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JP3667440B2 - ミシンの糸切り装置 - Google Patents

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  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Textile Engineering (AREA)
  • Sewing Machines And Sewing (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ミシンの縫製動作(千鳥縫いを含む)終了後に上糸及び下糸を切断する糸切り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ミシンの糸切り装置として、従来、図2及び図3に示すもの(実開平3−30974号公報参照)が知られている。その糸切り装置は、先端付近に刃面21aを備え、且つ、縫糸Yを捕捉する糸捕捉部21bを備え、図2(1)に示す待機位置と図2(3)に示す糸捕捉位置との間を往復動する動メス21と、図2(1)に示す休止位置と図2(3)に示す針落下点に接近する作用位置との間を往復動し、作用位置で動メス21と協働して縫糸Yを切断する固定メス22と、固定メス22の作用位置への往動後に固定メス22の掛止段部22bに係合して固定メス22を作用位置に位置決め固定すると共に休止位置への移動を禁止するストッパー23(24はストッパー23の付勢及び外れ防止を兼ねたバネである)とを備え、固定メス22の基端部には長手方向に延びる長孔22cが形成され、動メス21の基端には該長孔22cと係合する突出部25が形成され、動メス21の糸捕捉位置への往動途中位置(図2(2))で、上記突出部25が長孔22cの右端に係合することによって固定メス22と連結状態となり、更に、動メス21には、縫糸Yの切断後の復動時にストッパー23に作用して固定メス22との係合を解除するカム部21cが形成されたものである。
【0003】
固定メス22の先端には、刃部22aがあり、図6に示すように、その刃先は鋭角をなしている。
【0004】
この従来の糸切り装置の動作は次のようなものである。なお、図3における1点鎖線は、縫糸の切断位置(作用位置)を示すものである。また、26は針板であり、26aはその針落ちのための穴である。針は図の右、左に振れる(千鳥縫い)が、どちらに振れて縫製を終了しても、切断位置(作用位置)は穴26aの中央位置である。
【0005】
待機位置(図2(1)、図3(1))から動メス21が図示省略した駆動手段により図3(2)に示す位置に最前進し、ストッパー23が固定メス22の掛止段部22bに係合してロック状態になる(図2(3))。その途中で、図2(2)に示すように、動メス21の突出部25が固定メス22の長孔22cの右端に係合して固定メス22も最前進する。その際、上糸Y1のループ中に進入し、上糸Y1及び下糸Y2が動メス21の糸捕捉部21bによって捕捉される。その後、図3(3)に示すように、動メス21のみが復動する。その際、固定メス22の先端にも上糸Y1及び下糸Y2が引っ掛かっている。動メス21が図3(4)に示す位置に復動すると、固定メス22の刃部22aと動メス21の刃面21aとが合致し、動メス21の、図3(5)に示す位置への復動に伴って、上糸Y1及び下糸Y2が切断される。そのとき、動メス21のカム部21cがストッパー23に作用して掛止段部22bから外れる共に動メス21の突出部25が固定メス22の長孔22cの左端に係合し、固定メス22も動メス21と共に図3(5)に示す位置へ復帰する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のミシンの糸切り装置は、動メス21の往動時にその突出部25が固定メス22の長孔22cの右端に係合して固定メス22を往動させるが、動メス21と固定メス22とが協働して糸を切断するために動メス21と固定メス22とは圧着しており、往動時に動メス21に同動して固定メス22も移動することがある。ここで、図3に示されるように下糸や上糸ループが切断位置よりも糸切り装置側(図3において左側)にあるような場合、動メス21が上糸ループ内に進入する前に固定メス22が上糸ループに当たって弾き、上糸ループ内に進入できず糸さばき(上糸、下糸の糸捕捉部21bへの捕捉)が不完全になり、糸切りができなかったり、上糸ループを形成する2本の糸を同時に切断して、縫製に悪影響を及ぼすことがある。
