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JP3694584B2 - 表面修飾骨補綴部材およびその製造方法 - Google Patents

表面修飾骨補綴部材およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、老齢、疾病、事故などによって失われた骨や関節の機能を再建するために用いる骨補綴部材に関し、特に、骨のイングロースによる骨との強固な結合を目的とし、三次元多孔体を表面に備えた表面修飾骨補綴部材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記表面修飾骨補綴部材として従来より、骨との接触部にビーズを具備したものが実用化されており、このような骨補綴部材では、補綴部材に直接セラミックビーズを、同材質のスラリー或いはガラスを使って焼結固着或いは融着されており、ビーズ間に形成された細孔に、骨が増生侵入(イングロース)し、良好な骨との固定が得られることが知られている。また、同タイプの骨補綴部材として、特開平1−300947号はセラミック皿のくぼみ中に、同材質のセラミックスラリーとビーズを流し込み焼結固着したビーズ担持体を別途に製造し骨補綴部材本体に装着したものを記載している。
【0003】
また、特開平1−223970号は骨欠損部補綴用の代替骨において、該代替骨に形成された貫通孔あるいは凹部にベース部材を嵌着させて構成すると共に、前記ベース部材の残存自家骨との接触側表面にアパタイトなどの生体活性無機材料によって被覆されているポーラス層を設けることが記載されている。
【0004】
【従来技術の課題】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。すなわち、表面にポーラス構造を設けた生体補綴部材であって、ポーラス内部に対し被覆等の処理を行わないものでは、新生骨のイングロースが深奥部まで到達するのに時間がかかり、また、新生骨のイングロースが深奥部まで到達しても、空隙が多く残る脆弱な状態となることが多いため、大きな剪断強度がかかる部位への適用が難しかった。また、ポーラス内部に対しアパタイト被覆等の処理を行う前記従来技術では、新生骨のイングロースの速度は早まるけれど、その骨量としては、期待されていたほどの向上が見られず、大きな剪断強度がかかる部位への適用には不十分であった。
【0005】
そこで、本発明は、新生骨のイングロースが早期かつその空隙占有密度が大きくなるような三次元多孔体を備え、これにより、大きな剪断強度がかかる部位に対しても安全に適用することができる表面修飾骨補綴部材を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明者は、新生骨生成およびそのイングロースのメカニズムを詳細に研究した結果、活発な骨生成を促し空隙占有密度を高くするためには、骨原性の粉化間葉系細胞が空隙内全域へ進入し且つ貯留するとともに骨の生成を促し骨と化学的に被着する生体親和性材を含有する足場を存在せしめることが有効であることを見出した。そして、そのような足場の構成材として、生体吸収性のカルボキシルメチルキチン(以下、CMキチンと略称する)が最適であり、CMキチンとリン酸カルシウム材料の顆粒を混合材を用いることにより上記課題が解決されることを確認し、本発明に到った。
【0007】
すなわち、本発明は、線材メッシュ、もしくは複数のセラミックビーズが集合してなる三次元多孔体を備え、前記線材メッシュや前記三次元多孔体は、カルボキシメチルキチンとリン酸カルシウム系材料との混合材が充填されている空隙を有することを特徴とする表面修飾補綴部材を提供せんとするものである。
【0008】
また、本発明は上記表面修飾骨補綴部材の製造方法として、線材メッシュ、もしくは複数のセラミックビーズが集合してなる三次元多孔体所望部位に固着された骨補綴部材を、リン酸カルシウム材料の顆粒を混和させたカルボキシルメチルキチン水溶液中に浸漬した後、急冷することを特徴とする表面修飾骨補綴部材の製造方法、および、上記三次元多孔体を、リン酸カルシウム材料の顆粒を混和したカルボキチルメチルキチン水溶液中に浸漬した後、急冷し、この多孔体を骨補綴部材の所望箇所に固着することを特徴とする表面修飾骨補綴部材の製造方法を提供せんとするものである。
