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JP3327468B2 - リチウムイオン二次電池及びその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池及びその製造方法

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JP3327468B2
JP3327468B2 JP2000062289A JP2000062289A JP3327468B2 JP 3327468 B2 JP3327468 B2 JP 3327468B2 JP 2000062289 A JP2000062289 A JP 2000062289A JP 2000062289 A JP2000062289 A JP 2000062289A JP 3327468 B2 JP3327468 B2 JP 3327468B2
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negative electrode
positive electrode
lithium
carbonate
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竜二 塩崎
修竹 黄
明博 藤井
宏 油布
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はリチウムイオン二次
電池に関し、さらに詳しくは負極炭素材料の表面被膜に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の軽量化・小型化が急速
に進んでおり、これらの駆動用電源として小型・軽量
で、高エネルギー密度を有する二次電池が求められてい
る。なかでも、リチウム二次電池は高電圧、高エネルギ
ー密度を有する電池として期待が大きい。
【0003】リチウム二次電池の負極には、従来からリ
チウム金属及やリチウム合金が用いられてきた。しか
し、リチウム金属は樹脂状リチウム(デンドライト)の
析出による短絡、高温時の安全性等に問題がある。又、
リチウム合金にはサイクル寿命が短い、充放電エネルギ
ー効率が低いといった問題がある。最近では、これらの
問題点を解決する為、炭素材料を負極に用いる研究が活
発である。
【0004】しかし、炭素材料を負極に用いたリチウム
イオン電池では、電解液にLiPF 4等のハロゲンを含
むリチウム塩を用いると、前記リチウム塩が電池内部に
混入した水と反応してフッ素化水素等のハロゲン化水素
酸を発生し、これが負極に影響を与え、自己放電の増大
やサイクル特性を低下させる等の問題があった。特開平
5−258753号公報には、電解液にSやNをヘテロ
元素とする複素環化合物を添加し、炭素表面にこれらの
分解生成物の被膜を形成させることで、自己放電やサイ
クル寿命が改善されることが報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、炭素材料を
負極に用いた電池において、高率充放電特性に優れ、自
己放電が少なく、充放電サイクル特性にも優れたリチウ
ム二次電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は、正極と、非水電解液を含むセパレータ
と、炭素材料からなる負極とを備え、前記負極の少なく
ともセパレータと接する部分を構成する炭素粒子の表面
がカーボネート構造を有する被膜層を有し、前記被膜層
が、ホウ素、硫黄、窒素のうちいずれか1種以上の元素
を含んでいることを特徴とするリチウムイオン二次電池
である。また、前記被膜層の厚さが5nm〜100nm
であることを特徴とするリチウムイオン二次電池であ
る。また、電解液が少なくともカーボネート系の溶媒を
含み、初期充電前の正極が、ホウ素、硫黄、窒素のうち
いずれか1つ以上の元素を含有し、40℃以上の温度で
初期充電を行うことを特徴とするリチウムイオン二次電
池の製造方法である。
【0007】負極に炭素材料を用いた場合、炭素材料へ
のリチウムの吸蔵・放出反応は、電解液と炭素表面との
間に生成する被膜の状態によって大きく支配される。リ
チウム金属負極をモデルに説明すると、リチウム金属表
面に、緻密でイオン導伝性の高い被膜があると、優れた
電池特性を示すが、逆に厚くイオン伝導性の低い被膜が
あると、電池のレート特性や、充放電サイクル特性が悪
くなる。ここで、前者の被膜成分は炭酸リチウムや酸化
リチウム等であり、後者の被膜成分はフッ化リチウム等
であることが知られている。同様のことが炭素材料の表
面に生成する被膜についても言える。即ち、炭素材料の
界面抵抗を増大させる要因の一つに、炭素材料表面に、
フッ化リチウム等のイオン伝導度の低い被膜が形成され
