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JP3343160B2 - 液晶表示装置 - Google Patents

液晶表示装置

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Publication number
JP3343160B2
JP3343160B2 JP26155593A JP26155593A JP3343160B2 JP 3343160 B2 JP3343160 B2 JP 3343160B2 JP 26155593 A JP26155593 A JP 26155593A JP 26155593 A JP26155593 A JP 26155593A JP 3343160 B2 JP3343160 B2 JP 3343160B2
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JP
Japan
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region
ldd
tft
concentration impurity
drain
Prior art date
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JP26155593A
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English (en)
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JPH06265940A (ja
Inventor
正文 国井
祐司 林
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Sony Corp
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Sony Corp
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Publication date
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Application filed by Sony Corp filed Critical Sony Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアクティブマトリクス型
の液晶表示装置に関する。より詳しくは能動素子として
集積形成される薄膜トランジスタの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】薄膜トランジスタ(以下TFTと称す
る)はアクティブマトリクス型の液晶表示装置や密着型
イメージセンサ等に応用できる為、近年その開発が活発
に行なわれている。特に薄膜材料として多結晶シリコン
(以下poly−Siと称する)は、表示部やセンサ部
を構成するTFTに加えて、周辺駆動回路を構成するT
FTを同一基板上に集積形成できる為注目を集めてい
る。
【0003】アクティブマトリクス型液晶表示装置の画
素をオン/オフする為のスイッチング素子として用いら
れるTFTについては、特に画素輝点欠陥の原因となる
リーク電流を抑制する為、従来から様々な構造が提案さ
れ実用化されてきた。例えば、特公平3−38755号
公報に開示されている様に、LDD(LightlyD
oped Drain)構造のTFT(以下LDD T
FTと称する)が開発されている。このLDD TFT
はチャネル領域とドレイン領域端部との間にドレイン領
域よりも薄い低濃度不純物領域を有している。このLD
D構造は、ドレイン領域端部での電界集中を緩和する事
ができオフセットゲート構造と同様にリーク電流抑制効
果がある為、アクティブマトリクス型液晶表示装置等の
回路素子に応用されている。
【0004】本発明の背景を明らかにする為に、図12
を参照して従来のLDD構造を簡潔に説明する。石英基
板1の表面には、所定の形状にパタニングされたpol
y−Si膜が形成されている。このpoly−Si膜に
はチャネル領域2とその両側にソース領域3、ドレイン
領域5とが形成されている。又、チャネル領域2の両端
部には、上述した低濃度不純物領域あるいはLDD領域
6が介在している。ゲート酸化膜7及びゲート窒化膜8
を介してゲート電極9がパタニング形成されておりTF
Tを構成する。TFTの上には第1層間絶縁膜10が成
膜されている。さらにその上には配線電極11がパタニ
ング形成されておりコンタクトホールを介してソース領
域3に電気接続されている。さらに第2層間絶縁膜12
を介して画素電極13がパタニング形成されており、同
様にコンタクトホールを介してドレイン領域5に電気接
続されている。
【0005】TFTのリーク電流を減少させるもう一つ
の方法として、2個以上のゲート電極を設けた、所謂マ
ルチゲート構造のTFTが従来から知られており、例え
ば特開昭58−171860号や特開昭58−1800
63号等に開示されている。本発明の理解を容易にする
為に、図13を参照してマルチゲート構造のTFTを簡
潔に説明する。石英基板1の表面には所定の形状にパタ
ニングされたpoly−Si膜が形成されている。この
poly−Si膜には互いに分離した一対のチャネル領
域2が形成されており、両者は接続領域4により互いに
接続されている。なおこの接続領域4は一方のTFTに
属するソース領域及び他方のTFTに属するドレイン領
域を含んでいる為、以下の説明上場合によりソース/ド
レイン領域4として表示する事もある。一方のチャネル
領域2の端部にはソース領域3が形成されており、他方
のチャネル領域2の端部にはドレイン領域5が形成され
ている。又、ゲート酸化膜7を介して所定の形状にパタ
ニングされた一対のゲート電極9が夫々チャネル領域2
に整合して設けられている。第1層間絶縁膜10を介し
て配線電極11がパタニング形成されており、ソース領
域3に電気接続されている。さらに、第2層間絶縁膜1
2を介して画素電極13がパタニング形成されており同
じくコンタクトホールを介してドレイン領域5に電気接
続されている。このマルチゲートTFTは、等価回路的
には複数のTFTを直列接続した構成となっている。リ
ーク電流は複数のTFTのうち、オフ電流値の最も低い
TFTに依存する為、リーク電流を抑制する事ができや
はりアクティブマトリクス型液晶表示装置の画素スイッ
チング素子等に応用されている。
【0006】図14は、マルチゲート構造のTFTを採
用したアクティブマトリクス型液晶表示装置の1画素分
を切り取って示した等価回路図である。スイッチング素
子はTFT1ないしTFTnの直列接続からなり、個々
のゲート電極は夫々共通にゲート線に接続されている。
TFT1のソース領域端部は信号線に接続されている一
方、TFTnのドレイン領域端部は画素電極を介して液
晶を駆動する。なお、液晶と並列に補助容量も接続され
ている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のLDD TFT
構造では、LDD領域の不純物ドーズ量は1×1012
1×1013/cm2 程度である為、poly−Si膜中に
不純物イオン打ち込みを行なった場合、ドーズ量の僅な
変動でpoly−Si膜の比抵抗値が大きくばらついて
しまう。この為、LDD抵抗の変動が生じ易く、LDD
TFTのリーク電流のばらつきの原因となっていた。
リーク電流の高いTFTでは、特に周囲温度を高温(例
えば50〜80℃)にした時に、リーク電流が温度に対
して指数関数的に増大する為、液晶表示装置の画面上で
所謂高温輝点欠陥が現われるという課題があった。又、
TFTの活性領域として用いるpoly−Si膜の結晶
性の微妙な差によって、活性領域中の不純物イオンの活
性化率が異なる為、TFTの閾値電圧(Vth)がばら
つくという課題があった。さらに、TFTのゲート容量
と補助容量との間の容量カップリングにばらつきが存在
する為、アクティブマトリクス型液晶表示装置の画面に
薄い筋状の輝線欠陥が現われる事があり解決すべき課題
となっている。この容量カップリングによる輝線欠陥
は、特にドレイン電圧が比較的低い状態で画素電極に信
号電荷を書き込む場合に顕著になる。
【0008】一方、従来のマルチゲート構造のTFTで
はソース領域及びドレイン領域にドーピングされる不純
物に水平方向拡散がある為、例えばPイオンをドーピ
ングしたnチャネルTFTではチャネル長を5μm以下
にする事ができないという課題があった。チャネル長を
短縮化すると不純物の水平方向拡散の為実効チャネル長
が短くなり、リーク電流が極端に増大する。この為従来
のマルチゲート構造ではTFTの微細化が困難であり、
アクティブマトリクス型液晶表示装置の高精細化の障害
になっていた。これに加えて、従来のマルチゲート構造
においてもLDD構造と同様に高温輝点欠陥が多発して
いた。
