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JP3372751B2 - 電界電子放出素子およびその作製方法 - Google Patents

電界電子放出素子およびその作製方法

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JP3372751B2
JP3372751B2 JP10446696A JP10446696A JP3372751B2 JP 3372751 B2 JP3372751 B2 JP 3372751B2 JP 10446696 A JP10446696 A JP 10446696A JP 10446696 A JP10446696 A JP 10446696A JP 3372751 B2 JP3372751 B2 JP 3372751B2
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electron emission
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電界電子放出素
子、および該電子放出素子の製造方法に関するものであ
り、該電界電子放出素子は電子源、画像形成装置などに
利用可能である。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子放出素子としては大別し
て熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子の2種類のもの
が知られている。冷陰極電子放出素子には電界放出型
(以下、「FE型」という)や、金属/絶縁層/金属型
(以下、「MIM型」という)や、表面伝導型電子放出
素子(以下、「SCE型」という)等がある。
【0003】FE型の例としてはW. P. Dyke & W.W. Do
lan, "Field emission"、Advance inElectron Physics,
8(1956)89 あるいはC.A.Spindt,"Physical Properties
ofthin-film field emission cathodes with molybden
um cones", J.Appl.Phys.,47(1976)5248等に開示された
ものが知られている。
【0004】また、MIN型の例としてはC.A. Mead, "
Operation of Tunnel-Emission Devices", J. Appl. Ph
ys., 32(1961)646等に開示されたものが知られている。
【0005】さらに、SCE型の例としてはM.I. Elins
on, Radio Eng. Electron Phys., 10(1965)1290等に開
示されたものがある。
【0006】また、ダイヤモンドを用いたFE型の電界
電子放出素子としては森らにより個体物理1994年9
月号Vol.29 767〜773の解説に紹介されて
おり、さらにN.Kumar et al. SID94 DIGEST P43〜46に
ディスプレーの紹介が、またN.S. Xu et al. J. Phys.
D, Appl. Phys. 26(1993)1776〜1780にやはり成膜した
ダイヤモンドのフィールドエミッタが、またJ.Liuet a
l. Appl.Phys.Lett., 65(1994)2842〜2844にダイヤモン
ドでコートしたシリコンフィールドエミッタが開示され
ている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
各種の電子放出素子において、放出電流値および効率等
が少ないなどの問題があった。また、真空中での動作時
において、真空中に残存する種々のガスの電子放出素子
への作用によるノイズや特性のゆらぎ、長時間駆動をお
こなた時の放出電流の減少(劣化)等の問題があった。
【0008】また製法においても、冷陰極に先端が尖っ
た円錐状のMoを形成したスピントタイプなどではエミ
ッタ先端の先鋭化のプロセスが複雑で困難であり、また
ダイヤモンドを用いた電界放出素子では、例えばYAG
レーザでグラファイト材料のターゲットを照射し溶解さ
せて、炭素原子をガラス基板上に堆積させるダイヤモン
ド膜の成膜の再現性や電極とダイヤモンドの接合性など
に問題があった。
【0009】本発明はこれら、特にダイヤモンドを用い
たFE型の電界電子放出素子の問題を解決することにあ
る。
【0010】即ち、本発明の目的は動作駆動時に、安定
で、十分な電子放出量のある高効率、高性能のFE型の
電子放出素子の提供を目的とする。
【0011】また、上記の特性を有する素子の作製方法
の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決すための手段】本発明は、上述した課題を
解決するために鋭意検討をおこなってなされたものであ
り、下述の構成のもである。
【0013】すなわち、素子電極と、前記素子電極上に
配置されたエミッタ部と、アノード部とを備える電界電
子放出素子において、前記エミッタ部は、少なくともダ
イヤモンドと、前記素子電極及びダイヤモンドに接合し
フラーレンを有していることを特徴とするものであ
る。また、素子電極と、前記素子電極上に配置されたエ
ミッタ部と、アノード部とを備える電界電子放出素子に
おいて、前記エミッタ部は、ダイヤモンドと、前記ダイ
ヤモンドに接合されたフラーレンと、前記素子電極及び
フラーレンに電気的に接続された伝導層とを有している
ことを特徴とするものである。
【0014】さらに、好ましくはフラーレンがC60もし
くはC70であること、またフラーレン同士が重合してい
ること、更にはダイヤモンドが薄膜であること、もしく
はダイヤモンドが微粒子であることを特徴とするもので
ある。
【0015】本発明は、上記電界電子放出素子の製造方
法をも包含する。
【0016】本発明の電界電子放出素子の製造方法にお
いて、少なくともフラーレンを1GPa以上の圧力で処
理すること、またエミッタの表面をプラズマで処理する
こと、またエミッタの表面を電磁波で照射すること、ま
たエミッタの表面をイオン照射すること、また素子を水
素分圧10-6パスカル以上の雰囲気でアニールする工程
を有する工程を有すること、また10-2パスカル以下の
