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JP3675378B2 - 高比重高強度タングステン焼結合金製ウェート - Google Patents

高比重高強度タングステン焼結合金製ウェート Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば携帯通信機器等における呼び出しのための振動発生用の偏心ウェートや、防振のためのバランスウェートや、単なる重りとしてのウェートなどに用いた場合に好適な高比重高強度タングステン焼結合金製ウェートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の偏心ウェートを構成するタングステン焼結合金としては、W(タングステン)−Ni(ニッケル)−Cu(銅)、W−Ni−Fe(鉄)、W−Ni−Mo(モリブデン)−Fe、W−Ni−Mo−Co(コバルト)合金等のものが知られている。このタングステン焼結合金で所定の形状のものを製造するには、W、Ni、Cu等の粉末を押型で圧縮成形し、これによって得られた圧粉体を加熱焼結することによって行うことになる。このため、ウェートとしての所望の形状を容易に得ることができるという利点がある。しかし、焼結性を確保するために、W成分以外のNi、Co等の低融点結合相形成成分を5重量%以上にする必要があることから、18.5以上の比重のウェートを製造することができなかった。
【0003】
一方、タングステン焼結合金としては、例えば電球のフィラメントのように、Wをほぼ100重量%含むものも知られている。従って、このようなタングステン焼結合金であれば、比重を18.5以上にすることが可能である。しかし、このタングステン焼結合金で所定の形状のものを製造するには、Wの粉末を押型で圧縮成形して、細長い角棒状の圧粉体を成形し、その両端に大電流を通じて、融点(3370℃)の少し下の温度(2800℃)の高温で焼結して棒状の焼結体を形成してから、1700〜1800℃の高温で鍛造しなければならない。従って、線状のものを製造するにはよいが、ウェートとして要求される複雑形状のものや、精度の高いもの等を量産規模的に製造することは事実上不可能であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このため、タングステン焼結合金製のウェートとしては、W−Ni−Cu系の焼結合金製のものが使用されてきたが、上述のように18.5以上の比重のものがないため、今まで以上に小型化するのが難しいという問題があった。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高比重化の達成により更なる小型化を図ることができる高比重高強度タングステン焼結合金製ウェートを提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、結合相形成成分として、Ni(ニッケル):0.05〜2.5重量%、Co(コバルト):0.05〜1重量%の範囲であって、かつこれらの全量(Ni+Co)が3重量%以下となるように含有し、残部が分散相形成成分としての粒子状のW(タングステン)及び不可避不純物からなる組成を有し、かつ上記Ni成分は、その一部あるいは全部がNiの硝酸塩、Niの塩酸塩、Niの硫酸塩及びNiの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Niが上記W粒子の表面を被覆することにより含有し、上記Co成分は、その一部あるいは全部がCoの硝酸塩、Coの塩酸塩、Coの硫酸塩及びCoの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Coが上記W粒子の表面を被覆することにより含有した状態とすることにより、比重が18.5〜19.2となるように調整された焼結合金によって形成されていることを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、結合相形成成分として、Ni:0.05〜2.5重量%、Co:0.05〜1重量%、Fe(鉄):0.05〜1重量%、Mn(マンガン):0.01〜0.5重量%の範囲であって、かつこれらの全量(Ni+Co+Fe+Mn)が3重量%以下となるように含有し、残部が分散相形成成分としての粒子状のW及び不可避不純物からなる組成を有し、かつ上記Ni成分は、その一部あるいは全部がNiの硝酸塩、Niの塩酸塩、Niの硫酸