【0009】加えて、TFTをLDD構造としても、信
号電荷のホールド期間中薄膜トランジスタのリークによ
る点欠陥画素の発生は完全には抑制できない。特に、全
体的にリークレベルが大きくなる高温(例えば55℃)
では、点滅状態に至る点欠陥画素が多発してしまう。そ
こで解析を試みた所、画素の点欠陥は液晶の交流駆動に
関連しており、印加電圧の極性に依存しソース/ドレイ
ン間にリーク電流が発生している事が判明した。具体的
には、正極性信号電荷の保持期間中連続してゲート電極
と画素電極との間に高電界が印加されており、この為局
在準位を介して流れるリーク電流は負極性信号電荷の保
持期間よりも遥かに大きくなってしまい、正極性保持期
間中高電位の画像信号レベルを十分ホールドできず結果
的に液晶に対する交流駆動のバランスが崩れ、点滅する
点欠陥画素が多発するという課題がある。
【0010】さらに別の観点から見た従来の技術の課題
を簡潔に説明する。アクティブマトリクス型液晶表示装
置の大型化及び高精細化につれて画素数が顕著に増大す
ると、前述した様に画素欠陥による歩留り低下が製造コ
スト上重大な問題になる。この対策の1つとして従来か
ら冗長構成が採用されている。冗長構成とは、本来不必
要であるが欠陥救済もしくは信頼性向上の為にやむを得
ず導入する構造と一般的には位置付けられている。例え
ば日経BP社発行「フラットパネルディスプレイ199
1」p.105〜108,p.201等に示す様に、画
素駆動用スイッチング素子として用いられるTFTに起
因する画素欠陥の救済策として、1画素に対して複数の
スイッチング素子を設けたり、予備のスイッチング素子
を設ける等の冗長構成が従来から知られている。しかし
ながらこれらの従来方法は上述した様に初期の製造歩留
りをある程度確保する為にやむなく採用されたものであ
り、複数のスイッチング素子を設けるという冗長性の代
償として製造工程の増加、配線の断線故障、接続工程の
複雑化、周辺駆動回路の複雑化等が伴ない、多くの副次
的な欠点を有していた。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述した従来の技術の課
題に鑑み、本発明はリーク電流が少なく、閾値電圧特性
の制御が容易であり、ゲート容量カップリングの悪影響
を受ける事がなく、安定した交流駆動の行なえる、微細
化の可能なアクティブマトリクス型液晶表示装置用のT
FT構造を提供する事を第1目的とする。かかる第1目
的を達成する為に以下の手段を講じた。即ち、本発明に
かかる液晶表示装置は、基本的な構成要素として、マト
リクス状に配列した画素電極とこの画素電極を駆動する
スイッチング素子とを備えた一方の基板と、対向電極を
有し前記一方の基板に対向配置された他方の基板と、両
方の基板に保持された液晶層とを備えている。本発明の
特徴事項として、前記スイッチング素子は複数個の薄膜
トランジスタを夫々のソース/ドレイン領域を兼ねる接
続領域によって直列接続し且つ各ゲート電極を互いに電
気接続したマルチゲート構造を有する。さらに、マルチ
ゲート構造を構成する各薄膜トランジスタは、少なくと
もソース領域又はドレイン領域とチャネル領域の間にソ
ース領域又はドレイン領域と同一導電型の低濃度不純物
領域を備えたLDD構造を有している。そして該接続領
域はソース領域及びドレイン領域と同じく、該低濃度不
純物領域より不純物濃度が高い。
【0012】好ましくは、各薄膜トランジスタは、ソー
ス領域及びドレイン領域の両方とチャネル領域の間に夫
々低濃度不純物領域を備えている。又好ましくは、前記
スイッチング素子は直列接続された一対の薄膜トランジ
スタからなり、一方はソース領域とチャネル領域の間に
のみ低濃度不純物領域を有し、他方はドレイン領域とチ
ャネル領域の間にのみ低濃度不純物領域を有する対称構
造としても良い。さらに好ましくは、各薄膜トランジス
タは5μm以下のチャネル長を有している。
【0013】特に液晶の交流駆動を安定化する為、複数
個の薄膜トランジスタに設けられた複数個の低濃度不純
物領域のうち少なくとも1個は、他の低濃度不純物領域
と異なる長さ寸法を有する様にした。具体的には、画素
電極に一番近い低濃度不純物領域が、他の低濃度不純物
領域に比べて長くなる様にした。あるいは、複数個の薄
膜トランジスタに設けられた複数個の低濃度不純物領域
のうち少なくとも1個は、他の低濃度不純物領域と異な
る濃度を有する様にしても良い。具体的には、画素電極
に一番近い低濃度不純物領域が、他の低濃度不純物領域
に比べて小さな濃度を有する。
【0014】本発明の第2の目的は、1個の画素に対し
て複数のスイッチング素子を用いる事なくスイッチング
素子自体に冗長性を持たせ、配線の複雑化及び周辺駆動
回路の複雑化をもたらす事なく製造歩留り及び信頼性を
改善する事である。かかる第2の目的を達成する為に以
下の手段を講じた。即ちマトリクス状に配列した画素用
の電極とこの電極を駆動するスイッチング素子とを備え
た表示用の基板において、前記スイッチング素子は基本
的に複数個の薄膜トランジスタからなり各ゲート電極を
共通接続したマルチゲート構造を有する。特徴事項とし
て個々の薄膜トランジスタは低濃度不純物領域であるL
DD領域を備えたLDD型のリーク電流抑制構造を有し
ており、少なくとも2個の該薄膜トランジスタを夫々の
ソース/ドレイン領域を兼ねる接続領域によって直列接
続し、該接続領域はソース領域及びドレイン領域と同じ
く、該低濃度不純物領域より不純物濃度が高く、電流リ
ーク故障に対する冗長性を付与している。この場合、L
DD型の薄膜トランジスタは、少なくともドレインとし
て機能する不純物領域とチャネル領域との間に、該不純
物領域と同一導電型でより低濃度のLDD領域を有して
いる。又、前記LDD型の薄膜トランジスタは該チャネ
ル領域の両側で交互にドレインとして機能する不純物領
域及び付随するLDD領域を有している。
【0015】
【作用】本発明の第一側面によれば、画素スイッチング
素子用TFTのゲート電極をマルチゲート構造とし、且
つLDD構造を採用している。両構造を組み合せる事に
より、夫々の長所が生かされるとともに短所が除かれる
という顕著な相乗効果が得られる。即ち、リーク電流を
低く抑制でき閾値電圧(Vth)及びゲート容量カップ
リングのばらつきを少なくし、チャネル長の短縮化を図
る事ができる。特に、マルチゲート構造とLDD構造を
組み合わせた画素スイッチング素子用TFTにおいて、
画素電極に近接する低濃度不純物領域(LDD領域)の
長さ又は濃度を残りの低濃度不純物領域と異ならせる事
により、画素電位の正極性保持期間中チャネル領域にお
ける電界の集中を小さく抑える事ができ局在準位を介し
てのリーク電流を抑制する。さらに、リーク電流を低く
抑えたまま高い駆動電流又はオン電流を得る事ができる
ので、アクティブマトリクス型液晶表示装置の高性能化
に大きく寄与する。又TFT設計の自由度が高くなる為
液晶表示装置の開口率向上にも寄与できる。
【0016】本発明の第二側面によれば、リーク電流抑
制構造を有する薄膜トランジスタを2個以上直列接続し
てマルチゲート構造としており、スイッチング素子自体
に電流リーク故障に対する冗長性を付与している。換言
すると、複数個の薄膜トランジスタのうち少なくとも2
個は、TFT単独でも画素欠陥とならない程度にリーク
電流が小さい。従って、製造工程段階もしくは実使用状
態で1個のTFTが電流リーク故障を生じても、残りの
TFTが補完的に作用しスイッチング素子自体としては
正常に動作可能としている。この様に単独のスイッチン
グ素子自体に冗長性を持たせている為、配線及び周辺駆
動回路の複雑化を招く事なく製造歩留り及び信頼性を従
来に比し飛躍的に改善する事が可能である。
【0017】
【実施例】以下図面を参照して本発明の好適な実施例を
詳細に説明する。図1は本発明にかかるアクティブマト
リクス型液晶表示装置の第1実施例を示しており、特に
要部となるTFT周辺を拡大して表わした部分断面図で
ある。図示するTFTはnチャネル型でありアクティブ
マトリクス型液晶表示装置の画素駆動用スイッチング素
子を構成する。絶縁基板例えば石英基板1の上にはパタ
ニングされた多結晶半導体層例えばpoly−Si膜が
形成されている。この膜にはソース領域3と、ソース/
ドレイン領域(接続領域)4と、ドレイン領域5と、こ
の3者の間に位置する一対のチャネル領域2とが形成さ
れている。ソース領域3、ソース/ドレイン領域4及び
ドレイン領域5と、各チャネル領域2との間には夫々ソ
ース領域及びドレイン領域と同一導電型の低濃度不純物
領域即ちLDD領域6が合計4箇所形成されている。各
チャネル領域2の上方には夫々ゲート絶縁膜を介して対
応するゲート電極9が形成されている。このゲート絶縁
膜は2層構造を有しゲート酸化膜7とゲート窒化膜8と
からなる。石英基板1はPSG等からなる第1層間絶縁
膜10により被覆されている。第1層間絶縁膜10に形
成されたコンタクトホールを介して、アルミニウム等か
らなる配線電極11がソース領域3に電気接続されてい
る。同じくコンタクトホールを介してITO等の透明導