【0007】
また、上記のミシンの糸切り装置は、固定メス22の刃部22aの先が鋭角をなしているので、固定メス22が上糸又は下糸に接触して切断することがある。また、図8(2)に示すように、動メス21が復動してその糸捕捉部21bが上糸Y1及び下糸Y2を捕捉してたぐる際に、固定メス22の刃部22aの先が上糸Y1及び下糸Y2を切断することがある。その場合は、正常切断時(図8(1))と図8(2)との、切断位置から糸捕捉部21bまでの距離は、L1>L2となる。従って、針糸(上糸)Y1の長さ及びボビンBから延びる下糸Y2の長さが、正常切断時に比べて短くなり、縫い終わり時における上糸の針からの抜けや、次の縫い始めにおける目飛び(下糸が短過ぎて結節しにくくなることにより生じる)、上糸抜けが発生する。
【0008】
この発明は、常に正常な糸切りが可能なミシンの糸切り装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明のミシンの糸切り装置は、待機位置と糸捕捉位置との間を往復動する、糸捕捉部1bを備えた動メス1と、待機位置と針落下点に接近する作用位置との間を往復動し、作用位置で動メス1と協働して縫糸を切断する固定メス2と、前記動メス1および固定メス2の一方の脇に軸8により揺動可能に軸支されるとともに該動メス1および固定メス2の往動方向に形成される自由端3bを該動メス1および固定メス2側に付勢して係合させ固定メス2を待機位置に保持する前ストッパー3と、前記前ストッパー3を軸支する軸8と接近して軸9により揺動可能に軸支されるとともに前記動メス1および固定メス2の復動方向に形成される自由端を該動メスおよび固定メス側に付勢して係合させ固定メス2を作用位置に保持する後ストッパー4とよりなり、動メス1の往動途中で固定メス2から該固定メスに係合した前ストッパー3開放するカム部1c及び糸切り後の復動時に固定メス2から該固定メスに係合した後ストッパー4開放するカム部1dを動メス1に設けたものである。
【0010】
動メス1が糸さばきを行った後に、固定メス2を前ストッパー3より開放するようにする。
【0011】
動メス1、固定メス2及び各ストッパー3、4を糸切り装置土台5と滑り板6との間に挟み込むようにする(図5参照)。
【0012】
固定メス1の刃先の上方部を刃先位置より前方に突出するエッジの無い丸みまたは面取りが施された突出部とする(図7参照)。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1、図4、図5及び図7を参照し、この発明のミシンの糸切り装置の実施の形態について説明する。
【0014】
このミシンの糸切り装置は、従来のものと同様に、不図示の針板下の脇に設置される。そして、動メス1、固定メス2、前ストッパー3、後ストッパー4の主たる部品によって構成され、図5に示すように、動メス1は、糸切り装置土台5の溝5aの中に摺動可能に収容され、固定メス2は、溝5a中の動メス1の上側に重ねられ、前ストッパー3及び後ストッパー4は溝5a中の動メス1及び固定メス2の脇に並べて収容されている。そしてそれらの部材を覆うようにして滑り板6がかぶせられている。
【0015】
動メス1の先端付近には、刃面1aを備えており、中間部には縫糸を捕捉する糸捕捉部1bを備えている。動メス1の基端部にはピン7が設けられている。動メス1はピン7を図示省略した駆動手段に連結することにより、待機位置(図1(1))と糸捕捉位置(図1(3))との間を往復動することができる。
【0016】
固定メス2は、本来位置不動であるべきものであるが、縫製時には降下する針との接触を避けるために、針板下の脇の待機位置に退避している。即ち、固定メス2は、待機位置(図1(1))と針落下点に接近する作用位置(図1(3)、(4))との間を動メス1の往復動に伴って往復動し、作用位置で動メス1と協働して縫糸を切断するものである。その先端には、図7(1)に示すように、刃部2aがあり、その先は鋭角とはなっていない。即ち、直角かそれよりやや大きめ(鈍角)となっているが、大き過ぎると刃の切れ味が落ちるので、糸切りに支障をきたすことになる。更に、その上側の部分2fにもエッジのない丸み又は面取りが施されている。また、図7(2)に示すように、従来の鋭角な刃先の上方部に刃先位置より前方に突出する滑らかな突出部2bを形成することもできる。いずれにしても、正規の切断が行われる前に縫糸Yが刃先に当たりにくくしている。