塩及びNiの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Niが上記W粒子の表面を被覆することにより含有し、上記Co成分は、その一部あるいは全部がCoの硝酸塩、Coの塩酸塩、Coの硫酸塩及びCoの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Coが上記W粒子の表面を被覆することにより含有した状態とすることにより、比重が18.5〜19.2となるように調整された焼結合金によって形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の発明は、結合相形成成分として、Ni:0.05〜2.5重量%、Cu(銅):0.05〜1.5重量%、Fe:0.05〜1重量%、Mn:0.01〜0.5重量%の範囲であって、かつこれらの全量(Ni+Cu+Fe+Mn)が3重量%以下となるように含有し、残部が分散相形成成分としての粒子状のW及び不可避不純物からなる組成を有し、かつ上記Ni成分は、その一部あるいは全部がNiの硝酸塩、Niの塩酸塩、Niの硫酸塩及びNiの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Niが上記W粒子の表面を被覆することにより含有した状態とすることにより、比重が18.5〜19.2となるように調整された焼結合金によって形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の発明は、結合相形成成分として、Ni:0.05〜2.5重量%、Cu:0.05〜1.5重量%、Fe:0.05〜1重量%の範囲であって、かつこれらの全量(Ni+Cu+Fe)が3重量%以下となるように含有し、残部が分散相形成成分としての粒子状のW及び不可避不純物からなる組成を有し、かつ上記Ni成分は、その一部あるいは全部がNiの硝酸塩、Niの塩酸塩、Niの硫酸塩及びNiの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Niが上記W粒子の表面を被覆することにより含有した状態とすることにより、比重が18.5〜19.2となるように調整された焼結合金によって形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないしのいずれかに記載の発明において、上記Wは、平均粒径が0.5〜5μmの範囲であることを特徴としている。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1ないしのいずれかに記載の発明において、モータの回転軸に、加締めによって一体的に結合されるようになっていることを特徴としている。
【0014】
上記のように構成された請求項1又は2記載の発明においては、結合相形成成分としてのNiを0.05〜2.5重量%、Coを0.05〜1重量%の範囲で含有させ、また他の結合相形成成分を含めた結合相形成成分の全量を3重量%以下となるようにしているので、結局、Wの含有量を97重量%超にすることができる。従って、比重を18.5〜19.2にすることができるので、今まで以上の小型化を図ることができる。
【0015】
この結果、例えば携帯電話に組み込まれた振動モータの回転軸に振動発生用の偏心ウェートとして用いられた場合には、当該携帯電話の軽薄短小の要求に応えることができると共に、より強力な振動量によって着信があったことを確実に知らせることができる。
【0016】
上記Ni成分は、W粉末の焼結に必要な液相を提供し、かつWの粒界拡散係数を向上させるための必要不可欠な結合相形成成分である。そして、このNi成分を0.05〜2.5重量%の範囲に限定しているのは、0.05重量%未満ではW焼結合金の緻密化が起きず、所定の高比重が得られないばかりでなく、残留空孔の存在によって強度は極端に低下してしまうことになり、一方、2.5重量%超になると、その他の結合相形成成分と合わせて3重量%と以上となり、18.5〜19.2の高比重が得られなくなるからである。
【0017】
そして、Ni成分による焼結促進効果を最大限に発揮させるためには、Ni粉末のW粉末に対する均一分散性を向上させる必要がある。このため、Ni成分の添加は、単体のNi粉末としてだけでなく、その一部あるいは全部をNiの硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩及び酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解することにより、添加することが好ましい。
