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JP3134233B2 - α−グリコシル ケルセチンとその製造方法並びに用途 - Google Patents

α−グリコシル ケルセチンとその製造方法並びに用途

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JP3134233B2
JP3134233B2 JP03208709A JP20870991A JP3134233B2 JP 3134233 B2 JP3134233 B2 JP 3134233B2 JP 03208709 A JP03208709 A JP 03208709A JP 20870991 A JP20870991 A JP 20870991A JP 3134233 B2 JP3134233 B2 JP 3134233B2
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glycosyl
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glucosyl
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規α−グリコシル
ケルセチンとその製造方法並びに用途に関し、更に詳細
には、ケルセチンにD−グルコース残基が等モル以上α
−結合したα−グリコシル ケルセチンと、ケルセチン
とα−グリコシル糖化合物とを含有する溶液に糖転移酵
素を作用させてα−グリコシル ケルセチンを生成せし
め、これを採取することを特徴とするα−グリコシル
ケルセチンの製造方法、並びに、この方法で得られるα
−グリコシル ケルセチンを含有せしめた飲食物、抗感
受性疾患剤、化粧品などの組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ケルセチンは、通常、これに糖類がβ−
結合した配糖体、ルチンとして、植物界に広く分布して
おり、ケルセチンは、これら植物から抽出、分離して得
たこの配糖体を酸または酵素で加水分解し、糖を分離し
て調製される。
【0003】ケルセチンは、化学構造上、大きな共鳴構
造を有しており、黄色着色性、酸化防止作用、ビタミン
P作用、紫外線吸収作用などを有し、飲食物、医薬品、
化粧品などへの応用が期待されている。
【0004】しかしながら、ケルセチンは、親水性有機
溶媒に溶けるものの、通常、水に難溶または不溶で、そ
の取扱いは極めて困難である。
【0005】一方、ケルセチンが天然に多量に存在する
例として、プロポリス(propolis)がある。プ
ロポリスは、「プロポリス・イン・ナチュラル・テラピ
ューティクス(Propolis in natura
l therapeutics)」、マルワーヌ・エデ
ィテール・エス・アー(Maloine Editeu
r S.A.)、パリ、フランス(1983年)、フレ
グランス ジャーナル、第83号、第36〜39頁(1
987年)などにも記載されているように、蜜蜂が巣箱
内に貯蔵する樹脂状物で、これには樹脂、ミツロウ、精
油、花粉、フラボノイドなどが含まれており、古くから
種々の民間療法薬として利用されてきた。
【0006】近年、プロポリス中のフラボノイドは、ク
リシン(chrysin)などのフラボンアグリコン、
ガランギン(galangin)、ケルセチン(que
rcetin)などのフラボノールアグリコンからなる
フラボノイドを主成分としていることが判明し、プロポ
リスの中心的薬効成分として注目されている。
【0007】プロポリスからのフラボノイドの調製は、
メタノール、エタノールなどの親水性有機溶媒で抽出し
て行なわれ、現在では、この抽出液がプロポリスエキス
(またはプロポリス チンキ)として市販されるように
なってきた。
【0008】しかしながら、このフラボノイドも、前述
のケルセチンの場合と同様に、親水性有機溶媒には溶解
するものの、水には難溶または不溶であって、使用上、
大きな制限を余儀なくされている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来のケルセチンの欠
点を解消し、水溶性に優れ、毒性の懸念もなく、加え
て、生体内で生理活性を充分発揮しうるケルセチン誘導
体の実現が強く望まれている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記欠点を解
消するためになされたものであって、とりわけ、生化学
的手法を利用して、新規ケルセチン誘導体を目指して鋭
意研究した。
【0011】その結果、ケルセチンとα−グルコシル糖
化合物とを含有する溶液に糖転移酵素を作用させること
により、水溶性に優れ、毒性の懸念もなく、生体内で容
易に加水分解され、ケルセチン本来の生理活性を発揮し
うる新規α−グリコシル ケルセチンが生成しうること
を見い出し、その製造方法並びに飲食物、感受性疾患の
予防剤、治療剤、化粧品などへの用途を確立して本発明
を完成した。
【0012】また、この糖転移反応により生成したα−
グリコシル ケルセチンを精製するに際しては、その反
応溶液と多孔性合成吸着剤とを接触させ、その吸着性の
違いを利用することにより、容易に精製できることも見
い出し本発明を完成した。
【0013】従って、本発明のα−グリコシル ケルセ
チンの製造方法は、従来技術の欠点を一挙に解消し、そ
の工業化の実現を極めて容易にするものである。
【0014】以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】本発明で使用されるケルセチンとしては、
ルチンを加水分解して調製してもよいし、プロポリスの
場合のように、ケルセチンと他のフラボノイドとの混合
物であってもよい。
【0016】プロポリス由来のケルセチンとしては、高
度に精製したものばかりでなく、プロポリスを親水性有
機溶媒で抽出して得たエキス、または、これから脱ロウ
した部分精製物、更には、プロポリスを煎じ出した懸濁
液、プロポリスをアルカリ性溶液で抽出して得たエキス
などが適宜使用できる。また、必要に応じて、ケルセチ
ンの市販品を用いることも、更には、化学的に合成して
用いることも随意である。
【0017】本発明に用いるα−グルコシル糖化合物
は、同時に用いる糖転移酵素によってケルセチンからα
−グリコシル ケルセチンを生成することのできるもの
であればよく、例えば、アミロース、デキストリン、シ
クロデキストリン、マルトオリゴ糖などの澱粉部分加水
分解物、更には、液化澱粉、糊化澱粉などが適宜選ばれ
る。
【0018】従って、α−グリコシル ケルセチンの生
成を容易にするためには、糖転移酵素に好適なα−グル
コシル糖化合物が選ばれる。
【0019】例えば、糖転移酵素として、α−グルコシ
ダーゼ(EC 3.2.1.20)を用いる際には、マ
ルトース、マルトトリオース、マルトテトラオースなど
のマルトオリゴ糖、またはDE約10乃至70の澱粉部
分加水分解物などが好適であり、シクロマルトデキスト
リン グルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.
19)を用いる際には、シクロデキストリンまたはDE
1以下の澱粉糊化物からDE約60の澱粉部分加水分解
物などが好適であり、α−アミラーゼ(EC3.2.