雰囲気で素子を初期駆動する工程を有することなどを特
徴とする電界電子放出素子の製法が有効である。
【0017】即ち、ダイヤモンド膜をCVD法などの方
法で成膜することも可能であるが、さらにはダイヤモン
ド微粒子を分散させることによりダイヤモンド層を作製
することが簡便であり、またダイヤモンドと導体との接
合にフラーレンを有することが本質的に有効であり、該
接合を強化するために高圧やプラズマ、電磁波、イオン
などの照射が用いられ、またプラズマ処理やイオン照
射、水素中アニールでダイヤモンド表面処理行程を行う
のもである。
【0018】本発明の電界電子放出素子および製法によ
って、負の電子親和力あるいは低仕事関数のダイヤモン
ドを有しており、且つダイヤモンドへの良好な接合がフ
ラーレンにより得られるので、同じ駆動電圧でも大きく
安定な放出電流が得られる。さらにはダイヤモンド表面
が化学的に安定であるため、真空度が悪い環境下でも駆
動でき、動作駆動時の放出電流のノイズ、および劣化に
よる放出電流の減少を抑制することができる。
【0019】また、ダイヤモンド微粒子を用いることも
出来るので、安易に素子が製造でき、その結果製造コス
トも軽減される。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
の実施の形態について説明する。
【0021】本発明を適用し得るFE型電界電子放出素
子の基本的構成には大別して、垂直型、横型の2つがあ
る。
【0022】『垂直型電界電子放出素子』まず、垂直型
電界電子放出素子について図1、図2及び図5、図6を
用いて説明する。
【0023】図1、図2は、本発明の垂直型電界電子放
出素子の例を示す模式図である。図1は本発明の2極タ
イプの垂直型電界電子放出素子の構成を示す模式図であ
り、図2は本発明の3極タイプの垂直型電界電子放出素
子の構成を示す模式図である。また図5、図6は、本発
明のエミッタ部分の拡大図の例を示す模式図であり、図
5はダイヤモンドに膜を用いた例であり、図6はダイヤ
モンドに微粒子を用いた例である。
【0024】図1において、1は基板、2は素子電極、
3は電子放出部にあたるエミッタ、4はアノードであ
る。図2において図1に示した部位と同じ部位には図1
に付した符号と同一の符号を付している。図2において
5はゲートである。
【0025】又、図5において、図1に示した部位と同
じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付している
が、51はダイヤモンド層であり、52はフラーレンを
含有する接合層であり、53は素子電極2と接合層52
の電気的な接続を果たす伝導層であり、ダイヤモンド層
51と接合層52と伝導層53とによりエミッタ3が構
成されている。接合層52が伝導層53の機能を有して
いる図5(a)の場合は伝導層53は必要ない。
【0026】また、図6において、図1、図5に示した
部位と同じ部位には図1、図5に付した符号と同一の符
号を付しているが、61はダイヤモンド微粒子であり、
図6(b)は図6(a)のフラーレンを含有する接合層
52がダイヤモンド61と伝導層53の界面に薄く存在
する場合の例である。
【0027】本発明の第1の特徴は、図5、図6に示さ
れる様に、エミッタ3が、ダイヤモンドを表面に有して
おり、且つダイヤモンドと素子電極2もしくは伝導層5
3の界面の少なくとも一部にフラーレンが結合している
ものである。
【0028】エミッタ3は、図5の様にダイヤモンド層
51、フラーレン含有接合層52、(伝導層)、素子電
極2の順に層状に構成されているが、図6の様にフラー
レン含有層52や伝導層53の表面及び内部にダイヤモ
ンドが組み込まれた構造をしていても良い。
【0029】ダイヤモンドは、部分的に{1 1 1}
面、もしくは{1 0 0}面を有しているのが好まし
い。これは、ダイヤモンド結晶の{1 1 1}面もし
くは{1 0 0}面は、電子親和力が小さく良好な電
子放出特性を示すことによる。
【0030】またエミッタ3に用いられるダイヤモンド
微粒子61とは、天然ダイヤモンド微粒子、人工合成ダ
イヤモンド微粒子を主体とする微粒子である。その粒子
径は100μm以下、好ましくは1μm以下が望ましい
が、正確には素子の設計で決まるものである。微細なダ
イヤモンド粒子の方がエミッタとアノードの距離が均一
になりやすいと言える。そのダイヤモンド微粒子の存在
密度は、エミッタ3の表面近傍において106個/cm2
以上、好ましくは108個/cm2以上が良い。
【0031】また、ダイヤモンド層を成膜するにはCV
D法やPVD法など各種の方法が利用可能であるが、特
に好ましくは基板温度が400℃以下でダイヤモンド層
が得られる方法が好ましく、例えばマイクロ波プラズマ
CVD法、ECR法、レーザーアブレーション法などが
挙げられる。
【0032】また、伝導層53や伝導層53が無い場合
の素子電極2は基本的には電気伝導性材料ならば良い
が、フラーレンとの接合性を考慮するとグラファイトや
非晶質カーボン、もしくはカーバイトやカーバイトをつ
くる様なTi、Nb、Ta、Mo、V、Zr、W、Cr
などの金属が好ましい。
【0033】尚、非晶質カーボンとは、アモルファスカ
ーボン及び、例えばグラファイト的なPG、GCと呼ば
れるもの(PGは結晶粒が20nm程度で結晶構造がや
や乱れたもの、GCは結晶粒が2nm程度になり結晶構
造の乱れがさらに大きくなったものを指す)、及びそれ
ら材料の混合物を指す。
【0034】基板1としては、石英ガラス、Na等の不
純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラス
にスパッタ法等により形成したSiO2を積層したガラ
ス基板及びアルミナ等のセラミックス及びSi基板等を
用いることができる。
【0035】素子電極2の材料としては、一般的な導体
材料を用いることができる。これは例えばNi、Cr、
Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金
属或は合金及びPd、Ag、Au、RuO2、Pd−A
g等の金属或は金属酸化物とガラス等から構成される印
刷導体、In23−SnO2等の透明導電体及びポリシ
リコン等の半導体材料等から適宜選択することができ
る。
【0036】エミッタ3とアノード4の距離やエミッタ
