JP3660801B2 - GaN系半導体発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、GaN系材料を用いた半導体発光素子(以下、「GaN系発光素子」ともいう)に関するものであり、詳しくは、発光のメカニズムに係る部分の構造が、GaN系半導体材料による多重の量子ドット構造であるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
GaN系発光素子は、近年高輝度の発光ダイオード(LED)が実現されたのを機会に研究が活発に行われており、半導体レーザの室温連続発振の報告も聞かれる様になっている。
【0003】
GaN系発光素子のなかでも、緑色〜青色の短い波長の発光が得られ、しかも高い発光効率が得られるものとして、発光層(活性層)にInGaNの量子井戸層を用いたものがある。
InGaNを用いて量子井戸層を形成する場合、その熱力学的な不安定性から、層全体にわたって均一な組成比にはならず、層中で局所的にIn組成比の異なった部分が発生する。この部分は量子ドットに似た性質をもつ。InGaNの量子井戸層を発光層として用いた発光素子では、この量子ドット的な部位が、層の厚み方向のみならず3次元的な方向について励起子を閉じ込める作用を示し、この部分でキャリアの再結合発光が起きると言われており、これがInGaN量子井戸層が高い発光効率で発光し得る要因の1つとされている。
【0004】
InGaN量子井戸層中の量子ドット的な部位は、InGaN自体の性質によって層中に存在するものである。他方、GaAs系の材料では、ドット材料と基板材料との格子不整合を利用した量子ドットの形成が知られている。
これらに対して、近年、GaN系材料からなる結晶層の表面に特殊な表面処理を施すことによって、該結晶層の表面上にこれと格子整合性の良好なGaN系半導体を量子ドットとして突起状に成長させ得ることが明らかとなった (Appl.Phys.Lett.69(1996)4096 )。この量子ドット形成のメカニズムは、前記InGaNや、GaAs系における量子ドットの形成とは全く異なるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、GaN系材料による量子ドットの形成が可能であることは明らかとなっている。しかし、このGaN系の量子ドットを用いてGaN系発光素子を構成するためには、未だ、量子ドット構造の好ましい態様や、量子ドットの個々の大きさ、量子ドット全体の分布の程度などの点で最適な態様が明らかにはされていない。
【0006】
本発明の目的は、上記問題を解決し、GaN系発光素子のための量子ドットの最適な態様を示し、より高効率なGaN系発光素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のGaN系半導体発光素子は、以下の特徴を有するものである。
(1)下記(i)のGaN系の多重量子ドット構造を、発光に係る部分として有し、
該GaN系の多重量子ドット構造中の各段の量子ドットに用いられるGaN系材料をドット材料とよび、そのベース面となる結晶層に用いられるGaN系材料をベース材料とよぶとき、ドット材料とベース材料とが下記( ii )の格子整合性を満たす関係にあり、そのベース面の表面状態がアンチサーファクタントによって変化させられたことによってドット材料がベース面に量子ドットとして成長したものであること、
を特徴とするGaN系半導体発光素子。
(i)GaN系材料からなる結晶層(A)の上面をベース面とし、該ベース面上に、GaN系材料からなる量子ドットが分散して形成されさらにGaN系材料からなる結晶層(B)が前記量子ドットを内部に埋め込むように形成され、
結晶層(B)の上面を新たにベース面とする繰り返しの態様にて、量子ドットの形成とこれを埋め込む結晶層(B)の形成とが繰り返され、これによって結晶層(A)上には、量子ドットと結晶層(B)との組を1段としてこれが2段以上積層されており、かつ、各段の量子ドットの材料のバンドギャップは、そのベース面となる結晶層の材料およびそれを埋め込む結晶層(B)の材料の各々のバンドギャップよりも小さいものであるGaN系の多重量子ドット構造。
( ii )ベース面の表面状態を変化させるような表面処理を施すことなく該ベース面上にドット材料を直接的に結晶成長させたとき、ドット材料がベース面上に膜状に結晶成長し得るようなドット材料とベース材料との格子整合性。
