JP3506080B2 - 半導体電極およびその製造方法 - Google Patents
半導体電極およびその製造方法Info
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Description
ができる半導体電極,およびその製造方法に関する。
素増感型の太陽電池3が知られている。色素増感型の太
陽電池3は,透明電極5を受光面120に配設した半導
体電極9と,これに対向する対向電極6とを有している
と共に,スペーサ81により電極間に設けた間隙に電解
液4を満たして構成してある。
透明電極5を透過して半導体電極1に照射される光99
によって,半導体電極9内において電子を発生させる。
そして,半導体電極1内の電子は,透明電極5に集めら
れ,この透明電極5から取出される。従来の半導体電極
9は,図8に示すごとく,TiO2等の半導体の微粒子
(粒径:数nm〜数十nmオーダ)を部分的に焼結させ
て構成した多孔質の電極基体922と,その表面に配置
したルテニウム錯体等の色素923とよりなる。なお,
この半導体電極9は,上記色素923を配設していない
状態においては,上記太陽電池だけでなく,通常の電
池,光触媒等にも利用することができる。
導体電極9においては,次の問題がある。即ち,従来の
半導体電極9における電極基体922は,表面積を増加
させるために,上記のごとく半導体の微粒子を部分的に
焼結させて多孔質状に構成してある。そして,この多孔
質状の基体に上記半導体を付着させるには,方向性のあ
る物理蒸着法を用いることはできず,超臨界流体を用い
た方法,ゾルゲル法,液相含浸法,CVI法(chemical
vapor infiltration)等の,比較的工程が複雑な方
法を利用する必要があった。
せる方法は,製造上簡単ではあるが,大きな表面積が得
られず,優れた性能を発揮しうる半導体電極を得ること
はできなかった。
されたもので,半導体の比表面積を低下させることな
く,容易に製造することができ,かつ,エネルギー変換
効率に優れた,半導体電極およびその製造方法を提供し
ようとするものである。
該基板の表面に形成された膜とよりなり,上記膜は,柱
状構造を有し,少なくともTiO 2 ,ZnO,SnO 2 の
いずれか1種以上を含有する半導体から構成されると共
に,上記膜は,表面に少なくとも色素を含有してなるこ
とを特徴とする色素増感型太陽電池用半導体電極にあ
る。
記半導体よりなる膜は,柱状構造を有していることであ
る。
の間にある程度の間隙を残して構成されたものである。
そのため,上記柱状構造を有する上記膜は,上記間隙等
によって非常に大きな表面積を有するものとなる。ま
た,上記柱状構造としては,基板の法線方向から傾いた
柱状組織を集合させてなる傾斜柱状構造とすることもで
きる。
面面積よりも大きいこと,特に10倍以上大きいことが
好ましい。これにより,半導体電極が受けうる光量を十
分に確保することができ,後述するエネルギー変換効率
をさらに向上させることができる。
物半導体,硫化物半導体等を用いることができる。酸化
物半導体としては,例えば,TiO2,ZnO,Sn
O2,Nb2O5,In2O3,WO3,ZrO2,La
2O3,Ta2O5,SrTiO3,BaTiO3等を用いる
ことができる。硫化物半導体としては,例えば,CdS
等を用いることができる。また,Si,GaAs等も用
いることができる。
種々選択することができるが,例えば,上記半導体電極
を太陽電池に用いる場合には,その透明電極となるフッ
素ドープSnO2コートガラス,ITOコートガラス等
を用いることができる。
方法としては,種々の蒸着法がある。特に後述するごと
く,斜め蒸着法を用いることが好ましい。この場合に
は,上記傾斜柱状構造を容易に得ることができる。
明の半導体電極は,上記のごとく,柱状構造を有する半
導体よりなる膜を有している。そのため,半導体電極の
比表面積が大きくなり,色素等の含有量(付着量)を高
めることができる。それ故,電極としての活性を向上さ
せることができる。
構造を有する半導体に,後述するごとく粒子状の半導体
と組み合わせて構成しても勿論良い。
面に,少なくとも色素を含有する。色素を含有(付着)
