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JP3586085B2 - 画像形成装置及びテレビジョン放送用表示装置 - Google Patents

画像形成装置及びテレビジョン放送用表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の電子放出素子を有する電子源を用いた画像形成装置及びテレビジョン放送用表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、薄型の大画面表示装置の研究開発が盛んに行われている。本願発明者らは薄型大画面表示装置として、冷陰極を電子源に用いた研究を行っている。
【0003】
従来から、電子放出素子として熱陰極素子と冷陰極素子の2種類が知られている。このうち冷陰極素子では、例えば表面伝導型放出素子や、電界放出型素子(以下FE型と記す)や、金属/絶縁層/金属型放出素子(以下MIM型と記す)などが知られている。
【0004】
FE型の例としては、例えば、W. P. Dyke & W. W. Dolan,“Field emission”, Advance in Electron Physics, 8, 89 (1956)や、或は、C. A. Spindt,“Physical properties of thin−film field emission cathodes with molybdenium cones”, J. Appl. Phys., 47, 5248 (1976)などが知られている。
【0005】
また、MIM型の例としては、例えば、C. A. Mead,“Operation of tunnel−emission Devices, J. Appl. Phys., 32,646 (1961)などが知られている。
【0006】
表面伝導型放出素子としては、例えば、M. I. Elinson, Radio E−ng. Electron Phys., 10, 1290, (1965)や、後述する他の例が知られている。
【0007】
表面伝導型放出素子は、基板上に形成された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことにより電子放出が生ずる現象を利用するものである。この表面伝導型放出素子としては、前記エリンソン(Elinson)等によるSnO2薄膜を用いたものの他に、Au薄膜によるもの[G. Dittmer:“Thin Solid Films”, 9,317 (1972)]や、In2O3/SnO2薄膜によるもの[M. Hartwell and C. G. Fonstad:”IEEE Trans. ED Conf.”,519 (1975)]や、カーボン薄膜によるもの[荒木久 他:真空、第26巻、第1号、22(1983)]等が報告されている。
【0008】
これらの表面伝導型放出素子の素子構成の典型的な例として、図44に前述のM. Hartwellらによる素子の平面図を示す。同図において、3001は基板で、3004はスパッタで形成された金属酸化物よりなる導電性薄膜である。導電性薄膜3004は図示のようにH字形の平面形状に形成されている。この導電性薄膜3004に、後述の通電フォーミングと呼ばれる通電処理を施すことにより、電子放出部3005が形成される。図中の間隔Lは、0.5〜1[mm],幅Wは、0.1[mm]に設定されている。尚、図示の便宜から、電子放出部3005は導電性薄膜3004の中央に矩形の形状で示したが、これは模式的なものであり、実際の電子放出部の位置や形状を忠実に表現しているわけではない。
【0009】
M. Hartwellらによる素子をはじめとして上述の表面伝導型放出素子においては、電子放出を行う前に導電性薄膜3004に通電フォーミングと呼ばれる通電処理を施すことにより電子放出部3005を形成するのが一般的であった。即ち、通電フォーミングとは、通電により電子放出部を形成するものであり、例えば前記導電性薄膜3004の両端に一定の直流電圧、もしくは、例えば1V/分程度の非常にゆっくりとしたレートで昇圧する直流電圧を印加して通電し、導電性薄膜3004を局所的に破壊もしくは変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態の電子放出部3005を形成することである。尚、局所的に破壊もしくは変形もしくは変質した導電性薄膜3004の一部には亀裂が発生する。この通電フォーミング後に導電性薄膜3004に適宜の電圧を印加した場合には、前記亀裂付近において電子放出が行われる。
【0010】
上述の表面伝導型放出素子は、構造が単純で製造も容易であることから、大面積にわたり多数の素子を形成できる利点がある。そこで、例えば本出願人による特開昭64−31332において開示されるように、多数の素子を配列して駆動するための方法が研究されている。
【0011】
これら表面伝導型放出素子の応用については、例えば、画像表示装置、画像記録装置などの画像形成装置や、荷電ビーム源、等が研究されている。特に、画像表示装置への応用としては、たとえば本出願人によるUSP5,066,883や特開平2−257551号公報において開示されているように、表面伝導型放出素子と電子ビームの照射により発光する蛍光体とを組み合わせて用いた画像表示装置が研究されている。これら表面伝導型放出素子と蛍光体とを組み合わせて用いた画像表示装置は、従来の他の方式の画像表示装置よりも優れた特性が期待されている。たとえば、近年普及してきた液晶表示装置と比較しても、自発光型であるためバックライトを必要としない点や、視野角が広い点が優れていると言える。
【0012】
発明者らは、上記従来技術に記載したものをはじめとして、さまざまな材料、製法、構造の冷陰極素子を試みてきた。さらに、多数の表面伝導型放出素子を配列したマルチ電子源、ならびにこのマルチ電子源を応用した画像表示装置について研究を行ってきた。
【0013】
本願発明者らは、例えば図45に示す電気的な配線方法によるマルチ電子源を試みてきた。即ち、表面伝導型放出素子を2次元的に多数個配列し、これらの素子を図示のようにマトリクス状に配線したマルチ電子源である。
【0014】
図中、4001は表面伝導型放出素子を模式的に示し、4002は行方向配線、4003は列方向配線を示している。行方向配線4002及び列方向配線4003は、実際には有限の電気抵抗を有するものであるが、図においては配線抵抗4004および4005として示されている。上述のような配線方法を単純マトリクス配線と呼ぶ。なお、図示の便宜上、6×6のマトリクスで示しているが、マトリクスの規模はむろんこれに限ったわけではなく、例えば画像表示装置用のマルチ電子源の場合には、所望の画像表示を行うのに足りるだけの素子を配列し配線するものである。
【0015】
このように表面伝導型放出素子を単純マトリクス配線したマルチ電子源においては、所望の電子を出力させるため、行方向配線4002および列方向配線4003に適宜の電気信号を印加する。例えば、マトリクスの中の任意の1行の表面伝導型放出素子を駆動するには、選択する行の行方向配線4002には選択電圧Vsを印加し、同時に非選択の行の行方向配線4002には非選択電圧Vnsを印加する。これと同期して列方向配線4003に電子を出力するための駆動電圧Veを印加する。この方法によれば、配線抵抗4004および4005による電圧降下を無視すれば、選択する行の表面伝導型放出素子には電圧(Ve−Vs)が印加され、また非選択行の表面伝導型放出素子には電圧(Ve−Vns)が印加される。これら電圧Ve,Vs,Vnsを適宜の大きさの値にすれば、選択された行の表面伝導型放出素子だけから所望の強度の電子が出力されるはずであり、また列方向配線の各々に異なる駆動電圧Veを印加すれば、選択する行の素子の各々から異なる強度の電子が出力されるはずである。また、駆動電圧Veを印加する時間の長さを変えれば、電子が出力される時間の長さも変えることができるはずである。ここで、選択時の素子印加電圧(Ve−Vs)を以下Vfと呼ぶ。さらに単純マトリクス配線したマルチ電子源から電子を得る別の手法として、列方向配線に駆動電圧Veを印加するための電圧源を接続するのではなく、所望の電子を出力するのに必要な電流を供給するための電流源を接続して駆動する方法もある。ここで、電子源に流れる電流を以下素子電流Ifと呼び、放出される電子量を放出電流Ieと呼ぶ。
【0016】
したがって、表面伝導型放出素子を単純マトリクス配線したマルチ電子源はいろいろな応用可能性があり、例えば画像情報に応じた電気信号を適宜印加すれば、画像表示装置用の電子源として好適に用いることができる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような表面伝導型放出素子を単純マトリクス配線したマルチ電子源には、実際には以下に述べるような問題が発生していた。それは行方向および列方向の配線抵抗を介して表面伝導型電子放出素子に電流が流れ込む結果生じる、配線抵抗による電圧降下のために、各素子に印加される電圧がそれぞれ異なるという現象である。その結果、複数の表面伝導型放出素子にかかる実効電圧に非一様な分布が生じ、輝度にも非一様な分布が生じる。
【0018】
図45及び図46は、この原因をより詳しく説明するための図である。図45はマトリクス状に配列された表面伝導型電子放出素子のm×nの単純マトリクス回路と、特にその配線抵抗を示す図であり、図46は列方向の各放出素子電極に印加される電圧を示す図である。
【0019】
図45のm×nの単純マトリクス回路では、行方向、列方向ともに一方向から電圧を印加している。また、行方向配線、列方向配線は、素子単位でそれぞれrx,ryの抵抗成分を有するものとする。表面伝導型電子放出素子は、行方向、列方向に対して等間隔に配置されているため、配線の幅や膜厚が製造上ばらつかない限り、素子単位で、行方向、列方向でそれぞれほぼ等しい配線抵抗値を持つ。また、表面伝導型電子放出素子も、全てほぼ等しい抵抗値を有する。
【0020】
この図45の回路構成から明らかなように、電圧印加端に近い素子ほど大きな電圧が印加され、電圧印加端から遠い素子ほど印加電圧が小さくなる。そのため、駆動印加電圧に非一様な分布を生じる。従って、表面伝導型電子放出素子から出力される電子放出量に対しても、非一様な分布が生じる。
【0021】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、電圧降下、特に配線抵抗による電圧降下によって生じる放出電子量の変動を防止することを目的とする。
【0022】
また本発明の目的は、各素子において印加電圧が非一様になることによる電子放出分布を補正することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、
共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子を有する電子源と、前記共通配線に電圧を供給することにより前記電子源から放出された電子が照射されて発光する発光体と、前記電子源と前記発光体との間に設けられ、前記複数の表面伝導型電子放出素子の各々から前記発光体の方向に放出される電子を通過させるための複数の開口部を有する導電性の板と、前記導電性の板を支持する支持手段とを具備する画像形成装置であって、
前記支持手段は、前記共通配線へ電圧を供給する部分から前記共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子の各々までの距離が長くなるに従って、前記導電性の板と前記共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子の各々との間の距離が短くなるように前記導電性の板を支持することを特徴とする。