【0017】
固定メス2の基端部には、動メス1のピン7が係合する、長手方向に延びる長孔2cが形成されている。その長孔2c長さは、動メス1が往動して後述するカム部1cが前ストッパー3の自由端に作用して固定メス2の掛止段部2dから前ストッパー3を解除すると同時にピン7が長孔2cの右端に当り、また、動メス1が復動して後述するカム部1dが後ストッパー4の自由端に作用して固定メス2の掛止段部2eから後ストッパー4を解除すると同時にピン7が長孔2cの左端に当るようなものである。
【0018】
前ストッパー3は、動メス1の上糸ループへの進入が完了するまで、固定メス2を待機位置に固定するものであり、後ストッパー4は、固定メス2を作用位置に位置決め固定すると共に待機位置への移動を禁止するものである。
【0019】
前ストッパー3及び後ストッパー4は、共に図4に示す形状をした小さな板体であり、セット時には、前ストッパー3が図示状態から反転される。各ストッパー4(3)の一方の端部には小孔4a(3a)が穿設されており、他方の端部には鉤部4b(3b)が形成されている。鉤部4b(3b)の掛止面は、後述する固定メス2の掛止段部2d(2)との係合を強固なものとするために、小孔4a(3a)の中心点Aと掛止面の中間点Bとを結ぶ線に直交する向き若しくはそれ以上に傾けられている。
【0020】
そして、前ストッパー3及び後ストッパー4は、糸切り装置土台5の溝5a中の動メス1と固定メス2の一方の脇に、小孔3a、4a側を接近させた状態で、それぞれ軸8、9によって揺動可能に支持されている。更に、ストッパーバネ10によって、それぞれの自由端(鉤部3b、4b)側が動メス1及び固定メス2側に回動するように付勢されている。
【0021】
また、動メス1の各ストッパー3、4側に面した中間部より後方に寄った位置には、往動時に前ストッパー3の自由端に作用して固定メス2との係合を解除するカム部1cが形成されている。また、同じく動メス1の後部にも、縫糸の切断後の復動時に後ストッパー4の自由端に作用して固定メス2との係合を解除するカム部1dが形成されている。
【0022】
更に、固定メス2の前寄り位置及び後端部には、それぞれ前ストッパー3の鉤部3b、後ストッパー4の鉤部4bに係合する掛止段部2d、2eが形成されている。
【0023】
このような構成のミシンの糸切り装置においては、縫製動作を終了した後に、次のような動作順序で上糸及び下糸の切断が行われる。
【0024】
待機状態(図1(1))から動メス1が図示省略した駆動手段により図1(2)に示すごとく往進し、その過程で糸さばきが行われる。即ち、図3で示した従来例の場合と同様に、動メス1が上糸のループ中に進入する。しかしながら、固定メス2はその掛止段部2dに前ストッパー3が係合しているので初期位置にロックされている。
【0025】
動メス1が上糸ループへの進入を終了して図1(2)に示す位置にきて初めて、動メス1のカム部1cが前ストッパー3に作用し、固定メス2のロック状態が解除される。そして、動メス1が図1(3)に示す位置へ最前進し、その際動メス1のピン7が固定メス2の長孔2cの右端に係合して固定メス2も最前進し、掛止段部2eに後ストッパー4が係合してロックされる。このときの固定メス2の刃部2aは千鳥縫いの針振り中央に位置している。また、固定メス2の刃部2aには上糸及び下糸が引っ掛かっている。
【0026】
その後、動メス1が図1(4)に示す位置に復動する過程で、上糸及び下糸が糸捕捉部1bによって捕捉され、図1(4)に示す状態となったときに、固定メス2の刃部2aと動メス1の刃面1aとが合致し、動メス1の復動に伴って上糸及び下糸が切断される。そして、復動する動メス1のカム部1dが後ストッパー4に作用して固定メス2の掛止段部2eから外れる共に動メス1のピン7が固定メス2の長孔2cの左端に係合し、固定メス2も動メス1と共に図1(5)に示す位置へ復帰する。それと同時に、前ストッパー3が固定メス2の掛止段部2dに係合し、次の糸切りに備えて固定メス2がロック状態となる。
