JP3563099B2 - ポリアミドの製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なポリアミドの製造法に関する。詳しくは、力学性能、耐熱性、低吸水性、耐薬品性などの、エンジニアリングプラスチックとして要求される性能に優れるばかりでなく、さらに、成形中あるいは実使用時におけるガス発生が著しく少ない半芳香族ポリアミドの製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からナイロン6、ナイロン66などに代表される結晶性ポリアミドは、その優れた特性と溶融成形の容易さから、衣料用、産業資材用繊維、あるいは汎用のエンジニアリングプラスチックとして広く用いられているが、一方では、耐熱性不足、吸水による寸法安定性不良などの問題点も指摘されている。特に近年の表面実装技術(SMT)の発展に伴うリフローハンダ耐熱性を必要とする電気・電子分野、あるいは年々耐熱性への要求が高まる自動車のエンジンルーム部品などにおいては、従来のポリアミドでの使用が困難となってきており、より耐熱性、寸法安定性、機械特性、物理化学特性に優れたポリアミドへの要求が高まっている。
【0003】
このような世の中の要求に対し、テレフタル酸と1,6−ヘキサンジアミンを主成分とする半芳香族ポリアミドが種々提案され、一部は実用化されている。しかしながら、テレフタル酸と1,6−ヘキサンジアミンからなるポリアミド(以下、PA6−Tと略称する)は、ポリマーの分解温度を超える370℃付近に融点があるため、溶融成形が困難であり、実用に耐えるものではない。そのため実際には、アジピン酸、イソフタル酸などのジカルボン酸成分、あるいはナイロン6などの脂肪族ポリアミドを30〜40モル%共重合することにより、実使用可能温度領域、すなわち280〜320℃程度にまで低融点化した組成で用いられているのが現状である。
【0004】
このように、通常、高耐熱性の半芳香族ポリアミドはその分解温度と融点が接近した組成で使用されるので、従来の重合法、例えばバッチ式溶融重合法などではポリマーの分解を伴わずに重合を行い高分子化する事は困難であった。そのために、半芳香族ポリアミドの重合方法として多くの方法が提案されてきた。
【0005】
高分子化学,Vol.29,No.323,159−163(1972)には、PA6−Tの製造法として、まずナイロン塩よりオリゴマーを合成し、ついで固相重縮合法により高分子化することにより、顕著な着色を伴わずに重縮合反応が進行することが報告されている。また、特開昭60−163928号公報には、この方法が15〜40モル%の第3成分を共重合したPA6−Tの場合にも適用できることが開示されている。
【0006】
特開昭59−161428号公報および特開昭59−155426号公報には、半芳香族ポリアミドの製造法として、芳香族ジカルボン酸成分単位およびアルキレンジアミン成分単位から形成される低次縮合物、または芳香族ジカルボン酸成分単位と脂肪族ジカルボン酸成分単位およびアルキレンジアミン成分単位から形成される低次縮合物を、溶融剪断条件下に重縮合反応を行う方法が提案されている。また、特開昭61−228022号公報には、半芳香族ポリアミドの製造法として、芳香族ジカルボン酸成分単位およびアルキレンジアミン成分単位から形成される低次縮合物を、溶融剪断条件下に重縮合反応を行いプレポリマーとした後に、固相重合により高重合度化する方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らの研究によれば、上記のような従来公知の半芳香族ポリアミドの重合法では、ジカルボン酸成分の60〜100モル%がテレフタル酸であるジカルボン酸成分と、ジアミン成分の60〜100モル%が炭素数6〜18の脂肪族ジアミンであるジアミン成分とからなるポリアミドを重合した場合、依然として重合の制御が困難であり、得られるポリマーの品質や成形性は十分に満足できるものではなかった。
【0008】
本発明の目的は、力学性能、耐熱性、低吸水性、耐薬品性などの性能に優れ、さらに、成形中あるいは実使用時におけるガス発生が著しく少ないポリアミドが得られる製造法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、ジカルボン酸成分の60〜100モル%がテレフタル酸であるジカルボン酸成分と、ジアミン成分の60〜100モル%が炭素数6〜18の脂肪族ジアミンであるジアミン成分とからなるポリアミドを製造するにあたり、原料混合物を加熱して特定の[η]の低次縮合物とした後に、特定の温度範囲で固相重合により高重合度化して特定の[η]のプレポリマーとし、さらに溶融押出機で高重合度化することによって初めて、力学性能、耐熱性、低吸水性、耐薬品性などの性能に優れ、成形中あるいは実使用時におけるガス発生が著しく少ないポリアミドが得られることを見出して本発明を完成した。
【0010】
本発明によれば、上記の目的は、ジカルボン酸成分の60〜100モル%がテレフタル酸であるジカルボン酸成分と、ジアミン成分の60〜100モル%が炭素数6〜18の脂肪族ジアミン成分とからなる結晶性ポリアミドを製造するにあたって、第1段階として、低次縮合物[A]を合成し、第2段階として該低次縮合物[A]を固相状態で加熱し、重縮合させてプレポリマー[B]とし、第3段階として該プレポリマー[B]を溶融押出機でさらに高重合度化してポリアミド[C]を得る方法であって、