1.1)を用いる際には、DE1以下の澱粉糊化物から
DE約30のデキストリン、澱粉部分加水分解物などが
好適である。
【0020】また、反応時のα−グルコシル糖化合物濃
度は、ケルセチンに対して約0.5乃至100倍、望ま
しくは約2乃至20倍の範囲が好適である。
【0021】反応時のケルセチン含有液は、ケルセチン
をできるだけ高濃度に含有するものが望ましく、例え
ば、ケルセチンを、懸濁状で、または、高温で溶解させ
た、有機溶媒存在下で溶解させた、もしくはpH7.0
を越えるアルカリ側pHで溶解させた溶液状で高濃度に
含有する溶液が適しており、その濃度は約0.01W/
V%以上の濃度、望ましくは、約0.1乃至10.0W
/V%含有している溶液を意味する。
【0022】本発明に用いる糖転移酵素は、ケルセチン
とこの酵素に好適な性質のα−グルコシル糖化合物とを
含有する溶液に作用させる時、ケルセチンを分解せずに
α−グリコシル ケルセチンを生成するものであれがよ
い。
【0023】例えば、α−グルコシダーゼは、ブタの肝
臓、ソバの種子などの動植物組織由来の酵素、または、
ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penic
illium)属などに属するカビ、またはサッカロミ
セス(Saccharomyces)属などに属する酵
母などの微生物を栄養培地で培養し得られる培養物由来
の酵素が、シクロマルトデキストリン グルカノトラン
スフェラーゼは、バチルス(Bacillus)属、ク
レブシーラ(Klebsiella)属などに属する細
菌培養物由来の酵素が、α−アミラーゼは、バチルス属
などに属する細菌、または、アスペルギルス(Aspe
rgillus)属などに属するカビ培養物由来の酵素
などが適宜選択できる。
【0024】これらの糖転移酵素は、前記の条件を満足
しさえすれば、必ずしも精製して使用する必要はなく、
通常は、粗酵素で本発明の目的を達成することができ
る。
【0025】必要ならば、公知の各種方法で精製して使
用してもよい。また、市販の糖転移酵素を利用すること
もできる。
【0026】使用酵素量と反応時間とは、密接な関係が
あり、通常は、経済性の点から約5乃至80時間で反応
を終了するように酵素量が選ばれる。
【0027】また、固定化された糖転移酵素をバッチ式
で繰り返し、または連続式で反応に利用することも適宜
選択できる。
【0028】また、反応溶液中のケルセチンの分解を防
ぐために、反応はできるだけ、遮光、嫌気下条件で行な
うことが望ましい。
【0029】このようにしてα−グリコシル ケルセチ
ンを生成せしめた反応溶液は、そのままでα−グリコシ
ル ケルセチン製品にすることもできる。通常は、反応
溶液を濾過、濃縮してシラップ状の、更には、乾燥、粉
末化して粉末状のα−グリコシル ケルセチン製品にす
る。
【0030】本製品は、ビタミンP強化剤としてばかり
でなく、安全性の高い天然型の黄色着色剤、酸化防止
剤、消臭剤、安定剤、品質改良剤、抗菌剤、予防剤、治
療剤、紫外線吸収剤などとして、他の原材料などと配合
して、食物、嗜好物、飼料、餌料、抗感受性疾患剤、化
粧品、プラスチック製品などの用途に有利に利用でき
る。
【0031】更に、精製されたα−グリコシル ケルセ
チン製品を製造する場合には、多孔性合成吸着剤による
吸着性の差を利用してα−グリコシル ケルセチンとα
−グルコシル糖化合物などの夾雑物とを分離して精製す
ればよい。
【0032】本発明でいう多孔性合成吸着剤とは、多孔
性で広い吸着表面積を有し、かつ非イオン性のスチレン
−ジビニルベンゼン重合体、フェノール−ホルマリン樹
脂、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂などの合
成樹脂であり、例えば、市販されているRohm &
Haas社製造の商品名アンバーライトXAD−1、ア
ンバーライトXAD−2、アンバーライトXAD−4、
アンバーライトXAD−7、アンバーライトXAD−
8、アンバーライトXAD−11、アンバーライトXA
D−12、三菱化成工業株式会社製造の商品名ダイヤイ
オンHP−10、ダイヤイオンHP−20、ダイヤイオ
ンHP−30、ダイヤイオンHP−40、ダイヤイオン
HP−50、IMACTI社製造の商品名イマクティS
yn−42、イマクティSyn−44、イマクティSy
n−46などがある。
【0033】本発明のα−グリコシル ケルセチンを生
成せしめた反応液の精製方法は、反応液を、例えば、多
孔性合成吸着剤を充填したカラムに通液すると、α−グ
リコシル ケルセチンおよび未反応ケルセチンが多孔性
合成吸着剤に吸着するのに対し、多量に共存するα−グ
ルコシル糖化合物、水溶性糖類は吸着されることなくそ
のまま流出する。
【0034】必要ならば、糖転移酵素反応終了後、多孔
性合成吸着剤に接触させるまでの間に、例えば、反応液
を中和するか、または加熱して生じる不溶物を濾過して
除去したり、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、アルミン
酸マグネシウムなどで処理して反応液中の蛋白性物質な
どを吸着除去したり、イオン交換樹脂(H型およびOH
型)などで処理して脱塩するなどの精製方法を組み合せ
て利用することも随意である。
【0035】前述のようにして、多孔性合成吸着剤カラ
ムに選択的に吸着したα−グリコシル ケルセチンと未
反応ケルセチンとは、水などで洗浄した後、比較的少量
の有機溶媒または有機溶媒と水との混合液、例えば、メ
タノール水、エタノール水などを通液すれば、まず、α
−グリコシル ケルセチンが溶出し、通液量を増すか有
機溶媒濃度を高めるかすれば未反応ケルセチンが溶出し
てくる。
【0036】このα−グリコシル ケルセチン高含有溶
出液を蒸溜処理して、まず有機溶媒を溜去した後、適当
な濃度にまで濃縮すればα−グリコシル ケルセチンを
主成分とするシラップ状製品が得られる。更に、これを
乾燥し粉末化することによって、α−グリコシル ケル
セチンを主成分とする粉末状製品が得られる。