ることが挙げられる。
【0008】本発明者らは、炭素材料表面に生じる被膜
について、研究を進めた結果、負極炭素の表層部に形成
するカーボネート構造の被膜層に、ホウ素、硫黄、窒素
のいずれか1つ以上の元素を含有し、前記被膜層の厚さ
を5nm〜100nmに制御することにより、充放電サ
イクル性能が大幅に改善することを見いだした。
【0009】負極炭素の表面に、本発明の被膜を形成す
る方法としては、例えばホウ素、硫黄、窒素のいずれか
の元素を含有した正極材料を用い、充電操作を行うこと
で、充電中の正極電位が前記元素を電解液中に溶解さ
せ、同時に負極電位が電解液中のカーボネート類を分解
させ前記元素を取り込みながら被膜を形成させる方法な
どがある。このとき、電池の初期充電時の温度を制御す
ることにより、被膜形成反応の速度を制御でき、また前
記初期充電の時間を制御することにより、前記被膜の厚
さが制御できる。正極材料にホウ素、硫黄、窒素の元素
を含有させる方法としては、B23、B23、BH3
N(CH)3といった物質を正極活物質と共に混合する
ことによってもよく、またLiCoO2やLiMn24
等のCo、Mn元素の一部をホウ素等で置換したリチウ
ム金属酸化物を用いてもよい。ホウ素等で置換したリチ
ウム金属酸化物を用いた場合、初期充電工程の温度を4
0℃以上で行い、正極電位を4.0V以上にすれば、本
発明の効果が得られる。
【0010】制御されたカーボネート構造の被膜層は、
負極の全てのカーボン粒子表面に形成される必要はな
く、少なくともセパレータと接する部分を構成する炭素
粒子の表面に形成されていればよい。
【0011】なお、「特許請求の範囲」にいう「被膜層
の厚さ」とは、電池を解体して負極板を取り出し、ジエ
チルカーボネート等の溶媒によって電解液を洗浄・除去
し、真空乾燥を行った後に計測した値をいう。
【0012】電池内においては前記被膜層は電解液によ
って膨潤した状態になっていると考えられるため、実際
の被膜の厚さは、これより大きいと考えられる。実際の
被膜層の厚さを計測するには、電極をエポキシ等の樹脂
に埋めた後、断面をカットして炭素表面から埋めた樹脂
迄の距離を電子顕微鏡等で計測する方法等が挙げられる
が、この方法は、電解液の組成や形成されるカーボネー
ト骨格の構造等により、膨潤係数が異なることや、サン
プル間の誤差が大く現れやすいため、上記のような定義
とした。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は以下の記載により限定さ
れるものではなく、試験方法や構成する電池の正極活物
質、負極活物質、正極、負極、電解質、セパレータ並び
に電池形状等は任意である。本発明電池の実施形態の一
例を図1に示す。
【0014】負極9に用いる炭素材料としては、リチウ
ムを吸蔵、放出可能な炭素材料であればよく、特にエッ
クス線回折法より見積もられる面間隔(d002)が0.
3354〜0.3369nmで、c軸方向の結晶子の大
きさ(Lc)が20nm以上である炭素粒子が好まし
い。
【0015】正極7としては、LiCoO2、LiNi
2、LiMn24等のリチウム金属酸化物や、前記L
iCoO2、LiNiO2、LiMn24のCo、Ni、
Mnの部位の一部を他元素で置換した酸化物等を用いる
ことができる。前記他元素としては、Li、B,V,A
l,Ni,Co,Mg,Cr,Tb等が挙げられる。
【0016】セパレータ8には、イオンの透過性に優
れ、機械的強度のある絶縁性薄膜を用いることができ
る。耐有機溶剤性と疎水性の観点から、ポリプロピレン
やポリエチレンといったオレフィン系のポリマーが用い
られる。セパレータの孔径は、一般に電池に用いられる
範囲のものであり、例えば0.01〜1μmである。ま
た、その厚みについても同様で、一般に電池に用いられ
る範囲のものであり、例えば5〜40μmである。
【0017】電解質には、高いリチウムイオン伝導性を
示すLiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiOSO2
CF3等等を用いることができる。これら含フッ素電解
質は、非水溶媒中に通常0.1M〜3.0M好ましくは
0.5M〜2.0Mの濃度に溶解して使用する。
【0018】前記非水溶媒は、高誘電率溶媒と低粘度溶
媒の組み合わせで使用されることが好ましい。高誘電率
溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(E
C)、プロフピレンカーボネート(PC)等の環状カー
ボネート類が好適に用いられる。これら高誘電率溶媒
は、単独で使用してもよく、また2種類以上を組み合わ
せてもよい。
【0019】低粘度溶媒としては、例えば、ジメチルカ
ーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(M
