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JP3241240B2 - 表面マクロムラ発生を防止した酸洗鋼板の製造方法 - Google Patents

表面マクロムラ発生を防止した酸洗鋼板の製造方法

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JP3241240B2
JP3241240B2 JP19028095A JP19028095A JP3241240B2 JP 3241240 B2 JP3241240 B2 JP 3241240B2 JP 19028095 A JP19028095 A JP 19028095A JP 19028095 A JP19028095 A JP 19028095A JP 3241240 B2 JP3241240 B2 JP 3241240B2
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正樹 八田
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  • Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、CrとともにCを
多く含有するステンレス鋼、特殊鋼等の鋼質金属酸洗時
に生じる酸洗生成物の除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】Crを多く含有するクロム系ステンレス
鋼の冷間圧延による薄板製品の製造に際しては、熱間圧
延により得られるホットコイルを熱間圧延まま、あるい
は熱間圧延後焼鈍を施した後、熱間圧延中あるいは焼鈍
中に鋼帯表面に生成する酸化スケールをショットブラス
ト等のメカニカルデスケーリング処理により粗デスケー
リングした後に硫酸、塩酸や硝弗酸中あるいはこれらの
酸を組み合わせて仕上げデスケーリングし、冷間圧延す
る製造法が行われている。
【0003】これらの酸洗の中で、硫酸や塩酸酸洗後の
表面には酸洗生成物である黒っぽいスマット(汚れ)が
生成付着するため、熱延酸洗鋼帯として製品となる場合
には特に表面が黒化して見栄えが悪くなる問題がある。
さらに、光沢の良いステンレス鋼を製造するために熱延
鋼帯を冷却し光輝焼鈍すると、光沢ムラを生じ製品の表
面品質を損なう問題があった。
【0004】一方、硝弗酸酸洗の場合には硫酸、塩酸酸
洗との酸洗機構の違いから酸洗生成物であるスマットは
生成せず高白色な酸洗表面が得られるが、酸洗素材であ
る熱延鋼帯の熱履歴によって粒界Cr欠乏を生じている
場合には、Cr濃度の低下している粒界とCr濃度の低
下していない粒内の酸洗溶液の溶削差が大きい。
【0005】すなわち、Cr濃度低下部の溶削量が大き
いため粒界腐食を生じてしまい冷延でかぶさり状の疵と
なり、光輝焼鈍後ビニールの保護シートを貼った鋼板と
し、成形加工後この保護シートを剥す際にかぶさり部が
起き上がってキラキラ輝く疵(ゴールドダスト疵)を生
成してしまう。
【0006】先の硫酸や塩酸酸洗後の表面には硝弗酸で
見られるこのような粒界腐食は生じないが、硫酸や塩酸
酸洗後の後処理として白色化するために硝弗酸を使用す
るとやはり粒界腐食を生じてしまう。
【0007】かかる問題を解決するための手段として、
特開昭59−83783号公報には「鋼帯を硫酸水溶液
中に浸漬して、表面の酸化スケールを除去する第1工程
と硝酸水溶液中に鋼帯を浸漬して表面の汚れを除去する
(スマット除去)とともに不動態化処理する第2工程か
らなる酸洗法」が開示されている。
【0008】この特許に示された通りに、硝酸酸洗後の
黒っぽいスマットの生じた酸洗鋼帯を硝酸水溶液中に浸
漬しても表面を白色化できず全体が黒ずんで仕上がる場
合と、表面全体が黒っぽい1000mm幅のコイル内に大
きさ200〜700mm程度の円形や楕円形や不規則な形
をした大きな白いムラ(以後「雲型マクロムラ」と呼
ぶ)が生じてしまう問題があった。
【0009】充分な白さが得られず、あるいは雲型マク
ロムラが生成し再酸洗を繰り返しても改善しない場合に
は、コイル表面を研削する工程を付加してマクロムラの
ない熱延酸洗鋼帯を得ており、工程負荷が大きく問題が
あった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、再酸洗を繰
り返すことなく1回の一連の酸洗処理工程で、雲型マク
ロムラの発生がなく、表面の白色度が著しく改善した鋼
帯を得ようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Crとと
もにCを多く含有するステンレス鋼、特殊鋼の硫酸酸洗