(2)上記GaN系の多重量子ドット構造において、各段の各々の量子ドットの寸法を、結晶層(B)の層厚方向については高さhとし、結晶層(B)の拡がる方向については幅wとし、各段のベース面上における量子ドットの分散の度合いを密度ρとするとき、0.5nm≦h≦50nm、0.5nm≦w≦200nm、10 6 cm −2 ≦ρ≦10 13 cm −2 、である上記(1)記載のGaN系半導体発光素子。
(3)上記GaN系の多重量子ドット構造における結晶層(A)が第1の伝導型のクラッド層であり、最上段の結晶層(B)の上にさらに第2の伝導型のクラッド層が設けられている上記(1)記載のGaN系半導体発光素子。
【0012】
【作用】
本発明において、発光に係る部分として用いられる上記(i)のGaN系の多重量子ドット構造を構成する各段の量子ドットは、GaN系材料からなる結晶層の上面(即ち、上記(i)におけるベース面)上に、GaN系材料を量子ドットとして成長させたものである。ただし、ベース材料とドット材料とは、上記(ii)の関係にある。即ち、ドット材料は、ベース面の表面状態を何ら変化させることなく従来通りの結晶成長法・成長条件にてベース面上に成長させた場合には、従来知られているとおり、膜としてベース面上を全面覆う結晶層として成長する材料である。即ち、共にGaN系材料であるベース材料とドット材料とは、少なくともその程度に格子整合しているということである。
【0013】
共にGaN系材料であるベース材料とドット材料とが、上記のような格子整合の関係にある状態において、ドット材料をベース面上に膜状としてではなく量子ドットとして成長させるためには、ベース面にアンチサーファクタント(ベース面であるGaN系結晶層表面の表面状態を変化させる物質)を作用させる。アンチサーファクタントの作用によるGaN系結晶層表面の表面状態の変化については、詳しくは解明されていないが、表面自由エネルギーが小さくなる変化であると考えられる。ベース面の表面状態をこのように変化させることによって、ドット材料は、GaN系材料からなるベース面上に、量子ドットとして成長する。
【0014】
上記のようにしてベース面上に量子ドットを成長させ、さらにベース面の残りの領域を結晶成長の出発面としてGaN系材料からなる結晶層(B)を成長させて該結晶層(B)自体の内部に量子ドットを埋め込む。本発明は、この量子ドットとそれを埋め込む結晶層(B)との組合せを、上記(i)のように成長を繰り返して多段に積層し、従来にはないGaN系の多重量子ドット構造とし、これを発光現象に係る構造として発光素子に用いたものである。ここでいう発光現象は、電子またはホールの注入によって量子ドット中において励起子(エトキシ)あるいは電子とホールとが再結合し発光する現象である。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のGaN系発光素子の一例を示す断面図であって、説明のために簡単な構造のLEDを例として示している。同図のLEDは、結晶基板1上に、GaN系材料からなる結晶層を順次成長させて積み重ね、多重の量子ドット構造3を含む積層体Sを形成し、これにp型側の電極6とn型側の電極7を設けて構成したものである。多重の量子ドット構造3は、5段の構造を例示している。層2はn型コンタクト層、層5はp型コンタクト層、層4はp型クラッド層である。また、同図の例では、多重の量子ドット構造3において最初のベース面を提供する結晶層Aは、前記p型クラッド層4に対応するn型クラッド層としての役割を果たす層となっている。層2〜層5は、いずれもGaN系材料からなる。
【0016】
図1の例における伝導型(p型、n型)の上下位置関係は、伝導型を形成するための加工上の理由から、結晶基板側をn型とし上層側をp型とする一般的なものとなっている。また、同図の例では、結晶基板に絶縁体(サファイア結晶基板)を用いており、層2の上面を露出させ、その面に電極7を設けるという電極配置となっている。以下、本発明の発光素子の他の態様を説明する場合にも、p/n型の上下関係、電極配置については、これと同様の例を挙げて説明する。しかし、p/n型の上下が逆の態様や、結晶基板が導電性を有する場合の電極配置なども自由に選択してよい。
【0017】
多重量子ドット構造は、GaN系材料からなる結晶層を最下層としてその上に量子ドットと、それを内部に埋め込む結晶層(以下、この結晶層を「キャップ層」とも呼ぶ)との組が2段以上多段に積層された構造である。これらは全てGaN系材料からなるものである。