【0024】
上記目的を達成するために本発明の画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、
共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子を有する電子源と、前記共通配線に電圧を供給することにより前記電子源から放出された電子が照射されて発光する発光体と、前記電子源と前記発光体との間に設けられ、前記複数の表面伝導型電子放出素子の各々から前記発光体の方向に放出される電子を通過させるための複数の開口部を有する導電性の板と、前記導電性の板を支持する支持手段とを具備する画像形成装置であって、
前記支持手段は、前記共通配線へ電圧を供給する部分から前記共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子の各々までにおける配線抵抗による電圧降下量が大きくなるに従って、前記導電性の板と前記共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子の各々との間の距離が短くなるように前記導電性の板を支持することを特徴とする。
【0025】
また上記目的を達成するために本発明のテレビジョン放送用表示装置は以下のような構成を備える。即ち、
テレビジョン放送用表示装置であって、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置と、テレビ受信回路と、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明する前に本発明の実施の形態における基本概念を説明する。
【0034】
この実施の形態では、電子放出素子とフェースプレートとの間に導電性のシールド板を設けた。そして、このシールド板に電位を持たせることによって、表面伝導放出素子から出る電子の軌道を修正する。即ち、
密閉容器中に、複数の表面伝導型放出素子を配置した基板とその上部に設けられたフェースプレートを備える表示パネルにおいて、表面伝導型放出素子から放出された電子は表面伝導型放出素子とフェースプレートにあるメタルバックとの間に印加された電界(加速電圧)によってフェースプレート方向に加速され、このメタルバックを通過し、フェースプレートの内側に設けられた蛍光体に衝突して、これを発光させる。その様子を解析した結果を図10に示す。図10において、1001は基板、1005は表面伝導型放出素子の電子放出部を示し、ここから放出される電子の経路が放物線状に示されている。1019はシールド板で、ここでは200[V]の電位に設定されている。2119はこのシールド板1019による等電位線を示している。また1121はシールド板1109に設けられた開口部で、この開口部1121を通過した電子がフェースプレート方向に加速されて蛍光体に衝突する。ここで、この図10から、蛍光体に当たる電子量の比ηは、次式で計算することができる。
【0035】
η∝(D/2)×SQRT{1+(2hVf/πVaD)の2乗} …(1)ここでhは基板とフェースプレート間の距離、Dは電子放出部の亀裂の幅、SQRT{}は、{}の平方根を示している。
【0036】
この式(1)よりシールド板と表面伝導型放出素子の距離を変えた時の蛍光体への電子の到達量の比は図11に示すようになる。即ち、この図11においては、シールド板が基準位にあるときの電子到達率を“1”とすると、それから+方向、即ち、基板に近づくにつれて電子到達率が上昇している。このことから明らかなように、シールド板と表面伝導型放出素子との距離を変えることにより蛍光体に到達する電子量を変化させることが可能である。即ち、シールド板を基板(表面伝導型放出素子)に近づけることにより蛍光体への電子到達率が上昇し、逆に遠ざけると電子到達率が低下する。よって、シールド板の電位と電子放出素子との距離を変更することによって、配線抵抗等による電圧降下に起因する画像表示の輝度のばらつき(到達電子量の変動)を補正することができる。
【0037】
更に図12は、シールド板の素子基板からの高さと、電子放出素子から放出された電子がシールド板に設けられた開口部を通過する電子透過率との関係を示す図である。この図からも明らかなように、素子からの距離(高さ)が大きくなるにつれて電子透過率も減少していることがわかる。
【0038】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0039】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態の表示パネル101の外観斜視図であり、その内部構造を示すために表示パネル101の一部を切り欠いて示している。
【0040】
図中、82はリアプレート、83は側壁、87はフェースプレートであり、82〜90により表示パネル101の内部を真空に維持するための気密容器を形成している。この気密容器を組み立てるにあたっては、各部材の接合部に十分な強度と気密性を保持させるため封着する必要があるが、例えばフリットガラスを接合部に塗布し、大気中あるいは窒素雰囲気中で、400℃〜500℃で10分以上焼成することにより封着を達成した。気密容器内部を真空に排気する方法については後述する。
【0041】
リアプレート82には、基板71が固定されているが、この基板71上には表面伝導型放出素子74がN×M個形成されている(ここでN,Mは2以上の正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適宜設定される。これらN×M個の表面伝導型放出素子74は、素子電極75を介してM本の行方向配線72とN本の列方向配線73により単純マトリクス配線されている。前記71〜75によって構成される部分をマルチ電子源と呼ぶ。なお、マルチ電子源の製造方法や構造については、後で詳しく述べる。
【0042】
本実施の形態においては、気密容器のリアプレート82にマルチ電子源の基板71を固定する構成としたが、マルチ電子源の基板71が十分な強度を有するものである場合には、気密容器のリアプレートとしてマルチ電子源の基板71自体を用いてもよい。
【0043】
また、フェースプレート87の下面には、蛍光膜88が形成されている。本実施の形態の表示パネル101はカラー表示用であるため、蛍光膜88の部分にはCRTの分野で用いられる赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の蛍光体が塗り分けられている。各色の蛍光体は、ストライプ状に塗り分けられ、各色の蛍光体のストライプの間には黒色の導電体が設けてある。この黒色の導電体を設ける目的は、電子の照射位置に多少のずれがあっても表示色にずれが生じないようにするためや、外光の反射を防止して表示コントラストの低下を防ぐため、更には電子による蛍光膜のチャージアップを防止するためなどである。黒色の導電体には、黒鉛を主成分として用いたが、上記の目的に適するものであればこれ以外の材料を用いても良い。また、3原色の蛍光体の塗り分け方はデルタ状配列や、それ以外の配列であってもよい。なお、モノクロームの表示パネルを作成する場合には、単色の蛍光体材料を蛍光膜88に用いればよく、また黒色導電材料は必ずしも用いなくともよい。
【0044】
また、蛍光膜88のリアプレート側の面には、CRTの分野では公知のメタルバック89を設けてある。このメタルバック89を設けた目的は、蛍光膜88が発する光の一部を鏡面反射して光利用率を向上させるため、負イオンの衝突から蛍光膜88を保護するため、電子加速電圧を印加するための電極として作用させるため、蛍光膜88を励起した電子の導電路として作用させるためなどである。このメタルバック89は、蛍光膜88をフェースプレート87上に形成した後、蛍光膜表面を平滑化処理し、その上にアルミニウムを真空蒸着する方法により形成した。なお、蛍光膜88に低電圧用の蛍光体材料を用いた場合には、メタルバック89は用いない。
【0045】
また、本実施の形態では用いなかったが、加速電圧の印加用や蛍光膜の導電性向上を目的として、フェースプレート87と蛍光膜88との間に、例えばITOを材料とする透明電極を設けてもよい。
【0046】
また、Dx1〜DxMおよびDy1〜DyN,Hv及びIvは、当該表示パネル101と不図示の電気回路とを電気的に接続するために設けた気密構造の電気接続用端子である。Dx1〜DxMはマルチ電子源の行方向配線72と、Dy1〜DyNはマルチ電子源の列方向配線73と、Hvはフェースプレートのメタルバック89と、そして端子Ivはシールド板1109と、それぞれ電気的に接続されている。シールド板1109にはこの端子Ivを介して電位Vsが印加される。このシールド板1109は、図2及び図3を参照して後述するように、マルチ電子源の上方で前述の蛍光膜88との間に設けられ、各電子放出素子から放出される電子を通過させるための開口部1121を有している。これら開口部1121の位置は、各電子放出部から放出された電子を透過させて蛍光膜88に衝突させることができる位置である。
【0047】
この図1の電子源の概略的な部分斜視図を図2に示す。また、図2のC−C’断面図及びD−D’断面図のそれぞれを図3(a),(b)に示す。但し、図1〜図3において、同じ符号で示したものは同等部材を示している。
【0048】
図中、73は行方向配線72と層間絶縁層(不図示)を介して印刷法などにより形成した膜厚50ミクロンの列方向配線である。電子放出素子74は、図32を用いて後述するように、併設された素子電極1102,1103間に、電子放出部1105を含む導電性膜1104を有する表面伝導型放出素子であり、この電子放出素子74の多数個が図1及び図2に示すように、行方向配線72及び列方向配線73と電気的に接続されている。
【0049】
また、1109は導電性を有する薄板(アルミニウム等)からなるシールド板で、各電子放出素子74の直上部を覆い、且つ各電子放出素子の電子放出部から放出される電子の軌道を遮らないように電子通過孔1121をシールド電極1109上に形成した。
【0050】
図3(a)は図2のC−C’断面図で、この図よりシールド板1109に設けられた開口部1121の行方向の位置がほぼ電子放出部の真上に位置していることがわかる。また図3(b)は図2のD−D’断面図で、この図よりシールド板1109に設けられた開口部1121の列方向の位置が、電子放出部の真上よりも右側の行方向配線側にずれて位置していることが分かる(右側の素子電極が正極であるため)。
【0051】
図4は、本実施の形態のシールド板1109の取付け構造を説明するための表示パネル101の一部断面図で、前述の図面と共通する部分は同じ番号で示し、その説明を省略する。但し、図1の表示パネル101では行方向配線72の一方だけから通電が行われていたのに対し、以下に説明する図4〜図6では、行方向配線72の両側から電圧が印加される場合で説明する。
【0052】
図4において、11は外枠83に設けられた切り欠き、13はこの切り欠き11に塗布された導電性接着剤で、電極12とシールド板1109とを電気的に接続している。根電極12は前述の端子Ivに接続されている。10はシールド板押えガイドで、フェースプレート87とシールド板1109との間の間隔を確保するとともに、シールド板1109の曲げ方向を決めるように作用している。14は行方向配線と列方向配線とを電気的に絶縁するための絶縁層である。
【0053】
