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JP3569764B2 - 二脚歩行式移動装置およびその歩行制御装置並びに歩行制御方法 - Google Patents

二脚歩行式移動装置およびその歩行制御装置並びに歩行制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は二脚歩行式移動装置に関し、特に安定性及び低エネルギー消費を兼ね備えた歩行を実現するようにした歩行制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、所謂二脚歩行式ロボットは、本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部を有する二本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動可能に支持する関節部と、これらの関節部を揺動させる駆動手段と、要求動作に対応して歩容データを生成する歩容生成部と、この歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御する歩行制御装置と、を備えることにより構成されている。
【0003】
このように構成された二脚歩行式ロボットによれば、歩容生成部により、前もって設定された歩行パターン(以下、歩容という)データを生成して、歩行制御装置がこの歩容データに従って駆動手段を駆動制御することにより、所定の歩行パターンで脚部,膝部及び足部の各関節部を揺動させることによって二脚歩行を実現するようにしている。
その際、歩行姿勢を安定させるために、ロボットの足裏における床反力と重力の合成モーメントがゼロとなる点(以下、ZMP(Zero Moment Point)という)を目標値に収束させる、所謂ZMP補償を行なうことによってZMP規範によりロボットの安定化を図るようにしている。
【0004】
ところで、このような二脚歩行式ロボットにおける各関節部は、それぞれ駆動手段により能動的に駆動する駆動関節、あるいは駆動手段から解放されて自由運動のみを行なう受動関節として構成されている。
【0005】
駆動関節は、関節部を揺動させる駆動手段としての個々のアクチュエータをアクティブに駆動して、脚部及び足部を移動させて歩行を実現するものである。そして、駆動関節は、アクティブに関節部のアクチュエータを駆動することにより、歩容を比較的自由に生成することができるという利点を有している。
しかしながら、駆動関節は、アクチュエータのトルクを積極的に利用していることから、一般的にエネルギー消費が多くなってしまうと共に、関節部が多くなるにつれて、複雑な制御則になってしまうという問題があった。
また、自由な歩容形成が、ZMP規範により著しく制約を受けてしまうという問題があった。
【0006】
これに対して、受動関節は、アクチュエータを使用せずに、重力等の外力により受動的に関節部を揺動させるものである。受動関節は、二脚歩行時に、外力のみによって関節部を揺動させることから、自然安定性を備えており、ZMPが足裏に収まることになる。さらに、受動関節は、消費エネルギーが少なくて済むと共に、制御則が簡単であることから、歩行制御のための計算コストが低減され得る。
しかしながら、受動関節は、重力等の外力に依存して揺動されることから、自由な揺動、そして自由な歩行を実現することが困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このようにして、駆動関節及び受動関節は、互いに相反する利点を有しているが、これらに関する研究はそれぞれ別個に独立して行なわれており、従来の殆どの二脚歩行式ロボットはこの駆動関節のみを使用している。従って、駆動関節のみを備えた二脚歩行式ロボットは、関節部を駆動するためのアクチュエータの消費エネルギーが多くなってしまう。
他方、受動関節のみを備えた歩行ロボットは古くから玩具として知られているが、自由な歩行を行なうものではなく十分な歩行安定性を備えていない。
【0008】
また駆動関節及び受動関節の双方の利点を組み合わせた二脚歩行制御の研究も行なわれているが、これは駆動関節及び受動関節を単純に組み合わせたものであって、駆動関節としての関節部は常に駆動関節として作用し、また受動関節としての関節部は常に受動関節として作用するようになっているため、実用的ではない。
【0009】