EC)、ジメチルカーボネート(DMC)等の鎖状カー
ボネート類、γーブチロラクトン等のラクトン類が挙げ
られる。これら低粘度溶媒は単独で使用してもよく、ま
た2種類以上を組み合わせてもよい。
【0020】
【実施例】以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細
に説明する。
【0021】(本発明電池1)負極9は、次のようにし
て得た。人造黒鉛(粒径6μm)に、結着剤としてポリ
フッ化ビニリデン(PVDF)粉末を10重量%加え、
溶剤としてN−メチルピロリドンを加えて混練分散し、
塗布液を調製した。前記塗布液を厚さ10μmの銅箔集
電体の両面に塗布し、ロールプレスにより集電体込みの
厚さを180μmに調整して、7mAh/cm2の容量
を持つ負極シートを作製した。前記負極シートを幅65
mm高さ111mmの形状に裁断し、シートの末端に厚
み10μm幅10mmの銅リード板を取り付け、150
℃で12時間減圧乾燥し、負極9とした。
【0022】正極7は、正極活物質としてLiCo
2、B23、導電剤としてアセチレンブラック及び結
着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末を重
量比84:1:10:5の割合で混合し、溶剤としてN
−メチルピロリドンを加えて混練分散し、塗布液を調製
した。前記塗布液を厚さ20μmのアルミ箔集電体の両
面に塗布し、ロールプレスにより集電体込みの厚さを2
30μmに調整して6.3mAh/cm2の容量を持つ
正極シートを作製した。前記正極シートを幅61mm高
さ107mmの形状に裁断し、シートの末端に厚み20
μm幅10mmのアルミニウムリード板を取り付け、1
50℃で12時間減圧乾燥し、正極7とした。
【0023】ポリエチレン製微多孔膜の袋を幅65mm
×高さ111mmの袋状に成形し、セパレータ8として
用いた。前記正極7をセパレータ8の袋に挿入したもの
と負極9とを交互に積層し、40枚の正極7及び41枚
の負極9からなる極群を得た。この極群をポリエチレン
樹脂からなる絶縁フィルムに包み込み、アルミニウム製
の角形電槽缶10に収納した。正極7及び負極9のリー
ド板と、蓋2に取り付けられた正極端子5及び負極端子
4をそれぞれボルトによって接続した。なお、端子はポ
リプロピレン樹脂からなるガスケット6を用いて絶縁し
てある。
【0024】安全弁1を有するアルミニウム製の蓋2と
電槽缶19とをレーザーで溶接し、横70mm、高さ1
30mm(端子込み136mm)幅22mmの角形電池
を作製した。3はレーザー溶接部である。
【0025】十分に精製したエチレンカーボネートと十
分に精製したジエチルカーボネートとを体積比1:1の
割合で混合した溶媒に、十分に精製したLiPF6を1
mol/l溶解したものを電解液とし、前記電解液を前
記角形電池に65g注入し、封口した。
【0026】次に被膜作製工程として、前記角形電池に
対し、20℃において1.5A、4.2Vの定電圧充電
を施した後、50℃で3日間放置した。放置中の正極の
電位は4.0V以上(v.s.Li/Li+)であり、負極の電位は、0.
3V以下(v.s.Li/Li+)であった。
【0027】このようにして、図1に示す容量15Ah
の角形非水電解質電池を試作した。この電池を本発明電
池1とする。
【0028】(本発明電池2)正極材料のうち、B23
に代えてB23を用いたこと以外は本発明電池1と同様
に作製した電池を本発明電池2とする。充電後、放置中
の正極の電位は4.0V以上(v.s.Li/Li+)であり、負極の電
位は、0.3V以下(v.s.Li/Li+)であった。
【0029】(本発明電池3)正極材料のうち、B23
に代えてBH3・N(CH33を用いたこと以外は本発
明電池1と同様に作製した電池を本発明電池3とする。
充電後、放置中の正極の電位は4.0V以上(v.s.Li/Li+)で
あり、負極の電位は、0.3V以下(v.s.Li/Li+)であった。
【0030】(本発明電池4)被膜作製工程が、20℃
において1.5A、4.2Vの定電圧充電を施した後、
60℃で4日間放置することによる以外は本発明電池1
と同様に作製した電池を本発明電池4とする。放置中の
正極の電位は4.0V以上(v.s.Li/Li+)であり、負極の電位
は、0.3V以下(v.s.Li/Li+)であった。
【0031】(本発明電池5)被膜作製工程が、20℃
において1.5A、4.2Vの定電圧充電を施した後、
60℃で7日間放置することによる以外は本発明電池1
と同様に作製した電池を本発明電池5とする。放置中の
正極の電位は4.0V以上(v.s.Li/Li+)であり、負極の電位
は、0.3V以下(v.s.Li/Li+)であった。
