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JP3689444B2 - 液体組成物、インクセット及びこれを用いた画像形成方法と装置 - Google Patents

液体組成物、インクセット及びこれを用いた画像形成方法と装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、インクによるカラー画像の形成において生じるブリーディングを低減し、耐水性のある画像を得る技術に関し、とりわけインクジェット方式を利用した画像形成方法及びその装置、更には、これ等に適用する液体組成物及びインクセットに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インクの小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて記録を行うものである。特に、特公昭61−59911号公報、特公昭61−59912号公報、特公昭61−59914号公報において開示された吐出エネルギー供給手段として電気熱変換体を用い熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させる方法によれば、記録ヘッドの高密度マルチオリフィス化が容易に実現でき、高解像度、高品質の画像を高速で記録できる。
【0003】
しかしながら、従来のインクジェット記録に用いられるインクは一般に水を主成分とし、これに乾燥防止、目詰まり防止等の目的でグリコール等の水溶性高沸点溶剤を含有したものが一般的で、このようなインクを用いて普通紙に記録を行った場合、十分な定着性が得られなかったり、記録紙表面の填料やサイズ剤の不均一な分布によると推定される不均一画像が発生したりした。特にカラー画像を得ようとした場合には、複数の色のインクが紙に定着する以前に次々と重ねられることから、異色の画像の境界部分では色がにじんだり、不均一に混ざり合って(以下、この現象をブリーディングと呼ぶことにする)満足すべき画像が得られなかった。
【0004】
定着性を高める手段として特開昭55−65269号公報には、インク中に界面活性剤等の浸透性を高める化合物を添加することが開示されている。又特開昭55−66976号公報には揮発性溶剤を主体としたインクを用いることが開示されている。しかし、前者の方法ではインクの記録紙への浸透性が高まる結果、定着性、ブリーディングについてはある程度防止できるものの、インクとともに色材も記録紙の奥深くまで浸透してしまうために画像濃度、彩度が低下したりするなどの不都合が発生するほか、インクの横方向に対する広がりも発生し、その結果、エッジのシャープさが低下したり、解像度が低下したりする問題も発生した。一方、後者の場合には、前者の不都合に加え、記録ヘッドのノズル部での溶剤の蒸発による目詰まりが発生しやすく好ましくないものであった。
【0005】
さらに、上述した問題点を改善するために、記録インクの噴射に先立って記録媒体上に画像を良好にせしめる液体を付着させる方法が提案されている。
【0006】
例えば特開昭63−60783号公報には、塩基性ポリマーを有する液体を付着させた後、アニオン染料を含有するインクを記録する方法が開示されており、特開昭63−22681号公報には、反応性化学種を含む第1の液体と該反応性化学種と反応を起こす化合物を含む液体を記録媒体上で混合する記録方法が開示されており、更に、特開昭63−299971号公報には、1分子あたり2個以上のカチオン性基を有する有機化合物を含有する液体を付着させた後、アニオン染料を含有したインクを記録する方法が開示されている。又特開昭64−9279号公報には、コハク酸等を含有した酸性液体を付着させた後、アニオン性染料を含有したインクを記録する方法が開示されている。
【0007】
さらに特開昭64−63185号公報及び特開昭64−69381号公報には、染料を不溶化させる液体をインクの記録に先だって付与するという方法が開示されている。
【0008】
しかし上記いずれの方法も染料自体の折出により画像のにじみの抑制や耐水性を向上させようとするものであり、前述したカラーインク間のブリーディング抑制効果も不十分であり、又折出した染料が記録紙上で不均一に分布しやすいために記録紙のパルプ繊維に対する被覆性が悪く画像の均一感が低下することになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みて下記の5点の課題を解決するためになされたものである。すなわち普通紙に対するインクジェット記録を行う場合、
(1)良好な定着性を有しながら文字品位も良好であること、
(2)十分な画像濃度が得られ、ベタ画像の均一性が高いこと、
又、特に普通紙に対するカラー画像形成時において、
(3)ブリーディングを防止すること、
(4)色再現性が良好であり、高精細な画像が得られること、
(5)記録画像の耐水性を完全にすること、
である。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。
【0011】
すなわち、本発明は、アニオン性染料又はアニオン性化合物及び顔料を含むインクジェット用インクと共にインクジェット画像の形成に用いられるインクジェット用の液体組成物であって、インクジェット方式によって記録ヘッドから吐出される液体組成物において、該液体組成物が、少なくとも分子量1000以下のカチオン性物質及び分子量2000以上であって、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるノニオン性高分子物質とを併有し、該インクとの接触によって、該アニオン性染料又は該アニオン性物質を凝集させるものであることを特徴とする液体組成物である。
【0012】
又、本発明は、アニオン性染料又はアニオン性化合物及び顔料を含むインクジェット用インクと共にインクジェット画像の形成に用いられるインクジェット用の液体組成物であって、インクジェット方式によって記録ヘッドから吐出される液体組成物において、該液体組成物が、少なくとも分子量分布のピークが1000以下のカチオン性オリゴマーと分子量2000以上であって、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるノニオン性高分子物質とを併有し、該インクとの接触によって、該アニオン性染料又は該アニオン性物質を凝集させるものであることを特徴とする液体組成物である。
又、本発明は、アニオン性染料又はアニオン性化合物及び顔料を含むインクジェット用インクと共に記録媒体(但し、布帛であることは除く)上にインクジェット画像を形成するために用いられる液体組成物であって、該液体組成物が、少なくとも分子量1000以下のカチオン性物質及び分子量2000以上であって、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるノニオン性高分子物質とを併有し、該インクとの接触によって、該アニオン性染料又は該アニオン性物質を凝集させるものであることを特徴とする液体組成物である。
更に、本発明は、アニオン性染料又はアニオン性化合物及び顔料を含むインクジェット用インクと共に記録媒体(但し、布帛であることは除く)上にインクジェット画像を形成するために用いられる液体組成物であって、該液体組成物が、少なくとも分子量分布のピークが1000以下のカチオン性オリゴマーと分子量2000以上であって、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるノニオン性高分子物質とを併有し、該インクとの接触によって、該アニオン性染料又は該アニオン性物質を凝集させるものであることを特徴とする液体組成物である。
【0013】
又本発明は、上記の液体組成物と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、ブルー、グリーンの少なくとも一つのインクとを組み合わせたことを特徴とするインクセットであり、好ましくは上記液体組成物と、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のインクを含み、上記液体組成物と、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のインクを含み、前記インクがアニオン性化合物を含有し、そのアニオン性化合物が分子量1000以上の高分子であり、又はアニオン性化合物が界面活性剤であるインクセットである。
また本発明にかかるインクセットの他の態様は、所定の色を有するインクジェット用インクと、無色又は淡色のインクジェット用液体組成物とを含むインクセットであって、該インクジェット用インクと該インクジェット用液体組成物とは、記録媒体上にインクジェット法で互いに接触するように付与せしめてインクジェット画像を記録媒体上に形成するのに用いられるものであり、
該インクジェット用インクは、アニオン性染料又はアニオン性化合物及び顔料を含み、
該インクジェット用液体組成物は、カチオン性物質とノニオン性高分子化合物とを含み、
該インクジェット用液体組成物は、記録媒体上での該インクとの接触によって、該アニオン性染料又は該アニオン性物質を凝集させるものであることを特徴とする。
【0014】
更に本発明は、上記液体組成物を記録媒体の少なくとも画像形成領域に付着させる工程(A)と、少なくともアニオン性化合物を含有するインクをインクジェット方式により前記記録媒体に付与する工程(B)を含むことを特徴とする画像形成方法である。
【0015】
更には、上記インクセットとインクジェット手段とを有することを特徴とする画像形成装置、並びに、上記液体組成物の収納部及び吐出手段を有する第一の記録ユニットと、少なくともアニオン性化合物を含有するインクの収納部及び吐出手段を有する第二の記録ユニットとを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0016】
次に本発明の作用について述べる。
【0017】
本発明では、上述した液体組成物とインクが記録紙上あるいは記録紙に浸透した位置で混合する結果、反応の第一段階として液体組成物中に含まれている低分子カチオン性物質又はカチオン性オリゴマーとインクに使用しているアニオン性基を有する水溶性染料又は顔料インクに使用しているアニオン性化合物がイオン的相互作用により会合を起こし瞬間的に溶液相から分離を起こす。この結果顔料インクにおいては分散破壊が起こり、顔料の凝集体ができる。
【0018】
次に反応の第二段階として、上述した染料と低分子カチオン性物質の会合体又は顔料の凝集体が液体組成物中に含まれるノニオン性高分子物質により吸着される為に染料インクにおいては、会合で生じた染料の凝集体、又は、顔料の凝集体のサイズが更に大きくなり、記録紙の繊維間に隙間に入り込みにくくなり、その結果として固液分離した液体部分のみが記録紙中にしみこむことになり印字品位と定着性の両立が達成される。
【0019】
又、色材として顔料を用いる場合には、記録紙表面でインク中の顔料が凝集することで、隠蔽力が増加して、紙面における発色性及び画像濃度の向上が著しい。
