JP3556348B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な潤滑油組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、優れた低摩耗性及び低摩擦性を有し、かつ、窒素酸化物ガスを含む空気雰囲気中でも劣化せず、長期にわたる低摩擦性の持続性を有する内燃機関、自動変速機、緩衝器、パワーステアリングなどの潤滑油、特に内燃機関用潤滑油として好適に用いることができる潤滑油組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関や、自動変速機、緩衝器、パワーステアリングなどの駆動系機器、ギヤなどには、その作動を円滑にするために潤滑油が用いられている。特に内燃機関用潤滑油は、主としてピストンリングとシリンダライナ、クランク軸やコネクティングロッドの軸受、カムとバルブリフタを含む動弁機構など、各種摺動部分の潤滑のほか、エンジン内の冷却や燃焼生成物の清浄分散、さらには錆や腐食を防止するなどの作用を果たす。
このように、内燃機関用潤滑油には多様な性能が要求され、しかも近年の内燃機関の低燃費化、高出力化、運転条件の過酷化などの高性能化に伴い、高度な潤滑油性能が要求されてきている。一方、内燃機関における燃焼ガスは、その一部がピストンとシリンダの間からブローバイガスとしてクランクケース内に漏洩する。この燃焼ガス中には窒素酸化物ガスがかなり高濃度で含まれており、これがブローバイガス中の酸素と共に内燃機関用潤滑油を劣化させる。近年における内燃機関の高性能化により、クランクケース内に漏洩する窒素酸化物ガスの濃度が増加する傾向にある。したがって、内燃機関用潤滑油には、上記の要求性能を満たし、窒素酸化物ガス含有空気雰囲気下においても劣化を生じないために、例えば、摩耗防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤などの種々の添加剤が配合されている。
内燃機関用潤滑油の基本的機能として、特に、あらゆる条件下で機関を円滑に作用させ、摩耗、焼付き防止を行うことが重要である。エンジン潤滑部は、大部分が流体潤滑状態にあるが、動弁系やピストンの上下死点などでは境界潤滑状態となりやすく、このような境界潤滑状態における摩耗防止性は、一般にジチオりん酸亜鉛の添加によって付与されている。
内燃機関では、潤滑油が関与する摩擦部分でのエネルギー損失が大きいために、摩擦損失低減や燃費低減対策として、摩擦調整剤が潤滑油に添加されている。この摩擦調整剤としては、例えば、有機モリブデン化合物、脂肪酸エステル、アルキルアミンなどが一般に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、鋭意研究の結果、摩擦調整剤は使用開始初期には添加効果が認められるが、空気中の酸素による酸化劣化を受けるとその効果を喪失し、特に窒素酸化物ガスの存在下ではその効果の低減が著しいという点を見いだし、窒素酸化物ガスの影響を受けることなく、エンジンの摩擦低減効果を長期にわたって維持することができる潤滑油組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する潤滑油組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、潤滑油基油に対して、特定のアルキル基を有する硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、特定のアルキル基を有するジアルキルジチオりん酸亜鉛及び特定の硫黄化合物、特定の金属系清浄剤及びホウ素含有化合物を、それぞれ特定の割合で配合した潤滑油組成物が、その目的に適合しうることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)潤滑油基油に対して、(A)炭素数が8〜18のアルキル基を有する硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、(B)炭素数1〜18の第一級アルキル基を有するジアルキルジチオりん酸亜鉛、(C)炭素数が2〜18のアルキル基を有するダイサルファイド、炭素数が6〜18のアリール基、アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基を有するダイサルファイド、炭素数が3〜24でかつ硫黄を含む置換基を有するチアジアゾール化合物、硫化オレフィン、硫化魚油及び硫化鯨油よりなる群より選ばれた1種又は2種以上の硫黄化合物、(D)カルシウムサリシレート、マグネシウムサリシレート、カルシウムスルホネート、マグネシウムスルホネート及びカルシウムフェネートよりなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属系清浄剤、並びに(E)ホウ素含有化合物を配合した潤滑油組成物であって、組成物全重量に基づき、硫化オキシモリブデンジチオカルバメートに由来するモリブデンの量が200〜2,000ppm(重量比)であり、ジアルキルジチオりん酸亜鉛に由来するりんの量が0.02〜0.15重量%であり、硫黄化合物に由来する硫黄の量が0.02〜0.30重量%であり、金属系清浄剤の含有量が1〜10重量%であり、ホウ素含有化合物に由来するホウ素の量が0.005〜0.06重量%であることを特徴とする潤滑油組成物、又は、さらに、(F)摩耗防止剤として、他のチオりん酸金属塩を配合することを特徴とする潤滑油組成物、を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(2)(A)硫化オキシモリブデンジチオカルバメートのアルキル基の炭素数が8〜13であり、(B)ジアルキルジチオりん酸亜鉛の第一級アルキル基の炭素数が3〜12であり、(E)ホウ素含有化合物がホウ素含有コハク酸イミドである第(1)項記載の潤滑油組成物、及び、