させ,上記半導体電極を太陽電池用半導体電極として使
用する。
換効率を発揮する。この理由は次のように考えられる。
即ち,太陽電池においては,光を吸収した励起状態の色
素から半導体電極に電子が注入される。太陽電池で発電
できる電流量はこの注入された電子数に依存する。この
電子数は半導体電極の単位面積当たりの色素吸着量に依
存する。そのため,上記のように柱状構造を有する蒸着
膜は総表面積を大きくすることができ,色素の吸着量を
大きくすることができるため,太陽電池として発電でき
る電流量を大きくすることができるためであると考えら
れる。
状構造を有する半導体は,その表面に,半導体微粒子ま
たは該半導体微粒子からなる表面層を有してなることが
好ましい。この場合には,上記半導体微粒子の存在によ
ってさらに色素吸着量を大きくすることができる。上記
半導体微粒子は,基板の表面に形成された柱状構造を有
する半導体と同一の物質でも異なる物質でもよい。ま
た,上記半導体微粒子はまたは該半導体微粒子からなる
表面層を存在させるには,塗布,付着,析出等の方法に
より行うことができる。
表面に,該基板の法線方向から10度以上傾斜した方向
から蒸着粒子を入射させ,これを蒸着させる斜め蒸着法
を行うことにより,上記基板の表面に柱状構造を有し,
少なくともTiO 2 ,ZnO,SnO 2 のいずれか1種以
上を含有する半導体から構成される蒸着膜を形成し,該
蒸着膜を形成した後,該蒸着膜の表面に,少なくとも色
素を付着させることを特徴とする色素増感型太陽電池用
半導体電極の製造方法にある。
なく(法線方向に平行ではなく),ある傾きを持った状
態で蒸着粒子を入射させて基板上に蒸着膜を形成する方
法である。蒸着法自体は,公知の種々の蒸着法を用いる
ことができる。例えば,電子ビーム蒸着,抵抗加熱蒸
着,スパッタ蒸着,クラスタイオンビーム蒸着等の物理
蒸着法を用いることができる。
発させ,反応生成物を基板上に堆積させる反応蒸着法を
用いることができる。これらの蒸着法は,蒸着粒子に方
向性を持たせることができる方法である。また,蒸着粒
子に方向性を持たせる方法としては,上記の方法に加え
て反応ガスの流れを制御することにより,CVD法(Ch
emical vapor deposition)に代表される化学蒸着法
を用いることもできる。
入射は,基板の法線方向から10度以上の入射角をもっ
て行う。入射角が10度未満の場合には,上記傾斜柱状
構造が安定的に形成されないおそれがある。そのため,
より好ましくは30度以上がよい。また,入射角が85
度を超える場合には,蒸着源から見た基板の投影面積が
小さくなるために成膜速度が小さくなるというおそれが
ある。
10度以上の入射角を持たせる手段として,蒸着粒子の
入射方向に対して,所定の角度に基板を傾けてもよい。
さらには蒸着粒子供給源に対して基板を高速で相対移動
させて,基板に対して粒子の相対運動条件を作り出し粒
子を基板表面に斜めに入射させて斜めに堆積させること
もできる。
蒸着粒子の入射方向を上記傾斜角をもった一方向とした
場合,蒸着膜は基板の法線方向から傾いた柱状組織を集
合させてなる傾斜柱状構造となる。また,蒸着粒子の入
射方向を二以上とし,同時に蒸着させることにより傾斜
角度を変えることもできる。その結果,上記柱状組織は
基板の法線方向に調整することもできる。また,斜め蒸
着時にその方位角を徐々に変えて螺旋状の柱状組織と
し,より大きな表面積とすることもできる。
体電極は,上記斜め蒸着法により得られる柱状組織の存
在によって比表面積が大きくなり,色素等の含有量(付
着量)を高めることができる。それ故,電極としての活
性を向上させることができる。
は,上記斜め蒸着法を実施した後に,蒸着膜に熱処理を
加え,相転移させることが好ましい。即ち,例えば蒸着
膜がTiO2の場合を例にとると,上記斜め蒸着法を行
った直後の蒸着膜は,アモルファス(非晶質)状態で形
成されることがある。これに所定温度の熱処理を加える
ことにより,アモルファス相をアナターゼ相に変態させ
ることができる。
囲気,昇温速度,熱処理温度を種々選択して決定するこ
とができる。特に,昇温速度を10℃/min,熱処理
時間を30分とした時の大気中での熱処理温度は,30