後のスマット除去法について鋭意検討を加えた結果、硫
酸酸洗後に引き続き行われる硝酸酸洗までのコイル表面
の乾燥状態が雲型マクロムラ発生に影響していること、
また、この乾燥をコントロールし硝酸酸洗するときわめ
て短時間に白色化できることを発見し、その知見に基づ
いて本発明を完成させるに至った。
【0012】本発明は、これらの知見に基づいて構成し
たもので、その要旨は、C:0.15%超を含む鋼板
を、50〜100℃の温度で硫酸濃度100〜600g
/lの硫酸水溶液で酸洗した後、前記鋼板表面を一旦乾
燥させ、次に洗浄して鋼板表面の水溶物を除去し、さら
に30〜90℃の温度で硝酸濃度5〜200g/lの硝
酸水溶液で酸洗することを特徴とする表面マクロムラ発
生を防止した酸洗鋼板の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】クロム系ステンレス鋼の熱間圧延
鋼帯を熱間圧延まま、あるいは熱間圧延後焼鈍を施した
後、熱間圧延中あるいは焼鈍中に鋼帯表面に生成した酸
洗スケール除去のためにまずショットブラスト等を使用
してメカニカルデスケーリングした後に、200〜30
0g/l硫酸で90℃、60sec 程度酸洗後水洗し、そ
の後80g/l硝酸70℃に20sec 程度浸漬して水洗
ブラッシングすることでスマット除去し熱延酸洗鋼帯を
製造する。
【0014】このような一連の酸洗工程通板後の鋼帯は
表面全体が黒っぽい鋼帯、表面全体が黒っぽい10
00mm幅のコイル内に突発的に200〜700mm程度の
円形や楕円形や不規則な形をした雲型マクロムラが発生
した。
【0015】このような雲型マクロムラは鋼中C含有量
が高くなるほど発生しやすい。0.15%以下では発生
しないが、0.15%を超えて0.25%以下では軽微
な雲型マクロムラが生じ、0.25%を超えると明確な
雲型マクロムラの発生頻度が高くなる。また、雲型マク
ロムラ発生には、コイルエッジから100〜200mmの
幅が白くなり、連続通板のためのコイル溶接部でもムラ
が連続している特徴が見られた。
【0016】硫酸酸洗のみを行ったコイルには雲型マク
ロムラはなく、全体が黒い鋼帯になるため、硫酸酸洗後
の硝酸酸洗までの通板状況にポイントを絞り、C含有量
0.40%、Cr含有量20%のフェライト系ステンレ
ス鋼1000mm幅コイル・通板速度20mpm の酸洗工程
内でのコイル通板状況を詳細に調査した。
【0017】硫酸酸洗槽(硫酸濃度400g/l、90
℃)を出て、硝酸槽(硝酸濃度150g/l、70℃、
Feイオン量5g/l)に入るまでの5m(15sec
間)の水洗ブラッシング条件として、表1に示すA〜D
の4条件をテストしてみたところ、前後段および前段に
水洗しながらブラッシングしたもの(A,B)は鋼帯全
幅が黒っぽい部分とエッジから100〜130mmまで連
続した雲型マクロムラが発生する場合があった。
【0018】前段で水洗せずブラッシングを行わなかっ
たもの(C)はエッジからの白色化幅が広がり170〜
300mmの範囲で連続して雲型マクロムラが発生した。
さらに5m長全体で水洗およびブラッシングをせず開放
させると幅全体にわたって白くなり、ムラのない良好な
鋼帯が得られることがわかった。
【0019】硫酸槽を出てからの表面を観察すると、水
洗およびブラッシングをせず開放した場合にはコイルエ
ッジ部より乾燥し始め、前段の停止ではエッジから17
0〜300mmの範囲が乾燥、またすべてを停止した場合
には全幅乾燥していることがわかった。
【0020】また、前後段水洗をせずブラッシングを停
止開放した時に、水を部分的に垂らし、部分的に乾燥さ
せない実験も行ったが水を濡らした範囲が黒いマクロム
ラとなって硝酸酸洗後に生じることも明らかになった。
【0021】
【表1】
【0022】このようなコイルエッジ部の乾燥は硫酸酸
洗温度が90℃であり、酸洗後の鋼帯自体の温度が高い
ためと、エッジは水切れが良いために乾燥しやすかった
ものと考えられる。また、一旦乾燥させると、硝酸溶液
で溶解除去されやすい化合物に変化し、これが硝酸溶液
中で溶解するとともに白色化するものと推定している。
【0023】次に本発明における限定理由ついて説明す
る。本発明の対象とするフェライト系ステンレス鋼、C
rとともにCを多く含有するステンレス鋼、特殊鋼等の
鋼質金属の望ましい成分範囲は次の通りである。以下そ
の根拠について述べる。
【0024】Cは、雲型マクロムラに大きく影響する元
素であり0.15%以下の場合には雲型マクロムラを発
生しないが、0.15%を超えると軽微な雲型マクロム
ラを発生し始め、さらに0.25%を超えると顕著に発
生する。
【0025】このため、実用的に特に適用すべきは0.