(3)組成物全重量に基づき、硫化オキシモリブデンジチオカルバメートに由来するモリブデンの量が300〜800ppm(重量比)であり、ジアルキルジチオりん酸亜鉛に由来するりんの量が0.04〜0.12重量%であり、ホウ素含有化合物に由来するホウ素の量が0.01〜0.04重量%である第(1)項又は第(2)項記載の潤滑油組成物、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の潤滑油組成物において用いられる潤滑油基油については特に制限はなく、従来潤滑油の基油として慣用されているもの、例えば、鉱油や合成油を使用することができる。
鉱油としては、潤滑油原料をフェノール、フルフラールなどの芳香族抽出溶剤を用いた溶剤精製により得られるラフィネート、シリカ−アルミナを担体とするコバルト、モリブデンなどの水素化処理触媒を用いた水素化処理により得られる水素化処理油、又はワックスの異性化により得られる潤滑油留分などの鉱油、例えば、60ニュートラル油、100ニュートラル油、150ニュートラル油、300ニュートラル油、500ニュートラル油、ブライトストックなどを挙げることができる。
一方、合成油としては、例えば、ポリα−オレフィンオリゴマー、ポリブテン、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、ポリグリコールエステル、二塩基酸エステル、りん酸エステル、シリコーン油などを挙げることができる。これらの基油はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また鉱油と合成油とを混合使用してもよい。
本発明の潤滑油組成物において用いられる基油としては、100℃における粘度が3〜20mm2/sの範囲にあるものが好適であり、なかでも、芳香族成分3重量%以下、硫黄分50ppm以下及び窒素分50ppm以下の水素化分解油及びワックス異性化油が特に好適である。
本発明の潤滑油組成物に配合する硫化オキシモリブデンジチオカルバメートとしては、一般式[1]
【化1】
(ただし、式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数8〜18のアルキル基であり、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、Xは硫黄又は酸素である。)
で表される化合物を用いる。
一般式[1]におけるR1、R2、R3及びR4で表される炭素数8〜18のアルキル基は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。本発明の潤滑油組成物においては、R1、R2、R3及びR4で表されるアルキル基の炭素数が8〜13であることが特に好ましい。
R1、R2、R3及びR4で表されるアルキル基の具体例としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基を挙げることができる。
【0006】
本発明の潤滑油組成物においては、硫化オキシモリブデンジチオカルバメートは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また硫化オキシモリブデンジチオカルバメートは、組成物全重量に基づき硫化オキシモリブデンジチオカルバメートに由来するモリブテンの量が200〜2,000ppm(重量比)となるよう、好ましくは300〜800ppm(重量比)となるよう配合する。硫化オキシモリブデンジチオカルバメートの配合量が、組成物全重量に基づき硫化オキシモリブデンジチオカルバメートに由来するモリブテンの量が200ppm(重量比)未満となる量であると、摩擦特性(低摩擦性)の向上効果が十分に発揮されないし、硫化オキシモリブデンジチオカルバメートの配合量が、組成物全重量に基づき硫化オキシモリブデンジチオカルバメートに由来するモリブテンの量が2,000ppm(重量比)を超える量であると、その量の割には効果の向上が認められず、またスラッジなどの原因となりやすい。
本発明の潤滑油組成物に配合するジアルキルジチオりん酸亜鉛としては、一般式[2]
【化2】
(ただし、式中、R5、R6、R7及びR8は炭素数1〜18の第一級アルキル基であり、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物を用いる。
一般式[2]におけるR5、R6、R7及びR8で表される第一級アルキル基は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基であるが、本発明の潤滑油組成物には、炭素数3〜12の第一級アルキル基を有するジアルキルジチオりん酸亜鉛を用いることが特に好ましい。