【0009】
より具体的に、本発明の骨修復材は、次のような方法で作製することが可能である。まず、カルボキシメチル化度50〜80%のCMキチン粉末を蒸留水に溶解し、粘性を持った水溶液を調製し、上記水溶液の重量にHAP顆粒あるいはTCP顆粒を混入した後、溶液中にHAP顆粒あるいはTCP顆粒が均一に分散するようにスターラーを用い十分に攪拌する。
【0010】
次に、CMキチン水溶液内に線材メッシュやビーズ結合体など生体用非吸収性材料からなる三次元多孔体、又は、該多孔体を表面の所望部位に具備した骨補綴部材を浸漬した後、これを引きあげて、さらに、液体窒素中へ滴下するなどして急冷する。その後、三次元多孔体、又は、これを表面の所望部位に具備した骨補綴部材を12時間〜24時間の範囲で凍結乾燥し、さらに、140℃〜160℃の範囲で12時間〜14時間の真空熱架橋を施す。なお、三次元多孔体単独で処理を行ったものについては、最後に、任意の方法で多孔体を骨補綴部材に固着する。ちなみに、上記製造方法における諸条件としては以下の範囲であることが好ましい。
【0011】
・CMキチン:CM化度40〜100%、重量平均分子量10万〜50万
脱アセチル化度40%以下
・HAP顆粒:粒径範囲50μm〜300μm
・TCP顆粒:粒径範囲10μm〜100μm
・CMキチン水溶液濃度:3重量%〜10重量%
・ポア径:10〜100μm
・リン酸カルシウム径化合物間の平均距離:50〜400μm
【0012】
【作用】
本発明の表面修飾骨補綴部材(以下、骨補綴部材と略称する)は表面に、線材メッシュやビーズ結合体など生体用非吸収性材料からなる三次元多孔体を具備してなり、さらに、該多孔体の空隙内にCMキチンとHAP,TCP,AWGCなどのリン酸カルシウムの顆粒との混合材を充填したものである。この混合材は、多数の微細孔を有しており、生体内の補綴箇所に於いてCMキチン中にリン酸カルシウム系材料の顆粒を保持した状態で、CMキチンの透過吸収が可能で各種細胞が貯留される環境を提供する。そして、この環境の下、リン酸カルシウム系材料の顆粒が新生骨形成の起因となり、CMキチンの分解吸収窩に経時的に新生骨が形成されていく。以上から、新生骨増生のスペース、占有率が大きく、効率的で天然骨の割合の多い骨生成および早期、深奥部までのイングロースが保障される。
【0013】
【発明の実施形態】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。
図1に本発明の実施形態としての骨補綴部材Fを示し、この骨補綴部材Fはくぼみ2aをもった皿2の該くぼみ2a内に複数のビーズ1aが集合してなる三次元多孔体としてのビーズブロック1を担持しており、上記ビーズブロック1の側を骨Bに対向させて補綴箇所に設置するものである。また、この骨補綴部材Fの上記くぼみ2a内にはビーズブロック1とともに、CMキチンスポンジ3が該ビーズブロック1の空隙内に充填されており、さらに、このCMキチンスポンジ3が、HAP,TCP,AWGCなどのリン酸カルシウムの顆粒を担持した構造となっている。
【0014】
上記CMキチンスポンジは、平均孔径10〜100μmのポア径範囲を有するスポンジ体で、また、CMキチンと平均粒径50〜300μmのリン酸カルシウムの顆粒とからなる混合体であって、上記顆粒を50〜400μmの平均間隔で存在せしめたものである。なお、上記CMキチンスポンジ3に含まれるリン酸カルシウムの顆粒は50〜300μmの範囲の異なるサイズのものが混在するため、上記ビーズブロック1の孔径は最小でも300μm以上である必要がある。
【0015】