電材料からなる画素電極13がドレイン領域5に電気接
続されている。この画素電極13はPSG等からなる第
2層間絶縁膜12の上に成膜されている。
【0018】引続き図1を参照して、本発明の機能的な
利点について詳細に説明する。先ず最初にリーク電流抑
制機能について説明する。一般に、TFTの活性領域と
なるpoly−Si膜は単結晶シリコンに比し欠陥密度
が大きいのでリーク電流が増大する傾向にある。この
為、通常水素拡散処理を施し欠陥密度を減少させてTF
Tのリーク電流を下げる様にしている。水素化が進むと
poly−Siの欠陥準位が減少し、結晶粒界のエネル
ギー障壁が小さくなるのでLDD抵抗が減少する。LD
D抵抗は水素化の程度に大きく左右されるので、水素化
の状態によってはウェハ内での個々のTFTのLDD抵
抗が大きくばらつく。この結果、従来ある統計的な確率
でリーク電流の大きい異常TFTが出現していた。これ
に対し、本発明のマルチゲート構造LDD TFTで
は、等価回路的に直列接続された複数のTFTのうち最
もオフ電流の小さいTFTでリーク電流の実効値が決定
される。この為、水素化の程度の相違によるリーク電流
のばらつきは激減した。
【0019】次に閾値電圧の安定化機能を説明する。水
素化の程度はリーク電流ばかりでなくTFTの閾値電圧
Vthにも影響を及ぼす。水素化が過度に進行するとT
FTのVthが低下し、ゲートオフの状態でも電流が流
れる様になる。この為、従来のTFTでは所謂Vth輝
点と呼ばれる画素欠陥が発生し問題となっていた。これ
に対し、本発明のマルチゲート構造LDD TFTで
は、Vthの値は直列接続された複数のTFTのうち最
もVthの高いTFTで決定される。この結果、Vth
のばらつきも抑制されVth輝点欠陥も激減した。
【0020】次に従来の単一ゲート構造LDD TFT
で問題となっていたゲート容量カップリングのばらつき
についても改善する事ができた。本発明のマルチゲート
構造LDD TFTではTFT群の間でのゲート容量ば
らつきは、単一のTFTのゲート容量ばらつきよりも小
さいので、従来の単一ゲート型LDD TFTに比較す
ると輝線欠陥の程度を軽減する事ができた。
【0021】さらに、チャネル長の短縮化について説明
する。LDD領域を設けない従来のマルチゲート構造T
FTでは、ソース領域及びドレイン領域にドーピングさ
れる不純物の水平方向拡散が大きいので、活性領域とし
てpoly−Si膜を用いた場合設定チャネル長を5μ
mにすると実効チャネル長は3μm以下になってしま
う。この為ドレイン領域端部における電界集中が大きく
なりリーク電流が増大する。従ってアクティブマトリク
ス型液晶表示装置の高精細化及び高開口率化にとっては
不利である。これに対し、本発明のマルチゲート構造L
DD TFTでは、LDD領域を設ける事によりドレイ
ン領域端部での電界集中を緩和する事ができるので、設
定チャネル長を5μm以下にする事が可能である。即
ち、本発明によりアクティブマトリクス型液晶表示装置
の高精細化及び高開口率化を図る事が可能になる。
【0022】以上に説明した本発明の利点をより明確に
示す為、図9に本発明にかかるマルチゲート構造LDD
TFTのゲート電圧対ドレイン電流曲線を示す。又、
比較の為図10に従来のマルチゲート構造TFTのゲー
ト電圧対ドレイン電流曲線を示す。なお、測定対象とな
ったダブルゲートTFTサンプルの合計チャネル長は3
μm+3μmであり、チャネル幅は3μmである。又、
ソース/ドレイン間電圧を5Vに設定しソース/ゲート
間電圧を−10〜+15Vに変化させた。LDDのない
従来のマルチゲートTFTではリーク電流が大きく上昇
し、且つTFT特性はデプレッション型の曲線を示すの
に対し、本発明のマルチゲート構造LDD TFTでは
リーク電流の上昇は全く見られない。
【0023】次に、図1に示したマルチゲート構造LD
D TFTの変形例を説明する。一般に、アクティブマ
トリクス型液晶表示装置では寿命劣化を抑制する為に液
晶層を交流駆動させている。この為、ソース側とドレイ
ン側は交互に入れ替るのでLDD領域はソース端とドレ
イン端に対して対称的に設ける事が好ましい。前述した
図1の例ではTFTが2個直列に接続されている。もち
ろんTFTの個数は3個以上であっても差し支えない。
液晶を交流駆動させる為ソース側とドレイン側は交互に
入れ替るので、LDDの構造及び位置関係はソース領域
及びドレイン領域に関し対称的である事が好ましい。即
ち、ソース領域及びドレイン領域は互いに等価で交換可
能である事が好ましい。従って、図1の実施例ではLD
D領域を各ゲート電極の端面に接して4箇所設けてあ
る。しかしながら、LDD領域の配置は図1に示した実
施例に限られる訳ではない。画素スイッチング素子用T
FTの場合は、ソース/ドレインの対称性が保たれれば
良い。従って、例えば図2に示す様にソース領域3の端
部とドレイン領域5の端部の2箇所のみにLDD領域6
を設けても良い。あるいは、図3に示す様に内側のソー
ス/ドレイン領域4の両端2箇所のみにLDD領域6を
設けても良い。なお、理解を容易にする為に図2及び図
3の実施例で図1に示した実施例と共通の部分について
は同一の参照番号を付してある。
【0024】本発明にかかるマルチゲート構造LDD
TFTは、画素スイッチング素子用に加えて、同一基板
上に同時に形成される周辺回路例えば水平駆動回路や垂
直駆動回路にも用いる事ができる。この例を図4に示
す。なお理解を容易にする為に、図1に示した構造と対
応する部分については対応する参照番号を付してある。
一般に、周辺回路に組み込まれるTFTの場合には、ス
イッチング素子と異なりドレイン側の方向が予め決まっ
ている。従って、図4に示す様にドレイン領域5の端部
や、ソース/ドレイン領域4のドレイン側端部のみにL
DD領域6を設け、ソース領域3の端部やソース/ドレ
イン領域4のソース側端部にLDD領域を作らない様に
している。この様に、LDD領域を一部省略する事によ
りTFTのオン電流が増加し駆動能力が改善される。
【0025】次に、図5ないし図8を参照して本発明に
かかるマルチゲート構造LDD−TFTの製造工程を詳
細に説明する。先ず図5の工程Aにおいて、石英基板1
01上にLPCVD法でpoly−Si薄膜102を約
75nmの膜厚で成膜する。必要ならば、この後Si
オンをイオンインプランテーションする事によりpol
y−Si薄膜102を非晶質化し、続いて600℃程度
の温度で炉アニールする事により多結晶シリコンを大粒
径化する。なお、非晶質シリコンを予め形成する場合に
はプラズマ化学気相成長法(PCVD法)を用いて15
0〜250℃程度の温度で成膜しても良い。次に工程B
において、poly−Si薄膜102を所定のパタンに
エッチングする。続いてpoly−Si薄膜102を酸
化しその表面にゲート酸化膜103を約60nmの膜厚で
形成する。その後、工程CにおいてTFT閾値電圧調整
用にBイオンを打ち込む。
【0026】図6の工程Dにおいて、ゲート酸化膜10
3の上にLPCVD法で窒化シリコン膜(Si3
4 膜)104を約10〜20nmの膜厚で形成する。場合
によってはこの窒化シリコン膜104の表面を酸化し、
SiO2 膜を約1〜2nmの膜厚で形成する。この様にし
て得られた複合ゲート絶縁膜は、SiO2 /Si3 4
/SiO2 の3層構造となる為ONO構造と呼ばれてい
る。この様な構造にするのはゲート耐圧を十分確保し、
信頼性を向上させる為である。続いて工程Eにおいて、
ゲート絶縁膜上に燐ドープの低抵抗多結晶シリコンを約
350nmの膜厚で形成した後、所定の形状にパタニング
して一対のゲート電極105を得る。このゲート電極の
形成方法には以下の3通りがある。第1の方法は、ノン
ドープの多結晶シリコン薄膜を形成し、PClO3 ガス
から燐を拡散させるものである。第2の方法は、PCl
3 ガスの代わりにPSG膜を用いて燐拡散を行なうも
のである。第3の方法は、LPCVD法でSiH4 ガス
とPH3 ガスの混合気体を熱分解しドープトpoly−
Siを成膜するものである。何れの方法でも良いが、本
実施例では第1番目の方法を採用した。なお本実施例で
は、各TFTのチャネル長Lを3μmに設定しチャネル
幅Wが3μmとなる様にゲート電極をパタニングした。
次にLDD領域を形成する工程Fに移る。LDD領域を
形成する為には、nチャネルTFTの場合、ゲート電極
105を形成した後As又はPイオンを0.5〜
1.5×1013/cm2 のドーズ量で打ち込む。pチャネ
ルTFTの場合には、As又はPイオンの代わりに
イオンを0.1〜2.0×1013/cm2 のドーズ量
で同様に打ち込めば良い。次に工程GにおいてSi3
4 膜104をゲート電極105の周囲に沿って所定の形
状にカットする。
【0027】図7の工程Hにおいて、ゲート電極105
の両側面から1μmの範囲をLDD領域106として残
す様にレジスト107を形成する。続いて、不純物イオ
ンを1〜3×1015/cm2 のドーズ量で打ち込みソース
領域及びドレイン領域を形成する。nチャネルTFTの
場合にはAs又はPイオンを用い、pチャネルTF
