否により内部効率が大きく左右されることになる。
【0003】
ところで、ノズル流路内で発生する2次流れ渦に起因する2次流れ損失を低減するのに翼形、翼列に対する深い考察が欠かせない。近年、3次元的な流れの正確な把握を可能にした計算機技術の進歩があり、翼形、翼列についても3次元的な観点からより深い考察を加えることが可能になっている。
【0004】
たとえば、蒸気タービンの回転中心を通るラジアル線に対して円周方向の流体の流出側へ湾曲させて構成されるノズル翼がある。図5は上記の湾曲させたノズルを採用する軸流タービンの段落の一部を示している。ここで、ノズル翼はダイアフラム外輪2とダイアフラム3との間に挟持されている。このノズル翼1においては翼間流路における速度ベクトルを根元側ではダイアフラム内輪3、先端側ではダイアフラム外輪2の方向に向ける作用があり、ダイアフラム内輪3およびダイアフラム外輪2の双方で境界層が発達するのを抑制することが可能である。
【0005】
一方、翼列性能についてはノズル翼1の後縁端とこれに隣接する他のノズル翼1の背面との最短距離Sと環状ピッチTとの比S/T(図6参照)を翼長方向に変化させ、翼長方向の流量分布を制御し、性能向上を図る方法が知られている。図7に示すように、ノズル翼1の根元部および先端部のスロート幅S1、S3をノズル翼1の中央部のスロート幅S2よりも大きくし、この部分に流れる流量を多くする(以下、このノズル翼を3次元設計形1と称する)ことで、壁面近傍の2次流れ損失を低減させるもの、反対に、図8に示すように、翼長中央部付近の壁面の影響を受けない性能のよい部分のスロート幅S2を大きくし、この部分に多量の蒸気を流すように構成するもの(以下、3次元設計形2と称する)が知られている。このようなS/T分布を翼長方向に変化させて3次元的に蒸気の流れを制御することにより翼列性能を向上させることが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、蒸気タービンの内部効率を左右する諸因子の一つにノズル動翼間に生じる翼間損失がある。この翼間損失は一般に、次に述べる非定常損失と混合損失との和で表わされる。すなわち、非定常損失とは図9で示すようなノズル後流の円周方向の速度分布により生じるウェークを動翼(図示せず)が通過することにより生じる損失のことであり、ノズル出口での速度成分の変化により流体の動翼への流入角度が周期的に変動することにより生じる損失である。ウェークの深さは流れ方向への距離の増加と共に小さくなり、これに伴ない非定常損失も減少する。
【0007】
また、混合損失とは自由空間に噴出した流体同士の干渉によってもたらされる損失のことで、これは非定常損失とは逆に流れの方向へ距離が増すと、損失が増大することになる。したがって、図10に示すように非定常損失ζ1と混合損失ζ2との和である翼間損失ζ3は損失が減少する前者と、損失が増加する後者とが交わる点に損失が最小となる最適値を有することになる。
【0008】
図11を参照して説明すると、この最適値を示す流れ方向距離をLopt、ノズル絶対流出角度をαとしたとき、翼間において最適軸方向距離δaは下式で示すことができる。
δa=Lopt×sin α
なお、図中符号4は動翼を示している。
【0009】
一方、従来の3次元設計翼では湾曲させたノズル翼1(図5参照)および図12に示すような翼長方向のS/T分布の変化によりノズル出口での絶対流出角分布が図13に示すように3次元的に変化する。このとき、最適軸方向距離δaは翼長方向に変化するsin αにより図14に示すように変化する。すなわち、ノズル後縁端形状を周方向に湾曲させてもノズル動翼間距離がこれまでと変わらないままではタービン内部効率を十分に高めることができない。
【0010】