3とゲート5の距離、およびエミッタ3やゲート5の形
状等は、応用される形態等を考慮して、設計される。例
えば、エミッタ3とアノード4の距離はサブμmから数
mmの範囲とすることができ、エミッタ3とゲート5の
距離はそれより短いものとなる。また、エミッタ3の形
状は図には示していないが円形や方形、もしくは立体的
な円錐系でもよく、大きさとしては数μm〜数mm、厚
みもサブμm〜数mmの範囲とすることができる。
【0037】『横型電界電子放出素子』次に、横型電界
型電子放出素子について説明する。図3、図4は、本発
明の横型電界型電子放出素子の例を示す模式的断面図で
ある。図3、図4においては、図1、図2に示した部位
と同じ部位には図1、図2に付した符号と同一の符号を
付している。図4に示す6は段差部である。基板1、電
極2、エミッタ3、アノード4、ゲート5は前述した垂
直タイプの電界電子放出素子の場合と同様の材料で構成
することができる。段差部6は、真空蒸着法、印刷法、
スパッタ法等で形成されたSiO2等の絶縁性材料で構
成することができる。段差部6はエミッタ3に有効に電
界が印加でき、またゲート5の位置がエミッタ3とアノ
ード4に対して適当な位置になる様設計され、サブμm
から数mmの範囲とすることができる。
【0038】『フラーレン』なお、本明細書におけるフ
ラーレンの具体的な意味について説明する。
【0039】フラーレンに対する正確な定義付けは未だ
なされていないが広範な記述が『化学同人発行:C60
フラーレンの化学(平成5年10月20日発行)』にな
されている。なお、「フラーレン」という語は、バック
ミンスター・フラーが提案したドーム建築にその形態が
類似していたことからバックミンスターフラーレンとな
り、これを短縮してフラーレンと称したことによる。こ
の文献を参考にして、本明細書では、以下の様にフラー
レンを定義する。
【0040】(A)主に炭素原子により閉曲面が得られ
ている材料、及びその閉曲面炭素を部分として有する分
子。
【0041】(B)主に炭素原子により成る直径数nm
〜数μmにわたるチューブ状の材料。
【0042】上記(A)の主な例としては、 A−(1):C60,C70,C76,C78,C82,C84,C
90,C96に代表される炭素原子でできたボール状の材
料、及び炭素の一部がB(硼素)などのC以外の元素で
置き変った材料。またこれらのボール状のものが多層に
なった材料。
【0043】A−(2):A−(1)に示した炭素原子
でできたボール状の材料の中にScやY、ランタノイド
の金属が内包された材料であり、例えばSc&C82、Y
&C82、La&C82、La&C80、Sc2&C84などが
上げられる(金属内包フラーレンと呼ぶ)。但し、ここ
で例えばSc&C82は炭素Cの数82個で閉回路をなす
クラスターC82のなかに金属原子Scが1個入っている
ことを表し、Sc2&C84はクラスターC84のなかに金
属原子Scが2個入っていることを表す。
【0044】A−(3):A−(1)、Aー(2)に示
した材料の有機化学的な誘導体である。例えばC60
H、Br、O、および各種のアニオン、ラジカルを付加
した材料、または有機金属錯体が該当する。また、これ
らの材料が重合した材料や、分子内ではなく分子間に金
属などがインターカレーションを起こした材料が含まれ
る。
【0045】また、上記(B)の主な例としては、グラ
ファイトが筒状になった構造をしたものであり、この筒
が1重の材料や何重にもなっている場合がある。このよ
うな筒状グラファイトは特に細い場合にはナノチューブ
とよばれ、炭素を電極にしてアーク放電させた場合の陰
極に成長したり、また、それより太いチューブは金属微
粒子を触媒として気相中で熱分解することにより得るこ
とができる。
【0046】(A)と(B)の差は明確にもみえるが、
例えば(B)で筒の長さが短くなってくるとタマネギの
様な構造のフラーレンになり、そうなると(A)、
(B)のいずれでもあるといえる。また、近年、このフ
ラーレンの発見が相次ぎ、それに従って、C240,C540
なども発見されている。
【0047】しかしながら、本発明に最も重要と考えら
れるのが分子としてはC60、C70である。これはC60
70が現在のところ簡便に合成、精製できることにあ
り、将来他のフラーレンの容易な製造法が得られればそ
の限りではない。また特に本発明に重要であるのはC60
が重合している材料であり、この場合には素子としての
特性も向上するが明確な原因は特定できていない。この
重合の方法には以下のような方法がある。
【0048】(a)高圧高温処理:例えば温度800
℃、圧力5GPaでの処理や爆縮処理。
【0049】(b)電磁波照射:例えばアルゴンレーザ
ー、水銀ランプ。
【0050】(c)プラズマ処理:例えばCF4プラズ
マ処理。
【0051】(d)元素添加:例えばKC60、 RbC
60、 CsC60
【0052】またフラーレンとフラーレンが分解したア
モルファスの混合物も重合した材料と同様に有効であ
り、これはC60の高周波イオンプレーティオングやレー
ザーアブレーションやプラズマ処理などにより得られ
る。
【0053】『電界電子放出素子の製法例』上述の電界
電子放出素子の製造方法としては様々な方法があるが、
その一例を図7に模式的に示す。
【0054】以下、図7を参照しながら製造方法の一例
について説明する。図7においても、図1、図5に示し
た部位と同じ部位には図1、図5に付した符号と同一の
符号を付している。
【0055】(1)基板1を洗剤、純水および有機溶剤
等を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等に
より素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィ
ー技術を用いて基板1上に素子電極2を形成する(図7
(a))。
【0056】(2)素子電極2を作成後、フラーレンC
60を成膜する。成膜は真空加熱蒸着法、MBE法、IC
B法、高周波イオンプレーティング法、電解液からのメ
ッキ法などが利用可能である。例えば、蒸着法ではルツ
ボにC60を入れ600℃に加熱し、200℃程度の温度
にした基板1上に素子電極2を簡便に成膜できる。そし
てフォトリソグラフィー技術などを用いて基板1、素子
電極2上にフラーレン層52を形成する(図7
(b))。