【0032】(比較電池1)被膜作製工程が、20℃に
おいて1.5A、4.2Vの定電圧充電を施した後、6
0℃で14日間放置することによる以外は本発明電池1
と同様に作製した電池を比較電池1とする。放置中の正
極の電位は4.0V以上(v.s.Li/Li+)であり、負極の電位
は、0.3V以下(v.s.Li/Li+)であった。
【0033】(比較電池2)正極材料が、LiCo
2、アセチレンブラック及びPVDF粉末とを重量比
85:10:5で混合したこと以外は実施例1と同様に
作製した電池を比較電池2とする。放置中の正極の電位
は4.0V以上(v.s.Li/Li+)であり、負極の電位は、0.3V以
下(v.s.Li/Li+)であった。
【0034】(比較電池3) 被膜作製工程が、20℃において1.5A、4.2Vの
定電圧充電を施した後、20℃での放置時間が12時間
以内であること以外は実施例1と同様にした電池を比較
電池3とする。放置中の正極の電位は4.0V以上(v.s.Li/
Li+)であり、負極の電位は、0.3V以下(v.s.Li/Li+)であ
った。
【0035】これらの本発明電池1〜4及び比較電池
1、2は、それぞれ複数個作製し、一部を被膜の分析に
供し、一部を充放電試験に供した。
【0036】(被膜の分析)本発明電池1〜5及び比較
電池1〜3を解体し、負極9をジエチルカーボネートに
よって充分洗浄した後、真空乾燥した負極の表面を、集
束イオンビーム加工装置によって加工した。加工後の負
極断面を電子顕微鏡観察写真によって確認し、被膜層厚
さを測定した。測定結果を表1に示した。
【0037】また、エックス線光分子分光法によって、
被膜の主な構成要素を分析した。その結果、全ての電池
の被膜が、カーボネート骨格を有することが確認でき
た。また、各電池の被膜中に検出されたC(炭素)以外
の元素を表1に併せて示した。
【0038】
【表1】
【0039】(充放電試験) (1)0.1It放電容量の測定 本発明電池1〜5及び比較電池1〜3を用いて、1.5
A(0.1It)で3Vまで放電した後、1.5A
(0.1It)で15時間4.2Vの定電圧充電と、
1.5A(0.1It)にて3Vまでの定電流放電を行
う充放電の繰り返しを5サイクル行った。得られた5サ
イクル目の放電容量の結果を表2に示した。 (2)2It放電容量の測定 引き続き、15A(1It)で1.5時間4.2Vの定
電圧充電と、30A(2It)で3Vまでの定電流放電
を行う充放電を1サイクル行った。得られた放電容量
と、前記0.1It放電容量との比を、表2に併せて示
した。 (3)1Itサイクル寿命の測定 引き続き、15A(1It)で1.5時間4.2Vの定
電圧充電と、15A(1It)で3Vまでの定電流放電
を行う充放電を連続して繰り返し行った。放電容量が前
記0.1It放電容量の80%に低下した時点のサイク
ル数をサイクル寿命とした。結果を表2に併せて示し
た。
【0040】
【表2】
【0041】被膜作製工程が同一条件である本発明電池
1〜3及び比較電池2の結果を比べると、B23を正極
に添加した本発明電池1は、B23を添加していない比
較電池2よりも良好なサイクル性能を示した。また、B
23に代えてB23やBH3・N(CH)3を正極に添加
した本発明電池2及び本発明電池3は、本発明電池1よ
りもさらに良好なサイクル性能を示した。
【0042】次に、正極にB23を添加し、被膜厚さが
異なる本発明電池1,4,5及び比較電池1,3の結果
を比べると、被膜厚さ1nmの比較電池3に比べ、被膜
厚さ5nm以上の電池は良好なサイクル性能を示してい
る。しかしながら、2It放電容量は、被膜厚さの増大
と共に減少し、被膜厚さ200nmの比較電池1では、
0.1It放電容量に対し、76%にまで至っている。
【0043】上記実施例では、正極材料及び負極材料と
してLiCoO2及び人造黒鉛をそれぞれ用いたが、他
の正極材料、負極材料を用いた電池についても、同様の
効果が確認されている。
【0044】
【発明の効果】上記実施例で、正極に添加したB2
3は、正極シートの作製工程で空気中の水分を吸収し、
ホウ酸になり、150℃の真空乾燥工程によってメタホ
ウ酸を経て4ホウ酸になっていると考えられる。これら
の物質は、少なくとも4.0V以上の電位がかかると、
電解液中に溶出することがわかっている。前記溶出した
ホウ素化合物が負極に到達し、負極において0.3V以
下の電位によって、ホウ素が取り込まれたカーボネート
構造の被膜が生成するものと考えられる。
【0045】負極炭素表面に生成するカーボネート構造
の被膜に、ホウ素や窒素といった元素を含有させ、被膜
厚さを制御することによって、サイクル特性が向上する
理由としては、必ずしも明確ではないが、本発明者らは
以下のように考察する。
【0046】負極炭素材料が充電によってリチウムを吸
蔵する際、炭素表面はリチウム電位に近い還元雰囲気下