そこで、本発明の目的は翼長方向に沿いノズル動翼間距離を変化させることで、軸方向距離を最適に保つようにしたタービンノズルを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の発明は、環状のダイアフラム外輪およびダイアフラム内輪に挟持された複数枚のノズル翼を備えたタービンにおけるノズルと動翼間に生じる損失を最小にするべく、予め求められた流れ方向最適距離Loptと、このノズル翼のノズル出口絶対流出角αとからδ=Lopt×sinαで求められる軸方向距離の最適値がδoptであるタービンノズルのうち、前記各ノズル翼を一のノズル翼の後縁端と、これに隣接する他のノズル翼の背面との最短距離Sと環状ピッチTの比S/Tの最小値を翼中央部にしたタービンノズルにおいて、前記S/Tからノズル出口絶対流出角を求め、このノズル出口絶対流出角から求めた軸方向距離と前記最適軸方向距離δoptとの差に基づいて翼中央部において軸方向の流体流出側に湾曲させるように構成したことを特徴とする。
【0012】
さらに、第2の発明は、環状のダイアフラム外輪およびダイアフラム内輪に挟持された複数枚のノズル翼を備えたタービンにおけるノズルと動翼間に生じる損失を最小にするべく、予め求められた流れ方向最適距離Loptと、このノズル翼のノズル出口絶対流出角αとからδ=Lopt×sinαで求められる軸方向距離の最適値がδoptであるタービンノズルのうち、前記各ノズル翼を一のノズル翼の後縁端と、これに隣接する他のノズル翼の背面との最短距離Sと環状ピッチTの比S/Tの最小値を翼中央部にしたタービンノズルにおいて、前記S/Tからノズル出口絶対流出角を求め、このノズル出口絶対流出角から求めた軸方向距離と前記最適軸方向距離δoptとの差に基づいて翼中央部において軸方向の流体流入側に湾曲させるように構成したことを特徴とする。
【0013】
また、第3の発明は、請求項1に係る発明において、前記各ノズル翼をノズル翼の根元部の後縁端と先端部の後縁端とを結ぶ線を該ノズル翼のラジアル線に対して流体流出側に0から5度の角度で傾けさせるように構成したことを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、請求項2に係る発明において、前記各ノズル翼をノズル翼の根元部の前縁端と先端部の前縁端とを結ぶ線を該ノズル翼のラジアル線に対して流体流出側に0から5度の角度で傾けさせるように構成したことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1において、ノズル翼11はダイアフラム外輪12とダイアフラム内輪13との間に挟持されている。このノズル翼11は環状列をなして多数配置されるが、図示したものはそのうちの1枚である。このノズル翼11にすぐ隣接してロータディスク14から延びる動翼15が設けられ、軸流タービンの段落を構成している。動翼15もノズル翼11と同様に環状列をなして配置され、図示のものはそのうちの1枚である。動翼15の先端には動翼同士を連結しているシュラウド16が設けられている。
【0016】
また、このノズル翼11はそれの根元部の後縁端と先端部の後縁端とを結ぶ線Fをノズル翼11のラジアル線Eに対して流体流出側に角度θだけ傾けて配置されている。本実施の形態においてはノズル翼11を傾ける角度θは0〜5°の範囲である。
【0017】
図2に改めてノズル11を示している。このノズル翼11は回転中心を通るラジアル線に対して周方向の流体流出側に湾曲させて構成される。また、翼長方向の各高さ位置における断面をロータ中心を通るラジアル線Eに対して移動させ、軸方向の流体流出側に湾曲させるように構成されている。
【0018】
この周方向に湾曲して構成されるノズル翼11においては先に述べたようにノズル出口流出角が従来のノズル翼よりも根元側で大きく、中央部で小さく、先端側で大きくなる。このノズル出口流出角が翼長方向に変化することで、翼間の非定常損失と混合損失とから定まる最適軸方向距離が翼長方向に変化することになる。すなわち、中央部では最適軸方向距離が小さくなり、逆に根元部および先端部では大きくなる。本実施の形態ではロータ中心を通るラジアル線Eに対して断面を移動して軸方向の流入流出側に湾曲させるもので、翼長方向に沿いノズル動翼間距離Laを変化させる。これにより軸方向距離を最適な値とすることができる。したがって、翼間損失をより小さくすることが可能になり、内部効率をさらに高めることができる。
