JP3684757B2 - 車両の制動液圧制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両の後輪の制動用シリンダの液圧をアクチュエータで調整して、理想制動力配分を達成するように制動用シリンダの液圧を制御する車両の制動液圧制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
前記した理想制動力配分とは、制動に伴って前輪側の輪荷重が増加し、逆に後輪側の輪荷重が減少することから、夫々の車輪の摩擦力が変化することに着目したものであり、例えば車両に作用する前後加速度をパラメータとして、前後各輪がロックしない限界制動力をプロットして得られるものである。そして、このような理想制動力配分を達成するための車両の制動液圧制御装置としては、例えば特開平5−278585号公報に記載されるものがある。
【0003】
この従来例では、前記したような理想制動力配分が、前後輪で同等の車輪速度となることを前提としていることから、前後輪の回転速度を、夫々車輪速度として検出し、後輪の車輪速度が前輪の車輪速度より小さいと判定されたときに、後輪の制動用シリンダの液圧を減圧又は保持する制御信号をアクチュエータに出力し、後輪の車輪速度が前輪の車輪速度より大きいと判定されたときに、後輪の制動用シリンダの液圧を復圧(増圧)する制御信号をアクチュエータに出力し、結果的に後輪が前輪と同等の車輪速度で減速されるようにしている。これにより、例えば空車時や車載時等での車両重量の変化やそれに伴う輪荷重の変化から発生する路面との摩擦力又はその路面反力トルクの変化に係わらず、前後輪の制動力を前記理想制動力配分に近づけることを可能としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の車両の制動液圧制御装置では、例えば車輪速センサ等の各センサ類から構成される検出手段の故障時の対応が開示されていない。より具体的には、各センサ類の故障時に、何らかのフェールセーフ機能によって制動液圧制御装置としての機能を全停止することは容易であるが、そうしないで、何らかの後輪制動力制御機能を残したいという要求がある。
【0005】
また、停止距離を最短とするための必要十分条件とは、前後輪がロックしない限界の減速度で且つ同じ車輪速度,つまり回転速度で減速することなのであるから、前述の従来例は、原理的にはこれを達成する可能性を有している。しかしながら車輪の回転速度を検出しながら各車輪の制動力を制御する,或いはその制動液圧を制御するのは、所謂フィードバック制御であって、例えば制動液圧を制御し、その結果、制動力が変化し、それが車輪の回転速度として発現して始めて制御の正当性が評価される。そのため、どうしても制動液圧制御の応答性に劣り、例えば後輪の回転速度が目標値の近傍で増減するハンチングに似た現象が発生し易い。
【0006】
また、演算処理の高速化に伴い、車輪の回転速度を検出するには、例えば車輪の回転角速度から演算によって求めるのが一般的であるが、このようにして検出される回転速度には比較的多くの誤差が含まれている。その要因としては、例えばタイヤの空気圧変動や輪荷重変動に伴うタイヤの転がり動半径の変化や、旋回軌跡に応じた車輪回転角速度の変化、或いは低回転から高回転まで回転する車輪の回転速度に応じたノイズの影響などが挙げられる。従って、このような影響を抑制して高精度な車輪の回転速度を得るためには、例えば所定時間内における移動平均値やノイズ除去のフィルタリングを施した値等を用いる必要があり、しかしながら、そのような値をもって車輪の回転速度とするには、車輪の回転速度として検出するまでに時間を要し、その結果制御のタイミングが遅くなってしまうという問題もある。
【0007】
このような諸問題を解決するためには、例えばマスタシリンダの作動液圧や前輪の制動用シリンダの作動液圧から前輪の制動力を算出し、これに対して理想制動力配分となる後輪制動力を達成するように当該後輪の制動液圧を制御することが考えられる。このようにすれば、所謂フィードフォワード制御が可能となって応答性が向上する。また、これに合わせて、前述のような車輪速度に応じたフィードバック制御を併用することも可能である。また、より具体的に、前述のように前輪の制動力を正確に算出するためには、各車輪の車輪速度や車輪加減速度を検出することが必要である。
【0008】
従って、このような制動液圧制御装置を構築した場合にも、車輪速センサや作動液圧センサ等の検出手段は必要不可欠であり、しかしながら前述と同様に、それらの検出手段の故障時に、何らかの機能を存続させる手法は未開発である。
【0009】
本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発されたものであり、各種のセンサ類で構成される車輪速度や作動液圧の検出手段の故障時に、その故障のパターンに応じて可及的に後輪制動力制御機能を存続させると共に、明らかに制御を全停止しなければならない状態を明確にすることで、制御の信頼性を向上できる車両の制動液圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記諸問題を解決するために、本発明のうち請求項1に係る車両の制動液圧制御装置は、少なくとも車両の後輪の制動用シリンダの作動液圧を指令信号に応じて調整可能なアクチュエータと、各車輪の車輪速度を検出する車輪速検出手段と、この車輪速検出手段で検出された車輪速度に基づいて理想制動力配分となる後輪制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する制御を行う制動液圧制御手段と、前記車輪速検出手段で検出される車輪速度に基づいて推定車体速度を算出する推定車体速度算出手段と、前記各車輪速検出手段の故障を検出する故障検出手段と、前記車輪速検出手段のうち、前左右輪の双方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したとき、前記推定車体速度算出手段で算出される推定車体速度を前左右輪速度の代用値として用いて前記制御を行う故障時対応手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のうち請求項2に係る車両の制動液圧制御装置は、前記故障時対応手段は、前記車輪速検出手段のうち、後左右輪のうちの一方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したとき、検出される後左右輪の車輪速度のうちの何れか大きい方の車輪速度を後左右輪速度の代用値として用いて前記制御を行うことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のうち請求項3に係る車両の制動液圧制御装置は、前記故障時対応手段は、前記車輪速検出手段のうち、前左右輪のうちの一方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したとき、検出される前左右輪の車輪速度のうちの何れか大きい方の車輪速度を前左右輪速度の代用値として用いて前記制御を行うことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のうち請求項4に係る車両の制動液圧制御装置は、前記故障時対応手段は、前記車輪速検出手段のうち、後左右輪の双方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したとき、前記制御を中止することを特徴とするものである。
【0014】
なお、前記請求項1乃至4の発明は、車輪速度を検出するための車輪速センサ等の検出手段が、車輪の回転速度に相当する波形信号を出力することを前提としている。即ち、真に車輪速度を検出するためには、例えば車輪速センサから出力される正弦波信号を矩形波信号に波形成形したのち、その矩形波信号の波長又は周波数から例えば車輪の回転角速度を求め、これにタイヤ転がり動半径を乗じて車輪速度とする。従って、こうした車輪速センサからなる検出手段の故障が、その検出信号の振幅に与える影響はさほど問題にならない。問題となるのは、断線や短絡によって波形信号がとれない又はとりにくい状態になる故障であり、そのような故障時には車輪速度は小さくなってしまう。従って、例えば四つの車輪速検出手段のうち、他より大幅に車輪速度が小さいか又は零である検出手段が故障しているものとして検出される。そして、これらの車輪速検出手段の故障部位や故障数に応じて、昨日の存続或いは明確な制御の中断を行う。なお、前記請求項1に係る発明の推定車体速度は、例えばアンチスキッド制御装置等に用いられる従来既存の算出手段で算出される。
【0015】
また、本発明のうち請求項5に係る車両の制動液圧制御装置は、マスタシリンダ又は前輪の制動用シリンダの作動液圧を検出する作動液圧検出手段を備え、前記制動液圧制御手段は、前記作動液圧検出手段で検出された作動液圧に基づいて理想制動力配分となる後輪制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する制御を行うと共に、前記故障時対応手段は、前記作動液圧検出手段が故障したとき、前記車輪速検出手段で検出された車輪速度のみに基づいて理想制動力配分となる後輪制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する制御を行うことを特徴とするものである。
【0017】
この発明では、マスタシリンダ又は前輪の制動用シリンダの作動液圧から得られる前輪制動力に対して、理想制動力配分となる後輪制動力をフィードフォワード制御することを前提としている。そして、請求項5に係る発明では、前記作動液圧検出手段が故障したら、車輪速検出手段で検出される車輪速度のみを用いて制御を行うことで後輪制動力制御機能を存続する。
【0018】
【発明の効果】
而して、本発明のうち請求項1に係る車両の制動液圧制御装置によれば、前左右輪の双方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したときには、後輪制動力を制御するための基準値を失うことになるが、このような場合に推定車体速度を前左右輪速度の代用値として用いて制御を行うことで、後輪制動力制御機能を存続させることができる。
【0019】
また、本発明のうち請求項2に係る車両の制動液圧制御装置によれば、後左右輪のうちの一方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したとき、検出される後左右輪の車輪速度のうちの何れか大きい方の車輪速度、つまりより正確であると考えられる後輪速度を後左右輪速度の代用値として用いて制御を行うことで、後輪制動力制御機能を存続させることができる。
【0020】
また、本発明のうち請求項4に係る車両の制動液圧制御装置によれば、前左右輪のうちの一方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したとき、検出される前左右輪の車輪速度のうちの何れか大きい方の車輪速度、つまりより正確であると考えられる前輪速度を前左右輪速度の代用値として用いて制御を行うことで、後輪制動力制御機能を存続させることができる。