0〜700℃であることが好ましい。300℃未満の場
合には相変態が得られないという問題があり,700℃
を超える場合にはガラス基板の軟化による変形や導電膜
の特性劣化等の問題がある。
現することにより,例えば太陽電池に用いた場合のエネ
ルギー変換効率をさらに向上させることができる。この
理由は,結晶化による明瞭なバンド構造の形成や膜を構
成する半導体の粒成長や結合性向上により,色素から半
導体電極への電子の注入効率の向上ないしは膜内での電
子の移動が容易になったためであると考えられる。
おいて行うことができる。これにより,酸素欠損量が多
い組成の膜を得ることができる。そのため,膜の電気伝
導度が高くなるという理由により,さらに上記のエネル
ギー変換効率を向上させることができる。
の場合について説明したが,蒸着時の雰囲気や基板温度
を制御することにより直接アナターゼ相等の結晶相を得
ることもできる。その場合,熱処理を加えなくてもよい
し,粒径や結晶性,酸素欠損量の制御のために,所定の
雰囲気で熱処理を加えてもよい。
面に,少なくとも色素を付着させる。例えば,Siより
なる半導体の表面にPt等を含有させることができ,T
iO2よりなる半導体の表面にPtやNiO等を含有さ
せることができ,WO3よりなる半導体の表面にRuO2
等を含有させることができる。
しては,基板の表面に,該基板の法線方向から30〜8
5度傾斜した方向から蒸着粒子を入射させる斜め蒸着法
により蒸着させた半導体の表面に色素を含有させたもの
である。この形態では,色素量が多く,活性の高い電極
となる。
着膜の表面に,少なくとも色素を付着させる際には,上
記蒸着膜の温度を80℃以上とすることが好ましい。上
記温度が80℃未満の場合には,蒸着膜への大気中の水
分の吸着を低減させることが困難となるという問題があ
る。一方,半導体電極として有利なアナターゼ相を保持
するため上記温度は800℃以下とすることが好まし
い。
方法につき,図1〜図5を用いて説明する。本例におい
ては,本発明品としての2つの半導体電極(試料E1,
E2)と,比較品としての1つの半導体電極(試料C
1)を作製し,その性能評価を行った。
半導体電極1は,図1に示すごとく,基板10と,該基
板10の表面に斜め蒸着法により蒸着した半導体よりな
る蒸着膜12とよりなる。かつ,該蒸着膜12は上記基
板10の法線方向Aから傾いた柱状組織を集合させてな
る傾斜柱状構造を有している。
は,図1に示すごとく,基板10の表面に,該基板10
の法線方向から10度以上傾斜した方向から蒸着粒子1
3を入射させこれを蒸着させる斜め蒸着法を行った。こ
の製造方法をさらに詳説する。
SnO2コートガラス(旭硝子製)を準備し,これにT
iO2を電子ビーム蒸着法により蒸着させた。蒸着装置
2は,図5に示すごとく,真空ポンプ21に連結された
容器20内において,電子銃28から蒸着源23に向け
て電子ビーム29を照射するよう構成してある。また,
蒸着源23の上方には基板10を配置すると共に,基板
10の角度(蒸着粒子13の入射角α)を調整できるよ
うになっている。この蒸着装置2としては,実際には,
日本真空技術(株)製EBV−6D型高真空蒸着装置を
用いた。
ては,高純度化学研究所製の純度99.99%のTiO
2(ルチル)を用いた。また,試料E1においては,上
記蒸着粒子13の入射角αが法線Aに対して略70度と
なるように,基板10をセットした。
速度:1.5nm/s,膜厚:2.6μm,基板温度:
200℃,真空度:4×10-6Torrという蒸着条件
により斜め蒸着法を実施し,本発明品としての半導体電
極(試料E1)を得た。得られた試料E1における,蒸
着膜12の構造を,図1のモデル図,図2〜図4の図面
代用写真に示す。図2〜図4は,いずれもFE−SEM
像であって,モデル図(図1)の正面から倍率1500
0倍で見た(紙面の上方から見た)断面が図2,矢印B
方向から倍率20000倍でみた断面が図3,矢印C方
向から倍率20000倍で見た表面が図4に示してあ
る。
における蒸着膜12は,柱状組織を集合させてなる傾斜
柱状構造を有している。また,各柱状組織の間には間隙
が残されていることも分かる。また,X線回折により調
査した結果,蒸着膜12はアモルファス相(非晶質相)