【0019】
また、ラジアル線Eとノズル翼11の根元部の後縁端と先端部の後縁端とを結ぶ線Fとの間の角度θを0〜5°の範囲に保つことで、たとえば、ノズル翼11の湾曲形状が他の構成部品との干渉等の理由から最適値を保つことが困難であるときも、翼間における軸間距離を最適値に近づけることができる。
【0020】
この角度θは翼長により変化するが、翼長が最も長いもので5°が限界である。図4に角度θを変化させたときの効率の推移を示す。比較的翼長の長い長翼H1、中間の長さの中翼H2および中翼よりも短い短翼H3のそれぞれに効率1.0を下まわる角度があり、長翼H1ではこの角度が5°である。したがって、角度θは0〜5°の範囲とするのが望ましい。
【0021】
さらに、本発明の他の実施の形態を説明する。本実施の形態は壁面近傍の2次流れ損失を低減することを目的として用いられる翼長方向の流量分布を制御するノズル(3次元設計形1)に適用される。また、各ノズル翼はノズル翼の後縁端とこれに隣接するノズル翼の背面に最短距離Sと環状ピッチTの比S/Tの最小値が翼中央部にあり、図2のノズル翼11と同様に翼長方向の各高さ位置における断面をロータ中心を通るラジアル線Eに対して移動させ、翼中央部において軸方向の流体流出側に湾曲させるように構成されている。
【0022】
このノズル翼においてはS/Tの最小値が翼中央部にあることから、先に述べたようにノズル流出角が翼中央部で小さく、根元部および先端部で大きくなる。ノズル出口流出角が翼長方向に変化することで、中央部では最適軸方向距離が小さくなり、逆に根元部および先端部が大きくなるため、軸方向の流体流出側に湾曲させることにより、翼長方向に沿いノズル動翼間距離を変化させる。これにより軸方向距離を最適値に保つことができる。したがって、翼間損失をより小さくすることが可能で、内部効率を向上させることができる。
【0023】
さらに、他の実施の形態を図3を参照して説明する。本実施の形態は翼長方向に流量分布を制御するノズル(3次元設計形2)に適用される。ノズル翼21はノズル翼の後縁端とこれに隣接するノズル翼の背面との最短距離Sと環状ピッチTの比S/Tの最大値が翼中央部に位置するように定めたもので、上記実施の形態のものと逆に、翼長方向の各高さ位置における断面をロータ中心を通るラジアル線Eに対して移動させ、翼中央部において軸方向の流体流入側に湾曲させるように構成される。
【0024】
本実施の形態においてはS/Tの最大値が翼中央部にあることから、先に述べたように、上記実施の形態のものと逆に、ノズル流出角は翼中央部で大きくなり、根元部および先端部で小さくなる。そして、このノズル出口流出角が翼長方向に変化することで、中央部では最適軸方向距離が大きくなり、逆に根元部および先端部では最適軸方向距離が小さくなるため、軸方向の流体流入側に湾曲させることにより翼長方向に沿いノズル動翼間距離が変化し、軸方向距離を最適値に保つことができる。したがって、翼間損失をより減少させることができ、内部効率を向上させることが可能になる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように第1の発明によれば、各ノズル翼を翼中央部において周方向に、かつ軸方向の流体流出側に湾曲させるようにしたので、段落における最適軸方向距離を保つことができ、翼間損失を減少させてタービン内部効率を向上させることが可能である。
【0026】