(1)該低次縮合物[A]の、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]Aが0.1〜1.0dl/gであり、かつモノマーが実質上残存していないこと、
(2)該プレポリマー[B]の、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]Bが0.3〜2.5dl/gであり、[η]B/[η]A>1であること、
(3)該ポリアミド[C]の、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]Cが0.4〜3.0dl/gであり、1<[η]C/[η]B<1.3であること、および
(4)第2段階の固相状態での加熱温度[T1]が該低次縮合物[A]の融点ないし融点から150℃低い温度範囲にあり、かつ第3段階の溶融押出機での加熱温度[T2]が該プレポリマー[B]の融点ないし融点から150℃高い温度温度範囲にあることを特徴とするポリアミドの製造法を提供することにより達成される。
以下、本発明を具体的に説明する。
【0011】
本発明の方法においては、まず第1段階として、原料であるテレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、炭素数6〜18の脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分を、水、アルコールなどの溶媒中で150〜350℃、好ましくは200〜300℃に加熱することにより、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]Aが0.1〜1.0dl/gであり、かつモノマーが実質上残存していない低次縮合物[A]を合成する。
【0012】
上記低次縮合物中の残存モノマーは、GPC法により解析することができる。例えば、Macromol.Chem.,Rapid Commun.1,397−402(1980)に示されているように、低次縮合物[A]を無水トリフルオロ酢酸によりトリフルオロアセチル化した後、THF溶媒を用いてGPC法により測定することができる。以下で述べる分子量分布に関しても同じ方法で測定できる。さらに簡便には、低次縮合物[A]を濃硫酸中に0.2g/dl程度の濃度で溶解させたときに、残存モノマーがあれば未溶解部分が生ずることからも判定可能である。
【0013】
該低次縮合物[A]の[η]Aが0.1〜1.0dl/gであり、かつモノマーが残存していない場合には、次の段階の固相重合が円滑に進行し、得られるポリアミドの品質も良い。低次縮合物[A]のより好ましい[η]Aは0.15〜0.6dl/gである。この範囲であれば、低次縮合物[A]の反応容器からの取りだしがさらに容易となり、最終的に分子量分布がシャープで十分な力学強度を持つポリアミドが得られるようになる。通常、この第1段階の反応はオートクレーブを用いて行い、加熱前に反応系内を窒素などの不活性ガスで置換するのが好ましい。また、上記ジカルボン酸成分およびジアミン成分は、塩として仕込んでも良いし、そのままモノマーを直接仕込んでも差支えない。
【0014】
原料のジカルボン酸成分は、テレフタル酸成分が60モル%以上であり、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。テレフタル酸成分が60モル%未満の場合には、得られるポリアミドの耐熱性、耐薬品性などの諸物性が低下するため好ましくない。テレフタル酸成分以外の他のジカルボン酸成分としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらのうち芳香族ジカルボン酸が好ましく使用される。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸を溶融成形が可能な範囲内で用いることもできる。
【0015】
原料のジアミン成分は、炭素数6〜18の脂肪族ジアミン成分が60モル%以上であり、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。炭素数6〜18の脂肪族ジアミン成分の例としては、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの直鎖脂肪族ジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの分岐を有する鎖状脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミンなど、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらのうち、最終的に得られるポリマーの性能が優れるという理由から、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンが好ましい。より好ましくは、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミンが好ましく、特に好ましいのは1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミンあるいはこれらの混合物である。