【0057】また、その後に、C60層への紫外線やレー
ザー照射、またはCF4プラズマ処理や水素やアルゴン
イオン照射などによる重合やアモルファス化を行うこと
も有効である。
【0058】(3)素子電極2を設けた基板1に、ダイ
ヤモンド層を成膜させる(図7(c))。ダイヤモンド
膜を低温で成膜するには前述したようにマイクロ波プラ
ズマCVD法、ECR法、レーザーアブレーション法な
どの方法が好ましい。成膜の際にB26ガスをCH4
2、CO、O2などの原料ガスと共に導入してダイヤモ
ンドにBをドーピングすることも可能である。この成膜
の際にC60層にプラズマやプラズマから出る紫外線が照
射されることによりC60層の重合やアモルファス化が進
行する場合もある。そしてフォトリソグラフィー技術な
どを用いてフラーレン層52の上にダイヤモンド層51
を形成する。
【0059】(4)このような工程を経て得られた素子
は、表面処理や安定化工程を行うことが好ましい。この
工程にはダイヤモンド層51の表面の処理などが挙げら
れる。方法としては水素分圧10-6パスカル以上の雰囲
気でアニールする工程や、または10-2パスカル以下の
雰囲気で素子を初期駆動する工程、およびダイヤモンド
層51表面を水素プラズマなどのプラズマで処理するこ
とや水素などのイオン照射が有効であり、その結果電子
放出の増大や安定化がもたらされる。ここでアニール温
度は100〜1000℃程度が好ましい。水素プラズマ
では水素以外のガス、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素
などが混合されていてもかまわない。この効果の原因と
してはダイヤモンド表面の表面洗浄、および表面にでて
いるダングリングボンドの水素結合の促進が考えられ
る。
【0060】以上説明した方法はフラーレンやダイヤモ
ンドの成膜行程を用いた方法の一例であるが、図6に示
したような微粒子を利用する方法がある。この微粒子に
はダイヤモンド微粒子、またはフラーレンが接合されて
いるダイヤモンド微粒子を利用でき、この微粒子を望み
の形状に成膜、加工して電子放出素子を作製する。この
場合ダイヤモンド微粒子としては天然ダイヤモンド、人
工ダイヤモンドどちらも利用可能である。また、フラー
レンが接合されているダイヤモンド微粒子としては、例
えば以下の様な作製方法がある。
【0061】(1)衝撃圧縮法:C60などのフラーレン
をカプセル内に入れ、そのカプセルに飛翔体を衝突させ
て瞬間的に数10GPaの圧力にして取り出す。こうし
て得られたものはダイヤモンドの微粒子とC60が接合さ
れた材料になっている。
【0062】(2)超高圧法:C60などのフラーレンと
ダイヤモンド微粒子、およびグラファイトをカプセル内
に入れ、そのカプセルを6方アンビルなどの超高圧装置
にいれ数GPaの圧力にした後800℃程度の熱処理を
し、冷却後に圧力を下げる。こうして得られた材料はダ
イヤモンドの微粒子と重合したC60、およびグラファイ
トが接合された材料になっている。この場合グラファイ
トはなくてもかまわない。
【0063】この様にして得られたダイヤモンド微粒子
を膜状に分散して形成する。図6の電界電子放出素子を
作製する際の分散方法としては、例えば蛍光体の塗布に
利用されている沈降法、スラリー法、ダスティング法な
ども利用可能であり、以下に例として挙げる。
【0064】(a)ダイヤモンド微粒子を含む水または
有機溶媒等の液体を、基板上の素子電極、伝導層または
フラーレン含有層の上にスピンコートなどの方法で塗布
し液体を乾燥させ、ダイヤモンド微粒子を付着させる。
【0065】(b)(沈降法)基板を最初に硫酸カリウ
ムや酢酸バリウムなどの電解質水溶液に浸しておき、そ
こにダイヤモンド微粒子が分散しているけい酸カリウム
の水溶液を入れ静置しておきダイヤモンド微粒子を沈降
させ、上澄み液を排出して乾燥させる。
【0066】(c)(スラリー法)ポリビニルアルコー
ルと重クロム酸塩との水溶液に粒子径ダイヤモンド微粒
子が分散させ(スラリーと呼ぶ)、そのスラリーをスピ
ンコートなどで塗布し乾燥後シャドウマスクの上から水
銀灯などで露光する。その後純水で洗浄すると紫外線が
照射された部分だけダイヤモンド微粒子が残り、不要部
分は除去される。
【0067】(d)(ダスティング法)スラリー法に似
ているが、ダイヤモンドを含まないポリビニルアルコー
ルと重クロム酸塩との水溶液を基板に塗布した後乾燥す
る前にダイヤモンド微粒子をエアスプレーにより付着さ
せ、その後スラリー法と同様に露光して所望の位置にダ
イヤモンド微粒子を付着させる。
【0068】(e)粒子径10μm以下のダイヤモンド
粒子を含む水または有機溶媒等の液体中に基板を挿入し
徐々に引き上げ乾燥させ、ダイヤモンド微粒子を付着さ
せる。この際スラリー法と組み合わせることも可能であ
る。また引き上げ途中に超音波処理を行うのも有効であ
る。
【0069】もちろんパターニングはリフトオフ等によ
り作製することも可能である。これらの方法はフラーレ
ンが接合したダイヤモンド微粒子の場合でも同様に利用
できる。
【0070】素子の駆動時の雰囲気は有機物質が十分除
去されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定
な特性を維持することが出来る。ただし10-3パスカル
以下の真空度、好ましくは10-4パスカル以下の真空度
であることが望ましい。真空容器を排気する真空排気装
置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与
えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好
ましい。具体的には、ソープションポンプ、イオンポン
プ等の真空排気装置を挙げることが出来る。さらに真空
容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱して、
真空容器内壁や、電子放出素子に吸着した有機物質分子
を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件
は、80〜250℃で3時間以上が望ましいが、特にこ
の条件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、