Tの場合にはBイオンを打ち込む。LDD領域106
の長さ寸法は1μmに限られるものではないが、リーク
電流低減の要求が厳しい画素スイッチング素子用TFT
では、LDD長は0.5μm以上が望ましい。この後工
程IにおいてLPCVD法によりPSGからなる第1層
間絶縁膜108を約600nmの膜厚で形成した後、10
00℃10分間の窒素雰囲気アニールを行ないソース領
域、ドレイン領域、LDD領域を活性化させる。続いて
工程Jにおいてコンタクトホール109を第1層間絶縁
膜108の所定箇所に形成する。
【0028】図8の工程Kにおいて配線電極110とな
る金属アルミニウムを約600nmの膜厚で堆積しパタニ
ングする。この上にさらにPSGからなる第2層間絶縁
膜111を約400nmの膜厚で形成する。次に工程Lに
おいて、PCVD法により窒化シリコン膜(P−SiN
x膜)112を約100nmの膜厚で形成する。このP−
SiNx膜112は水素を多量に含有する為、成膜後に
アニールを行なう事によりTFTの水素化を効果的に実
施できる。水素化によりpoly−Si膜102の欠陥
密度を減少させ、欠陥に起因するTFTのリーク電流を
抑制する事ができる。最後に工程MにおいてP−SiN
x膜をエッチングにより全面除去し、コンタクトホール
を開口した後ITO等の透明導電膜を約150nmの膜厚
で形成する。このITO膜を所定の形状にパタニングし
て画素電極113を得る。
【0029】なお上述した実施例においては、各TFT
のチャネル長を3μmに設定し、チャネル幅を3μmに
設定し、LDD長を1μmに設定していたが、TFTの
寸法はこれに限られるものでない事は勿論である。又、
上述した実施例においては、TFTのゲート電極が多結
晶シリコンで構成され、ゲート絶縁膜が多層構造を有
し、配線電極が金属アルミニウムを用いているが、本発
明はこれに限られるものではない。ゲート電極は、例え
ばシリサイド,ポリサイド,Ta,Al,Cr,Mo,
Ni等の金属、あるいはこれらの合金を用いる事もでき
る。加えて、本発明はTFTとしてプレーナ型、正スタ
ガ型又は逆スタガ型の何れにも適用可能である事は勿論
である。
【0030】次に図11を参照して、本発明にかかるマ
ルチゲート構造LDD TFTを用いて構成されたアク
ティブマトリクス型液晶表示装置の構成例を説明する。
本装置は、アクティブマトリクス基板21と対向基板2
2とをスペーサ23により貼り合わせた構造を有し、両
基板の間に液晶層が充填されている。アクティブマトリ
クス基板21の表面にはマトリクス状に配列された画素
電極24とこの画素電極24を駆動するスイッチング素
子25とからなる液晶表示部26と、この液晶表示部2
6に接続される周辺駆動回路部27とが形成されてい
る。スイッチング素子25はマルチゲート構造LDD
TFTからなる。又、場合によっては周辺駆動回路27
を構成するTFTもこの構造としても良い。一方、対向
基板22の内表面には対向電極が形成されている。
【0031】次に本発明にかかるアクティブマトリクス
型液晶表示装置の第2実施例を説明する。本実施例は特
に交流駆動に起因するTFTのリーク電流増大防止構造
に関係する。第2実施例の説明に入る前に、背景理解を
容易にする為、図15を参照して交流駆動時の極性に依
存するTFTの電流リーク現象を簡潔に説明する。一般
にアクティブマトリクス型液晶表示装置では、対向電極
の電位VCOM に対する画素電極の電位が正極性の充電と
保持、負極性の充電と保持を繰り返しており、TFTは
画素電極側と入力信号線側の双方でソースにもドレイン
にもなっている。この正極性保持と負極性保持でソース
/ドレイン間のリーク電流の大きさが異なっている事が
判明した。画素電極とTFTのゲート電極間の電位差に
ついては、正極性保持の場合画素電極に高い信号電圧V
H が書き込まれる為、保持時間を通してオフ状態のゲー
ト電圧VGOFFとの間に大きな電位差が生じる。一方、負
極性保持の場合、オフ状態のゲート電圧VGOFFに近い反
転極性の電圧VL が書き込まれる為、ゲート電極との間
の電位差は小さい。即ち、正極性保持の間のみ連続して
ゲート電極と画素電極との間に高電界がかかっている事
を意味している。又、構造的にTFTが画素電極側と信
号線側とで対称な場合でも、製造工程上の理由により、
TFTの画素電極側の方が信号線側よりもダメージを受
け易くなっている。この為poly−Si膜中の欠陥準
位を通して流れるリーク電流は負極性保持の場合よりも
正極性保持の方が遥かに大きくなってしまい書き込まれ
た画素電位を十分保持できず輝点欠陥となって現われる
のである。この対策として、画素電極側のリーク電流を
より抑制する為構造的にTFTを非対称にすると、画素
スイッチング用TFT設計の自由度が減る為液晶画素の
開口率を犠牲にせざるを得なかったり、又TFTのオン
電流を十分確保する事ができず画素電位の書き込み不足
が生ずるという課題があった。以下に説明する第2実施
例は以上の課題を解決するもので、TFT設計の自由度
を犠牲にする事なくTFTの高オン電流と低リーク電流
を同時に達成する事を目的とする。
【0032】図16はかかる第2実施例を示しており、
特に要部となるTFT周辺を拡大して表わした部分断面
図である。図示するTFTはnチャネル型でありアクテ
ィブマトリクス型液晶表示装置の画素駆動用スイッチン
グ素子を構成する。石英基板1の上にはパタニングされ
たpoly−Si膜が形成されている。この膜にはソー
ス領域3と、ソース/ドレイン領域(接続領域)4と、
ドレイン領域5と、この三者の間に位置する一対のチャ
ネル領域2とが形成されている。ソース領域3、ソース
/ドレイン領域4及びドレイン領域5と、各チャネル領
域2との間には夫々ソース領域及びドレイン領域と同一
導電型の低濃度不純物領域即ちLDD領域61〜64が
合計4個所形成されている。各チャネル領域2の上方に
は夫々ゲート絶縁膜を介して対応するゲート電極9が形
成されている。このゲート絶縁膜は二層構造を有しゲー
ト酸化膜7とゲート窒化膜8とからなる。石英基板1は
PSG等からなる第1層間絶縁膜10により被覆されて
いる。第1層間絶縁膜10に形成されたコンタクトホー
ルを介して、アルミニウム等からなる配線電極11がソ
ース領域3に電気接続されている。同じくコンタクトホ
ールを介してITOからなる画素電極13がドレイン領
域5に電気接続されている。この画素電極13は第2層
間絶縁膜12の上に成膜されている。
【0033】本実施例の特徴事項として複数個のTFT
に設けられた複数個のLDD領域のうち少なくとも1個
は、他のLDD領域と異なる長さを有している。即ち、
第1及び第2のLDD領域61,62の長さを夫々1μ
m、第3のLDD領域63の長さを0.5μm、第4の
LDD領域64の長さを1.5μmとした。第4のLD
D領域64の長さを1.5μmとしたのは画素電極側の
リーク電流を抑える為である。第3のLDD領域63の
長さを0.5μmとしたのは、第4のLDD領域64を
他のLDD領域より長くした事によるオン電流の落ち込
みを補償し、十分に高い書き込み電流を確保する為であ
る。第3のLDD領域63の長さを0.5μmに短縮し
てもリーク電流が増大する惧れはない。前述した様に正
極性電位を画素電極側が保持している場合に最も高い電
界がかかるのは第4のLDD領域64である事が解析に
より明らかになっている。
【0034】図17はnチャネル型LDD TFTのゲ
ート電圧/ドレイン電流曲線を示すグラフである。実線
は上述した第2実施例にかかるTFTの特性カーブを示
し、点線は従来のTFTの特性カーブである。この従来
例はチャネル長Lが5μmでチャネル幅Wが3μmのシ
ングルゲートLDD TFTであり、LDD長は1μ
m、LDD濃度は1×1013cm-2である。測定は何れの
場合も画素電極側がドレインとなる条件で行なった。ド
レイン電圧は10Vである。図から明らかな様に、第2
実施例にかかるTFTは従来のTFTに比べてリーク電
流が1桁低く、且つオン電流が2倍以上大きいという非
常に優れた特性を有している事がわかる。
【0035】次に、図18ないし図20を参照して上述
した第2実施例の製造工程を説明する。先ず石英基板2
01上にLPCVD法でpoly−Si膜202を約7
5nmの厚みで成膜する。必要ならばこの後Siイオン
をイオンインプランテーションする事により非晶質化
し、続いて600℃程度の温度で炉アニールする事によ
り、poly−Siを大粒径化する。なお最初から非晶
質シリコンを成膜する場合にはPCVD法を用いて15
0〜250℃程度の温度で形成しても良い。この様にし
て大粒径化されたpoly−Si膜をTFTに合わせた
パタンにエッチングする。続いてpoly−Si膜20
2を酸化し、ゲート酸化膜203を約60nmの膜厚で形
成する。このゲート酸化膜203上にLPCVD法でS
3 4 膜204を約10〜20nm成膜する。場合によ
ってはSi3 4 膜204を酸化し、SiO2 膜を約1
〜2nm形成する。この様にして形成したゲート絶縁膜は
SiO2 /Si3 4 /SiO2 の三層構造となる為O