炭素数6〜18の脂肪族ジアミン成分以外の他のジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミン、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。
【0016】
低次縮合物[A]を合成する際に、重縮合速度の増加および重合時の劣化防止のために、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、またはその塩またはエステルなどのリン系触媒を添加するのが好ましい。このうち、生成するポリマーの品質から、次亜リン酸誘導体が好ましく、特に次亜リン酸ナトリウムが価格および取扱いの容易さから好ましい。これらの触媒の添加量はジカルボン酸およびジアミンの総量に対して、0.01〜5重量%であるのが好ましく、0.05〜2重量%であるのがより好ましく、0.07〜1重量%であるのが特に好ましい。添加量が0.01重量%より少ないと、重合速度がこれらの触媒を添加しない場合とほとんど変わらず、着色、劣化しやすいなど、得られるポリマーの品質も十分なものではない。一方、添加量が5重量%より多いと、逆に重合速度が低下し、着色、ゲル化などの劣化を伴ったポリマーしか得られなくなるので好ましくない。
【0017】
さらに、低次縮合物[A]を合成する際に、分子量調節および溶融安定性向上のために末端封止剤を添加することが好ましい。末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、反応性および封止末端の安定性などの点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取扱いの容易さなどの点から、モノカルボン酸がより好ましい。その他、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類なども使用できる。
【0018】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらの内、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が特に好ましい。
【0019】
本発明のポリアミドのアミノ基末端は、これらのモノカルボン酸で封止されることにより、下記の一般式(I)で示される封止末端を形成する。
【0020】
【化1】
(式中、Rは上記のモノカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基であり、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基である。)
【0021】
末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミンなどの芳香族モノアミン、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらの内、反応性、沸点、封止末端の安定性および価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが特に好ましい。
【0022】
本発明のポリアミドのカルボキシル基末端は、これらのモノアミンで封止されることにより、下記の一般式(II)で示される封止末端を形成する。
【0023】
【化2】
(式中、R1は上記のモノアミンからアミノ基を除いた残基であり、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基である。R2は水素原子または上記のモノアミンからアミノ基を除いた残基であり、好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基である。)
【0024】
本発明のポリアミドを製造する際に用いることができる末端封止剤の使用量は、用いる末端封止剤の反応性、沸点、反応装置、反応条件などによって変化するが、通常、ジカルボン酸とジアミンの総モル数に対して0.1〜15モル%の範囲内で使用される。
【0025】
次に、本発明の製造法の第2段階として、低次縮合物[A]を固相重合により高重合度化してプレポリマー[B]とする。プレポリマー[B]の濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]Bの値は、0.3〜2.5dl/gであり、かつ該低次縮合物[A]の極限粘度[η]A値と比較して[η]B/[η]A>1でなければならない。このような条件を満足することにより、次の段階での溶融押出機での重合が容易になり、安定した品質のポリアミドが得られる。固相重合は窒素などの不活性ガス流通下あるいは減圧下で、加熱して行う。不活性ガス流通下で反応を行う場合には、流通量をポリマー1kgに対して10ml/分以上とするのが好ましい。一方、減圧下で反応を行う場合には、減圧度を5mmHg以下とするのが好ましい。また、固相重合温度は低次縮合物[A]の融点ないし融点から150℃低い範囲であるが、より好ましくは、融点から10℃低い温度ないし融点から120℃低い温度である。固相重合温度がこの範囲であると、十分な重合速度が得られ、得られるポリアミドの品質も良い。
【0026】
