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JP3111856B2 - 車体速度検出装置 - Google Patents

車体速度検出装置

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JP3111856B2
JP3111856B2 JP07168454A JP16845495A JP3111856B2 JP 3111856 B2 JP3111856 B2 JP 3111856B2 JP 07168454 A JP07168454 A JP 07168454A JP 16845495 A JP16845495 A JP 16845495A JP 3111856 B2 JP3111856 B2 JP 3111856B2
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秀彦 片野
彰英 伊藤
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Toyota Motor Corp
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Toyota Motor Corp
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Publication date
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  • Transmission And Conversion Of Sensor Element Output (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数個の回転速度
検出装置によって検出された車輪の回転速度のうちの少
なくとも1つの回転速度に基づいて車体速度を推定する
車体速度推定手段を備えた車体速度検出装置に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】この種の車体速度検出装置の一例が、実
開昭57─32850号公報に記載されている。この公
報に記載された車体速度検出装置は、(1) 各々1つ以上
の車輪を含む複数の車輪群の回転速度をそれぞれ検出す
る複数個の回転速度検出装置と、(2) それら複数個の回
転速度検出装置によって検出された回転速度のうちの少
なくとも1つの回転速度に基づいて車体速度を推定する
車体速度推定手段とを備えている。上記回転速度検出装
置としては、一般に、車輪と一体的に回転可能な被検出
部と、その被検出部と相対回転可能に車体側部材に設け
られて被検出部との距離の周期的変化に応じた信号を出
力する検出部とを備えたものが使用される。車輪が回転
すると、被検出部と検出部との距離が周期的に変化し、
その周期的変化に応じた信号が検出部から出力される。
車輪の回転速度が大きくなると距離の変化の周波数が大
きくなり、周期が短くなる。したがって、これら周波数
または周期に基づいて回転速度を検出することができ
る。周波数は、例えば、検出部の出力する信号としきい
値を表す水平線(時間軸に平行な直線)との交点の個数
から求めることができ、周期は、例えば、上記交点の間
隔から求めることができる。回転速度が大きくなれば、
それに基づいて推定される車体速度も大きくなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、被検出部と検
出部との距離の変化は実際に車輪が回転しなくても生じ
る。車体側部材と車輪との相対的な振動に起因して生じ
ることもあるのである。これらの間に振動が生じると、
被検出部と検出部との距離が周期的に変化し、実際に車
輪が回転しなくても、回転速度が検出されてしまう。そ
して、この回転速度に基づいて車体速度が推定される
と、車両が停止状態にあっても、0でない車体速度が検
出されてしまう。上記車体側部材と車輪との相対的な振
動は、エンジンがレーシング状態にあることが原因で生
じる駆動系の共振に伴って生じる。そこで、請求項1に
係る第一発明は、レーシングに起因して誤った車体速度
が検出されることを回避し得る車体速度検出装置を得る
ことを課題として為されたものである。また、請求項2
に係る第二発明は、上記課題をできる限り単純な構成で
解決することを課題として為されたものである。請求項
3に係る第三発明は、特に、駆動輪と非駆動輪とを備え
た車両に好適な車体速度検出装置を得ることを課題とし
て為されたものである。請求項4に係る第四発明は、駆