【0020】
同時に上述したようなメカニズムにより生成した低分子カチオン性物質又はカチオン性オリゴマーとアニオン性染料、又は、顔料インク中のアニオン性化合物と顔料とノニオン性高分子物質とで形成される凝集体は粘性が大きくなり、液媒体の動きとともに移動することがないので、前述したフルカラーの画像形成時のように隣接したドットが異色のインクで形成されていたとしても互いに混じり合うようなことはなく、ブリーディングも起こらない。又、上記凝集体は本質的に水不溶性であり形成された画像の耐水性は完全なものとなる。
【0021】
【好ましい実施態様】
つぎに本発明の好ましい態様について述べ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
まず、液体組成物の第1の態様について述べる。
【0023】
本発明で述べる液体組成物に含有されるべき必須成分は、
(1)分子量1000以下の低分子カチオン性物質及び、
(2)分子量2000以上のノニオン性高分子物質、
である。
【0024】
又本発明で用いるインクは、
(3)少なくともアニオン性基を有する水溶性染料、
を含み、又、本発明で用いる別のインクは、
(4)顔料とアニオン性化合物、
を少なくとも含有する。
【0025】
上記物質の本発明における作用効果は上述したとおりであり、(1)の分子量1000以下の低分子カチオン性物質とインクに含まれる(3)の少なくともアニオン性基を有する水溶性染料、又は、顔料インク中のアニオン性化合物がイオン的相互作用により会合体を形成する。この会合体形成反応速度はきわめて速い必要がある。
【0026】
(1)成分の分子量1000以下(好ましくは100〜700)の低分子カチオン性物質の好ましい具体例を以下に列挙する。
【0027】
1級乃至2級乃至3級アミンの塩型の化合物、具体的にはラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等の他、第4級アンモニウム塩型の化合物、具体的にはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドニベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等があり、更に、ピリジニウム塩型化合物、具体的にはセチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド等、更には、イミダゾリン型カチオン性化合物、具体的には2−ヘプタデセニルーヒドロキシエチルイミダゾリン等があり、更に第二級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物、具体的にはジヒドロキシエチルステアリルアミン等、が好ましい例として挙げられる。
【0028】
さらに本発明では、あるpH領域においてカチオン性を示す両性界面活性剤も使用できる。
【0029】
より具体的には、アミノ酸型両性界面活性剤、RNHCH −CH COOH型の化物があり、ベダイン型の化合物、具体的にはステアリルジメチルベダイン、ラウリルジヒドロキシエチルベダイン等がある。もちろんこれらの両性界面活性剤を使用する場合にはそれらの等電点以下のpHになるように無色又は淡色の液体組成物を調整するか、記録媒体上でインクと混合した場合に該等電点以下のpHになるように調整するかのいずれかの方法をとる必要がある。
【0030】
以上低分子カチオン性化合物の例を挙げたが、本発明で使用することのできる化合物は必ずしもこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0031】
次に(2)成分の分子量2000以上のノニオン性高分子物質の本発明における作用及び効果については、上述した通り、液体組成物とインクの反応の第2段階として、上述した染料又は顔料インク中のアニオン性化合物と低分子カチオン性物質の会合体を分子中に吸着せしめ、会合で生じた染料の凝集体又は顔料の凝集体のサイズをさらに大きくして記録紙の繊維間の隙間に入り込みにくくすることにより、固液分離した液体部分のみを記録紙中にしみこませることで印字品位と定着性の両立を達成することにある。
【0032】
(2)成分の具体例としては、ノニオン性の水溶性高分子であるポリアクリルアド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコールが挙げられる。これらの高分子物質の分子量が2000以上であれば本発明を実施する際にその効果は十分であるが、一層好ましくは分子量が2000以上、10000以下の高分子物質である。
【0033】
尚、本発明における高分子物質の分子量とは、特に断らない限り、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィ)を使用して求めた重量平均分子量のことを指し、ポリエチレンオキサイド換算の分子量のことをいう。
【0034】
無色又は淡色の液体組成物中に含有されるこれらの成分の量としては、重量基準で0.05〜20重量%が好適な範囲であり、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲であるが、各々使用する物質の組み合わせにより、最適な範囲を決定する必要がある。又液体組成物中の、(1)成分の低分子カチオン性物質と(2)成分の高分子物質の混合割合は、重量基準で10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:5[(1):(2)]の範囲である。この割合が10:1を越えると、印字物の耐水性が低下しやすく、逆に1:10以下ではブリーディングの抑制が不十分で、画像のエッジシャープネスが低下しやすい。
【0035】
次に、第2の態様の液体組成物は、少なくともカチオン性物質を含む液体組成物であって、分子量分布のピークが1,000以下のカチオン性オリゴマーと、重量平均分子量2,000以上のノニオン性高分子物質とが含有されていることを特徴とし、好ましくは、更にカチオン性界面活性剤が含有される。
【0036】
本発明にかかる液体組成物の作用効果は上述した通りであり、液体組成物中に含まれる分子量分布のピークが1,000以下のカチオン性オリゴマーと、インク中に含まれているアニオン性化合物が、イオン的相互作用により先ず会合体を形成する。尚、この会合体の形成反応速度は極めて速い必要がある。
【0037】
本発明の液体組成物の構成成分について以下に説明する。本発明の液体組成物の必須成分である分子量分布のピークが1,000以下のカチオン性オリゴマーを形成する為のモノマーユニットの具体例を列挙すると、例えば、ビニルアミン、アリルアミン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノアクリルアミド、エチレンイミン、2−オキサゾリン等が挙げられる。しかし、これらに限定される訳ではない。
【0038】
又、以上列挙したモノマーユニットから形成されるカチオン性オリゴマーとしては、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン等のポリカチオン、及びこれらの塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩等の他、下記に示す構造のポリオキシエチレン誘導体第4級アンモニウム塩等を例示することが可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
[上記式中、R及びR′はアルキルまたはベンジルを表わし、m+n=2〜10の整数であり、X−は、Br−、Cl−、I−、CH COO−、C SO −等を表わす。]
【0040】
更に、本発明で使用することのできるカチオン性オリゴマーは、ノニオン性のペンダント基を有するモノマーユニットとの共重合体であっても構わない。
【0041】
尚、本発明で使用されるカチオン性オリゴマーの分子量分布は、予め各々単独でGPC測定を行ってもよいし、液体組成物そのものの分子量分布を測定した後、少なくともアニオン性基を有する染料が含まれる十分な量のインクと前記液体組成物をビーカー内で混合攪拌し、沈殿物を取り除いた後に再びGPC測定を行ない、インク混合前とインクを混合して沈殿物を取り除いた後のGPCの測定結果を比較して、インク中の染料によって沈殿して系内から取り除かれた成分の分子量分布から求めてもよい。
【0042】
この様に、分子量分布を求める場合の標準物質としては、ポリエチレングリコ−ルが好ましく用いられる。
【0043】
本発明の効果を一層向上させる目的で、下記に挙げる様なカチオン性界面活性剤を上記液体組成物に更に含有させてもよい。
【0044】
かかるカチオン性界面活性剤としては、具体的には例えば、1級、2級及び3級アミン塩型の化合物、具体的にはラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等;第4級アンモニウム塩型の化合物、具体的にはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリプチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム等;ピリジニウム塩型化合物、具体的にはセチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド等;イミダゾリン型カチオン性化合物、具体的には2−ヘプタデゼニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン等;高級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物、具体的にはジヒドロキシエチルステアリルアミン等が挙げられる。
【0045】
更に本発明では、あるpH領域においてカチオン性を示す両性界面活性剤も使用することが出来る。より具体的には、アミノ酸型両性界面活性剤;R−NH−CH −CH −COOH型の化合物;ベダイン型の化合物、具体的には、ステアリルジメチルベダイン、ラウリルジヒドロキシエチルベダイン等のカルボン酸塩型両性界面活性剤の他、硫酸エステル型、スルホン酸型、燐酸エステル型等の両性界面活性剤等が挙げられる。勿論、これらの両性界面活性剤を使用する場合には、それらの等電点以下のpHになる様に上記の液体組成物を調整するか、記録媒体上でインクと混合した場合に該等電点以下のpHになる様に調整するかのいずれかの方法をとる必要がある。
【0046】
以上、カチオン性化合物の例を挙げたが、本発明で使用することの出来る化合物は必ずしもこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0047】