【0021】
また、本発明のうち請求項4に係る車両の制動液圧制御装置によれば、後左右輪の双方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したときには、最も重要な制御入力がなく、しかも如何なる代用もきかないので、即座に制御を中止することで、制御の信頼性が高まる。
【0022】
また、本発明のうち請求項5に係る車両の制動液圧制御装置によれば、マスタシリンダや前輪の制動用シリンダの作動液圧を用いたフィードフォワード制御を行う場合にあって、当該作動液圧を検出する作動液圧検出手段が故障したときには、車輪速検出手段で検出された車輪速度に基づいて理想制動力配分となる後輪制動力を達成するフィードバック制御を行うことで、後輪制動力制御機能を存続させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両の制動液圧制御装置の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は本発明の車両の制動液圧制御装置を,FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式をベースにした後輪駆動車両のアンチスキッド制御装置に展開した一例である。図中、1FL,1FRは前左右輪、1RL,1RRは後左右輪であって、後左右輪1RL,1RRにエンジンEGからの回転駆動力が変速機T、プロペラシャフトPS及びディファレンシャルギヤDGを介して伝達される。また、各車輪1FL〜1RRには、それぞれ制動用シリンダとしてのホイールシリンダ2FL〜2RRが取付けられる。また、各車輪1FL〜RRには、それらの車輪の各回転速度に応じた正弦波信号を出力する車輪速センサ3FL〜3RRが取付けられている。なお、各ホイールシリンダ2FL〜2RRは、ディスクロータにパッドを押付けて制動する,所謂ディスクブレーキである。また、前記車輪速センサ3FL〜3RRの夫々は、例えば他の車輪速センサに比して、大幅に小さな周波数の正弦波信号,即ち車輪速度が極端に小さいものが故障していると判定される。
【0026】
各前輪側ホイールシリンダ2FL,2FRには、ブレーキペダル4の踏込みに応じたマスタシリンダ5からの前輪側マスタシリンダ圧PMCF が前輪側アクチュエータユニット6FL,6FRを介して個別に供給されると共に、後輪側ホイールシリンダ2RL,2RRには、マスタシリンダ5からの後輪側マスタシリンダ圧PMCR が個別の後輪側アクチュエータユニット6RL,6RRを介して供給され、全体として4センサ4チャンネルシステムに構成されている。なお、ブレーキペダル4には、その踏込時に論理値“1”のON状態となるブレーキスイッチ信号SBRK を出力するブレーキスイッチ14が配設されている。また、前記マスタシリンダ5からの各出力配管系には、前記前輪側マスタシリンダ圧PMCF 及び後輪側マスタシリンダ圧PMCR を夫々検出する圧力センサ13F,13Rが配設されている。また、この車両には、当該車両に作用する前後加速度GX を検出する前後加速度センサ15が取付けられている。
【0027】
前記アクチュエータユニット6FL〜6Rの夫々は、図2に示すように、マスタシリンダ5に接続される液圧配管7とホイールシリンダ2FL〜2RRとの間に介装された電磁流入弁8と、この電磁流入弁8と並列に接続された電磁流出弁9、液圧ポンプ11及び逆止弁11の直列回路と、流出弁9及び液圧ポンプ10間の液圧配管に接続されたアキュームレータ12とを備えている。そして、異常時の作動補償,所謂フェールセーフの関係から、前記電磁流入弁8は通電のないノーマル位置で常時開状態(増圧状態),通電による切換え位置で閉状態(圧力保持状態)に移行し、前記電磁流出弁9は通電のないノーマル位置で常時閉状態(圧力保持状態),通電による切換え位置で開状態(減圧状態)に移行する。
【0028】
そして、各アクチュエータユニット6FL〜6RRの電磁流入弁8、電磁流出弁9及び液圧ポンプ10は、車輪速センサ3FL〜3Rからの車輪速正弦波信号と、前記圧力センサ13F及び13Rのマスタシリンダ圧PMCF 及びPMCR と、前記ブレーキスイッチ14からのブレーキスイッチ信号SBRK と、前後加速度センサ15からの前後加速度GX が入力されるコントロールユニットCRからの液圧制御用駆動信号EVFL〜EVRR、AVFL〜AVRR及びMRFL〜MRRRによって制御される。
【0029】
前記コントロールユニットCRは、車輪速センサ3FL〜3RRからの車輪速正弦波信号が入力され、これらと各車輪1FL〜1RRのタイヤ転がり動半径とから各車輪の周速度でなる車輪速度(以下、単に車輪速とも記す)VwFL〜VwRRを演算し、この車輪速VwFL〜VwRRや前記マスタシリンダ圧PMCF 及びPMC R 或いは前記前後加速度GX 等に基づいて、アンチスキッド制御及び後輪ホイールシリンダ液圧制御の演算処理を司るマイクロコンピュータ20を備えている。このマイクロコンピュータ20は、例えばアンチスキッド制御においては、本出願人が先に提案した特開平8−150920号公報に記載されるように、車体速度勾配VXK及び車体速度VX を算出し、且つアンチスキッド制御中の各ホイールシリンダ2FL〜2RRの作動液圧(以下、単にホイールシリンダ圧とも記す)PFL〜PRRを算出すると共に、例えば目標とするホイールシリンダ圧とのPD(比例−微分)値からなる目標ホイールシリンダ増減圧量ΔP* FL〜ΔP* RRを算出し、この目標ホイールシリンダ増減圧量ΔP* FL〜ΔP* R が達成されるように、前記アクチュエータユニット6FL〜6RRに対する制御信号SEVFL〜SEVRR,SAVFL〜SAVRR及びSMRFL〜SMRRRを出力する。また、このマイクロコンピュータ20は、後輪ホイールシリンダ液圧制御においては、後述する各種の演算処理に従って、理想制動力配分を達成する目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* R を算出し、この目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* R が達成されるように、前記アクチュエータユニット6FL〜6RRに対する制御信号SEVFL〜SEVRR,SAVFL〜SAVRR及びSMRFL〜SMRRRを出力する。そして、このようにマイクロコンピュータ20から出力された制御信号SEVFL〜SEVRR,SAVFL〜SAVRR及びSMRFL〜SMRRRは、駆動回路に22aFL〜22aRR,22bFL〜22bRR及び22cFL〜22cRRより、指令信号としての駆動信号EVFL〜EVRR,AVFL〜AVRR及びMRFL〜MRRRに変換されて各アクチュエータユニット6FL〜6RRに供給される。
【0030】
そして、前記マイクロコンピュータ20は、例えばA/D変換機能等を有する入力インタフェース回路20aと、マイクロプロセサ等の演算処理装置20bと、ROM,RAM等の記憶装置20cと、例えばD/A変換機能を有する出力インタフェース回路20dとを備えている。また、前記マイクロコンピュータ20は、その動作周波数が大変に高いことから、当該マイクロコンピュータ20からパルス幅変調されたディジタルデータの基準矩形波制御信号SEVFL〜SEVRR,SAVFL〜SAVRR及びSMRFL〜SMRRRを出力するようにし、各駆動回路22aFL〜22aRR,22bFL〜22bRR及び22cFL〜22cRRは単にそれを各アクチュエータ作動に適した駆動信号EVFL〜EVRR,AVFL〜AVRR及びMRFL〜MRRRに変換,増幅するだけのものとして構成されている。
【0031】
次に、本実施形態の車両の制動液圧制御装置による制動液圧制御の構成を、前記マイクロコンピュータ20で実行される図3乃至図9のフローチャートに示す演算処理に従って説明する。この演算処理は所定のサンプリング時間(例えば10msec)ΔT毎にタイマ割込処理として実行される。なお、これ以後の演算処理では、何れも特に通信のためのステップを設けていないが、演算処理装置20bで必要なプログラムやマップ、或いは必要なデータは随時記憶装置20cから読込まれるし、逆に演算処理装置20bで算出されたデータは随時記憶装置20cに更新記憶されるものとする。
【0032】
まず、図3の演算処理では、そのステップS01で、例えば本出願人が先に提案した特開平8−150920号公報に記載される演算処理により推定車体速度VX(obs)を算出し、次にステップS02に移行して、図示されない演算処理によって、アンチスキッド制御を行わないアンチスキッド非制御条件を満足しているか否かを判定し、アンチスキッド非制御条件を満足している場合にはステップS03に移行し、そうでない場合にはステップS04に移行する。このアンチスキッド非制御条件とは、例えば前記推定車体速度VX(obs)から当該車輪速度Vwi (i=FL,FR,RL,RR)を減じた値の推定車体速度VX(obs)に対する比(百分率)を当該車輪のスリップ率Si としてとき、当該車輪のスリップ率Si が舵取効果に優れた所定の基準スリップ率S0 より小さいとか、或いは前記車輪速度Vwi の時間微分値からなる車輪(角)加(減)速度V'wi (<0)が予め設定された所定車輪加速度V'w0 (<0)より大きいといったように、アンチスキッド制御開始とは逆の判定条件を採用すればよい。
【0033】
前記ステップS03では、後述する図4の演算処理により後輪ホイールシリンダ圧制御を行ってからメインプログラムに復帰する。また、前記ステップS04では、例えば前述した特開平8−150920号公報に記載される演算処理によりアンチスキッド制御を行ってからメインプログラムに復帰する。
【0034】
次に、前記図3の演算処理のステップS03で実行されるマイナプログラムを図4のフローチャートに従って説明する。
この演算処理では、まずステップS1で前記圧力センサ13F,13Rからのマスタシリンダ圧PMCF ,PMCR を読込む。次にステップS2に移行して、前記車輪速センサ3FL〜3RRからの正弦波信号に基づいて算出された各車輪速VwFL〜VwRRを読込む。次にステップS3に移行して、前記前後加速度センサ15からの前後加速度GX 及びブレーキスイッチ14からのブレーキスイッチ信号SBRK を読込む。なお、前記前後加速度センサ15から読込まれる前後加速度GX は、減速方向を正値とする。
【0035】
次にステップS4に移行して、図示されない個別の演算処理により前記マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR を検出する圧力センサ13F,13Rが良好な状態にあるか否かを判定し、当該圧力センサ13F,13Rが良好な状態にある場合にはステップS5に移行し、そうでない場合にはステップS6に移行する。なお、前記圧力センサ13F,13Rが良好か否かの判定は、例えばアンチスキッド非制御中のマスタシリンダ圧PMCF ,PMCR が、互いに同等か又は略同等であるか否かなどから判定できる。
