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JP3647079B2 - 六方晶窒化ほう素粉末の製造方法 - Google Patents

六方晶窒化ほう素粉末の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、六方晶窒化ほう素粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
六方晶窒化ほう素(hBN)粉末は、黒鉛類似の層状構造を有し、熱伝導性、絶縁性、化学的安定性、固体潤滑性、耐熱衝撃性などの特性に優れ、これらの特性を活かして固体潤滑・離型剤、樹脂やゴムの充填材、耐熱性・絶縁性焼結体などに応用されている。
【0003】
hBN粉末の製造方法の一例としては以下がある。
(1)ほう酸、酸化ほう素、ほう砂などのほう素と酸素を含む化合物とをリン酸カルシウムなどの充填材に担持させた後、アンモニア雰囲気下で焼成する方法。
(2)上記ほう素化合物とジシアンジアミド、メラミン、尿素などの窒素を含む化合物との混合物を焼成する方法。
(3)上記ほう素化合物と炭素などの還元性物質との混合物を窒素ガス雰囲気下で焼成する方法。
(4)ほう酸又は酸化ほう素、メラミン及び水を含む混合物から、濾過、遠心分離、乾燥などの方法により水を除去したのち、これを非酸化性ガス雰囲気下で焼成する方法。
【0004】
しかしながら、(1)では焼成時にほう素と酸素を含む化合物が融解するのでアンモニア雰囲気との接触面積が充分に大きくはならず、また(2)では窒素を含む化合物が焼成時に気化あるいは分解しやすいため、いずれの方法においても反応率を著しく高めることが困難である。(3)では酸洗浄などの簡便な後処理では除去困難な還元性物質が不純物として残留しやすくなる。
【0005】
一方、(4)は、水の作用によりほう酸又は酸化ほう素とメラミンとが塩(ほう酸メラミン)を形成して均一な原料混合物となるため、均質なBN粉末を高い収率で製造できる方法として知られている(米国特許第3,241,918 号明細書、特開昭60−151202号公報、特開昭61−191505号公報、特開昭61−286207号公報等)が、この方法では他の方法と異なり、原料混合物から水を除去するための濾過、遠心分離、乾燥などの余分な工程が必要となるので生産性が低くなるという問題がある。
【0006】
さらには、(1)〜(4)いずれの方法においても生成するhBN粉末は粒径の著しいばらつきがある。近年、hBN粉末の各種用途では品質の安定性がますます要求されておりそれに伴いhBN粉末自体の均質性を向上させる必要が生じてきた。この対策として、粒径の揃ったhBN粉末を分級により製造することが行われているが、余分な後工程が必要となるだけではなく分級によって歩留が低下するため、目標とする粒径の粉末を高収率、高生産性で製造することはできなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、粒径の揃ったhBN粉末を分級などの余分な後工程を必要とせずに高収率、高生産性で製造することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、ほう酸とメラミンとをB/N原子比が1/1〜1/6となる割合で混合し、それを温度0〜200℃、相対湿度5%以上の水蒸気を含む雰囲気下で保持してほう酸メラミンを形成させた後、それをアンモニアを含む雰囲気下、温度500以上1400℃未満で一旦保持してからアンモニアを除く非酸化性ガス雰囲気下、温度1400〜2200℃で焼成することを特徴とする六方晶窒化ほう素粉末の製造方法である。
【0009】
以下、さらに詳しく本発明について説明する。
【0010】
