JP3613669B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関し、詳細にはフィルタ内の隔壁を排気ガスが通過するウォールスルー型のハニカムフィルタを用いた排気浄化装置において、触媒物質の分布を排気ガスの流れに応じて変化させたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンの排気ガス中には、NOx とパーティキュレートが多く含まれるので、排気浄化ではこれらを取り除く必要がある。
【0003】
パーティキュレートを除去するものとしては、ディーゼルパーティキュレートフィルター(以下、DPF)が知られている。
これはディーゼルエンジンの排気通路に配置され、多数のセル(貫通孔)の両端のうちの一方において交互にプラグで栓詰めがされ、排気ガスの入口端において栓詰めされているセルは出口端では開放され、逆に入口端で開放されているセルは出口端で栓詰めされている構造である。またこれは互いに隣り合うセルの隔壁には、排気ガスは通過できるがパーティキュレートは通過できない程度の微細な孔が形成されており、隔壁を排気ガスが通過するいわゆるウォールスルー型のものである。
【0004】
このDPFに排気ガスが流入すると、入口端が開放されているセルに流入した排気ガスは必ず隔壁を通過するため、この隔壁上でパーティキュレートが捕集される。捕集されたパーティキュレートはDPFに担持させた触媒の作用によって自己燃焼して除去される。
【0005】
また排気ガス中のNOx を除去するためのNOx 吸収剤を、前記DPFに担持させた例として、特開平9−125931号公報に開示された排気ガス浄化装置がある。
【0006】
これはNOx 吸収剤を担持させても排気ガスが隔壁を通過する際の圧力損失を増大させずに、NOx 吸収機能とパーティキュレート捕集機能の双方を発揮するものであり、NOx 吸収剤をDPF形成材料に担持させておき、この材料を用いてDPFを形成するものである。このようにしてNOx 吸収剤を、DPFの隔壁表面及び隔壁内の排気ガスが通過する細孔の表面に担持させるものである。
【0007】
一方、NOx 吸収剤のNOx 吸収効率が低下したときは、排気ガスの流入を遮断してNOx 吸収剤に還元剤を供給し、NOx 吸収剤から吸収したNOx を放出させるとともに、この放出されたNOx の還元浄化をする。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のDPFでは、NOx 吸収剤等の触媒物質は全体に均一に分布しており、このNOx 吸収剤にNOx が吸収される。
【0009】
しかし、リッチスパイク制御により供給されたNOx の還元剤は、排気ガスの流れる方向の上流側から下流側に向かって、また隔壁の排気ガスの流入側から反対側に向かい隔壁を通過して拡散し、その濃度は次第に減少する。したがって全体に均一に分布したNOx 吸収剤と、供給される還元剤の濃度が適切に合致せず、効率的な浄化効果が得られない問題があった。すなわちNOx 吸収剤が多くても還元剤が少なく、反対にNOx 吸収剤が少なく、還元剤が多いといった状況が発生している。
【0010】
またウォールスルー型触媒の表面に担持され、触媒作用を発揮するパラジウム(Pd)またはパラジウム+白金(Pt)等の貴金属についても、排気ガスの上流側と下流側、及び隔壁を排気ガスが通過する際に隔壁の表側と裏側に、均一に貴金属が分布しているよりは、排気ガスの流入側に最も多く貴金属が分布していることが望ましい。なぜならかかる触媒の上流側または排気ガスの流入側には、反対の下流側または排気ガスの流出側よりも多く排気ガス中の煤やSOF(Soluble Organic Fraction)等の粒子状物質(以下、PMという)が溜まる。よって当該部分に多く貴金属が分布していれば、これらを効率よく酸化、除去することができるからである。
【0011】
本発明は上述のような事情に鑑みてされたものであり、触媒物質と浄化される物質、及び還元剤の量が均衡を保つようにして、無駄のないきわめて効率的な浄化ができる排気ガス浄化装置を得ることを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題の達成のため本発明は、多数のセルが形成され互いに隣り合うセルの隔壁に、排気ガスが通過できる微細な孔が形成されたハニカムフィルタを備え、このハニカムフィルタの前記隔壁内部への触媒物質を、該隔壁を通過する排気ガスの流入側の担持量がその流出側に比較して多くなるように分布させたことを特徴とする。
【0013】
前記隔壁の表面への触媒物質を、前記ハニカムフィルタへの排気ガスの入口端から出口