NO構造と呼ばれている。この様な構造にするのはゲー
ト耐圧を十分確保し、信頼性を向上させる為である。こ
の後TFTの閾値電圧Vthを制御する為、必要ならば
イオンを1〜8×1012cm-2程度のドーズ量で打ち
込む。このゲート絶縁膜上に燐ドープの低抵抗多結晶シ
リコンを約350nm形成してゲート電極205とする。
ゲート電極の形成方法には3通りある。第1の方法は、
ノンドープ多結晶シリコン薄膜を形成しPClO3 ガス
から燐を拡散させる方法である。第2の方法は、PCl
3 ガスの代わりにPSG膜を用い燐拡散を行なう方法
である。第3の方法は、LPCVD法でSiH4 ガスと
PH3 ガスの混合気体を熱分解しドープトpoly−S
iを成膜する方法である。何れの方法を用いても良い
が、本実施例では第1の方法を採用した。なお本例では
ダブルゲートTFTのチャネル長Lは夫々2.5μmに
設定し、チャネル幅Wは3μmに設定した。続いてLD
D領域206の形成工程に移る。LDD領域を形成する
には、nチャネルTFTの場合、ゲート電極205の形
成後As又はPイオンを0.5〜1.5×1013
cm2 のドーズ量で打ち込む。pチャネルTFTの場合は
As又はPイオンの代わりにBイオンを0.1〜
2.0×1013/cm2 のドーズ量で同様に打ち込めば良
い。この後、ゲート電極205の周囲に沿ってSi3
4 膜204を所定の形状にカッティングする。
【0036】次に図19の工程に移る。ゲート電極20
5の両側面から一定の長さをLDD領域として残す様に
レジスト207を形成する。nチャネルTFTを形成す
る為、As又はPイオンを1〜3×1015/cm2
ドーズ量で打ち込みソース領域及びドレイン領域を設け
る。なおpチャネルTFTを形成する場合にはBイオ
ンを打ち込む。レジスト207のパタニング形状を適切
に設定して、夫々所望の長さ寸法を有するLDD領域を
残す。前述した様に、第1LDD領域208及び第2L
DD領域209の長さは1μm、第3LDD領域210
の長さは0.5μm、第4LDD領域211の長さは
1.5μmである。この後LPCVD法で第1PSG膜
212を約600nmの膜厚で形成し、1000℃10分
間のN2 アニールを行ないソース領域、ドレイン領域、
LDD領域を活性化させる。次いでコンタクトホール2
13を第1PSG膜212に開口する。
【0037】最後に図20の工程に移る。配線電極21
4となるアルミニウムを約600nm形成しパタニングす
る。この上にさらに第2PSG膜215を約400nm形
成する。続いてPCVD法で窒化シリコン膜(P−Si
x 膜)216を約100nm形成する。P−SiNx
は水素を多量に含有する為、成膜後にアニールする事で
TFTの水素化を効果的に行なえる。水素化によりpo
ly−Si膜の欠陥密度を減少させ、欠陥に起因するT
FTのリーク電流を下げる事ができる。最後にP−Si
x 膜をエッチング除去した後、コンタクトホールを開
けITO薄膜を約150nm形成する。このITO薄膜を
所定の形状にパタニングして画素電極217を形成す
る。
【0038】図21は本発明にかかるアクティブマトリ
クス型液晶表示装置の第3実施例を示す模式的な断面図
である。基本的には上述した第2実施例と同一の構造を
有しており、対応する部分には対応する参照番号を付し
て理解を容易にしている。異なる点は、第1ないし第4
LDD領域61,62,63,64のうち少なくとも1
個は、他のLDD領域と異なる濃度を有している事であ
る。逆に、全てのLDD領域は同一の長さ1.0μmに
設定されている。具体的には、画素電極13に一番近い
第4のLDD領域64が、他のLDD領域61,62,
63に比べて小さな濃度を有している。例えば、ゲート
電極9の形成後As又はPイオンを0.1〜0.4
×1013cm-2程度のドーズ量で打ち込み、次いで第4の
LDD領域64のみをレジストで覆った後再びAs
はPイオンを0.6〜1.2×1013cm-2程度のドー
ズ量で打ち込む。この様にして第4のLDD領域64の
みが濃度の低いTFTができるので、リーク電流を低く
抑える事ができる。本実施例では第1から第4までのL
DD領域の長さは全て1μmである。オン電流が不足す
る場合は前述した第2実施例と同様に第3のLDD領域
63の長さを、例えば0.5μm程度に短くしてやれ
ば、リーク電流を抑えたまま高いオン電流を確保する事
ができる。
【0039】言うまでもなくTFTのLDD長、LDD
濃度、及びそれらの組み合わせは第2及び第3実施例で
開示した場合に止まるものではない。LDD長、LDD
濃度、及びそれらの組み合わせはTFTを使用するアク
ティブマトリクス型液晶表示装置の仕様が異なれば、当
然それに合わせて最適化すべき性質のものだからであ
る。なお、第2及び第3実施例においてはTFTのチャ
ネル長を2.5μmに設定し、チャネル幅を3μmに設
定し、LDD長を1μmに設定していたが、TFTの寸
法はこれに限られるものでないのは勿論である。以上に
説明した第2及び第3実施例によればTFT設計時の自
由度が大きくなる為、画素電極パタンレイアウトを設計
する際の自由度も大きくなり、結果的に画素開口率が最
も大きくなる様にTFTを設計する事も可能になる。こ
の様に本発明は液晶表示装置の開口率を改善する点にも
大きな寄与がある。
【0040】次に、スイッチング素子の冗長性という別
の観点から本発明を詳細に説明する。例えば、図1に示
した第1実施例では、スイッチング素子は2個の薄膜ト
ランジスタからなり各ゲート電極を共通接続したダブル
ゲート構造を有している。なお、一般には3個以上のT
FTの直列接続を含めてマルチゲート構造と称してい
る。一対の薄膜トランジスタはリーク電流抑制構造を有
している。具体的にはLDD構造を有している。この2
個のLDD TFTを直列接続して電流リーク故障に対
する冗長性を確保するものである。以下、ダブルゲート
構造LDD TFTからなるスイッチング素子の冗長性
に関し、種々の欠陥モードを作成して評価を行なったの
で説明する。
【0041】先ず最初に図22を参照して評価の対象と
なったダブルゲートLDD TFTからなるスイッチン
グ素子のモデル構造を説明する。このスイッチング素子
はTFT1とTFT2の直列接続からなる。TFT1の
開放端側はソースとして接地し、TFT2の開放端側は
ドレインとして所定の電圧Vdsを印加する。又共通接
続されたゲートには所定のゲート電圧Vgsが印加され
る。この条件でスイッチング素子に流れるリーク電流を
測定し評価するものである。TFT1のチャネル領域両
側に設けられたLDD領域を,で表わし、TFT2
のチャネル領域両側に設けられたLDD領域を,で
表わす。
【0042】図22に示したモデルにおいて、4個のL
DD領域〜の1個又は2個を模擬的に破壊したモー
ドを複数種類作成し、リーク電流を測定した。その結果
を以下の表1に示す。
【表1】
【0043】表1において第1欄はダブルゲートLDD
TFTからなるスイッチング素子の各種欠陥モード1
〜12を挙げている。なお、これらのモードの中には比
較の為シングルゲートLDD TFTに関する欠陥モー
ドも含まれている。本モデルではTFTの寸法はチャネ
ル幅が50μmに設定され、チャネル長が2.5μmに
設定され、LDD長は1μmに設定されている。特に、
リーク電流の測定を容易とする為、チャネル幅を実際の
スイッチング素子用TFTの16.7倍に設定した。図
1の第2欄は各モードについて欠陥の生じたLDD領域
の箇所を示している。第2欄中〜は図22に示した
4個のLDD領域の位置に夫々対応している。例えばモ
ード1では全てのLDD領域〜に○印が付されてい
る。従って、モード1は欠陥のないダブルゲートLDD
TFTを表わしている。モード2ではLDD領域に
×印が付されている。従って、このモード2は図22を
参照するとTFT2のドレイン側LDD領域に欠陥が
ある事を意味している。なお、この欠陥は人為的にLD
D領域を削除する事によりシミュレートしている。以下
同様に、各モードについて欠陥LDD領域の箇所を表わ
している。但し、モード8及びモード10は比較の為に
挙げられたシングルゲートLDD TFTからなるスイ
ッチング素子であり、LDD領域,に該当する部分
がないので−印を付してある。表1の第3欄は各モード
についてリーク電流を測定した結果を表わしている。な
おこのリーク電流は図22を参照するとVgs=−6V
に設定し、Vds=+10Vに設定して測定したもので
ある。最後に表1の第4欄は各モード毎に評価結果を表
わす判定を示している。モード1〜モード9については
部分的にLDD欠陥が含まれている場合でも、スイッチ
ング素子として正常に動作し画素欠陥が認められない事
を表わしている。一方、モード10〜モード12につい
てはスイッチング素子が正常に動作せず、画素欠陥が現
われる事を示している。
【0044】以上の条件により作成された表1に基き、
ダブルゲート構造LDD TFTからなるスイッチング
素子の冗長性につき考察を加える。モード1は4個のL
DD領域〜に全て欠陥がない場合を示しており、リ
ーク電流は当然ながら7.8pAと低く画素欠陥は現われ