電子放出素子の構成などの諸条件により適宜選ばれる条
件により行う。このような真空雰囲気を採用することに
より、真空中残留ガスによる電子放出面の汚染の抑制で
き、結果として電流Ieが安定する。
【0071】尚、上述の垂直タイプの電界型電子放出素
子の製造法は1例であり、これに限るものでない。
【0072】『基本特性』上述した工程を経て得られた
本発明を適用可能なFE型電子放出素子の基本特性につ
いて図8、図9を参照しながら説明する。
【0073】図8は、真空処理装置の一例を示す模式図
であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能
をも兼ね備えている。図8において、82は真空容器で
あり、83は排気ポンプである。真空容器82内には電
子放出素子が配されている。即ち、1は電子放出素子を
構成する基体であり、2は素子電極、3はエミッタ、4
はアノードである。81は、電子放出素子に素子電圧V
aを印加するための電源、80は放出電流Ieを測定す
るための電流計である。一例として、アノード電極4の
電圧を0V〜10kVの範囲とし、アノード電極4とエ
ミッタ3との距離Hを0.1mm〜3mmの範囲として
測定を行うことができる。また、図示はしていないが図
2に示すゲート5を有する電子放出素子の評価用に別系
統の電源と電流計が用意されている。この電源の電圧は
0〜1kVの範囲で設定できる。
【0074】真空容器82内には、不図示の真空計等の
真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、
所望の真空雰囲気下での測定評価を行えるようになって
いる。排気ポンプ83は、ターボポンプ、ロータリーポ
ンプからなる通常の高真空装置系と更に、イオンポンプ
等からなる超高真空装置系とにより構成されている。こ
こに示した電子源基板を配した真空処理装置の全体は、
不図示のヒーターにより800℃まで加熱できる。従っ
て、この真空処理装置を用いると、前述の水素アニール
処理の工程も行うことができる。
【0075】図9は、図8に示した真空処理装置を用い
て測定されたもので、放出電流Ieと印加電圧Vaの関
係をゲート電圧Vgを200V,100V,0Vと変え
て測定した場合の例である。図9においてはこの場合、
縦、横軸ともリニアスケールであり、縦軸は任意単位で
ある。
【0076】図9からも明らかなように、本発明の適用
可能な電界電子放出素子は、放出電流Ieに関して以下
の特徴的性質を有する。即ち、 (1)本電界電子放出素子はある電圧(しきい値電圧と
呼ぶ、図9中のVth)以上の素子電圧を印加すると急激
に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧Vth以下で
は放出電流Ieがほとんど検出されない。つまり、放出
電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vthを持った非線
形素子である。
【0077】(2)放出電流Ieがアノード電圧Vaや
ゲート電圧Vgに単調増加依存するため、放出電流Ie
はアノード電圧Vaやゲート電圧Vgで制御できる。
【0078】(3)放出電流Ieがアノード電圧Vより
小さい電圧のゲート電圧Vgにより制御でき、駆動電圧
を下げることができる。
【0079】(4)アノード電極4に捕捉される放出電
荷は、アノード電圧Vaやゲート電圧Vgを印加する時
間に依存する。つまり、アノード電極4に捕捉される電
荷量は、アノード電圧Vaやゲート電圧Vgを印加する
時間により制御できる。 以上の説明より理解されるように、本発明の適用可能な
電子放出素子は、入力信号に応じて、電子放出特性を容
易に制御できることになる。この性質を利用すると、複
数の電子放出素子を配して構成した電子源、画像形成装
置等、多方面への応用が可能となる。
【0080】
【実施例】以下に、実施例をあげて、本発明をさらに詳
述する。
【0081】[実施例1]本発明にかかわる基本的な電
界電子放出素子の構成は、図1の平面図及び図5(a)
の断面図と同様である。尚、基板は特性測定用と形状観
察用に各製法で2枚同じものを作製した。また、本発明
における電界電子放出素子の製造法は、基本的には図7
と同様である。以下、図1、図5(a)、および図8を
用いて、本発明に関わる素子の基本的な構成及び製造法
や評価方法を説明する。
【0082】図1において、1は基板、2は素子電極、
3はエミッタ、4はアノードである。
【0083】以下、順をおって製造方法の説明をする。
【0084】工程−A :清浄化した青板ガラス上に厚
さ0.5μmのシリコン酸化膜をスパッタ法で形成した
基板1上に、素子電極2パターンをホトレジスト(RD
−2000N−41 日立化成社製)により形成し、真
空蒸着法により厚さ100nmのPtを堆積した。ホト
レジストパターンを有機溶剤で溶解し、堆積膜をリフト
オフし、エミッタ領域として300μm角を有する素子
電極2を形成した。
【0085】工程−B:素子電極2のPtの上に代表的
なフラーレンであるC60を真空蒸着法により堆積させ
る。ステンレスセルにC60を入れ600℃に加熱し、2
00℃に保った基板のPt電極2上に膜厚100nm程
度のC60を成膜した。パターンはメタルデポマスクによ
り行い、エミッタ領域に300μm角に堆積させた。
【0086】工程−C:ダイヤモンド成膜をする前にC
60膜に各種の処理を行った。以下に素子番号と共に列挙
すると、 素子番号1:なにも施さない; 素子番号2:DC放電によりCF4プラズマを10分間
照射した; 素子番号3:アルゴンレーザーを30秒間照射した; 素子番号4:水銀ランプにより紫外線を30秒間照射し
た; 素子番号5:水素イオンの照射を10分間した;。
【0087】工程−D:電子放出素子用のダイヤモンド
の膜を成膜する。COとH2を原料ガスとして導入し、
約100パスカル程度の圧力にする。そして基板を25
0℃に加熱してECRプラズマ条件にして1時間成膜し
た。その結果ダイヤモンドを主成分とする膜が0.5μ
m程度成膜された。工程−C同様にパターニングはメタ
ルデポマスクにより行い、エミッタ3領域に300μm
角に堆積させた。
【0088】こうして、実施例1の電子放出素子を作製
し、素子を電子放出特性の評価の為に上述の図8の測定
評価装置で測定した。なお、評価条件としてアノード電