【0036】
前記ステップS5では、後述する図5の演算処理により、それより後段の演算処理に必要な代表的な車輪速VwF ,VwR を設定してからステップS7に移行し、後述する図6の演算処理により、前記マスタシリンダPMCF ,PMCR を併用した目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* RL,ΔP* RRを算出してからステップS8に移行する。
【0037】
一方、前記ステップS6では、後述する図7の演算処理により、それより後段の演算処理に必要な代表的な車輪速VwF ,VwRR,VwRLを設定してからステップS9に移行し、後述する図8の演算処理により、各車輪速VwFL〜VwRRのみを用いた目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* RL,ΔP* RRを算出してから前記ステップS8に移行する。
【0038】
そして、前記ステップS8では、後述する図9の演算処理に従って各ホイールシリンダ圧制御信号を出力してからメインプログラムに復帰する。
次に、前記図4の演算処理のステップS5で実行されるマイナプログラムを図5のフローチャートに従って説明する。
【0039】
この演算処理では、まずステップS501で、前述したような故障判定を個別の演算処理によって行い、その結果、後輪側の車輪速センサ3RL,3RRが2個共良好な状態にあるか否かを判定し、当該後輪側車輪速センサ3RL,3RRが2個良好な場合にはステップS502に移行し、そうでない場合にはステップS503に移行する。また、前記ステップS502では、同様にして前輪側車輪速センサ3FL,3FRが2個共良好な状態にあるか否かを判定し、当該前輪側車輪速センサ3FL,3FRが2個良好な場合にはステップS504に移行し、そうでない場合にはステップS505に移行する。また、前記ステップS505では、同様にして前輪側車輪速センサ3FL,3FRの何れか1個は良好な状態にあるか否かを判定し、当該前輪側車輪速センサ3FL,3FRが1個良好な場合にはステップS506に移行し、そうでない場合にはステップS507に移行する。
【0040】
一方、前記ステップS503では、前述と同様にして後輪側車輪速センサ3RL,3RRの何れか1個は良好な状態にあるか否かを判定し、当該後輪側車輪速センサ3RL,3RRが1個良好な場合にはステップS508に移行し、そうでない場合にはステップS509に移行する。また、前記ステップS508では、同様にして前輪側車輪速センサ3FL,3FRが2個共良好な状態にあるか否かを判定し、当該前輪側車輪速センサ3FL,3FRが2個良好な場合にはステップS510に移行し、そうでない場合にはステップS511に移行する。また、前記ステップS511では、同様にして前輪側車輪速センサ3FL,3FRの何れか1個は良好な状態にあるか否かを判定し、当該前輪側車輪速センサ3FL,3FRが1個良好な場合にはステップS512に移行し、そうでない場合にはステップS513に移行する。
【0041】
前記ステップS504では、前後輪全ての車輪速センサ3FL〜3RRが良好な状態であるとして、前左右輪速VwFL,VwFRの平均前輪速VwF(AV) を前輪速VwF に設定すると共に後左右輪速VwRL,VwRRの平均前輪速VwR(AV) を後輪速VwR に設定してから、前記図4の演算処理のステップS7に移行する。また、前記ステップS506では、後輪側車輪速センサ3RL,3RRは2個共良好であるが、前輪側車輪速センサ3FL,3FRの何れか1個が故障しているとして、前左右輪速VwFL,VwFRの何れか大きい方の値からなる最大前輪速VwF(Hi) を前輪速VwF に設定すると共に後左右輪速VwRL,VwRRの平均前輪速VwR(AV) を後輪速VwR に設定してから、前記図4の演算処理のステップS7に移行する。また、前記ステップS507では、後輪側車輪速センサ3RL,3RRは2個共良好であるが、前輪側車輪速センサ3FL,3FRは2個共故障しているとして、前記推定車体速度VX(obs)を前輪速VwF に設定すると共に後左右輪速VwRL,VwRRの平均前輪速VwR(AV) を後輪速VwR に設定してから、前記図4の演算処理のステップS7に移行する。
【0042】
また、前記ステップS510では、前輪側車輪速センサ3FL,3FRは2個共良好であるが、後輪側車輪速センサ3RL,3RRの何れか1個が故障しているとして、前左右輪速VwFL,VwFRの平均前輪速VwF(AV) を前輪速VwF に設定すると共に後左右輪速VwRL,VwRRの何れか大きい方の値からなる最大後輪速VwR(Hi) を後輪速VwR に設定してから、前記図4の演算処理のステップS7に移行する。また、前記ステップS512では、前輪側車輪速センサ3FL,3FRの何れか1個が故障しており、後輪側車輪速センサ3RL,3RRも何れか1個が故障しているとして、前記前左右輪速VwFL,VwFRの最大前輪速VwF(Hi) を前輪速VwF に設定すると共に前記後左右輪速VwRL,VwRRの最大後輪速VwR(Hi) を後輪速VwR に設定してから、前記図4の演算処理のステップS7に移行する。また、前記ステップS513では、前輪側車輪速センサ3FL,3FRは2個共故障しており、後輪側車輪速センサ3RL,3RRも何れか1個が故障しているとして、前記推定車体速度VX(obs)を前輪速VwF に設定すると共に前記後左右輪速VwRL,VwRRの最大後輪速VwR(Hi) を後輪速VwR に設定してから、前記図4の演算処理のステップS7に移行する。また、前記ステップS509では、重要な制御入力となる後左右輪速VwRL,VwRRを検出するための後輪側車輪速センサ3RL,3RRが2個共故障しているとして、個別の演算処理により制動液圧制御の中止並びに乗員への警報の処理を行ってから、当該制動液圧制御に係る全てのフローをジャンプしてメインプログラムに復帰する。
【0043】
次に、前記図4の演算処理のステップS7で実行されるマイナプログラムを図6のフローチャートに従って説明する。
この演算処理では、まずステップS701で、前記図5の演算処理で設定された前後輪速VwF ,VwR を用い、それらの時間微分値を更に前後輪の平均タイヤ転がり動半径rj (jはF(前),R(後)の何れか)で除して各車輪の車輪角加速度ω'wj を算出する。次にステップS702に移行して、後述する後左右輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROP-Rn (=FPROP-RL =FPROP-RR )が“0”のリセット状態か否かを判定し、当該後左右輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROP-Rn (nはL(左),R(右)の何れか)がリセット状態である場合にはステップS703に移行し、そうでない場合にはステップS704に移行する。前記ステップS703では、前記後輪用マスタシリンダ圧PMCR を現在の後輪ホイールシリンダ圧PR に設定してからステップS705に移行する。また、前記ステップS704では、前記記憶装置20cに更新記憶されている前回の後輪ホイールシリンダ圧PR に、後述する前回の図9の演算処理で設定された後輪ホイールシリンダ増減圧量(以下、単に後輪増減圧量とも記す)ΔPR を和して現在の後輪ホイールシリンダ圧PR を設定してから前記ステップS705に移行する。
【0044】
前記ステップS705では、前記読込まれた前輪用マスタシリンダ圧PMCF を前左右輪ホイールシリンダ圧PFL,PFR又は単に前輪ホイールシリンダ圧PF に設定する。次にステップS706に移行して、下記1式に従って、前後ホイールシリンダによる制動トルクTBjを算出する。
【0045】
TBj=μPj・Pj ・Aj ・rrj・2 ……… (1)
但し、式中の
μPj:各輪のディスクブレーキのパッドとディスクロータとの間の摩擦係数
Aj :各輪のディスクブレーキのホイールシリンダの断面積
rrj:各輪のディスクブレーキのディスクロータの有効半径
を示す。なお、制動トルクが2倍されているのは、左右両輪の総和で考えるためである。
【0046】
次にステップS3707に移行して、下記2式に従って、前後各輪の制動力Fj を算出する。
Fj =(|Ij ・ω'wj |+TBj)/rj ……… (2)
但し、式中の
Ij :各輪の慣性モーメント
を示す。
【0047】
ここで、各輪の制動力Fj の導出原理について簡潔に説明する。まず、各車輪の制動力Fj は、下記2−1式のようにそのときの輪荷重Wj と路面摩擦係数μとの積の形で表れる。
【0048】
Fj =μ・Wj ……… (2-1)
一方、車輪の運動方程式からは、下記2−2式を得る。
|Ij ・ω'wj |=μ・Wj ・rj −TBj ……… (2-2)
従って、この2−2式に2−1式の輪荷重Wj を代入して各輪の制動力Fj で解けば前記2式を得る。
【0049】
次にステップS708に移行して、前記ブレーキスイッチ信号SBRK が“1”のON状態であるか否かを判定し、当該ブレーキスイッチ信号SBRK がON状態である場合にはステップS709に移行し、そうでない場合にはステップS710に移行する。前記ステップS709では、下記3式に従って車両重量Wを算出してからステップS711に移行する。
【0050】
W=m・g=(FF +FR )・g/GX ……… (3)
但し、
g:重力加速度
を示す。
【0051】
ここで、車両重量Wの算出原理について簡潔に説明する。四輪の全制動力をFとしたとき、この全制動力Fは、車両質量mを前後加速度XG で減速することになるから、下記3−1式を得る。
【0052】
F=m・XG ……… (3-1)
また、全制動力Fは前輪制動力FF と後輪制動力FR と(何れも左右二輪で算出済)の和であるから、これを3−1式の左辺に代入し、これを車両質量mで解いた後、重力加速度gを乗じて前記3式による車両重量Wを得る。
【0053】
一方、前記ステップS710では、前記3式による車両重量Wの算出原理が適用できないために、予め設定された所定値W0 を車両重量Wに設定してから前記ステップS711に移行する。
【0054】
前記ステップS711では、下記4式、5式に従って前後各輪の輪荷重WF ,WR を算出する。
WF =WF0+W・GX ・H/L ……… (4)
WR =WR0−W・GX ・H/L ……… (5)
但し、
WF0:前輪静荷重
WR0:後輪静荷重
H :車両重心高さ
L :ホイールベース
を示し、前後加速度GX は減速方向で正値とする。
【0055】
次にステップS712に移行して、下記6式に従って目標後輪制動力F* R を算出する。
F* R =(|IF ・ω'wF |+TBF)・WR /(WF ・rF ) ……… (6)
