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JP3659557B2 - スリーピースゴルフボール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飛び性能、打球感及びコントロール性に優れたスリーピースゴルフボールに関するもので、更に詳述すると、ツーピースゴルフボールが有しているような飛び性能を保持しつつ打球感に優れ、しかもアプローチショットに対するコントロール性を改良したスリーピースゴルフボールに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
現在使用されているゴルフボールとしては、固型のゴム球(ソリッド芯部)又は液体を詰めたゴム袋の球(リキッド芯部)を芯にして、これに糸ゴムを巻付け、更にパラタ等のカバーで被覆してなる糸巻きゴルフボールと、ゴム製の芯部をアイオノマーなどの合成樹脂製カバーで被覆してなるツーピースゴルフボールが一般的である。
【0003】
糸巻きゴルフボールは、打撃時の衝撃(打球感)及びコントロール性に優れているという特徴を有しているが、本来スピンがかかりやすい構造であるため、アゲインストな風の中では十分な飛距離が確保できず、また耐久性に劣るという欠点を有している。一方、ツーピースゴルフボールは、糸巻きゴルフボールに比べて耐久性に優れ、低スピン、高反発性でアゲインストな風の中にあっても飛距離を確保できるという特徴を有しているが、反発性確保の点から一般に硬く、打球感が糸巻きゴルフボールよりも劣っているという欠点がある。また、低スピンであるということは、ショートアイアンを用いたアプローチショットにおいてランが大きく、グリーン上で止まりにくいということにもなる。
【0004】
飛距離を重視するアマチュアゴルファーでは、反発性能が高いボールが好まれるが、プロゴルファーや上級ゴルファーでは、アプローチショットにおいてグリーン上でよく止まるというコントロール性能が重視されるため、スピンのかかりやすいボールが好まれる。ツーピースゴルフボールでは、スピンを重視すると飛距離が損なわれ、飛距離を重視するとスピンがかからなくなるという傾向にあるため、現在、スピン性能重視型と飛距離重視型の2種類のツーピースゴルフボールが製造されている。
【0005】
しかし、良く飛び、しかも止まりがよいゴルフボールへの要求は大きく、かかる要求に応えるために、近年、カバーと芯部との間に中間層を設けたスリーピースゴルフボールが提案されている。
【0006】
例えば、特開平59−194760号公報には、芯部の硬度を中心から表面に向けて高くして、芯部よりも中間層の比重を高く設定したようなボールが提案されているが、このゴルフボールではスピン量が多いためにドライバーショットに対する飛距離があまり伸びず、飛距離重視型のゴルファーにはとっては不十分なものであった。また、特開平10−57523号公報には、芯部の比重を中間層の比重より小さくし、芯部に中間層を被覆したときの変形量と芯部の変形量との比率(中間層被覆時変形量/芯部変形量)を0.75〜1としたゴルフボールが提案されているが、このボールも、中間層被覆時の硬度と芯部の中心部の硬度の差が小さく、スピン量が多くなるために、ドライバーショットに対する飛距離があまり伸びず、飛距離重視型のゴルファーにはとっては不十分なものであった。
【0007】
本発明は、上記のような従来のスリーピースゴルフボールの有する問題点を解決し、ソリッドゴルフボールの特徴である良好な飛距離を損なうことなく、コントロール性及び打球感を向上させたスリーピースゴルフボールを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のスリーピースゴルフボールは、直径27〜37mmの芯部と該芯部を被覆する中間層とからなるコア、及び該コアを被覆するカバーからなるスリーピースゴルフボールであって、前記芯部の比重(a)は前記中間層の比重(b)より小さく、前記芯部表面のJIS−C硬度(Y)は前記芯部の中心のJIS−C硬度(X)より8以上高く、前記コア表面のJIS−C硬度(Z)は80以上であり、前記芯部に初荷重10kgfから終荷重130kgfをかけたときの変形量(p)と、前記コアに初荷重10kgfから終荷重130kgfをかけたときの変形量(q)の差(p−q)が0.5以上であり、前記カバーのショアD硬度は60未満であることを特徴とする。
【0009】
前記コア表面のJIS−C硬度(Z)と前記芯部の中心のJIS−C硬度(X)との差(Z−X)は10以上であることが好ましい。さらに、前記中間層の比重(b)と前記芯部の比重(a)との差(b−a)が0.1以上であることが好ましい。
【0010】