【0018】
上記Co成分は、液相状態でW粒子との濡れ性が良いため、Ni結合相形成成分の補助成分として添加することにより、強度の向上を図ることができる。そして、このCo成分をCo:0.05〜1重量%の範囲に限定したのは、0.05重量%未満では、強度を向上させる効果が見られず、一方、1重量%超になると、延性の著しい低下を招くためである。
【0019】
そして、Co成分による強度向上効果を最大限に発揮させるためには、Ni成分の場合と同様に、Co粉末のW粉末に対する均一分散性を向上させる必要がある。このため、Co成分の添加についても、単体のCo粉末としてだけでなく、その一部あるいは全部をCoの硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩及び酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解することにより、添加することが好ましい。
【0020】
請求項2記載の発明においては、請求項1記載の発明に対して更にFeを0.05〜1重量%、Mnを0.01〜0.5重量%の範囲で含有しているので、強度の向上を図ることができる。即ち、Fe成分は、Ni成分に固溶することによってその結合相の強度の向上を図ることができる。Mnは、上記Fe成分と合わせて使用することにより、更に強度の向上を図ることができる。
【0021】
上記Fe成分を0.05〜1重量%の範囲に限定したのは、0.05重量%未満では強度向上の効果が全く見られず、一方、1重量%を超えると、延性の低下を招くことになるからである。また、上記Mn成分を0.01〜0.5重量%の範囲に限定したのは、0.01重量%未満ではFe成分との相乗効果による強度の向上が全く見られず、一方、0.5重量%超では、Mn酸化物としての残留が顕著になって延性の低下を招くことになるからである。
【0022】
請求項3記載の発明においては、請求項2記載の発明におけるCoに代えてCuを0.05〜1.5重量%の範囲で含有させたものであるが、結合相形成成分の全量が3重量%以下となっているので、請求項1又は2記載の発明と同様に、18.5〜19.2の高比重を得ることができる等の作用効果を奏する。そして、Cu成分を結合相形成成分として添加しているので、このCuの比較的融点が低いという性質により、低温における焼結性の向上を図ることができる。
【0023】
上記Cu成分を0.05〜1.5重量%の範囲に限定したのは、0.05重量%未満では低温による焼結性の向上の効果が全く見られず、一方、1.5重量%超では比重の低下と強度の低下を共に招くことになるためである。
【0024】
請求項4記載の発明においては、請求項3記載の発明に対してMnを削除した構成になっているため、上述したMnによる作用効果が得られないものの、W成分が相対的に増加するため、高比重化が容易になる。
【0025】
請求項1又は2記載の発明においては、Ni成分についてはNiの硝酸塩、Niの塩酸塩、Niの硫酸塩及びNiの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解することにより、Co成分についてはCoの硝酸塩、Coの塩酸塩、Coの硫酸塩及びCoの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解することにより含有させるようになっているので、Ni成分及びCo成分をW粉末の全体に均一に分散、被覆させることができる。しかも、Ni成分及びCo成分は、各W粒子の表面に均一にかつ薄く被覆されることになるので、全体として3重量%以下の少量にも関わらず、活性化効率の高い低融点結合相成分となり、大きな焼結促進効果が得られると共に、空孔の発生を防止することができる。従って、高比重で高強度のものを確実に得ることができる。
【0026】
請求項3又は4記載の発明においては、Ni成分について、請求項1又は2記載の発明と同様に含有させているので、このNi成分に関して、請求項1又は2記載の発明と同様の作用効果を奏する。従って、高比重で高強度のものを確実に得ることができる。
【0027】
請求項5記載の発明においては、Wの平均粒径が0.5〜5μmになっているので、適正な成形性及び焼結性を得ることができる。
【0028】