端に向かってその担持量が減少するように分布させることが好適である。また前記触媒物質は、パラジウム(Pd)またはパラジウム+白金(Pt)、ロジウム(Rh)等の貴金属、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類、ランタン(La)、イットリウム(Y)のような希土類から選ばれた少なくとも一つを例示することができる。
【0014】
本発明の浄化装置では、触媒物質として上記の一つ、または2つ以上について担持量が変化するように分布させることができる。
本発明の排気浄化装置によれば、ハニカムフィルタの隔壁内で、排気ガスの流れにしたがって上流側から下流側にかけて触媒物質の担持量を大から小に変化するように分布させたので、排気濃度が濃くPM等が多く存在する上流側でより活発な排気浄化がされる。
【0015】
またNOx 吸収剤についても上流側と下流側で分布を変化させ、還元剤が上流側から下流側に向かって次第に濃度が低くなることに一致させたので、還元剤の供給に見合ったNOx 吸収剤が担持される。NOx の還元浄化には十分な還元剤が存在していることが望ましいが、本発明の装置によればNOx が多く存在する個所には濃度の高い還元剤が作用することになり、全体としてバランスよいNOx の還元、浄化がされる。
【0016】
以上のようにすれば、従来と同量の触媒物質を使用した場合でも、浄化作用がより優れたものとなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明をDPFに適用した場合について説明する。図1はDPF1の断面図であり、(a)はその正面図、(b)はその横断面図である。このDPF1は多孔質セラミックからなるが、その他、従来から使用されている各種の触媒担体、例えばアルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、コーディエライト、層状酸化物等により形成することができる。
【0018】
このDPF1は全体が円筒形であり、内部が多数のセル(貫通孔)3、4に区切られたハニカム状となっている。これらのセル3、4の両端のうち一方において交互にプラグ2で栓詰めがされ、排気ガス6の入口端において栓詰めされているセル3は出口端では開放され、逆に入口端で開放されているセル4は出口端で栓詰めされている構造である。また互いに隣り合うセル3、4の隔壁5には、排気ガスは通過できるがパティキュレート(粒子状物質のこと。以下、PMという)は通過できない程度の微細な孔が形成されており、隔壁5を排気ガス6が通過する。
【0019】
排気ガス6が矢印で示すように、図1(b)において左から右に向かって流れると、この排気ガス6は第2通路8から隔壁5を通過して第1通路7に流入し、下流側に流れる。このとき、排気ガス6中のPMを多孔質セラミックによって捕集し、PMが大気へ放出されるのを防止する。
【0020】
このDPF1の第1通路7および第2通路8の壁面には、白金(Pt)及びNOx 吸収剤が担持されている。NOx 吸収剤としては、例えばカリウム(K)、ナトリウム(Na),リチウム(Li)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類、ランタン(La)、イットリウム(Y)のような希土類から選ばれた少なくとも一つからなるものが使用できる。
【0021】
これらのNOx 吸収剤及び白金(Pt)からなる触媒物質は、図2(a)、(b)に示すように、その担持量が排気ガスの入口端10において多く、出口端11に向かって減少するように分布している。すなわちこの例では、入口端10では触媒物質が多く存在し、出口端11に向かって次第に減少して、出口端11では入口端10に比較して約1/3程度になっている。この触媒物質の分布の変化量は特に制限されるものではない。
【0022】
また前記触媒物質は、DPF1の隔壁5にも担持されるが、図3(a)、(b)に示すように、排気ガス6が通過する際の排気ガスの流込側12に触媒物質の担持量を多く分布させ、その反対側である流出側13に向かって減少するように分布している。隔壁5の内部では触媒物質が流入側12が多く、流出側13が少なくなるようにその担持量を変化させている。なお、隔壁5内部の担持量の変化とは別に、隔壁5の表面にはDPF1の入口端10から出口端11に向かって減少するように担持されている触媒物質14が存在する。
【0023】
このような構造のDPF1は、PMの捕集、NOx の吸収及び排気ガス内のHC及びCOを酸化して、排気ガスを浄化することが可能であるが、その浄化の働きは、入口端10で多くなり出口端11で少なくなる作用と、隔壁5の流入側12で多くなり流出側13で少なくなる作用が組み合わされたものとなる。
【0024】
すなわち排気ガスが拡散していく過程において、ガス濃度が高い入口端10及び流入端12で浄化作用が大きく、反対に出口端11及び流出端13で浄化作用が小さくなる。