動輪と非駆動輪とを備えた車両においてレーシング状態
の正しい推定が行われる確率を高くすることを課題とし
て為されたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】第一発明においては、上
記課題が、車体速度検出装置を、前記(1) 回転速度検出
装置、(2) 車体速度推定手段の他に、(3) 車両のエンジ
ンがレーシング状態にあるか否かを推定するレーシング
推定手段を含むものとし、かつ、前記車体速度推定手段
を、レーシング推定手段によってエンジンがレーシング
状態にあると推定された場合にレーシング時推定規則に
基づいて車体速度を推定するレーシング時車体速度推定
手段と、レーシング推定手段によってエンジンがレーシ
ング状態にないと推定された場合に前記レーシング時推
定規則とは異なる非レーシング時推定規則に基づいて車
体速度を推定する非レーシング時車体速度推定手段とを
含むものとすることによって解決される。
【0005】ここで、回転速度検出装置が複数の車輪を
含む車輪群の回転速度を検出するものである場合には、
その車輪群に含まれる複数の車輪の回転速度の最大値,
最小値,中間値,平均値等、1つ以上の車輪の回転速度
に基づいて決まる車輪群回転速度を検出するものとする
ことができる。例えば、差動装置を介して左右の駆動輪
を駆動するプロペラシャフトのように、複数の車輪と共
に回転する部材と一体的に回転可能に被検出部を設け、
その被検出部と相対回転可能に車体側部材に検出部とを
設けることが可能であり、この場合には、複数の車輪の
回転速度の平均値が車輪群回転速度として検出される。
また、まず各車輪群に含まれる複数の車輪の各々の回転
速度を検出し、得られた各車輪の回転速度を演算処理し
て車輪群速度を得るものとすることも可能である。
【0006】また、レーシング推定手段には、単にレー
シング状態にある可能性があると推定するレーシング可
能性推定手段から高い確率でレーシング状態にあると推
定するレーシング検出手段まで含まれる。また、レーシ
ング可能性推定手段には、現在レーシング状態にある可
能性があるか否かを推定する現在レーシング可能性推定
手段や、将来レーシング状態になる可能性があるか否か
を推定する将来レーシング可能性推定手段等が含まれ
る。以下、本明細書において、「推定する」という用語
は、「可能性がある」と称する方が妥当であるほど推定
結果が正しい確率が低い場合から、「検出する」と称す
る方が妥当であるほど推定結果が正しい確率が高い場合
までを包含する用語として使用する。
【0007】第二発明においては、前記課題が、レーシ
ング時車体速度推定手段を、レーシング推定手段によっ
てエンジンがレーシング状態にあると推定された場合に
は、当該レーシング時車体速度推定手段による車体速度
の推定を行わせない推定禁止手段を含むものとすること
によって解決される。また、第三発明においては、前記
複数個の回転速度検出装置を、駆動輪の回転速度を検出
する駆動輪回転速度検出装置と、非駆動輪の回転速度を
検出する非駆動輪回転速度検出装置とを含むものとし、
かつ、前記非レーシング時車体速度推定手段を、前記レ
ーシング推定手段によってレーシング状態にないと推定
された場合に、駆動輪回転速度検出装置によって検出さ
れた駆動輪回転速度と前記非駆動輪回転速度検出装置に
よって検出された非駆動輪回転速度とのうち予め定めら
れた一方に基づいて車体速度の推定を行うものとし、前
記レーシング時車体速度推定手段を、レーシング推定手
段によってレーシング状態にあると推定された場合に、
駆動輪回転速度と非駆動輪回転速度とのうちレーシング
の影響を受けていない側のものに基づいて車体速度の推
定を行うものとすることによって解決される。
【0008】第四発明においては、前記課題が、前記複
数個の回転速度検出装置を、駆動輪の回転速度を検出す
る駆動輪回転速度検出装置と、非駆動輪の回転速度を検
出する非駆動輪回転速度検出装置とを含むものとし、か
つ、前記レーシング推定手段を、少なくとも前記駆動輪
回転速度と前記非駆動輪回転速度との差が設定回転速度
差以上であることに基づいてエンジンがレーシング状態
にあると推定する回転速度差依拠レーシング推定手段を
含むものとすることによって解決される。
【0009】
【作用】第一発明に係る車体速度検出装置においては、
レーシング推定手段によってエンジンがレーシング状態
にあると推定された場合には、車体速度がレーシング時
車体速度推定手段によりレーシング時推定規則に基づい
て推定され、レーシング状態にないと推定された場合に
は、非レーシング時車体速度推定手段により非レーシン