図1の例についてより詳しく説明すると、GaN系材料からなる結晶層Aを、多重構造の最下層とし、その上面をベース面とする。該ベース面上には、GaN系材料からなる量子ドットd1が分散した状態として形成されている。このベース面のうち、量子ドットd1が形成されなかった部分を結晶成長の出発面として、GaN系材料からなる結晶層(キャップ層)B1が量子ドットd1を埋め込むまで成長している。この量子ドットとキャップ層との組を1段として数える。
【0018】
さらに、上記キャップ層B1の上面を新たにベース面として再び量子ドットd2を形成し、これを埋め込むまでキャップ層B2を成長させるという繰り返しの態様にて、量子ドットの形成とこれを埋め込むキャップ層の形成とが繰り返されている。この繰り返しによって、結晶層A上には、量子ドットとキャップ層との組が(d1、B1)〜(d5、B5)として、5段まで積層され、多重量子ドット構造となっている。
【0019】
本発明でいう多重量子ドット構造は、各段の量子ドットが、各々のドット材料よりもバンドギャップの大きい材料にて包含された構造をいう。図1の例では、最下層の結晶層Aから最上段の結晶層B5までが多重量子ドット構造である。この多重量子ドット構造を発光に係る部分として用いるために、必要に応じてさらに他の結晶層を、発光のメカニズムに関与する層として加えてもよい。また、多重量子ドット構造内の各層の伝導型は、多重量子ドット構造による目的の発光のメカニズムに応じて、次に示す例の他自由に決定してよい。
【0020】
図1の例では、最下層の結晶層Aが第1の伝導型(n型)のクラッド層として機能しており、発光のメカニズムのために、多重量子ドット構造3上にさらに第2の伝導型(p型)のクラッド層4が加えられている。層Aはn型であり、層B1から層B5までの各層はアンドープ層であって弱いn型となっている。
【0021】
図2(a)の例では、最下層の結晶層Aは、量子ドットd1をより大きなバンドギャップの材料で閉じ込めるための層であって、さらにバンドギャップの大きいn型・p型クラッド層が加えられ、これらが多重量子ドット構造3を上下から挟み込んでいる。層Aから層B3までの各層はアンドープ層であって弱いn型となっている。
【0022】
図2(b)の例は、多重量子ドット構造3の内部に両クラッド層が含まれる例であって、最下層の結晶層Aがn型クラッド層、最上段の結晶層B3がp型クラッド層となっている。層B1、B2はアンドープ層であって弱いn型となっている。
【0023】
各段の量子ドットに用いられるドット材料のバンドギャップは、そのベース面となる結晶層のベース材料、およびそれを埋め込むキャップ層の材料(以下、「キャップ材料」という)の各々のバンドギャップよりも小さいものであればよい。これは、各段の量子ドットに電子およびホールを効率よく注入し、この部分をより高効率な発光部とするためである。ドット材料とその周囲の材料とのバンドギャップの関係がこの条件を満足するのであれば、各段のバンドギャップは互いに異なっていてもよい。
【0024】
本発明のGaN系発光素子に用いられるGaN系材料とは、式InX GaY AlZ N(0≦X≦1,0≦Y≦1,0≦Z≦1,X+Y+Z=1)で決定される化合物半導体である。なかでもGaN、InGaN、AlGaNなどが有用なものとして挙げられる。
GaN系の多重量子ドット構造において、上記バンドギャップの関係を満たす材料の組合せとしては、例えば、ベース材料およびキャップ材料をAlx Ga(1-x) Nとし、ドット材料をAlY Ga(1-Y) Nとする組合せ(ただし0<X、0≦Y、Y<Xである)などが挙げられる。
【0025】
ドット材料には、例えば、発光強度を増大させることなどを目的として、Siなどの不純物をドーピングしてもよい。
【0026】
また、ベース材料、ドット材料、キャップ材料のうちの1以上のものには、さらに、B、As、Pから選ばれる1以上の元素を含有させてもよい。
【0027】
個々の量子ドットの形状は、材料や成長条件によって異なるが、多面体状、柱状、半球状となる。
【0028】
このGaN系の多重量子ドット構造を高効率にて発光させるためには、各段の量子ドットについては、個々のドットの大きさ、およびそのベース面における量子ドット全体の分布の程度を最適な範囲とすることが必要となる。また、多重量子ドット構造全体については、層厚、量子ドットの密度、材料の組成などに、段毎に変化をつけるなどが好ましい態様となる。本発明では、これら量子ドット形成のための最適な範囲、多重構造全体としての好ましい態様を与えている。これを次に述べる。