次に本発明の液体組成物のもう一つの必須成分である分子量2,000以上のノニオン性高分子物質について説明する。当該ノニオン性高分子物質の本発明における作用及び効果についてはやはり上述した通り、上記の液体組成物とインクの反応の第2段階として、第1段階で得られたアニオン性基を有する染料とカチオン性オリゴマーとからなる会合体を分子中に吸着せしめ、会合で生じた染料の凝集体のサイズを更に大きくして記録紙の繊維間の隙間に入り込みにくくすることにより、インク内の色材を記録紙上に残し、且つ固液分離された液体部分のみを記録紙中に滲み込ませることで印字品位と定着性の両立を達成することにある。
【0048】
上記の様な作用効果を有するノニオン性高分子物質の具体例としては、ノニオン性の水溶性高分子であるポリアクリルアド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコールが挙げられる。本発明においては、これらの高分子物質の分子量2,000以上であれば本発明の効果は十分に発揮されるが、更に好ましくは、分子量2,000以上10,000以下の高分子物質を用いる。
【0049】
又、本発明の効果を更に向上させる為に、本発明において上記したノニオン性高分子物質の他にカチオン性高分子物質を併用させてもよい。この際に用いられるカチオン性高分子物質としては、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミンスルホン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、キトサン酢酸塩等を挙げることが出来るが、勿論これらに限定されるわけではない。又、上記の塩酸塩型、酸酢塩型に限定されるわけでもない。
【0050】
本発明においては、カチオン性高分子物質として、ノニオン性高分子物質の一部をカチオン化した化合物を用いてもよい。この様なものとしては、具体的には、ビニルピロリドンとアミノアルキルアルキレート4級塩との共重合体、アクリルアドとアミノメチルアクリルアド4級塩との共重合体等を挙げることが出来るが、勿論これらの化合物に限定されないことは言うまでもない。
【0051】
更に、上述した高分子物質及びカチオン性の高分子物質は水溶性であれば申し分ないが、ラテックスやエマルジョンの様な分散体であってもかまわない。
【0052】
本発明にかかる液体組成物中に含有されるこれらの成分の量としては、重量基準で0.05〜20重量%が好適な範囲であり、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲であるが、各々使用する物質の組み合わせにより、最適な範囲を決定する必要がある。又、上記した様な液体組成物中のカチオン性オリゴマーとノニオン性高分子物質の混合割合は、重量基準で10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:5の範囲である。この割合が10:1を越えると印字物の耐水性が低下し易く、逆に1:10以下ではブリーディングの抑制が不十分であり、画像のエッジシャープネスが低下し易い為、好ましくない。
【0053】
つぎに前記液体組成物を構成する成分について具体的に述べる。
【0054】
前記液体組成物は前述した成分の他に通常、水、水溶性有機溶剤及びその他の添加剤からなる。水溶性有機溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2、6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の1価アルコール類の他、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチルイミダゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルホキサイド等が用いられる。
【0055】
上記水溶性有機溶剤の含有量については特に制限はないが、液体組成物全重量の5〜60重量%、さらに好ましくは、5〜40重量%が好適な範囲である。
【0056】
この他、必要に応じて、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤、蒸発促進剤等の添加剤を配合してもかまわない。界面活性剤の選択は、液体の浸透性を調整する上で特に重要である。
【0057】
本発明で述べる液体組成物とは、記録インクの色調を変えない範囲の色調を有するものである。この液体組成物の物性として好適な範囲は25℃付近で、pHは3〜12、好ましくは3〜8、より好ましくは3〜5であり、表面張力は10〜60dyn/cm、好ましくは10〜40dyn/cmであり、粘度は1〜30cpsである。
【0058】
次に、本発明で使用する記録インク(3)について説明する。
【0059】
本発明で使用する記録インク(3)は、上述したアニオン性基を有する水溶性染料と水、水溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等を必要に応じて含む。
【0060】
本発明で使用するアニオン性基を有する水溶性染料としては、カラーインデックス(COLOUR INDEX)に記載されいる水溶性の酸性染料、直接染料、反応性染料であれば特に限定はない。又、カラーインデックスに記載のないものでも、アニオン性基、例えばスルホン基、カルボキシル基等を有するものであれば、特に制限はない。ここで言う水溶性染料の中には、溶解度のpH依存性があるものも当然含まれる。
【0061】
インクに使用する水溶性有機溶剤としては、前記液体組成物に使用される水溶性有機溶剤が同様に使用できる。該水溶性有機溶剤の含有量の好適な範囲についても同様である。又、インクの好適な物性範囲についても、前記液体組成物の場合とまったく同様である。
【0062】
又、さらに本発明の効果を一層効果的に実施するために、インクに以上説明した成分の他に、アニオン性の界面活性剤あるいはアニオン性の分子量1000以上の高分子物質を添加してもよい。あるいは、前記両性界面活性剤をその等電点以上のpHに調整して使用しても良い。アニオン性界面活性剤の例としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸塩型、燐酸エステル型等、一般に使用されているものは使用できる。又、アニオン性高分子の例としては、アルカリ可溶型の樹脂、具体的には、ポリアクリル酸ソーダ、あるいは高分子の一部にアクリル酸を共重合したもの等を挙げることができるが、もちろんこれらに限定されない。
【0063】
次に、本発明で使用するインクの別の態様である記録インク(4)について説明する。
【0064】
記録インク(4)は、顔料及びアニオン性化合物の他、水、水溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等を必要に応じて含む。ここでアニオン性化合物は、顔料の分散剤であっても良いし、顔料の分散剤がアニオン性化合物でない場合、分散剤とは別のアニオン性化合物を添加してもよい。勿論、分散剤が、アニオン性化合物である場合でも、更にアニオン性化合物を添加してもよい。
【0065】
本発明で使用することができる顔料に特に限定は無いが、具体的には以下に説明する顔料が好適に使用される。
【0066】
まず、ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が15から40ミリミクロン、BET法による比表面積が、50から300平方メートル/g、DBP吸油量が、40から150ml/100g、揮発分が、0.5から10%、pH値が2から9を有し、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.40、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上三菱化成製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL400R、REGAL660R、MOGUL L(キャボット製)、Color Black FW1、Color Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(デグッサ)等の市販品を使用することができる。又、本発明のために新たに試作されたものでもよい。イエローインクに使用される顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 83、マゼンタインクとして使用される顔料としては、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122、シアンインクとして使用される顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられるが、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。上述した顔料は、インク全量に対して、1〜20重量%、好ましくは、2〜12重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0067】
本発明で使用するインク中の顔料の分散剤は、水溶性樹脂ならどんなものでも使用可能だか、重量平均分子量は1000から30000の範囲が好ましい。更に、好ましくは、3000から15000の範囲である。具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等の疎水性単量体、または、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、から選ばれる2つ以上の単量体からなるブロック共垂合体、グラフト共重合体、あるいは、ランダム共重合体、また、これらの塩等が挙げられる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶でアルカリ可溶型樹脂である。さらに、親水性単量体からなるホモポリマー、また、それらの塩でも良い。又、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の水溶性樹脂も使用することが可能である。しかし、アルカリ可溶型の樹脂を用いた場合のほうが、分散液の低粘度化が可能で、分散も容易であるという利点がある。前記、水溶液樹脂は、インク全体に対して、0.1から5重量%の範囲で使用されることが好ましい。
【0068】
さらに本発明のインクは、好ましくは、インク全体が中性又は、アルカリ性に調整されていることが、前記水溶性樹脂の溶解性を向上させ、一層の長期保存安定性に優れたインクとすることができるので望ましい。pHが7から10の範囲にあれば更に好ましい。
【0069】
また、pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や、鉱酸が挙げられる。
【0070】
以上のごとき、顔料及び水溶性樹脂は水溶性媒体中に分散または溶解される。
【0071】
本発明のインク(4)において好適な水性媒体は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
【0072】