【0025】
また前記NOx 吸収剤は流入排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOx を吸収し、流入排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOx を放出するから、NOx 還元剤の濃度が高い部分でNOx の放出と還元が多く行われ、反対に還元剤の濃度が低くなるにつれ、NOx の放出と還元が少なくなる。
【0026】
以上のようなDPF1の製造は、例えば次のような工程を経て行うことができる。
先ず成形したDPF1の全体を、セル3,4についてプラグによる栓をすることなく、入口端10が下方になるように白金の溶液中に浸けて、出口端11側を上方にして溶液中から引き揚げる。このとき引き揚げ速度を次第に遅くなるようにコントロールし、出口端11から入口端10側に向かうにつれ、溶液中に浸けられている時間が長くなるようにする。このようにすれば入口端10側に白金(Pt)が多く付着し、出口端11に向かってその量が減少するDPF1が得られる。
【0027】
次にNOx 吸収剤の溶液に、前記DPF1を同様に浸けて、出口端11側を上方にして溶液中から引き揚げ、上記と同様にNOx 吸収剤を分布が変化するように担持させる。
【0028】
その後、入口端10の所定のセル3の入口を栓詰めして、入口端10側が下方となるように白金(Pt)の溶液に浸ける。このとき出口端11側からは溶液が入り込まないようにする。
【0029】
次に出口端11側を上方にして溶液中から引き揚げる。引き揚げ速度は次第に遅くなるようにコントロールし、出口端11から入口端10側に向かうにつれ、溶液中に浸けられている時間が長くなるようにする。このようにすれば第1通路8に溶液が入り込み、隔壁5の排気ガスの流入側12から溶液が含浸するので、流入側12に白金が多く含浸し、第2通路7には溶液が入り込まないので流出側13に向かって白金の含浸が少なくなる。
【0030】
またNOx 吸収剤も同様の方法によって含浸させることができる。
次に、本発明のDPF1を使用する内燃機関の排気浄化装置について説明する。
【0031】
ディーゼルエンジン15には、吸気側に吸気通路16が、また排気側に排気通路17がそれぞれ配置されている。吸気通路16内には吸気絞り弁18が設けられ、この吸気絞り弁18は通常時は全開しており、後述のようにNOx 吸収剤の再生を行う際に閉弁される。この閉弁時にはエンジン15の吸入空気量が絞られ、NOx 吸収剤に流入する排気流量が低減する。これにより排気中の酸素を消費してNOx 吸収剤雰囲気の酸素濃度を低下させるために必要な還元剤の量が低減される。
【0032】
また吸気通路16には吸気絞り弁18が設けられ、この吸気絞り弁18の絞りは、ソレノイド及び負圧アクチュエータ等の適宜な形式のアクチュエータ19を駆動することで調整される。
【0033】
排気通路17の途中には、DPF1が配置される。DPF1の上流側の排気通路17には、還元剤を供給するための還元剤供給装置21が設けられている。この実施の形態では還元剤としてディーゼルエンジン15の燃料が使用されており、還元剤供給装置21はエンジン燃料系統から供給された燃料を排気通路17内に霧状に噴射するノズルを備えている。
【0034】
DPF1と還元剤供給装置21との間の排気通路17には、排気温センサ22が配置され、この排気温センサ22の検出信号は電子制御ユニット(ECU)20に入力される。ECU20は、CPU(中央演算装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、入出力ポートを双方向バスで接続した公知のディジタルコンピュータからなり、燃料噴射量制御等のエンジンの基本制御の他に、NOx 吸収剤の再生、PMの燃焼等の制御をする。これらの制御のために、ECU20は、吸気絞り弁18を駆動するアクチュエータ19、及び還元剤供給装置21を制御して、吸気絞り弁18の開閉と還元剤供給装置21からの還元剤の供給の調節を行う。
【0035】
上述のDPF1を機関排気通路内に配置すれば、DPF1に担持されたNOx 吸収剤がNOx の吸放出作用を行う。NOx 吸収・還元は、図5に示したようなメカニズムに基づくものと考えられている。このメカニズムは、担体上に白金Pt及びバリウムBaを担持させた場合であるが、他の貴金属,アルカリ金属,アルカリ土類,希土類を用いても同様のメカニズムとなる。
【0036】