本発明によれば、粒径が揃ったhBN粉末を分級などの余分な後工程を必要とせずに製造することが可能となる。本発明において、粒径の揃っていることの評価は、レーザー回折法で測定された粒度分布の粒径の標準偏差(σ)と平均粒径〔メジアン径(D50)〕の比からなる変動係数(σ/D50)によって行うことができる。変動係数は粒度分布の幅に対応しており、これが大きいと粒度分布の幅すなわちばらつきが大きくなり、逆に小さいと粒径の揃った均質な粉末である。本発明によれば、変動係数が0.55以下のhBN粉末をも製造することができる。
【0012】
次に、本発明のhBN粉末の製造方法について説明する。本発明のhBN粉末の製造方法は、上記本発明のhBN粉末の製造に適用ある製造方法である。
【0013】
本発明で使用されるほう酸は、メラミンと反応してほう酸メラミンを形成するものであり、その例はオルトほう酸(H3 BO3 )、メタほう酸(HBO2 )、テトラほう酸(H2 4 7 )、無水ほう酸(B2 3 )など、一般式(B2 3 )・(H2 O)x 〔但しx =0〜3〕で示される化合物の1種又は2種以上であるが、なかでもオルトほう酸は入手が容易でメラミンとの混合性が良好であるので本発明には好適である。
【0014】
ほう酸とメラミンの混合は、ボールミル、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサーなどの一般的な混合機を用いて行うことができる。配合割合は、ほう酸のほう素原子(B)とメラミンの窒素原子(N)のB/N原子比が1/1〜1/6となる割合、好ましくは1/2〜1/4となる割合である。該B/N原子比が1/1をこえると焼成後に未反応ほう酸の残留が顕著となり、また1/6未満では焼成時に未反応メラミンの昇華が顕著となって、いずれの場合も収率が低下する。
【0015】
本発明のB/N原子比を満たすほう酸とメラミン(C3 6 6 )の具体的な配合割合は、ほう酸がオルトほう酸(H3 BO3 )である場合、H3 BO3 /C3 6 6 がモル比では6/1〜1/1、重量比では2.94/1〜0.49/1となる。
【0016】
本発明は、上記ほう酸とメラミンの混合物を温度0〜200℃好ましくは40〜100℃の相対湿度5%以上の水蒸気を含む雰囲気下で保持してほう酸メラミンを形成させ、それを焼成するものである。ほう酸メラミンの形成温度が0℃未満では反応速度が著しく遅くなり、また200℃をこえるとほう酸がガラス状に融解し表面積が小さくなるので反応率が増大しなくなる。さらには、ほう酸メラミンの形成雰囲気を相対湿度5%以上の水蒸気を含む雰囲気下としたのは、相対湿度5%未満の雰囲気では反応速度が著しく遅くなるからである。
【0017】
上記温度と相対湿度の雰囲気下における保持時間は、1〜100時間程度である。なかでも、温度T(℃)、相対湿度Ψ(%)及び保持時間t(hr)が以下の関係式を満たす条件でほう酸とメラミンの混合物を保持してほう酸メラミンを形成させることである。このような雰囲気は、恒温恒湿機、スチーム加熱炉などを用いて容易に形成させることができる。雰囲気を形成する水蒸気以外のガスについては特に制限はなく、大気ガス、窒素ガス、不活性ガスなどである。
T≧−20・log10(t/4)+{(Ψ−100)2 /20}+60
【0018】
ほう酸メラミンの形成は、熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)、X線回折測定などによって容易に確認することができる。例えば、ほう酸とメラミンの混合物のTG/DTA曲線では350℃付近にメラミンの昇華による急激な重量減少及び吸熱が現れるが、ほう酸メラミンでは殆んど現れない。また、X線回折測定においても、120℃以下の温度で形成されたほう酸メラミンは、ほう酸及びメラミンのいずれとも異なる独自の回折パターンを示すため、容易に確認することができる(萩尾 剛、他;日本セラミックス協会学術論文誌;102巻、11号、1051〜1052頁[1994年])。しかしながら、120℃をこえる温度で形成されたほう酸メラミンは非晶質であるので独自の回折パターンを示さなくなるため注意が必要である。