この図4の構造は、表面伝導型放出素子74に接続された行方向配線72の両側から電圧が印加される場合に対応するものである。行方向配線の両側から電圧を印加して通電したとき、前述のように配線等の電圧降下により、その行のほぼ中央部の素子において、端部に位置している素子よりも低い電圧が印加されることになり、これにより略中央部の素子からの電子放出量が少なくなる。
【0054】
このような構成において、シールド板1109の幅(長さ)を、切りかき11を含めた寸法と、そのたわみ量(表面伝導型放出素子74に近づく距離を考慮した)を求めて大きくとる。そうすることによって、シールド板1109を切り欠き11にはめ込んだだけで、電子放出素子74と所望の距離の変化を持ったシールド板1109を構成することができる。また、このような構成にすることによって、シールド板1109が所定のテンションをもって図示のように保持されるので、所望の強度が得られる上、共振を防ぐという点で優れている。
【0055】
このように、配線抵抗により印加される電位が低下する行配線或いは列方向配線のほぼ中央の電子放出素子74付近で、シールド板1109と素子との間隔を短くし、そのシールド板1109の電位により、それらほぼ中央の電子放出素子からの電子放出量を多くすることにより、印加電圧の低下により電子放出量が低下する電子放出素子からの電子放出量を補正して電子分布を一様にできる。
【0056】
このような構成により、組立工程が簡便でかつ電子放出分布を補正することができるようになった。
【0057】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2の表示パネルの一部断面図で、前述の図面と共通する部分は同じ番号で示し、その説明を省略する。
【0058】
この実施の形態2において、表面伝導型放出素子74に接続された行方向配線72を介して、その行方向配線72の両側から駆動する例が示されている。この場合も、両側から電圧を印加して駆動したとき、前述のように配線等の電圧降下により、ほぼ中央部の素子に印加される電圧が端部の素子に印加される電位よりも低くなり、これら略中央部の素子からの電子放出量が低下する。
【0059】
この実施の形態2では、シールド板1109は、そのシールド板1109を保持するためのシールド板支え治具15を有している。この構成の場合、シールド板1109はたわみ量(表面伝導型放出素子74に近づく距離を考慮した)が計算された構造にする。そうすることによって、シールド板1109とシールド板支え治具15とを含んだ構成だけで、電子放出素子74(特に略中央部の電子放出素子)と所望の距離の変化を持ったシールド板1109を構成することができる。なお、16はシールド板1109に接続された配線を示し、この配線16を介してシールド板1109の電位を所定の電位に保つことができる。
【0060】
このような構成により、前述の実施の形態1と同様の効果が得られた。
【0061】
[実施の形態3]
図6は、本実施の形態3の表示パネルの一部断面図で、前述の図面と共通する部分は同じ番号で示し、その説明を省略する。
【0062】
この実施の形態3では、表面伝導型放出素子に接続された行方向配線72の両側から電圧を印加して通電駆動しており、このように行方向配線の両側から駆動したとき、前述のように配線抵抗等により電圧降下が生じ、ほぼ中央部の素子からの電子放出量が端部に位置している素子からの電子放出量よりも少なくなっている。
【0063】
この実施の形態3では、シールド板1109を保持するためのシールド板支え治具17が設けられている。この構成の場合、シールド板1109はたわみ量(表面伝導型放出素子に近づく距離を考慮した)が計算された構造にする。そうすることによって、シールド板1109とシールド板支え治具17を含んだ構成だけで、素子とシールド板1109との間の間隔を所望の距離にできるシールド板1109の構成にすることができる。また、シールド板支え治具17がフェースプレート87の支えにもなっており、画像形成装置の強度確保にもなっている。なお、シールド板1109の電位は配線18を介して印加される電位による。この構成により、上述の実施の形態と同様に、電子放出分布を一様にすることができるようになった。
【0064】
[実施の形態4]
図7は、本実施の形態4の表示パネルの一部断面図で、前述の図面と共通する部分は同じ番号で示し、その説明を省略する。
【0065】
図7において、19a,19bのそれぞれは外枠83に設けられた切り欠きを示し、切り欠き19aの位置が切り欠き19bの位置よりも高く設定されている。この実施の形態4では、切り欠き19bには導電性の接着剤13が設けられており、この接着剤13により電極19とシールド板1109とが電気的に接続されている。尚、この電極19は外部端子Ivと電気的に接続されている。
【0066】
この実施の形態4は、表面伝導型放出素子に接続された行方向配線の図の左側から電圧を印加する場合を示し、この場合は配線抵抗により右側の素子にかかる電位が低下するので、右側に位置している素子からの電子放出量が少なくなる。したがって、この実施の形態4では、その右側に位置している電子放出素子74とシールド板1109との間隔を短くし、その右側に位置している素子における電子透過量を多くしている。
【0067】
この構成の場合、外枠83の切り欠き19a,19bは、表面伝導型放出素子74に近づく距離を考慮に入れる必要がある。そうすることによって、これら切り欠き19a,19bにシールド板1109をはめ込むだけで、素子とシールド板1109との距離が所望の距離になるようにしたシールド板1109を構成することができる。この構成により、配線抵抗に起因する電子放出分布を補正することができるようになった。
【0068】
[実施の形態5]
図8は、本実施の形態5の表示パネルの一部断面図で、前述の図面と共通する部分は同じ番号で示し、その説明を省略する。
【0069】
この実施の形態5は、行方向配線に接続された表面伝導型放出素子の片側から電圧を印加して駆動する場合に対応している。このように片側(図8の例では左側)から電圧を印加して駆動したとき、前述のように配線抵抗等による電圧降下のために、電圧印加端より遠い位置にある素子に印加される電圧が低下し、それら素子からの電子放出量が少なくなる。
【0070】
ここではシールド板1109は、シールド板支え治具20により支持され、シールド板支え治具20は、配線抵抗等による電圧降下を補償するために、行配線の右側(電圧印加端より遠い位置)の表面伝導型放出素子74との距離を短くしたシールド板1109の構成とすることができる。なお、配線21は、シールド板1109に電位を印加するためのものである。
【0071】
この構成により電子放出分布を補正することができるようになった。
【0072】
[実施の形態6]
図9は、本実施の形態6の表示パネルの一部断面図で、前述の図面と共通する部分は同じ番号で示し、その説明を省略する。
【0073】
この実施の形態6においても、行方向配線尾左端部より電圧が印加され、右端の電子放出素子からの電子放出量が減少している。そこで、前述の実施の形態5と同様に、右側で表面伝導型放出素子74とシールド板1109との距離が短くなるように配設されている。このシールド板1109を支持するためのシールド板支え治具22は、上述の構成とするような支え構造にされるととともに、フェースプレート87の支えにもなっている。これにより表示パネルの強度確保にもなっている。配線23は、このシールド板1109の電位を決定するための配線である。このような構成により、行方向に発生する電子放出分布を補正することができるようになった。
【0074】
以上説明したように上述した実施の形態によれば、表面伝導型放出素子を単純マトリクスで接続して駆動するにあたって、配線抵抗等による電圧降下によって生じる各表面伝導型放出素子に印加される電圧分布が非一様になることによる電子放出分布を補正し、高品位の画像表示を行うことができる。
【0075】
[実施の形態7]
前述の図45に示すようなマトリクス配線において、ある行に着目し、その行配線4002に接続された各電子放出素子の走査信号の入力端側の電位をプロットすると図13(a)のようになる。ここで電位の変化が一様でないのは、行方向配線を流れる電流が走査信号の供給端(左端部)に近いほど多いため、配線抵抗による電圧降下も大きくなるためである。ここで列方向配線の電位は等しいので、各電子放出素子にかかる電圧は同図(b)に示すようになる。その結果、各電子放出素子から放出される電子による電流は、走査信号の供給端側で最も大きく、供給端より遠い側で小さくなる。
【0076】
またある列に着目し、各電子放出素子の変調信号の電位をプロットすると図14(a)のようになる。これは列方向配線の長さに起因する。したがって、各電子放出素子にかかる電圧は同図(b)のようになり、各電子放出素子から放出される電子による電流は変調信号の供給端(図45の上側)で最も大きく、遠い側で小さくなる。このような放出電流のばらつきは、画像形成装置に応用した場合には輝度のばらつきとなって表れるので、極めて不都合である。
【0077】
そこで本実施の形態7では、電子放出素子とフェースプレート間にシールド電極を設け、各電子放出素子に印加される電圧に応じて、そのシールド電極の開口部の開口面積を設定することにより、どの電子放出素子からも略等しい電子がターゲットに照射されるようにしている。より詳しくは、走査信号の供給端子及び変調信号の供給端子に近い電子放出素子に対応する通過孔の開口面積を小さく、供給端子よりも遠い位置にある電子放出素子に対応する開口部の開口面積を大きくしている。
【0078】
図15は、本実施の形態の表示パネル1000の外観斜視図であり、その内部構造を示すために表示パネル1000の1部を切り欠いて示している。
【0079】
図中、1005はリアプレート、1006は側壁、1007はフェースプレートであり、1005〜1007により表示パネルの内部を真空に維持するための気密容器を形成している。気密容器を組み立てるにあたっては、各部材の接合部に十分な強度と気密性を保持させるため封着する必要があるが、例えばフリットガラスを接合部に塗布し、大気中あるいは窒素雰囲気中で、400℃〜500℃で10分以上焼成することにより封着を達成した。気密容器内部を真空に排気する方法については後述する。
【0080】
リアプレート1005には、基板1001が固定されているが、この基板1001上には表面伝導型放出素子1002がN×M個形成されている(ここでN,Mは2以上の正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適宜設定される。例えば、高品位テレビジョンの表示を目的とした表示装置においては、N=3000,M=1000以上の数を設定することが望ましい。本実施の形態においては、N=3072,M=1024とした)。前記N×M個の表面伝導型放出素子1002は、M本の行方向配線1003とN本の列方向配線1004により単純マトリクス配線されている。前記1001〜1004によって構成される部分をマルチ電子源と呼ぶ。なお、マルチ電子源の製造方法や構造については、後で詳しく述べる。
【0081】
本実施の形態においては、気密容器のリアプレート1005にマルチ電子源の基板1001を固定する構成としたが、マルチ電子源の基板1001が十分な強度を有するものである場合には、気密容器のリアプレートとしてマルチ電子源の基板1001自体を用いてもよい。
【0082】
また列方向配線1004上に絶縁層(不図示)を介して、導電性を有する薄板(アルミニウム等)からなるシールド電極1020が設置されている。このシールド電極1020には、各電子放出素子に印加される電圧に応じた開口面積を有する電子通過孔1021が設けられている。尚、このシールド電極1020の電位は、端子Svから供給される電圧により決定される。
【0083】