尚、本明細書にいう「JIS−C硬度」とは、JIS−K6301に規定するスプリング式硬度計C形で測定した硬度をいい、ショアD硬度とは、ASTM−D 2240−68に規定するスプリング式硬度計ショアD型を用いて測定した硬度をいう。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のスリーピースゴルフボールは、図1に示すように、芯部1と該芯部1を被覆する中間層2とカバー3とからなる3層構造を有していて、芯部1と中間層2とからコア4を構成している。
【0012】
以下、これらの構成要素について各順に説明する。
まず、芯部1はゴムを主体とするもので、その直径d1 は27〜37mmである。芯部の反発性能はボールの反発性能に大きく影響を与えることから、直径d1 が27mmよりも小さいと、ボールの反発性能を大きくする効果が得られないからである。更に芯部1の直径d1 を27mm以上とすることにより、芯部1の中心から表面に至って緩やかに硬度を大きくしていくことができて、打撃時の衝撃が少なく、打球感の向上を図ることもできるからである。一方、直径d1 が大きくなるにしたがって、ボールサイズの規格との関係から中間層2の厚みを薄くする。従って、中間層2を介在させることによるスリーピースゴルフボールとしての効果を得るためには、直径d1 を37mm以下とする必要があるからである。
【0013】
芯部1は、中心から表面にかけて硬度が徐々に高くなっているか、あるいは中心から表面に近づくのに従って硬度が徐々に上昇し、表面の硬度が中心の硬度よりも低くならない範囲で中心と表面の真ん中(直径15mm付近)からは硬度が徐々に減少していく。そして、芯部中心のJIS−C硬度(X)と芯部表面のJIS−C硬度(Y)の差(Y−X)は8以上、好ましくは10以上である。中心硬度Xを大きくしたことによって硬度差(Y−X)が8未満となる場合には、中心に近い部分の硬さの影響が大きいクラブ、例えばドライバーショットに対する打球感が重くなるからである。また、芯部表面の硬度Yが小さいために硬度差(Y−X)が8未満となる場合には、コア4表面のJIS−C硬度(Z)を所定範囲とした場合に、芯部1の表面と中間層2との硬度差が大きくなるので、耐久性が低下したり、またバックスピンが大きくなって飛距離が低下したりしやすくなるからである。一方、芯部1の中心と表面との硬度差(Y−X)が大きくなりすぎると、中心硬度Xが小さくなりすぎて反発性が低下したり、表面硬度Yが大きくなりすぎて打球感が悪くなったりする。従って、中心と表面との硬度差(Y−X)の上限は25以下、さらに20以下とすることが好ましい。
【0014】
中心と表面との硬度差(Y−X)の値が上記範囲(8〜25)を満足し、且つコア4の表面硬度Zを80以上に保持するためには、芯部1の中心のJIS−C硬度(X)は55〜75とするのが好ましく、より好ましくは58〜72である。芯部中心硬度Xが55未満では芯部1が軟らかくなりすぎて反発性能が悪くなり、75を超えると芯部が硬くなりすぎて打球感が悪くなるからである。また、芯部1の表面のJIS−C硬度(Y)は70〜90が好ましく、より好ましくは73〜87である。73未満では芯部1が軟らかくなりすぎて反発性能が悪くなり、87を超えると芯部1が硬くなりすぎて打球感が悪くなるからである。
【0015】
芯部1の比重(a)は、1.0〜1.2が好ましく、より好ましくは1.00〜1.15、最も好ましくは1.00〜1.10である。比重aを1.0以上としたのは、芯部1の主体材料となるジエン系ゴムの比重は通常1.0程度であり、加硫剤等の比重1.0以上の配合剤は配合してなるゴム組成物の比重を1.0未満に調整することは、芯部1に中空部分や空孔等を形成しない限り困難だからである。一方、反発性を大きくするために、芯部1の構成材料はゴム成分の含有割合を大きくして、他の充填剤を少なくする必要があることから、芯部の比重aの上限は1.2以下とすることが好ましい。
【0016】
さらに、芯部1に初荷重10kgfから終荷重130kgfをかけたときの変形量(以下、単に「芯部変形量p」という)は、3.0〜5.0mmであることが好ましく、より好ましくは3.75〜4.35mmである。3.0mm未満では硬すぎて打球感が劣る傾向にあり、5.0mmを超えると変形量が多くなりすぎて硬質のカバー3との関係でゴルフボールの耐久性が低下することになるからである。
【0017】
芯部1の材料としては、上記要件を満足するものであれば特に限定しないが、一般に以下のようなゴム組成物(以下、「芯部用ゴム組成物」という)の加硫成形体で構成される。
【0018】
芯部用ゴム組成物に用いられる基材ゴムとしては、従来よりソリッドゴルフボールのコアに用いられているジエン系ゴムであれば、天然ゴムでも合成ゴムでもよく、合成ゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンジエン3元共重合体(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられ、これらのうち、1種又は2種以上混合して用いてもよい。これらのうち、シス構造を40%以上、好ましくは80%以上有するいわゆるハイシス1,4−ポリブタジエンが好ましく用いられる。