請求項6記載の発明においては、モータの回転軸に、加締めによって一体的に結合されるようになっているので、当該回転軸に、結合のための種々の手段を設けることなく簡単に固定することができる。即ち、高比重で緻密なため強度が極めて大きいこと及び十分な延性を有することから、加締めによるだけで回転軸に強固に固定することができる。従って、振動発生用の偏心ウェートとして用いた場合でも、回転軸に対して回転方向にずれたり、軸方向にずれたりするのを確実に防止することができる。そして、高比重化の達成によって、極めて小さな偏心ウェートとして利用することができるので、軽薄短小化志向の著しい例えば携帯通信機器等に使用することによって、その軽薄短小化を更に促進することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、高比重高強度タングステン焼結合金製ウェート(以下、「ウェート」という)の製造プロセスを示すフロー図であり、図2は振動モータ(以下、「モータ」という)の回転軸にウェートを加締めにより結合した状態を示す図である。
【0030】
図1の製造プロセスで製造されるウェートは、結合相形成成分として、Niを0.05〜2.5重量%、Coを0.05〜1重量%、Feを0.05〜1重量%、Mnを0.01〜0.5重量%、Cuを0.05〜1.5重量%の範囲であって、かつこれらの全量が3重量%以下となるように含有し、残部が分散相形成成分としての粒子状のW及び不可避不純物からなる組成を有し、比重が18.5〜19.2となるように調整された焼結合金によるものである。
【0031】
上記Wは、適正な成形性及び焼結性を得るため、平均粒径が0.5〜5μmの粉末を用いている。Ni及びCoについては、単体の粉末としてだけでなく、硝酸塩等の溶液を熱分解することによっても結合相形成成分として含有させるようになっている。この場合、Ni成分は、Niの硝酸塩、Niの塩酸塩、Niの硫酸塩及びNiの酢酸塩のいずれか1つ(この実施の形態ではNiの硝酸塩)にて水あるいは有機溶剤を溶媒とする溶液の状態で添加、混合し、その後の熱分解によりW粒子の表面に被覆されることによって含有された状態になるようになっている。また、Co成分は、Coの硝酸塩、Coの塩酸塩、Coの硫酸塩及びCoの酢酸塩のいずれか1つ(この実施の形態ではCoの硝酸塩)について上記Niと同様にW粒子の表面に被覆されることによって含有された状態になるようになっている。
【0032】
上記Ni成分は、W粉末の焼結に必要な液相を提供し、かつWの粒界拡散係数を向上させるための必要不可欠な結合相形成成分である。そして、このNi成分は、0.05重量%未満ではW焼結合金の緻密化が起きず、所定の高比重が得られないばかりでなく、残留空孔の存在によって強度は極端に低下してしまうことになり、一方、2.5重量%超になると、その他の結合成分と合わせて3重量%と以上となり、18.5〜19.2の高比重が得られなくなる。
【0033】
そして、Ni成分による焼結促進効果を最大限に発揮させるためには、Ni粉末のW粉末に対する均一分散性を向上させる必要がある。このため、Ni成分の添加は、単体のNi粉末としてだけでなく、その一部を上述のようにNiの硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩及び酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解することにより、添加することが好ましい。
【0034】
上記Co成分は、液相状態でW粒子との濡れ性が良いため、Ni結合相形成成分の補助成分として添加することにより、強度の向上を図ることができる。そして、このCo成分は、0.05重量%未満では、強度を向上させる効果が少なく、1重量%超になると、延性の著しい低下を招くことになる。
【0035】
そして、Co成分による強度向上効果を最大限に発揮させるためには、Ni成分の場合と同様に、Co粉末のW粉末に対する均一分散性を向上させる必要がある。このため、Co成分の添加についても、単体のCo粉末としてだけでなく、その一部を上述のようにCoの硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩及び酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解することにより、添加することが好ましい。
【0036】
上記Fe成分は、Ni成分に固溶することによってその結合相の強度の向上を図ることができる。このFe成分は、0.05重量%未満では強度向上の効果が全く見られず、1重量%を超えると、延性の低下を招くことになる。