また、フェースプレート1007の下面には、蛍光膜1008が形成されている。本実施の形態の表示パネル1000はカラー表示用であるため、蛍光膜1008の部分にはCRTの分野で用いられる赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の蛍光体が塗り分けられている。各色の蛍光体は、たとえば図16(A)に示すようにストライプ状に塗り分けられ、各色の蛍光体のストライプの間には黒色の導電体1010が設けてある。この黒色の導電体1010を設ける目的は、電子の照射位置に多少のずれがあっても表示色にずれが生じないようにするためや、外光の反射を防止して表示コントラストの低下を防ぐため、更には電子による蛍光膜のチャージアップを防止するためなどである。黒色の導電体1010には、黒鉛を主成分として用いたが、上記の目的に適するものであればこれ以外の材料を用いても良い。
【0084】
また、3原色の蛍光体の塗り分け方は図16(A)に示したストライプ状の配列に限られるものではなく、たとえば図16(B)に示すようなデルタ状配列や、それ以外の配列であってもよい。なお、モノクロームの表示パネルを作成する場合には、単色の蛍光体材料を蛍光膜1008に用いればよく、また黒色導電材料は必ずしも用いなくともよい。
【0085】
また、蛍光膜1008のリアプレート側の面には、CRTの分野では公知のメタルバック1009を設けてある。このメタルバック1009を設けた目的は、蛍光膜1008が発する光の一部を鏡面反射して光利用率を向上させるため、負イオンの衝突から蛍光膜1008を保護するため、電子加速電圧を印加するための電極として作用させるため、蛍光膜1008を励起した電子の導電路として作用させるためなどである。このメタルバック1009は、蛍光膜1008をフェースプレート基板1007上に形成した後、蛍光膜表面を平滑化処理し、その上にアルミニウムを真空蒸着する方法により形成した。なお、蛍光膜1008に低電圧用の蛍光体材料を用いた場合には、メタルバック1009は用いない。
【0086】
また、本実施の形態では用いなかったが、加速電圧の印加用や蛍光膜の導電性向上を目的として、フェースプレート基板1007と蛍光膜1008との間に、例えばITOを材料とする透明電極を設けてもよい。
【0087】
また、Dx1〜DxMおよびDy1〜DyN,SvおよびHvは、当該表示パネル1000と不図示の電気回路とを電気的に接続するために設けた気密構造の電気接続用端子である。Dx1〜DxMはマルチ電子源の行方向配線1003と、Dy1〜DyNはマルチ電子源の列方向配線1004と、Hvはフェースプレートのメタルバック1009とそれぞれ電気的に接続している。
【0088】
また、気密容器内部を真空に排気するには、気密容器を組み立てた後、不図示の排気管と真空ポンプとを接続し、気密容器内を10のマイナス7乗[torr]程度の真空度まで排気する。その後、排気管を封止するが、気密容器内の真空度を維持するために、封止の直前あるいは封止後に気密容器内の所定の位置にゲッター膜(不図示)を形成する。ゲッター膜とは、たとえばBaを主成分とするゲッター材料をヒータもしくは高周波加熱により加熱し蒸着して形成した膜であり、該ゲッター膜の吸着作用により気密容器内は1×10マイナス5乗ないしは1×10マイナス7乗[torr]の真空度に維持される。
【0089】
以上、本発明の実施の形態の表示パネル1000の基本構成と製法を説明した。
【0090】
図17は、本実施の形態7のシールド電極1020の平面図で、このシールド電極は前述の図45に示すようなマトリクス配線において、変調信号が上側の供給端より供給され、走査信号が左側の信号供給端より供給される場合に対応している。即ち、行方向配線における電圧分布は図13(b)のようになり、列方向配線の電圧分布は図14(b)のようになるので、2次元的にはこれらを掛け合わせた電圧分布となる。
【0091】
図18はシールド電極1020の通過孔1021の開口面積に対する放出電子の通過量を表した図である。この図より、開口面積が小さい範囲では開口面積が大きくなると急激に通過電流が増加するが、より開口面積が大きい範囲では、開口面積の増大に伴ってなだらかに通過電流が増大していくことがわかる。このような特性に鑑みて、シールド電極1020の通過孔1021の開口面積は、走査信号の供給端(左側)及び変調信号の供給端(上側)に近いほど小さく、そこから離れるほど大きくなるように設定されている。
【0092】
尚、このシールド電極1020に印加される電位は、フェースプレート1007とリアプレート1005によって形成される電界を乱さないような電位とした。
【0093】
[実施の形態8]
図19は、実施の形態8の単純マトリクス配線の例を示す図、図20は図19の配線に対応するシールド電極1020aの通過孔の配置例を示す図である。
【0094】
図19では、走査信号の供給端子が各行方向配線毎に左右交互に設けられているため、シールド電極1020aの通過孔の開口面積は1行毎に右側に最も大きいものと右側が最も小さいものとが交互に配列されている。
【0095】
[実施の形態9]
図21は実施の形態9の単純マトリクス配線の例を示す図、図22は図21の配線に対応するシールド電極1020bの通過孔の配置例を示す図である。
【0096】
図21では、走査信号の供給端子が左右両側に設けられているため、シールド電極1020bの通過孔の開口面積は中央部分で大きく、両端部で小さくなっている。この構成では、先の実施の形態6,7に比べて行方向配線の電圧降下をほぼ半分にすることができるので、電圧のばらつきが小さくなり印加電圧が低下する電子放出素子からの放出電子量が増大する。この結果、表示される画像の輝度のばらつきが解消される。
【0097】
[実施の形態10]
図23は実施の形態10の単純マトリクス配線の例を示す図、図24は図23の配線に対応するシールド電極1020cの通過孔の配置例を示す図である。
【0098】
図23では、走査信号と変調信号の供給端子が左右及び上下両側に設けられているため、シールド電極1020cの通過孔の開口面積は中央部分で大きく、左右及び上下両端部で小さくなっている。この構成では、行方向配線に加えて列方向配線の電圧降下をもほぼ半分にすることができるので、電圧のばらつきが、前述の実施の形態9よりも更に小さくなり、印加電圧が低下する電子放出素子からの放出電子量が増大する。この結果、表示される画像の輝度のばらつきが解消される。このような構成は特に大面積の表示画面を有する画像形成装置に有効である。
【0099】
尚、上述の実施の形態では、通過孔の形状を丸型で示したが、本発明はこれに限定されるものでなく、楕円、長方形等、どのような形状でも同様の効果が得られる。
【0100】
以上説明したように本実施の形態7〜10によれば、シールド電極に設けた電子通過孔の開口面積を、電子放出素子から放出される電子量のばらつきに応じて異なった開口面積とすることにより、ターゲットに到着する電子量を電子放出素子の位置によらずに略均一にすることができた。これにより従来問題となっていた、画像の表示むら等を解消でき、薄型で大面積、大容量の画像形成装置の実用性能を大幅に向上させることができた。
【0101】
尚、上述の実施の形態では,シールド電極を素子基板とフェースプレート間に配置する例で説明したが、このシールド電極は電子放出素子と一体に基板上に配設されても良い。以下にその製造方法を述べる。
【0102】
電子源の一構成例を図42に示す。図42(a)は平面図、同図(b),(c)は断面図、図43はその製造工程を示す断面図であり、これら図面において図42(a)に示したものと同一部位には同じ番号を付している。
【0103】
図42において,1301は電子通過孔1302を備えるシールド電極である。図42に示した電子源を例に、図43(図42のA−A’断面)の製造工程図に基づいて、該電子源の製造方法の一例を以下に説明する。尚、以下の工程(a)〜(d)は図43の(a)〜(d)に対応している。
【0104】
工程a:基板1101を洗剤、純水及び有機溶剤により十分に洗浄した後、真空蒸者法、スパッタ法などにより素子電極材料を堆積した後、フォトリソグラフィ技術により上記基板1101上に素子電極1102,1103を形成する。
【0105】
基板1101としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法などにより形成したSiO2を積層したガラス基板等のガラス郡材及びアルミナ等のセラミックス部材などが挙げられる。
【0106】
素子電極1102,1103の材料としては導電性を有するものであればどのようなものであっても構わないが、例えばNi,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,Cu,Pd等の金属、或いは合金、及びPd,Ag,Au,RuO2,Pd−Ag等の金属や金属酸化物とガラスなどから構成される印刷導体、或いはIn203−SnO2等の透明導電体及びポリシリコン等の半導体導体材料などが挙げられる。
【0107】
工程b:基板1101上に設けられた素子電極1102と素子電極1103との間に有機金属溶液を塗布して有権金属薄膜を形成する。この後、有機金属薄膜を過熱焼成処理し、リフトオフ、エッチング等によりパターニングして導電性薄膜1104を形成する。
【0108】
なお、上記有機金属溶液とは、前記Pd,Ru,Ag,Au,Ti,In,Cu,Cr,Fe,Sn,Ta,W,Pb等の金属を主元素とする有機化合物の溶液である。なお、ここでは有機金属溶液の塗布法により説明したが、これに限るものではなく、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気層堆積法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等によって形成される場合もある。
【0109】
工程c:導電性薄膜1104の保護層1303をCrで形成した後、犠牲層1304及びシールド電極1301を順次積層形成する。このとき、上記シールド電極1301の両端郡が基板1101上に形成されるように、犠牲層1304及びシールド電極1301のサイズを選択する。シールド電極1301としては導電性を有するものが好ましく、例えばAl等の薄膜金属により構成される。
【0110】
工程d:犠牲層1304をエッチング除去して、薄膜1104とシールド電極1301との問に間隙部をなす。つぎに、上記エッチング時における薄膜1104の保護層1303を除去する。最後に、素子電極1102、1103の間に不図示の電源により電圧を印加することで、先述のフォーミングとよばれる通電処理を施し、導電性薄膜の部位に変化した電子放出部1105を形成する。尚、このようにして形成した電子放出部1105は導電性微粒子で構成されている場合もある。
【0111】
又、電子放出部1105を含む導電性膿1104を構成する材料の具体例を挙げるならば、Pd,Ru,Ag,Au,Ti,In,Cu,Cr,Fe,Zn,Sn,Ta,W,Pb等の金属、PdO,SnO2,In2O3,PbO,Sb2O3等の酸化物、HfB2,ZrB2,LaB6,CeB6,YB4,GdB4等の硼化物、TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC等の炭化物、TiN,ZrN,HfN等の窒化物、Si,Ge等の半導体、カーボン等であり、基本的には微粒子膜からなる。
【0112】
以上の工程を経て得られる電子源は、電子放出部を含む導電性膜1104に電圧を印加し、素子表面に電流を流すことにより、電子放出部1105より電子を放出する。この電子は素子電極1102,1103により、電子放出部1105の近傍に形成される水平方向の電界により、電子放出部1105よりも陽極よりの軌道を持つため、シールド電極1301の電子通過孔1302は電子放出郡1105の直上部ではなく、陽極よりに設置される。このとき、シールド電極1301に対して、電位を規定する電圧印加手段を設けることが好ましい。