この発明は、以上の点にかんがみて、歩行安定性を高めるようにした二脚歩行式移動装置と、その歩行制御装置及び歩行制御方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、この発明の第一の構成によれば、本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部を有する二本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動可能に支持する関節部と、これらの関節部を揺動させる駆動手段と、要求動作に対応して歩容データを生成して、この歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御する歩行制御装置とを備えた二脚歩行式移動装置において、上記歩行制御装置が、歩行動作中の蹴り出し時に両脚部の膝部及び足部の駆動手段を駆動モードで駆動制御させ、一方の脚部が浮き上がっている時に浮き上がっている脚部の膝部及び足部の駆動手段を受動モードで自由運動を行わせることを特徴とする二脚歩行式移動装置により、達成される。
【0011】
本発明による二脚歩行式移動装置は、好ましくは、上記本体が人型ロボットの上体であって頭部及び両手部を備えている。
【0015】
また、上記目的は、この発明の第二の構成によれば、本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部を有する二本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動可能に支持する関節部と、これらの関節部を揺動させる駆動手段とから成る二脚歩行式移動装置に関して、要求動作に対応して生成した歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御する二脚歩行式移動装置の歩行制御装置において、上記歩行制御装置が、歩行動作中の蹴り出し時に両脚部の膝部及び足部の駆動手段を駆動モードで駆動制御させ、一方の脚部が浮き上がっている時に浮き上がっている脚部の膝部及び足部の駆動手段を受動モードで自由運動を行わせることを特徴とする二脚歩行式移動装置の歩行制御装置により達成される。
【0019】
さらに、上記目的は、この発明の第三の構成によれば、本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部分を有する二本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動可能に支持する関節部と、これらの関節部を揺動させる駆動手段と、から成る二脚歩行式移動装置に関して、要求動作に対応して生成した歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御する二脚歩行式移動装置の歩行制御方法において、上記歩行制御方法が、歩行動作中の蹴り出し時に両脚部の膝部及び足部の駆動手段を駆動モードで駆動制御させ、一方の脚部が浮き上がっている時に浮き上がっている脚部の膝部及び足部の駆動手段を受動モードで自由運動を行わせることを特徴とする二脚歩行式移動装置の歩行制御方法により達成される。
【0023】
上記構成によれば、歩行制御装置が、要求動作に対応して歩容データを形成して、この歩容データに基づいて駆動手段を駆動制御する。その際、歩行制御装置は駆動モード及び受動モードを適宜に切り換えて駆動手段を駆動制御するので、駆動モードによって駆動手段により駆動制御される関節部は駆動関節として作用し、また受動モードによって駆動手段により駆動制御される関節部は受動関節として作用することになる。
【0024】
これにより、同じ関節部が、駆動モードまたは受動モードにより駆動制御されることにより、駆動関節または受動関節として作用することになるので、二脚歩行式移動装置の歩行時に、通常は駆動モードで駆動手段を駆動制御し、必要に応じて膝部や足部の関節部を受動モードで駆動手段を駆動制御することにより、駆動関節及び受動関節の利点のみを利用し、欠点を排除することができる
【0026】
歩行動作中の蹴り出し及び着地時に駆動モードに切り換え、遊脚時に受動モードに切り換えて、蹴り出し時に遊脚時に必要なエネルギーの供給を行なうと共に、着地時にはエネルギーの吸収を行なうことにより、衝撃を吸収することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施形態に基づいて、この発明を詳細に説明する。
図1乃至図2は、この発明による二脚歩行式移動装置を適用した二脚歩行式ロボットの一実施形態の構成を示している。
図1において、二脚歩行式ロボット10は、本体である上体11と、上体11の下部両側に取り付けられた中間に膝部12L,12Rを備えた二本の脚部13L,13Rと、各脚部13L,13Rの下端に取り付けられた足部14L,14Rと、を含んでいる。
【0029】
ここで、上記脚部13L,13Rは、それぞれ六個の関節部、即ち上方から順に、上体11に対する腰の脚部回旋用(z軸周り)の関節部15L,15R、腰のロール方向(x軸周り)の関節部16L,16R、腰のピッチ方向(y軸周り)の関節部17L,17R、膝部12L,12Rのピッチ方向の関節部18L,18R、足部14L,14Rに対する足首部のピッチ方向の関節部19L,19R、足首部のロール方向の関節部20L,20Rを備えている。