本発明の潤滑油組成物において、ジアルキルジチオりん酸亜鉛は、組成物全重量に基づきジアルキルジチオりん酸亜鉛に由来するりんの量が0.02〜0.15重量%となるよう、好ましくは0.04〜0.12重量%となるよう配合する。ジアルキルジチオりん酸亜鉛の配合量が、組成物全重量に基づきジアルキルジチオりん酸亜鉛に由来するりんの量が0.02重量%未満となる量であると、耐摩耗性が不十分となる上、高油温かつ低速回転の運転条件下で満足しうる低摩擦係数が得られないし、ジアルキルジチオりん酸亜鉛の配合量が、組成物全重量に基づきジアルキルジチオりん酸亜鉛に由来するりんの量が0.15重量%を超えると、その量の割には効果の向上が認められない。
【0007】
本発明の潤滑油組成物に配合するジアルキルジチオカルバミン酸塩としては、一般式[3]
【化3】
(ただし、式中、Mは亜鉛、銅又はニッケルであり、R9、R10、R11及びR12は炭素数2〜18のアルキル基であり、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物を用いる。
一般式[3]におけるR9、R10、R11及びR12で表される炭素数2〜18のアルキル基は、直鎖状でも、分枝鎖状であってもよく、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基を挙げることができる。
本発明の潤滑油組成物に配合するテトラアルキルチウラムダイサルファイドとしては、一般式[4]
【化4】
(ただし、式中、R13、R14、R15及びR16は炭素数2〜18のアルキル基であり、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物を用いる。
一般式[4]におけるR13、R14、R15及びR16で表される炭素数2〜18のアルキル基は、直鎖状でも、分枝鎖状であってもよく、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基を挙げることができる。
本発明の潤滑油組成物に配合するダイサルファイドとしては、一般式[5]
R17−S−S−R18 …[5]
(ただし、式中、R17及びR18は炭素数2〜18のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基であり、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物を用いる。
一般式[5]におけるR17及びR18で表される炭素数2〜18のアルキル基は、直鎖状でも、分枝鎖状であってもよく、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基を挙げることができ、また、R17及びR18で表される炭素数6〜18のアリール基、アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、ジフェニルメチル基などを挙げることができる。
本発明の潤滑油組成物に配合する硫黄を含む置換基を有するチアジアゾール化合物としては、一般式[6]
【化5】
(ただし、式中、R19及びR20は炭素数3〜24でかつ硫黄原子を1個以上含む1価の基であり、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物を用いる。
一般式[6]におけるR19及びR20で表される炭素数が3〜24でかつ硫黄原子を1個以上を含む1価の基としては、例えば、5−チアノニル基、2,5−ジチアヘキシル基、3,4−ジチアヘキシル基、4,5−ジチアヘキシル基、3,4,5−トリチアヘプチル基、3,4,5,6−テトラチアオクチル基、5−チア−2−ヘプテニル基、4−チアシクロヘキシル基、1,4−ジチアナフチル基、5−(メチルチオ)オクチル基、4−(エチルチオ)−2−ペンテニル基、4−(メチルチオ)シクロヘキシル基、4−メルカプトフェニル基、4−(メチルチオ)フェニル基、4−(ヘキシルチオ)ベンジル基などを挙げることができる。これらの中で、式[7]で表される3,4−ジチアヘキシル基、式[8]で表される4,5−ジチアヘキシル基、式[9]で表される3,4,5−トリチアヘプチル基、式[10]で表される3,4,5,6−テトラチアオクチル基などのように、鎖中において2〜4個の硫黄原子が連続して結合した基が特に好ましい。
CH3CH2−S−S−CH2CH2− …[7]
CH3−S−S−CH2CH2CH2− …[8]
CH3CH2−S−S−S−CH2CH2− …[9]
CH3CH2−S−S−S−S−CH2CH2− …[10]
本発明の潤滑油組成物に配合する硫化オレフィンは、イソブチレンなどの重合物を硫化処理して得られる硫黄含有量が25〜40重量%の硫化オレフィン(多硫化物)であり、硫化魚油及び硫化鯨油は、魚油及び鯨油を同様に硫化処理して得られるものである。
【0008】
本発明の潤滑油組成物において、一般式[3]で表されるジアルキルジチオカルバミン酸塩、一般式[4]で表されるテトラアルキルチウラムダイサルファイド、一般式[5]で表されるダイサルファイド、一般式[6]で表されるチアジアゾール化合物、硫化オレフィン、硫化魚油及び硫化鯨油は、1種を用いることができ、2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの硫黄化合物は、組成物全重量に基づき、これらの硫黄化合物に由来する硫黄の量が0.02〜0.30重量%になるよう配合される。これらの硫黄化合物の配合量が、組成物全重量に基づきこれらの硫黄化合物に由来する硫黄の量が0.02重量%未満となる量であると、摩擦低減を長期にわたって持続する効果が不十分となる。これらの硫黄化合物の配合量が、組成物全重量に基づきこれらの硫黄化合物に由来する硫黄の量が0.30重量%を超える量であると、その量の割には効果の向上が認められない。
