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JP3620097B2 - 水性インク - Google Patents

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JP3620097B2
JP3620097B2 JP12955395A JP12955395A JP3620097B2 JP 3620097 B2 JP3620097 B2 JP 3620097B2 JP 12955395 A JP12955395 A JP 12955395A JP 12955395 A JP12955395 A JP 12955395A JP 3620097 B2 JP3620097 B2 JP 3620097B2
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    • C09D11/32Inkjet printing inks characterised by colouring agents
    • C09D11/328Inkjet printing inks characterised by colouring agents characterised by dyes
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は水性インク、特にインクジェット記録において、いわゆる普通紙に対するカラーインクとして優れた特性を示す水性インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンターは、低騒音、低ランニングコストといった利点から近年、著しく普及し、普通紙に印字可能なカラープリンターも市場に投入されるようになった。
このようなカラープリンターに用いられるインクとしては、一般に水に分散または溶解する着色剤および湿潤剤−多価アルコールまたはそのエーテル類と水より構成され、必要に応じて防カビ剤等の添加剤を含有する。
【0003】
しかしながら、画像の色再現性、耐水性、耐光性、画像の乾燥性、画像滲み、吐出の信頼性など要求されるすべての特性を満足するカラーインクを得ることは非常に難しい。特にカラープリンターの場合、イエロー、マゼンタ、シアンの単色印字部で画質の劣化がなくてもレッド、グリーン、ブルーの2色重ね部分で画質の劣化が発生しやすい。特に定着装置を用いないで乾燥を行う場合、特開昭55−29546号公報等記載のように浸透性を高めることにより乾燥性を向上しているため紙により著しく滲む。
また、特公昭60−23793号公報には界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸が乾燥性を向上し画質劣化が少ないとされているが紙による画素径が著しく異なり画像濃度の低下も著しいといった問題やアルカリ側では活性剤が分解し、保存時に活性効果がなくなるといった問題がある。
また、特開昭56−57862号公報等には強塩基性物質を添加するインクが開示されているが、ロジンサイズされた酸性紙では効果があるもののアルキルケテンダイマーやアルケニルスルホコハク酸をサイズ剤とした紙には効果がない。さらに、酸性紙でも2色重ね部分では効果がない。
また、特開平1−203483号公報には多価アルコール誘導体およびペクチンを含有する記録液が開示されているが、これは増粘剤としてペクチンを添加し、滲みを防止するものであるが、ペクチンは水酸基を親水基とする非イオン性の化合物であるため印字休止後の吐出安定性に欠けるという問題があった。
【0004】
一方、普通紙上での色再現と耐水性を両立させるために染料そのものの改良が行なわれているが、耐水性を向上させ、かつ、信頼性の高い染料を得ることは難しい。
【0005】
マゼンタ染料では、例えばカルボン酸基を導入したキサンテン系染料のアンモニウム塩を用いたインクが特開平5−194476号公報に開示されているが、耐水性は優れるものの据え置き型ヘッドのプリンターでの信頼性は確保できないという問題がある。
本出願人も従来より種々のマゼンタ染料について検討し、例えば特開昭64−6237号公報等に耐水性と信頼性を満足するマゼンタインクを提案したが普通紙における色調は今一つであった。
【0006】
また、シアン染料としてはフタロシアニン誘導体にカルボン酸基を導入したものが特開昭63−3047号公報、特開平1−126381号公報および特開平6−93196号公報に開示されているが、前者は信頼性が今一つであり、後者は耐水性が今一つであった。
【0007】
これら従来のアニオン染料は、スルホン酸基、カルボン酸基を導入し水への溶解性を確保していたが、特開平5−179152、6−214261号公報に新規な染料としてボロン酸基を導入したアゾ染料が開示されている。これにより耐水性と溶解性を満足したインクジェット用染料が提供されるとしているが、フタロシアニン系染料やキサンテン系染料については特に具体的な構造は示されていない。また、染料の構造と耐水性についてはよく言及されているが、滲み等の画質劣化と染料構造の関係については余り検討されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたもので、インクジェット記録用インクとして上記諸特性を満足し、色調、耐水性が改良され、さらに、画像滲みが改良された水性染料を用いた水性インクを提供することを第1の目的とする。
本発明の第2の目的はマゼンタインクで優れた特性を示す水性染料を用いた水性インクを提供することである。