ここで、目標後輪制動力F* R の算出原理について簡潔に説明する。理想制動力配分曲線は、前述したように例えば車両に作用する前後加速度をパラメータとして、前後各輪がロックしない限界制動力をプロットして得られるものであるが、各プロットポイントが前後各輪がロックしない限界制動力であることから、それはタイヤと路面との摩擦係数,所謂路面μをパラメータとしたものにも置換できる。これを図11に示すと、ある路面μが前輪制動力FF の下で決定すれば、その路面μにおいて理想制動力配分を達成する後輪制動力FR が決まる。そして、これらの各制動力FF ,FR は前後各輪の輪荷重WF ,WR と路面μとの積であるから、下記6−1式及び6−2式を得る。
【0056】
FF =μ・WF ……… (6-1)
FR =μ・WR ……… (6-2)
このうち6−1式に、添字jをFに設定した前記2式を代入してμで解けば、下記6−3式を得る。
【0057】
μ=(|IF ・ω'wF |+TBF)/(WF ・rF ) ……… (6-3)
この6−3式を前記6−2式に代入して、つまり前後輪で発生する路面μを等しく設定することで前記6式を得る。
【0058】
次にステップS713に移行して、下記7式に従って後輪制動力偏差ΔFR を算出する。
ΔFR =F* R −FR ……… (7)
次にステップS714に移行して、下記8式に従って後左右輪の各目標後輪ホイールシリンダ増減圧量(以下、単に目標後輪増減圧量とも示す)ΔP* RL,ΔP* RRを算出してから前記図4の演算処理のステップS8に移行する。
【0059】
ΔP* RL=ΔP* RR=k1 ・ΔFR +k2 ・(dΔFR /dt)……… (8)
但し、
k1 :比例ゲイン
k2 :微分ゲイン
を示す。
【0060】
次に、前記図4の演算処理のステップS6で実行されるマイナプログラムを図7のフローチャートに従って説明する。
この演算処理では、まずステップS601で、前述したような故障判定を個別の演算処理によって行い、後輪側の車輪速センサ3RL,3RRが2個共良好な状態にあるか否かを判定し、当該後輪側車輪速センサ3RL,3RRが2個良好な場合にはステップS602に移行し、そうでない場合にはステップS603に移行する。また、前記ステップS602では、同様にして前輪側車輪速センサ3FL,3FRが2個共良好な状態にあるか否かを判定し、当該前輪側車輪速センサ3FL,3FRが2個良好な場合にはステップS604に移行し、そうでない場合にはステップS605に移行する。また、前記ステップS605では、同様にして前輪側車輪速センサ3FL,3FRの何れか1個は良好な状態にあるか否かを判定し、当該前輪側車輪速センサ3FL,3FRが1個良好な場合にはステップS606に移行し、そうでない場合にはステップS607に移行する。
【0061】
一方、前記ステップS603では、前述と同様にして後輪側車輪速センサ3RL,3RRの何れか1個は良好な状態にあるか否かを判定し、当該後輪側車輪速センサ3RL,3RRが1個良好な場合にはステップS608に移行し、そうでない場合にはステップS609に移行する。また、前記ステップS608では、同様にして前輪側車輪速センサ3FL,3FRが2個共良好な状態にあるか否かを判定し、当該前輪側車輪速センサ3FL,3FRが2個良好な場合にはステップS610に移行し、そうでない場合にはステップS611に移行する。また、前記ステップS611では、同様にして前輪側車輪速センサ3FL,3FRの何れか1個は良好な状態にあるか否かを判定し、当該前輪側車輪速センサ3FL,3FRが1個良好な場合にはステップS612に移行し、そうでない場合にはステップS613に移行する。
【0062】
前記ステップS604では、前後輪全ての車輪速センサ3FL〜3RRが良好な状態であるとして、前記前左右輪速VwFL,VwFRの最大前輪速VwF(Hi) を前輪速VwF に設定すると共に後左右輪速VwRL,VwRRを夫々そのまま後左右輪速VwRL,VwRRに設定してから、ステップS614に移行する。また、前記ステップS606では、後輪側車輪速センサ3RL,3RRは2個共良好であるが、前輪側車輪速センサ3FL,3FRの何れか1個が故障しているとして、前左右輪速VwFL,VwFRの最大前輪速VwF(Hi) を前輪速VwF に設定すると共に後左右輪速VwRL,VwRRを夫々そのまま後左右輪速VwRL,VwRRに設定してから、前記ステップS614に移行する。また、前記ステップS607では、後輪側車輪速センサ3RL,3RRは2個共良好であるが、前輪側車輪速センサ3FL,3FRは2個共故障しているとして、前記推定車体速度VX(obs)を前輪速VwF に設定すると共に後左右輪速VwRL,VwRRを夫々そのまま後左右輪速VwRL,VwRRに設定してから、前記ステップS614に移行する。
【0063】
また、前記ステップS610では、前輪側車輪速センサ3FL,3FRは2個共良好であるが、後輪側車輪速センサ3RL,3RRの何れか1個が故障しているとして、前左右輪速VwFL,VwFRの最大前輪速VwF(Hi) を前輪速VwF に設定すると共に前記後左右輪速VwRL,VwRRの最大後輪速VwR(Hi) を共通の後左右輪速VwRL,VwRRに設定してから、ステップS615に移行する。また、前記ステップS612では、前輪側車輪速センサ3FL,3FRの何れか1個が故障しており、後輪側車輪速センサ3RL,3RRも何れか1個が故障しているとして、前記前左右輪速VwFL,VwFRの最大前輪速VwF(Hi) を前輪速VwF に設定すると共に前記後左右輪速VwRL,VwRRの最大後輪速VwR(Hi) を共通の後左右輪速VwRL,VwRRに設定してから、前記ステップS615に移行する。また、前記ステップS613では、前輪側車輪速センサ3FL,3FRは2個共故障しており、後輪側車輪速センサ3RL,3RRも何れか1個が故障しているとして、前記推定車体速度VX(obs)を前輪速VwF に設定すると共に前記後左右輪速VwRL,VwRRの最大後輪速VwR(Hi) を共通の後左右輪速VwRL,VwRRに設定してから、前記ステップS615に移行する。また、前記ステップS609では、重要な制御入力となる後左右輪速VwRL,VwRRを検出するための後輪側車輪速センサ3RL,3RRが2個共故障しているとして、個別の演算処理により制動液圧制御の中止並びに乗員への警報の処理を行ってから、当該制動液圧制御に係る全てのフローをジャンプしてメインプログラムに復帰する。
【0064】
そして、前記ステップS614では、後輪独立制御フラグFINDPを“1”にセットしてから、前記図4の演算処理のステップS9に移行する。また、前記ステップS615では、後輪独立制御フラグFINDPを“0”にリセットしてから、前記図4の演算処理のステップS9に移行する。
【0065】
次に、前記図4の演算処理のステップS9で実行されるマイナプログラムを図8のフローチャートに従って説明する。
この演算処理では、まずステップS901で、添字nを、左輪を示す符号Lに設定する。次にステップS902に移行して、下記9式に従って前後輪速偏差ΔVwRnを算出する。
【0066】
ΔVwRn=VwF −VwRn ……… (9)
次にステップS903に移行して、前記前後輪速偏差ΔVwRnを用いて、下記10式に従って後左右輪の目標後輪ホイールシリンダΔP* Rnを算出する。
【0067】
ΔP* Rn=k3 ・ΔVwRn+k4 ・(dΔVwRn/dt) ………(10)
但し、
k3 :比例ゲイン
k4 :微分ゲイン
を示す。
【0068】
次にステップS904に移行して、前記後輪独立制御フラグFINDPが“0”のリセット状態であるか否かを判定し、当該後輪独立制御フラグFINDPがリセット状態である場合にはステップS905に移行し、そうでない場合にはステップS906に移行する。そして、前記ステップS905では、後右輪用の目標後輪ホイールシリンダΔP* RRを後左輪用の目標後輪ホイールシリンダΔP* RLと同じ値に設定してから、前記図4の演算処理のステップS8に移行する。一方、前記ステップS906では、前記添字nが右輪を示す符号Rであるか否かを判定し、当該添字nが符号Rである場合には前記図4の演算処理のステップS8に移行し、そうでない場合にはステップS907で添字nを、右輪を示す符号Rに設定してから前記ステップS902に移行する。
【0069】
次に、前記図4の演算処理のステップS8で実行されるマイナプログラムを図9のフローチャートに従って説明する。
この演算処理では、まずステップS801で、添字nを、左輪を示す符号Lに設定する。次いでステップS802に移行して、前記目標後輪増減圧量ΔP* Rnが、例えば0MPa程度に予め設定された増圧閾値ΔP* RZより小さいか否かを判定し、当該目標後輪増減圧量ΔP* Rnが増圧閾値ΔP* RZより小さい場合にはステップS803に移行し、そうでない場合にはステップS804に移行する。前記ステップS803では、前記後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROP-Rn を“1”にセットし、次いでステップS805に移行して、前記目標後輪増減圧量ΔP* Rnが、例えば(−10MPa)程度に予め設定された減圧閾値ΔP* RGより大きいか否かを判定し、当該目標後輪増減圧量ΔP* Rnが減圧閾値ΔP* RGより大きい場合にはステップS806に移行し、そうでない場合にはステップS807に移行する。
【0070】
前記ステップS807では、増圧間隔カウンタCNTINT-ZRn をクリアし、次いでステップS808に移行して、増圧カウンタCNTZRn をクリアし、次いでステップS809に移行して、後輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRRnを“1”に設定し、次いでステップS810に移行して、減圧間隔カウンタCNTINT-GRn をインクリメントし、次いでステップS811に移行して、前記減圧間隔カウンタCNTINT-GRn が予め設定された所定カウントアップ値CNTINT-G0以上であるか否かを判定し、当該減圧間隔カウンタCNTINT-GRn が所定カウントアップ値CNTINT-G0以上である場合にはステップS812に移行し、そうでない場合には前記ステップS806に移行する。
【0071】
前記ステップS812では、後輪増減圧量ΔPRnを予め設定された減圧所定値(−ΔPR0)に設定し、次いでステップS813に移行して、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVRnを“1”に設定すると共に、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVRnを予め設定されたパルス幅所定値WAVR0に設定し、次いでステップS814に移行して、前記減圧間隔カウンタCNTINT-GRn をクリアしてからステップS815に移行する。
【0072】
一方、前記ステップS804では、前記後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROP-Rn が“1”のセット状態であるか否かを判定し、当該後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROP-Rn がセット状態である場合にはステップS816に移行し、そうでない場合にはステップS817に移行する。