なお、各関節部15L,15R乃至20L,20Rは、それぞれ関節駆動用モータ(アクチュエータ)により構成されている。
【0030】
このようにして、腰関節は、上記関節部15L,15R,16L,16R,17L,17Rから構成され、また足関節は、関節部19L,19R,20L,20Rから構成されることになる。
さらに、腰関節と膝関節との間は、大腿リンク21L,21Rにより連結されており、また膝関節と足関節との間は、下腿リンク22L,22Rにより連結されている。これにより、二脚歩行式ロボット10の左右両側の脚部13L,13R及び足部14L,14Rは、それぞれ6自由度を与えられることになり、歩行中にこれらの12個の関節部をそれぞれ駆動モータにて適宜の角度に駆動制御することにより、脚部13L,13R,足部14L,14R全体に所望の動作を与えて、任意に三次元空間を歩行することができるように構成されている。
【0031】
なお、上記上体11は、図示の場合、単に箱状に示されているが、実際には、頭部や両手を備えていてもよい。
【0032】
図2は図1に示した二脚歩行式ロボット10における歩行制御装置30の構成を示している。図2において、歩行制御装置30は、次歩の位置を指定する動作計画部31と、この次歩の位置に基づいて歩容生成のためのパラメータを算出する歩容安定部32と、歩容安定部32からのパラメータに基づいて歩容データを生成する歩容生成部33と、この歩容データに基づいて駆動手段、即ち上述した各関節部、即ち関節駆動用モータ15L,15R乃至20L,20Rを駆動制御する制御部34と、ロボットの各関節部の角度を検出する角度計測ユニット35と、を備えている。
尚、二脚歩行式ロボット10の座標系として、前後方向をx方向(前方+),横方向をy方向(内方+)そして上下方向をz方向(上方+)とするxyz座標系を使用する。
【0033】
上記動作計画部31は、要求動作に対応して次歩における支持脚足首中心からの路面平面座標(X,Y)を指定する。
上記歩容安定部32は、この路面平面座標(X,Y)に基づいて歩容生成のためのパラメータを算出するようになっている。
ここで、動作計画部31及び歩容安定部32は、対となって動作し、一歩行周期で歩行開始(蹴り出し)時及び着地時の二回サンプリングを行なってサンプリング情報をホールドしている。
そして、歩容安定部32は、路面平面座標(X,Y)から歩容生成のためのパラメータを算出する際に、後述する角度計測ユニット35からの姿勢情報θrealを参照して、歩容生成のためのパラメータの算出を行なう。
【0034】
上記歩容生成部33は、歩容安定部32からのパラメータに基づいて、二脚歩行式ロボット10の歩行に必要な各関節部15L,15R乃至20L,20Rの目標角度軌道,目標角速度,目標角加速度を含む歩容データとしてのベクトルθref及びモード信号を生成するようになっている。
【0035】
上記制御部34は、歩容生成部33からの歩容データであるベクトルθref及びモード信号に基づいて、各関節駆動用モータの制御信号、即ち角度ベクトルθを生成して、駆動モードまたは受動モードにて各関節駆動用モータを駆動制御するようになっている。
ここで、制御部34は、駆動モード時には、各関節駆動用モータに対してエネルギーを供給しまたは吸収するように、従来の駆動関節と同様に駆動制御する。また、制御部34は、受動モード時には、各関節駆動用モータに対して、既に供給されているエネルギーを利用して、自由運動を行なうことにより、従来の受動関節と同様に駆動制御するようになっている。
【0036】
上記角度計測ユニット35は、各関節部15L,15R乃至20L,20Rの関節駆動用モータに備えられた、例えばロータリエンコーダ等により各関節駆動用モータの角度情報が入力されることにより、各関節駆動用モータの角度位置、即ち角度及び角速度に関する状態情報、即ちロボット10の姿勢情報θrealを計測して、歩容安定部32に出力するようになっている。角度計測ユニット35は、前述した歩容生成部33と対となって動作し、サンプリングを行なうようになっている。
【0037】
ここで、二脚歩行式ロボット10における歩行は、図3に示すように、一歩行周期に関して、時間的に三つの位相に分解して取り扱うことができる。
図3(A)は、位相1として両足で地面に接地している両脚支持期であって、後方の足を蹴り出しにより前方に移動させようとする蹴り出し時を示している。この位相1は、歩行系に必要なエネルギーの供給を行なうエネルギー供給期である。このとき、両脚の歩行系は、1リンクバネ系として駆動モードで駆動制御される。
【0038】
図3(B)は、位相2として片足で地面に接地している単脚支持期であって、一方の足が地面から浮き上がっている遊脚時を示している。この位相2は、遊脚に関して、その前に供給されたエネルギーにより足首部及び膝部の関節部が受動関節として自由運動を行なうように制御される。このとき、両脚の歩行系は、3リンク系として受動モードで駆動制御される。
【0039】