グ時推定規則に基づいて推定される。エンジンがレーシ
ング状態にあると推定された場合には、車体速度がレー
シングの影響を排除し得るレーシング時推定規則に基づ
いて推定されるため、レーシングに起因して誤った車体
速度が検出されることを回避することができる。
【0010】ここで、レーシング時推定規則と非レーシ
ング時推定規則とは互いに異なる規則である。例えば、
本車体速度検出装置が二輪駆動車に搭載されている場合
には、非レーシング時推定規則を駆動輪の回転速度に基
づいて車体速度を推定する規則とし、レーシング時推定
規則を非駆動輪の回転速度に基づいて推定する規則とす
ることができる。この場合には、車体速度推定の基礎と
なる回転速度が異なるため、それぞれの推定規則が異な
ることになる。スピードメータに表示される車体速度は
法令によって駆動輪の回転速度に基づいて求められるべ
きものとされているため、本発明に係る車体速度検出装
置により検出された車体速度がスピードメータに供給さ
れる場合には、車体速度は原則として(すなわち非レー
シング時には)駆動輪の回転速度に基づいて推定されな
ければならない。しかし、レーシング時に車輪と車体側
部材とに相対的な振動が生じるのは、多くの場合駆動輪
側であるため、レーシング時には非駆動輪の回転速度に
基づいて車体速度が推定されるようにするのがよい。
【0011】また、非レーシング時推定規則を非駆動輪
の回転速度に基づいて車体速度を推定する規則とし、レ
ーシング時推定規則をレーシングに起因する共振が生じ
た車輪が属さない側の車輪の回転速度に基づいて推定す
る規則とすることもできる。この場合において、レーシ
ングに起因する共振が駆動輪に生じた場合には、結果的
に、非レーシング時にもレーシング時にも車体速度が非
駆動輪の回転速度に基づいて推定されることになり、基
礎となる回転速度が同じになってしまう。しかし、稀に
レーシングに起因する共振が非駆動輪に生ずることもあ
り、その場合にはレーシング時に駆動輪の回転速度が車
体速度推定の基礎とされる。基礎となる回転速度を非駆
動輪の回転速度にすることが予め決められている場合
と、レーシングに起因する共振の状態に基づいて基礎と
なる回転速度が決められる場合とでは、推定規則が異な
るのである。
【0012】さらに、レーシングの影響を受け易い回転
速度検出装置と、レーシングの影響を受け難い回転速度
検出装置との両方が設けられている場合には、非レーシ
ング時推定規則を前者の回転速度検出装置によって検出
された回転速度に基づいて推定する規則とし、レーシン
グ時推定規則を後者のレーシングの影響を受け難い回転
速度検出装置によって検出された回転速度に基づいて推
定する規則とすることもできる。例えば、駆動輪の回転
速度を検出する場合において、駆動輪の回転速度を直接
検出するものであり、レーシングの影響を受け易い電磁
ピックアップ式の回転速度検出装置と、プロペラシャフ
トの回転速度を検出するものであり、検出素子が磁気抵
抗素子であるレーシング時の影響を受け難い回転速度検
出装置との両方が設けられ、前者の装置の方が検出精度
が高い場合がある。この場合には、通常は(非レーシン
グ時は)、前者の装置によって検出された回転速度に基
づいて推定した方が望ましいのである。
【0013】第二発明の車体速度検出装置においては、
レーシング推定手段によってエンジンがレーシング状態
にあると推定された場合には、その時点における回転速
度に基づく車体速度の推定が、推定禁止手段によって禁
止される。レーシングに起因する振動が生じた場合に
は、回転速度検出装置によって検出される回転速度は実
際の車輪の回転速度ではなく、車体側部材と車輪と(被
検出部と検出部と)の相対的な振動に基づく誤った回転
速度である。したがって、その回転速度に基づいて車体
速度が推定されると、車体速度が誤って推定されてしま
う。それを回避するために、本発明の車体速度検出装置
においては、レーシング状態にあると推定された場合に
は、その時点における回転速度に基づいて車体速度が推
定されないようにするのである。回転速度に基づく推定
が禁止された場合には、車体速度は、例えば、レーシン
グ状態にないと推定された過去に推定された車体速度に
維持されたり、予め定められた設定速度に維持されたり
する。
【0014】第三発明の車体速度検出装置においては、
レーシング状態にないと推定された場合には、駆動輪回
転速度と非駆動輪回転速度とのうち予め定められた一方
に基づいて車体速度が推定される。前述のように、車体
速度がスピードメータに供給され、表示される場合に
は、法令上、駆動輪回転速度に基づいて推定されなけれ
ばならない。しかし、車両走行中の多くの時期において