【0037】この有機溶媒によるα−グリコシル ケル
セチンおよび未反応ケルセチンの溶出操作は、同時に、
多孔性合成吸着剤の再生操作にもなるので、この多孔性
合成吸着剤の繰り返し使用を可能にする。
【0038】また、本発明の多孔性合成吸着剤による精
製は、α−グルコシル糖化合物、水溶性糖類だけでな
く、水溶性の塩類などの夾雑物も同時に除去できる特長
を有している。このようにして得られるα−グリコシル
ケルセチンは、次の特長を有している。
【0039】(1)ケルセチンと比較してα−グリコシ
ル ケルセチンは、水溶性が極めて大きい。
【0040】(2)ケルセチンと比較してα−グリコシ
ル ケルセチンは、耐光性、安定性が大きい。
【0041】(3)α−グリコシル ケルセチンは、ケ
ルセチンと実質的に同等、若しくは、やや弱い程度の黄
色着色性を有する。
【0042】(4)α−グリコシル ケルセチンは、体
内の酵素によりケルセチンとグルコースとに加水分解さ
れ、ケルセチン本来の生理活性(ビタミンP)を示す。
また、ビタミンCとの併用により、それらの持つ生理活
性を増強させることができる。
【0043】(5)α−グルコシル糖化合物を含有する
製品の場合には、α−グリコシルケルセチンの効果を発
揮するのみならず、α−グルコシル糖化合物が賦形、増
量効果や、甘味効果を発揮することができ、また、α−
グルコシル糖化合物を除去した精製製品の場合には、ほ
とんど賦形、増量することなくα−グリコシル ケルセ
チンの効果を発揮することができる。
【0044】これらの特長から、α−グリコシル ケル
セチンは安全性の高い天然型のビタミンP強化剤として
ばかりでなく、黄色着色剤、酸化防止剤、消臭剤、安定
剤、品質改良剤、抗菌剤、予防剤、治療剤、紫外線吸収
剤などとして、他の原材料などと配合して、飲食物、嗜
好物、飼料、餌料、抗感受性疾患剤、美肌剤、色白剤な
ど化粧品、更には、プラスチック製品などに有利に利用
することができる。
【0045】とりわけ、本発明のα−グリコシル ケル
セチンは、近年、バイオフラボノイドとして注目されて
いるルチン、ヘスペリジン、ナリンジンなどのフラボノ
イド配糖体、更には、これら配糖体のα−グリコシル糖
誘導体などと併用して、ビタミンP作用を更に強化する
ことも有利に実施できる。
【0046】またα−グリコシル ケルセチンの呈味
は、酸味、塩から味、渋味、苦味、旨味などを呈する各
種物質ともよく調和し、耐酸性、耐熱性も大きいので、
普通一般の飲食物、嗜好物、例えば、調味料、和菓子、
洋菓子、氷菓、飲料、スプレッド、ペースト、漬物、ビ
ン缶詰、畜肉加工品、魚肉・水産加工品、乳・卵加工
品、野菜加工品、果実加工品、穀類加工品など広範に利
用することができる。更に、α−グリコシル ケルセチ
ンをステビオシド、α−グリコシル ステビオシド、レ
バウディオシドA、グリチルリチン、α−グリコシル
グリチルリチン、ジヒドロカルコン類など植物由来の甘
味料、グリシン、アラニン、L−アスパラチル フェニ
ルアラニンメチルエステルなどアミノ酸系甘味料、シュ
クロース、水飴、砂糖結合水飴、ブドウ糖、異性化糖、
フラクトース、蜂蜜、マルトース、ソルビトール、マル
チトール、ラクトースなど糖類甘味料などから選ばれる
甘味料の一種または二種以上と併用して呈味改善、風味
向上などの目的で利用することも有利に実施できる。ま
た、α−グリコシル ケルセチンが、果汁中のフラボノ
イド化合物の晶出、沈澱を阻害するので、果汁飲料、果
汁入りゼリーなどのにごり防止剤、曇防止剤などとして
利用することも有利に実施できる。更に、家畜、家禽、
蜜蜂、蚕、魚などの飼育動物のための飼料、餌料などに
ビタミンP強化剤、嗜好性向上などの目的で配合して利
用することも好都合である。
【0047】その他、タバコ、トローチ、肝油ドロッ
プ、複合ビタミン剤、舌下剤、口中清涼剤、口中香錠、
うがい薬、経管栄養剤、生薬、内服薬、注射剤、練歯み
がき、口紅、リップクリーム、日焼け止めなど各種固
状、ペースト状、液状の嗜好物、感受性疾患の予防剤、
治療剤、すなわち、抗感受性疾患剤、美肌剤、色白剤、
育毛剤などの化粧品などに配合して利用することも有利
に実施でき、更には、紫外線吸収剤、劣化防止剤などと
してプラスチック製品などに配合して利用することも有
利に実施できる。
【0048】また、本発明でいう感受性疾患とは、α−
グリコシル ケルセチンによって予防され若しくは治療
される疾患であり、それが、例えば、ウィルス性疾患、
細菌性疾患、外傷性疾患、免疫疾患、リューマチ、糖尿
病、循環器疾患、悪性腫瘍、神経性疾患などであっても
よい。α−グリコシル ケルセチンの感受性疾患予防
剤、治療剤は、その目的に応じて形状を自由に選択でき
る。例えば、噴霧剤、点眼剤、点鼻剤、うがい剤、注射
剤などの液剤、軟膏、パップ剤、クリームのようなペー
スト剤、粉剤、顆粒、カプセル剤、錠剤などの固剤など
である。製剤に当たっては、必要に応じて、他の成分、
例えば、治療剤、生理活性物質、抗生物質、補助剤、増
量剤、安定剤、着色剤、着香剤などの一種または二種以
上と併用することも随意である。
【0049】投与量は、含量、投与経路、投与頻度など
によって適宜調節することができる。通常、α−グリコ
シル ケルセチンとして、成人1日当り、約0.001
乃至10.0グラムの範囲が好適である。
【0050】また、化粧品の場合も、大体、前述の予防
剤、治療剤に準じて利用することができる。
【0051】α−グリコシル ケルセチンを利用する方
法としては、それらの製品が完成するまでの工程で、例
えば、混和、混捏、溶解、浸漬、浸透、散布、塗布、噴
霧、注入など公知の方法が適宜選ばれる。
【0052】以下、本発明のα−グリコシル ケルセチ
ンを実験で詳細に説明する。
【0053】
【実験1】α−グリコシル ケルセチンの調製 (1)糖転移反応 ケルセチン1重量部およびデキストリン(DE20)6
重量部に水500重量部を加え、pH9.5に調整した
後、嫌気下で加熱溶解し、60℃に冷却後、これにバチ
ルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus s
tearothermophilus)由来のシクロマ
ルトデキストリン グルカノトランスフェラーゼ(株式
会社林原生物化学研究所販売)をデキストリングラム当
り40単位加え、pH8.5以上、60℃に維持して嫌
気下で18時間反応させた後、加熱失活させ、α−グリ
コシル ケルセチン含有液を得た。
【0054】(2)精製 (1)の方法で得た反応液を濾過し、濾液を中和後、多
孔性合成吸着剤、商品名ダイヤイオンHP−10(三菱
化成工業株式会社販売)を充填したカラムにSV2で通
液した。このカラムを水で洗浄後、50V/V%エタノ
ールを通液し、この溶出液を濃縮して溶媒を溜去し、粉
末化して黄褐色のα−グリコシル ケルセチン標品
[I]を固形物当り原料のケルセチン重量に対して約2
20%の収率で得た。
【0055】(3)アミラーゼによる加水分解 (2)の方法で得たα−グリコシル ケルセチン標品
[I]を水に1W/V%に溶解し、これにグルコアミラ
ーゼ(EC 3.2.1.3、生化学工業株式会社販
売)を該標品グラム当り100単位加え、pH5.0、
55℃に維持して5時間反応させた。反応液を加熱して
酵素を失活させ、この液を多孔性合成吸着剤、商品名ダ
イヤイオンHP−10(三菱化成工業株式会社販売)の
カラムにSV2で通液した。その結果、溶液中のα−グ
リコシル ケルセチンと未反応ケルセチンとが多孔性合
成吸着剤に吸着し、グルコース、塩類などは吸着するこ
となく流出した。次いで、カラムを水で通液、洗浄した
後、エタノール水溶液濃度を段階的に高めながら通液
し、α−グリコシル ケルセチン画分を採取し、減圧濃
縮し、粉末化して、黄褐色のα−グリコシル ケルセチ
ン標品[II]を固形物当り原料のケルセチン重量に対し
て約50%の収率で得た。
【0056】
【実験2】α−グリコシル ケルセチンの理化学的性質 (1)溶剤に対する溶解性 α−グリコシル ケルセチン標品は、水、0.1規定カ
セイソーダに易溶、メタノール、エタノールに微溶、エ
ーテル、ベンゼン、クロロホルムに不溶。α−グリコシ
ル ケルセチン標品[1]の水(25℃、pH7)に対
する溶解度は、約10w/v%であったのに対し、ケル
セチンの溶解度は、約0.0002w/v%であった。
【0057】(2)呈味 ケルセチン、α−グリコシル ケルセチン標品、[I]
および標品[II]のそれぞれを直接口に含んでその呈味
を比較したところ、ケルセチンは溶けないため砂を噛む
時のように無味であるのに対し、標品[I]および標品
[II]は、どちらも温和な甘味を示すことが判明した。
【0058】(3)紫外線吸収スペクトル α−グリコシル ケルセチン標品をケルセチンの場合と
比較するため、メタノール溶液を用いて紫外線吸収スペ
クトルを調べた。標品[I]および標品[II]は、いず
れも、ケルセチンの場合と同様に、吸収の強さの順に2
53nmおよび373nm付近に吸収極大を有してい
た。
【0059】(4)赤外線吸収スペクトル KBr錠剤法によって、α−グリコシル ケルセチン標
品の赤外線吸収スペクトルを調べた。α−グリコシル
ケルセチン標品[II]の結果を図1に示す。対照として
ケルセチンの結果を図2に示す。
【0060】(5)加水分解に対する安定性 (a)α−グリコシル ケルセチン標品は、ブタの肝臓
由来のα−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)
により加水分解され、ケルセチンとD−グルコースとを
生成する。
【0061】(b)β−グルコシダーゼによっては加水
分解されない。
【0062】(6)高速液体クロマトグラフィー (a)分析方法 装置;ウォーターズ社製、モデルM−6000A カラム;(株)島津テクノリサーチ製、商品名ODS−
M カラム温度;53℃ 溶離液;水:メタノール:酢酸=60:30:1 流速;0.5mL/分 検出;255nm
【0063】(b)分析結果 α−グリコシル ケルセチン標品を分析したところ、標
品[I]の場合には、保持時間62分のケルセチンのピ
ーク以外に、新たに54分、44分、38分、33分、
30分、26分、25分、23分、21分、19分など
多数のピークが認められ、標品[II]の場合には、保持
時間62分のケルセチンに相当する小さなピーク以外に
54分、38分の大きな2つのピークが認められた。
【0064】以上の結果から、標品[I]に含まれる新
たなピークを示す物質は、ケルセチンにD−グルコース
残基が等モル以上α−結合したα−グリコシル ケルセ
チンと判断される。
【0065】標品[II]に含まれる新たなピークを示す
2つの物質は、ケルセチン骨格の異なる部位にD−グル
コース残基が等モル結合したα−グリコシル ケルセチ
ンと判断される。
【0066】このように、本願発明のα−グリコシル
ケルセチンはケルセチンにD−グルコース残基が等モル
以上α−結合した水溶性良好な新規ケルセチン糖誘導体
であって、生体内に摂取されると、α−グルコシダーゼ
によって容易に加水分解され、ケルセチン本来の生理活
性を発揮する。
【0067】(7)抗酸化作用 濃度約1%のリノール酸エタノール溶液10ml、50
mMリン酸緩衝液10ml、および水5mlを混合し、
その混合液の5mlずつを5ml容フラスコに分注し
た。次いで、各々のフラスコに濃度が200ppmとな
るようにα−グリコシル ケルセチン標品[I]および
[II]を添加して密封した後、50℃で遮光下に放置し
た。対照として、従来から代表的な抗酸化剤として使用
されているdl−α−トコフェロールを用いた。各々の
フラスコから所定の間隔をおいて0.5mlずつ試料を
採取し、それら試料中に含まれるリノール酸の酸化に起
因するヒドロペルオキシドを高速液体クロマトグラフィ
ーにより分析した。その分析は下記の条件で行った。
【0068】装置;ウォーターズ社製、モデルM−60
00A カラム;(株)島津テクノリサーチ製、商品名ODS−
M カラム温度;35℃ 溶離液;アセトニトリル:水:酢酸=75:25:0.