ない。次にモード2〜モード5は4個のLDD領域〜
のうち何れか1箇所が破壊もしくはダメージを受けた
場合である。この場合には、一対のTFTのうち一方は
完全に正常に動作する為、リーク電流は低く画素欠陥は
発生しない。又、モード6,7については片方のTFT
に含まれるLDD領域が両方ともダメージを受けた場合
である。この時にも残りのTFTが正常に動作する為リ
ーク電流は低く画素欠陥は発生しない。一方モード8は
比較の為シングルゲートLDD TFTからなるスイッ
チング素子を表わしており、LDD領域の破壊がない限
りリーク電流を抑制でき画素欠陥は発生しない。しかし
ながら、モード10に示す様にシングルゲートLDD
TFTの一方のLDD領域(モード10ではドレイン側
LDD領域)がダメージを受けるとリーク電流が極端に
増大し画素欠陥となる。従ってシングルゲート構造では
何等冗長性が得られず、LDD領域の破壊は直ちに画素
欠陥に繋がる。さらに、モード9,11はダブルゲート
構造で両TFTの夫々に1箇所ずつLDD領域のダメー
ジが生じた場合を表わしている。モート9では一方のT
FTのドレイン側LDD領域と他方のTFTのソース
側LDD領域が破壊されている。この場合でも、他方
のTFTのドレイン側LDD領域が効果的に機能しリ
ーク電流を抑制できる。これに対してモード11では各
TFTのドレイン側LDD領域,が同時に破壊され
ている。この時に限り、リーク電流が増大し画素欠陥が
発生する。従って、ダブルゲート構造では、少なくとも
ドレインとして機能する不純物領域とチャネル領域との
間にLDD領域を設ける事により、所望の冗長性を確保
する事が可能になる。但し、ダブルゲート構造のスイッ
チング素子を液晶画素駆動に用いた場合、交流駆動を行
なうのでソース領域とドレイン領域は交互に入れ替わり
互いに等価である。従ってこの場合には図1に示した第
1実施例の様に、一対のチャネル領域の両側に合計4箇
所のLDD領域を設ける事が最適な構造となる。最後に
モード12は4個のLDD領域が全て破壊された場合を
示しており、当然ながらリーク電流が増大し画素欠陥が
現われる。但し、モード12が発生する確率は統計的に
極めて低く、電流リーク性の画素欠陥を事実上完全にな
くす事ができる。
【0045】以上の考察から明らかな様に、ダブルゲー
ト構造を構成する一対のLDD TFTのうち少なくと
も一方が単独でも十分リーク電流を抑制する機能を保持
している時画素欠陥は発生しない事が理解される。1個
のTFTが製造工程中でリーク電流の増大をもたらす様
なダメージを受ける確率、あるいはリーク電流増大に繋
がる結晶欠陥を有する確率は、10万画素につき1〜数
画素にすぎず、10-5のオーダーである事が経験的に確
認されている。従って、直列接続された一対のTFTが
同時にダメージを受け、あるいは同時にリーク電流増大
に繋がる結晶欠陥を有していて実際の画素欠陥が発生す
る確率は(10-52 =10-10 となり、100億分の
1程度である。従って、事実上画素欠陥は消滅する事に
なる。実際に本発明にかかるダブルゲート構造LDD
TFTからなるスイッチング素子を用いてアクティブマ
トリクス型液晶表示装置を作成し、約3300万画素分
を検査したところ、スイッチング素子の電流リークが原
因となって生じる画素輝点欠陥は全く発生しておらず、
本発明にかかるダブルゲートLDD TFTの冗長性効
果は絶大である事が明らかである。
【0046】一方、従来のLDD領域を備えていないマ
ルチゲート構造TFTをスイッチング素子として利用し
た場合、電流リーク欠陥に対する冗長性は得られない。
なぜなら従来のマルチゲート構造TFTは1個のTFT
で十分にリーク電流を抑える事ができない為に考案され
たものであり、冗長性に必要な「1個のTFTでリーク
電流が十分に低い」という条件を満たしていないからで
ある。
【0047】又従来のシングルゲート構造LDD TF
Tを画素駆動用スイッチング素子に採用した場合、画素
欠陥の大部分が、スイッチング素子のオフ状態における
電流リーク増大故障に起因している事が明らかになって
いる。この様にTFTの電流リークが画素欠陥の大部分
を占めているのは、プラズマ工程、ラビング工程等の製
造処理中静電気が画素電極を通して画素電極側のTFT
ドレイン端部に位置するPN接合を破壊する事が主な原
因であると考えられている。この様なリーク欠陥は従来
のシングルゲート構造スイッチング素子を用いたアクテ
ィブマトリクス型液晶表示装置の場合、10万画素につ
き1〜数画素の割合で発生しており製造工程上の対策で
は静電気の発生を制御できず、完全に画素欠陥を撲滅す
る事ができなかった。又静電ダメージ以外にはTFTの
素子領域を構成するpoly−Siの結晶欠陥に起因す
るリーク電流増大も欠陥原因の1つであり、これも製造
工程上の改善では対処する事が困難であった。
【0048】さらにアクティブマトリクス型液晶表示装
置の製造歩留りを改善する為、従来から種々の冗長構成
が採用されてきた。例えば1画素に対して複数のスイッ
チング素子を設けたり、予備のスイッチング素子を設け
る等の構成が従来から知られている。しかしながらこれ
らの従来方法は初期の製造歩留りをある程度確保する為
やむなく採用されるものであり、複数のスイッチング素
子を1個の画素に対して設けるという冗長性の代償とし
て、製造工程の増加、配線の断線故障、接続工程の複雑
化、周辺駆動回路の複雑化等といった多くの欠点が生じ
ていた。これに対して本発明ではダブルゲート構造LD
D TFTを採用する事により単独のスイッチング素子
自体に冗長性を持たせており上述した従来の欠点は一切
存在しない。即ち、製造工程の増加はなく欠陥画素をリ
ペアする必要もなく、周辺駆動回路の変更も勿論必要な
い。以上述べた様に、ダブルゲート構造LDD TFT
によって得られる冗長性の利点は絶大であり実に図り知
れないものがある。特に次世代の高品位テレビジョンシ
ステム用に開発される数100万画素以上を含むアクテ
ィブマトリクス型液晶表示装置に対して、本発明は極め
て有効な技術となる。
【0049】なお本実施例ではダブルゲート構造LDD
TFTを例にとってスイッチング素子の冗長性を説明
したが、以上の説明から理解できる様に本発明はこれに
限られるものではない。例えば、1個のスイッチング素
子に含まれるTFTは2個に限られず3個以上のマルチ
ゲート構造としても良い。又スイッチング素子の構成要
素としてTFTに代え単結晶シリコンウェハ上に形成し
たMOSFETの直列接続であっても良い。さらにレー
ザアニールpoly−Si TFTの直列接続でも良い
し、アモルファスシリコンTFTの直列接続としても良
い。これらのトランジスタ素子はLDD TFTと同様
に所定の電流リーク抑制構造を備えている。又アクティ
ブマトリクス液晶表示装置として利用する場合、画素の
大きさや補助容量の大きさも本実施例に限られるもので
はない事は当然である。
【0050】最後に参考として、表1に示した各モード
1〜12の具体的な構成について説明する。先ず最初に
モード1については、図23に示すスイッチング素子構
成を採用した。この例ではスイッチング素子はnチャネ
ル型からなる一対のTFTを直列接続しており、例えば
アクティブマトリクス液晶表示装置の画素駆動に用いら
れる。液晶画素は一般に交流駆動する為、スイッチング
素子のソース側とドレイン側は交互に入れ替わる。従っ
て、LDD TFTの構造、位置関係はソース及びドレ
イン領域に対して対称でなくてはならない。即ち、ソー
ス及びドレイン領域は互いに等価で交換可能でなくては
ならない。従って基本的な構成となるモード1では、L
DD領域は一対のゲート電極の端面に接して4箇所設け
てある。以下具体的にその構成を説明する。石英等から
なる絶縁基板1の上にはパタニングされた多結晶半導体
層例えばpoly−Si膜が形成されている。この膜に
はソース領域3とソース/ドレイン領域4とドレイン領
域5と、この3者の間に位置する一対のチャネル領域2
とが形成されている。ソース領域3、ソース/ドレイン
領域4及びドレイン領域5と、各チャネル領域2との間
には同一導電型の低濃度不純物領域即ちLDD領域6が
合計4箇所形成されている。図22に示したモデルと対
応させる為、4個のLDD領域には〜の符号が付し
てある。各チャネル領域2の上方にはゲート絶縁膜を介
してゲート電極9が形成されている。絶縁基板1は層間
絶縁膜10により被覆されている。層間絶縁膜10に形
成されたコンタクトホールを介して配線電極11がソー
ス領域3に電気接続されている。同じくコンタクトホー
ルを介して画素電極13がドレイン領域5に電気接続さ
れている。
【0051】図24は図23に示したスイッチング素子
のドレイン電流(Ids)/ゲート電圧(Vgs)特性
を示すグラフである。表1において先に示した様に、ゲ
ート電圧Vgsを−6Vに設定した場合のリーク電流は
7.8pAであった。この様にダブルゲート構造LDD
TFTを採用する事によりスイッチング素子のリーク電
流を大幅に抑制できリーク電流増大等に起因する画素欠
陥を劇的に減少させる事に成功した。