【0113】
尚、本発明の実施の形態に関わる電子源の製造方法は、上述の方法に限定されるものではなく、上記製造方法のうちの一部を変更しても良い。
【0114】
以上説明したように本実施の形態では、シールド電極1301の電子通過孔1302の開口面積を各電子放出素子に印加される電圧に応じて最適に設定することにより、電子放出素子毎に印加電圧に分布があった場合にも、電子の透過量、すなわち最終的なターゲットへの到達電子の量を一定にできる効果があった。
【0115】
[実施の形態11]
後述する本実施の形態11〜15では、各電子放出素子に印加される電圧に応じて異なる大きさの面積を有したブラックストライプを用いることにより、どの電子放出素子からもほぼ等しい量の放出電子がターゲットに照射される。より詳しくは、走査信号の供給端及び変調信号の供給端に近い電子放出素子に対応するブラックストライプの面積を小さく、これら供給端より遠い位置の電子放出素子に対応するブラックストライプの面積を大きくしている。
【0116】
図25は本実施の形態11のフェースプレートの平面図である。これは前述の図45のマトリクス配線に対応する場合を示し、前述の図13(b)及び図14(b)のような電圧分布の場合に対応しており、2次元的にはこれら電圧分布を掛け合わせた分布となる。
【0117】
また図26は、表面伝導型放出素子から放出された電子がフェースプレート1007に到達したときのスポット形状を示す図である。
【0118】
この図のデータの取得条件は、フェースプレート1007に印加するアノード電圧を8[kV]、フェースプレート1007とリアプレート1005間の距離を4mm、表面伝導型放出素子の駆動電圧を14[V]とした。この図において、明るい部分が電子密度が高く、暗く表現されている部分が電子密度が低くなっている。またスポット形状が左右対称なのは、放出された電子が駆動電圧によって形成される水平面内の電界によって素子電極の陽極側に引かれるためである(図26において、右側が陽極である)。したがって、電子量の粗調整を行うには、スポットの電子密度が高い側の黒色導電体の塗布面積を調整し、電子量の微調整を行うにはスポットの電子密度が低い側の黒色導電体の塗布面積を調整するのが効果的である。
【0119】
以上の特性に鑑みて、図25におけるフェースプレートの黒色導電体の幅は、走査信号の供給端及び変調信号の供給端に近い電子放出素子に対応するものほど広く(蛍光体の塗布面積が狭くなっている)、逆にこれら供給端より遠い位置にある電子放出素子に対応するものほど、蛍光体の塗布面積が広くなっている。
【0120】
[実施の形態12]
図27は、前述の図19の配線、即ち、走査信号の供給端子が各行方向配線毎に左右交互に設けられている場合に対応するフェースプレートの平面図を示す。この図27では、蛍光体の配列に前述した図47(A)のデルタ配列の蛍光体配列を用いた。この配列を用いると、画素の周囲を黒色導電体が覆っているため、左右方向だけでなく上下方向にも黒色導電体の塗布面積の自由度が生じる。これにより、図16(A)の場合には困難であった図19の配線の場合にも対応することができる。
【0121】
この図27では、図19に示すように走査信号供給端が行配線毎に左右交互に設けられているため、黒色導電体の塗布面積は1段毎に右側が大きいものと左側が大きいものとが交互に配列されている。
【0122】
また図28は、図47(B)に示す市松模様に配列したフェースプレートの例を示す。いずれにおいても、前述と同様の効果が得られた。
【0123】
[実施の形態13]
図29は実施の形態13のフェースプレートの例を示す平面図で、前述の図21の配線に対応するフェースプレートの平面図である。
【0124】
図29では、走査信号の供給端子が左右両側に設けられているため、黒色導電体の塗布面積は左右両側で大きく、また下側端部で小さくなっている。この構成では、行方向配線の電圧降下をほぼ半分にすることができるので、電圧のばらつきが小さくなり印加電圧が低下する電子放出素子からの放出電子量が増大する。この結果、表示される画像の輝度のばらつきが解消される。これは特に大面積の画像形成装置に有効である。
【0125】
[実施の形態14]
図30は実施の形態14のフェースプレートの例を示す平面図で、前述の図23の配線に対応するフェースプレートの平面図である。
【0126】
図23では、走査信号と変調信号の供給端子が左右及び上下両側に設けられているため、黒色導電体の塗布面積は端部で大きく、中央部で小さくなっている。この構成では、行方向配線に加えて列方向配線の電圧降下をもほぼ半分にすることができるので、電圧のばらつきが、前述の実施の形態13よりも更に小さくなり、印加電圧が低下する電子放出素子からの放出電子量が増大する。この結果、表示される画像の輝度のばらつきが解消される。このような構成は特に大面積の表示画面を有する画像形成装置に有効である。
【0127】
[実施の形態15]
図31は実施の形態15のフェースプレートの例を示す平面図で、前述の図45の配線に対応するフェースプレートの他の例を示す平面図である。
【0128】
図31では、電子放出量が多い電子放出素子に対応するフェースプレートの結像面に黒色微粒子310が配置されている。これにより、励起された発光体から発する光の透過を妨げるので、黒色の導電体の幅を広げるのと同等の効果を得ることができる。
【0129】
次に、この黒色導電体1010及び黒色微粒子310の作成方法について説明する。
【0130】
<第1の方法>
(a)まずフェースプレートとなるガラス基板を洗浄する。
(b)黒色微粒子をもっとも濃く形成したい部分に黒色導電体の成分であるカーボンの薄い溶液を塗布し、乾燥させる。
(c)再びカーボンの薄い溶液を塗布し、前回よりも広域に広げる。
(d)所望の分布になるように工程(c)を繰返す。
(e)以上で黒色微粒子が濃度分布を持って形成されるので、重ねて通常の印刷或いはフォトリソグラフィ技術を用いて黒色導電体1010を形成する。
【0131】
<第2の方法>
(a)まずフェースプレートとなるガラス基板を洗浄する。
(b)黒色導電体の材料を濃度分布を持たせて蒸着する。この濃度分布を持たせるには、例えば蒸着材料と蒸着対象とを近づけることで局所的に蒸着することが可能であり、蒸着対象を移動させて再度蒸着することで、所望の濃度分布を持った黒色微粒子310を形成できる。
(c)以上で黒色微粒子が濃度分布を持って形成されるので、重ねて通常の印刷或いはフォトリソグラフィ技術を用いて黒色導電体1010を形成する。
【0132】
本実施の形態では、黒色微粒子310の材料は黒色導電体1010と同様、黒鉛を主成分とするものを用いたが、必ずしも黒色導電体1010と同じ材料である必要はなく、蛍光体の発光を透過させないものであればよい。
【0133】
尚、黒色微粒子の配列形状はストライプに限るものでなく、前述のようにデルタ配列や市松配列でも良い。
【0134】
以上説明したように本実施の形態によれば、フェースプレート上の黒色導電体の塗布面積を、電子放出素子から放出される電子量のばらつきに応じて変更することにより、蛍光体を発光させるのに有効な電子量を素子によらずにほぼ均一にすることができる。これにより従来問題となっていた配線抵抗による輝度むらを解消でき、薄型で大面積の大容量の画像形成装置の実用性能を大幅に向上することができた。
【0135】
次に、この実施の形態の表示パネル1000に用いたマルチ電子源の製造方法について説明する。本実施の形態の画像表示装置に用いるマルチ電子源は、表面伝導型放出素子を単純マトリクス配線した電子源であれば、表面伝導型放出素子の材料や形状あるいは製法に制限はない。しかしながら、本願発明者らは、表面伝導型放出素子の中では、電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形成したものが電子放出特性に優れ、しかも製造が容易に行えることを見出している。したがって、高輝度で大画面の画像表示装置のマルチ電子源に用いるには、最も好適であると言える。そこで、上記実施の形態の表示パネルにおいては、電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形成した表面伝導型放出素子を用いた。そこで、まず好適な表面伝導型放出素子について基本的な構成と製法および特性を説明し、その後で多数の素子を単純マトリクス配線したマルチ電子源の構造について述べる。
【0136】
(表面伝導型放出素子の好適な素子構成と製法)
電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形成する表面伝導型放出素子の代表的な構成には、平面型と垂直型の2種類があげられる。
【0137】
(平面型の表面伝導型放出素子)
まず最初に、平面型の表面伝導型放出素子の素子構成と製法について説明する。図32に示すのは、平面型の表面伝導型放出素子の構成を説明するための平面図(A)および断面図(B)である。図中、1101は基板、1102と1103は素子電極、1104は導電性薄膜、1105は通電フォーミング処理により形成した電子放出部、1113は通電活性化処理により形成した薄膜である。
【0138】
基板1101としては、たとえば、石英ガラスや青板ガラスをはじめとする各種ガラス基板や、アルミナをはじめとする各種セラミクス基板、あるいは上述の各種基板上に、例えばSiO2を材料とする絶縁層を積層した基板などを用いることができる。
【0139】
また、基板1101上に基板面と平行に対向して設けられた素子電極1102と1103は、導電性を有する材料によって形成されている。たとえば、Ni,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Cu,Pd,Ag等をはじめとする金属、あるいはこれらの金属の合金、あるいはIn2O3−SnO2をはじめとする金属酸化物、ポリシリコンなどの半導体、などの中から適宜材料を選択して用いればよい。電極を形成するには、たとえば真空蒸着などの製膜技術とフォトリソグラフィ、エッチングなどのパターニング技術を組み合わせて用いれば容易に形成できるが、それ以外の方法(たとえば印刷技術)を用いて形成してもさしつかえない。
【0140】
素子電極1102と1103の形状は、当該電子放出素子の応用目的に合わせて適宜設計される。一般的には、電極間隔Lは通常は数百オングストロームから数百マイクロメータの範囲から適当な数値を選んで設計されるが、なかでも表示装置に応用するために好ましいのは数マイクロメータより数十マイクロメータの範囲である。また、素子電極の厚さdについては、通常は数百オングストロームから数マイクロメータの範囲から適当な数値が選ばれる。
【0141】
また、導電性薄膜1104の部分には微粒子膜を用いる。ここで述べた微粒子膜とは、構成要素として多数の微粒子を含んだ膜(島状の集合体も含む)のことをさす。微粒子膜を微視的に調べれば、通常は、個々の微粒子が離間して配置された構造か、あるいは微粒子が互いに隣接した構造か、あるいは微粒子が互いに重なり合った構造が観測される。
【0142】
微粒子膜に用いた微粒子の粒径は、数オングストロームから数千オングストロームの範囲に含まれるものであるが、中でも好ましいのは10オングストロームから200オングストロームの範囲のものである。また、微粒子膜の膜厚は、以下に述べるような諸条件を考慮して適宜設定される。即ち、素子電極1102或は1103と電気的に良好に接続するのに必要な条件、後述する通電フォーミングを良好に行うのに必要な条件、微粒子膜自身の電気抵抗を後述する適宜の値にするために必要な条件、などである。具体的には、数オングストロームから数千オングストロームの範囲のなかで設定するが、なかでも好ましいのは10オングストロームから500オングストロームの間である。