1 流速;0.5ml/分 検出;235nm
【0069】その分析結果を表1に示す。
【0070】
【表1】 注)各数値は、ヒドロペルオキシドに相当するピーク面
積から求めた相対強度を示す。
【0071】表1に示す結果から、α−グリコシル ケ
ルセチン標品[I]および[II]は、dl−α−トコフ
ェロールより遥かに優れた抗酸化作用を示した。
【0072】
【実験3】急性毒性 7週令のdd系マウスを使用して、実験1(2)の方法
で調製したα−グリコシル ケルセチン標品[I]を経
口投与して急性毒性テストをしたことろ、マウス体重1
kg当たり5gまで死亡例は見られず、これ以上の投与
は困難であった。
【0073】従って、本物質の毒性は極めて低い。な
お、実験1(3)の方法で調製したα−グリコシル ケ
ルセチン標品[II]を用いて本テストを行ったところ、
同様の結果を得、毒性の極めて低いことが判明した。
【0074】以下、本発明の実施例としてα−グリコシ
ル ケルセチンの製造例を実施例Aで、α−グリコシル
ケルセチンの用途例を実施例Bで述べる。
【0075】
【実施例 A−1】α−グリコシル ケルセチン ケルセチン1重量部およびデキストリン(DE10)4
重量部を水200重量部に加え、pH9.8に調整した
後、嫌気下で加熱溶解し、60℃に冷却後直ちにバチル
ス・ステアロサーモフィルス由来のシクロマルトデキス
トリン グルカノトランスフェラーゼ(株式会社林原生
物化学研究所販売)をデキストリングラム当り40単位
加え、pH8.5以上、55℃に維持し撹拌しつつ嫌気
下で24時間反応させた。反応液を高速液体クロマトグ
ラフィーで分析したところ、ケルセチンの約50%が、
α−グルコシル ケルセチン、α−マルトシル ケルセ
チン、α−マルトトリオシル ケルセチンなどのα−グ
リコシル ケルセチンに転換していた。反応液を中和後
加熱して酵素を失活させ、濾過し、濾液を、常法に従っ
て、イオン交換樹脂(H型およびOH型)で脱塩精製
し、濃縮してシラップ状のα−グルコシル糖化合物を含
有するα−グリコシル ケルセチン製品を、固形物当り
原料重量に対して約80%の収率で得た。
【0076】本品は、水溶性が向上されたビタミンP強
化剤としてばかりでなく、安全性の高い天然型の黄色着
色剤、酸化防止剤、安定剤、品質改良剤、予防剤、治療
剤、紫外線吸収剤などとして、他の原材料などと配合し
て、飲食物、嗜好物、飼料、餌料、抗感受性疾患剤、化
粧品、プラスチック製品などの用途に有利に利用でき
る。
【0077】
【実施例 A−2】α−グルコシル ケルセチン 実施例A−1の方法に準じて調製したシラップ状のα−
コシル糖化合物を含有するα−グリコシル ケルセ
チン製品1重量部を水4重量部に溶解し、これにグルコ
アミラーゼ(EC 3.2.1.3、生化学工業株式会
社販売)をα−グリコシル ケルセチン製品固形物グラ
ム当り100単位加え、50℃5時間反応させた。反
応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、
α−グリコシル ケルセチンは、結合部位の異なる2種
のα−グルコシル ケルセチンに転換していた。
【0078】反応液を加熱して酵素を失活させ、この液
を多孔性合成吸着剤、商品名ダイヤイオンHP−10
(三菱化成工業株式会社販売)のカラムにSV2で通液
した。その結果、溶液中のα−グルコシル ケルセチン
と未反応ケルセチンとが多孔性合成吸着剤に吸着し、グ
ルコース、塩類などは吸着することなく流出した。次い
で、カラムを水で通液、洗浄した後、エタノール水溶液
濃度を段階的に高めながら通液し、α−グルコシル ケ
ルセチン画分を採取し、減圧濃縮し、粉末化して、粉末
状のα−グルコシル ケルセチンを固形物当り原料のケ
ルセチン重量に対して約50%の収率で得た。
【0079】α−グルコシル ケルセチンを酸で加水分
解したところ、ケルセチン1モルに対し、D−グルコー
ス1モルを生成し、また、α−グルコシル ケルセチン
に、ブタの肝臓から抽出し部分精製したα−グルコシダ
ーゼを作用させると、ケルセチンとD−グルコースとに
加水分解されることが判明した。
【0080】本品は、水溶性が向上され、高度に精製さ
れたビタミンP強化剤として、また、黄色着色剤、酸化
防止剤、安定剤、品質改良剤、予防剤、治療剤、紫外線
吸収剤などとして、他の原材料などと配合して、飲食
物、嗜好物、抗感受性疾患剤、化粧品などの用途に有利
に利用できる。
【0081】
【実施例 A−3】α−グリコシル ケルセチン フラ
ボノイド混合物 プロポリスのエタノール抽出物を公知の方法で脱ロウし
て得たクリシン、ガランギンおよびケルセチンを含むフ
ラボノイド混合物1重量部およびデキストリン(DE
8)10重量部に水200重量部を加え、pH9.8に
調整し、嫌気下で加熱溶解し、60℃に冷却し、これに
シクロマルトデキストリン グルカノトランスフェラー
ゼをデキストリングラム当り50単位加え、pH8.5