は駆動輪より非駆動輪の方がスリップが小さいため、技
術的には、駆動輪回転速度より非駆動輪回転速度の方が
真の車体速度に近いことが多い。したがって、本発明に
係る車体速度検出装置により検出される車体速度が法令
上の拘束を受けない目的で使用される場合には、非レー
シング状態においては非駆動輪回転速度に基づいて車体
速度が推定されるようにすることが合理的である。
【0015】一方、レーシング状態にあると推定された
場合には、駆動輪回転速度と非駆動輪回転速度とのうち
レーシングの影響を受けていない側のものに基づいて車
体速度が推定される。その典型的な態様は、駆動輪回転
速度と非駆動輪回転速度とのうち小さい方を選択し、そ
の小さい方の回転速度に基づいて車体速度を推定するも
のである。しかし、車両の構造等により、レーシング状
態に起因して共振が生じる車輪が予め決まることが多
く、その場合にはレーシング状態推定時に駆動輪回転速
度と非駆動輪回転速度とのうち共振が生じない側のもの
の回転速度に基づいて車体速度が推定されるように予め
定めておくこともできる。駆動輪および非駆動輪を備え
た二輪駆動車においては多くの場合駆動輪に共振が生ず
る。したがって、レーシング状態にあると推定された場
合には非駆動輪の回転速度に基づいて車体速度が推定さ
れるように予め定めておくことができる。しかし、レー
シングに起因する共振が非駆動輪に生じ易い車両におい
ては、逆に、レーシング状態にあると推定された場合に
は駆動輪の回転速度に基づいて車体速度が推定されるよ
うにすべきである。
【0016】レーシングに起因する共振が駆動輪と非駆
動輪との両方に生じる車両は稀であるため、本発明の車
体速度検出装置によれば、レーシングに起因して車体速
度が誤って推定されることを良好に回避することができ
る。なお、レーシング状態にないと推定された場合に非
駆動輪の回転速度に基づいて車体速度が推定されるよう
に予め定められており、かつ、レーシング状態において
共振が生じるのが駆動輪に決まっている場合には、レー
シング状態推定の結果いかんを問わず、車体速度は非駆
動輪の回転速度に基づいて推定されることになる。した
がって、レーシング状態の推定そのものが不要であり、
本願発明を適用する必要がない特殊な場合であることに
なる。
【0017】第四発明の回転速度差依拠レーシング推定
手段によれば、駆動輪の回転速度と非駆動輪の回転速度
との差が設定速度以上である場合に、エンジンがレーシ
ング状態にあると推定される。エンジンがレーシング状
態にあり、駆動系に共振が生じれば、たいていの場合に
は、駆動輪と非駆動輪とのいずれか一方の側においての
み車輪と車体側部材との相対的な振動が大きくなる。し
たがって、駆動輪の回転速度と非駆動輪の回転速度との
差が設定回転速度差以上であれば、レーシング状態にあ
ると推定することができるのである。
【0018】
【発明の効果】第一発明の車体速度検出装置において
は、レーシング状態にあると推定された場合にはレーシ
ング時推定規則に基づいて車体速度が推定されるため、
レーシングに起因して誤った車体速度が推定されること
を良好に回避することができる。第二発明の車体速度検
出装置においては、レーシング状態にあると推定された
場合には、その時点の回転速度に基づく車体速度の推定
が禁止されるため、誤って検出された回転速度に基づい
て車体速度が推定されることを回避することができる。
【0019】第三発明の車体速度検出装置においては、
レーシング状態にないと推定された場合には、駆動輪回
転速度と非駆動輪回転速度とのうち予め定められた一方
に基づいて車体速度が推定され、レーシング状態にある
と推定された場合には、駆動輪回転速度と非駆動輪回転
速度とのうちレーシングの影響を受けていない側のもの
に基づいて車体速度が推定される。レーシングに起因す
る共振が駆動輪と非駆動輪との両方に生じる車両は稀で
あるため、本発明によれば、駆動輪と非駆動輪とを備え
た車両においてレーシングに起因して車体速度が誤って
推定されることを良好に回避することができる。
【0020】第四発明の車体速度検出装置における回転
速度差依拠レーシング推定手段によれば、レーシング状
態の推定が正しい確率を高めることできる。そのため、
駆動輪と非駆動輪とを備えた車両においてレーシング状
態にないのに誤ってレーシング時推定規則に基づいて車
体速度が推定されてしまう確率を低くすることができ、
車体速度の推定精度を向上させることができる。
【0021】
【発明の補足説明】以下、本発明の望ましい実施態様を
列挙するとともに、必要に応じて関連説明を行う。 (1)前記レーシング時車体速度推定手段が、車体速度