【0019】
基材ゴムを加硫する加硫開始剤として有機過酸化物が配合され、使用する具体的な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1―ビス(t―ブチルパーオキシ)―3,5―トリメチルシクロヘキサン、2,5―ジメチルー2,5―ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジーt―ブチルパーオキサイド等が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100重量部に対して0.3〜2.0重量部が好ましく、特に0.5〜2.0重量部が好ましい。
【0020】
また、共架橋剤として、アクリル酸又はメタクリル酸等のような炭素数3〜8のα、β−不飽和カルボン酸、若しくはこれらの亜鉛、マグネシウム塩等の一価又は二価の金属塩が配合される。これらのうち高い反発性を付与するアクリル酸亜鉛が好ましく用いられる。不飽和カルボン酸金属塩の配合量は、基材ゴム100重量部に対して20〜40重量部が好ましく、更に好ましくは25〜35重量部であり、より好ましくは24〜33重量部である。40重量部より多いと架橋構造が緻密になりすぎて、硬度75以下に調整することが困難になるからである。逆に、20重量部より少ないとソリッドゴルフボールが本来有する反発性を確保できなくなるからである。
【0021】
また芯部用ゴム組成物には、上記必須成分に加えて、比重調整剤、老化防止剤や可塑剤、分散剤、紫外線吸収剤、着色剤、しゃ解剤など、ゴルフボール用コア材に配合される通常の添加剤を、必要に応じて適宜配合することが可能である。さらに、打球感を損なうことなく、反発性を付与するために、ジフェニルジスルフィドなどの有機スルフィド化合物を含有してもよい。
【0022】
次に、中間層2について説明する。
中間層2の厚みは、芯部1の直径d1 が27〜37mm、コア4の直径d2 が38〜41mmであることとの関係から、1〜14mmであることが好ましく、より好ましくは2〜6mmである。
【0023】
中間層2の比重bは、芯部1の比重aよりも大きい。芯部1はボールの反発性に大きく関係するので、組成物中のゴム成分の含有割合を高くして反発性を確保する必要があるが、ゴム成分の割合が高くなる程、比重が小さくなる。そこで、中間層2の比重を大きくすることにより、公認規格のボール重量を達成する必要があるからである。また、中間層2の比重は、芯部1と比べて、反発性に与える影響は少なくて済むからである。芯部1の比重aと中間層2の比重bとの差(b−a)は0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.15以上である。両者の比重の差(b−a)が0.1未満では、ボールの反発性能が十分に発揮されず、飛距離をロスしてしまうからである。一方、両者の比重差(b−a)の上限は0.3以下が好ましく、より好ましくは0.25以下である。ゴルフボールの公認規格で最大重量45.93g以下と定められていることとの関係、及び配合上、これ以上に中間層2を重くすることは困難だからである。従って、中間層2の好ましい比重は、1.10〜1.35、より好ましくは1.15〜1.30である。
【0024】
芯部1に中間層2が形成された状態における表面の硬度、すなわちコア4の表面のJIS−C硬度(以下、単に「コア表面硬度Z」という)は、芯部1の中心硬度Xとの硬度差(Z−X)が10以上であることが好ましく、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上である。また、両者の硬度差(Z−X)の上限は35以下が好ましく、より好ましくは30以下である。両者の硬度差(Z−X)が10未満では、特にドライバーやロング〜ミドルアイアンでショットしたときの打ち出し角が低く、スピン量が多くなって飛距離をロスしてしまうからである。一方、両者の硬度差(Z−X)が35を超えると、芯部1の中心硬度Xと中間層2単独の硬度に差がありすぎて、変形量等の違いによりボールの耐久性が悪くなるからである。従って、コア表面硬度Zとしては、80〜95が好ましく、より好ましくは82〜90である。コア表面硬度Zが80未満では、反発性能が低くなって飛距離が出なくなり、硬度Zが95を超えるとボールが硬くなって打球感が悪くなるからである。
【0025】
コア4に初荷重10kgfから終荷重130kgfをかけたときの変形量(以下、単に「コア変形量q」という)は、同一条件での芯部1の変形量pより小さく、両者の変形量の差(p−q)は0.5以上であり、好ましくは0.65以上である。0.5未満では、特にドライバーでショットしたときの打出角が低く、またスピン量が多くなって飛距離をロスするからである。一方、両者の変形量の差が大きくなりすぎるとボールの耐久性が悪くなるので、変形量の差(p−q)の上限は、1.50以下であることが好ましく、より好ましくは1.00以下である。