以上、55℃に維持して撹拌しつつ嫌気下で40時間反
応させた。
【0082】反応液を高速液体クロマトグラフィーで分
析したところ、ケルセチンは、約50%がα−グリコシ
ル ケルセチンに転換していた。
【0083】反応液を中和後加熱して酵素を失活させ、
濾過し濾液を実施例A−1と同様に、常法に従って、精
製、濃縮し、更に噴霧乾燥して粉末状のα−グルコシル
糖化合物を含有するα−グリコシル ケルセチンとフラ
ボノイドとの混合物製品を固形物当り原料重量に対して
約85%の収率で得た。
【0084】本品は、水溶性が向上されたビタミンP強
化剤としてばかりでなく、安全性の高い天然型の黄色着
色剤、酸化防止剤、消臭剤、安定剤、品質改良剤、抗菌
剤、予防剤、治療剤、紫外線吸収剤などとして、他の原
材料などと配合して、飲食物、嗜好物、飼料、餌料、抗
感受性疾患剤、化粧品、プラスチック製品などの用途に
有利に利用できる。
【0085】
【実施例 A−4】α−グリコシル ケルセチン フラ
ボノイド混合物 実施例A−3の方法に準じて調製した反応終了後の濾液
を、多孔性合成吸着剤、商品名アンバーライトXAD−
7(Rohm & Haas社製造)のカラムにSV
1.5で通液した。
【0086】その結果、溶液中のα−グリコシル ケル
セチンと未反応フラボノイドとが多孔性合成吸着剤に吸
着し、デキストリン、オリゴ糖、塩類などは吸着するこ
となく流出した。
【0087】このカラムを水で通液、洗浄した後、50
V/V%メタノールを通液して、α−グリコシル ケル
セチンおよび未反応フラボノイドを溶出し、これを濃縮
し、粉末化して、粉末状α−グリコシル ケルセチンと
フラボノイドとの混合物製品を固形物当り原料のフラボ
ノイド混合物重量に対して約55%の収率で得た。
【0088】本品は、水溶性が向上されたビタミンP強
化剤としてばかりでなく、安全性の高い天然型の黄色着
色剤、酸化防止剤、消臭剤、安定剤、品質改良剤、抗菌
剤、予防剤、治療剤、紫外線吸収剤などとして、他の原
材料などと配合して、飲食物、嗜好物、飼料、餌料、抗
感受性疾患剤、化粧品、プラスチック製品などの用途に
有利に利用できる。
【0089】
【実施例 A−5】α−グリコシル ケルセチン (1)α−グルコシダーゼ標品の調製 マルトース4W/V%、リン酸1カリウム0.1W/V
%、硝酸アンモニウム0.1W/V%、硫酸マグネシウ
ム0.05W/V%、塩化カリウム0.05W/V%、
ポリペプトン0.2W/V%、炭酸カルシウム1W/V
%(別に乾燥滅菌して植菌時に無菌的に添加)および水
からなる液体培地500重量部にムコール・ジャバニカ
ス(Mucor javanicus)IFO 457
0を温度30℃で44時間振盪培養した。培養終了後、
菌糸体を採取し、その湿菌糸体48重量部に対し、0.
5M酢酸緩衝液(pH5.3)に溶解した4M尿素液5
00重量部を加え、30℃で40時間静置した後、遠心
分離した。この上清を流水中で一夜透析した後、硫安
0.9飽和とし、4℃で一夜放置して生成した塩析物を
濾取し、0.01M酢酸緩衝液(pH5.3)50重量
部に懸濁溶解した後、遠心分離して上清を採取し、α−
グルコシダーゼ標品とした。
【0090】(2)α−グリコシル ケルセチンの調製 ケルセチン3重量部およびデキストリン(DE30)2
0重量部を20V/V%エタノール水500重量部に加
え、pH9.0に調整し、嫌気下で加熱溶解し、55℃
に冷却後直ちに(1)の方法で調製したα−グルコシダ
ーゼ標品15重量部を加え、pH8.5以上に維持して
撹拌しつつ50℃で40時間反応させた。
【0091】反応液を高速液体クロマトグラフィーで分
析したところ、ケルセチンの約30%がα−グリコシル
ケルセチンに転換していた。
【0092】反応液を実施例A−3と同様に精製し、濃
縮、粉末化してα−グルコシル糖化合物を含有する粉末
状α−グリコシル ケルセチン製品を約80%の収率で
得た。
【0093】本品は、実施例A−3の場合と同様に、水
溶性が向上されたビタミンP強化剤としてばかりでな
く、安全性の高い天然型の黄色着色剤、酸化防止剤、安
定剤、品質改良剤、予防剤、治療剤、紫外線吸収剤など
として、他の原材料などと配合して、各種用途に利用で
きる。
【0094】
【実施例 B−1】ハードキャンディー 還元麦芽糖水飴(株式会社林原商事販売、登録商標マビ
ット)1,500重量部を加熱し、減圧下で水分約2%
以下になるまで濃縮し、これに実施例A−4の方法で得
た粉末状α−グリコシル ケルセチン フラボノイド混
合物1重量部および適量のクエン酸を混和し、次いで常
法に従って、成形、包装してハードキャンディーを得
た。
【0095】本品は、ビタミンPを強化したキャンディ
ーであって、低う蝕性、低カロリーである。
【0096】
【実施例 B−2】フキの水煮 フキを皮むきし、適当な長さに切断して、薄い食塩水に
数時間浸し、これを実施例A−1の方法で得たシラップ
状のα−グリコシル ケルセチンと青色1号とを配合し