【0143】
また、微粒子膜を形成するのに用いられうる材料としては、たとえば、Pd,Pt,Ru,Ag,Au,Ti,In,Cu,Cr,Fe,Zn,Sn,Ta,W,Pbなどをはじめとする金属や、PdO,SnO2,In2O3,PbO,Sb2O3などをはじめとする酸化物や、HfB2,ZrB2,LaB6,CeB6,YB4,GdB4などをはじめとする硼化物や、TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WCなどをはじめとする炭化物や、TiN,ZrN,HfN,などをはじめとする窒化物や、Si,Ge,などをはじめとする半導体や、カーボン、などがあげられ、これらの中から適宜選択される。
【0144】
以上述べたように、導電性薄膜1104を微粒子膜で形成したが、そのシート抵抗値については、10の3乗から10の7乗[オーム/□]の範囲に含まれるよう設定した。
【0145】
なお、導電性薄膜1104と素子電極1102および1103とは、電気的に良好に接続されるのが望ましいため、互いの一部が重なりあうような構造をとっている。その重なり方は、図32の例においては、下から、基板、素子電極、導電性薄膜の順序で積層したが、場合によっては下から基板、導電性薄膜、素子電極、の順序で積層してもさしつかえない。
【0146】
また、電子放出部1105は、導電性薄膜1104の一部に形成された亀裂状の部分であり、電気的には周囲の導電性薄膜よりも高抵抗な性質を有している。この亀裂は、導電性薄膜1104に対して、後述する通電フォーミングの処理を行うことにより形成する。亀裂内には、数オングストロームから数百オングストロームの粒径の微粒子を配置する場合がある。なお、実際の電子放出部の位置や形状を精密かつ正確に図示するのは困難なため、図32においては模式的に示した。
【0147】
また、薄膜1113は、炭素もしくは炭素化合物よりなる薄膜で、電子放出部1105およびその近傍を被覆している。薄膜1113は、通電フォーミング処理後に、後述する通電活性化の処理を行うことにより形成する。
【0148】
薄膜1113は、単結晶グラファイト、多結晶グラファイト、非晶質カーボン、のいずれかか、もしくはその混合物であり、膜厚は500[オングストローム]以下とするが、300[オングストローム]以下とするのがさらに好ましい。なお、実際の薄膜1113の位置や形状を精密に図示するのは困難なため、図32においては模式的に示した。また、平面図(A)においては、薄膜1113の一部を除去した素子を図示した。
【0149】
以上、好ましい素子の基本構成を述べたが、実施の形態においては以下のような素子を用いた。すなわち、基板1101には青板ガラスを用い、素子電極1102と1103にはNi薄膜を用いた。素子電極の厚さdは1000[オングストローム]、電極間隔Lは2[マイクロメータ]とした。
【0150】
微粒子膜の主要材料としてPdもしくはPdOを用い、微粒子膜の厚さは約100[オングストローム]、幅Wは100[マイクロメータ]とした。
【0151】
次に、好適な平面型の表面伝導型放出素子の製造方法について説明する。図33(a)〜(d)は、表面伝導型放出素子の製造工程を説明するための断面図で、各部材の表記は前記図32と同一である。
【0152】
(1)まず、図33(a)に示すように、基板1101上に素子電極1102および1103を形成する。これら電極を形成するにあたっては、予め基板1101を洗剤、純水、有機溶剤を用いて十分に洗浄後、素子電極の材料を堆積させる(堆積する方法としては、たとえば、蒸着法やスパッタ法などの真空成膜技術を用ればよい)。その後、堆積した電極材料を、フォトリソグラフィー・エッチング技術を用いてパターニングし、(a)に示した一対の素子電極(1102と1103)を形成する。
【0153】
(2)次に、同図(b)に示すように、導電性薄膜1104を形成する。この導電性薄膜1104を形成するにあたっては、まず前記(a)の基板に有機金属溶液を塗布して乾燥し、加熱焼成処理して微粒子膜を成膜した後、フォトリソグラフィー・エッチングにより所定の形状にパターニングする。ここで、有機金属溶液とは、導電性薄膜に用いる微粒子の材料を主要元素とする有機金属化合物の溶液である(具体的には、本実施の形態では主要元素としてPdを用いた。また、実施の形態では塗布方法として、ディッピング法を用いたが、それ以外のたとえばスピンナー法やスプレー法を用いてもよい)。
【0154】
また、微粒子膜で作られる導電性薄膜の成膜方法としては、本実施の形態で用いた有機金属溶液の塗布による方法以外の、たとえば真空蒸着法やスパッタ法、あるいは化学的気相堆積法などを用いる場合もある。
【0155】
(3)次に、同図(c)に示すように、フォーミング用電源1110から素子電極1102と1103の間に適宜の電圧を印加し、通電フォーミング処理を行って、電子放出部1105を形成する。
【0156】
この通電フォーミング処理とは、微粒子膜で作られた導電性薄膜1104に通電を行って、その一部を適宜に破壊、変形、もしくは変質せしめ、電子放出を行うのに好適な構造に変化させる処理のことである。微粒子膜で作られた導電性薄膜のうち電子放出を行うのに好適な構造に変化した部分(即ち、電子放出部1105)においては、薄膜に適当な亀裂が形成されている。なお、電子放出部1105が形成される前と比較すると、形成された後は素子電極1102と1103の間で計測される電気抵抗は大幅に増加する。
【0157】
通電方法をより詳しく説明するために、図34に、フォーミング用電源1110から印加する適宜の電圧波形の一例を示す。微粒子膜で作られた導電性薄膜をフォーミングする場合には、パルス状の電圧が好ましく、本実施の形態の場合には同図に示したようにパルス幅T1の三角波パルスをパルス間隔T2で連続的に印加した。その際には、三角波パルスの波高値Vpfを、順次昇圧した。また、電子放出部1105の形成状況をモニタするためのモニタパルスPmを適宜の間隔で三角波パルスの間に挿入し、その際に流れる電流を電流計1111で計測した。
【0158】
実施の形態においては、例えば10のマイナス5乗[torr]程度の真空雰囲気下において、例えばパルス幅T1を1[ミリ秒]、パルス間隔T2を10[ミリ秒]とし、波高値Vpfを1パルスごとに0.1[V]ずつ昇圧した。そして、三角波を5パルス印加するたびに1回の割りで、モニタパルスPmを挿入した。フォーミング処理に悪影響を及ぼすことがないように、モニタパルスの電圧Vpmは0.1[V]に設定した。そして、素子電極1102と1103の間の電気抵抗が1×10の6乗[オーム]になった段階、すなわちモニタパルス印加時に電流計1111で計測される電流が1×10のマイナス7乗[A]以下になった段階で、フォーミング処理にかかわる通電を終了した。
【0159】
なお、上記の方法は、本実施例の表面伝導型放出素子に関する好ましい方法であり、例えば微粒子膜の材料や膜厚、あるいは素子電極間隔Lなど表面伝導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じて通電の条件を適宜変更するのが望ましい。
【0160】
(4)次に、図33(d)に示すように、活性化用電源1112から素子電極1102と1103の間に適宜の電圧を印加し、通電活性化処理を行って、電子放出特性の改善を行う。この通電活性化処理とは、前記通電フォーミング処理により形成された電子放出部1105に適宜の条件で通電を行って、その近傍に炭素もしくは炭素化合物を堆積せしめる処理のことである。(図においては、炭素もしくは炭素化合物よりなる堆積物を部材1113として模式的に示した)。なお、通電活性化処理を行うことにより、行う前と比較して、同じ印加電圧における放出電流を典型的には100倍以上に増加させることができる。
【0161】
具体的には、10のマイナス4乗ないし10のマイナス5乗[torr]の範囲内の真空雰囲気中で、電圧パルスを定期的に印加することにより、真空雰囲気中に存在する有機化合物を起源とする炭素もしくは炭素化合物を堆積させる。堆積物1113は、単結晶グラファイト、多結晶グラファイト、非晶質カーボン、のいずれかか、もしくはその混合物であり、膜厚は500[オングストローム]以下、より好ましくは300[オングストローム]以下である。
【0162】
通電方法をより詳しく説明するために、図35(a)に、活性化用電源1112から印加する適宜の電圧波形の一例を示す。本実施の形態においては、一定電圧の矩形波を定期的に印加して通電活性化処理を行ったが、具体的には,矩形波の電圧Vacは14[V],パルス幅T3は、1[ミリ秒],パルス間隔T4は10[ミリ秒]とした。なお、上述の通電条件は、本実施の形態の表面伝導型放出素子に関する好ましい条件であり、表面伝導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じて条件を適宜変更するのが望ましい。
【0163】
図33(d)に示す1114は、該表面伝導型放出素子から放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極で、直流高電圧電源1115および電流計1116が接続されている。(なお、基板1101を、表示パネルの中に組み込んでから活性化処理を行う場合には、表示パネルの蛍光面をアノード電極1114として用いる)。活性化用電源1112から電圧を印加する間、電流計1116で放出電流Ieを計測して通電活性化処理の進行状況をモニタし、活性化用電源1112の動作を制御する。電流計1116で計測された放出電流Ieの一例を図35(b)に示す。活性化電源1112からパルス電圧を印加しはじめると、時間の経過とともに放出電流Ieは増加するが、やがて飽和してほとんど増加しなくなる。このように、放出電流Ieがほぼ飽和した時点で活性化用電源1112からの電圧印加を停止し、通電活性化処理を終了する。
【0164】
なお、上述の通電条件は、本実施の形態の表面伝導型放出素子に関する好ましい条件であり、表面伝導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じて条件を適宜変更するのが望ましい。
【0165】
以上のようにして、図33(e)に示す平面型の表面伝導型放出素子を製造した。
【0166】
(垂直型の表面伝導型放出素子)
次に、電子放出部もしくはその周辺を微粒子膜から形成した表面伝導型放出素子のもうひとつの代表的な構成、すなわち垂直型の表面伝導型放出素子の構成について説明する。
【0167】
図36は、本実施の形態の垂直型の基本構成を説明するための模式的な断面図であり、図中の1201は基板、1202と1203は素子電極、1206は段差形成部材、1204は微粒子膜を用いた導電性薄膜、1205は通電フォーミング処理により形成した電子放出部、1213は通電活性化処理により形成した薄膜、である。
【0168】
垂直型が先に説明した平面型と異なる点は、素子電極のうちの片方(1202)が段差形成部材1206上に設けられており、導電性薄膜1204が段差形成部材1206の側面を被覆している点にある。したがって、前記図32の平面型における素子電極間隔Lは、垂直型においては段差形成部材1206の段差高Lsとして設定される。なお、基板1201、素子電極1202および1203、微粒子膜を用いた導電性薄膜1204、については、前記平面型の説明中に列挙した材料を同様に用いることが可能である。また、段差形成部材1206には、たとえばSiO2 のような電気的に絶縁性の材料を用いる。