本発明の第3の目的はシアンインクで優れた特性を示す水性染料を用いた水性インクを提供することである。
本発明の第4の目的は該染料が特に優れた溶解性を示す態様を示すことである。
本発明の第5の目的は該インクにおいて浸透性を高めるために添加する好ましいアニオン系界面活性剤の構造を提供することである。
本発明の第6の目的は該界面活性剤の保存安定性を向上させる対イオンの態様を提供することである。
本発明の第7の目的は該インクにおいて浸透性を高めるために添加する好ましいノニオン系界面活性剤の構造を特定することである。
本発明の第8の目的は該インクにおいて該活性剤と該染料の相互作用を安定化し保存安定性と浸透特性が改良された水性インクを提供することである。
本発明の第9の目的は該インク組成物の保存安定性を得るために必要なインクの物性値を提示することである。
本発明の第10の目的は該インクを用いて良好に画像形成を行なう記録方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第一に、少なくとも水溶性染料および界面活性剤を含有する水性インクにおいて、該染料が、該染料の遊離酸がアゾ結合を介することなく結合された式(I)で表わされる部分を有するものであって、下記式( II )で表わされる化合物および/または下記式( III )で表される化合物であることを特徴とする水性インクが提供される。
【化1】
Figure 0003620097
【化2】
Figure 0003620097
【化3】
Figure 0003620097
式(II)および(III)において、Mはアルカリ金属、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミン、R、Rは水素、アルキル基またはハロゲンを表す。l、mは0または1を表わし、同時に0にならない。
【0010】
に、少なくとも水溶性染料および界面活性剤を含有する水性インクにおいて、該染料が、該染料の遊離酸がアゾ結合を介することなく結合された式(I)で表わされる部分を有するものであって、下記式(IV)で表わされる化合物および/または下記式(V)で表わされる化合物であることを特徴とする水性インクが提供される。
【化1】
Figure 0003620097
【化4】
Figure 0003620097
式(IV)において、x≧1であり、xとyは、1<x+y≦4の範囲にあり、ZはH、Cu、Ni、FeまたはCoを表す。また、Mはアルカリ金属、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンを表す。
【化5】
Figure 0003620097
式(V)において、x≧1であり、xとyは、1<x+y≦8の範囲にあり、ZはH、Cu、Ni、FeまたはCoを表す。また、Mはアルカリ金属、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンを表す。
【0011】
に、上記第または第に記載した水性インクにおいて、染料の対イオンがNa、Liまたは下記一般式(VI)で示される第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンであることを特徴とする水性インクが提供される。
【化6】
Figure 0003620097
式(VI)において、Xは窒素またはリン、R〜Rは水素、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはハロゲン化アルキル基を表す。
【0012】
に、上記第一、第二または第三に記載した水性インクにおいて、界面活性剤として式(VII)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩または式(VIII)で示されるジアルキルスルホ琥珀酸塩を添加し表面張力を50mN/m以下とすることを特徴とする水性インクが提供される。
【化7】
Figure 0003620097
式(VII)において、Rは炭素数6〜14の分岐してもよいアルキル基、mは3〜12、Mはアルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンを表す。
【化8】
Figure 0003620097
式(VIII)において、Rは炭素数5〜7の分岐したアルキル基、Mはアルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンを表す。
【0013】
に、上記第に記載した水性インクにおいて、式(VII)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩または式(VIII)で示されるジアルキルスルホ琥珀酸塩の対イオンがNa、Liまたは上記一般式(VI)で示される第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンであることを特徴とする水性インクが提供される。
【0014】
に、上記第一、第二または第三に記載した水性インクにおいて、界面活性剤として式(IX)で示される化合物または下記式(X)で示される化合物を添加し表面張力を50mN/m以下とすることを特徴とする水性インクが提供される。
【化9】
Figure 0003620097
式(IX)において、Rは分岐してもよい炭素数6〜14のアルキル基、kは5〜12を表す。
【化10】
Figure 0003620097
式(X)において、m、nは0〜40を表す。