て調製した緑色着色料を含有する液で煮込んで、緑色の
鮮かなフキの水煮を得た。
【0097】本品は、野趣に富んだ風味を有しており、
各種和風料理の材料としても好適である。
【0098】
【実施例 B−3】求肥 モチ種澱粉1重量部に水1.2重量部を混合し、加熱糊
化しつつ、これに砂糖1.5重量部、結晶性β−マルト
ース(株式会社林原製造、登録商標サンマルト)0.7
重量部、水飴0.3重量部および実施例A−5の方法で
得た粉末状α−グリコシル ケルセチン0.02重量部
を混和し、以後、常法に従って、成形、包装して求肥を
製造した。
【0099】本品は、野趣に富んだ風味で、口当りも良
好なきびだんご風の和菓子である。
【0100】
【実施例 B−4】混合甘味料 はちみつ100重量部、異性化糖50重量部、α−グリ
コシル ステビオシド(東洋精糖株式会社製造、商品名
α−Gスィート)1重量部および実施例A−4の方法
で得た粉末状α−グリコシル ケルセチン フラボノイ
ド混合物0.02重量部を混合して混合甘味料を得た。
【0101】本品はビタミンPを強化した味質良好な甘
味料で、その甘味度は砂糖の約2倍で健康食品として好
適である。
【0102】
【実施例 B−5】サンドクリーム 結晶性α−マルトース(株式会社林原製造、登録商標フ
ァイントース)1,200重量部、ショートニング1,
000重量部、カカオマス50重量部、実施例A−2の
方法で得た粉末状α−グルコシル ケルセチン3重量部
およびレシチン1重量部を常法により混和してサンドク
リームを製造した。
【0103】本品は、ビタミンPを強化し、チョコレー
ト風味のサンドクリームで、口当り、溶け具合とも良好
である。
【0104】
【実施例 B−6】錠剤 L−アスコルビン酸10重量部に結晶性α−マルトース
19重量部、実施例A−3の方法で得た粉末状α−グリ
コシル ケルセチン フラボノイド混合物10重量部お
よびα−グリコシル ルチン(東洋精糖株式会社製造、
商品名αGルチン)1重量部を均一に混合した後、直径
12mm、20R杵を用いて、打錠し錠剤を得た。
【0105】本品は、L−アスコルビン酸、α−グリコ
シル ケルセチン フラボノイド混合物およびα−グリ
コシル ルチンとの複合ビタミン剤で、L−アスコルビ
ン酸の安定性もよく、飲み易い錠剤である。
【0106】
【実施例 B−7】カプセル剤 酢酸カルシウム・一水塩10重量部、L−乳酸マグネシ
ウム・三水塩50重量部、マルトース57重量部、実施
例A−4の方法で得た粉末状α−グリコシルケルセチン
フラボノイド混合物20重量部およびエイコサペンタ
エン酸20%含有γ−シクロデキストリン包接化合物1
2重量部を均一に混合し、顆粒成形機にかけて顆粒とし
た後、常法に従って、ゼラチンカプセルに封入して、一
カプセル150mg入のカプセル剤を製造した。
【0107】本品は、血中コレステロール低下剤、免疫
賦活剤、美肌剤などとして、感受性疾患の予防剤、治療
剤、健康増進用食品などとして有利に利用できる。
【0108】
【実施例 B−8】軟膏 酢酸ナトリウム・三水塩1重量部、DL−乳酸カルシウ
ム4重量部をグリセリン10重量部と均一に混合し、こ
の混合物を、ワセリン50重量部、木ロウ10重量部、
ラノリン10重量部、ゴマ油14.5重量部、実施例A
−4の方法で得た粉末状α−グリコシル ケルセチン
フラボノイド混合物1重量部およびハッカ油0.5重量
部の混合物に加えて、更に均一に混和して軟膏を製造し
た。
【0109】本品は、日焼け止め、美肌剤、色白剤など
として、更には外傷、火傷の治癒促進剤などとして有利
に利用できる。
【0110】
【実施例 B−9】注射剤 実施例A−2の方法で得た粉末状α−グルコシル ケル
セチンを水に溶解し、常法に従って、精製濾過してパイ
ロゲンフリーとし、この溶液を20mL容アンプルにα
−グリコシル ケルセチン10mgになるように分注
し、これを凍結乾燥し、封入して注射剤を製造した。
【0111】本注射剤は、単体で、または、他のビタミ
ン、ミネラルなどと混合して筋肉内又は静脈内に投与で
きる。また、本品は、低温貯蔵の必要もなく、使用に際
しての生理食塩水などへの溶解性は極めて良好である。
【0112】
【実施例 B−10】注射剤 塩化ナトリウム6重量部、塩化カリウム0.3重量部、
塩化カルシウム0.2重量部、乳酸ナトリウム3.1重
量部、マルトース45重量部及び実施例A−2の方法で
得た粉末状α−グルコシル ケルセチン1重量部を水
1,000重量部に溶解し、常法に従って、精製濾過し
てパイロゲンフリーとし、この溶液を滅菌したプラスチ
ック容器に250mLずつ充填して注射剤を製造した。
【0113】本品は、ビタミンP補給としてだけでな
く、カロリー補給、ミネラル補給のための注射剤で、病
中、病後の治療促進、回復促進などに有利に利用でき
る。
【0114】
【実施例 B−11】経管栄養剤 結晶性α−マルトース20重量部、グリシン1.1重量
部、グルタミン酸ナトリウム0.18重量部、食塩1.