【0073】
前記ステップS816では、減圧間隔カウンタCNTINT-GRn をクリアし、次いでステップS818に移行して、増圧カウンタCNTZRn をインクリメントし、次いでステップS819に移行して、当該増圧カウンタCNTZRn が予め設定された所定カウントアップ値CNTZ0以上であるか否かを判定し、当該増圧カウンタCNTZRn が所定カウントアップ値CNTZ0以上である場合にはステップS820に移行し、そうでない場合には前記ステップS817に移行する。
【0074】
前記ステップS820では、増圧間隔カウンタCNTINT-ZRn をインクリメントし、次いでステップS821に移行して、前記増圧間隔カウンタCNTINT-ZRn が予め設定された所定カウントアップ値CNTINT-Z0以上であるか否かを判定し、当該増圧間隔カウンタCNTINT-ZRn が所定カウントアップ値CNTINT-Z0以上である場合にはステップS822に移行し、そうでない場合には前記ステップS806に移行する。
【0075】
前記ステップS822では、後輪増減圧量ΔPRnを予め設定された増圧所定値(+ΔPR0)に設定し、次いでステップS823に移行して、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVRnを予め設定されたパルス幅所定値WEVR0に設定すると共に、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVRnを“0”に設定し、次いでステップS824に移行して、前記増圧間隔カウンタCNTINT-ZRn をクリアしてから前記ステップS815に移行する。
【0076】
そして、前記ステップS806では、後輪増減圧量ΔPRnを“0”に設定し、次いでステップS825に移行して、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVRnを“1”に設定すると共に、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVRnを“0”に設定してから前記ステップS815に移行する。
【0077】
また、前記ステップS817では、前記後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROP-Rn を“0”にリセットし、次いでステップS826に移行して、前記後輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRRnを“0”に設定し、次いでステップS827に移行して、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVRnを“0”に設定すると共に、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVRnを“0”に設定し、次いでステップS828に移行して、前記増圧間隔カウンタCNTINT- ZRn をクリアしてから前記ステップS815に移行する。
【0078】
前記ステップS86では、前記添字nが右輪を示す符号Rであるか否かを判定し、当該添字nが符号Rである場合にはステップS829に移行し、そうでない場合にはステップS830に移行する。そして、前記ステップS829では、前左輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRFL及び前右輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRFRを共に“0”に設定すると共に、前左輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVFL及び前右輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVFRを共に“0”に設定すると共に、前左輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVFL及び前右輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVFRを共に“0”に設定し、次いでステップS831に移行して、個別の演算処理により、前述した各パルス幅設定パラメータWEVi ,WAVi ,WMRi に応じた各制御信号SEVi ,SAVi ,SMRi (iはFL,FR,RL,RRの何れか)を創成出力してからメインプログラムに復帰する。
【0079】
一方、前記ステップS830では、添字Rを、右輪を示す符号Rに設定してから前記ステップS802に移行する。
次に、前記図9の演算処理のステップS831で行われる演算処理の概要について端的に説明する。この演算処理では、前記各車輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVi が“0”のときには、図10aに示すように、前記図4の演算処理のサンプリング周期ΔTの間、常時OFF状態の各車輪用流入弁制御信号SEVi が出力される。また、前記各車輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVi が“0”のときには、図10bに示すように、前記サンプリング周期ΔTの間、常時OFF状態の各車輪用流出弁制御信号SAVi が出力される。
【0080】
また、前記後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVRnが前記パルス幅所定値WEVR0のとき(その他の車輪には当該パルス幅所定値WEVR0は適用されない)には、図10cに示すように、前記サンプリング周期ΔTのうちの最初に、当該パルス幅所定値WEVR0に相当する所定時間だけOFF状態となり、その後はON状態となる後輪用流入弁制御信号SEVRnが出力される。また、前記後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVRnが前記パルス幅所定値WAVR0のとき(その他の車輪には当該パルス幅所定値WAVR0は適用されない)には、図10dに示すように、前記サンプリング周期ΔTのうちの最初に、当該パルス幅所定値WAVR0に相当する所定時間だけON状態となり、その後はOFF状態となる後輪用流出弁制御信号SAVRnが出力される。
【0081】
また、前記各車輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVi が“1”のときには、図10eに示すように、前記サンプリング周期ΔTの間、常時ON状態の各車輪用流入弁制御信号SEVi が出力される。また、前記各車輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVi が“1”のときには、図10fに示すように、前記サンプリング周期ΔTの間、常時ON状態の各車輪用流出弁制御信号SAVi が出力される。
【0082】
また、前記各車輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRi が“0”のときには、図10gに示すように、前記サンプリング周期ΔTの間、常時OFF状態の各車輪用ポンプ制御信号SMRi が出力される。また、前記各車輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRi が“0”のときには、図10hに示すように、前記サンプリング周期ΔTの間、常時ON状態の各車輪用ポンプ制御信号SMRi が出力される。
【0083】
次に、理解を容易化するために、図9の演算処理の詳細部分の作用について予め説明しておくと、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVRn(nはL又はR)が前記所定値WEVR0に設定されるのは、図9の演算処理のステップS820乃至ステップS824のフローが実行されるときである。しかしながらこのとき、ステップS820でインクリメントされる増圧間隔カウンタCNTINT-ZRn が所定値CNTINT-Z0以上にならない限り、ステップS821からステップS806を経てステップS825に移行するから、この間は後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR が“1”、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR が“0”となり、後輪用アクチュエータユニット6RL,6LLの流入弁8及び流出弁9が共に閉状態になって後左右輪ホイールシリンダ圧PRnは保持される。そして、増圧間隔カウンタCNTINT-ZRn が前記所定値CNTINT-Z0以上になる度に、ステップS821からステップS822,ステップS823に移行し、ここで始めて後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVRnは前記所定値WEVR0に設定され、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVRnは“0”に設定され、これにより後輪用アクチュエータユニット6RL,6RRの流出弁9を閉状態に維持しながら、流入弁8だけが前記パルス幅所定値WEVR0に相当する短時間だけ開状態となり、この間に後左右輪ホイールシリンダ圧PRnは前記増圧所定値(+ΔPR0)分だけ増圧されるのである。なお、このように後左右輪ホイールシリンダ圧PRnがステップ的に増圧された後は、ステップS824で増圧間隔カウンタCNTINT-ZRn がクリアされてしまうので、再び増圧間隔カウンタCNTINT-Z が所定値CNTINT-Z0以上となるまでは、後左右輪ホイールシリンダ圧PRnの増圧は行われない。
【0084】