極とエミッタ間の距離を0.5mm、アノード電極の電
位を0〜5kV、真空装置内の真空度を10-6パスカル
とした。
【0089】その結果、素子番号1のサンプルではアノ
ード電圧3kV以上で約10mA以上の大きな放出電流
Ieが得られた。また素子番号2、3、4、5のサンプ
ルでは素子番号1のサンプルと比較して1.5倍以上の
放出電流が得られた。これらの素子を電子顕微鏡で観察
した形態は、図5(a)に示したものと同様であった。
また素子番号2、3、4、5のサンプルのフラーレン層
のC60膜の様子を調べる為に波長514.5nmのレー
ザーでラマン分析をしたところ1468cm-1に出るは
ずのAgモードのピークが低エネルギー側にシフトして
いた。これはC60の重合が起こっているためと考えられ
る。
【0090】次に、これらの素子の動作安定性をみるた
めに、アノードに3kVを印加して動作し、放出電流I
eの時間変化を測定した。この結果、100時間駆動後
も減少がほとんど見られず、揺らぎも少なかった。
【0091】また比較のために行程BとCを除外して素
子を作製し、同様の評価をしたところ、同じアノード電
圧における放出電子の量は1ケタ少なかった。
【0092】以上より、エミッタ部3にダイヤモンドと
フラーレンを含有させることにより、十分大きな放出電
流Ieが長時間安定に得られる電界電子放出素子が作製
できた。またフラーレン層のプラズマ処理や電磁波、イ
オン照射により特性が更に改善されることがわかった。
【0093】[実施例2]本発明の実施例2にかかわる
基本的な電界電子放出素子の構成は、図2と同様であ
る。本実施例における電界電子放出素子の製造法、及び
評価方法を図2、図8を用いて説明する。
【0094】図2において、1は基板、2は素子電極、
3はエミッタ、4はアノード、5はゲートである。
【0095】以下、順をおって製造方法の説明をする。
【0096】工程−A: 実施例1と同様な方法でエミ
ッタ領域として300μm角を確保できる用な素子電極
2を形成した。
【0097】工程−B:次にレーザーアブレーション法
によりフラーレンとダイヤモンドを含有する膜を作成す
る。レーザーにはパルスNd:YAGレーザーを用いタ
ーゲットにはグラファイトのターゲットとC60とC70
混合物からなるターゲットの2種類を用い、ターゲット
を回転させて双方のターゲットに順繰りにレーザーが照
射されるようにして膜厚約0.5μmになるまで成膜し
た。パターニングはメタルのデポマスクにより行い、エ
ミッタ領域に300μm角に堆積させた。
【0098】工程−C:つぎにこの素子を図8の真空装
置に収納し、以下の処置を施した。
【0099】素子番号1:なにも施さない; 素子番号2:RF放電により水素とアルゴンの混合ガス
のプラズマを10分間照射した; 素子番号3:基板温度を250℃に保ったまま徐々に水
素を導入してアニールした; 素子番号4:水素を10-3パスカル導入して30分初期
駆動を行った; 素子番号5:水素イオンの照射を10分間した;。
【0100】次に真空装置内の真空度を10-7パスカル
とし実施例1と同様に放出素子の特性の評価を行った。
この際図2の様にゲート5をエミッタ3から0.1mm
離して設置し、アノード4とゲート5間は1mmにしア
ノード電圧は5kVに固定した。
【0101】その結果、素子番号1のサンプルではゲー
ト電圧300V以上で約10mA以上の大きな放出電流
Ieが得られた。また素子番号2、4、5のサンプルで
は素子番号1のサンプルと比較して同じゲート電圧で
1.2倍以上の放出電流が得られた。また、素子番号3
のサンプルでは水素分圧が10-6パスカル以上でアニー
ルした場合に放出電流の効果が現われた。
【0102】これらの素子を電子顕微鏡およびレーザー
ラマンで分析をしたところで工程−Bで成膜した膜には
60とグラファイト、アモルファスカーボン、及び微粒
子のダイヤモンドが見い出された。また素子番号2のサ
ンプルでは一部C60の重合が起こっていることがわかっ
た。
【0103】次に、これらの素子の動作安定性をみるた
めに、アノードに5kV、ゲートに300Vを印加して
動作し、放出電流Ieの時間変化を測定した。この結
果、100時間駆動後も減少がほとんど見られず、揺ら
ぎも少なかった。
【0104】以上より、エミッタ部にダイヤモンドとフ
ラーレンであるC60とC70を含有させることにより、十
分大きな放出電流Ieが長時間安定に得られる電界電子
放出素子が作製できた。またエミッタ表面のプラズマ処
理や水素分圧が10-6パスカル以上でのアニール処理及
び初期駆動やイオン照射により特性が更に改善されるこ
とがわかった。
【0105】[実施例3]本発明の実施例3にかかわる
基本的な電界電子放出素子の構成は、実施例1と同様で
あるが工程−Aを素子番号毎に、以下の様に変更した。
【0106】素子番号1:実施例1と同様にPt電極の
みを100nm成膜した; 素子番号2:電極にNiを100nm成膜し後にカーボ
ンをEB蒸着して800℃でアニールして電極Niの上
にグラファイト層を約200nm成膜した;。
【0107】次に実施例1の工程−B、行程−Dと同様
にC60膜とダイヤモンド膜を成膜してから真空装置8内
に導入して真空度を10-7パスカルとし実施例1と同様
に放出素子の特性の評価を行った。
【0108】その結果、素子番号1のサンプルと比較し
て素子番号2のサンプルではアノード電圧3kV以上の
電圧において2倍以上の大きな放出電流Ieが得られ
た。
【0109】素子番号2のサンプルを電子顕微鏡で観察
したところグラファイト、C60、ダイヤモンドの順に積
層されていることが分かった。
【0110】次に、これらの素子の動作安定性をみるた
めに、アノードに3kVを印加して動作し、放出電流I
eの時間変化を測定した。この結果、100時間駆動後
も減少がほとんど見られず揺らぎも少なかった。
【0111】以上より、エミッタ部にグラファイト、フ
ラーレン、ダイヤモンドと接合させることにより、十分
大きな放出電流Ieが長時間安定に得られる電界電子放
出素子が作製できた。
【0112】[実施例4]本発明のダイヤモンド微粒子
を分散させた実施例を示す。実施例4にかかわる基本的
な電界電子放出素子の構成は、図1と同様である。本実
施例における電界電子放出素子の製造法、及び評価方法
を図1、図8を用いて説明する。
【0113】図1において、1は基板、2は素子電極、