2重量部、クエン酸1重量部、乳酸カルシウム0.4重
量部、炭酸マグネシウム0.1重量部、実施例A−3の
方法で得た粉末状α−グリコシル ケルセチン フラボ
ノイド混合物0.01重量部、チアミン0.01重量部
及びリボフラビン0.01重量部からなる配合物を調製
する。この配合物24gずつをラミネートアルミ製小袋
に充填し、ヒートシールして経管栄養剤を調整した。
【0115】本経管栄養剤は、一袋を約300乃至50
0mLの水に溶解し、経管方法により、鼻腔、胃、腸な
どへの経口的又は非経口的栄養補給液としても有利に利
用できる。
【0116】
【実施例 B−12】浴用剤 DL−乳酸ナトリウム21重量部、ピルビン酸ナトリウ
ム8重量部、実施例A−1の方法で得たシラップ状α−
グリコシル ケルセチン5重量部及びエタノール40重
量部を、精製水26重量部及び着色料、香料の適量と混
合し、浴用剤を製造した。
【0117】本品は、美肌剤、色白剤として好適であ
り、入浴用の湯に100乃至10,000倍に希釈して
利用すればよい。本品は、入浴用の湯の場合と同様に、
洗顔用水、化粧水などに希釈して利用することも有利に
実施できる。
【0118】
【実施例 B−13】乳液 ポリオキシエチレンベヘニルエーテル0.5重量部、テ
トラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール1重量
部、親油型モノステアリン酸グリセリン1重量部、ピル
ビン酸0.5重量部、ベヘニルアルコール0.5重量
部、アボガド油1重量部、実施例A−1の方法で得たシ
ラップ状α−グリコシル ケルセチン1重量部、ビタミ
ンE及び防腐剤の適量を、常法に従って加熱溶解し、こ
れにL−乳酸ナトリウム1重量部、1,3−ブチレング
リコール5重量部、カルボキシビニルポリマー0.1重
量部及び精製水85.3重量部を加え、ホモゲナイザー
にかけ乳化し、更に、香料の適量を加えて撹拌混合し乳
液を製造した。
【0119】本品は、日焼け止め、美肌剤、色白剤など
として有利に利用できる。
【0120】
【実施例 B−14】クリーム モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール2重量
部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5重量部、
実施例A−3の方法で得た粉末状α−グリコシルケルセ
チン フラボノイド混合物2重量部、流動パラフィン1
重量部、トリオクタン酸グリセリル10重量部及び防腐
剤の適量を、常法に従って加熱溶解し、これにL−乳酸
2重量部、1,3−ブチレングリコール5重量部及び精
製水66重量部を加え、ホモゲナイザーにかけ乳化し、
更に香料の適量を加えて撹拌混合しクリームを製造し
た。
【0121】本品は、日焼け止め、美肌剤、色白剤など
として有利に利用できる。
【0122】
【発明の効果】本文で述べたごとく、本発明は、ケルセ
チンとα−グリコシル糖化合物とを含有する溶液に、糖
転移酵素を作用させる生化学的手法により、α−グリコ
シルケルセチンを容易に生成できること、このα−グリ
コシル ケルセチンは、ケルセチンの持つ水に難溶また
は不溶性である欠点を解消できること、加えて、ケルセ
チンと同様の黄色着色性を示し、毒性の懸念もなく、生
体内で容易にケルセチンとD−グルコースとに加水分解
され、ケルセチン本来の生理活性を発揮することなどの
特長を有する。
【0123】従って、本発明のα−グリコシル ケルセ
チンは、安全性の高い天然型のビタミンP強化剤として
ばかりでなく、黄色着色剤、酸化防止剤、消臭剤、安定
剤、品質改良剤、予防剤、治療剤、紫外線吸収剤、劣化
防止剤などとして、他の原材料などと配合して、飲食
物、嗜好物、飼料、餌料、抗感受性疾患剤、美肌剤、色
白剤など化粧品、更には、プラスチック製品など
種組成物に有利に利用される。
【0124】従って、本発明によるα−グリコシル ケ
ルセチンの工業的製造法とその用途の確立は、飲食品、
化粧品、医薬品、プラスチック産業における工業的意義
が極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のα−グリコシル ケルセチン標品
[II]の赤外線吸収スペクトル図。
【図2】 対照としてのケルセチンの赤外線吸収スペク
トル図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61K 7/42 A61K 7/42 7/48 7/48 31/70 31/70 A61P 17/16 A61P 17/16 C09K 3/00 104 C09K 3/00 104 15/08 15/08 C12P 19/60 C12P 19/60

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ケルセチンとα−グルコシル糖化合物と
    を含有する溶液に糖転移酵素を作用させて得ることので
    きる下記の理化学的性質を有する、ケルセチンにD−グ
    ルコース残基が等モル以上α−結合したα−グリコシル
    ケルセチン。(1)溶剤に対する溶解性 水、0.1規定カセイソーダに易溶、メタノール、エタ
    ノールに微溶、 エーテル、ベンゼン、クロロホルムに不
    溶。 (2)呈味 穏和な甘味を示す。 (3)紫外線吸収スペクトル 253nm及び373nm付近に吸収極大を有する。 (4)加水分解に対する安定性 (a)ブタ肝臓由来のα−グルコシダーゼ(EC 3.
    2.1.20) により加水分解され、ケルセチンとD−
    グルコースとを生成する (b)β−グルコシダーゼによっては加水分解されな
    い。 (5)抗酸化作用 dl−α−トコフェロールより優れた抗酸化作用を示
    す。
  2. 【請求項2】 α−グリコシル ケルセチンがα−グル
    コシル ケルセチンであることを特徴とする請求項1記
    載のα−グリコシル ケルセチン。
  3. 【請求項3】 ケルセチンとα−グルコシル糖化合物と
    を含有する溶液に糖転移酵素を作用させて請求項1記載
    α−グリコシル ケルセチンを生成せしめ、これを採
    取することを特徴とするα−グリコシル ケルセチンの
    製造方法。
  4. 【請求項4】 ケルセチンとα−グルコシル糖化合物と
    を含有する溶液に糖転移酵素を作用させて請求項1記載
    α−グリコシル ケルセチンを生成せしめ、次いで、
    この溶液を多孔性合成吸着剤に接触させて精製し、請求
    項1記載のα−グリコシル ケルセチンを採取すること
    を特徴とするα−グリコシル ケルセチンの製造方法。
  5. 【請求項5】 ケルセチンがプロポリスから調製された
    ものであることを特徴とする請求項3または4記載のα
    −グリコシル ケルセチンの製造方法。
  6. 【請求項6】 ケルセチンとα−グルコシル糖化合物と
    を含有する溶液に糖転移酵素を作用させて得られる請求
    項1記載のα−グリコシル ケルセチンを含む反応生成
    物を含有せしめた黄色着色剤、酸化防止剤、品質改良
    剤、紫外線吸収剤、飲食物、嗜好物、飼料、餌料、抗感
    受性疾患剤、化粧品又はプラスチック製品
  7. 【請求項7】 ケルセチンがプロポリスから調製された
    ものであることを特徴とする請求項記載の黄色着色
    剤、酸化防止剤、品質改良剤、紫外線吸収剤、飲食物、
    嗜好物、飼料、餌料、抗感受性疾患剤、化粧品又はプラ
    スチック製品
  8. 【請求項8】 未反応のケルセチンを含有していること
    を特徴とする請求項6または7記載の黄色着色剤、酸化
    防止剤、品質改良剤、紫外線吸収剤、飲食物、嗜好物、
    飼料、餌料、抗感受性疾患剤、化粧品又はプラスチック
    製品
  9. 【請求項9】 ケルセチンとα−グルコシル糖化合物と
    を含有する溶液に糖転移酵素を作用させて請求項1記載
    のα−グリコシル ケルセチンとすることを特徴とする
    ケルセチンの糖転移反応方法。
  10. 【請求項10】 ケルセチンがプロポリスから調製され
    たものであることを特徴とする請求項記載のケルセチ
    ンの糖転移反応方法。
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