【0037】
上記Mnは、Fe成分と合わせて使用することにより、更に強度の向上を図ることができる。このMn成分は、0.01重量%未満ではFe成分との相乗効果による強度の向上が全く見られず、0.5重量%超では、Mn酸化物としての残留が顕著になって延性の低下を招くことになる。
【0038】
Cu成分は、比較的融点が低いという性質により、低温における焼結性の向上を図ることができる。このCu成分は、0.05重量%未満では低温による焼結性の向上の効果が全く見られず、1.5重量%超では比重の低下と強度の低下を共に招くことになる。
【0039】
なお、Ni及びCoは、単体の粉末によらず、その全部を上記硝酸塩等の溶液の熱分解により含有させるようにしてもよい。また、Co、Fe、Mn、Cuの各成分は、必要に応じて添加するようにしてもよい。
【0040】
次に、上記成分のウェートについての製造方法について図1を参照しながら説明する。
まず、W粉末、Niの硝酸塩の溶液及びCoの硝酸塩の溶液からなるドープ成分、Ni粉末、Co粉末、Fe粉末、Mn粉末、Cu粉末を上述した成分範囲となるように配合して原料を作る(SP1)。これによりW成分を他の結合相形成成分に対して97重量%以上含む原料が完成する。そして、この原料をボールミルに供給し、アセトンを用いて48時間の湿式混合を行う(SP2)。これにより、各成分の粉砕、混合が十分に行われることになり、ドープ成分や各粉末成分がW粉末に均一に分散された状態になる。
【0041】
そして、この原料を800℃の水素雰囲気中で1時間保持することにより還元する(SP3)。この際、上記ドープ成分の熱分解によって、Ni成分及びCo成分がW粒子の表面に均一に被覆された状態になると共に、酸化物成分は充分還元されている状態になる。
【0042】
その後、上記原料を押型に充填して、1960×105 Pa(2000kg/cm)の圧力で成形する(SP4)。これにより、図2に示すような形状(但し、加締め部14cが形成されてない形状)の圧粉体が得られる。
【0043】
次に、上記圧粉体を900℃の温度の水素雰囲気中で3時間予備焼結を行った(SP5)後、1400〜1550℃の温度の水素雰囲気中で1時間本焼結を行う(SP6)ことにより、図2に示すウェート10(但し、加締め部14cが形成されてないもの)が完成する。このウェートについては、比重、抗折強度(×107 Pa(kgf/mm2 ))等についての品質の評価が行われた(SP7)後に、完成品として取り扱われることになる。
【0044】
ウェート10は、携帯電話(携帯通信機器)に組み込まれたモータに取り付けられる振動発生用の偏心ウェートとして構成されたものであり、円弧半径が数mmの横断面略扇型状に成形され、その扇状部分全体が偏心荷重部11となっている。この偏心荷重部11の扇状を描く外周円弧の中心部には、例えば、SUS420などのステンレス製のモータの回転軸12が嵌まり込む溝部13が形成されている。また、この溝部13の両側には、偏心荷重部11から膨出して溝部13の両側縁部を形成する側壁14が一体に形成されている。
【0045】
そして、上記形状のウェート10は、側壁14の先端部端面14aのうち、軸線方向の両端部を残した中央部分において、側壁14の外周側部分14bを残した溝部13側の加締め部14cが、直方体状の加締めパンチ(図示せず)によって溝部13の開口15側から底側に向けて凹状に加締め変形させられることにより、回転軸12に一体的に結合されるようになっている。
【0046】
上記のように構成されたウェート10によれば、結合相形成成分としてのNiを0.05〜2.5重量%及びCoを0.05〜1重量%の範囲で含有させ、かつ他の結合相形成成分を含めた結合相形成成分の全量を3重量%以下となるようにしているので、結局、Wの含有用を97重量%超にすることができる。従って、比重を18.5〜19.2にすることができるので、従来にない小型のものを得ることができる。
【0047】
この結果、携帯電話の更なる軽薄短小化の要求に応えることができると共に、その着信を強力な振動量によって確実に知らせることができる。
【0048】
また、Ni成分についてはNiの硝酸塩の溶液を熱分解することにより、Co成分についてはCoの硝酸塩の溶液を熱分解することにより含有させるようになっているので、Ni成分及びCo成分をW粉末の全体に均一に分散させることができる。しかも、Ni成分及びCo成分は、各W粒子の表面に均一にかつ薄く被覆されることになるので、微少であるにも関わらず、活性化効率の高い低融点結合相成分となり、大きな焼結促進効果が得られると共に、空孔の発生を防止することができる。従って、高比重で高強度のものを確実に得ることができる。