また、その他、水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1−4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2、6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキル基が2−6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン、エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でもジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。
【0073】
さらに、吐出安定性を得るためにはエタノール、あるいはイソプロピルアルコールを1%以上添加することが効果的である。これはこれら溶剤を添加することによってインクの薄膜抵抗体上での発泡をより安定に行うことができるからと考えられる。しかし、これら溶剤を過剰に加えると印字物の印字品位が損なわれるという欠点が生じるため、これら溶剤の適切な濃度は3−10重量%であることがわかった。さらにこれら溶剤の効果として、分散液にこれら溶剤を添加することにより、分散時における泡の発生を押え、効率的な分散が行えることが挙げられる。
【0074】
本発明のインク中の上記水溶性有機溶剤の含有量は、一般にはインク全重量の3〜50重量%の範囲であり、好ましくは3〜40重量%の範囲であり、使用する水はインク全重量の10〜90重量%、好ましくは30〜80重量%の範囲である。
【0075】
分散剤がアニオン性高分子ではない場合、上述した顔料を含むインクに更に、アニオン性化合物を添加する必要がある。本発明で好適に使用されるアニオン性化合物としては、顔料分散剤の項で説明したアルカリ可溶性樹脂等の高分子物質の他、低分子アニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0076】
低分子アニオン性界面活性剤の具体的な例としては、スルホコハク酸ラウリルニナトリウム、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミドエステルニナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ニナトリウム、カルボキシル化ポリオキシエチレンラウリルエーテルナトリウム塩、カルボキシル化ポリオキシエチレンラウリルエーテルナトリウム塩、カルボキシル化ポリオキシエチレントリデシルエーテルナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
【0077】
以上のようなアニオン性物質の好適な使用量としては、インク全量に対して、0.05から10重量%の範囲であり、更に好適には0.05から5重量%である。
【0078】
又、本発明のインクは、上記の成分のほかに必要に応じて所望の物性値を持たせるために、界面活性剤、消泡材、防腐剤等を添加することができ、さらに、市販の水溶性染料などを添加することもできる。
【0079】
界面活性剤としては脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコール、アセチレングリコール等の非イオン性界面活性剤があり、これらの1種または、2種以上を適宜選択して使用できる。その使用量は分散剤により異なるがインク全量に対して0.01から5重量%が望ましい。この際、インクの表面張力は30dyne/cm以上になるように界面活性剤の添加する量を決定する事が好ましい。なぜなら、インクの表面張力がこれより小さい値を示す事は、本発明のような記録方式においてはノズル先端のぬれによる印字よれ(インク滴の着弾点のズレ)等好ましくない事態を引き起こしてしまうからである。
【0080】
本発明のインク(4)の作成方法としては、はじめに、分散樹脂、水を少なくとも含有する水溶液に顔料を添加し、かくはんした後、後述の分散手段を用いて分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を行い、所望の分散液を得る。次に、この分散液に上記で挙げたような成分を加え、撹拌してインクとする。
【0081】
又、アルカリ可溶型樹脂を使用する場合、樹脂を溶解させるために塩基を添加することが必要である。樹脂を溶解させるアミンあるいは塩基の量を、樹脂の酸価から計算によって求めたアミンあるいは塩基量の1倍以上添加することが必要である。このアミンあるいは塩基の量は以下の式によって求められる。
【0082】
アミンあるいは塩基の量(g)=(樹脂の酸価*アミンあるいは塩基の分子量*樹脂量(g))/5600
【0083】
更に、顔料を含む水溶液を分散処理する前にプレミキシングを30分間以上行うと分散効率が良い。このプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進するものである。
【0084】
アルカリ可溶型樹脂を使用した場合の分散液に添加される塩基類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロバノール、アンモニア等の有機アミン、あるいは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が好ましい。
【0085】
一方、本発明に使用する分散機は、一般に使用される分散機なら如何なるものでも良いが、たとえば、ボールミル、サンドミル、などが挙げられる。
その中でも、高速型のサンドミルが好ましく、たとえば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノールミル、パールミル、コボルミル(いずれも商品名)等が挙げられる。
本発明を実施するにあたって使用する記録媒体については特に制限されるものではなく、従来から使用されているコピー用紙、ボンド紙等のいわゆる普通紙が好適に使用される。もちろんインクジェット記録用に特別に作成したコート紙やOHP用透明フィルムも好適に使用されるし、一般の上質紙や光沢紙にも好適に使用可能である。
【0086】
本発明の画像形成方法としては、記録媒体上で前記液体組成物とインクが共存できる方法であれば良く、液体組成物とインクのいずれを先に記録媒体に付与するかは問題ではない。
【0087】
本発明で言う画像の形成領域とは、インクのドットが付着する領域のことであり、画像形成領域の近傍とは、インクのドットが付着する領域の外側の1から5ドット程度離れた領域のことを指す。
【0088】
液体組成物を記録媒体に付着せしめる方法としては、スプレー、ローラー等によって、記録媒体の全面に付着せしめる方法が考えられるが、インクが付着する画像形成領域及び画像形成領域の近傍にのみ選択的且つ均一に付着せしめることが可能なインクジェット方式により行われるのが好ましい。
【0089】
液体組成物を記録媒体に付着せしめてから、インクを付着させるまでの時間については特に制限されるものではないが、本発明をより一層効果的に実施するためには、数秒以内、特に好ましくは1秒以内であることが好ましい。これは、インクを先に記録媒体に付着させてから、液体組成物を付着させる場合についても同様である。
【0090】
液体組成物を記録媒体に付着せしめる方法としては、種々のインクジェット記録方式を用いることができるが、特に好ましいのは、熱エネルギーによって発生した気泡を用いて液滴を吐出するいわゆるオンデマンド型のサーマルインクジェット方式である。
【0091】
次いで、本発明に用いる記録装置について説明する。本発明には記録ヘッドの記録インクに記録信号を与え、発生した熱エネルギーにより液滴を吐出するいわゆるオンデマンド型のサーマルインクジェット方式が好ましい。その装置の主要部である記録ヘッドの構成を図1、図2、図3に示す。
【0092】
ヘッド13はインクを流路を形成したガラス、セラミック、又はプラスチック等と感熱記録に用いられる発熱抵抗体を有する発熱ヘッド15(図ではヘッドが示されているが、これに限定されるものではない)とを接着して得られる。発熱ヘッド15は酸化シリコン等で形成される保護膜16、アルミニウム電極17−1、17−2、ニクロム等で形成される発熱抵抗体層18、蓄熱層19、アルミナ等の放熱性のよい基板20よりなっている。
【0093】
記録インク21は吐出オリフィス22まで来ており、圧力Pによりメニスカス2−3を形成している。
【0094】
ここで、電極17−1、17−2に電気信号が加わると、発熱ヘッド15のnで示される領域が急激に発熱し、ここに接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカスが吐出し、オリフィス22よりインク滴24となり、被記録材25に向かって飛翔する。図3には図1に示したノズルを多数並べた記録ヘッドの概略図を示す。該記録ヘッドは多数の流路を有するガラス板等27と図1において説明したものと同様の発熱ヘッド28を密着して作られる。
【0095】
尚、図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のAーB線での断面図である。
【0096】
図4に、該ヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の1例を示す。
【0097】
図4において、61はワイピング部材としてのブレードで、その一端はブレード保持部材によって保持されて固定端となり、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッドによる記録領域に隣接した位置に配置され、記録ヘッドの移動方向と垂直な方向に移動して吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。さらに63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。前記ブレード61、キャップ62、吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61、及び吸収体63によってインク吐出口面に水分、塵等の除去が行われる。
【0098】
65は吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行う為のキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67とよう動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモータ68によって駆動されるベルト69と接続(図示せず)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0099】
51は被記録材を挿入するための給送部、52はモータ(図示せず)により駆動される給送ローラーである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出口面と対向する位置へ被記録材が給送され、記録が進行するにつれて、排出ローラー53を配した排出部へ排出される。