【0019】
本発明によって製造されたほう酸メラミンは従来のように水を含まないものであるため、そのままあるいは軽い解砕工程を行った後、濾過、遠心分離、乾燥などの工程を経ることなくただちに焼成することができる。また、従来法ではほう酸メラミンの嵩密度が著しく低下するのでその回復処理が必要であった(特開昭61−286207号公報)が、本発明ではそのような処理は必要でなくなるので生産性が向上する。また、ほう酸メラミンは焼成時に融解しないため炉材の損耗を抑制することができるので連続式炉による焼成が容易となる。
【0020】
本発明においては、焼成する前に温度500以上1400℃未満のアンモニアを含む雰囲気下で一旦保持される。この操作によって、ほう酸メラミンは非晶質窒化ほう素(a−BN)粉末に変化するが、ほう酸メラミンに対するアンモニアの作用により、酸素と炭素の含有量が少ない均質なa−BN粉末が形成される。500℃未満ではa−BNの生成速度が著しく遅くなり、また1400℃以上ではアンモニアの分解が顕著となる。保持時間としては0.5〜12時間特に1〜2時間が好ましい。
【0021】
焼成は、アンモニアを除く非酸化性ガス雰囲気下、温度1400〜2200℃で行われる。1400℃未満ではhBNの生成速度が著しく遅くなり、また2200℃をこえるとhBNの分解が顕著となる。非酸化性ガスとしては、窒素ガス、水素ガス、メタン、プロパンなどの炭化水素ガス、ヘリウム、アルゴンなどの希ガス、一酸化炭素ガスなどである。これらのうち、入手しやすく安価でありしかも2000〜2200℃の高温においてはhBNの分解を抑制する効果の大きい窒素ガスが最適である。焼成時間としては0.5〜24時間特に2〜10時間が好ましい。
【0022】
アンモニアを含む雰囲気下における保持又焼成に用いられる炉としては、マッフル炉、管状炉、雰囲気炉などのバッチ式炉や、ロータリーキルン、スクリューコンベヤ炉、トンネル炉、ベルト炉、プッシャー炉、竪型連続炉などの連続式炉があげられる。これらは目的に応じて使い分けられ、例えば多くの品種のhBN粉末を少量ずつ製造するときはバッチ式炉を、一定の品種を多量製造するときは連続式炉が採用される。
【0023】
さらには、アンモニアを含む雰囲気下における保持前又は保持後にhBNの結晶性や粒径を調節するために触媒を添加することもできる。触媒としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のほう酸塩、ほう酸および/または高温でほう酸と反応して塩を形成するアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩等の化合物などが使用される。
【0024】
以上のようにして製造されたhBN粉末は、必要に応じて粉砕、分級、酸処理による残留触媒の除去(精製)、洗浄、乾燥などの後処理工程を経た後、実用に供される。
【0025】
【実施例】
以下、実施例、比較例をあげてさらに具体的に本発明を説明する。
【0026】
実施例1
オルトほう酸200gとメラミン200g(B/N原子比が1/3)をボールミルで混合し、それを恒温恒湿機を用い、大気中で温度80℃、相対湿度80%の水蒸気を含む雰囲気下に10時間保持した。得られた試料は指で軽く押さえると容易に解砕できる程度に凝固していた。解砕後X線回折測定によりほう酸メラミンが生成していることが確認された。
【0027】
この試料を管状炉を用い、アンモニア雰囲気中、温度800℃で2時間保持した。保持後の試料には酸素3.2重量%、炭素0.5重量%が含まれていた。これにほう酸カルシウム(2CaO・B2 3 )3gを添加してボールミルで混合し、高周波加熱炉を用いて窒素雰囲気下、温度2000℃で2時間焼成した。
【0028】
得られた焼成物を希硝酸で洗浄した後、濾過、乾燥の後処理を行ってからX線回折分析をしたところ、六方晶窒化ほう素(hBN)であることが確認された。また、レーザー回折法により粒度分布を測定したところ、メジアン径(D50)16.8μm、標準偏差(σ)8.2μm、変動係数(σ/D50)0.49であった。