3はエミッタ、4はアノードである。
【0114】以下、順をおって製造方法の説明をする。
【0115】工程−A:実施例1と同様にPt電極を1
00nm成膜してパターニングした。
【0116】工程−B:次に高周波イオンプレーティン
グ法によりC60膜を成膜する。成膜装置内にアルゴンガ
スを0.1パスカル導入してRFプラズマを発生させ、
同時にC60をアルミナルツボに入れ500℃で加熱蒸発
して基板上に膜厚約200nm成膜した。このとき基板
温度は100℃にした。
【0117】工程−C:次にダイヤモンド塗布を行うた
めに、水と、イソプロピルアルコール(約25%)、ポ
リビニルアルコール(約0.1%)、エチレングリコー
ル(約1%)、ダイヤモンド微粒子(デビアス社、天然
ダイヤモンドSND:0〜1/4μm 約1%)を十分
混合した分散液を用意し、その液を基板上にスピンコー
トにより塗布した。スピンコートの条件は1000回転
/分で1分間で行った。更に空気中120℃でアニール
しダイヤモンド微粒子をエミッタ部分ほ表面に付着させ
た。こうして形成されたダイヤモンド微粒子の密度は1
μm2あたり平均2個程度であった。
【0118】工程−D:次に作製した電界電子放出素子
を2種類の方法でアニールした。1つは水素2%窒素9
8%の1気圧のガス中、300℃で熱処理を行い、一方
はアルゴンレーザーでエミッタ上面からレーザー照射し
た。
【0119】次にこれらの電界電子放出素子を評価する
ために実施例1と同様に真空装置8内に導入して真空度
を10-7パスカルとし放出素子の特性の評価を行った。
【0120】その結果どちらの電界電子放出素子も実施
例1の素子番号1と同様な大きな放出電流Ieが得られ
た。
【0121】これらのサンプルを電子顕微鏡やラマン分
光で観察したところ、図6(a)の様な層構造をしてお
り、フラーレン層はC60とアモルファスカーボンの混合
であることが分かった。
【0122】次に、これらの素子の動作安定性をみるた
めに、3kVを印加して動作し、放出電流Ieの時間変
化を測定した。この結果、100時間駆動後も減少がほ
とんど見られず揺らぎも少なかった。
【0123】以上より、エミッタ部にダイヤモンド微粒
子を用いてフラーレンと接合させることにより、十分大
きな放出電流Ieが長時間安定に得られる電界電子放出
素子が作製できた。
【0124】[実施例5]ダイヤモンドとフラーレンを
高圧により接合した場合のバルク状の電子放出素子の実
施例を示す。実施例5にかかわる基本的な電界電子放出
素子の構成は、図10に示してある。図10においては
図1と同様、2は素子電極、3はエミッタ、4はアノー
ドである。
【0125】エミッタ3の部分は以下の2種類の方法で
作製した。
【0126】サンプル1:精製していないフラーレン原
料(カーボン、C60、C70などが主成分)をカプセル内
に入れ、そのカプセルに飛翔体を衝突させて瞬間的に3
0GPa以上の圧力にして取り出した。こうして得られ
たバルク状の材料を半球状に加工、研磨し、電極2とな
るMoの板の上にカーボンペーストで接着した。
【0127】サンプル2:C60とダイヤモンド微粒子、
およびグラファイトを1:1:3の質量比で混合した後
ボロンナイトライドのカプセル内に入れ、そのカプセル
をパイロフェライトの圧力媒体に挿入してからアンビル
装置により0.1〜5GPaの圧力に加圧した後800
℃30分の熱処理をし、冷却後に圧力を下げて取り出し
た。こうして得られたバルク状の材料を上記と同様に半
球状に加工、研磨し、電極2となるMoの板の上にカー
ボンペーストで接着した。
【0128】次にこれらの素子を評価するために実施例
1と同様に真空装置8内に導入して真空度を10-7パス
カルとし放出素子の特性の評価を行った。この際アノー
ド4とエミッタ3の間の距離は1mmにしアノード電圧
は1〜10kVにした。
【0129】その結果、サンプル1の素子ではアノード
電圧2kV以上で放出電流が観測され、数10mA以上
の大きな放出電流Ieが得られた。またサンプル2の素
子では圧力が1GPa以上の場合に同様な放出電流Ie
が観測された。これらのサンプルを電子顕微鏡やラマン
分光で観察したところサンプル1ではダイヤモンド微粒
子とC60の混合物が得られており、またサンプル2では
ダイヤモンドーフラーレンーグラファイトの接合が得ら
れていて、更にフラーレン層のC60では重合が見られ
た。
【0130】次に、これらの素子の動作安定性をみるた
めに、3kVを印加して動作し、放出電流Ieの時間変
化を測定した。この結果、100時間駆動後も減少がほ
とんど見られず揺らぎも少なかった。
【0131】以上より、エミッタ部にダイヤモンド微粒
子とフラーレンを接合させたバルク状のエミッタを用い
ても、十分大きな放出電流Ieが長時間安定に得られる
電界電子放出素子を作製できた。
【0132】[実施例6]本発明の電界電子放出素子に
おけるフラーレンがあらかじめ接合されたダイヤモンド
微粒子を分散させた実施例を示す。実施例6で用いられ
るダイヤモンドとフラーレンが接合された原料は、実施
例5の方法で作製されたものを粉体にしたものである。
本実施例における電界電子放出素子の製造法、及び評価
方法を図1、図8を用いて説明する。
【0133】以下、順をおって製造方法の説明をする。
【0134】工程−A:実施例1と同様に、Pt電極2
を100nm成膜してパターニングした。
【0135】工程−B:次にカーボンペーストをエミッ
タ3部分に塗布し、ペーストが乾かない内にダイヤモン
ドとフラーレンが接合された原料粉をスプレーコートし
た。原料粉は実施例5で作製した2種類を用意し、本実
施例6においても2種類のサンプルを作製した。
【0136】工程−C:次にスプレーコートした電界電
子放出素子を水素2%、窒素98%の1気圧のガス中、
200℃で熱処理を行なった。
【0137】次にこれらの素子を評価するために、実施
例1と同様に真空装置8内に導入して真空度を10-7
スカルとし放出素子の特性の評価を行った。
【0138】その結果、どちらの素子も実施例1の素子
番号1と同様な大きな放出電流Ieが得られた。
【0139】これらのサンプルを電子顕微鏡で観察した
ところ図6(b)の様な層構造をしていることが分かっ
た。
【0140】次に、これらの電界電子放出素子の動作安
定性をみるために、3kVを印加して動作し、放出電流