【0029】
個々の量子ドットの大きさは、量子ドット構造において発光効率に影響を与える重要な要素であり、量子閉じ込め効果が十分に得られるサイズであることが重要である。個々の量子ドットの大きさは、キャップ層の層厚方向についての量子ドットの寸法(ベース面から量子ドットのトップまでの距離)を高さhとし、キャップ層の拡がる方向についての量子ドットの最大寸法を幅wとして好ましい範囲を限定する。
【0030】
量子ドットの高さh、幅wは、発光に寄与する励起子の閉じ込めの意味からは小さい方が好ましいが、実際の量子ドット作製における寸法の制御性などを考慮すると、これらは共に0.5nm以上であることが好ましい。また、これらの最大寸法については、量子効果の観点から、高さhは50nm以下、幅wは200nm以下が好ましい。従って、0.5nm≦h≦50nm、0.5nm≦w≦200nm、が好ましい範囲となる。
【0031】
各段のベース面における量子ドット全体の分散の度合いは、該ベース面における発光源の密度であるため、これもまた発光効率に影響を与える重要な要素である。この量子ドットの分散の度合いについては、密度(単位面積当たりの量子ドットの数)ρとして表し範囲を限定する。
【0032】
密度ρは、量子ドット1つ1つからの発光は弱いので、発光効率を考慮すると106 cm-2以上とすることが好ましく、また、量子ドットの大きさにもよるが、量子ドット同士が互いに接触しないように1013cm-2以下とすることが好ましい。従って、106 cm-2≦ρ≦1013cm-2が好ましい範囲となる。
【0033】
上記量子ドットの高さh、幅w、密度ρ、各段の層厚(即ちキャップ層の層厚)、各段のドット材料、キャップ材料の組成など、各段の仕様を決定づけるパラメータは、隣合った段同士で互いに異なるように選択してもよい。例えば、量子ドットとキャップ層の組が3段の積層構造である場合、段が変わる毎に発光波長がR(赤色)、G(緑色)、B(青色)と変わるように、各段のドット材料の組成、量子ドットの高さh、幅w、密度ρ、キャップ層の層厚などを設定することなどが挙げられる。
【0034】
各段の仕様を変化させる場合の変化の態様は、上記以外にも、目的に応じて自由に選択してよく、段が変わる毎に仕様のパラメータを単調に増加(減少)させるような変化、2種類の仕様を交互とするような変化、中央付近の段を変化のピークとするような変化などが挙げられる。また、1段毎に変化させるだけではなく、2段毎に変化させるなど、隣合った複数の段の仕様を同じとし複数段毎に変化させる態様としてもよい。材料の組成に変化をもたせる場合、ドット材料とキャップ材料とを共に変化させてもよく、また、ドット材料を一定にしてキャップ材料だけを変化させるなど、一方の材料だけを変化させてもよい。
【0035】
上記説明によるGaN系の多重量子ドット構造と、必要に応じてこれに加えられるクラッド層などの結晶層とを1ユニットとして、このユニットを任意の数だけ積層して発光素子の内部に設けてもよい。この構造によって、例えば、ユニット毎に異なる発光波長とする等、素子の機能の幅を拡げることが可能となる。
【0036】
ベース面に量子ドットを形成するには、上記作用の説明で述べたように、ベース面にその表面状態を変化させる物質(アンチサーファクタント)を作用させてから量子ドットに用いられるGaN系材料を結晶成長させる。ベース面にアンチサーファクタントを作用させるには、ベース面とアンチサーファクタントとを接触させればよい。接触の方法は限定されないが、例えば、MOCVD法によって、AlGaN結晶層上面をベース面としてGaNの量子ドットを形成する場合であれば、MOCVD装置内でAlGaN結晶層が成長した後、該装置内にガス状のアンチサーファクタントを供給すればよい。その後、Ga材料、N材料等を供給し、GaN結晶を成長させる。
【0037】
アンチサーファクタントをガス状として供給するには、例えば、テトラエチルシランをアンチサーファクタントとするのであれば、その溶液にH2 ガスをバブリングさせることにより、H2 ガスをキャリアガスとして供給する方法が挙げられる。
【0038】