すなわち、流入排気ガスのリーンの状態が進行すると、流入排気ガス中の酸素濃度が増大し、図5(A)に示されるように、増大した酸素O2 はO2 − またはO2−として白金Ptの表面に付着する。このO2 − またはO2−と流入排気ガス中のNOが反応してNO2 となる(2NO+O2 →2NO2 )。このようにして生成されたNO2 の一部は、白金Pt上でさらに酸化されながら、NOx 吸収剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合する。その結果、図5(A)に示すように硝酸イオンNO3 − としてNOx 吸収剤内に拡散される。以上のようにしてNOx がNOx 吸収剤内に吸収される。
【0037】
流入排気ガス中の酸素濃度が高い間は、白金Ptの表面でNO2 が生成され、NOx 吸収剤の吸収能力が飽和するまでは、NO2 はNOx 吸収剤内に吸収され続けて硝酸イオンNO3 − が生成される。
【0038】
これに対して流入排気ガス中の酸素濃度が低下してNO2 の生成量が低下すると、反応が逆方向(NO3 − →NO2 )に進み、NOx 吸収剤内の硝酸イオンNO3 − がNO2 としてNOx 吸収剤から放出される。すなわち、流入排気ガス中の酸素濃度が低下するとNOx 吸収剤からNOx が放出されることになるが、流入排気ガスのリーンの度合いが低いときは、流入排気ガス中の酸素濃度が低下する。
【0039】
他方、流入排気ガスの空燃比をリッチにすると、HC,COは白金Pt上の酸素O2 − またはO2−と反応して酸化される。また流入排気ガスの空燃比がリッチであると流入排気ガス中の酸素濃度が極度に低下するため、NOx 吸収剤からNO2 が放出され、このNO2 は図5(B)に示されるように未燃のHC,COと反応して還元浄化される。このようにして白金Ptの表面にNO2 が存在しなくなるとNOx 吸収剤から次々とNO2 が放出される。
【0040】
したがって流入排気ガスの空燃比をリッチにすると、短時間のうちにNOx 吸収剤からNOx が放出されて還元浄化される。
この実施の形態では、ディーゼルエンジンが使用されているため通常運転時の排気空燃比はリーンであり、NOx 吸収剤は排気中のNOx を吸収する。また、DPF1の上流側の排気通路17に還元剤が供給されると、このDPF1を通過する排気ガスの空燃比はリッチになり、NOx 吸収剤からのNOx の放出と還元がされる。
【0041】
なお、ここでいう排気の空燃比とはNOx 吸収剤の上流側の排気通路17とエンジン燃焼室または吸気通路に供給された空気と燃料との比率をいう。したがって排気通路17に空気や還元剤が供給されないときは、排気空燃比はエンジンの運転空燃比(エンジン燃焼室内の燃焼空燃比)に等しくなる。
【0042】
また、本発明で使用する還元剤は、排気中で炭化水素や一酸化炭素等の還元成分を発生させるものであればよく、水素、一酸化炭素等の気体、プロパン、プロピレン、ブタン等の液体又は気体の炭化水素、ガソリン、軽油、灯油等の液体燃料等が使用できる。ここでは貯蔵、補給等の際の煩雑さを避けるため前述のようにディーゼルエンジン15の燃料である軽油を還元剤として使用する。
【0043】
次に図6に基づいて本装置の動作を説明する。図6はNOx 吸収剤の再生とDPF1に捕集されたパティキュレートの燃焼の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0044】
このルーチンは、ECU20により一定時間毎の割込みによって実行される。図6を参照すると、先ずステップ40でNOx 吸収剤からのNOx の放出、還元浄化操作(以下「再生操作」という)の実行条件が成立したか否かを判定する。NOx 吸収剤再生開始条件は、例えば、減速時であって、NOx 吸収剤が活性化温度以上で、かつ前回再生を実行してから所定時間以上が経過している場合等である。NOx 吸収剤の再生開始条件が成立していないと判定されると、ステップ42に進み吸気絞り弁18が開弁され、ステップ44で還元剤供給装置21からの燃料供給が禁止される。
【0045】
一方、ステップ40でNOx 吸収剤の再生開始条件が成立したときはステップ46に進み、NOx 吸収剤の再生開始条件が成立した時からの経過時間Tが、予め定められた第1の時間T1より小さいか否か判定される。ここで第1の時間T1は、NOx 吸収剤を再生するのに必要な時間である。T<T1 のときはステップ48に進み、吸気絞り弁18が閉弁される。これによってDPF1に流入する排気ガス流量が減少する。
【0046】
次いで、ステップ50で、還元剤供給装置21から燃料が供給される。供給された燃料はNOx 吸収剤の触媒作用によって燃焼し、排気ガス中の酸素が消費される。このためDPF1内にある排気ガス中の酸素濃度が低下し、排気ガスの空燃比はリッチとなる。するとNOx 吸収剤からNOx が放出され、この放出されたNOx が還元浄化される。
【0047】