また図2に示すように、剪断荷重(こすれ)を受ける領域に前記骨補綴部材Fを補綴する場合のCMキチンスポンジ3の高さhは前記くぼみ2aの深さdの77〜91%とすることが望ましい。これは、上記CMキチンスポンジ3が吸水によって高さ方向に1.1〜1.3倍の線膨張率を有していることから、生体内環境での吸水による膨潤がくぼみ2aの上端以下までに抑制するべく、乾燥状態に於ける、CMスポンジの修飾高さをくぼみ2aの深さdの77〜91%とすることが重要である。というのも、上記剪断荷重(こすれ)を受ける領域で、CMキチンスポンジ3の吸水膨潤がくぼみ2aを超える高さまで至ると、機械的な破損を生じせしめる恐れがあるためで、上記のような工夫は、このような危険を回避するためのものである。
【0016】
上記のように構成される骨補綴部材Fは、骨との接触面側の表面に設けたビーズブロック1の空隙内にCMキチンとHAP,TCP,AWGCなどのリン酸カルシウムの顆粒との混合材(CMキチンスポンジ3)を充填したものであり、この混合材が多数の微細孔を有する多孔体であるので、体液の透過吸収が可能で各種細胞が貯留される環境を提供する。そして、この環境の下、リン酸カルシウム系材料の顆粒が新生骨形成の起因となり、CMキチンの分解吸収窩に経時的に新生骨が形成されていく。以上から、新生骨増生のスペース、占有率が大きく、効率的で天然骨の割合の多い骨生成および早期、深奥部までのイングロースが保障される。
【0017】
次に、上記骨補綴部材Fの製造方法について説明する。
平均粒径約1μmのアルミナ粒子を有機バインダーを使って造粒し平均直径約2000μmのアルミナグリーンビーズ(未焼成ビーズ)を作り、800℃で仮焼してビーズ1を得た。次に平均粒径約1μmのアルミナ粉末を成型圧3t/cm2 の条件でCIP成型後、切削加工により、くぼみ2aをもった皿2を作り、これを1100℃で仮焼した。これら皿2、アルミナグリーンビーズを準備した後、次の手順で前記ビーズブロック1をくぼみ2a内に固着する。皿2のくぼみ2a中にビーズを3層となるように入れる。これに、平均粒径1μmのアルミナスラリーを流し込み、乾燥させ、1490℃で焼成する。以上により、ビーズブロック1をくぼみ2a内に形成する。この場合のアルミナ製のビーズ1aの平均粒径は焼く1600μm、気孔率は30〜40%、平均孔径は400〜500μmであった。
【0018】
続いて、次のような順序で、前記CMキチンスポンジの調整およびビーズブロック1内への充填を行った:
1) カルボキシメチル化度50〜80%のCMキチン粉末を蒸留水に溶解し、水溶液を3重量%の濃度に調製した
2) 上記水溶液の重量に対して1/5量のHAP等の顆粒を混入し、溶液中に顆粒が均一に分散するようにスターラーを用い十分に攪拌した。なお、粒径サイズ範囲は60〜150μm、CMキチン分子量分布範囲は10〜200万とした
3) 上記2)の混合溶液中にビーズブロック1を備えた皿2を浸漬する
4) 上記3)で溶液に浸漬した皿2を液体チッソ中に即時に投入し、急速冷凍する
5) 上記4)で冷凍した皿2を凍結乾燥した
6) 上記5)の乾燥物を140℃〜160℃の温度で、24時間、真空熱処理し、CMキチンを水難溶化(熱固定)熱架橋させた
このような製造方法でもって、前記皿2のくぼみ2a内に設置したビーズブロック3の空隙内にリン酸カルシウム系顆粒担持のCMキチンスポンジ3を充填してなる前記骨補綴部材Fを得ることができた。
【0019】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができることは言うまでもない。例えば、骨補綴部材の表面を修飾する多孔体は、ビーズブロックに限らず、ファイバーメッシュ等の他の形態のものであって良い。また、骨補綴部材は緻密体からなる下地に多孔体を設置するものに限らず、全体が多孔体から構成されるものであっても構わない。材質は、セラミックに限らず、金属や高分子材料であっても良く、要するに生体内で安全なものであれば任意に材料を選択することができる。さらに、製法については、多孔体を下地に固定してからCMキチンスポンジを充填する工程を行う方法に限らず、多孔体の空隙内にCMキチンスポンジを充填しておいてから下地に固定する方法であっても良い。
【0020】
【実施例】