【0026】
中間層2の構成材料は、上記要件を満足できる材料であれば特に制限はないが、芯部1と同様に、ゴム組成物の加硫成形体で構成されることが好ましい。
【0027】
中間層用ゴム組成物には、芯部用ゴム組成物に用いられる基材ゴム、加硫開始剤、共架橋剤と同様のものが好ましく用いられ、さらに、中間層2の比重を1.10〜1.35程度に調整するために、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機塩;酸化亜鉛、硫酸バリウム、タングステン等の金属粉末;及びそれらの混合物などが適宜配合される。尚、芯部用ゴム組成物と同種類の基材ゴム、加硫開始剤、共架橋剤を用いる場合であっても、これらの配合量や加硫条件(加硫温度、加硫時間など)を適宜変えることによって、硬度を変えることができる。
【0028】
中間層用ゴム組成物には、上記必須成分の他に、老化防止剤や可塑剤、分散剤、紫外線吸収剤、着色剤、しゃ解剤など、ゴルフボール用コア材に配合される通常の添加剤を、必要に応じて適宜配合することが可能である。更に打球感を損なうことなく反発性を付与するために、ジフェニルジスルフィドなどの有機スルフィド化合物を含有してもよい。
【0029】
カバー3は、通常、アイオノマーを主体とする材料で構成され、ショアーD硬度が60未満、好ましくは58以下である。カバー3のショアD硬度(以下、単に「カバー硬度D」と略記する)が60以上になると、アプローチショットでのスピン量が少なくなって、グリーン上に止まりにくくなるためである。一方、カバー硬度Dが小さくなりすぎると、ドライバーやロング〜ミドルアイアンで打撃したときにスピンがかかりすぎて飛距離をロスすることとなるので、カバーD硬度の下限は45以上が好ましく、より好ましくは48以上である。
【0030】
このようなカバー3の厚みは、ボールの公認規格及びコア4のサイズとの関係から、0.9〜2.4mmであることが好ましく、より好ましくは1.5〜2.3mmである。
【0031】
カバー3の材料としては、上記要件を満足できる材料であれば特に限定しないが、アイオノマーを主体とする組成物が好ましく用いられる。
【0032】
使用されるアイオノマーとしては、特に限定せず、α―オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸共重合体の金属イオン中和物が好ましく用いられる。共重合体を中和する金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等の1価金属イオン;亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、銅イオン、マンガンイオンなどの2価金属イオン;アルミニウムイオン、ネオジウムイオンなどの3価金属イオンなどが挙げられるが、特にナトリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオンの場合に高硬度で高反発性の硬質アイオノマーが得られるので、好ましく用いられる。
【0033】
使用されるアイオノマーの具体例としては、三井デュポンポリケミカル株式会社製のハイミラン1605(ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、ハイミラン1707(ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、ハイミラン1706(亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、ハイミランAM7315(亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、ハイミランAM7317(亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、ハイミラン1555(ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、ハイミラン1557(亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、エクソンケミカル株式会社製のアイオテック8000(ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、アイオテック7010(亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、デュポン社製のサーリン7930(リチウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、サーリン8511(亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、サーリン8512(ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、サーリン8945(ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、サーリン9945(亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)が挙げられる。