25%を超える場合であるが、途中で乾燥させる本法を
適用してもC含有量0.15%以下の材料、C含有量
0.25%以下の材料でも本方法によれば、いずれも雲
型マクロムラの発生もなく従来硝弗酸で得られたのと同
程度の白色化が得られた。また、C元素は耐食性に大き
く影響する。C含有量が多いとCr炭化物を形成し粒界
腐食を生じやすくなり0.50%以下とする。
【0026】Siは脱酸剤として必要な元素であるが多
量に添加すると加工性を害するため上限は1.0%が望
ましい。Mnには脱酸および脱硫作用があるが多量に添
加すると耐食性を害するため上限は1.0%が望まし
い。
【0027】Pは熱間加工性の点から少ない方が望まし
く0.04%以下にすることが好ましい。Sも熱間加工
性および耐食性の点から少ない方が望ましく0.02%
以下にすることが好ましい。
【0028】Niは靭性を向上させる場合以外は本来必
要のない元素であるが製造工程上不可避的に入ってくる
ため、0.3%以下が望ましい。Crは11%未満では
ステンレス鋼としての耐食性を維持することができず、
また23%を超えると熱間加工性が劣化するため11〜
23%の範囲が望ましい。
【0029】Alは製鋼時点強力な脱酸剤として添加し
たものであり、また、熱間圧延鋼帯を高温短時間焼鈍あ
るいは焼鈍を省略するために必要であるが多量に含有す
ると介在物が多くなるため上限は0.2%が望ましい。
【0030】NはCと同様にCr窒化物を形成して耐食
性を害し、また成形性を劣化させる。従って0.05%
以下が望ましい。Cuは耐食性向上の作用があるが、多
量添加は熱間加工性を劣化させるので0.1%以下が望
ましい。Oは耐食性、成形性の面から好ましくなく、
0.01%以下が望ましい。
【0031】本発明において酸洗水溶液として、濃度が
100〜600g/lの硫酸を使用する。硫酸は地鉄の
溶解能力に優れ、鋼質金属を短時間に酸洗できる利点か
ら基本成分とした。このような硫酸の作用効果は如何な
る濃度でも得られるというものではなく、100g/l
未満の薄い濃度では溶解能力が不足してスケールを残し
てしまうため酸洗に長時間を要す問題がある。また、6
00g/lを超える濃度では溶解能力が過飽和に達す
る。従って、本発明においては硫酸の濃度を100〜6
00g/lに限定した。
【0032】このように高い溶削能力をもつ本発明にお
ける組成の硫酸水溶液は、温度50〜100℃に加熱保
温して鋼質金属表面に生成したスケールをメカニカルデ
スケーリング後に溶解除去する。この時の硫酸水溶液の
加熱はスケールを効率的に溶削するために行うものであ
り、その時の溶削能力は低温になるほど小さく、高温に
なるほど大きくなるが、工業的に望まれる浸漬時間と設
備保全上の問題を考えて50〜100℃とした。この酸
洗に要する酸洗時間は30〜180sec 程度である。
【0033】次に硝酸溶液については、硝酸濃度5〜2
00g/l、温度30〜90℃を使用する。硝酸濃度は
5g/l未満ではスマットが残存し、硝酸濃度の上昇に
ともなってスマット処理後の白色度が高くなるが、20
0g/lを超えるとほぼ一定となる。温度についても3
0℃未満ではスマットが残存してしまうが、30℃以上
では温度が上昇するほど白色度が高くなるが、酸洗槽の
材質と値段を考えて上限を90℃とした。この浸漬時間
については特に限定するものではないが、数秒から30
秒程度の短時間であれば良い。
【0034】コイルを乾燥させる条件としては、硫酸酸
洗後の酸洗生成物が付着した状態で一旦乾燥させること
が重要で、乾燥には硫酸酸洗時の温度が50〜100℃
と高いために酸洗後の鋼帯自体の温度が高く、これを利
用する方法と、50〜150℃に加熱したエアー等のガ
スを使用しても良い。
【0035】このガス温度については、50℃未満の低
温では乾燥効率が著しく悪く、50℃以上で安定した効
率の良い乾燥ができるが150℃を超える温度になる
と、ムラなく乾燥することがむつかしくなり部分的に過
乾燥の部分が生じてしまうので150℃以下とした。
【0036】乾燥後の水洗については、硫酸酸洗後の酸
洗生成物は、SO4 2-イオン、Feイオンを多く含み、