本発明の製造法の第3段階では、上記プレポリマー[B]を溶融押出機を用いてさらに溶融剪断条件下で反応させ、ポリアミド[C]とする。ポリアミド[C]の濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]Cの値は0.4〜3.0dl/gであり、かつ該プレポリマー[B]の極限粘度[η]B値と比較して1<[η]C/[η]B<1.3である。このような条件を満足することにより、力学性能、耐熱性、低吸水性、耐薬品性などの性能に優れ、さらに、成形中あるいは実使用時におけるガス発生が著しく少ないポリアミドを得ることができる。溶融剪断条件下での重合は押出機を用いて行い、好ましくはベント付き押出機を用いて、ベントから減圧吸引しながら行う。溶融押出機による重合の温度はプレポリマー[B]の融点ないし融点から150℃高い温度範囲である。好ましくは融点より10℃高い温度ないし融点から100℃高い温度範囲である。さらに、押出機中における樹脂の溶融滞留時間は15分間以下であり、好ましくは10分間以下である。溶融押出機による重合条件がこの範囲であると、最終的に得られるポリアミドの品質が上記のように優れており、この範囲以外であれば、重合性や生成するポリアミドの品質が悪くなる。
さらに、必要に応じて、本発明の重合法の第3段階は、押出機のサイドフィーダーよりガラス繊維や無機粉状フィラー、その他の添加剤を添加しながら行うことも可能である。
【0027】
本発明の、ポリアミドの製造法は、以上のように、固相重合により最終ポリマーに近い重合度まで高重合度化し、最終的に溶融剪断条件下で重縮合反応を完結させることを特徴としている。
【0028】
本発明の製造法は、最終段階の溶融押出機による重合を行わない通常の固相重合法に比べて、(1)成形条件の変化に対する許容量が大きく、また、成形時に未溶融部分や気泡発生や重合度変化がほとんどなく、射出成形品の品質のばらつきを低下できる、(2)射出成形時における、スクリューへの樹脂の噛み込み性、可塑性が良好で、きしみ音などの発生がないなどの点で有利である。
【0029】
本発明の製造法は、第2段階の固相重合を行わない通常の溶融押出機による重合法に比べて、(1)高温溶融状態での滞留時間が短く、重合中の樹脂の劣化を最小限に防ぐことができ、結果として高品質のポリマーを得ることができる、(2)押出機による重合時に、発生するガス量が著しく小さく、作業環境、押出機の保守が非常に容易であるなどの点で有利である。
【0030】
本発明のポリアミドの製造法において、前記以外の添加物、例えば従来公知の、着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、可塑剤、潤滑剤などの他の添加剤を重縮合反応時の任意の段階において、またはその後に添加することもできる。
【0031】
また、本発明の製造法により得られるポリアミドは、ガラス繊維、炭素繊維、無機粉末状フィラー、有機粉末状フィラーなどを配合した強化系、他種ポリマーとのアロイなどの形態でも使用することができ、射出成形、ブロー成形、押出し成形、圧縮成形、延伸、真空成形などの成形法が適用できる。さらにエンジニアリングプラスチックとして通常の成形体のみならず、フィルムや繊維の形態にも成形可能であり、産業資材、工業材料、家庭用品などに好適に使用することができる。
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。なお、実施例中の極限粘度[η]、モノマー含有量、引張強度、引張伸び、引張り強度のバラツキ、成形品からのガス発生量は以下の方法により測定した。
【0033】
極限粘度[η]:
濃硫酸中、30℃にて、0.05,0.1,0.2,0.4g/dlの濃度の試料の固有粘度(ηinh )を測定し、これを濃度0に外挿した値を極限粘度[η]とした。
ηinh =[ln(t1/t0)]/c
〔式中、ηinh は固有粘度(dl/g)を表し、t0は溶媒の流下時間(秒)を表し、t1は試料溶液の流下時間(秒)を表し、cは溶液中の試料の濃度(g/dl)を表す。〕
【0034】
モノマー含有量:低次縮合物[A]をMacromol. Chem., Rapid Commun. 1, 397−402 (1980)に記載されている方法でトリフルオロアセチル化した後に、THFを溶媒として、GPC法により測定した。全ピーク面積に対するモノマーのピーク面積の百分率をモノマー含有量とした。
【0035】
引張強度、引張伸度:
ポリアミドの融点より約20℃高い温度で射出成形した絶乾状態の試験片を、以下の方法で測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
引張強度のバラツキ:
上記の方法で引張試験を10回行い、標準偏差によりバラツキの度合いを評価した。
【0038】
成形品からのガス発生量:
120℃で5日間真空乾燥した射出成形試験片(127×14×6.4mm)を、窒素下、200℃で10時間加熱したときの重量減少率(重量%)を発生ガス量とした。
【0039】
実施例1