であった。
は,試料E1により得られた半導体電極E1に対して熱
処理を加えて,蒸着膜12をアモルファス相からアナタ
ーゼ相へと相転移させた例である。上記熱処理は,大気
雰囲気下において,試料E1を10℃/minの昇温速
度で温度400℃まで昇温し,さらに30分間保持する
ことにより行った。これにより得られた試料E2は,X
線回折により調査した結果,蒸着膜12がアナターゼ相
に変化していた。また,FE−SEM像においては,熱
処理前の試料E1と同じ柱状構造を有していることを確
認した。
試料E2における基板10のセット位置を変更し,基板
10の法線方向Aと蒸着粒子13の入射方向が同じ(入
射角α=0)になるようにして,蒸着膜を形成した。即
ち,蒸着膜の形成に当たり,斜め蒸着法ではなく,通常
の蒸着法を行った。なお,このときの蒸着条件は,蒸着
速度:1.0nm/s,膜厚1.6μm,その他は試料
E1と同様の条件とした。また,蒸着膜の形成後には,
大気雰囲気下において,10℃/minの昇温速度で温
度450℃まで昇温し,さらに30分間保持するという
熱処理を加えた。得られた半導体電極(試料C1)は,
X線回折により調査した結果,蒸着膜12が熱処理前の
アモルファス相からアナターゼ相に変化していた。
体電極(E1,E2,C1)を用いて,図6に示すごと
く,色素増感型の太陽電池3を構成した。まず,各半導
体電極(E1,E2,C1)の蒸着膜12の表面に,色
素を配置した。
水した無水エタノールに,ルテニウム錯体(cis-Di(thi
ocyanato)-N,N'-bis(2,2'-bipyridyl-4,4'dicarboxylic
acid)-ruthenium(II))を2.85×10-4mol/l
の濃度で溶解させた溶液を調製した。次いで,この溶液
に,各半導体電極E1,E2,C1を24時間浸漬し
た。これにより,蒸着膜12の表面には,色素としての
ルテニウム錯体が吸着され,太陽電池用の半導体電極が
得られた。この半導体電極は,開放電圧向上の目的で,
tertブチルピリジンのアセトニトリル溶液(濃度
5.0×10-2mol/リットル)に15分間浸漬した
後,窒素気流中で乾燥させた。
方にして半導体電極2を配置すると共に,これに別途準
備した白金を3nm蒸着したフッ素ドープSnO2コー
トガラスよりなる対向電極6(15mm×25mm)と
を対向させる。また,これらの間には,スペーサ81を
介在させて間隙を形成する。そして,この間隙に電解液
4をしみこませることにより,色素増感型の太陽電池3
を得た。なお電解液4は,炭酸エチレン21.14gと
アセトニトリル4.0mlの混合溶液にヨウ化テトラ−
n−プロピルアンモニウム(Tetra-n-propylammonium Io
dide)3.13gとヨウ素0.18gを溶解したもので
ある。
により構成した色素増感型の太陽電池3の特性を比較し
た。具体的には,各色素増感型太陽電池3に対して,ソ
ーラーシュミレータ(ワコム電創製WXS−85)を用
いて,1000W/m2の疑似太陽光を照射し,I−V
テスター(ワコム電創製,IV−9802型)により電
流−電圧特性を測定し,開放電圧と短絡電流,およびエ
ネルギー変換効率を求めた。
ごとく,斜め蒸着法を用いて蒸着膜12を形成した試料
E1,E2は,上記熱処理の有無にかかわらず,いずれ
も試料C1の通常の蒸着法により成膜した場合よりも優
れたエネルギー変換効率が得られた。また,試料E1と
E2とを比較することにより,少なくとも温度400
℃,保持時間30分という熱処理を加えて蒸着膜12を
アナターゼ相とすることにより,アモルファス相のまま
の場合よりも大幅にエネルギー変換効率が向上すること
が分かる。
果をさらに詳細に調査した。即ち,実施形態例1におけ
る試料E1を基礎として,これに各熱処理温度で熱処理
を30分間行った試料E31〜E34を準備し,そのエ
ネルギー変換効率を測定した。上記各熱処理温度は,E
31は200℃,E32は300℃,E33は400
℃,E34は450℃とした。昇温速度は10℃/mi
n,保持時間は30分,雰囲気は大気とした。なお,E
31〜E34については,tertブチルピリジンのア
セトニトリルの溶液に浸漬しなかった。