【0029】
実施例2
オルトほう酸185g、メラミン250g(B/N比=1/4)、炭酸カルシウム(CaCO3 )10gをヘンシェルミキサーで20分間撹拌した後スチーム加熱炉で窒素雰囲気下、温度100℃、相対湿度80%で5時間保持した。生成物をX線回折分析したところ、ほう酸メラミンとCaCO3 の混合物であることが確認された。さらに、管状炉を用いてアンモニア雰囲気中、温度1000℃で1時間保持した後、黒鉛抵抗加熱炉を用いアルゴン雰囲気下、温度1800℃で1時間焼成した。
【0030】
焼成物を希硝酸で洗浄した後、濾過、乾燥を行いX線回折分析をしたところ、hBN粉末であることが確認された。また、レーザー回折法により粒度分布を測定したところ、D50=8.9μm、σ=4.1μm、σ/D50=0.46であった。
【0031】
実施例3
無水ほう酸500kg、メラミン600kg(B/N比=1/2)を、スチーム加熱炉を用いて大気中で温度100℃、相対湿度90%の雰囲気下に5時間保持した。生成物はX線回折分析によりほう酸メラミンであることが確認された。それをスクリューコンベヤ炉を用いてアンモニア雰囲気中、温度700℃で10時間保持した。保持後の試料には酸素1.5重量%、炭素0.3重量%が含まれていた。次いで、それを竪型連続炉を用い、窒素雰囲気下、温度1900℃で12時間焼成した。
【0032】
焼成物を希硝酸で洗浄した後、濾過、乾燥を行いX線回折分析をしたところ、hBN粉末であることが確認された。また、レーザー回折法により粒度分布を測定したところ、D50=5.8μm、σ=3.0μm、σ/D50=0.52であった。
【0033】
比較例1
オルトほう酸とメラミンを実施例1と同様に混合した後、相対湿度80%の水蒸気を含む雰囲気下で保持せずにただちに管状炉を用いてアンモニア雰囲気中800℃で2時間保持した。保持後の試料の酸素および炭素の含有量を測定したところ、それぞれ10.2重量%および3.5重量%であった。その後、実施例1と全く同様にし焼成して得れらた生成物はhBN粉末であることをX線回折測定により確認した。さらにレーザー回折法により粒度分布を測定したところ、D50=15.6μm、σ=10.8μm、変動係数(σ/D50)が0.69の粉末であった。
【0034】
比較例2
実施例1において、ほう酸メラミンが生成している試料をアンモニア雰囲気中、温度800℃で2時間保持するかわりに窒素雰囲気中、温度800℃で2時間保持した後、酸素および炭素の含有量を測定したところそれぞれ10.5重量%および12.5重量%であった。その後、実施例1と全く同様にし焼成して得れらた生成物はhBN粉末であることをX線回折測定により確認した。さらにレーザー回折法により粒度分布を測定したところ、D50=18.5μm、σ=16.9μm、変動係数(σ/D50)が0.91の粉末であった。
【0035】
【発明の効果】
本発明のhBN粉末の製造方法によれば、粒径の揃った高品質のhBN粉末を高収率、高産性で製造することができる。

Claims (2)

  1. ほう酸とメラミンとをB/N原子比が1/1〜1/6となる割合で混合し、それを温度0〜200℃、相対湿度5%以上の水蒸気を含む雰囲気下で保持してほう酸メラミンを形成させた後、それをアンモニアを含む雰囲気下、温度500以上1400℃未満で一旦保持してからアンモニアを除く非酸化性ガス雰囲気下、温度1400〜2200℃で焼成することを特徴とする六方晶窒化ほう素粉末の製造方法。
  2. 六方晶窒化ほう素粉末が、レーザー回折法における粒度分布の標準偏差(σ)とメジアン径(D 50 )の比からなる変動係数(σ/D 50 )が0.55以下であることを特徴とする請求項1に記載の六方晶窒化ほう素粉末の製造方法。
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