【0049】
例えば、従来においては、通常、分散相形成成分としての1〜10μmの粒径のW粉末を、所定の割合の結合相形成成分としてのNi、Co、Fe、Cu、Mo(モリブデン)などの成分を添加してボールミルにより湿式混合、粉砕してなるものを原料とし、活性化液相焼結法を用いて製造している。しかし、焼結性を確保するために、W成分以外の低融点結合相形成成分を通常5重量%以上にする必要がある。このため、焼結合金の比重は18以下となっていた。そして、単純にNi、Co等の結合相形成成分を減らしたとしても、これにより活性化焼結の効果が小さくなり、空孔が多発することになるので、比重を18.5以上にすることができなかった。また、この場合には、空孔により強度が低下するとう問題もあった。
【0050】
これに対して本発明では、硝酸塩等の溶液の熱分解によってNiやCoを均一に分散させることができるので、Wを97重量%以上含んだものを極めて緻密に焼結することができる。従って、高比重でかつ高強度の焼結合金を得ることができる。
【0051】
また、モータの回転軸12に、加締めによって一体的に結合されるようになっているので、当該回転軸12に対して、結合のための種々の手段を設けることなく簡単に固定することができる。即ち、高強度で、かつ十分な延性を有することから、加締めによるだけで回転軸に強固かつ確実に固定することができる。従って、回転軸12に対して回転方向にずれたり、軸方向にずれたりするのを確実に防止することができる。
【0052】
【実施例】
次に、この発明の実施例について、表1を参照して説明する。表1は、本焼結を行った後の各タングステン焼結合金の試験結果を示したものである。この試験は、従来例(比較例)1、従来例2、実施例1〜実施例6のものについて行った。特に、実施例1〜実施例6では、下記に示す成分範囲のものについて試験を行った。
【0053】
(試験条件)
1.成分組成について
▲1▼従来例1 Ni: 3 重量%
Cu: 2 重量%、
残部:W及び不可避不純物
▲2▼従来例2 Ni: 2 重量%
Cu: 1 重量%、
残部:W及び不可避不純物
▲3▼実施例1 Ni: 0.5〜2.0重量%
Co: 0.2〜0.5重量%
残部:W及び不可避不純物
▲4▼実施例2 Ni: 0.5〜2.0重量%
Co: 0.2〜0.5重量%
Fe: 0.1〜0.5重量%
Mn: 0.1〜0.3重量%
Ni+Co+Fe+Mn: 3重量%以下
残部:W及び不可避不純物
▲5▼実施例3 Ni: 0.5〜2.0重量%
Cu: 0.1〜1.0重量%
Fe: 0.1〜1.0重量%
Mn: 0.1〜0.4重量%
Ni+Cu+Fe+Mn: 3重量%以下
残部:W及び不可避不純物
▲6▼実施例4 Ni: 0.5〜2.0重量%
Cu: 0.1〜1.0重量%
Fe: 0.1〜1.0重量%
残部:W及び不可避不純物
▲7▼実施例5 上記実施例1の成分組成と同一である。
ただし、Ni成分を硝酸ニッケルの溶液(Niの硝酸塩の溶液)の熱分解により含有させ、Co成分を硝酸コバルトの溶液(Coの硝酸塩の溶液)の熱分解により含有させている。
▲8▼実施例6 上記実施例3の成分組成と同一
ただし、Ni成分を硝酸ニッケルの溶液の熱分解により含有させている。
▲9▼Wの平均粒径は、上記▲1▼〜▲8▼のすべてにおいて、3.5μmである。
【0054】
(試験方法)
試験は、従来例1、従来例2、実施例1〜実施例6のそれぞれについて供試体を作製して行った。
還元、成形、予備焼結、本焼結については、上述したSP3〜SP6の通りである。ただし、本焼結(SP6)の温度は1460℃に設定した。
また、実施例5、実施例6の場合は、上述したSP2の通り、原料をボールミルに装入し、アセトン溶媒を用いて48時間の湿式混合を行った。
評価は、比重、抗折強度、加締めの可否によって行った。
【0055】
(考察)
表1に表示される結果から、本発明の高比重W合金の実施例1〜6は、いずれも結合相の合計全量が3重量%以下にもかかわらず、焼結体の比重は、18.5〜19.2の範囲にある高比重の結果が得られており、かつ加締めによるシャフトへの固定に必要な充分な強度及び靱性を有していることから、例えば携帯電話の軽薄短小化の要求に充分に満足できる振動モータの高比重高強度偏心ウェートを提供することができる。
【0056】
【表1】
Figure 0003675378