150μm厚のアルミナ薄板に500μmの間隔で1mm径の貫通孔を規則的に形成し、その薄板を交互にずらして、上記貫通孔を三次元方向に連通させた骨補綴部材の複数個のテストピースを作製した。
【0021】
これらのテストピースを2群に分け、1群のみについて前記方法によりCMキチンブロックを充填した。すなわち、カルボキシメチル化度50〜80%のCMキチン粉末を蒸留水に溶解し、水溶液を3重量%の濃度に調製した。その後、上記水溶液の重量に対して1/5量のHAP等の顆粒を混入し、溶液中に顆粒が均一に分散するようにスターラーを用い十分に攪拌した。なお、粒径サイズ範囲は60〜150μm、CMキチン分子量分布範囲は10〜200万とした。さらに、混合溶液中にテストピースを浸漬してから、即時に、これを液体チッソ中に投入し、急速冷凍した。そして、凍結乾燥した乾燥物を140℃〜160℃の温度で、24時間、真空熱処理し、CMキチンを水難溶化(熱固定)熱架橋させた。
【0022】
このような処理を行ったものが実施例品であり、未処理のものは比較例品である。
【0023】
他方、家兎脛骨に10mm×15mm×厚さ2mmの凹部を形成し、該凹部に前記テストピースを埋入し、組織学的な分析と引き剥がし試験による骨との固定性の評価試験も実施した。組織学的な分析については、上記脛骨への埋入状態で、2週、4週、8週経過させ、それぞれの時点で上記家兎を屠殺して脛骨からテストピース及び周囲組織を同時に採取した。そして、これらをエタノール固定、脱水した後に樹脂包理し、薄切した切片をドレイジンブルー染色を施して組織標本を作製した。次に、この組織標本の顕微鏡写真を撮影し、得られた写真から骨修復材の固定性および骨修復能を観察した。その結果、実施例品は多量な骨が深部まで形成されていたのに対して、比較例品は、実施例品に比べて、骨量、深さともに明確に劣っていた。
【0024】
【表1】
Figure 0003694584
【0025】
また、通法に従い行った引き剥がし試験の結果を表1に示す。表1から明らかなように、引き剥がし荷重値においても比較例に比べて実施例品が顕著に優れていた。
【0026】
【発明の効果】
叙上のように、本発明の骨補綴部材は表面に、線材メッシュやビーズ結合体など生体用非吸収性材料からなる三次元多孔体を固着してなり、さらに、該多孔体の空隙内にCMキチンとHAP,TCP,AWGCなどのリン酸カルシウムの顆粒との混合材を充填したことから、生体内の補綴箇所に於いてCMキチン中に各種細胞が貯留される環境を提供し、そしてこの環境の下、リン酸カルシウム系材料の顆粒が新生骨形成の起因となり、CMキチンの分解吸収窩に経時的に新生骨が形成されていく。以上から、新生骨増生のスペース、占有率が大きく、効率的で天然骨の割合の多い骨生成および早期、深奥部までのイングロースが保障されるので、骨との結合力が大きいので、大きな剪断応力が掛かる部位にも安全に適用することができるという優れた効果を奏するものである。
【0027】
また、本発明の製造方法によれば、上記のような骨補綴部材を安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施形態の骨補綴部材の断面図である。
【図2】CMキチンスポンジの充填深さを示すための説明図である。
【符号の説明】
F 骨補綴部材
d 深さ
1 ビーズブロック(三次元多孔体)
1a ビーズ
2 皿
2a くぼみ
3 CMキチンスポンジ

Claims (2)

  1. 線材メッシュ、もしくは複数のビーズが集合してなる三次元多孔体を備え、前記線材メッシュや前記三次元多孔体は、カルボキシメチルキチンとリン酸カルシウム系材料との混合材が充填されている空隙を有することを特徴とする表面修飾補綴部材。
  2. 線材メッシュ、もしくは複数のビーズが集合してなる三次元多孔体所望部位に固着された骨補綴部材を、リン酸カルシウム材料の顆粒を混和させたカルボキルメチルキチン水溶液中に浸漬した後、急冷することを特徴とする表面修飾補綴部材の製造方法。
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