【0100】
上記構成において記録ヘッド65が記録終了等でホームポジションに戻る際、ヘッド回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出口面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。
【0101】
記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は前記したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
【0102】
前記の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりではなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0103】
図5は、ヘッドにインク供給部材、例えばチューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収容したインク収容部、例えばインク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(図示せず)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能ならしめる。44は廃インクを受容する吸収体である。
【0104】
インク収容部としては、インクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0105】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、前記の如きヘッドとインクカートリッジが別体となったものに限らず、図6に示す如きそれらが一体となったものも好適に用いられる。
【0106】
図6において、70は記録ユニットであって、この中にインクを収容したインク収容部、例えばインク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数のオリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としては、例えばポリウレタンを用いることができる。72は記録ユニット内部を大気に連通させるための大気連通口であるこの記録ユニット70は、図4で示す記録ヘッドに変えて用いられるものであって、キャリッジ66に対し着脱自在になっている。尚、本発明に使用する記録装置において、上記ではインクに熱エネルギーを作用させてインク液滴を吐出するインクジェット記録装置を例に挙げたが、そのほか圧電素子を使用するピエゾ方式のインクジェット記録装置でも同様に利用できる。
【0107】
さて、本発明の画像形成方法を実施する場合には、例えば、前記図3に示した記録ヘッドを5つキャリッジ上に並べた記録装置を使用する。図7はその一例である。81、82、83、84はそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色の記録インクを吐出するための記録ヘッドである。又、85は液体組成物を吐出するヘッドである。該ヘッドは前記した記録装置に配置され、記録信号に応じて、各色の記録インクを吐出する。又、液体組成物はそれに先立ち、少なくとも各色の記録インクが記録紙に付着する部分にあらかじめ付着させておく。図7では記録ヘッドを5つ使用した例を示したが、これに限定されるものではなく、図8に示したように1つの記録ヘッドで、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク、液体組成物を液流路を分けて行う場合も好ましい。
【0108】
もちろん、液体組成物とインクの記録順が上記した順序とは逆になるようなヘッドの配置をとっても良い。
【0109】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明を更に具体的に説明する。
【0110】
(液体組成物の作成)
以下に示す成分を混合溶解した後、ポアサイズが0.22ミクロンのメンブレンフィルター(商品名;フロロポアフィルター、住友電工製)にて加圧濾過し、液体組成物IAからIGを得た。IAからIGのpHは溶液作成後NaOH又はHclにて調整した。
【0111】
(液体組成物IAの組成)
ベンジルーnートリブチルアンモニウムクロライド(東京化成工業製/Mw=311) 1.5部
サンフロックNー500P(ポリアクリルアミド/三洋化成工業製) 0.5部
チオジグリコール 10部
イオン交換水 88部
(IAのpH=7.0)
(液体組成物IBの組成)
塩化ベンザルコニウム(三洋化成工業製/Mw=339) 0.5部
ポリアクリルアミド(自社合成/Mw=5000) 3.0部
チオジグリコール 10部
イオン交換水 86.5部
(BのpH=4.8)
(液体組成物ICの組成)
塩化ベンザルコニウム(三洋化成工業製/Mw=339) 1.5部
ポリビニルアルコール(自社合成/Mw=2500/完全ケン化) 10部
チオジグリコール 10部
イオン交換水 78.5部
(CのpH=4.8)
(液体組成物IDの組成)
塩化ベンザルコニウム(三洋化成工業製/Mw=339) 1.5部
ポリビニルアルコール(自社合成/Mw=9000/完全ケン化) 5部
チオジグリコール 10部
イオン交換水 88部
(DのpH=4.9)
(液体組成物IEの組成)
塩化ベンザルコニウム(三洋化成工業製/Mw=339) 1.5部
ポリビニルアルコール(自社合成/Mw=26000/完全ケン化) 1部
チオジグリコール 10部
イオン交換水 88部
(EのpH=7.5)
(液体組成物IFの組成)
塩化ベンザルコニウム(三洋化成工業製/Mw=339) 1.5部
PVP K−15(インターナショナルスペシャリティケミカルズ製Mw=7000) 5部
チオジグリコール 10部
イオン交換水 83.5部
(FのpH=5)
(液体組成物IGの組成)
レボンTM−16(塩化セチルトリメチルアンモニウム/三洋化成工業製/Mw=320) 3.0部
PVP K−15(インターナショナルスペシャリティケミカルズ製ポリビニルピロリドン Mw=7000) 3部
チオジグリコール 10部
イオン交換水 84.0部
(GのpH=4.5)
(液体組成物IHの組成)
レボン15(ナトリウムアルキルジ(アミノエチル)グリシン;アルキル基はラウリル基/三洋化成工業製/Mw=351) 1.5部
PVP K−15(インターナショナルスペシャリティケミカルズ製ポリビニルピロリドン Mw=7000) 3部
チオジグリコール 10部
イオン交換水 85.5部
(HのpH=3.2)
【0112】
(記録インクの作成)
(記録インク11の作成)
下記成分を混合し、更にポアサイズが0.22ミクロンのメンブレンフィルター(商品名;フロロポアフィルター、住友電工製)にて加圧濾過し、記録インク11のイエローインク、シアンインク、マゼンタインク、ブラックインクを得た。
【0113】
(記録インク11のイエローインク/Y11)
C.I.ダイレクトイエロー 86 2部
チオジグリコール 10部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製アセチレングリコールEO付加物) 0.05部
イオン交換水 87.95部
(記録インク11のシアンインク/C11)
上記イエローインクY11におけるC.I.ダイレクトイエロー 86をC.I.ダイレクトブルー 199、2.5部に変え、イオン交換水を87.45部に変えた以外はY11と同じ組成にした。
【0114】
(記録インク11のマゼンタインク/M11)
上記シアンインクC11におけるC.I.ダイレクトブルー 199をC.I.アシッドレッド 289、2.5部に変えた以外はC11と同じ組成にした。
【0115】
(記録インク11のブラックインク/Bk11)
上記マゼンタインクM11における、C.I.アシッドレッド289、2.5部をC.I.フードブラック 2、4.0部に変え、イオン交換水を85.95部に変えた以外はM11と同じ組成にした。
【0116】
(記録インク12の作成)
記録インク11の各色に各々ジョンソン(株)製スチレン−アクリル共重合体(商品名;ジョンクリル61J;Mw=10000)を0.5部加えてイオン交換水の量を記録液全量が100部になるように調製した以外は、記録インク11のY11、M11、C11、Bk11と全く同様にして記録インク12のイエロ−Y12、シアンC12、マゼンタM12、ブラックBk12の各色を作成した。
【0117】
(記録インク13の作成)
記録インク11の各色に各々花王(株)製アニオン性界面活性剤(商品名;エマールD;ラウリル硫酸ナトリウム)を1.0部加えて、イオン交換水の量を記録液全量が100部になるように調製した以外は、記録インク11のY11、M11、C11、Bk11と全く同様にして記録インク13のイエロ−Y13、シアンC13、マゼンタM13、ブラックBk13の各色を作成した。
【0118】
(記録インク14の作成)
(記録インク14のイエロー/Y14)
アルカリ可溶性樹脂(スチレン−アクリル酸−エチルアクリレート;酸価160;重量平均分子量8000)を分散剤として用いて以下のイエロー分散体を作成した。尚、上記アルカリ可溶性樹脂の中和剤としては、モノエタノールアミンを使用した。
【0119】
アルカリ可溶性樹脂水溶液P11(固形分20重量%) 35部
C.I.ピグメントイエロー 86 24部
トリエチレングリコール 10部
ジエチレングリコール 10部
エチレングリコールモノブチルエーテル 1.0部
イソプロピルアルコール 0.5部
イオン交換水 135部
【0120】
以上の成分をバッチ式縦形サンドミル(アイメックス製)に仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間分散処理を行った。この分散液を遠心分離機にかけ、粗大粒子を除去して、平均粒子径100ミリミクロンの分散体を得た。
【0121】
上記分散体にイオン交換水100部を加えた後、充分に撹拌してpH9.5のイエローインクY14を得た。
【0122】
(記録インク14のシアン/C14)
Y14を作成したのと同じアルカリ可溶性樹脂水溶液P11を使用して、下記成分を混合後、Y14を作成したのと同一条件で分散処理を行った。
【0123】
アルカリ可溶性樹脂水溶液P11(固形分20重量%) 30部
C.I.ピグメントブルー 15:3 24部
トリエチレングリコール 10部
ジエチレングリコール 10部
エチレングリコールモノブチルエーテル 1.0部
イソプロピルアルコール 3部
イオン交換水 135部
得られた分散体の平均粒子径は、120ミリミクロンであった。
【0124】
上記分散液に水100部を加え、充分に撹拌して、pH9.2のシアンインクC14を得た。
【0125】
(記録インク14のマゼンタ/M14)
Y14を作成したのと同じアルカリ可溶性樹脂P11を使用して、下記成分を混合後、Y14を作成したのと同一条件で分散処理を行った。