さらに、第2の発明によれば、各ノズル翼をノズル翼の後縁端と、これに隣接するノズル翼の背面との最短距離Sと環状ピッチTの比S/Tの最小値が翼中央部にあり、かつ翼中央部において軸方向の流出側に湾曲させるようにしたので、段落における最適軸方向距離を保つことができ、翼間損失を減少させてタービン内部効率を向上させることが可能である。
【0027】
また、第3の発明によれば、各ノズル翼をノズル翼の後縁端と、これに隣接するノズル翼の背面との最短距離Sと環状ピッチTの比S/Tの最大値が翼中央部にあり、かつ翼中央部において軸方向の流出側に湾曲させるようにしたので、段落における最適軸方向距離を保つことができ、翼間損失を減少させてタービン内部効率を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるタービンノズルを用いた蒸気タービンの段落を示す模式図。
【図2】本発明によるタービンノズルを示す模式図。
【図3】本発明の他の実施の形態を示す模式図。
【図4】ノズル後縁端の傾斜角に対する効率の変化を示すグラフ。
【図5】従来の周方向に湾曲させたノズルを示す斜視図。
【図6】従来のノズル翼の横断面図。
【図7】従来の3次元設計によるノズルを示す斜視図。
【図8】従来の3次元設計による他のノズルを示す斜視図。
【図9】ノズルウェークを説明するための図。
【図10】ノズルの動翼間損失の分布を示すグラフ。
【図11】軸方向距離を説明するための図。
【図12】3次元設計形ノズルのS/Tの分布を示す図。
【図13】3次元設計形ノズルのノズル出口流出角の分布を示す図。
【図14】最適軸方向距離を説明するための図。
【符号の説明】
11、21 ノズル翼
12 ダイアフラム、外輪
13 ダイアフラム、内輪
15 動翼

Claims (4)

  1. 環状のダイアフラム外輪およびダイアフラム内輪に挟持された複数枚のノズル翼を備えたタービンにおけるノズルと動翼間に生じる損失を最小にするべく、予め求められた流れ方向最適距離L opt と、このノズル翼のノズル出口絶対流出角αとからδ=L opt × sin αで求められる軸方向距離の最適値がδ opt であるタービンノズルのうち、前記各ノズル翼を一のノズル翼の後縁端と、これに隣接する他のノズル翼の背面との最短距離Sと環状ピッチTの比S/Tの最小値を翼中央部にしたタービンノズルにおいて、
    前記S/Tからノズル出口絶対流出角を求め、このノズル出口絶対流出角から求めた軸方向距離と前記最適軸方向距離δ opt との差に基づいて翼中央部において軸方向の流体流出側に湾曲させるように構成したことを特徴とするタービンノズル。
  2. 環状のダイアフラム外輪およびダイアフラム内輪に挟持された複数枚のノズル翼を備えたタービンにおけるノズルと動翼間に生じる損失を最小にするべく、予め求められた流れ方向最適距離L opt と、このノズル翼のノズル出口絶対流出角αとからδ=L opt × sin αで求められる軸方向距離の最適値がδ opt であるタービンノズルのうち、前記各ノズル翼を一のノズル翼の後縁端と、これに隣接する他のノズル翼の背面との最短距離Sと環状ピッチTの比S/Tの最小値を翼中央部にしたタービンノズルにおいて、
    前記S/Tからノズル出口絶対流出角を求め、このノズル出口絶対流出角から求めた軸方向距離と前記最適軸方向距離δ opt との差に基づいて翼中央部において軸方向の流体流入側に湾曲させるように構成したことを特徴とするタービンノズル。
  3. 前記各ノズル翼をノズル翼の根元部の後縁端と先端部の後縁端とを結ぶ線を該ノズル翼のラジアル線に対して流体流出側に0から5度の角度で傾けさせるように構成したことを特徴とする、請求項1記載のタービンノズル。
  4. 前記各ノズル翼をノズル翼の根元部の前縁端と先端部の前縁端とを結ぶ線を該ノズル翼のラジアル線に対して流体流出側に0から5度の角度で傾けさせるように構成したことを特徴とする請求項2記載のタービンノズル。
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