他方、ステップ46でT≧T1 と判定されたとき、すなわちNOx 吸収剤の再生が完了したと判定された場合はステップ52に進み、吸気絞り弁18が開弁する。これによって多量の排気ガスがDPF1内に流入する。次いでステップ54に進み、経過時間Tが予め定められた第2の時間T2 より小さいか否かが判定される。ここでT2 はT1 より大きい値であり、T2 −T1 はDPF1に捕集されたPMが着火するのに要する着火時間である。T<T2 のとき、すなわち着火時間内であるときは、ステップ56に進んで還元剤供給装置21から着火用の燃料が供給されて燃焼する。これによって、DPF1に捕集されたPMが着火、燃焼する。
【0048】
なお、図示しないがDPF1の上流側に電気ヒータ等の補助的加熱手段を設け、DPF1を加熱するようにすれば、PMの着火が促進される。他方、ステップ54でT≧T2 と判定された場合、すなわち、PMの着火が完了して燃料を供給しなくてもPMが燃焼するときは、ステップ58に進み還元剤供給装置21からの燃料供給が禁止される。また、上述の電気ヒータ等の補助的加熱手段を設けている場合は、PMの燃焼が開始した後は加熱を停止する。
【0049】
この実施の形態に示す排気浄化装置によれば、DPF1中では、排気ガスの流れにしたがって上流側から下流側にかけて貴金属、NOx 吸収剤からなる触媒物質の担持量が大から小に変化するように分布しているので、排気濃度が濃くPM等が多く存在する入口端10で、より活発にこれらを酸化、除去する排気浄化が行われる。他方、PM等が少なくなる出口端11ではPM等が少ないので、それに対応した量の触媒物質によって酸化、除去が行われる。
【0050】
またNOx 吸収剤についても上流側と下流側で分布を変化させ、還元剤が上流側から下流側に向かって次第に濃度が低くなることに対応しているため、NOx 吸収剤に吸収されているNOx の量と還元剤の量がバランスする。
【0051】
さらに排気ガスが通過する隔壁5内でも、触媒物質の分布を排気ガスの流入側に多く流出側では少なくしたので、隔壁の表面付近に多く溜まるPMに多くの触媒物質が作用し、また隔壁の表面付近に多く吸収されるNOx に対しては、濃度の高い還元剤が供給されることになる。
【0052】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、浄化すべき物質の存在量に対応するように触媒物質を分布させたので、少ない触媒物質でも浄化能力が高くなり、きわめて効率的な排気ガスの浄化が可能な排気ガス浄化装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】DPFの構造を示す図であり、(a)はその正面図(b)はその断面図である。
【図2】(a)DPFにおける触媒物質の分布状態を示す概念図、(b)入口端から出口端にかけての触媒物質の担持量の変化を示すグラフ図である。
【図3】(a)DPFの隔壁内における触媒物質の分布状態を示す概念図、(b)隔壁の流入側から流出側にかけての触媒物質の担持量の変化を示すグラフ図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図である。
【図5】NOx の吸放出作用を説明するための概念図である。
【図6】NOx 吸収剤の再生とパティキュレートフィルタの再生操作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 DPF(パティキュレートフィルタ)
5 隔壁
7 第1通路
8 第2通路
10 入口端
11 出口端
12 流入側
13 流出側
15 ディーゼルエンジン
16 吸気通路
17 排気通路
18 吸気絞り弁
20 CPU
21 還元剤供給装置
Claims (4)
- 多数のセルが形成され互いに隣り合うセルの隔壁に、排気ガスが通過できる微細な孔が形成されたハニカムフィルタを備え、このハニカムフィルタの前記隔壁内部への触媒物質を、該隔壁を通過する排気ガスの流入側の担持量がその流出側に比較して多くなるように分布させたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
- 前記隔壁の表面への触媒物質を、前記ハニカムフィルタの排気ガスの入口端から出口端に向かってその担持量が減少するように分布させたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記触媒物質はNOx吸収剤である請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記NOx吸収剤に吸収されたNOxを放出・還元させる際に、排気ガス中に還元剤を供給する還元剤供給装置は、前記ハニカムフィルタの上流側の排気通路に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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