【0052】図25はモード2に対応するスイッチング
素子構造を示している。このモード2では一方のLDD
TFTのドレイン端側に位置するLDD領域が除か
れており、等価的に考えると当該LDD部分にダメージ
が生じた事を意味している。即ちLDD領域を除く事
は当該部分の静電破壊あるいは結晶欠陥等をシミュレー
トしていると考えられる。なお層間絶縁膜、配線電極、
画素電極等の構造については図23に示した第1モード
と同一であるので図示を省略してある。以下全てのモー
ドについて同様である。
【0053】図25に示したモード2のスイッチング素
子について、ドレイン電流/ゲート電圧特性を測定した
結果を図26のグラフに示す。モード1と同一条件下で
のリーク電流は表1に示した様に27.7pAと高くなる
が、画素欠陥となる程ではなくリーク電流は十分低く抑
えられている。即ち、モード2の意味するところは、L
DD領域にダメージが生じてもスイッチング素子自体
は正常に動作可能であり所望の冗長性が得られている事
である。
【0054】次にモード3については、図25に示した
モード2の極性を反転する事により実現できる。即ちス
イッチング素子のドレイン電圧の極性を反転させ、ソー
ス端側となるLDD領域を省いた条件として、ドレイ
ン電流/ゲート電圧特性を測定した。このモード3は図
23の構造を参照すると、ソース端側の接合にダメージ
や結晶欠陥がある場合をシミュレートしていると考えら
れる。モード1と同条件下でのリーク電流測定結果は
9.0pAであり、リーク電流差は測定誤差範囲内になっ
ており、実質上ソース端側のダメージはリーク特性に影
響しない事が分かる。
【0055】次に図27はモード4に対応するモデル構
造を示しており、LDD領域が除かれている。即ちこ
の部分にダメージ又は結晶欠陥が発生した事をシミュレ
ートしている。この場合のリーク電流は表1に示す様に
14.6pA程度であり僅かに上昇するが十分に低い値で
あり画素欠陥とはならない。
【0056】次にモード5については図27に示したモ
ード4のスイッチング素子に対してTFTのドレイン電
圧の極性を反転させる事により実現した。即ち図27に
示すドレイン側とソース側を入れ替える事により、等価
的にLDD領域を除いた事になる。ドレイン電圧の極
性を反転させた条件でドレイン電流/ゲート電圧特性を
測定したところモード1と同一条件でのリーク電流は
6.6pA程度でありその差は誤差範囲内である。従っ
て、実質上LDD領域にダメージが加わってもスイッ
チング素子のリーク特性に影響しない事が分かる。
【0057】図28はモード6に対応するスイッチング
素子のモデルを表わしている。即ち一方のTFT側のL
DD領域,が両方とも除去されたものである。この
場合のリーク電流は13.1pA程度であり僅かに上昇す
るが十分に低い値であり、やはり画素欠陥とはならな
い。
【0058】モード7については、図28に示したモー
ド6のソース側とドレイン側を入れ替える事により実現
した。即ち、等価的に一対のLDD領域,を同時に
除去した事になる。この場合のリーク電流は25.5pA
とやや高くなるが、これも画素欠陥となる程ではなくリ
ーク電流は十分低く抑えられている。
【0059】モード8は比較の為作成されたものであ
り、シングルゲート構造のLDD TFTからなるスイ
ッチング素子である。チャネル幅は50μmに設定さ
れ、チャネル長は2.5μmに設定され、LDD長は1
μmに設定されている。モード1と同一条件で測定され
たリーク電流は24.6pA程度であり画素欠陥は発生し
ない。即ち、シングルゲート構造であってもLDD T
FTが正常である場合に限りスイッチング素子は正常に
動作する。しかしながら当然の様にシングルゲート構造
では所望の冗長性を得る事はできない。
【0060】図30はモード9に対応するスイッチング
素子のモデルを表わしている。即ちダブルゲートを構成
する一方のTFTからLDD領域が除かれ、同じく他
方のTFTからLDD領域が除かれている。この場合
におけるモード1と同一条件下のリーク電流は14.7
pA程度であり僅かに上昇するが十分に低い値であり、や
はり画素欠陥とはならない。即ち、一対のLDD TF
Tに同時にダメージが加わっても依然としてスイッチン
グ素子自体の正常な動作を確保でき所望の冗長性が得ら
れる。特にモード9の場合ドレイン側に位置するLDD
領域が残されておりこの存在がリーク電流抑制に大き
く寄与している。
【0061】図31は比較例として設けられたモード1
0に対応するスイッチング素子のモデル構造を表わして
いる。このスイッチング素子は、シングルゲート構造の
LDD TFTからなりドレイン側のLDD領域が除
去されている。なお比較の為ダブルゲート構造と同様
に、チャネル幅は50μmに設定され、チャネル長は
2.5μmに設定され、LDD長は1.0μmに設定さ
れている。
【0062】このモード10のドレイン電流/ゲート電
圧特性を図32のグラフに示す。このグラフから明らか
な様にリーク電流は大きく上昇し、モード1と同一条件
ではリーク電流が1nA以上となる。同時に短チャネル化
によりTFTの閾値電圧Vthが大きくデプレッション
側にシフトし、画素欠陥となる。
【0063】図33はモード11に対応するスイッチン
グ素子のモデル構造を表わしている。このモードでは一
方のTFTのドレイン側からLDD領域が除去され、
他方のTFTのドレイン側からもLDD領域が除去さ
れている。
【0064】図33に示したモード11のスイッチング
素子についてドレイン電流/ゲート電圧特性を測定した
結果を図34のグラフに示す。リーク電流が著しく増大
しており、モード1と同一測定条件でリーク電流は34
0pA程度である。
【0065】最後に図35は比較例としてモード12に
対応するスイッチング素子構造を示している。このモー
ドはダブルゲート構造を有しているが全てのLDD領域
〜が除去されており、結果的にLDD構造を採用し
ない従来のダブルゲート構造となっている。
【0066】図36は図35に示したモード12のスイ
ッチング素子のドレイン電流/ゲート電圧特性を示すグ
ラフである。図示する様にリーク電流は著しく増大して
おり、モード1と同一測定条件でリーク電流は488pA
程度である。
【0067】モード11,12の何れの場合も最早画素
欠陥を抑える事はできない。従ってリーク欠陥を抑える
為の冗長性を確保する為には、ダブルゲート構造を構成
する2個のTFTの各々が、そのTFTと等価な単独T
FTを画素駆動用スイッチング素子として用いた場合で
も画素欠陥が生じない程度にリーク電流が小さい事が必
要である事が分かる。
【0068】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明の一側面によ
れば、画素駆動用のスイッチング素子は、マルチゲート
構造にLDD構造を付加したTFTからなる為、微細化
してもリーク電流を低く抑制でき且つTFT閾値電圧の
ばらつきの少ない状態を容易に実現できるという効果が
ある。加えて、ゲート容量カップリングのばらつきを低
く抑える事もできるという効果がある。この為、高精
細、高解像度、高開口率のアクティブマトリクス型液晶
表示装置を実現できその効果は絶大なものがある。又、
複数個の低濃度不純物領域のうち少なくとも1個は他の
低濃度不純物領域と異なる長さ又は異なる濃度とする事
により、TFTのリーク電流を低く抑えたまま高いオン
電流を得る事ができるので、アクティブマトリクス型液
晶表示装置の高性能化に大きく寄与する。又TFT設計
の自由度が高くなる為画素開口率の向上にも寄与する。
本発明の他の側面によれば、スイッチング素子は複数個
の薄膜トランジスタからなり各ゲート電極を共通接続し
たマルチゲート構造を有する。個々の薄膜トランジスタ
はリーク電流抑制構造を有しており、少なくとも2個の
薄膜トランジスタを直列接続して電流リーク故障に対す
る冗長性を付与している。この様に、スイッチング素子
自体に冗長性を付与した為、配線や周辺駆動回路を複雑
化する事なく、スイッチング素子のリーク電流欠陥を大
幅に抑制する事が可能になり、例えば液晶画素駆動に用
いた場合画素欠陥の発生を従来に比し顕著に抑える事が
でき歩留りや信頼性が格段に改善できるという効果があ
る。この様に本発明はアクティブマトリクス型液晶表示
装置の性能向上に多大な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表
示装置の第1実施例の要部となるTFTを示す模式的な
部分断面図である。
【図2】図1に示したTFTの変形例を示す模式的な断
面図である。
【図3】同じく図1に示したTFTの他の変形例を示す
模式的な断面図である。
【図4】同じく図1に示したTFTのさらに別の変形例
を示す模式的な断面図である。
【図5】図1に示したTFTの製造工程図である。
【図6】同じく製造工程図である。
【図7】同じく製造工程図である。
【図8】同じく製造工程図である。
【図9】本発明にかかるnチャネル型マルチゲートLD
D TFTのゲート電圧/ドレイン電流特性を示すグラ
フである。