施形態例1の場合と同様にして太陽電池を組み立て,エ
ネルギー変換効率を求めた。その結果を図7に示す。同
図は,横軸に熱処理温度を,縦軸にエネルギー変換効率
(%)をとったものである。そして,試料E1を■印,
試料E31〜E34を●印,比較品である試料C1を△
により示した。
温度で熱処理した試料E33,E34は,300℃以下
の温度で熱処理した場合よりも優れたエネルギー変換効
率が得られることが分かる。これは,この熱処理条件下
では少なくとも400℃以上においてアモルファス相か
らアナターゼ相への相移行が十分に進み,結晶化するた
めであると考えられる。
ら,通常の蒸着法により成膜した場合には,熱処理を行
ってもエネルギー変換効率の向上がほとんど得られない
ことがわかる。したがって,斜め蒸着法がエネルギー変
換効率の向上に非常に有効であることが分かる。
率にどのように影響するかを調べた。まず,実施形態例
1における試料E1に対して,温度450℃×30分と
いう熱処理を加えて蒸着膜12をアナターゼ相とした試
料E5(試料E34をtertブチルピリジンのアセト
ニトリル溶液に15分間浸漬したもの)と,この試料E
5の膜厚を成膜時間を変えることにより変更した試料E
4とを準備した。即ち,試料E4の膜厚は1.4μm,
試料E5の膜厚は2,6μmとした。これらの試料E
4,E5は,その他の条件は同じとした。
態例1の場合と同様にして太陽電池に組み立て,エネル
ギー変換効率を求めた。その結果を表1に示す。表1よ
り知られるごとく,蒸着膜12の膜厚が増加するほど,
短絡電流の増大およびエネルギー変換効率の向上が得ら
れることが分かる。これは,蒸着膜の膜厚の増加により
その表面積が増加し,これにより蒸着膜に吸着される色
素量が増大するためであると考えられる。
換効率にどのように影響するかを調べた。まず,実施形
態例3における試料E4と,蒸着条件の蒸着速度だけを
変えた試料E6を準備した。具体的には,試料E4は蒸
着速度が1.5nm/sであったのに対し,試料E6の
蒸着速度は0.3nm/sに変化させた。試料E6のそ
の他の条件は試料E4と同じにした。したがって,試料
E4とE6は,例えば膜厚はいずれも1.4μmで同じ
である。
場合と同様にして太陽電池に組み立て,エネルギー変換
効率を求めた。その結果を表1に示す。表1より知られ
るごとく,試料E4とE6とを比較することにより,成
膜速度が遅いほど,短絡電流が増大し,エネルギー変換
効率が向上することが分かる。これは,蒸着膜の組織が
成膜速度によって変化し,結果として成膜速度が遅い場
合は色素の吸着量の増大,色素から半導体への電子注入
効率の向上,ないしは膜内での電子の移動の促進等につ
ながったためである考えられる。
や新規TiO2表面層形成等のための表面処理を行うこ
とが,エネルギー変換効率にどのように影響するかを調
べた。まず,実施形態例3における試料E5と,表面処
理の有無だけが異なる試料E7を準備した。具体的に
は,試料E5は蒸着後,何ら表面処理を行わずに熱処
理,色素吸着を行ったのに対し,試料E7は,蒸着後に
TiCl4による表面処理を行った。
後に,0.2モル/リットルのTiCl4水溶液を蒸着
膜の表面に滴下して一晩放置する。次いで,蒸着膜を水
洗し,乾燥する。試料E7のその他の条件は,試料E5
と同じである。
場合と同様にして太陽電池に組み込み,エネルギー変換
効率を求めた。その結果を表1に示す。表1より知られ
るごとく,試料E5とE7とを比較することにより,成
膜後にTiCl4による表面処理を行うことにより,短
絡電流が増大し,エネルギー変換効率が向上することが
分かる。これは,上記のように膜表面での不純物の除去
や,新たなTiO2表面層の形成,ないしは膜を構成す
る粒子間の結合性向上等の理由によると考えられる。
5において得られた試料E4からE6についてもプロッ
トした。同図より知られるごとく,斜め蒸着法における
蒸着速度を遅くし,かつ,450℃×30分の熱処理を
加えた場合(試料E6)が,最もエネルギー変換効率の
向上に有効であることが分かる。
同じ蒸着条件で成膜した。すなわち蒸着速度は0.3n
m/sで膜厚1.5μmとした。次いで,これを450
℃で30分間の大気中での熱処理後,実施形態例1と同