【0015】
に、上記第に記載した水性インクにおいて、尿素、またはヒドロキシエチル尿素およびジヒドロキシエチル尿素から選ばれる尿素誘導体を添加することを特徴とする水性インクが提供される。
【0016】
に、上記第一、第二、第三、第四、第五、第六または第七に記載した水性インクにおいて、pHを6以上11以下にしたことを特徴とする水性インクが提供される。
【0017】
に、上記第一〜第に記載した水性インクのいずれかを熱エネルギーまたは機械的エネルギーにより微小な液滴として飛翔させ、該飛翔させた液滴をステキヒトサイズ度が3秒以上の被記録材に付着させることを特徴とする画像形成方法が提供される。
【0018】
以下に本発明を詳細に説明する。
上述のごとく本発明は、普通紙にカラー印字する際に、アゾ結合を介することなく結合された上記式(I)で表される部分を有する染料を用いることにより、特に、上記一般式(II)で表される染料および/または上記一般式(III)で表される染料を用いると彩度が高く、耐水性が高く、かつ、乾燥性に優れ滲みが少ないマゼンタ画像が得られること、また、上記一般式(IV)で表される染料および/または上記一般式(V)で表される染料を用いると彩度および耐水性が高く、しかも滲みの少ないシアン画像が得られることを見出し本発明に至ったものである。
【0019】
前述の特開平5−179152および同5−214261号公報にはアゾ結合を介して結合するアリール基上にボロン酸基が導入された染料が開示されている。しかしながら、これらはアゾ系黒染料においては有効であるがカラー染料に関しては会合状態の変化による紙面上での凝集からボロン酸基のみを導入することでは普通紙での彩度の低下や溶解性の確保は十分に行えない。これに対して本発明者らは、アゾ結合を介しないでアリール基上にボロン酸基が導入された従来の染料から誘導される染料を用いることにより優れた普通紙適性を有するインクが得られることを見いだしたものである。
【0020】
これらマゼンタおよびシアン染料は従来公知のキサンテン染料、フタロシアニン染料から容易に合成することができる。例えば、下記式(II−E)のキサンテン化合物をクロルスルホン化し、これに下記式(I−E)の化合物を反応させることにより後記式(II−1)の化合物が得られる。
【化11】
Figure 0003620097
これに対しキサンテン染料やフタロシアニン染料の骨格にボロン酸基を導入することはボロン酸基の安定性から難しい。
【0021】
また、本発明は紙への浸透性を高める目的でアニオン系界面活性剤として式(VII)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩および/または式(VIII)で表される炭素鎖が5〜7の分岐したアルキル鎖を有するジアルキルスルホ琥珀酸を添加することにより表面張力を50mN/m以下に低下させ、インクと紙表面との濡れ性を向上させ、紙への浸透速度を高め、着色剤として上記一般式(II)、(III)、(IV)または(V)を用いると画像劣化がきわめて少なくなることを見いだした。これは紙面より供給されるプロトンによりインクが増粘するため、さらに、滲みが少なくなるものと推定される。
さらに、本発明の該染料及び活性剤の対イオンとしてリチウムイオンおよび一般式(VI)で示される第4級アンモニウムまたは第4級ホスホニウムを用いることにより優れた溶解安定性を示すことを見いだした。
【0022】
また、本発明では非イオン系の界面活性剤として一般式(IX)で表されるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルまたは一般式(X)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤を添加することにより表面張力を50mN/m以下に低下させ、インクと紙表面との濡れ性を向上させ、紙への浸透速度を高め、着色剤として上記一般式(II)、(III)、(IV)または(V)を用いると画像劣化がきわめて少なくなることを見いだした。
【0023】
また、これら活性剤(IX)または(X)に加え尿素およびヒドロキシエチル尿素、ジヒドロキシエチル尿素から選ばれる尿素誘導体を添加すると染料と非イオン活性剤間の相互作用を弱め染料の会合を緩和することで浸透性を向上させたり、吐出安定性、長期保存性を改良できることを見いだした。これら尿素または尿素誘導体の添加量は0.1%から5%の間で用いることが好ましい。0.1%以下では効果がなく5%以上では水分蒸発時の粘度変化に影響を及ぼすことがある。
【0024】
なお、このインクのpHを6以上にすることによりインクの保存安定性が得られ、また、オフィスで使用されているコピー用紙や用箋等はpHが5〜6のものが多く、これらの記録紙にインクを20〜60μmの微細な吐出口より吐出し重量が10mg〜160mgの液滴として5〜20m/sで飛翔させ、ステキヒトサイズ度が3秒以上のいわゆる普通紙に記録することにより高画質、高解像の記録画像を形成する記録方式を提供することができる。ただし、pHが9以上では保存時に(VIII)の活性剤では分解による物性変化が起こりやすいため(VIII)を用いる場合はpHを6〜9とすることが好ましい。
【0025】
本発明に用いることができる化合物(VII)、(VIII)の添加量は0.05〜10重量%の間でプリンターシステムにより要求されるインク特性に対し所望の浸透性を与えることが可能である。ここで0.05%以下ではいずれの場合も2色重ね部の境界での滲みが発生し、10重量%以上添加する場合は化合物自体が低温で析出しやすかったり、染料の析出等も発生することがあり信頼性が悪くなる。