【0057】
なお、上記実施の形態及び実施例においては、上記ウェート10を、モータの回転軸12に結合するように構成したが、このウェート10は、例えば往復運動をするアクチュエータの軸や、その他の回転運動や往復運動をする軸に加締めにより結合するように構成してもよい。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1又は2記載の発明によれば、結合相形成成分としてのNiを0.05〜2.5重量%及びCoを0.05〜1重量%の範囲で含有させ、また他の結合相形成成分を含めた結合相形成成分の全量を3重量%以下となるようにしているので、結局、Wの含有用を97重量%超にすることができる。従って、比重を18.5〜19.2にすることができるので、従来にない小型のものを得ることができる。
【0059】
この結果、例えば携帯電話に組み込まれた振動発生用の偏心ウェートとして用いられた場合には、当該携帯電話の軽薄短小の要求に応えることができると共に、より強力な振動量によって着信があったことを確実に知らせることができる上で極めて有用である。
【0060】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明に対して更にFeを0.05〜1重量%、Mnを0.01〜0.5重量%の範囲で含有しているので、強度の向上を図ることができる。
【0061】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明におけるCoに代えてCuを0.05〜1.5重量%の範囲で含有させたものであるが、結合相形成成分の全量が3重量%以下となっているので、請求項1又は2記載の発明と同様に、18.5〜19.2の高比重を得ることができる等の作用効果を奏する。しかも、Cu成分を結合相形成成分として添加しているので、低温における焼結性の向上を図ることができる。
【0062】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明に対してMnを削除した構成になっているため、上述したMnによる作用効果が得られないものの、W成分が相対的に増加するため、高比重化が容易になる。
【0063】
この際、特に請求項1又は2記載の発明によれば、Ni成分についてはNiの硝酸塩、Niの塩酸塩、Niの硫酸塩及びNiの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解することにより、Co成分についてはCoの硝酸塩、Coの塩酸塩、Coの硫酸塩及びCoの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解することにより含有させるようになっているので、Ni成分及びCo成分をW粉末の全体に均一に分散させることができる。しかも、Ni成分及びCo成分は、各W粒子の表面に均一にかつ薄く被覆されることになるので、微少であるにも関わらず、活性化効率の高い低融点結合相成分となり、大きな焼結促進効果が得られると共に、空孔の極めて少ない緻密なものを得ることができる。従って、高比重で高強度のものを確実に得ることができる。
【0064】
また、請求項3又は4記載の発明によれば、Ni成分について、請求項1又は2記載の発明と同様に含有させているので、このNi成分に関して、請求項1又は2記載の発明と同様の作用効果を奏する。従って、高比重で高強度のものを確実に得ることができる。
【0065】
請求項5記載の発明によれば、Wの平均粒径が0.5〜5μmになっているので、適正な成形性及び焼結性を得ることができる。
【0066】
請求項6記載の発明によれば、モータの回転軸に、加締めによって一体的に結合されるようになっているので、当該回転軸に、結合のための種々の手段を設けることなく簡単に固定することができる。即ち、高比重で緻密なため強度が極めて大きいこと及び十分な延性を有することから、加締めによるだけで回転軸に強固に固定することができる。従って、振動発生用の偏心ウェートとして用いた場合に、回転軸に対して回転方向や、軸方向にずれるのを確実に防止することができる。そして、高比重化の達成によって、極めて小さな偏心ウェートとして利用することができるので、軽薄短小化志向の著しい例えば携帯電話等に使用することによって、その携帯電話等の更なる軽薄短小化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態として示した高比重高強度タングステン焼結合金製ウェートの製造プロセスのフロー図である。