【0034】
カバー材料には、これらのアイオノマーを主体として、さらに熱可塑性エラストマーが含有されていることが、コア4の変形追随性の観点から好ましい。使用される熱可塑性エラストマーは、融点以下では凍結相又は結晶相を示すポリマーブロック又は水素結合により分子運動が拘束されているハードセグメントのポリマーブロックとソフトセグメントのポリマーブロックとが結合してなるブロックコポリマーで、結合様式は、ハードブロックをHとし、ソフトブロックをSとして、H−S型、H−S−H型、(H−S)n で表されるマルチブロック型、星型など、いずれであってもよい。具体的には、ハードセグメントがポリスチレンでソフトセグメントがポリブタジエン、ポリイソプレン、又はこれらの水素添加物であるポリスチレン系エラストマー;ハードセグメントがポリエチレン又はポリプロピレンで、ソフトセグメントがブチルゴムやEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三共重合体)であるポリオレフィン系エラストマー;ハードセグメントがポリアミドでソフトセグメントがポリエステル又はポリエーテルであるポリアミド系エラストマー;ハードセグメントがポリエステルでソフトセグメントがポリエーテルであるポリエステル系エラストマー;ハードセグメントがウレタン結合を有するポリウレタン系ブロックでソフトセグメントがポリエステル又はポリエーテルであるポリウレタン系エラストマー;さらにはポリブタジエンブロックにエポキシ基が含有していたり、末端のポリスチレンブロックにOH基が付加されているものなど;及びこれらのエラストマーの2種類以上の混合物が挙げられる。
【0035】
カバー材料には、上記のようなアイオノマー、熱可塑性エラストマーの他、必要に応じて、着色剤、老化防止剤や可塑剤、分散剤、紫外線吸収剤等の添加剤が適宜含有され得る。
【0036】
本発明のゴルフボールは、まず芯部用組成物をプレス加硫成形して芯部1を作成し、次いで中間層2、カバー3の順で、芯部1を被覆するように形成していけばよい。中間層2、カバー3の形成は、これらの構成材料にもよるが、射出成形方法、あるいは予めハーフカップを成形し、これに芯部1又はコア4を中間層2で被覆したものを詰め込んで熱プレス成形する方法などが用いられ、加硫を必要とする場合には、後者の方法が好ましく用いられる。
【0037】
尚、カバー成形時には、通常ディンプルと呼ばれる窪みを表面に多数形成し、美観や商品価値を高めるためのペイント仕上げ、マーキングスタンプ等を施すことにより商品とされる。
【0038】
以上のようにして作製されるスリーピースゴルフボールは、各層の硬度、比重、変形量、さらには隣接する層の硬度、比重、変形量の関係まで所定範囲となるように調整しているので、ドライバーやロング〜ミドルアイアンでのショットに対する高飛距離とショートアイアンを用いたアプローチショットに対するコントロール性という相反する特性を満足でき、しかも良好な打球感を有し、耐久性にも優れている。
【0039】
【実施例】
〔測定、評価方法〕
▲1▼硬度
イ)芯部、コアの硬度(JIS−C硬度)
芯部については、中心、中心から5mm、10mm、15mmのところ、及び表面の硬度を測定した。また、コアについては表面(中間層表面に該当)の硬度を測定した。
【0040】
尚、JIS−C硬度の測定は、JIS−K6301に規定するスプリング式硬度計C形を用いて測定した。
【0041】
ロ)カバーの硬度(ショアD硬度)
作成したボールの表面(カバー表面に該当)の硬度を、ASTM−D 2240−68に規定するスプリング式硬度計ショアーD型を用いて測定した。
【0042】
▲2▼変形量(mm)
はじめに10kgfの荷重(初荷重)をかけ、荷重を130kgf(終荷重)にまで増大させて、初荷重10kgfから終荷重130kgfをかけたときの変形量(mm)を測定した。
【0043】
▲3▼反発性
金属製の筒を初速度40m/秒でゴルフボールに衝突させ、そのときの筒及びゴルフボールの反発を測定した。測定値が高い程、反発性が良いことを示している。
【0044】
▲4▼ドライバーに対する飛び性能
打出角、スピン量、飛距離(キャリー及びトータル)により、評価した。各項目の測定評価方法は以下の通りである。
【0045】
イ)打ち出し角度(゜)
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製のW#1ドライバーを取り付け、ヘッドスピード45m/secとして打撃し、打ち出し直後の打ち出し角度を測定した。測定は8回行って、平均を求めた。