に置かれる。このとき、電解液と炭素材料との接触界面
において、炭酸リチウム等イオン伝導性の高い被膜を形
成される。ところが、電解液の溶媒にカーボネート類を
用いている場合、イオン伝導性の高いカーボネート構造
の被膜層が形成される。しかしながら前記カーボネート
構造の被膜は脆弱であるため、充放電の繰り返しによっ
て前記カーボネート構造の被膜が破壊される。その結
果、炭素表面が、リチウム塩と微量水分が反応して生じ
たハロゲン化水素酸に曝され、フッ化リチウム等のイオ
ン伝導性の低い被膜層が形成されてしまう。また、被膜
層が破壊された場合、電解液の分解も進行する。
【0047】ここで、被膜層に、ホウ素、硫黄、窒素等
元素が含有していると、カーボネート構造の被膜を強固
なものにする効果があると考えられる。
【0048】実施例の結果を参照すると、前記効果は、
前記元素を単独で含む場合には、ホウ素について最も高
く硫黄や窒素については低い。しかしながら、硫黄、窒
素は、ホウ素と混在させた場合、各々を単独で用いる場
合より優れた効果を発現する。
【0049】また、本発明の被膜層の上に生成したフッ
化リチウムは炭素負極の特性を低下させる影響が少ない
ことがわかった。
【0050】なお、比較電池2の負極について、エック
ス線光分子分光装置を用い、アルゴンエッチングを施し
ながら負極表面被膜の分析を行った結果、カーボネート
骨格の被膜層の最下層、即ち、グラファイト由来の炭素
のピークが検出される程度の炭素負極の表面近傍に、多
くのフッ化リチウム(LiF)が検出された。また、本
発明電池電池1の負極について同様の分析を行った結
果、同じくカーボネート骨格の被膜層の最下層、即ち、
グラファイト由来の炭素のピークが検出される程度の炭
素負極の表面近傍には、フッ化リチウム(LiF)が検
出されるものの、比較電池2に比べるとはるかに少ない
量であった。
【0051】これらのことから、炭素材料を用いた負極
にカーボネート骨格を有する被膜層を5〜100nm設
けることによって、LiF等の好ましくない被膜が炭素
表面で発生しにくくなり、優れたサイクル性能を示すも
のと考えられる。
【0052】上述のように、本発明によれば、正極に微
量の添加剤を加え、初期充電後の保存温度と保存時間を
制御するといった簡単な方法により、高率充放電特性を
有する、サイクル寿命特性に優れたリチウム二次電池を
提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明電池の1実施形態を示す図である。
【符号の説明】
7 正極 8 セパレータ 9 負極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤井 明博 大阪府高槻市古曽部町二丁目3番21号 株式会社 ユアサ コーポレーション 内 (72)発明者 油布 宏 大阪府高槻市古曽部町二丁目3番21号 株式会社 ユアサ コーポレーション 内 審査官 植前 充司 (56)参考文献 特開 平7−14572(JP,A) 特開 平8−45509(JP,A) 特開2001−43858(JP,A) 特開 平9−161779(JP,A) 特開 平7−176323(JP,A) 特開 平9−147864(JP,A) 特開 平11−144711(JP,A) 特開 平7−135021(JP,A) 特開 平9−259885(JP,A) 特開 平10−261406(JP,A) 特開 平10−270089(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/02 H01M 4/62 H01M 10/40

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 正極と、非水電解液を含むセパレータ
    と、炭素材料からなる負極とを備え、前記負極の少なく
    ともセパレータと接する部分を構成する炭素粒子の表面
    がカーボネート構造を有する被膜層を有し、前記被膜層
    が、ホウ素、硫黄、窒素のうちいずれか1種以上の元素
    を含んでいることを特徴とするリチウムイオン二次電
    池。
  2. 【請求項2】 前記被膜層の厚さが5nm〜100nm
    であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン
    二次電池。
  3. 【請求項3】 電解液が少なくともカーボネート系の溶
    媒を含み、初期充電前の正極が、ホウ素、硫黄、窒素の
    うちいずれか1つ以上の元素を含有し、40℃以上の温
    度で初期充電を行うことを特徴とするリチウムイオン二
    次電池の製造方法。
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