【図2】同高比重高強度タングステン焼結合金製ウェートを電動モータの回転軸に加締めにより結合した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 ウェート(高比重高強度タングステン焼結合金製ウェート)

Claims (6)

  1. 結合相形成成分として、Ni:0.05〜2.5重量%、Co:0.05〜1重量%の範囲であって、かつこれらの全量が3重量%以下となるように含有し、残部が分散相形成成分としての粒子状のW及び不可避不純物からなる組成を有し、かつ上記Ni成分は、その一部あるいは全部がNiの硝酸塩、Niの塩酸塩、Niの硫酸塩及びNiの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Niが上記W粒子の表面を被覆することにより含有し、上記Co成分は、その一部あるいは全部がCoの硝酸塩、Coの塩酸塩、Coの硫酸塩及びCoの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Coが上記W粒子の表面を被覆することにより含有した状態とすることにより、比重が18.5〜19.2となるように調整された焼結合金によって形成されていることを特徴とする高比重高強度タングステン焼結合金製ウェート。
  2. 結合相形成成分として、Ni:0.05〜2.5重量%、Co:0.05〜1重量%、Fe:0.05〜1重量%、Mn:0.01〜0.5重量%の範囲であって、かつこれらの全量が3重量%以下となるように含有し、残部が分散相形成成分としての粒子状のW及び不可避不純物からなる組成を有し、かつ上記Ni成分は、その一部あるいは全部がNiの硝酸塩、Niの塩酸塩、Niの硫酸塩及びNiの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Niが上記W粒子の表面を被覆することにより含有し、上記Co成分は、その一部あるいは全部がCoの硝酸塩、Coの塩酸塩、Coの硫酸塩及びCoの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Coが上記W粒子の表面を被覆することにより含有した状態とすることにより、比重が18.5〜19.2となるように調整された焼結合金によって形成されていることを特徴とする高比重高強度タングステン焼結合金製ウェート。
  3. 結合相形成成分として、Ni:0.05〜2.5重量%、Cu:0.05〜1.5重量%、Fe:0.05〜1重量%、Mn:0.01〜0.5重量%の範囲であって、かつこれらの全量が3重量%以下となるように含有し、残部が分散相形成成分としての粒子状のW及び不可避不純物からなる組成を有し、かつ上記Ni成分は、その一部あるいは全部がNiの硝酸塩、Niの塩酸塩、Niの硫酸塩及びNiの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Niが上記W粒子の表面を被覆することにより含有した状態とすることにより、比重が18.5〜19.2となるように調整された焼結合金によって形成されていることを特徴とする高比重高強度タングステン焼結合金製ウェート。
  4. 結合相形成成分として、Ni:0.05〜2.5重量%、Cu:0.05〜1.5重量%、Fe:0.05〜1重量%の範囲であって、かつこれらの全量が3重量%以下となるように含有し、残部が分散相形成成分としての粒子状のW及び不可避不純物からなる組成を有し、かつ上記Ni成分は、その一部あるいは全部がNiの硝酸塩、Niの塩酸塩、Niの硫酸塩及びNiの酢酸塩のいずれか1つの溶液を熱分解させて当該Niが上記W粒子の表面を被覆することにより含有した状態とすることにより、比重が18.5〜19.2となるように調整された焼結合金によって形成されていることを特徴とする高比重高強度タングステン焼結合金製ウェート。
  5. 上記Wは、平均粒径が0.5〜5μmの範囲であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高比重高強度タングステン焼結合金製ウェート。
  6. モータの回転軸に、加締めによって一体的に結合されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の高比重高強度タングステン焼結合金製ウェート。
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