Ieの時間変化を測定した。この結果、100時間駆動
後も減少がほとんど見られず揺らぎも少なかった。
【0141】以上より、ダイヤモンドとフラーレンを高
圧で接合させた原料を用いて膜状の電子放出素子を作製
しても、十分大きな放出電流Ieが長時間安定に得られ
る電界電子放出素子が作製できた。
【0142】
【発明の効果】本発明の電界電子放出素子および電子放
出素子の製造方法により以下の効果が望まれる。
【0143】(1)素子の電子放出量を増大できる; (2)長寿命の電界電子放出素子ができる; (3)動作駆動時の放出電流のノイズや揺らぎを少なく
することができる; (4)ダイヤモンド微粒子を利用できるので簡便に低コ
ストで製造できる;
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の垂直型電界電子放出素子の1例を示す
模式図である。
【図2】本発明のゲートを有する垂直型電界電子放出素
子の1例を示す模式図である。
【図3】本発明の横型電界電子放出素子の1例を示す模
式図である。
【図4】本発明のゲートを有する横型電界電子放出素子
の1例を示す模式図である。
【図5】本発明のダイヤモンド膜を用いた場合のエミッ
タ部の断面拡大図である。
【図6】本発明のダイヤモンド微粒子を用いた場合のエ
ミッタ部の断面拡大図である。
【図7】本発明の垂直型電界電子放出素子の製造方法の
1例を示す模式図である。
【図8】測定評価機能を備えた真空処理装置の一例を示
す模式図である。
【図9】本発明の電界電子放出素子の放出電流Ieと素
子電圧Vfの関係のゲート電圧依存の一例を示すグラフ
である。
【図10】本発明のバルク材料をもちいた場合の垂直型
電界電子放出素子の1例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 基板 2 素子電極 3 エミッタ 4 アノード 5 ゲート 6 段差部 51 ダイヤモンド層 52 フラーレン層 53 伝導層 61 ダイヤモンド微粒子 80 エミッタとアノード間を流れる電流を測定するた
めの電流計 81 エミッタとアノード間に電圧を印加するための電
源 82 真空装置 83 排気ポンプ

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 素子電極と、前記素子電極上に配置され
    たエミッタ部と、アノード部とを備える電界電子放出素
    子において、前記エミッタ部は、少なくともダイヤモン
    ドと、前記素子電極及びダイヤモンドに接合したフラー
    レンを有していることを特徴とする電界電子放出素
    子。
  2. 【請求項2】 素子電極と、前記素子電極上に配置され
    たエミッタ部と、アノード部とを備える電界電子放出素
    子において、前記エミッタ部は、ダイヤモンドと、前記
    ダイヤモンドに接合されたフラーレンと、前記素子電極
    及びフラーレンに電気的に接続された伝導層とを有して
    いることを特徴とする電界電子放出素子。
  3. 【請求項3】 前記素子電極は、グラファイト、非晶質
    カーボン、カーバイト、Ti、Nb、Ta、Mo、V、
    Zr、W、Crから選択される材料にて構成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の電界電子放出素子。
  4. 【請求項4】 前記伝導層は、グラファイト、非晶質カ
    ーボン、カーバイト、Ti、Nb、Ta、Mo、V、Z
    r、W、Crから選択される材料にて構成されているこ
    とを特徴とする請求項2に記載の電界電子放出素子。
  5. 【請求項5】 前記フラーレンがC60もしくはC70であ
    ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載
    電界電子放出素子。
  6. 【請求項6】 前記フラーレンが重合していることを特
    徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電界電子
    放出素子。
  7. 【請求項7】 前記ダイヤモンドが薄膜であることを特
    徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電界電子
    放出素子。
  8. 【請求項8】 前記ダイヤモンドが微粒子であることを
    特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電界電
    子放出素子。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至のいずれか1項に記載の
    電界電子放出素子を作製する工程において、少なくとも
    フラーレンを1GPa以上の圧力で処理することを特徴
    とする電界電子放出素子の作製方法。
  10. 【請求項10】 請求項1乃至のいずれか1項に記載
    の電界電子放出素子を作製する工程において、前記エミ
    ッタ部の表面をプラズマで処理することを特徴とする電
    界電子放出素子の作製方法。
  11. 【請求項11】 請求項1乃至のいずれか1項に記載
    の電界電子放出素子を作製する工程において、前記エミ
    ッタ部の表面を電磁波で照射することを特徴とする電界
    電子放出素子の作製方法。
  12. 【請求項12】 請求項1乃至のいずれか1項に記載
    の電界電子放出素子を作製する工程において、前記エミ
    ッタ部の表面をイオン照射することを特徴とする電界電
    子放出素子の作製方法。
  13. 【請求項13】 請求項1乃至のいずれか1項に記載
    の電界電子放出素子を作製する工程において、水素分圧
    10 -6 パスカル以上の雰囲気でアニールする工程を有す
    ることを特徴とする電界電子放出素子の作製方法。
  14. 【請求項14】 請求項1乃至のいずれか1項に記載
    の電界電子放出素子を作製する工程において、10-2
    スカル以下の雰囲気で前記電界電子放出素子を初期駆動
    する工程を有することを特徴とする電界電子放出素子の
    作製方法。
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