【0026】
次に本発明に用いる染料(II)、(III)、(IV)および(V)を具体的に遊離酸型で示す。
【0027】
【化12】
Figure 0003620097
【0028】
【化13】
Figure 0003620097
【0029】
【化14】
Figure 0003620097
【0030】
【化15】
Figure 0003620097
【0031】
次に本発明で使用される一般式(VII)で表される界面活性剤と一般式(VIII)で表される界面活性剤を具体的な遊離酸型で示す。
【化16】
Figure 0003620097
【0032】
本発明の水溶性染料および界面活性剤は保存時の溶解安定性を得る目的あるいは熱エネルギーを与えることにより吐出を行う記録方式での信頼を向上する目的で対イオンをリチウム、ナトリウム、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンイオンとする。例えば、リチウム塩の場合は水酸化リチウムを添加することにより行うことができ、一般式(VI)の第4級アンモニウム、ホスホニウム、アルカノールアミン陽イオンに関しては、具体的には以下に示す水酸化物を添加することにより行われる。
【化17】
Figure 0003620097
なお、本発明において該染料および活性剤の対イオンがすべてナトリウム、リチウムおよび/または上記一般式(VI)の化合物である必要はなく、他のアルカリイオンと混合することもできる。ナトリウム、リチウムおよび/または上記一般式(VI)の化合物によるイオンの量としては染料および活性剤のモル数に対して30%以上、より好ましくは50%以上となるように添加されることが好ましい。
【0033】
本発明のインクは水を液媒体として使用するものであるが、インクを所望の物性にするため、インクの乾燥を防止するために、また、本発明の化合物の溶解安定性を向上するため等の目的で下記水溶性有機溶媒を使用することができる。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは、複数混合して用いられる。
これらの中で特に好ましいものはジエチレングリコール、チオジエタノール、ポリエチレングリコール200〜600、トリエチレングリコール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペトリオール、1,5−ペンタンジオール、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノンであり、これらを用いることにより本化合物の高い溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果が得られる。
【0034】
また、本発明の活性剤(VII)〜(X)以外で表面張力を調整する目的で添加される浸透剤としては、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキルおよびアリールエーテル類、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類が挙げられるが、特に好ましいのはジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0035】
本発明における表面張力は、紙への浸透性を示す指標であり、特に表面形成されて1秒以下の短い時間での動的表面張力を示し、飽和時間で測定される静的表面張力とは異なる。測定法としては特開昭63−31237号公報等に記載の従来公知の方法で1秒以下の動的な表面張力を測定できる方法であれば、いずれも使用できるが、本発明ではWilhelmy式の吊り板式表面張力計を用いて測定した。表面張力の値は50mN/m以下が好ましく、より好ましくは40mN/m以下とすると優れた乾燥性が得られる。
【0036】
本発明の着色剤としては、一般式(II)、(III)、(IV)、(V)の染料の他、必要に応じて他の着色剤と混合して用いることができる。用いられる水溶性染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料で耐水、耐光性が優れたものが用いられる。これらは効果が疎外されない範囲で添加される。これら染料を具体的に挙げれば、酸性染料および食用染料として、
C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッドレッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッドブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッドブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フードイエロー 3,4
C.I.フードレッド 7,9,14
C.I.フードブラック 1,2
直接性染料として
C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクトオレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクトブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクトブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