本発明の潤滑油組成物においては、カルシウムサリシレート、マグネシウムサリシレート、カルシウムスルホネート、マグネシウムスルホネート及びカルシウムフェネートよりなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属系清浄剤を配合する。これらの金属系清浄剤は、組成物全重量に対して1〜10重量%配合される。これらの金属系清浄剤の配合量が、組成物全重量に基づき1重量%未満であると、清浄効果が不十分であり、これらの金属系清浄剤の配合量が、組成物全重量に基づき10重量%を超えると、その量の割には効果の向上が認められず、むしろ灰分が増加する。
本発明の潤滑油組成物においては、組成物の全塩基価を3〜10とすることが好ましく、全塩基価を4〜7とすることがより好ましい。全塩基価はJIS K2501にしたがって測定することができる。全塩基価の調整は、適当な塩基価をもつ金属系清浄剤を選定することにより好適に行うことができる。
本発明の潤滑油組成物において、ホウ素含有化合物としては具体的に、ホウ素含有コハク酸イミド、ホウ素含有コハク酸エステルなどが挙げられる。ホウ素含有コハク酸イミドとしては、例えば、下記一般式[11]、[12]などで表されるものが挙げられる。
【化6】
(ただし、式中、R21は炭素数1〜50の炭化水素基、R22は炭素数2〜5のアルキレン基、nは1〜10であり、一般式[12]の化合物においては2個のR21は同一でも異なっていてもよく、一般式[11]においてn個、一般式[12]においてn+1個のR22は同一でも異なっていてもよく、Zはホウ素含有置換基であり、Zとしては、例えば、
【化7】
などを挙げることができる。)
具体的には、例えば、ECA 5025(エクソンケミカル社製)、LUBRIZOL 935(ルブリゾル社製)などが挙げられる。
また、ホウ素含有コハク酸エステルとしては、例えば、下記一般式[13]で表されるものが挙げられる。
【化8】
(ただし、式中、nは1〜20、R23は炭素数2〜18の炭化水素基で、直鎖又は分岐で鎖中に芳香族、二重結合を含んでもよい。Y、Zはホウ素含有置換基で少なくとも一方は配位結合によってコハク酸エステルに配位している。)
具体的には、例えば、LUBRIZOL 936(ルブリゾル社製)などが挙げられる。
ホウ素含有化合物の中で好ましいものは、ホウ素含有コハク酸イミドである。また、ホウ素含有コハク酸エステルに、後述するコハク酸イミドを組み合わせ配合することも有効な手段である。ホウ素含有化合物は、組成物全重量に基づき、ホウ素含有化合物に由来するホウ素の量が0.005〜0.06重量%となるよう、好ましくは0.01〜0.04重量%となるよう配合する。ホウ素含有化合物の配合量が、組成物全重量に基づきホウ素含有化合物に由来するホウ素の量が0.005重量%未満となる量であると、十分な摩擦特性(低摩擦性)の向上が得られないし、ホウ素含有化合物の配合量が、組成物全重量に基づきホウ素含有化合物に由来するホウ素の量が0.06重量%を超える量であると、その量の割には効果の向上が認められない。
【0009】
本発明の潤滑油組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、従来潤滑油に慣用されている各種添加剤、例えば、他の摩擦調整剤、他の金属系清浄剤、他の摩耗防止剤、他の無灰分散剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、防錆剤、腐食防止剤などを適宜配合することができる。
他の摩擦調整剤としては、例えば、多価アルコール部分エステル、アミン、アミド、硫化エステルなどを挙げることができる。
他の金属系清浄剤としては、例えば、バリウムスルホネート、バリウムフェネートなどを挙げることができ、これらは通常0.1〜5重量%の割合で使用される。
他の摩耗防止剤としては、例えば、チオりん酸金属塩、硫黄化合物、りん酸エステル、亜りん酸エステルなどを挙げることができ、これらは通常0.05〜5.0重量%の割合で使用される。
他の無灰分散剤としては、例えば、コハク酸イミド系、コハク酸アミド系、ベンジルアミン系、エステル系のものなどを挙げることができ、これらは通常0.5〜7重量%の割合で使用される。
酸化防止剤としては、例えば、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化−α−ナフチルアミンなどのアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのフェノール系酸化防止剤などを挙げることができ、これらは通常0.05〜4重量%の割合で使用される。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート系、ポリイソブチレン系、エチレン−プロピレン共重合体系、スチレン−ブタジエン水添共重合体系などを挙げることができ、これらは通常0.5〜35重量%の割合で使用される。流動点降下剤としては、例えば、ポリアルキルメタクリレート、塩素化パラフィン−ナフタレン縮合物、アルキル化ポリスチレンなどを挙げることができる。消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンやポリアクリル酸などを挙げることができる。