図3(C)は、位相3として、再び両足で地面に接地している両脚支持期であって、前方の足を着地させようとする着地時を示している。この位相3は、歩行系から着地時のエネルギーを吸収するエネルギー吸収期である。このとき、両脚の歩行系は、1リンクバネ系として駆動モードで駆動制御される。
また、連続歩行時には、位相3の後の左右の脚交換により、次の位相1が連続することになる。
【0040】
従って、歩容安定部32は、上記位相3の終端期にて、次歩の位相2で必要となるエネルギーを、ロボット10の姿勢や状態を参照して算出するようになっている。
ここで、位相2で必要なエネルギーの算出について説明する。
先ず、歩容安定部32は、図4に示すように、動作計画部31からの路面平面座標(X,Y)と、角度計測ユニット35からの姿勢情報であるベクトルθrealから、位相1におけるパラメータとして、1リンクバネ系のバネ剛性Kまたは回転バネ自然長φを決定する。
【0041】
ここで、位相3における歩行系の損失エネルギー及び獲得エネルギーについて説明する。
位相3で環境により損失するエネルギーを、図5に示す簡単な脚切換えモデルにより求める。
図5において、脚切換えモデルを2リンク一質点モデルとして、幾何学的に脚切換えモデルによるエネルギー損失Eex−lossを求めると、
【数1】
Figure 0003569764
となる。ここで、Lfは脚切換え前の長さ,Liは脚切換え後の長さ,qfは脚切換え前の角度,qiは脚切換え後の角度である。
【0042】
より詳細には、一歩行周期におけるエネルギー損失Eall−lossは、
【数2】
Figure 0003569764
となる。ここで、Evi−lossは、関節駆動用モータの摩擦によるエネルギー損失であり、Edi−lossは、内部エネルギーの損失として表わされる外乱である。
そして、上記結果は、xz平面及びyz平面の何れにも適用することができるので、次歩の位相1において、xz平面及びyz平面に関して、それぞれ上記Eall−lossを補完することによって、歩行運動を続けることができる。
【0043】
これに対して、例えば下り坂の歩行時等においては、位相2において、歩行系に対してエネルギーが注入される場合には、同様にして余剰分のエネルギーを求めて、上記式(1)を利用して、次の脚位置を求めることにより、着地位置によって任意のエネルギー損失を発生させることも可能である。
【0044】
このようなエネルギー損失の補完を行なうために、歩容安定部32は、歩行系のエネルギーを一定に制御するように、着地位置に関係なく上記パラメータK及びφを算出することにより、歩行安定性を保持するようになっている。
【0045】
次に、上記制御部34による駆動制御について説明する。
上記制御部34は、モード信号が受動モードの場合には、仮想コンプライアンス制御を行なうと共に、モード信号が駆動モードの場合には、仮想アクチュエータ制御を行なうようになっている。
【0046】
ここで、上記仮想コンプライアンス制御は、インピーダンス制御の制御手法を利用して、以下のようにして行なわれる。
即ち、図6に示すように、制御部34に歩容データとしてのベクトルθrefが入力されており、制御部34からは角度ベクトルθが関節駆動用モータに出力されるようになっている。そして、この角度情報θが、環境剛性行列(−Ke)により、τextに変換され、外部からのτrefが加算されて、力制御対角補償器行列Gに入力される。
【0047】
そして、力制御対角補償器行列Gにおいては、
【数3】
Figure 0003569764
の演算が行なわれ、ベクトルθrefに加算され、フィードバックされるようになっている。
これにより、例えばτref=0のとき、
【数4】
Figure 0003569764
に示す制御則が得られる。
【0048】
ここで、受動関節のためには、剛性係数行列K=0,粘性係数行列D=0として、慣性行列Mを実際の運動に合わせる。例えば運動として1リンクモデルを利用すると、上記式(3)は、一次元となり、実時間での計算を容易に行なうことが可能となる。
このようにして、受動モードにおいて、インピーダンス制御の特殊系を利用して、関節駆動用モータの仮想コンプライアンス制御を行なうことにより、対応する駆動関節から成る関節部を、受動関節として動作させることができる。これにより、歩行系をより一層安定化させることが可能となる。
【0049】
これに対して、仮想アクチュエータ制御は、例えば図7に示すように、符号Aで示すアクチュエータを実現したい場合、実際には符号Bで示すアクチュエータの駆動制御によって、その動きを実現するものである。これにより、例えば自由度を小さくして、同じ動きを実現することが可能となると共に、支持脚足首にトルクを加えて駆動する必要がなくなるので、ZMP安定性が保証されることになる。
【0050】
本発明実施形態による二脚歩行式ロボット10は以上のように構成されており、歩行動作は以下のように行なわれる。