テレフタル酸3272.9g(19.70モル)、1,9−ノナンジアミン2849.2g(18.0モル)、2−メチル−1,8−オクタンジアミン316.58g(2.0モル)、安息香酸73.27g(0.60モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物6.5g(原料に対して0.1重量%)および蒸留水6リットルを内容積20リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間撹拌し、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは22kg/cm2まで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を22kg/cm2に保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を10kg/cm2まで下げ、更に1時間反応させた。その後、2mm以下の大きさまで粉砕して、100℃、減圧下で12時間乾燥し、極限粘度[η]Aが0.25dl/gの低次縮合物を得た。
これをバッチ式(タンブラー型)固相重合装置を用いて、230℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合し、極限粘度[η]Bが1.28dl/gのプレポリマーを得た。そして、得られたプレポリマーを120℃で24時間減圧乾燥した後に、2軸押出機(スクリュー径40mm、L/D=28、バレル温度=310/320/330/330/330/330/330/330℃、第7ゾーンは減圧(10mmHg)ベント、回転数60rpm)に、10kg/時の速度で供給して溶融重縮合を行い、極限粘度[η]C=1.32dl/gのポリアミドを得た。このポリアミドを、シリンダ温度340℃、金型温度100℃で射出成形し、得られた成形品の各種物性値を測定した。得られた結果を下記の表2に示す。
【0040】
実施例2、3
表2に示したジアミン成分とジカルボン酸成分を使用した以外は、実施例1と同じ条件でポリアミドを重合し、物性を測定した。得られた結果を下記の表2に示す。
【0041】
比較例1
第1段階の、低次縮合物を合成する段階において、100℃で30分間撹拌し、1時間かけて内部温度を150℃に昇温した。この時、オートクレーブは6kg/cm 2 まで昇圧した。そのまま150℃で水蒸気を徐々に抜いて圧力を5〜6kg/cm 2 に保ちながら6時間反応させて、[η]A =0.07dl/gの低次縮合物を得た。その他は実施例1と同じ条件でポリアミドを重合し、物性を測定した。得られた結果を下記の表2に示す。
【0042】
比較例2
実施例1で得られた低次縮合物を、固相重合を行わずに直接2軸押出機を用いて溶融重合を行った。押出機は実施例1と同じものを使用し、バレル温度は310/320/330/330/340/340/330/330℃、第2、第4、第7ゾーンを大気中開放ベント、回転数60rpmとし、10kg/時の速度で低次縮合物を供給して溶融重縮合を行い、極限粘度[η]C=1.22dl/gのポリアミドを得た。物性測定結果を表2に示す。
【0043】
比較例3
実施例1で、固相重合を10mmHg減圧下、235℃、10時間の条件で行い、[η]B=1.36dl/gのプレポリマーを得た。その後、溶融押出機重合を行わずに射出成形して、物性を測定した。得られた結果を下記の表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
【本発明の効果】
本発明の製造法により、力学性能、耐熱性、低吸水性、耐薬品性などの諸性能に優れ、さらに、成形中あるいは実使用時におけるガス発生が著しく少ないポリアミドを得ることができる。
Claims (3)
- ジカルボン酸成分の60〜100モル%がテレフタル酸であるジカルボン酸成分と、ジアミン成分の60〜100モル%が炭素数6〜18の脂肪族ジアミン成分とからなる結晶性ポリアミドを製造するにあたって、第1段階として、低次縮合物[A]を合成し、第2段階として該低次縮合物[A]を固相状態で加熱し、重縮合させてプレポリマー[B]とし、第3段階として該プレポリマー[B]を溶融押出機でさらに高重合度化してポリアミド[C]を得る方法であって、
(1)該低次縮合物[A]の、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]Aが0.1〜1.0dl/gであり、かつモノマーが実質上残存していないこと、
(2)該プレポリマー[B]の、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]Bが0.3〜2.5dl/gであり、[η]B/[η]A>1であること、
(3)該ポリアミド[C]の、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]Cが0.4〜3.0dl/gであり、1<[η]C/[η]B<1.3であること、および
(4)第2段階の固相状態での加熱温度[T1]が該低次縮合物[A]の融点ないし融点から150℃低い温度範囲にあり、かつ第3段階の溶融押出機での加熱温度[T2]が該プレポリマー[B]の融点ないし融点から150℃高い温度範囲にあることを特徴とするポリアミドの製造法。 - 末端封止剤を併用して、少なくともアミノ基末端またはカルボキシル基末端が封止されたポリアミドを製造する請求項1に記載のポリアミドの製造方法。
- 第1段階において、末端封止剤の存在下に低次縮合物 [ A ] の合成を行う、請求項1または2に記載のポリアミドの製造方法。
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