これらの元素は通板コイルが増えるにつれ硝酸溶液の処
理性を大きく変えてしまうけれども、これらのイオンが
水溶性のため、水洗し洗い流すことによって硝酸溶液中
へのSO4 2-イオン、Feイオンの増加は防ぐことが可
能である。
【0037】しかし、操業を続けると次第に増加する
が、SO4 2-イオンについては10g/l、Feイオン
については20g/l以下で問題がなく、これらの濃度
を超えると白色化程度が悪くなる。なお、本発明の硫酸
および硝酸酸洗は浸漬方式が経済的であるがスプレー方
式でも良く、特にその方式は問わない。
【0038】
【実施例】板厚4mmに熱間圧延されたCを0.0030
〜0.50%含有し、Cr量を11〜23%含有する鋼
質金属について熱延板焼鈍を省略した鋼帯、1000℃
で30秒間の連続焼鈍を施した鋼帯、840℃で4時間
焼鈍後炉冷した鋼帯について、鋼帯表面に生成したスケ
ールを高圧水中に砂鉄粒を混入させて吹き付けるメカニ
カルデスケーリングやショットブラストを施した後に5
0〜100℃の100〜600g/lの硫酸溶液中で3
0秒から180秒間酸洗した。
【0039】この硫酸後の処理条件については乾燥の方
法を変え通板した後、30〜90℃の5〜200g/l
の硝酸溶液中で酸洗し、硝酸溶液を洗い流すため水洗し
ながらブラッシング乾燥して、酸洗鋼帯を製造した。こ
のようにして得られた酸洗鋼帯表面と製造条件との関係
を表2に示す。また、表3ではスプレー酸洗した結果を
示す。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】硝酸酸洗後に硫酸酸洗生成物が付着した状
態で一旦完全に乾燥し、その後水洗して水溶物を除去
し、硝酸酸洗した処理法では雲型マクロムラはまったく
発生せず、表面の白さも高白色で良好であり粒界腐食も
生じなかった。この熱延酸洗鋼帯を0.4mmまで冷延
し、光輝焼鈍してもマクロムラなく表面光沢も良好であ
った。保護ビニールシート貼り付け後の引き剥しテスト
においてもキラキラ輝く疵(ゴールドダスト疵)は発生
しなかった。
【0044】比較例としてC含有量0.15%以上、硝
酸中のFeイオン量が1.5g/lを超えて含有する硝
酸溶液で硫酸と硝酸の間で不充分な乾燥処理した酸洗鋼
帯では雲型マクロムラが発生するか、黒っぽい酸洗鋼帯
が得られた。さらに0.5mmまで冷延し光輝焼鈍した表
面はマクロムラおよび光沢がともに不良であった。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば特にCrおよびC含有量
の高い鋼質金属で酸洗後の鋼板表面に雲型マクロムラを
発生することなく1回の酸洗処理で確実に硫酸酸洗生成
物のスマットを除去し、高白色で均一な酸洗鋼帯が得ら
れるので、生産性という面からも、再酸洗による歩留ロ
ス回避の点からも、また、熱延酸洗鋼帯の商品価値を高
める点からも、さらに冷延焼鈍後の製品表面のムラ、表
面光沢およびゴールドダスト疵を良好にするという面で
も、その工業的効果は甚大である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神谷 環吉 北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本 製鐵株式会社 八幡製鐵所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23G 1/08 B21B 45/06

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.15%超を含む鋼板を、50〜
    100℃の温度で硫酸濃度100〜600g/lの硫酸
    水溶液で酸洗した後、前記鋼板表面を一旦乾燥させ、次
    に洗浄して鋼板表面の水溶物を除去し、さらに30〜9
    0℃の温度で硝酸濃度5〜200g/lの硝酸水溶液で
    酸洗することを特徴とする表面マクロムラ発生を防止し
    た酸洗鋼板の製造方法。
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