アンチサーファクタントとして用いられる物質は、ベース材料とドット材料との組合せによって適当なものが選択でき、限定されない。例えば上記のように、AlGaN結晶層上にGaNを量子ドットとして形成させる場合のアンチサーファクタントとしては、テトラエチルシランが挙げられる。その他、SiH4 、Si2 H6 、またはこれらの混合ガス、Cp2 Mg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)等が挙げられる。
【0039】
個々の量子ドットの大きさ、形状、量子ドットの分散の度合いは、アンチサーファクタントの供給量、量子ドットの成長温度、ベース材料の組成をパラメータとして変化させることによって制御することができる。
量子ドットを成長させるときの結晶成長方法は、MOCVD、MBEなどが挙げられる。
【0040】
結晶基板は、GaN系結晶が成長可能なものであればよく、例えば、従来からGaN系結晶を成長させる際に汎用されている、サファイア、水晶、SiC等が挙げられる。なかでも、サファイアのC面、A面、6H−SiC基板、特にC面サファイア基板が好ましい。またこれら材料の表面に、GaN系結晶との格子定数や熱膨張係数の違いを緩和するためのZnO、MgOやAlN等のバッファー層を設けたものであっても良く、さらにはGaN系結晶の薄膜を表層に有するものでもよい。図1の例では、基礎となるサファイア結晶基板1a上に、格子整合性を改善するためのバッファー層1bが形成されたものを結晶基板1として用いている。
【0041】
【実施例】
本実施例では、図1に示す構造のLEDを実際に製作した。ただし、多重量子ドット構造3は、図では(d1、B1)〜(d5、B5)の5段として示されているが、本実施例では10段とした。また、多重構造全体の構成としては、段が変わる毎に材料の変化や量子ドットの仕様に変化を設けることはせず、全ての段を同様に形成した。各段のキャップ材料は全てAl0.1 Ga0.9 Nとし、ドット材料をすべてGaNとした。また、n型クラッド層である結晶層Aの材料、p型クラッド層4の材料は、共にAl0.15Ga0.85Nとした。
【0042】
〔結晶基板1の形成〕
最も基礎の結晶基板1aとしてはサファイアC面基板を用いた。まずこのサファイア基板1aをMOCVD装置内に配置し、水素雰囲気下で1200℃まで昇温し、サーマルエッチングを行った。その後温度を500℃まで下げAl原料としてトリメチルアルミニウム(以下TMA)、N原料としてアンモニアを流し、AlN低温バッファー層1bを30nm成長させ、結晶基板1を得た。
【0043】
〔n型コンタクト層2の形成〕
成長温度を1000℃に昇温し、Ga原料としてトリメチルガリウム(TMG)、N原料としてアンモニア、ドーパント原料としてシランを流し、n型GaNコンタクト層2を3μm成長させた。
【0044】
〔多重量子ドット構造3の形成〕
▲1▼層Aの形成;成長温度を1100℃とし、TMA、TMG、アンモニア、ドーパント原料としてシランを供給し、n型AlGaN層Aを0.5μm成長させた。この層Aは、n型クラッド層としての機能を果たす層である。
【0045】
▲2▼層A上面(ベース面)の表面処理;成長温度を1000℃とし、H2 ガスをキャリアとしてテトラエチルシランを供給し、層A上面に10秒間接触させた。
【0046】
▲3▼1段目の量子ドットd1の形成;TMG、アンモニアを供給し、ベース面上にGaN量子ドットd1を形成した。個々の量子ドットの高さhの平均は6nm、幅wの平均は40nmであった。また、ベース面上における量子ドットの分散の度合い(密度、即ち単位面積当たりの量子ドットの数)ρは、3×109 cm-2であった。
【0047】
▲4▼1段目のキャップ層B1の形成;成長温度を1100℃とし、TMA、TMG、アンモニアを供給し、ベース面のうち量子ドットが形成されていない領域を結晶成長の出発面として、量子ドットが内部に埋め込まれるよう、層厚10nmのキャップ層B1を成長させた。
【0048】
▲5▼2段目以上の形成;キャップ層の上面を新たにベース面とすることによって上記▲2▼〜▲4▼の工程を繰り返すことによって、層A上に、量子ドットとそれを埋め込むキャップ層との組を合計10段積層した。
【0049】
〔p型クラッド層4の形成〕
成長温度を1100℃とし、TMA、TMG、アンモニア、ドーパント原料としてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2 Mg)を供給し、p型AlGaN層4を0.5μm成長させた。
【0050】
〔p型コンタクト層5の形成〕