塩基性染料として
C.I.ベーシックイエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
C.I.ベーシックレッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112
C.I.ベーシックブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155
C.I.ベーシックブラック 2,8
反応性染料として
C.I.リアクティブブラック 3,4,7,11,12,17
C.I.リアクティブイエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,56,65,67
C.I.リアクティブレッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97
C.I.リアクティブブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95
等が使用できる。特に酸性染料および直接性染料が好ましく用いることができる。
【0037】
顔料としては、有機顔料としてアゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられ、無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉等が挙げられる。
【0038】
顔料分散剤としては、親水性高分子として、天然系では、アラビアゴム、トラガンガム、グーアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子、半合成系では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ビドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維秦系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子、純合成系では、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸およびそのアクリル金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル系樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラミック等の天然高分子化合物等が挙げられる。
【0039】
本発明のインクには上記着色剤、溶媒の他に従来より知られている添加剤を加えることができる。例えば、防腐防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が本発明に使用できる。
【0040】
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響をおよぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば、任意の物質を使用することができる。
その例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。
【0041】
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
【0042】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等がある。
その他目的に応じて水溶性紫外線吸収剤、水溶性赤外線吸収剤、界面活性剤を添加することもできる。
【0043】
【実施例】
以下に本発明の実施例および比較例を示す。なお、以下で示す%は重量%を示す。
【0044】
〔実施例1〕
下記処方の組成物を60℃で撹拌溶解し、室温にて放冷後、pHが8.5になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整し、これを0.22μmのテフロンフイルターにて濾過しインク1を作製した。
Figure 0003620097
【0045】
〔実施例2〕
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にし、pHを水酸化ナトリウムで8.8にしてインク2を調整した。
Figure 0003620097
【0046】
〔実施例3〕
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで8.5にしてインク3を調整した。
Figure 0003620097
【0047】
〔実施例4〕
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで7.5にしてインク4を調整した。
Figure 0003620097
【0048】
〔実施例5〕
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化ナトリウムで7.8にしてインク5を調整した。
Figure 0003620097
【0049】
〔実施例6〕
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで8にしてインク6を調整した。
Figure 0003620097
【0050】
〔実施例7〕