【0126】
アルカリ可溶性樹脂水溶液P11(固形分20重量%) 20部
C.I.ピグメントレッド 122 24部
グリセリン 15部
イソプロピルアルコール 3部
イオン交換水 135部
得られた分散体の平均粒子径は、115ミリミクロンであった。
【0127】
上記分散液に水100部を加え、充分に撹拌して、pH9.4のマゼンタインクM14を得た。
【0128】
(記録インク14のブラックインク/Bk14の作成)
下記成分を混合し、ウオーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。
【0129】
スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体(酸価160;重量平均分子量8000)
1.5部
モノエタノールアミン 1.2部
イオン交換水 81.5部
この溶液にカーボンブラックMCF88(三菱化成製)10部、イソプロピルアルコール1部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
【0130】
分散機 サンドグラインダー(五十嵐機械製)
粉砕メディア ジルコニウムビーズ
粉砕メディアの充填率 50%(体積)
粉砕時間 3時間
更に遠心分離処理(12000rpm,20分間)を行ない、粗大粒子を除去して分散液とした。
【0131】
次に、下記成分を混合し、pH9.5の記録インク4のブラックインクBk14を得た。
【0132】
上記分散液 30部
グリセリン 10部
エチレングリコール 5部
N−メチルピロリドン 5部
イソプロピルアルコール 2部
イオン交換水 48部
(記録インク15の作成)
記録インク14における分散剤を同量のポリビニルピロリドンPVP K−15(インターナショナルスペシャリティケミカルス製/Mw=7000)に置き換えた以外は全く同様にしてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクを作成した。
【0133】
次に上記で得られたインクにアニオン性界面活性剤エマールD(ラウリル硫酸ナトリウム/花王製)を上記各色のインク100部に対して、1.0部添加した後、充分に撹拌して、記録インク15のイエロ−Y15、シアンC15、マゼンタM15、ブラックBk15を得た。
【0134】
次に、上記のようにして得られた液体組成物及びインクを用いて、キヤノンPPC用紙に記録を行った。使用したインクジェット記録装置としては、図4に示したのと同様の記録装置を用い、図7に示した5つの記録ヘッドを用いてカラー画像を形成した。尚、ここで用いた記録ヘッドは、360dpiの記録密度を有し、駆動周波数は、5KHzとした。又、1ドットあたりの吐出体積は、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクおよび液体組成物については、40pl/dotのヘッドを使用し、ブラックインクについては、色材として染料を使用した場合のインクについては80pl/dotヘッドを使用して、色材として顔料を使用したインクについては、60pl/dotのヘッドを使用した。
【0135】
以下の第1表に記した液体組成物と記録インク及び両者の印字順の組み合わせで印字を行った。
【0136】
【表1】
Figure 0003689444
【0137】
【表2】
Figure 0003689444
【0138】
記録画像の評価は、以下の方法で行った。
【0139】
1.画像濃度
ベタ画像を液体組成物とブラックのインクで形成し、12時間放置後の反射濃度を反射濃度計マクベスRD915(マクベス社製)にて測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:反射濃度が1.30以上
○:反射濃度が1.25以上〜1.30未満
△:反射濃度が1.15以上〜1.25未満
×:反射濃度が1.15未満
【0140】
2.定着性
液体組成物とイエロー、マゼンタのインクを用いて、レッドのベタ画像を形成した後、別の白紙をその自重で記録画像の上に重ね、紙の裏側に記録した画像の転写がなくなり、地汚れが発生しなくなるまでの時間を記録終了時を時間ゼロとして測定して、定着性の尺度とした。評価基準は以下の通りである。
◎:定着性が20秒未満
○:定着性が20秒以上〜30秒未満
△:定着性が30秒以上〜40秒未満
×:定着性が40秒以上
【0141】
3.文字品位
液体組成物とブラックインクを用いて、ブラックの英数文字を印字し、目視にて評価した。フェザリングが殆ど目立たないものを◎とし、フェザリングがやや目立つが実用上問題ないレベルのものを○とし、それ以下のレベルのものについては、×とした。
【0142】
4.ブリーディング
キヤノン製カラーバブルジェットプリンターBJC−820J(商品名)の印字モードE(1Pass、片方向印字)と同じ印字モードで、液体組成物とイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色インクのベタ部を隣接して印字し、各色の境界部でのブリーディングの程度を目視により観察した。ブリーディングがほとんど発生しないものを◎とし、ややブリーディングが発生するが、実質上問題無いレベルであるものを○とし、それ以外のレベルの物は×とした。
【0143】
5.耐水性
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色インクのベタ画像及び英数文字を印字し、1時間放置した後、水温20℃の水道水中へ10秒間浸漬した。その後、水から取り出し、濾紙を軽く押しあて記録画像表面の水分をとり、そのまま風乾し、目視にて耐水性を評価した。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのうち、耐水性の最も低いインクを耐水性の評価結果とした。耐水性の評価基準は以下の通りである。
◎;余白部分へのインクの流れ出しがなく、地汚れがほとんどみられない。英数文字の滲みもほとんど発生していない。
○;余白部分へのインクの流れ出しがやや発生し、英数文字がやや滲んではいるが実使用上問題ないレベルである。
×;余白部分へのインクの流れ出しがひどく、地汚れが著しい。又、英数文字の滲みもひどい。
【0144】
尚、以上の実施例及び下記比較例を通じて、液体組成物の記録媒体への付着領域は、インクの画像形成領域と同一領域であり、印字のデューティーは液体組成物、インクのどちらも全て100%である。以上の実施例における印字評価結果を第2表にまとめた。
【0145】
(比較例1〜5)
前記記録インク11から15のインクを用いて、液体組成物を使用しなかったことを除けば、実施例と全く同様の印字試験及び評価を行った。その結果を第3表に示す。
【0146】
(比較例6)
実施例1と同じインクを使用するとともに、下記成分を以て調製した液体組成物を併用して、実施例1と全く同様に、印字試験及び評価を行った。その結果を第3表に示す。
【0147】
ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド 1.5部
チオジグリコ−ル 10部
アセチレノ−ルEH 0.5部
イオン交換水 88部
【0148】
【表3】
Figure 0003689444
【0149】
【表4】
Figure 0003689444
【0150】
【表5】
Figure 0003689444
【0151】
以下に他の実施例及び比較例を示して、本発明を更に具体的に説明する。尚、文中「部」及び「%」とあるのは、特に示さない限り重量基準とする。又、カチオン性物質の分子量は、GPCで測定したポリエチレンオキシド換算の重量平均分子量であり、顔料インクの分散剤の重量平均分子量は、スチレンポリマーを標準としたGPC法により測定した。
【0152】
実施例101
まず、下記の成分を混合溶解した後、更にポアサイズが0.22μmのメンブレンフィルター(商品名:フロロポアフィルター、住友電工製)にて加圧濾過し、pHが4.8に調整されている液体組成物IIAを得た。
【0153】
液体組成物IIAの成分
・ポリアリルアミン塩酸塩 5.0部
(ポリエチレンオキシド換算の分子量分布のピーク;800)
・ノニオン性高分子 PVP−K−15 5.0部
(ポリビニルピロリドン、Mw=7,000)
・チオジグリコール 10.0部
・イオン交換水 80.0部
(インク21の作製)
次に、下記の成分を混合し、更にポアサイズが0.22μmのメンブレンフィルター(商品名:フロロポアフィルター、住友電工製)にて加圧濾過して、pHが4.8に調整されているアニオン性基を含む染料が含有されているイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色インクY21、M21、C21、B21を得た。このY21、M21、C21及びB21をインク21とした。
【0154】
イエローインクY21
・C.I.ダイレクトイエロー86 2部
・チオジグリコール 10部
・アセチレングリコール−EO付加物 0.05部
(商品名:アセチレノールEH、川研 ファインケミカル製)
・イオン交換水 87.95部
マゼンタインクM21
・C.I.アシッドレッジ289 2.5部
・チオジグリコール 10部
・アセチレングリコール−EO付加物 0.05部
(商品名:アセチレノールEH、川研 ファインケミカル製)
・イオン交換水 87.45部
シアンインクC21
・C.I.ダイレクトブルー199 2.5部
・チオジグリコール 10部
・アセチレングリコール−EO付加物 0.05部
(商品名:アセチレノールEH、川研 ファインケミカル製)
・イオン交換水 87.45部
ブラックインクB21
・C.I.フードブラック2 4.0部
・チオジグリコール 10部
・アセチレングリコール−EO付加物 0.05部
(商品名:アセチレノールEH、川研 ファインケミカル製)
・イオン交換水 84.95部
【0155】
上記の様にして得られた本実施例の液体組成物IIAとインク21を用いて本発明にかかるインクセットを構成し、PPC用紙(キヤノン製)に記録を行った。使用したインクジェット記録装置としては、図4に示したのと同様の記録装置を用い、図7に示した5つの記録ヘッドを用いてカラー画像を形成した。この際、液体組成物IIAを先打ちして先ず記録紙上に付着させ、その後インク21を付着させた。ここで用いた記録ヘッドは、360dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数5kHzとした。又、1ドットあたりの吐出体積は、イエロー、マゼンタ及びシアンインク、更に液体組成物については夫々40plのヘッドを使用し、ブラックインクについては1ドットあたり80plのヘッドを使用した。
【0156】
尚、これらの記録条件は以下に述べる染料を含むインクを使用した場合の実施例及び比較例を通じて同一である。又、印字テストの際の環境条件は、25℃/55%RHに統一してある。
【0157】
実施例102