また、後輪ホイールシリンダ圧PR の減圧時にも同様に、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR が前記所定値WAVR0に設定されるのは、図9の演算処理のステップS810乃至ステップS814のフローが実行される場合である。このフローでも、そのステップS810でインクリメントされる減圧間隔カウンタCNTINT-GRn が所定値CNTINT-G0以上にならない限り、ステップS811からステップS806を経てステップS825に移行するから、この間は後輪用アクチュエータユニット6RL,6RRの流入弁8及び流出弁9が共に閉状態になって後左右輪ホイールシリンダ圧PRnは保持される。そして、減圧間隔カウンタCNTINT-GRn が前記所定値CNTINT-G0以上になる度に、ステップS811からステップS812,ステップS813に移行し、ここで始めて後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVRnが前記所定値WAVR0に設定され、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVRnは“1”に設定され、これにより後輪用アクチュエータユニット6RL,6RRの流入弁8を閉状態に維持しながら、流出弁9だけが前記パルス幅所定値WAVR0に相当する短時間だけ開状態となり、既にステップS809で後輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRRnが“1”に設定されて後輪用ポンプ10が駆動されているために、この間に後左右輪ホイールシリンダ圧PRnは前記減圧所定値(−ΔPR0)分だけ減圧されるのである。なお、この場合も後左右輪ホイールシリンダ圧PRnがステップ的に減圧された後は、ステップS814で減圧間隔カウンタCNTINT-GRn がクリアされてしまうので、再び減圧間隔カウンタCNTINT-GRn が前記所定値CNTINT-G0以上となるまでは、後左右輪ホイールシリンダ圧PRnの減圧は行われない。
【0085】
即ち、目標後輪増減圧量ΔP* Rnが、不感帯の上限閾値に相当する前記増圧閾値ΔP* RZ以上である場合には、前記増圧側間隔用所定カウントアップ値CNTINT-Z0に相当する所定時間毎に、各後輪用アクチュエータユニット6RL,6RRの流入弁8が前記流入側パルス幅所定値WEVR0に相当する短時間だけ開かれて、後左右輪の各ホイールシリンダ圧PRnはステップ的な増圧が繰返される。また、目標後輪増減圧量ΔP* Rnが、不感帯の加減閾値に相当する前記減圧閾値ΔP* RG以下である場合には、前記減圧側間隔用所定カウントアップ値CNTINT-G0に相当する所定時間毎に、各後輪用アクチュエータユニット6RL,6RRの流出弁9が前記流出側パルス幅所定値WAVR0に相当する短時間だけ開かれて、後左右輪の各ホイールシリンダ圧PRnはステップ的な減圧が繰返される。
【0086】
また、特に前述のような後左右輪ホイールシリンダ圧PRnをステップ的に増圧する場合にはステップS816からステップS819のフローを通過する。ここで、ステップS818でインクリメントされる増圧カウンタCNTZRn が前記所定値CNTZ0以上になった場合、即ち前述のような後左右輪ホイールシリンダ圧PRnのステップ的な増圧が所定回数だけ繰返された場合には、ステップS819からステップS817,ステップS826を経てステップS827へのフローに移行する。このフローは、後輪用アクチュエータユニット6RL,6RRの流入弁8を開,流出弁9を閉状態に維持して、後輪用マスタシリンダ圧PMCR が直接後輪ホイールシリンダ2RL,2RRに流入する急増圧モードである。つまり、制御された後輪ホイールシリンダ圧PRnのステップ的な増圧が所定回数繰返されたら、通常のブレーキ状態に復帰して制動距離が確保されるようにしている。
【0087】
次に、本実施形態のアンチスキッド非制御中における全体的な作用について説明するにあたり、例えば前記圧力センサ13F,13R及び各車輪速センサ3FL〜3RR等の全てのセンサ類が良好な場合には、まず図4の演算処理のステップS1乃至ステップS3で必要な検出情報を読込んだ後、マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR 用の圧力センサ13F,13Rが良好であるからステップS5に移行して図5の演算処理を行う。この図5の演算処理では、全ての車輪速センサ3FL〜3RRが良好なのであるから、ステップS501からステップS502を経てステップS504に移行し、ここで、平均前輪速VwF(AV) が代表的な前輪速VwF に、平均後輪速VwR(AV) が代表的な後輪速VwR に設定されてから、次いで図4の演算処理のステップS7,即ち図6の演算処理が行われる。なお、前記平均前輪速VwF(AV) や平均後輪速VwR(AV) が代表的な前輪速VwF や後輪速VwR であるというわけではないが、前述のように又は後述のように、各車輪速センサ3FL〜3RRの故障時に、良好な車輪速若しくは推定車体速度を前輪速VwF や後輪速VwR として代用することもあるため、このように設定される前輪速や後輪速を代表的な前輪速VwF や後輪速VwR と表す。また、後述する図6の演算処理では、後左右輪の各ホイールシリンダ圧PRL,PRRは共通化制御されるので、それらについては後左右という断りを入れずに、単に後輪ホイールシリンダ圧PR とのみ記す。
【0088】
そして、この図6の演算処理では、まずステップS701で、前記設定された代表的な前輪速VwF 及び後輪速VwR の時間微分値から前後輪角加速度ω'wj を算出し、次いで後輪ホイールシリンダ圧PR が制御中であればステップS704に移行して、前記図9の演算処理で設定される所定後輪増減圧量ΔPR を前回の後輪ホイールシリンダ圧PR に和して今回の後輪ホイールシリンダ圧PR を算出する。勿論、後左右輪ホイールシリンダ圧PR の非制御中には、後輪側マスタシリンダ圧PMCR を後輪ホイールシリンダ圧PR に設定する。また、続くステップS705では、前輪側マスタシリンダ圧PMCF を前輪ホイールシリンダ圧PF に設定する。これにより、前輪の制動用シリンダの液圧はマスタシリンダの液圧と等価になる。次いで、ステップS706では、前記前後輪の各ホイールシリンダ圧PF ,PR を用いて前後ホイールシリンダの制動トルクTBjを算出し、更に続くステップS707では、これらの制動トルクTBjと、各車輪に作用する減速モーメントとの和から前後輪の制動力Fj を算出する。また、このように前後輪の総制動力(FF +FR )が分かると、次のステップS709で現在の車両重量Wを正確に算出できるから、この車両重量Wと前後加速度GX とを用いて、続くステップS711で前後輪荷重WF ,WR を求めることができ、これに基づいて現在の輪荷重状態において理想制動力配分を達成するための目標後輪制動力FR * を、続くステップS712で算出することができる。そして、このようにして理想制動力配分を達成する目標後輪制動力FR * が算出されたら、続くステップS713からステップS714で、現在の後輪制動力FR を目標後輪制動力FR * とすべき目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* RL,(=)ΔP* RRが算出される。なお、このように目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* Rnが算出設定されると、それに応じた後輪ホイールシリンダ圧PRnが、前記図9の演算処理で実行されるのは前述の通りであるから、重複する詳細な説明を省略する。
【0089】
これに対して、マスタシリンダの圧力センサ13F,13Rや後輪の二つの車輪速センサ3RL,3RRは良好であるが、前輪の車輪速センサ3FL,3FRのうちの何れか一方が故障したとする。このときも、前記図4の演算処理ではステップS4からステップS5,ステップS7に移行するために、前述と同様に図5の演算処理並びに図6の演算処理がマイナプログラムとして実行されることになる。すると、図5の演算処理のステップS501からステップS502,ステップS505を経てステップS506に移行し、ここで前左右輪速VwFL,VwFRの何れか大きい方の値からなる最大前輪速VwF(Hi) が代表的な前輪速VwF に設定され、代表的な後輪速VwR には、前述と同様に平均後輪速VwR(AV) が設定される。前述のように、この種の車輪速センサの故障は、波形信号が得られなくなる,つまり検出される車輪速Vwi が大幅に小さくなるか若しくは零になるために、最大前輪速VwF(Hi) を代表的な前輪速VwF に設定すれば、故障した車輪速センサの前輪速VwFnを無視して、実際の前輪速VwF をより正確に反映した値になる。そして、このように設定された代表的な前輪速VwF 及び後輪速VwR を用いて図6の演算処理や図9の演算処理を実行すれば、少なくとも故障した車輪速センサの影響を受けずに、輪荷重変動を考慮した後輪制動力制御を継続することができる。勿論、旋回走行やスプリットμ路面等の影響を考慮すれば、この最大前輪速VwF(Hi) で前記輪荷重変動等の演算処理を行うことは必ずしも正確なものにならない可能性もあるが、少なくとも後輪の制動力を理想制動力配分に近づけることはできる。
【0090】
また、マスタシリンダの圧力センサ13F,13Rや後輪の二つの車輪速センサ3RL,3RRは良好であるが、前輪の車輪速センサ3FL,3FRが双方とも故障したとする。このときも図4の演算処理の判定から図5及び図6の演算処理が実行されるが、図5の演算処理では、そのステップS501からステップS502,ステップS505を経てステップS507に移行し、ここで推定車体速度VX(obs)が代表的な前輪速VwF に設定され、代表的な後輪速VwR には前記平均後輪速VwR(AV) が設定される。これを用いて、図6の輪荷重変動を考慮した目標後輪増減圧量ΔP* Rnの算出演算処理や、それに応じた図9の制御信号出力演算処理が行われ、少なくとも故障した車輪速センサの影響を受けずに、輪荷重変動を考慮した後輪制動力制御を継続することができる。この場合には、制動中の実際の前左右輪速VwFnに対して推定車体速度VX(obs)が大きくなる傾向にあるが、前述のようなアンチスキッド制御装置を並設した車両にあっては、両者がさほど大幅に異なるものではないし、従って少なくとも後輪の制動力を理想制動力配分に近づけることができる。
【0091】
また、マスタシリンダの圧力センサ13F,13Rや前輪の二つの車輪速センサ3FL,3FRは良好であるが、後輪の車輪速センサ3RL,3RRのうちの何れか一方が故障したとする。このときも図4の演算処理の判定から図5及び図6の演算処理が実行されるが、図5の演算処理では、そのステップS501からステップS503,ステップS508を経てステップS510に移行し、ここで後左右輪速VwRL,VwRRの何れか大きい方の値からなる最大後輪速VwR(Hi) が代表的な後輪速VwR に設定され、代表的な前輪速VwF には前記平均前輪速VwF(AV) が設定される。これを用いて、図6の輪荷重変動を考慮した目標後輪増減圧量ΔP* Rnの算出演算処理や、それに応じた図9の制御信号出力演算処理が行われ、少なくとも故障した車輪速センサの影響を受けずに、輪荷重変動を考慮した後輪制動力制御を継続することができる。この場合にも、旋回走行やスプリットμ路面等が制御の正確性に影響することが考えられるが、少なくとも後輪の制動力を理想制動力配分に近づけることはできる。
【0092】