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで8にしてインク7を調整した。
Figure 0003620097
【0051】
〔実施例8〕
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで7.5にしてインク8とした。
Figure 0003620097
【0052】
〔実施例9〕
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで8にしてインク9とした。
Figure 0003620097
【0053】
〔実施例10〕
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで8にしてインク10とした。
Figure 0003620097
【0054】
〔比較例1〕
実施例1において具体例(II−1)の染料に変えてC.I.アシッドレッド35にした以外は同様にしてインク11とした。
【0055】
〔比較例2〕
実施例4で具体例(III−2)の染料に代えアシッドレッド289を使用した以外は同様にしてインク12とした。
【0056】
〔比較例3〕
実施例1で具体例(II−1)の染料に変え下記構造式の染料を用い、水酸化アンモニウムに変えてpHを調整した以外は同様にしてインク13とした。
【化18】
Figure 0003620097
【0057】
〔比較例4〕
実施例6で(IV−1)の染料のボロン酸基に変えてカルボン酸基とした染料を用いた以外は同様にしてインク14とした。
【0058】
次に上記実施例1〜10および比較例1〜4について下記の試験を行った。
1)画像の鮮明性
サーマルインクジェット方式のノズル径45μm、300dpiのノズルを有するインクジェットプリンターおよび積層PZTを液室流路の加圧に使用したノズル径33μm、300dpiのノズルを有するインクジェットプリンターにて印字を行い、2色重ね部境界の滲み、画像滲み、色調、濃度を目視により総合的に判断した。印字用紙は市販の再生紙、上質紙、ボンド紙の3種に印字した。いずれの紙でも画像が鮮明で、色調がよく、滲みのないものを○、画像に若干滲みがあり、色調も若干よくないものを△、画像が鮮明でなく、色調も悪いものを×とした。
2)画像の耐水性
画像サンプルを30℃の水に1分間浸漬し処理前後の画像濃度の変化をマクベス濃度計で測定し、下記式にて耐水性(耐色率%)を求めた。
【数1】
Figure 0003620097
いずれの紙でも20%以下となったものを○、30%未満を△、30%以上を×とした。
3)画像の乾燥性
印字後の画像に一定条件で濾紙を押しつけインクが濾紙に転写しなくなるまでの時間を測定した。
いずれの紙でも10秒以内で乾燥した場合に○と判定し、それ以上を×とした。
4)保存安定性
各インクをポリエチレン容器に入れ、−20℃、5℃、20℃、70℃でそれぞれの条件下で3ケ月保存し、保存後の表面張力、粘度および沈殿物析出の有無を調べた。どの条件で保存しても物性の変化がないものを○とした。
5)印字休止時の信頼性
図2のヘッドを有するプリンタ動作中にキャップ、クリーニング等が行なわれないでどれだけの印字、休止しても復帰できるかを調べ、どれだけの時間(秒)で噴射方向がずれるか、あるいは吐出液滴の重量が変化するかでその信頼性を評価した。以上の特性評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
Figure 0003620097
【0060】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば次の効果が得られる。
記第に記載した構成によれば、従来にないボロン酸基を有したマゼンタ染料を用いることにより普通紙に高彩度、高色調で滲みの少ないカラー画像を記録をすることができ、また、優れた耐水性が得られる。
上記第に記載した構成によれば、従来にないボロン酸基を有したシアン染料を用いることにより普通紙に高彩度、高色調で滲みの少ないカラー画像を記録をすることができ、また優れた耐水性が得られる。
上記第に記載した構成によれば、上記染料の溶解安定性を得るのに好適な染料の対イオンの態様を示すことにより保存安定性、吐出安定性等の信頼性に優れたインクジェット用水性インクが得られる。
上記第に記載した構成によれば、特定のアニオン系活性剤を用いることにより表面張力を50mN/m以下とすることにより紙表面に対する濡れ性が改良され、かつ、特定の水溶性染料を用いることによりインクジェット記録用として諸特性を満足し、乾燥性に優れ、かつ、画質の劣化の改良された水性インク組成物を得ることができる。
上記第に記載した構成によれば、該界面活性剤の構造を特定することにより優れた乾燥性を有し、かつ、滲みの少ないインク組成物を提供でき、また、この対イオンを特定することにより低温での保存安定性、吐出安定性を得ることができる。
上記第に記載した構成によれば、特定のノニオン系活性剤を用いることにより表面張力を50mN/m以下とすることにより紙表面に対する濡れ性が改良し、特定の水溶性染料を用いることによりインクジェットとして諸特性を満足し、乾燥性に優れ、かつ、画質劣化の改良された水性インクを得ることができる。
上記第に記載した構成によれば、特定のノニオン系活性剤を用い、これとともに尿素、またはヒドロキシエチル尿素、或いはジヒドロキシエチル尿素を用いることにより染料との相互作用を調整し浸透性および保存安定性に優れた水性インクを得ることができる。