【0046】
ロ)スピン量(rpm)
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製のW#1ドライバーを取り付け、ヘッドスピード45m/secとして打撃し、打ち出し直後のバックスピン量を測定した。測定は8回行って、平均を求めた。
【0047】
ハ)飛距離(ヤード)
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製のW#1ドライバーを取り付け、ヘッドスピード45m/secとして打撃した際のボールの落下点までの距離(キャリー)及びボール落下地点からランしてボールが止まるまでの距離(ラン)及びキャリーとランの合計距離(トータル)を測定した。測定は5回行って、平均を求めた。
【0048】
▲5▼アイアンに対するコントロール性能
スピン量、飛距離(キャリー、ラン)により評価した。
スピン量及び飛距離(キャリー、ラン)の測定は、ドライバーの飛び性能で行なった測定方法において、クラブの種類をアイアン(SW)に変更し、打撃初速度を21m/sに変更することにより行なった。
【0049】
▲6▼打球感
プロゴルファー10名により、メタルヘッド製のW#1ドライバーで実打撃を行なった時の各人の打撃時フィーリングを下記基準で評価し、10人の評価のうち、最も多い評価を、そのボールの打球感とした。
◎:衝撃が非常に少なくても非常に良い
○:衝撃が少なくて良い
△:普通
×:衝撃が大きくて悪い
【0050】
〔ゴルフボールの作製〕
表1(実施例)及び表2(比較例)に示す芯部用ゴム組成物を混練ロールで均一に混練した後、表に示す条件で加硫成形して、直径d1 が25〜35mmの球状の芯部を作製した。作成した芯部について、上記測定方法に基づいて硬度、比重、変形量を測定した。測定結果を表4及び表5に示す。
【0051】
次いで、表1(実施例)及び表2(比較例)に示す中間層用組成物をコア表面に射出成形して中間層を形成することにより、直径d2 が39.1mmのコアを作製した。作製したコアの表面硬度及び変形量比重を測定した。結果を表4及び表5に示す。
【0052】
コア表面上に、さらに表3に示すカバー用組成物A〜Dのいずれかを射出成形してカバーを形成し、直径42.76mmのスリーピースゴルフボール(実施例1〜4,比較例1〜7)を製造した。製造した各ボールについて、カバー硬度を測定し、さらに反発性、飛び性能、コントロール性、打球感を測定した。結果を表4及び表5に示す。
【0053】
【表1】
Figure 0003659557
【0054】
【表2】
Figure 0003659557
【0055】
【表3】
Figure 0003659557
【0056】
尚、芯部用及び中間層用ゴム組成物において、基材ゴムとしては、日本合成ゴム製のBR11(シス1,4結合の含有率が96%のシス1,4−ポリブタジエン)を用いた。表1,2中、DPDSとあるのは、住友精化株式会社製のジフェニルジスルフィドである。
【0057】
また、カバー材料において、アイオノマーとしては、三井デュポンポリケミカル株式会社製のハイミラン1707(ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、ハイミラン1706(亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、ハイミラン1555(ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、ハイミラン1557(亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、デュポン社製のサーリン8945(ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、サーリン9945(亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)、サーリン8542(マグネシウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名)を用いた。熱可塑性エラストマーとしては、ダイセル化学製のエポキシ化したSBS構造のスチレン系エラストマーであるエポフレンドA1010、クラレ製のスチレン系熱可塑性エラストマーであるセプトンHG252、ELF・ATOCHEM製のポリアミド系エラストマーであるペバックス2533を用いた。
【0058】
【表4】
Figure 0003659557
【0059】
【表5】
Figure 0003659557
【0060】