実施例101で使用した液体組成物IIAと染料を色材として用いたインク21との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ずインク21を記録紙に付着し、液体組成物IIAを後打ちする以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0158】
実施例103
先ず、実施例101の液体組成物IIAと同様にして下記の成分からなる本実施例の液体組成物IIBを作製した。
【0159】
液体組成物IIBの成分
・下記式で表されるカチオン性オリゴマー 5.0部
(ポリエチレンオキシド換算の分子量分布のピーク;900)
・ノニオン性高分子 PVP−K−15 5.0部
(ポリビニルピロリドン、Mw=7,000)
・チオジグリコール 10.0部
・イオン交換水 80.0部
(インク22の作製)
次に、実施例101で使用したインク21の構成成分に、アニオン性高分子物質であるジョンクリル61J(スチレン−アクリル共重合体、Mw=10.000、ジョンソン(株)製)1.0部を加え、構成成分の総和が100部となる様に水の量を調整し、それ以外は実施例101のインク21と同様にして、アニオン性基を含む染料が含有されているイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色インクY22、M22、C22、B22からなるインク22を得た。
【0160】
上記で作製した本実施例の液体組成物IIBとインク22とを用いて本発明にかかるインクセットを構成し、実施例101と同様の条件で、PPC用紙(キヤノン製)記録を行った。本実施例においても、液体組成物IIBを先打ちして先ず記録紙上に付着させた後、インク22を付着させて印字記録を行った。
【0161】
実施例104
実施例103で使用した液体組成物IIBと染料を色材として用いたインク22との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ずインク22を記録紙に付着し、液体組成物IIBを後打ちする以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0162】
実施例105
先ず、実施例101の液体組成物IIAと同様にして下記の成分からなる本実施例の液体組成物IICを作製した。
【0163】
液体組成物IICの成分
・ポリアリルアミン塩酸塩 5.0部
(ポリエチレンオキシド換算の分子量分布のピーク;800)
・ノニオン性高分子 PVP−K−15 5.0部
(ポリビニルピロリドン、Mw=7,000)
・チオジグリコール 10.0部
・下記式で表される塩化ベンザルコニウム(Mw=339) 3.0部
・イオン交換水 77.0部
【0164】
上記で作製した本実施例の液体組成物IICと実施例101で使用したインク21とを用いて本発明にかかるインクセットを構成し、実施例101と同様の条件で、PPC用紙(キヤノン製)記録を行った。本実施例においても、液体組成物IICを先打ちして先ず記録紙上に付着させた後、インク21を付着させて印字記録を行った。
【0165】
実施例106
実施例105で使用した液体組成物IICと染料を色材として用いたインク21との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ずインク21を記録紙に付着し、その後に液体組成物IICを後打ちする以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0166】
実施例107
実施例105で使用した液体組成物IICと、実施例103で使用した染料を色材として用いたインク22との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ず液体組成物IICを記録紙に付着させて先打ちし、その後にインク22を付着させる以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0167】
実施例108
実施例105で使用した液体組成物IICと、実施例103で使用した染料を色材として用いたインク22との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ずインク22を記録紙に付着し、その後に液体組成物IICを後打ちする以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0168】
実施例109
実施例105で使用した液体組成物IICと、次に示す様にして得られた染料を色材として用いたインク23との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ず液体組成物IICを記録紙に付着させて先打ちし、その後にインク23を付着させる以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0169】
(インク23の作製)
実施例101で使用したインク21の構成成分に、アニオン性界面活性剤であるエマールD(ラウリル硫酸ナトリウム、花王(株)製)1.0部を加え、構成成分の総和が100部となる様に水の量を調整し、それ以外は実施例101のインク21と同様にして、アニオン性基を含む染料が含有されているイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色インクY23、M23、C23、B23からなるインク23を得た。
【0170】
実施例110
実施例105で使用した液体組成物IICと、実施例109で使用した染料を色材として用いたインク23との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ずインク23を記録紙に付着し、その後に液体組成物IICを後打ちする以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0171】
実施例111
先ず、実施例101の液体組成物IIAと同様にして下記の成分からなる本実施例の液体組成物IIDを作製した。
【0172】
液体組成物IIDの成分
・下記の式で表されるカチオン性オリゴマー 5.0部
(ポリエチレンオキシド換算の分子量分布のピーク;900)
・ノニオン性高分子 PVP−K−15 5.0部
(ポリビニルピロリドン、Mw=7,000)
・チオジグリコール 10.0部
・下記式で表される塩化ベンザルコニウム 3部
・イオン交換水 77.0部
【0173】
上記で作製した本実施例の液体組成物IIDと実施例101で使用したインク21とを用いて本発明にかかるインクセットを構成し、実施例101と同様の条件で、PPC用紙(キヤノン製)記録を行った。本実施例においても、液体組成物IIDを先打ちして先ず記録紙上に付着させた後、インク21を付着させて印字記録を行った。
【0174】
実施例112
実施例111で使用した液体組成物IIDと染料を色材として用いたインク21との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ずインク21を記録紙に付着し、液体組成物IIDを後打ちする以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0175】
実施例113
実施例111で使用した液体組成物IIDと、実施例103で使用した染料を色材として用いたインク22との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ず液体組成物IIDを記録紙に付着させて先打ちし、その後にインク23を付着させる以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0176】
実施例114
実施例111で使用した液体組成物IIDと、実施例103で使用した染料を色材として用いたインク22との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ずインク22を記録紙に付着し、その後に液体組成物IIDを後打ちする以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0177】
実施例115
実施例111で使用した液体組成物IIDと、実施例109で使用した染料を色材として用いたインク23との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ず液体組成物IIDを記録紙に付着させて先打ちし、その後にインク23を付着させる以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0178】
実施例116
実施例111で使用した液体組成物IIDと、実施例109で使用した染料を色材として用いたインク23との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ずインク23を記録紙に付着し、その後に液体組成物IIDを後打ちする以外は実施例101と同様の条件で印字記録を行った。
【0179】
実施例117
下記に述べる様にして、夫々顔料とアニオン性化合物とを含むイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色インク、Y24、M24、C24及びB24を得た。このY24、M24、C24及びB24をインク24とし、実施例105で使用した液体組成物IICと共に、本実施例のインクセットを構成した。このインクセットを用い、PPC用紙(キヤノン製)に記録を行った。本実施例においては、液体組成物IICを先打ちして先ず記録紙上に付着させた後、インク24を付着させて印字記録を行った。
【0180】
ここで用いた記録ヘッドは、360dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数5kHzとした。又、1ドットあたりの吐出体積は、イエロー、マゼンタ及びシアンインク、更に液体組成物については夫々40plのヘッドを使用し、ブラックインクについては1ドットあたり60plのヘッドを使用した。
【0181】
尚、これらの記録条件は以下に述べる顔料を含むインクを使用した場合の実施例を通じて同一である。又、印字テストの際の環境条件は、25℃/55%RHに統一してある。
【0182】
(インク24の作製)
ブラックインクB24
(顔料分散液の作製)
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体 1.5部
(酸価140、重量平均分子量5,000)
・モノエタノールアミン 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・イオン交換水 81.5部
【0183】
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂成分を完全に溶解させる。この溶液に新たに試作されたカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部、イソプロピルアルコール1部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