成長温度を1000℃とし、TMG、アンモニア、およびドーパント原料としてCp2 Mgを供給し、p型GaNコンタクト層5を1μm成長させた。
【0051】
〔電極の形成等〕
試料を装置から取り出し、窒素雰囲気、800℃で20分間アニール処理を行った。最後に、p型コンタクト層5の上にp型電極6を形成し、また、ドライエッチングにより積層体の上面からp型層と量子ドット構造の一部をエッチング除去し、n型コンタクト層2の上面を露出させ、n型電極7を形成し、LEDとした。
【0052】
このLEDを、To−18ステム台にマウントし、20mAでの光度の測定を行ったところ、150mcdであった。
【0053】
比較例
実施例1において、量子ドットとキャップ層との組を1段だけとしたこと以外は、実施例1と同様にLEDを作製した。このLEDについて、実施例1と同様に20mAでの光度の測定を行ったところ、75mcdであった。
【0054】
【発明の効果】
本発明のGaN系発光素子は、GaN系材料からなる量子ドット構造を発光に係る部分として有するものであり、しかも最適な態様として、多段化された量子ドット構造となっている。さらには、各段の個々の量子ドットの高さ、幅、量子ドットの分散の度合いの適正な範囲を限定し、多段の構造全体についても段毎に仕様の変化を与えることを提案するものである。これらの最適化への態様によって、より高効率なGaN系発光素子が得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のGaN系発光素子の一例を示す断面図である。同図では、説明のために、各層の厚み、量子ドット・電極の寸法などを誇張して示しており、実際の比率とは異なる。また、他の層と区別するために、電極、層A、B1〜B5にハッチングを施している。
【図2】多重量子ドット構造の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 結晶基板
2 n型コンタクト層
3 多重量子ドット構造
A n型クラッド層
d1〜d5 各段の量子ドット
B1〜B5 各段のキャップ層
4 p型クラッド層
5 p型コンタクト層
6 p型電極
7 n型電極
Claims (3)
- 下記(i)のGaN系の多重量子ドット構造を、発光に係る部分として有し、
該GaN系の多重量子ドット構造中の各段の量子ドットに用いられるGaN系材料をドット材料とよび、そのベース面となる結晶層に用いられるGaN系材料をベース材料とよぶとき、ドット材料とベース材料とが下記( ii )の格子整合性を満たす関係にあり、そのベース面の表面状態がアンチサーファクタントによって変化させられたことによってドット材料がベース面に量子ドットとして成長したものであること、
を特徴とするGaN系半導体発光素子。
(i)GaN系材料からなる結晶層(A)の上面をベース面とし、該ベース面上に、GaN系材料からなる量子ドットが分散して形成されさらにGaN系材料からなる結晶層(B)が前記量子ドットを内部に埋め込むように形成され、
結晶層(B)の上面を新たにベース面とする繰り返しの態様にて、量子ドットの形成とこれを埋め込む結晶層(B)の形成とが繰り返され、これによって結晶層(A)上には、量子ドットと結晶層(B)との組を1段としてこれが2段以上積層されており、かつ、各段の量子ドットの材料のバンドギャップは、そのベース面となる結晶層の材料およびそれを埋め込む結晶層(B)の材料の各々のバンドギャップよりも小さいものであるGaN系の多重量子ドット構造。
( ii )ベース面の表面状態を変化させるような表面処理を施すことなく該ベース面上にドット材料を直接的に結晶成長させたとき、ドット材料がベース面上に膜状に結晶成長し得るようなドット材料とベース材料との格子整合性。 - 上記GaN系の多重量子ドット構造において、各段の各々の量子ドットの寸法を、結晶層(B)の層厚方向については高さhとし、結晶層(B)の拡がる方向については幅wとし、各段のベース面上における量子ドットの分散の度合いを密度ρとするとき、0.5nm≦h≦50nm、0.5nm≦w≦200nm、106cm−2≦ρ≦1013cm−2、である請求項1記載のGaN系半導体発光素子。
- 上記GaN系の多重量子ドット構造における結晶層(A)が第1の伝導型のクラッド層であり、最上段の結晶層(B)の上にさらに第2の伝導型のクラッド層が設けられている請求項1記載のGaN系半導体発光素子。
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