まず、打球感に関しては、実施例1と比較例1の比較から、芯部の中心硬度X、表面硬度Y、コアの表面硬度Zが同じであっても、芯部の直径d1 が27mm以下では打球感が悪くなることがわかる。また、比較例3,7から、芯部表面硬度Yやコア表面硬度Z、カバー硬度が大きくなくても、芯部中心硬度Xが大きい場合、すなわち芯部の表面と中心の硬度差(Y−X)が8未満の場合には、打球感が低下することがわかる。さらに、実施例3と比較例5の比較から、芯部の表面と中心の硬度差(Y−X)、コア硬度Z、芯部の直径d1 が同じであっても、カバーの硬度Dが60を超えると打球感が悪くなることがわかる。
【0061】
そして、芯部の表面と中心の硬度差(Y−X)が8未満の場合には、打球感だけでなく、ドライバーショットに対するスピン量も多くなって飛距離が伸びないことがわかる(比較例3,7)。コア硬度Zと芯部中心硬度の差(Z−X)が小さい場合には、打ち出し角も小さくなるために、さらに飛距離が小さくなる(比較例3)。但し、これらについては、スピン量が多いことから、アイアンを用いたアプローチショットについてはランが少なく、コントロール性が優れていることがわかる。
【0062】
飛び性能に関しては、硬度差(Y−X)が8以上であり、硬度差(Z−X)が10以上であっても、コア表面硬度Zが80未満の場合には、反発性が悪く、ドライバーショットに対するスピン量が多くなり、飛距離が伸びないことがわかる(比較例4)。また、芯部の比重aの方がコアの比重bよりも大きくすると(a>b)、反発性が低下するために、所定の打出角が確保され、スピン量がそれ程多くなくても、飛距離が伸びないことがわかる(比較例2)。さらに、芯部の変形量pとコアの変形量qの差(p−q)が小さい場合にも、打出角が低く、スピン量が大きくなるために、飛距離が伸びないことがわかる(比較例6)。但し、これらの比較例については、スピン量が多いために、アプローチショットにおけるランが少なく、コントロール性を満足していることがわかる。
【0063】
比較例5から、芯部及びコアに関して比重差、硬度差、変形量差が満足できる場合であっても、カバー硬度が60を超えると、スピン量が少なくなりすぎて、アプローチショットに対するランが大きくなり、コントロール性を満足できないことがわかる。
【0064】
一方、表4から、芯部の直径d1 が27〜37mmであり、芯部の比重aが中間層の比重bより小さく、芯部の中心と表面の硬度差(Y−X)が8以上で、コア表面硬度Zは80以上であり、芯部とコアの変形量の差(p−q)が0.5以上であり、カバーのショアD硬度は60未満というように、本発明の要件を全て満足する実施例は、打球感が良好であり、飛び性能及びコントロール性も良好であった。
【0065】
【発明の効果】
本発明のスリーピースゴルフボールは、ドライバーやロング〜ミドルアイアンに対しては優れた飛び性能を示し、ショートアイアンを用いたアプローチショットに対しては優れたコントロール性を示し、スピン重視型のゴルファーにも、飛び重視型のゴルファーのいずれに対しても満足できる。しかも、打球感、耐久性に優れているので、非力なプレーヤであっても、本発明のスリーピースゴルフボールを用いれば、打撃時に大きな衝撃を受けることなく、優れた飛距離を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スリーピースゴルフボールの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
1 芯部
2 中間層
3 カバー
4 コア

Claims (3)

  1. 直径27〜37mmの芯部と該芯部を被覆する中間層とからなるコア、及び該コアを被覆するカバーからなるスリーピースゴルフボールであって、
    前記芯部の比重(a)は1.00〜1.15であり、
    前記中間層の比重(b)は1.15〜1.30であり、
    前記芯部の比重(a)は前記中間層の比重(b)より小さく、
    前記中間層の比重(b)と前記芯部の比重(a)との差(b−a)が0.1以上0.25以下であり、
    前記芯部表面のJIS−C硬度(Y)前記芯部の中心のJIS−C硬度(X)との差(Y−X)は、8以上25以下であり、
    前記コア表面のJIS−C硬度(Z)は80以上であり、
    前記コア表面のJIS−C硬度(Z)と前記芯部の中心のJIS−C硬度(X)との差(Z−X)は20以上35以下であり、
    前記芯部に初荷重10kgfから終荷重130kgfをかけたときの変形量(p)と、前記コアに初荷重10kgfから終荷重130kgfをかけたときの変形量(q)の差(p−q)が0.5以上1.50以下であり、
    前記カバーのショアD硬度は、45〜58であることを特徴とするスリーピースゴルフボール。
  2. 前記コア表面のJIS−C硬度(Z)と前記芯部の中心のJIS−C硬度(X)との差(Z−X)は20以上30以下である請求項1に記載のスリーピースゴルフボール。
  3. 前記芯部の比重(a)は1.00〜1.10である請求項1又は2に記載のスリーピースゴルフボール。
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