様に色素のエタノール溶液に24時間浸漬し蒸着膜の表
面に色素としてのルテニウム錯体を吸着させ,さらにte
rtブチルピリジンのアセトニトリル溶液に15分間浸漬
した後,窒素気流中で乾燥させた。ただし,この工程の
うち,本実施形態例では熱処理後の蒸着膜の表面に大気
中の水が吸着を低減させるために,電気炉から取り出し
た蒸着膜の温度が80℃以上の時に色素のエタノール溶
液に浸漬させた。
と同様に太陽電池を作製し,特性を評価した。ただし,
本実施形態例では,溶媒をグルタロニトリルとし,電解
質種類および濃度は実施形態例1〜5と同じ電解液を用
いた。その結果,開放電圧は0.726V,短絡電流は
5.445mA,変換効率は1.508%であった。こ
のように,本例では,太陽電池製造工程および電解液に
改良を加えることによって変換効率を向上させることが
できた。
延ばすことにより厚い膜を成膜した。すなわち蒸着速度
は0.3nm/sで膜厚4.8μmとした。これを45
0℃で30分間の大気中での熱処理後,実施形態例6と
同様にして半導体電極を作製した。この半導体電極を用
いて実施形態例6と同様に太陽電池を作製し,特性を評
価した。その結果,開放電圧は0.710V,短絡電流
は12.424mA,変換効率は3.827%であっ
た。このように,本例では,蒸着膜の膜厚を厚くするこ
とで色素吸着量が増加し,短絡電流が増加することによ
り,太陽電池の変換効率を向上することができた。
なわち蒸着速度は0.3nm/sで膜厚1.5μmとし
た。この蒸着膜上に粒径13nmのTiO2微粒子スラ
リー(Solaronix社製)を塗布,乾燥後,これを450
℃で30分間の大気中での熱処理後,実施形態例6と同
様にして半導体電極を作製した。TiO 2微粒子層の厚
さは2.5μmであった。
様に太陽電池を作製し,特性を評価した。その結果,開
放電圧は0.646V,短絡電流は8.448mA,変
換効率は1.956%であった。このように,本例で
は,柱状膜に加えTiO2微粒子層を電極内に含むこと
でさらに色素吸着量が増加し,短絡電流が増加すること
により,太陽電池の変換効率を向上することができた。
膜の上に半導体微粒子層を積層した構造の電極を示した
が,この逆の半導体微粒子層の上に半導体柱状構造膜を
積層した構造の電極,ないしはこれらを繰り返し積層し
た構造でも色素増感型太陽電池の電極として動作し,同
様の効果が期待される。
の比表面積を低下させることなく,容易に製造すること
ができ,かつ,エネルギー変換効率に優れた,半導体電
極およびその製造方法を提供することができる。
を示すモデル図。
構造を示す図面代用写真(倍率15000倍)。
図面代用写真(倍率20000倍)。
図面代用写真(倍率20000倍)。
説明図。
説明図。
ー変換効率との関係を示す説明図。
図。
Claims (4)
- 【請求項1】 基板と,該基板の表面に形成された膜と
よりなり, 上記膜は,柱状構造を有し,少なくともTiO 2 ,Zn
O,SnO 2 のいずれか1種以上を含有する半導体から
構成されると共に, 上記膜は,表面に少なくとも色素を含有してなることを
特徴とする色素増感型太陽電池用半導体電極。 - 【請求項2】 請求項1において,上記柱状構造を有す
る半導体は,その表面に,半導体微粒子または該半導体
微粒子からなる表面層を有してなることを特徴とする色
素増感型太陽電池用半導体電極。 - 【請求項3】 基板の表面に,該基板の法線方向から1
0度以上傾斜した方向から蒸着粒子を入射させ,これを
蒸着させる斜め蒸着法を行うことにより,上記基板の表
面に柱状構造を有し,少なくともTiO 2 ,ZnO,S
nO 2 のいずれか1種以上を含有する半導体から構成さ
れる蒸着膜を形成し, 該蒸着膜を形成した後,該蒸着膜の表面に,少なくとも
色素を付着させることを特徴とする色素増感型太陽電池
用半導体電極の製造方法。 - 【請求項4】 請求項3において,上記蒸着膜の表面に
少なくとも色素を付着させる際には,上記蒸着膜の温度
を80℃以上とすることを特徴とする色素増感型太陽電
池用半導体電極の製造方法。
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