防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸部分エステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテルなどを挙げることができる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールやベンゾイミダゾールなどを挙げることができる。
【0010】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
なお、潤滑油組成物の摩擦係数は、往復動すべり摩擦試験機[SRV摩擦試験機]を用い、振動数50Hz、振幅3mm、荷重25N、温度80℃、試験時間25分において測定した。
また、窒素酸化物ガス含有空気による酸化試験は、試験油150mlについて、温度130℃、窒素酸化物(NOx)濃度1容量%、流速2リットル/時、試験時間8時間で行った。
実施例1〜10及び比較例1〜2
実施例1〜10は、(A)硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、(B)ジアルキルジチオりん酸亜鉛、(C)ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸銅、テトラブチルチウラムダイサルファイド、ジベンジルダイサルファイド又はジ(チアノニル)チアジアゾール、(D)カルシウムサリシレート及び(E)ホウ素含有コハク酸イミドを配合した潤滑油組成物である。また、比較例1〜2は、(A)成分、(B)成分、(D)成分及び(E)成分は含有するが、(C)成分を含有しない潤滑油組成物である。
基油(100ニュートラル油、100℃における粘度4.4mm2/s)に対し、第1表に示す種類と量の各配合成分を含有する潤滑油組成物を調製し、調整直後の摩擦係数、及び、窒素酸化物ガスの存在下、130℃で8時間保持して酸化したのちの摩擦係数を測定した。結果を第1表に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
【表2】
【0013】
実施例1〜10の本発明の潤滑油組成物は、いずれも摩擦係数が低く良好な摩擦特性を示し、かつ、窒素酸化物ガスの存在下、130℃で8時間加熱して酸化したのちも、摩擦係数はほとんど変化なく、これらの潤滑油組成物は良好な耐酸化性を有していることが分かる。これに対して、(C)成分である硫黄化合物を含有しない比較例1〜2の潤滑油組成物は、調製直後の摩擦係数は低いが、窒素酸化物ガスの存在下、130℃で8時間加熱して酸化したのちには摩擦係数が高くなり、耐酸化性に劣っていることが分かる。
【0014】
【発明の効果】
本発明の潤滑油組成物は、基油に対して、特定構造の硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオりん酸亜鉛、硫黄化合物、金属系清浄剤、ホウ素含有化合物を配合することによって、優れた低摩耗性を有するとともに、高温かつ窒素酸化物ガスの存在下においても耐酸化性を発揮して良好な摩擦特性(低摩擦性)を持続し、内燃機関、自動変速機、緩衝器、パワーステアリングなどの潤滑油、特に、内燃機関用潤滑油として好適に用いることができる。
Claims (2)
- 潤滑油基油に対して、(A)炭素数が8〜18のアルキル基を有する硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、(B)炭素数1〜18の第一級アルキル基を有するジアルキルジチオりん酸亜鉛、(C)炭素数が2〜18のアルキル基を有するダイサルファイド、炭素数が6〜18のアリール基、アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基を有するダイサルファイド、炭素数が3〜24でかつ硫黄を含む置換基を有するチアジアゾール化合物、硫化オレフィン、硫化魚油及び硫化鯨油よりなる群より選ばれた1種又は2種以上の硫黄化合物、(D)カルシウムサリシレート、マグネシウムサリシレート、カルシウムスルホネート、マグネシウムスルホネート及びカルシウムフェネートよりなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属系清浄剤、並びに(E)ホウ素含有化合物を配合した潤滑油組成物であって、組成物全重量に基づき、硫化オキシモリブデンジチオカルバメートに由来するモリブデンの量が200〜2,000ppm(重量比)であり、ジアルキルジチオりん酸亜鉛に由来するりんの量が0.02〜0.15重量%であり、硫黄化合物に由来する硫黄の量が0.02〜0.30重量%であり、金属系清浄剤の含有量が1〜10重量%であり、ホウ素含有化合物に由来するホウ素の量が0.005〜0.06重量%であることを特徴とする潤滑油組成物。
- 潤滑油基油に対して、さらに、(F)摩耗防止剤として、他のチオりん酸金属塩を配合することを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
Priority Applications (5)
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