【0169】
次に、垂直型の表面伝導型放出素子の製法について説明する。図37(a)〜(f)は、製造工程を説明するための断面図で、各部材の表記は前記図36と同一である。
【0170】
(1)まず、図37(a)に示すように、基板1201上に素子電極1203を形成する。
【0171】
(2)次に、同図(b)に示すように、段差形成部材を形成するための絶縁層を積層する。絶縁層は、たとえばSiO2 をスパッタ法で積層すればよいが、たとえば真空蒸着法や印刷法などの他の成膜方法を用いてもよい。
【0172】
3)次に、同図(c)に示すように、絶縁層の上に素子電極1202を形成する。
【0173】
4)次に、同図(d)に示すように、絶縁層の一部を、たとえばエッチング法を用いて除去し、素子電極1203を露出させる。
【0174】
5)次に、同図(e)に示すように、微粒子膜を用いた導電性薄膜1204を形成する。形成するには、前記平面型の場合と同じく、たとえば塗布法などの成膜技術を用いればよい。
【0175】
6)次に、前記平面型の場合と同じく、通電フォーミング処理を行い、電子放出部を形成する(図33(c)を用いて説明した平面型の通電フォーミング処理と同様の処理を行えばよい)。
【0176】
(7)次に、前記平面型の場合と同じく、通電活性化処理を行い、電子放出部近傍に炭素もしくは炭素化合物を堆積させる(図33(d)を用いて説明した平面型の通電活性化処理と同様の処理を行えばよい)。
【0177】
以上のようにして、図37(f)に示す垂直型の表面伝導型放出素子を製造した。
【0178】
(表示装置に用いた表面伝導型放出素子の特性)
以上、平面型と垂直型の表面伝導型放出素子について素子構成と製法を説明したが、次に表示装置に用いた素子の特性について述べる。
【0179】
図38に、本実施の形態の表示装置に用いた素子の(放出電流Ie)対(素子印加電圧Vf)特性、および(素子電流If)対(素子印加電圧Vf)特性の典型的な例を示す。なお、放出電流Ieは素子電流Ifに比べて著しく小さく、同一尺度で図示するのが困難であるうえ、これらの特性は素子の大きさや形状等の設計パラメータを変更することにより変化するものであるため、2本のグラフは各々任意単位で図示した。
【0180】
表示装置に用いた素子は、放出電流Ieに関して以下に述べる3つの特性を有している。
【0181】
第一に、ある電圧(これを閾値電圧Vthと呼ぶ)以上の大きさの電圧を素子に印加すると急激に放出電流Ieが増加するが、一方、閾値電圧Vth未満の電圧では放出電流Ieはほとんど検出されない。すなわち、放出電流Ieに関して、明確な閾値電圧Vthを持った非線形素子である。
【0182】
第二に、放出電流Ieは素子に印加する電圧Vfに依存して変化するため、電圧Vfで放出電流Ieの大きさを制御できる。
【0183】
第三に、素子に印加する電圧Vfに対して素子から放出される電流Ieの応答速度が速いため、電圧Vfを印加する時間の長さによって素子から放出される電子の電荷量を制御できる。
【0184】
以上のような特性を有するため、表面伝導型放出素子を表示装置に好適に用いることができた。たとえば多数の素子を表示画面の画素に対応して設けた表示装置において、第一の特性を利用すれば、表示画面を順次走査して表示を行うことが可能である。すなわち、駆動中の素子には所望の発光輝度に応じて閾値電圧Vth以上の電圧を適宜印加し、非選択状態の素子には閾値電圧Vth未満の電圧を印加する。駆動する素子を順次切り替えてゆくことにより、表示画面を順次走査して表示を行うことが可能である。
【0185】
また、第二の特性かまたは第三の特性を利用することにより、発光輝度を制御することができるため、諧調表示を行うことが可能である。
【0186】
(多数素子を単純マトリクス配線したマルチ電子源の構造)
次に、上述の表面伝導型放出素子を基板上に配列して単純マトリクス配線したマルチ電子源の構造について述べる。
【0187】
図39に示すのは、前記図1及び図15の表示パネルに用いたマルチ電子源の平面図である。基板1001上には、前記図32で示したものと同様な表面伝導型放出素子が配列され、これらの素子は行方向配線電極1003と列方向配線電極1004により単純マトリクス状に配線されている。行方向配線電極1003と列方向配線電極1004の交差する部分には、電極間に絶縁層(不図示)が形成されており、電気的な絶縁が保たれている。
【0188】
図39のA−A’に沿った断面を図40に示す。
【0189】
なお、このような構造のマルチ電子源は、あらかじめ基板上に行方向配線電極1003、列方向配線電極1004、電極間絶縁層(不図示)、および表面伝導型放出素子の素子電極と導電性薄膜を形成した後、行方向配線電極1003および列方向配線電極1004を介して各素子に給電して通電フォーミング処理と通電活性化処理を行うことにより製造した。
【0190】
図41は、前記説明の表面伝導型放出素子を電子源として用いたディスプレイパネルに、例えばテレビジョン放送をはじめとする種々の画像情報源より提供される画像情報を表示できるように構成した多機能表示装置の一例を示すための図である。図中、1000は前述したディスプレイパネル、2101はディスプレイパネルの駆動回路、2102はディスプレイコントローラ、2103はマルチプレクサ、2104はデコーダ、2105は入出力インターフェース回路、2106はCPU、2107は画像生成回路、2108および2109および2110は画像メモリインターフェース回路、2111は画像入力インターフェース回路、2112および2113はTV信号受信回路、2114は入力部である。
【0191】
(なお、本表示装置は、例えばテレビジョン信号のように映像情報と音声情報の両方を含む信号を受信する場合には、当然映像の表示と同時に音声を再生するものであるが、本発明の特徴と直接関係しない音声情報の受信,分離,再生,処理,記憶などに関する回路やスピーカなどについては説明を省略する。)以下、画像信号の流れに沿って各部の機能を説明してゆく。
【0192】
まず、TV信号受信回路2113は、例えば電波や空間光通信などのような無線伝送系を用いて伝送されるTV画像信号を受信するための回路である。受信するTV信号の方式は特に限られるものではなく、例えば、NTSC方式、PAL方式、SECAM方式などの諸方式でもよい。また、これらよりさらに多数の走査線よりなるTV信号(例えばMUSE方式をはじめとするいわゆる高品位TV)は、大面積化や大画素数化に適した前記ディスプレイパネルの利点を生かすのに好適な信号源である。TV信号受信回路2113で受信されたTV信号は、デコーダ2104に出力される。
【0193】
また、TV信号受信回路2112は、例えば同軸ケーブルや光ファイバーなどのような有線伝送系を用いて伝送されるTV画像信号を受信するための回路である。前記TV信号受信回路2113と同様に、受信するTV信号の方式は特に限られるものではなく、また本回路で受信されたTV信号もデコーダ2104に出力される。
【0194】
また、画像入力インターフェース回路2111は、例えばTVカメラや画像読み取りスキャナなどの画像入力装置から供給される画像信号を取り込むための回路で、取り込まれた画像信号はデコーダ2104に出力される。
【0195】
また、画像メモリインターフェース回路2110は、ビデオテープレコーダ(以下VTRと略す)に記憶されている画像信号を取り込むための回路で、取り込まれた画像信号はデコーダ2104に出力される。
【0196】
また、画像メモリインターフェース回路2109は、ビデオディスクに記憶されている画像信号を取り込むための回路で、取り込まれた画像信号はデコーダ2104に出力される。
【0197】
また、画像メモリインターフェース回路2108は、いわゆる静止画ディスクのように、静止画像データを記憶している装置から画像信号を取り込むための回路で、取り込まれた静止画像データはデコーダ2104に出力される。
【0198】
また、入出力インターフェース回路2105は、本表示装置と、外部のコンピュータもしくはコンピュータネットワークもしくはプリンタなどの出力装置とを接続するための回路である。画像データや文字データ・図形情報の入出力を行うのはもちろんのこと、場合によっては本表示装置の備えるCPU2106と外部との間で制御信号や数値データの入出力などを行うことも可能である。
【0199】
また、画像生成回路2107は、前記入出力インターフェース回路2105を介して外部から入力される画像データや文字・図形情報や、あるいはCPU2106より出力される画像データや文字・図形情報に基づき表示用画像データを生成するための回路である。本回路の内部には、例えば画像データや文字・図形情報を蓄積するための書き換え可能メモリや、文字コードに対応する画像パターンが記憶されている読みだし専用メモリや、画像処理を行うためのプロセッサなどをはじめとして画像の生成に必要な回路が組み込まれている。本回路により生成された表示用画像データは、デコーダ2104に出力されるが、場合によっては前記入出力インターフェース回路2105を介して外部のコンピュータネットワークやプリンタ入出力することも可能である。
【0200】
また、CPU2106は、主として本表示装置の動作制御や、表示画像の生成や選択や編集に関わる作業を行う。
【0201】
例えば、マルチプレクサ2103に制御信号を出力し、ディスプレイパネルに表示する画像信号を適宜選択したり組み合わせたりする。また、その際には表示する画像信号に応じてディスプレイパネルコントローラ2102に対して制御信号を発生し、画面表示周波数や走査方法(例えばインターレースかノンインターレースか)や一画面の走査線の数など表示装置の動作を適宜制御する。
【0202】
また、前記画像生成回路2107に対して画像データや文字・図形情報を直接出力したり、あるいは前記入出力インターフェース回路2105を介して外部のコンピュータやメモリをアクセスして画像データや文字・図形情報を入力する。
【0203】
なお、CPU2106は、むろんこれ以外の目的の作業にも関わるものであっても良い。例えば、パーソナルコンピュータやワードプロセッサなどのように、情報を生成したり処理する機能に直接関わっても良い。
【0204】
あるいは、前述したように入出力インターフェース回路2105を介して外部のコンピュータネットワークと接続し、例えば数値計算などの作業を外部機器と協同して行っても良い。
【0205】
また、入力部2114は、前記CPU2106に使用者が命令やプログラム、あるいはデータなどを入力するためのものであり、例えばキーボードやマウスのほか、ジョイスティック,バーコードリーダー,音声認識装置など多様な入力機器を用いる事が可能である。
【0206】
また、デコーダ2104は、前記2107ないし2113より入力される種々の画像信号を3原色信号、または輝度信号とI信号,Q信号に逆変換するための回路である。なお、同図中に点線で示すように、デコーダ2104は内部に画像メモリを備えるのが望ましい。これは、例えばMUSE方式をはじめとして、逆変換するに際して画像メモリを必要とするようなテレビ信号を扱うためである。また、画像メモリを備えることにより、静止画の表示が容易になる、あるいは前記画像生成回路2107およびCPU2106と協同して画像の間引き,補間,拡大,縮小,合成をはじめとする画像処理や編集が容易に行えるようになるという利点が生まれるからである。
【0207】