【図10】従来のnチャネル型マルチゲートTFTのゲ
ート電圧/ドレイン電流特性を示すグラフである。
【図11】本発明にかかるマルチゲート構造LDD T
FTを用いて構成されたアクティブマトリクス型液晶表
示装置の一例を示す斜視図である。
【図12】従来のLDD構造TFTを示す断面図であ
る。
【図13】従来のマルチゲート構造TFTを示す断面図
である。
【図14】従来のマルチゲート構造TFTをスイッチン
グ素子に用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置に
おける1画素分の等価回路図である。
【図15】従来のアクティブマトリクス型液晶表示装置
における画素電位の変化を示す波形図である。
【図16】本発明にかかるアクティブマトリクス型液晶
表示装置の第2実施例の要部となるTFTを示す模式的
な部分断面図である。
【図17】本発明にかかるnチャネル型マルチゲートL
DD TFTのゲート電圧/ドレイン電流特性を示すグ
ラフである。
【図18】図16に示したTFTの製造工程図である。
【図19】同じく製造工程図である。
【図20】同じく製造工程図である。
【図21】本発明にかかるアクティブマトリクス型液晶
表示装置の第3実施例の要部となるTFTを示す模式的
な部分断面図である。
【図22】本発明にかかるスイッチング素子の冗長モデ
ルを表わす模式図である。
【図23】本発明にかかるスイッチング素子の冗長性の
説明に供する断面図である。
【図24】同じく冗長性の説明に供するドレイン電流/
ゲート電圧特性図である。
【図25】同じく冗長性の説明に供する断面図である。
【図26】同じく冗長性の説明に供するドレイン電流/
ゲート電圧特性図である。
【図27】同じく冗長性の説明に供する断面図である。
【図28】同じく冗長性の説明に供する断面図である。
【図29】同じく冗長性の説明に供する断面図である。
【図30】同じく冗長性の説明に供する断面図である。
【図31】同じく冗長性の説明に供する断面図である。
【図32】同じく冗長性の説明に供するドレイン電流/
ゲート電圧特性図である。
【図33】同じく冗長性の説明に供する断面図である。
【図34】同じく冗長性の説明に供するドレイン電流/
ゲート電圧特性図である。
【図35】同じく冗長性の説明に供する断面図である。
【図36】同じく冗長性の説明に供するドレイン電流/
ゲート電圧特性図である。
【符号の説明】
1 石英基板 2 チャネル領域 3 ソース領域 4 ソース/ドレイン領域(接続領域) 5 ドレイン領域 6 LDD領域 7 ゲート酸化膜 8 ゲート窒化膜 9 ゲート電極 10 第1層間絶縁膜 11 配線電極 12 第2層間絶縁膜 13 画素電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−218070(JP,A) 特開 平2−247619(JP,A) 特開 昭63−64363(JP,A) 特開 昭63−200534(JP,A) 特開 平5−121439(JP,A) 特開 平5−289103(JP,A)

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マトリクス状に配列した画素電極とこの
    画素電極を駆動するスイッチング素子とを備えた一方の
    基板と、 対向電極を有し前記一方の基板に対向配置された他方の
    基板と、 両方の基板に保持された液晶層とを備えた液晶表示装置
    であって、前記スイッチング素子は、複数個の薄膜トラ
    ンジスタを夫々のソース/ドレイ ン領域を兼ねる接続領域によって直列接続し且つ各ゲー
    ト電極を互いに電気接続したマルチゲート構造を有し、 各薄膜トランジスタは、少なくともソース領域又はドレ
    イン領域とチャネル領域の間にソース領域又はドレイン
    領域と同一導電型の低濃度不純物領域を備えたLDD構
    造を有し、 該接続領域はソース領域及びドレイン領域と同じく、該
    低濃度不純物領域より不純物濃度が高い事を特徴とする
    液晶表示装置。
  2. 【請求項2】 少なくとも画素電極に一番近いソース領
    域又はドレイン領域の間に備えられた低濃度不純物領域
    と画素電極に一番遠いソース領域又はドレイン領域とチ
    ャネル領域の間に備えられた低濃度不純物領域とを有す
    る事を特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
  3. 【請求項3】 各薄膜トランジスタは、ソース領域及び
    ドレイン領域の両者とチャネル領域の間に夫々低濃度不
    純物領域を備えている事を特徴とする請求項1記載の液
    晶表示装置。
  4. 【請求項4】 前記スイッチング素子は、直列接続され
    た一対の薄膜トランジスタからなり、一方はソース領域
    とチャネル領域の間にのみ低濃度不純物領域を有し、他
    方はドレイン領域とチャネル領域の間にのみ低濃度不純
    物領域を有する事を特徴とする請求項1記載の液晶表示
    装置。
  5. 【請求項5】 各薄膜トランジスタは5μm以下のチャ
    ネル長を有する事を特徴とする請求項1記載の液晶表示
    装置。
  6. 【請求項6】 複数個の薄膜トランジスタに設けられた
    複数個の低濃度不純物領域のうち少なくとも1個は、他
    の低濃度不純物領域と異なる長さを有する事を特徴とす
    る請求項1記載の液晶表示装置。
  7. 【請求項7】 マトリクス状に配列した画素電極とこの
    画素電極を駆動するスイッチング素子とを備えた一方の
    基板と、対向電極を有し前記一方の基板に対向配置され
    た他方の基板と、両方の基板に保持された液晶層とを備
    えた液晶表示装置であって、 前記スイッチング素子は、複数個の薄膜トランジスタを
    直列接続し且つ各ゲート電極を互いに電気接続したマル
    チゲート構造を有し、 各薄膜トランジスタは、少なくともソース領域又はドレ
    イン領域とチャネル領域の間にソース領域又はドレイン
    領域と同一導電型の低濃度不純物領域を備えたLDD構
    造を有し、 該複数個の薄膜トランジスタに設けられた複数個の低濃
    度不純物領域のうち少なくとも1個は、他の低濃度不純
    物領域と異なる長さを有し、 画素電極に一番近い低濃度不純物領域が、他の低濃度不
    純物領域より長い事を特徴とする液晶表示装置。
  8. 【請求項8】 マトリクス状に配列した画素電極とこの
    画素電極を駆動するスイッチング素子とを備えた一方の
    基板と、対向電極を有し前記一方の基板に対向配置され
    た他方の基板と、両方の基板に保持された液晶層とを備
    えた液晶表示装置であって、 前記スイッチング素子は、複数個の薄膜トランジスタを
    直列接続し且つ各ゲート電極を互いに電気接続したマル
    チゲート構造を有し、 各薄膜トランジスタは、少なくともソース領域又はドレ
    イン領域とチャネル領域の間にソース領域又はドレイン
    領域と同一導電型の低濃度不純物領域を備えたLDD構
    造を有し、 該複数個の薄膜トランジスタに設けられた複数個の低濃
    度不純物領域のうち少なくとも1個は、他の低濃度不純
    物領域と異なる濃度を有する事を特徴とする液晶表示装
    置。
  9. 【請求項9】 画素電極に一番近い低濃度不純物領域
    が、他の低濃度不純物領域に比べて小さな濃度を有する
    事を特徴とする請求項8記載の液晶表示装置。
  10. 【請求項10】 マトリクス状に配列した画素用の電極
    とこの電極を駆動するスイッチング素子とを備えた表示
    用の基板であって、 前記スイッチング素子は、複数個の薄膜トランジスタか
    らなり各ゲート電極を共通接続したマルチゲート構造を
    有し、 個々の薄膜トランジスタは低濃度不純物領域であるLD
    D領域を備えたLDD型のリーク電流抑制構造を有して
    おり、 少なくとも2個の該薄膜トランジスタを夫々のソース/
    ドレイン領域を兼ねる接続領域によって直列接続し、 該接続領域はソース領域及びドレイン領域と同じく、該
    低濃度不純物領域より不純物濃度が高いものであり、電
    流リーク故障に対する冗長性を付与した事を特徴とする
    表示用の基板。
  11. 【請求項11】 前記LDD型の薄膜トランジスタは、
    少なくともドレインとして機能する不純物領域とチャネ
    ル領域との間に、該不純物領域と同一導電型でより低濃
    度のLDD領域を有する事を特徴とする請求項10記載
    表示用の基板。
  12. 【請求項12】 前記LDD型の薄膜トランジスタは該
    チャネル領域の両側で交互にドレインとして機能する不
    純物領域及び付随するLDD領域を有する事を特徴とす
    る請求項11記載の表示用の基板。
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