【0027】
また、図1(3)に示す状態から図1(4)に示す状態に動メス1が復動するときに、図7に示すように、縫糸(上糸及び下糸)Yは、固定メス2のエッジのない部分2f又は突出部2bで過大な接触圧を受けることなく、正規の糸切り状態に導かれる。
【0028】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載するような効果を奏する。
【0029】
即ち、固定メスは動メスが糸さばきを行うまで待機位置に保持されるので、不良な糸切りがなされることがなくなった。また、各基本構成部材を糸切り装置土台と滑り板との間に挟み込む単純な構造であるので、構成部材が外れたりすることはなく、従来品のような動メス等の案内部材(軸、プレート)、飛び出し防止部材(図2(1)に示すバネ)等の他の部材が不要となり、生産コストを低くおさえることができる。
【0030】
また、固定メスの刃先の上方部に滑らかな突出部を形成したので、ボビンの下糸巻量、釜の油量、下糸張力等の大小に係わらず、糸切り後の針糸及びボビンから延びる下糸の長さを一定とすることができる。そのため、縫い終わり時における上糸の針からの抜けや、縫い始めの目飛びや糸抜けをなくすことができ、仕上がりのきれいな縫製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の糸切り装置における糸切り動作を説明する平面図である。
【図2】従来の糸切り装置における糸切り動作を説明する平面図である。
【図3】従来の糸切り装置における糸切り動作を説明する正面図である。
【図4】この発明の糸切り装置を構成するストッパーの平面図である。
【図5】この発明の糸切り装置の各部材の組付け状態を説明する側面図である。
【図6】従来の糸切り装置を構成する固定刃の正面図である。
【図7】この発明の糸切り装置を構成する各主固定刃の正面図である。
【図8】糸切り装置における糸切り状態を説明する正面図であり、(1)は正規の糸切りがなされたものであり、(2)は誤った糸切りがなされたものである。
【符号の説明】
1 動メス
1b 糸捕捉部
1c カム部
1d カム部
2 固定メス
3 前ストッパー
4 後ストッパー
5 糸切り装置土台
6 滑り板

Claims (5)

  1. 待機位置と糸捕捉位置との間を往復動する糸捕捉部を備えた動メスと、待機位置と針落下点に接近する作用位置との間を往復動し、作用位置で動メスと協働して縫糸を切断する固定メスと、前記動メスおよび固定メスの一方の脇に軸により揺動可能に軸支されるとともに該動メスおよび固定メスの往動方向に形成される自由端を該動メスおよび固定メス側に付勢して係合させ固定メスを待機位置に保持する前ストッパーと、前記前ストッパーを軸支する軸に接近して軸により揺動可能に軸支されるとともに前記動メスおよび固定メスの復動方向に形成される自由端を該動メスおよび固定メス側に付勢して係合させ固定メスを作用位置に保持する後ストッパーとよりなり、動メスの往動途中で固定メスから該固定メスに係合した前ストッパーを開放し、動メスの復動途中且つ縫糸切断後に固定メスから該固定メスに係合した後ストッパーを開放することを特徴としたミシンの糸切り装置。
  2. 前記動メスに、該動メスの往復動に伴って作用して前記固定メスに係合した前記前ストッパーおよび後ストッパーを該固定メスから開放するカム部を設けたことを特徴とした請求項1に記載のミシンの糸切り装置。
  3. 動メスが糸さばきを行った後に、固定メスが前ストッパーより開放されることを特徴とした請求項1又は請求項2に記載のミシンの糸切り装置。
  4. 動メス、固定メス及び各ストッパーが糸切り装置土台と滑り板との間に挟み込まれていることを特徴とした請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のミシンの糸切り装置。
  5. 固定メスの刃先の上方部を刃先位置より前方に突出するエッジの無い丸みまたは面取りが施された滑らかな突出部としたことを特徴とした請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載のミシンの糸切り装置。
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