また、マスタシリンダの圧力センサ13F,13Rは良好であるが、前輪の二つの車輪速センサ3FL,3FRのうちの何れか一方及び後輪の車輪速センサ3RL,3RRのうちの何れか一方が故障したとする。このときも図4の演算処理の判定から図5及び図6の演算処理が実行されるが、図5の演算処理では、そのステップS501からステップS503,ステップS508,ステップS511を経てステップS512に移行する。このステップS512は、前記ステップS510とステップS506の組合せであり、後左右輪速VwRL,VwRRの最大後輪速VwR(Hi) が代表的な後輪速VwR に設定されると共に、前左右輪速VwFL,VwFRの最大前輪速VwF(Hi) が代表的な前輪速VwF に設定される。従って、このときも故障した車輪速センサの影響を受けずに、輪荷重変動を考慮した後輪制動力制御を継続することができ、しかも少なくとも後輪の制動力を理想制動力配分に近づけることができる。
【0093】
また、マスタシリンダの圧力センサ13F,13Rは良好であるが、前輪の二つの車輪速センサ3FL,3FRの双方及び後輪の車輪速センサ3RL,3RRのうちの何れか一方が故障したとする。このときも図4の演算処理の判定から図5及び図6の演算処理が実行されるが、図5の演算処理では、そのステップS501からステップS503,ステップS508,ステップS511を経てステップS513に移行する。このステップS513は、前記ステップS510とステップS507の組合せであり、後左右輪速VwRL,VwRRの最大後輪速VwR(Hi ) が代表的な後輪速VwR に設定され、推定車体速度VX(obs)が代表的な前輪速VwF に設定される。従って、このときも故障した車輪速センサの影響を受けずに、輪荷重変動を考慮した後輪制動力制御を継続することができ、しかも少なくとも後輪の制動力を理想制動力配分に近づけることができる。
【0094】
また、マスタシリンダの圧力センサ13F,13Rは良好であるが、前輪の二つの車輪速センサ3FL,3FRの状態に係わらず、後輪の車輪速センサ3RL,3RRの双方が故障したとする。このときも図4の演算処理の判定から図5及び図6の演算処理が実行されるが、図5の演算処理では、そのステップS501からステップS503を経てステップS509に移行する。このとき、後輪の制動力を制御するために最も重要な後左右輪速VwRnを得ることができず、しかもそれらは如何なる代用もきかないので、当該ステップS509において制御の中止と警報の処理を行った後、全ての後輪制御のフローをジャンプしてメインプログラムに復帰する。即ち、後輪の制動力を制御するための後左右輪の車輪速センサ3RL,3RRが故障したときには、即座に制御を中止することで、却って制御の信頼性を確保することができる。
【0095】
一方、各車輪速センサ3FL〜3RRは全て良好であるが、マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR を検出する圧力センサ13F,13Rが故障したとする。このように圧力センサ13F,13Rが故障すると、前記図6の演算処理によって、輪荷重変動を考慮した目標後輪制動力FR * 並びに目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* RL,ΔP* RRを算出することができなくなる。そこで、図4の演算処理では、前記ステップS4からステップS6で行われる図7の演算処理及びステップS9で行われる図8の演算処理に移行する。ちなみに、図8の演算処理では、後左右輪のホイールシリンダ圧PRnを個別に制御することを前提としている。従って、図7の演算処理では、全ての車輪速センサ3FL〜3RRが良好なのであるから、ステップS601からステップS602を経てステップS604に移行し、ここで、前記最大前輪速VwF(Hi) が代表的な前輪速VwF に設定され、後左右輪速VwRL,VwRRはそのまま代表的な後左右輪速VwRL,VwRRとして採用され、次いでステップS614に移行して後輪独立制御フラグFINDPが“1”にセットされる。
【0096】
続いて実行される図8の演算処理では、まずステップS901で添字nが左輪を示す符号Lに設定され、次いでステップS902に移行して、前記代表的な前輪速VwF に対して、この符号Lを代入した後左輪速VwRLの前後輪速偏差ΔVwRLが算出され、続くステップS903で当該前後輪速偏差ΔVwRLに応じた後左輪の目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* RLが算出される。そして、次のステップS904では、前記後輪独立制御フラグFINDPがセット状態であるためにステップS906に移行し、未だ前記添字nは符号LのままであるからステップS907に移行し、ここで添字nが右輪を示す符号Rに設定され、再びステップS902,ステップS903を経て後右輪速VwRRの前後輪速偏差ΔVwRR及び後右輪の目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* RRが算出される。即ち、後輪の二つの車輪速センサ3RL,3RRが良好で、後輪独立制御フラグFINDPがセットされている状態では、後左右輪に対する夫々の目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* RL,ΔP* RRが個別に設定されることになる。そして、再びステップS904からステップS906に移行し、ここで前記添字nが右輪を示す符号Rであるために続く図9の演算処理へと移行して、前述と同様の後輪ホイールシリンダ圧PRnが実行される。従って、マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR の圧力センサ13F,13Rが故障しても、各車輪速センサ3FL〜3RRが良好であれば、最大前輪速VwF(Hi) に対する後左右輪速VwRL,VwRRの偏差を是正するように左右の後輪ホイールシリンダ圧PRnを制御して、個々に理想制動力配分を達成することができる。なお、代表的な前輪速VwF に最大前輪速VwF(Hi) を採用するのは、後輪のロック傾向をできるだけ正確に且つ速やかに検出して、確実に理想制動力配分を達成するためである。
【0097】
これに対して、同じくマスタシリンダの圧力センサ13F,13Rは故障し、後輪の二つの車輪速センサ3RL,3RRは良好であるが、前輪の車輪速センサ3FL,3FRのうちの何れか一方が故障したとする。このときも、前記図4の演算処理ではステップS4からステップS6,ステップS9に移行するために、前述と同様に図7の演算処理並びに図8の演算処理がマイナプログラムとして実行される。すると、図6の演算処理のステップS601からステップS602,ステップS605を経てステップS606に移行し、ここでも前記最大前輪速VwF(Hi) が代表的な前輪速VwF に設定され、後左右輪速VwRL,VwRRはそのまま代表的な後左右輪速VwRL,VwRRとして採用され、次のステップS614で後輪独立制御フラグFINDPが“1”にセットされる。この設定自体は、前記車輪速センサ3FL〜3RRが良好な場合と同様であるから、続く図8の演算処理及び図9の演算処理によって、少なくとも故障した車輪速センサの影響を受けずに、車輪速Vwi のみに応じた後輪制動力制御を継続することができる。勿論、前輪の車輪速センサ3FL,3FRのうちの何れか一方が故障している状態で、前記最大前輪速VwF(Hi) で選出される前左右輪速VwFnが真に最大のものであるか否かは不明であるから、それが例えば旋回走行やスプリットμ路面の影響で真に最大のものでない場合には、その分だけ制御の応答性が低下することもあり得るが、少なくとも後輪の制動力を理想制動力配分に近づけることができる。
【0098】
また、同じくマスタシリンダの圧力センサ13F,13Rが故障し、後輪の二つの車輪速センサ3RL,3RRは良好であるが、前輪の車輪速センサ3FL,3FRが双方とも故障したとする。このときも図4の演算処理の判定から図7及び図8の演算処理が実行されるが、図7の演算処理では、そのステップS601からステップS602,ステップS605を経てステップS607に移行し、ここで推定車体速度VX(obs)が代表的な前輪速VwF に設定され、後左右輪速VwRL,VwRRはそのまま代表的な後左右輪速VwRL,VwRRとして採用され、次のステップS614で後輪独立制御フラグFINDPが“1”にセットされる。これを用いて、前記図7の車輪速Vwi のみに応じた目標後輪増減圧量ΔP* Rnの算出演算処理や、それに応じた図9の制御信号出力演算処理が行われ、少なくとも故障した車輪速センサの影響を受けずに、車輪速Vwi のみに応じた後輪制動力制御を継続することができる。この場合にも、制動中の実際の前左右輪速VwFnに対して推定車体速度VX(obs)が大きくなる傾向にあるが、前述のようなアンチスキッド制御装置を並設した車両にあっては、両者がさほど大幅に異なるものではないし、従って少なくとも後輪の制動力を理想制動力配分に近づけることができる。
【0099】
また、同じくマスタシリンダの圧力センサ13F,13Rが故障し、前輪の二つの車輪速センサ3FL,3FRは良好であるが、後輪の車輪速センサ3RL,3RRのうちの何れか一方が故障したとする。このときも図4の演算処理の判定から図7及び図8の演算処理が実行されるが、図7の演算処理では、そのステップS601からステップS603,ステップS608を経てステップS610に移行し、ここで前記後左右輪速VwRL,VwRRの最大後輪速VwR(Hi) が代表的な後左右輪速VwRL,(=)VwRRに設定され、代表的な前輪速VwF には前記最大前輪速VwF(Hi) が設定され、次のステップS615で後輪独立制御フラグFINDPが“0”にリセットされる。従って、これに引き続いて図8の演算処理が実行されると、前述と同様にステップS901乃至ステップS903で後左輪速VwRLの前後輪速偏差ΔVwRL及び後左輪の目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* RLが算出されるが、次のステップS904からステップS905に移行して、当該後左輪の目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* RLをそのまま後右輪の目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* RRに設定してから、前記図9の制御信号出力演算処理に移行してしまう。これにより、少なくとも故障した車輪速センサの影響を受けずに、車輪速Vwi のみに応じた後輪制動力制御を継続することができるが、この場合には後左右輪の後輪ホイールシリンダ圧PRnは、結果的に共通化制御されることになる。この場合にも、旋回走行やスプリットμ路面等が制御の正確性や応答性に影響することが考えられるが、少なくとも後輪の制動力を理想制動力配分に近づけることはできる。
【0100】