また、マルチプレクサ2103は、前記CPU2106より入力される制御信号に基づき表示画像を適宜選択するものである。すなわち、マルチプレクサ2103はデコーダ2104から入力される逆変換された画像信号のうちから所望の画像信号を選択して駆動回路2101に出力する。その場合には、一画面表示時間内で画像信号を切り替えて選択することにより、いわゆる多画面テレビのように、一画面を複数の領域に分けて領域によって異なる画像を表示することも可能である。
【0208】
また、ディスプレイパネルコントローラ2102は、前記CPU2106より入力される制御信号に基づき駆動回路2101の動作を制御するための回路である。
【0209】
まず、ディスプレイパネルの基本的な動作にかかわるものとして、例えばディスプレイパネルの駆動用電源(図示せず)の動作シーケンスを制御するための信号を駆動回路2101に対して出力する。また、ディスプレイパネルの駆動方法に関わるものとして、例えば画面表示周波数や走査方法(例えばインターレースかノンインターレースか)を制御するための信号を駆動回路2101に対して出力する。
【0210】
また、場合によっては表示画像の輝度やコントラストや色調やシャープネスといった画質の調整に関わる制御信号を駆動回路2101に対して出力する場合もある。
【0211】
また、駆動回路2101は、ディスプレイパネル1000に印加する駆動信号を発生するための回路であり、前記マルチプレクサ2103から入力される画像信号と、前記ディスプレイパネルコントローラ2102より入力される制御信号に基づいて動作するものである。
【0212】
以上、各部の機能を説明したが、図41に例示した構成により、本表示装置においては多様な画像情報源より入力される画像情報をディスプレイパネル1000に表示する事が可能である。すなわち、テレビジョン放送をはじめとする各種の画像信号はデコーダ2104において逆変換された後、マルチプレクサ2103において適宜選択され、駆動回路2101に入力される。一方、ディスプレイコントローラ2102は、表示する画像信号に応じて駆動回路2101の動作を制御するための制御信号を発生する。駆動回路2101は、上記画像信号と制御信号に基づいてディスプレイパネル1000に駆動信号を印加する。これにより、ディスプレイパネル1000において画像が表示される。これらの一連の動作は、CPU2106により統括的に制御される。
【0213】
また、本表示装置においては、前記デコーダ2104に内蔵する画像メモリや、画像生成回路2107およびCPU2106が関与することにより、単に複数の画像情報の中から選択したものを表示するだけでなく、表示する画像情報に対して、例えば拡大,縮小,回転,移動,エッジ強調,間引き,補間,色変換,画像の縦横比変換などをはじめとする画像処理や、合成,消去,接続,入れ換え,はめ込みなどをはじめとする画像編集を行う事も可能である。また、本実施例の説明では特に触れなかったが、上記画像処理や画像編集と同様に、音声情報に関しても処理や編集を行うための専用回路を設けても良い。
【0214】
したがって、本表示装置は、テレビジョン放送の表示機器,テレビ会議の端末機器,静止画像および動画像を扱う画像編集機器,コンピュータの端末機器,ワードプロセッサをはじめとする事務用端末機器,ゲーム機などの機能を一台で兼ね備える事が可能で、産業用あるいは民生用として極めて応用範囲が広い。
【0215】
なお、上記図41は、表面伝導型放出素子を電子源とするディスプレイパネルを用いた表示装置の構成の一例を示したにすぎず、これのみに限定されるものではない事は言うまでもない。例えば、図41の構成要素のうち使用目的上必要のない機能に関わる回路は省いても差し支えない。またこれとは逆に、使用目的によってはさらに構成要素を追加しても良い。例えば、本表示装置をテレビ電話機として応用する場合には、テレビカメラ,音声マイク,照明機,モデムを含む送受信回路などを構成要素に追加するのが好適である。
【0216】
本表示装置においては、とりわけ表面伝導型放出素子を電子源とするディスプレイパネルが容易に薄形化できるため、表示装置全体の奥行きを小さくすることが可能である。それに加えて、表面伝導型放出素子を電子源とするディスプレイパネルは大画面化が容易で輝度が高く視野角特性にも優れるため、本表示装置は臨場感あふれ迫力に富んだ画像を視認性良く表示する事が可能である。
【0217】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、配線抵抗による電圧降下によって生じる放出電子量の変動に伴う輝度のばらつきを防止できるという効果がある。
【0218】
また本発明によれば、各表面伝導型放出素子において印加電圧が非一様になることによる電子放出分布を補正し、高品位の画像形成を行うことができるという効果がある。
【0219】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の表示パネルの一部破断形状を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態のシールド板の配置を説明する図である。
【図3】図2の断面形状を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1のシールド板の配置を説明する断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2のシールド板の配置を説明する断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3のシールド板の配置を説明する断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4のシールド板の配置を説明する断面図である。
【図8】本発明の実施の形態5のシールド板の配置を説明する断面図である。
【図9】本発明の実施の形態6のシールド板の配置を説明する断面図である。
【図10】本発明の実施の形態における電子放出を解析して説明するための図である。
【図11】放出素子とシールド板との距離とターゲットへの電子到達率との関係を示すグラフ図である。
【図12】放出素子とシールド板との距離(高さ)とターゲットへの電子透過率との関係を示すグラフ図である。
【図13】本発明の課題を説明するための図である。
【図14】本発明の課題を説明するための図である。
【図15】本発明の実施の形態の表示パネルの一部破断形状を示す外観斜視図である。
【図16】本実施の形態の表示パネルのフェースプレートの蛍光体配列を例示した平面図である。
【図17】本発明の実施の形態7のシールド電極の構成を示す平面図である。
【図18】本発明の実施の形態におけるシールド電極の通過孔の開口面積とその通過孔を通過する電子量との関係を説明する図である。
【図19】本発明の実施の形態8の配線を説明する図である。
【図20】本発明の実施の形態8のシールド電極の構成を示す平面図である。
【図21】本発明の実施の形態9の配線を説明する図である。
【図22】本発明の実施の形態9のシールド電極の構成を示す平面図である。
【図23】本発明の実施の形態10の配線を説明する図である。
【図24】本発明の実施の形態10のシールド電極の構成を示す平面図である。
【図25】本発明の実施の形態11のブラックストライプの配列を示す平面図である。
【図26】本発明の実施の形態における電子のスポット形状を示す図である。
【図27】本発明の実施の形態12のブラックストライプの配列を示す平面図である。
【図28】本発明の実施の形態12のブラックストライプの他の配列を示す平面図である。
【図29】本発明の実施の形態13のブラックストライプの配列を示す平面図である。
【図30】本発明の実施の形態14のブラックストライプの配列を示す平面図である。
【図31】本発明の実施の形態15のブラックストライプの配列を示す平面図である。
【図32】本実施の形態で用いた平面型の表面伝導型放出素子の平面図(A),断面図(B)である。
【図33】本実施の形態の平面型表面伝導型放出素子の製造工程を示す断面図である。
【図34】通電フォーミング処理の際の印加電圧波形を示す図である。
【図35】通電活性化処理の際の印加電圧波形(a),放出電流Ieの変化(b)を示す図である。
【図36】本実施の形態で用いた垂直型の表面伝導型放出素子の断面図である。
【図37】垂直型の表面伝導型放出素子の製造工程を示す断面図である。
【図38】本実施の形態で用いた表面伝導型放出素子の典型的な特性を示すグラフ図である。
【図39】本実施の形態で用いたマルチ電子源の基板の一部平面図である。
【図40】本実施の形態で用いた図39のマルチ電子源の基板のA−A’断面図である。
【図41】本発明の実施の形態の画像表示装置を用いた多機能画像表示装置のブロック図である。
【図42】本発明の実施の形態の他の構成のシールド電極の製造方法を説明する図である。
【図43】本発明の実施の形態の他の構成のシールド電極の製造方法を説明する図である。
【図44】従来知られた表面伝導型放出素子の一例を示す平面図である。
【図45】本実施の形態の電子放出素子の配線方法を説明する図である。
【図46】本発明の課題を説明する図である。
【図47】本実施の形態の表示パネルのフェースプレートの蛍光体配列を例示した平面図である。

Claims (4)

  1. 共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子を有する電子源と、前記共通配線に電圧を供給することにより前記電子源から放出された電子が照射されて発光する発光体と、前記電子源と前記発光体との間に設けられ、前記複数の表面伝導型電子放出素子の各々から前記発光体の方向に放出される電子を通過させるための複数の開口部を有する導電性の板と、前記導電性の板を支持する支持手段とを具備する画像形成装置であって、
    前記支持手段は、前記共通配線へ電圧を供給する部分から前記共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子の各々までの距離が長くなるに従って、前記導電性の板と前記共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子の各々との間の距離が短くなるように前記導電性の板を支持することを特徴とする画像形成装置
  2. 共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子を有する電子源と、前記共通配線に電圧を供給することにより前記電子源から放出された電子が照射されて発光する発光体と、前記電子源と前記発光体との間に設けられ、前記複数の表面伝導型電子放出素子の各々から前記発光体の方向に放出される電子を通過させるための複数の開口部を有する導電性の板と、前記導電性の板を支持する支持手段とを具備する画像形成装置であって、
    前記支持手段は、前記共通配線へ電圧を供給する部分から前記共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子の各々までにおける配線抵抗による電圧降下量が大きくなるに従って、前記導電性の板と前記共通配線に接続された複数の表面伝導型電子放出素子の各々との間の距離が短くなるように前記導電性の板を支持することを特徴とする画像形成装置。
  3. 前記導電性の板を所定の電位にするための電圧印加手段を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置
  4. テレビジョン放送用表示装置であって、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置と、テレビ受信回路と、を少なくとも備えることを特徴とするテレビジョン放送用表示装置。
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