先ず動作計画部31が、要求動作に対応して、次歩における支持脚足首中心からの路面平面位置(X,Y)を指定して、歩容安定部32に出力する。これにより、歩容安定部32は、この路面平面位置(X,Y)と、角度計測ユニット35からの姿勢情報θrealとから、歩容生成のためのパラメータを算出して、歩容生成部33に出力する。
そして、歩容生成部33は、歩容安定部32からのパラメータに基づいて、歩容データであるベクトルθrefを生成して、制御部34に出力する。
【0051】
これにより、制御部34は、ベクトルθrefに基づいて各関節駆動用モータの制御信号、即ち角度ベクトルθを生成し、この角度ベクトル及びモード信号に基づいて、各関節部の関節駆動用モータを駆動モードまたは受動モードで駆動制御する。このようにして、二脚歩行式ロボット10は要求動作に対応して歩行動作を行なうことになる。
【0052】
この場合、二脚歩行式ロボット10において、各関節駆動用モータの駆動制御の際に、歩容安定部32が、そのときのロボットの姿勢情報を参照して、路面平面位置(X,Y)から歩容生成に必要なパラメータを生成するので、歩容生成部33が生成する歩容データは、そのときのロボットの姿勢及び状態から、必要なエネルギーを供給するように生成されることになる。
従って、二脚歩行において、一方の脚部が地面か浮き上がって遊脚となっている単脚支持期において、当該一方の脚部の膝部及び足部の関節部が受動関節として自由運動を行なうことができる。
【0053】
その際、受動関節として動作する関節駆動用モータにはエネルギーを供給する必要がないことから、消費エネルギーが低減されることになる。
また、受動関節として動作する関節駆動用モータに関する制御計算を行なう必要がないことから、計算コストが低減され得ると共に、歩容データの生成が容易に行なわれ得ることになる。
【0054】
次に、本発明による二脚歩行式ロボット10に関する数値シミュレーション及び実機実験について説明する。
先ず、yz平面における実際の歩容形成の数値シミュレーションを行なった結果を示す。
上述した二脚歩行式ロボット10により、yz平面内での動的足踏み動作を行なわせるように、前記位相1及び位相3にて、バネ定数を1.62×10−1(Nm/度),バネの自然長を6度として、4歩行周期の歩容を形成した。
【0055】
その結果、図8に示すようなθの変化が得られた。また、形成された歩容のスティック線図は、図9に示す通りである。これにより、各歩行周期の始めと終わりの約120m秒の間、両脚支持期になっていることが分かる。従って、単なる一リンク系の軌道とは異なり、各歩行周期の始端及び終端の部分がなめらかなS字曲線を示しているので、関節駆動用モータへの負荷が低下して不連続にならないので、歩行系が安定することになる。
【0056】
次に、実機実験の結果を示す。
実機実験では、二脚歩行式ロボット10として、下半身の自由度12,全体質量2.0kg,全高35.6cmであって、各関節部の関節駆動用モータとして最大トルク±1.27Nmの模型用サーボモータを備えたロボットを使用して、8歩行周期の定常足踏み運動を行なわせて、ロボット本体11のyz平面における角度を測定した。
その結果、図10に示すように、本発明による位相1,位相2及び位相3による歩行制御(実線図示)の場合には、位相2のみの歩行制御(点線図示)の場合と比較して、安定した各速度軌道を示すことが分かる。即ち、位相1のエネルギー供給による「蹴り出し」によって、連続歩行安定性が保証されていることが分かり、本発明による歩行制御の有効性が確認された。
【0057】
ここで、上記動作中の足裏の床反力を例えば6軸力センサにより測定したところ、図10に示すような床反力の変化が得られた。これにより、位相3におけるエネルギー吸収動作が、衝撃吸収と同様に作用していることが分かると共に、床反力が足踏み運動の各歩行周期にて比較的安定した軌道を示すことも分かり、位相3におけるエネルギー吸収動作の有効性が確認された。
【0058】
このようにして、本発明実施形態による二脚歩行式ロボット10によれば、例えば膝部及び足部の関節部を駆動関節としてまたは受動関節として、適宜に動作モードを切り換えて駆動制御することによって、歩行制御に柔軟性をもたせて歩行安定性を向上させることができると共に、歩行動作における消費電力を低減することができる。
【0059】
上述した実施形態においては、本発明を二脚歩行式ロボットに適用した場合について説明したが、これに限らず、他の各種機器を二本足で支持する共に、この二本足で歩行するようにした、二脚歩行式移動装置に対して本発明を適用し得ることは明らかである。
【0060】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、同じ関節部が、駆動モードまたは受動モードにより駆動制御されて、駆動関節または受動関節として作用することになるので、二脚歩行式移動装置の歩行時に、通常は駆動モードで駆動手段を駆動制御し、必要に応じて膝部や足部の関節部を受動モードで駆動手段を駆動制御することによって駆動関節及び受動関節の利点のみを利用し、欠点を排除することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による二脚歩行式ロボットの一実施形態の機械的構成を示す概略図である。