上記第に記載した構成によれば、pHを6以上に調整することにより長期印字休止後や連続噴射時でも安定して吐出可能な物性を与えるインクジェット用インクが得られる。
上記第に記載した構成によれば、いわゆる普通紙とインクジェット用コート紙のいずれに対しても良好な濡れ性を示し、浸透速度が速く滲みが少ない画像を形成でき、カラー画像の色再現性の高い記録方法を得ることができる。また、OHPにおいても優れた色再現性を示す。

Claims (9)

  1. 少なくとも水溶性染料および界面活性剤を含有する水性インクにおいて、該染料が、該染料の遊離酸がアゾ結合を介することなく結合された式(I)で表わされる部分を有するものであって、下記式(II)で表わされる化合物および/または下記式(III)で表わされる化合物であることを特徴とする水性インク。
    Figure 0003620097
    Figure 0003620097
    Figure 0003620097
    (式(II)および(III)において、Mはアルカリ金属、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミン、R、Rは水素、アルキル基またはハロゲンを表す。l、mは0または1を表わし、同時に0にならない。)
  2. 少なくとも水溶性染料および界面活性剤を含有する水性インクにおいて、該染料が、該染料の遊離酸がアゾ結合を介することなく結合された式(I)で表わされる部分を有するものであって、下記式(IV)で表わされる化合物および/または下記式(V)で表わされる化合物であることを特徴とする水性インク。
    Figure 0003620097
    Figure 0003620097
    (式(IV)において、x≧1であり、xとyは、1<x+y≦4の範囲にあり、ZはH、Cu、Ni、FeまたはCoを表す。また、Mはアルカリ金属、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンを表す。)
    Figure 0003620097
    (式(V)において、x≧1であり、xとyは、1<x+y≦8の範囲にあり、ZはH、Cu、Ni、FeまたはCoを表す。また、Mはアルカリ金属、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンを表す。)
  3. 請求項または記載の水性インクにおいて、染料の対イオンがNa、Liまたは下記一般式(VI)で示される第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンであることを特徴とする水性インク。
    Figure 0003620097
    (式(VI)において、Xは窒素またはリン、R〜Rは水素、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはハロゲン化アルキル基を表す。)
  4. 請求項1、2または3記載の水性インクにおいて、界面活性剤として式(VII)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩または式(VIII)で示されるジアルキルスルホ琥珀酸塩を添加し表面張力を50mN/m以下とすることを特徴とする水性インク。
    Figure 0003620097
    (式(VII)において、R7は炭素数6〜14の分岐してもよいアルキル基、mは3〜12、Mはアルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンを表す。)
    Figure 0003620097
    (式(VIII)において、R8は炭素数5〜7の分岐したアルキル基、Mはアルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンを表す。)
  5. 請求項記載の水性インクにおいて、式(VII)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩または式(VIII)で示されるジアルキルスルホ琥珀酸塩の対イオンがNa、Liまたは上記一般式(VI)で示される第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムまたはアルカノールアミンであることを特徴とする水性インク。
  6. 請求項1、2または3記載の水性インクにおいて、界面活性剤として下記式(IX)で示される化合物または下記式(X)で示される化合物を添加し表面張力を50mN/m以下とすることを特徴とする水性インク。
    Figure 0003620097
    (式(IX)において、Rは分岐してもよい炭素数6〜14のアルキル基、kは5〜12を表す。)
    Figure 0003620097
    (式(X)において、m、nは0〜40を表す。)
  7. 請求項記載の水性インクにおいて、尿素、またはヒドロキシエチル尿素およびジヒドロキシエチル尿素から選ばれる尿素誘導体を添加することを特徴とする水性インク。
  8. 請求項1、2、3、4、5、6または7記載の水性インクにおいて、pHを6以上11以下にしたことを特徴とする水性インク。
  9. 請求項1〜記載の水性インクのいずれかを熱エネルギーまたは機械的エネルギーにより微小な液滴として飛翔させ、該飛翔させた液滴をステキヒトサイズ度が3秒以上の被記録材に付着させることを特徴とする画像形成方法。
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