【0184】
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積比)
・粉砕時間:3時間
更に、遠心分離処理(12,000rpm.、20分間)を行い、粗大粒子を除去して分散液とした。
【0185】
(インクの作製)
上記の分散液を使用し、下記の組成比を有する成分を混合し、顔料を含有するインクを作製し、これをブラックインクB24とした。
【0186】
・上記顔料分散液 30.0部
・グリセリン 10.0部
・エチレングリコール 5.0部
・N−メチルピロリドン 5.0部
・エチルアルコール 2.0部
・イオン交換水 48.0部
【0187】
イエローインクY24
ブラックインクB24の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部をピグメントイエロー74に代えたこと以外は、ブラックインクB24の調製と同様にして顔料を含有イエローインクY24を調製した。
【0188】
マゼンタインクM24
ブラックインクB24の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部をピグメントレッド7に代えたこと以外は、ブラックインクB2の調製と同様にして顔料を含有マゼンタインクM24を調製した。
【0189】
シアンインクC24
ブラックインクB24の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部をピグメントブルー15に代えたこと以外は、ブラックインクB24の調製と同様にして顔料を含有シアンインクC24を調製した。
【0190】
実施例118
実施例105で使用した液体組成物IICと、実施例117で使用した顔料を色材として用いたインク24との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ずインク24を記録紙に付着し、その後に液体組成物IICを後打ちする以外は実施例117と同様の条件で印字記録を行った。
【0191】
実施例119
実施例111で使用した液体組成物IIDと、実施例117で使用した顔料を色材として用いたインク24との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ず液体組成物IIDを記録紙に付着させて先打ちし、その後にインク24を付着させる以外は実施例117と同様の条件で印字記録を行った。
【0192】
実施例120
実施例111で使用した液体組成物IIDと、実施例117で使用した顔料を色材として用いたインク24との組み合わせを用いて、本実施例のインクセットとし、先ずインク24を記録紙に付着し、その後に液体組成物IIDを後打ちする以外は実施例117と同様の条件で印字記録を行った。
【0193】
(評価)
第4表にまとめた実施例101〜実施例120で得られた夫々の記録画像について、前記したのと同様の評価方法及び評価基準で評価を行った。
【0194】
これらの評価結果を、まとめて第5表に記載する。
【0195】
【表6】
Figure 0003689444
【0196】
【表7】
Figure 0003689444
【0197】
実施例121
実施例101で使用した液体組成物IIAと、実施例101で使用したインク21中のイエロー、マゼンタ及びシアンの3色を使用して、全て100%デューティでベタ画像を記録し、いわゆるプロセスブラックを形成した。印字した条件は全て実施例101と同一にした。この時の画像濃度、定着性、文字品位、耐水性及びプロセスブラックと他の色との境界部におけるブリーディングの評価結果は全て良好であり、本発明の効果が確認された。
【0198】
【発明の効果】
以上説明したように、とりわけ、普通紙に対するカラーインクジェット記録を行う場合に本発明を実施することで、高速定着、高印字品位、ブリードレス、完全耐水性を満足した画像を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置のヘッド部の縦断面図である。
【図2】インクジェット記録装置のヘッド部の横断面図である。
【図3】インクジェット記録装置のヘッド部の外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【図5】インクカートリッジの縦断面図である。
【図6】記録ユニットの斜視図である。
【図7】本発明の実施例で使用した複数の記録ヘッドが配列した記録部を示した斜視図である。
【図8】本発明に使用する別の記録ヘッドの斜視図である。
【符号の説明】
13 ヘッド
15、28 発熱ヘッド
21 インク
25 記録媒体
40 インク袋
44 インク吸収体
45 インクカートリッジ
61 ワイピング部材
65 記録ヘッド
66 キャリッジ
70 記録ユニット
71 ヘッド部
72 大気連通孔

Claims (24)

  1. アニオン性染料又はアニオン性化合物及び顔料を含むインクジェット用インクと共にインクジェット画像の形成に用いられるインクジェット用の液体組成物であって、インクジェット方式によって記録ヘッドから吐出される液体組成物において、該液体組成物が、少なくとも分子量1000以下のカチオン性物質及び分子量2000以上であって、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるノニオン性高分子物質とを併有し、該インクとの接触によって、該アニオン性染料又は該アニオン性物質を凝集させるものであることを特徴とする液体組成物。
  2. アニオン性染料又はアニオン性化合物及び顔料を含むインクジェット用インクと共にインクジェット画像の形成に用いられるインクジェット用の液体組成物であって、インクジェット方式によって記録ヘッドから吐出される液体組成物において、該液体組成物が、少なくとも分子量分布のピークが1000以下のカチオン性オリゴマーと分子量2000以上であって、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるノニオン性高分子物質とを併有し、該インクとの接触によって、該アニオン性染料又は該アニオン性物質を凝集させるものであることを特徴とする液体組成物。
  3. アニオン性染料又はアニオン性化合物及び顔料を含むインクジェット用インクと共に記録媒体(但し、布帛であることは除く)上にインクジェット画像を形成するために用いられる液体組成物であって、該液体組成物が、少なくとも分子量1000以下のカチオン性物質及び分子量2000以上であって、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるノニオン性高分子物質とを併有し、該インクとの接触によって、該アニオン性染料又は該アニオン性物質を凝集させるものであることを特徴とする液体組成物。
  4. アニオン性染料又はアニオン性化合物及び顔料を含むインクジェット用インクと共に記録媒体(但し、布帛であることは除く)上にインクジェット画像を形成するために用いられる液体組成物であって、該液体組成物が、少なくとも分子量分布のピークが1000以下のカチオン性オリゴマーと分子量2000以上であって、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール及びポリビニルアルコールからなる群より選択されるノニオン性高分子物質とを併有し、該インクとの接触によって、該アニオン性染料又は該アニオン性物質を凝集させるものであることを特徴とする液体組成物。
  5. 前記カチオン性物質及び前記ノニオン性高分子物質とを合わせて0.05〜20重量%の範囲で含有する請求項1又は請求項3に記載の液体組成物。
  6. 前記カチオン性オリゴマーと前記ノニオン性高分子物質とを合わせて0.05〜20重量%の範囲で含有する請求項2又は請求項4に記載の液体組成物。
  7. 前記カチオン性物質が界面活性剤である請求項1、3及び5の何れか1項に記載の液体組成物。
  8. 更に、カチオン性の界面活性剤を含む請求項2、4及び6の何れかに記載の液体組成物。
  9. 該液体組成物が色材を含有していない請求項1〜8の何れかに記載の液体組成物。
  10. 該液体組成物が、無色若しくは淡色である請求項1〜9の何れかに記載の液体組成物。
  11. カチオン性物質又はカチオン性オリゴマーとノニオン性高分子の割合が重量基準で1:10〜10:1(カチオン性物質又はカチオン性オリゴマー:ノニオン性高分子)の範囲である請求項1〜10の何れかに記載の液体組成物。
  12. 請求項1乃至11の何れかに記載の液体組成物と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、ブルー、グリーンの少なくとも1つのインクとを組み合わせたことを特徴とするインクセット。
  13. 請求項1乃至11の何れかに記載の液体組成物と、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のインクとを組み合わせたことを特徴とするインクセット。
  14. 請求項1乃至11の何れかに記載の液体組成物と、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のインクとを組み合わせたことを特徴とするインクセット。
  15. インクがアニオン性化合物を含む請求項12乃至14の何れかに記載のインクセット。
  16. インクがアニオン性基を有する水溶性染料を含む請求項12乃至14の何れかに記載のインクセット。
  17. インクが顔料とアニオン性化合物とを含む請求項12乃至14の何れかに記載のインクセット。
  18. アニオン性化合物が分子量1000以上の高分子物質である請求項16又は請求項17に記載のインクセット。
  19. アニオン性化合物が界面活性剤である請求項15又は請求項17に記載のインクセット。
  20. 請求項1乃至11の何れかに記載の液体組成物を記録媒体の少なくとも画像形成領域に付着させる工程(A)と、少なくともアニオン性化合物を含有するインクをインクジェット方式により前記記録媒体に付与する工程(B)を含むことを特徴とする画像形成方法。
  21. 工程(A)を工程(B)に先立って行う請求項20に記載の画像形成方法。
  22. 工程(A)を工程(B)の後に行う請求項20に記載の画像形成方法。
  23. 請求項12乃至19の何れかに記載のインクセットとインクジェット手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
  24. 請求項1乃至11の何れかに記載の液体組成物の収納部及び吐出手段を有する第一の記録ユニットと、少なくともアニオン性化合物を含有するインクの収納部及び吐出手段を有する第二の記録ユニットとを備えたことを特徴とする画像形成装置。
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