【図2】図1の二脚歩行式ロボットにおける歩行制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の二脚歩行式ロボットにおける歩行時の三つの位相を示す側面図及び正面図である。
【図4】図1の二脚歩行式ロボットの位相2におけるエネルギー損失を示す概略図である。
【図5】図1の二脚歩行式ロボットにおける脚切換えモデルを示す図である。
【図6】図1の二脚歩行式ロボットの歩行制御装置におけるコンプライアンス制御の制御則を示す図である。
【図7】図1の二脚歩行式ロボットにおける仮想アクチュエータ制御を示す概略図である。
【図8】図1の二脚歩行式ロボットにおける足踏み動作の数値シミュレーションにより算出されたθの変化を示すグラフである。
【図9】図8の数値シミュレーションにおけるスティック線図である。
【図10】図1の二脚歩行式ロボットの実機実験におけるyz平面におけるロボット本体の角度変化を示す図である。
【図11】図10の実機実験におけるロボット足裏の床反力の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
10 二脚歩行式ロボット
11 本体
12L,12R 膝部
13L,13R 脚部
14L,14R 足部
15L,15R乃至20L,20R 関節部(関節駆動用モータ)
21L,21R 大腿部
22L,22R 下腿部
30 歩行制御装置
31 動作計画部
32 歩容安定部
33 歩容生成部
34 制御部
35 角度計測ユニット

Claims (4)

  1. 本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部を有する二本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動可能に支持する関節部と、これらの関節部を揺動させる駆動手段と、要求動作に対応して歩容データを生成して、この歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御する歩行制御装置と、を備えた二脚歩行式移動装置において、
    上記歩行制御装置が、歩行動作中の蹴り出し時に両脚部の膝部及び足部の駆動手段を駆動モードで駆動制御させ、一方の脚部が浮き上がっている時に浮き上がっている脚部の膝部及び足部の駆動手段を受動モードで自由運動を行わせることを特徴とする、二脚歩行式移動装置。
  2. 前記本体が人型ロボットの上体であって、頭部及び両手部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の二脚歩行式移動装置。
  3. 本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部分を有する二本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動可能に支持する関節部と、これらの関節部を揺動させる駆動手段と、から成る二脚歩行式移動装置に関して、要求動作に対応して生成した歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御する二脚歩行式移動装置の歩行制御装置において、
    上記歩行制御装置が、歩行動作中の蹴り出し時に両脚部の膝部及び足部の駆動手段を駆動モードで駆動制御させ、一方の脚部が浮き上がっている時に浮き上がっている脚部の膝部及び足部の駆動手段を受動モードで自由運動を行わせることを特徴とする、二脚歩行式移動装置の歩行制御装置。
  4. 本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部を有する二本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動可能に支持する関節部と、これらの関節部を揺動させる駆動手段と、から成る二脚歩行式移動装置に関して、要求動作に対応して生成した歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御する二脚歩行式移動装置の歩行制御方法において、
    上記歩行制御方法が、歩行動作中の蹴り出し時に両脚部の膝部及び足部の駆動手段を駆動モードで駆動制御させ、一方の脚部が浮き上がっている時に浮き上がっている脚部の膝部及び足部の駆動手段を受動モードで自由運動を行わせることを特徴とする、二脚歩行式移動装置の歩行制御方法。
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