また、マスタシリンダの圧力センサ13F,13Rが故障し、前輪の二つの車輪速センサ3FL,3FRのうちの何れか一方及び後輪の車輪速センサ3RL,3RRのうちの何れか一方が故障したとする。このときも図4の演算処理の判定から図7及び図8の演算処理が実行されるが、図5の演算処理では、そのステップS601からステップS603,ステップS608,ステップS611を経てステップS612に移行する。このステップS612は、前記ステップS610とステップS606の組合せであり、後左右輪速VwRL,VwRRの最大後輪速VwR(Hi) が代表的な後左右輪速VwRL,(=)VwRRに設定されると共に、前左右輪速VwFL,VwFRの最大前輪速VwF(Hi) が代表的な前輪速VwF に設定される。従って、このときも故障した車輪速センサの影響を受けずに、車輪速Vwi のみに応じた後輪制動力制御を継続することができ、しかも少なくとも後輪の制動力を理想制動力配分に近づけることができる。
【0101】
また、マスタシリンダの圧力センサ13F,13Rが故障し、前輪の二つの車輪速センサ3FL,3FRの双方及び後輪の車輪速センサ3RL,3RRのうちの何れか一方が故障したとする。このときも図4の演算処理の判定から図7及び図8の演算処理が実行されるが、図7の演算処理では、そのステップS601からステップS603,ステップS608,ステップS611を経てステップS613に移行する。このステップS613は、前記ステップS610とステップS607の組合せであり、後左右輪速VwRL,VwRRの最大後輪速VwR(Hi) が代表的な後左右輪速VwRL,(=)VwRRに設定され、推定車体速度VX(obs)が代表的な前輪速VwF に設定される。従って、このときも故障した車輪速センサの影響を受けずに、車輪速Vwi のみに応じた後輪制動力制御を継続することができ、しかも少なくとも後輪の制動力を理想制動力配分近づけることができる。
【0102】
また、マスタシリンダの圧力センサ13F,13Rが故障し、前輪の二つの車輪速センサ3FL,3FRの状態に係わらず、後輪の車輪速センサ3RL,3RRの双方が故障したとする。このときも図4の演算処理の判定から図7及び図8の演算処理が実行されるが、図7の演算処理では、そのステップS601からステップS603を経てステップS609に移行する。このときも、後輪の制動力を制御するために最も重要な後左右輪速VwRnを得ることができず、しかもそれらは如何なる代用もきかないので、当該ステップS609において制御の中止と警報の処理を行った後、全ての後輪制御のフローをジャンプしてメインプログラムに復帰する。即ち、後輪の制動力を制御するための後左右輪の車輪速センサ3RL,3RRが故障したときには、即座に制御を中止することで、却って制御の信頼性を確保することができる。
【0103】
以上より、前記車輪速センサ3FL〜3RR及び図4の演算処理のステップS2が本発明の車輪速検出手段を構成し、以下同様に、前記コントロールユニットCR及び図3乃至図9の演算処理が制動液圧制御手段を構成し、図3の演算処理のステップS01が推定車体速度算出手段を構成し、図5の演算処理のステップS501乃至ステップS504,ステップS505,ステップS508,ステップS511及び図7の演算処理のステップS601乃至ステップS604,ステップS605,ステップS608,ステップS611が車輪速検出手段の故障検出手段を構成し、図5の演算処理のステップS504,ステップS506,ステップS507,ステップS509,ステップS510,ステップS512,ステップS513及び図7の演算処理のステップS604,ステップS606,ステップS607,ステップS609,ステップS610,ステップS612,ステップS613が車輪速検出手段故障時の故障時対応手段を構成し、圧力センサ13F,13R及び図4の演算処理のステップS1が作動液圧検出手段を構成し、図4の演算処理のステップS4が作動液圧検出手段の故障検出手段を構成し、図4の演算処理のステップS5,ステップS6が作動液圧検出手段故障時の故障時対応手段を構成している。
【0104】
なお、前記実施形態における車輪速のみに応じた後輪ホイールシリンダ圧制御態様は図12aのTypeAに、輪荷重変動を考慮した後輪ホイールシリンダ圧制御態様は図12bのTypeC’に相当するが、これ以外にも各車輪速を用いた後輪ホイールシリンダ圧制御の態様は種々存在し、それらも合わせて、故障する車輪速センサの位置と個数に応じた故障時対応を同図にまとめた。このうち、同図aのTypeBに相当する後輪を共通制御し且つ代表的な前輪速VwF には最大前輪速VwF(Hi) を,代表的な後輪速VwR には最小後輪速VwR(Lo) を用いるものや、TypeCに相当する後輪を共通制御し且つ代表的な前輪速VwF には最大前輪速VwF(Hi) を,代表的な後輪速VwR には平均後輪速VwR(AV) を用いるものは、各車輪速センサの故障位置と個数に応じて前記TypeAと同様に故障時対応すればよい。また、同図bのTypeA’に相当する後輪を独立制御し且つ代表的な前輪速VwF には平均前輪速VwF(AV) を,代表的な後輪速VwR には個々の後輪速VwR(INDP) を夫々独立して用いるものや、TypeB’に相当する後輪を共通制御し且つ代表的な前輪速VwF には平均前輪速VwF(AV) を,代表的な後輪速VwR には最小後輪速VwR(Lo) を用いるものは、各車輪速センサの故障位置と個数に応じて前記TypeC’と同様に故障時対応すればよい。なお、代表的な後輪速VwR に最小後輪速VwR(Lo) を設定するものは、後輪を共通制御するにあたって、後輪のロック傾向を正確に且つ速やかに検出することを目的としている。
【0105】
また、前記実施形態では、前輪のホイールシリンダ圧PF をマスタシリンダ圧PMCF から推定するようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、各前輪ホイールシリンダ2FL,2FRのホイールシリンダ圧PF を圧力センサ等で直接検出するようにしてもよい。
【0106】
また、本発明の制動液圧制御装置は,後輪駆動車,前輪駆動車,四輪駆動車等のあらゆる車両に適用可能である。
また、前記各実施形態はコントロールユニットとしてマイクロコンピュータを適用した場合について説明したが、これに代えてカウンタ,比較器等の電子回路を組み合わせて構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制動液圧制御装置をアンチスキッド制御装置に展開した一例を示す車両概略構成図である。
【図2】図1のアクチュエータの一例を示す概略構成図である。
【図3】図1のコントロールユニットで実行される制動力制御の演算処理の一実施形態を示すフローチャートである。
【図4】図3の演算処理で実行される演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図4の演算処理で実行される演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】図4の演算処理で実行される演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図4の演算処理で実行される演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】図4の演算処理で実行される演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】図4の演算処理で実行される演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】図9の演算処理で実行される制御信号の説明図である。
【図11】理想制動力配分の説明図である。
【図12】車輪速センサ故障時の対応をまとめた説明図である。
【符号の説明】
1FL〜1RRは車輪
2FL〜2RRはホイールシリンダ(制動用シリンダ)
3FL〜3RRは車輪速センサ(車輪速検出手段)
4はブレーキペダル
5はマスタシリンダ
6FL〜6RRはアクチュエータユニット
8は電磁流入弁
9は電磁流出弁
10はポンプ
13F,13Rは圧力センサ(作動液圧検出手段)
15は前後加速度センサ
20はマイクロコンピュータ
22aFL〜22cRは駆動回路
EGはエンジン
Tは変速機
DGはディファレンシャルギヤ
CRはコントロールユニット
Claims (5)
- 少なくとも車両の後輪の制動用シリンダの作動液圧を指令信号に応じて調整可能なアクチュエータと、各車輪の車輪速度を検出する車輪速検出手段と、この車輪速検出手段で検出された車輪速度に基づいて理想制動力配分となる後輪制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する制御を行う制動液圧制御手段と、前記車輪速検出手段で検出される車輪速度に基づいて推定車体速度を算出する推定車体速度算出手段と、前記各車輪速検出手段の故障を検出する故障検出手段と、前記車輪速検出手段のうち、前左右輪の双方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したとき、前記推定車体速度算出手段で算出される推定車体速度を前左右輪速度の代用値として用いて前記制御を行う故障時対応手段とを備えたことを特徴とするものである。
- 前記故障時対応手段は、前記車輪速検出手段のうち、後左右輪のうちの一方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したとき、検出される後左右輪の車輪速度のうちの何れか大きい方の車輪速度を後左右輪速度の代用値として用いて前記制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の制動液圧制御装置。
- 前記故障時対応手段は、前記車輪速検出手段のうち、前左右輪のうちの一方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したとき、検出される前左右輪の車輪速度のうちの何れか大きい方の車輪速度を前左右輪速度の代用値として用いて前記制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の制動液圧制御装置。
- 前記故障時対応手段は、前記車輪速検出手段のうち、後左右輪の双方の車輪速度を検出する車輪速検出手段が故障したとき、前記制御を中止することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の制動液圧制御装置。
- マスタシリンダ又は前輪の制動用シリンダの作動液圧を検出する作動液圧検出手段を備え、前記制動液圧制御手段は、前記作動液圧検出手段で検出された作動液圧に基づいて理想制動力配分となる後輪制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する制御を行うと共に、前記故障時対応手段は、前記作動液圧検出手段が故障したとき、前記車輪速検出手段で検出された車輪速度のみに基づいて理想制動力配分となる後輪制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する制御を行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の制動液圧制御装置。
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