を、レーシング状態にあると推定される以前の回転速度
に基づいて推定する過去回転速度依拠車体速度推定手段
を含む請求項1または2に記載の車体速度検出装置。 (2)前記レーシング時車体速度推定手段が、車体速度
を、レーシング状態にあると推定される直前の非レーシ
ング時車体速度推定手段によって推定された車体速度と
同じ大きさであると推定する直前車体速度維持手段を含
む請求項2または態様1に記載の車体速度検出装置。レ
ーシング状態にあると推定された場合には、車体速度
を、それ以前のレーシング状態にないと推定された場合
における回転速度に基づいて推定してもよい。エンジン
がレーシング状態にある場合には、車両は停止状態と低
速走行状態とのいずれか一方の状態にあることが多い。
したがって、車体速度を、過去の、レーシング状態にな
いと推定された場合における回転速度に基づいて推定し
ても差し支えない。その具体的な一例は、レーシング状
態にあると推定された場合には、その推定が行われる直
前の回転速度の一定時間内における変化量、あるいは単
位時間当たりの変化量である回転加速度に基づいてそれ
以後の回転速度を推定する態様である。この態様のレー
シング時車体速度推定手段が、態様1の過去回転速度依
拠車体速度推定手段の典型的な一例である。しかし、レ
ーシング状態にあると推定される直前の(レーシング状
態にないと推定された最後の)車体速度と同じ大きさで
あると推定されるようにすることも可能である。この場
合には、過去回転速度依拠車体速度推定手段は、請求項
1のレーシング時車体速度推定手段の一態様であると考
えることも、請求項2の推定禁止手段を備えたレーシン
グ時車体速度推定手段の一態様であると考えることもで
きる。車体速度が、現在の回転速度ではないが、回転速
度に基づいて推定されることには変わりがないと考えれ
ば、前者のように考えることができるが、現在の回転速
度に基づく推定はしないのであるから、回転速度に基づ
く推定が禁止されているのであると考えれば、後者のよ
うに考えることができる。態様2の直前車体速度維持手
段は、態様1の過去回転速度依拠車体速度推定手段の一
態様と考えることも可能であるが、回転速度に基づいて
推定することなく、すでに推定された車体速度と同じで
あると推定する手段であると考えれば、請求項2のレー
シング時車体速度推定手段の一態様であると考えること
ができる。 (3)前記レーシング時車体速度推定手段が、車体速度
を、予め定められた設定速度とする設定車体速度維持手
段を含む請求項2に記載の車体速度検出装置。レーシン
グ状態にあると推定された場合には、車体速度は、予め
定められた設定速度であると推定されるようにしてもよ
い。設定速度の大きさは、例えば、0とすることができ
る。エンジンがレーシング状態にあると推定されるの
は、車両が停止状態にある場合が大部分だからである。
また、惰性走行中にレーシング状態にあると推定された
場合には、車体速度が0以上の設定速度であると推定さ
れるようにしてもよい。 (4)前記レーシング推定手段が、エンジンが無負荷状
態にあることと、エンジンの回転数が設定数以上である
こととの少なくとも一方の条件が満たされた場合に、エ
ンジンがレーシング状態にある可能性があると検出する
レーシング可能性推定手段を含む請求項1〜3,態様1
〜3のいずれか1つに記載の車体速度検出装置。レーシ
ング状態は、エンジンが無負荷状態にあってかつ回転数
が設定回転数以上の状態であるため、いずれか一方の状
態にあれば、レーシング状態にある可能性があると推定
できる。また、上述のいずれか一方の状態にある場合
と、両方の状態にある場合とでは、前者の方がレーシン
グ状態にあるとの推定が正しい確率が低く、後者の場合
の方が確率が高い。このように、いずれか一方の状態に
ある場合と、両方の状態にある場合とで、レーシング状
態にあるとの推定が正しい確率が低いか高いかを決定す
ることが可能であり、この場合には、レーシング可能性
推定手段が、推定確率決定手段を含むものとすることが
できる。シフトレバーがニュートラル位置やパーキング
位置にある場合、あるいはクラッチが非接続状態にある
場合に、エンジンが無負荷状態にあるとみなすことがで
きる。また、オートマチックトランスミッションを備え
た車両においては、シフトレバーがドライブ位置にあっ
ても車両が停止状態にある場合にはレーシング状態にあ
る可能性があると推定することができる。この場合、ブ
レーキペダルが踏み込まれていることを検出することに
よって車両が停止状態にあるか否かを推定することがで
きる。エンジンの回転数はエンジンの出力軸の回転数を
直接検出することによって検出できるが、アクセルペダ
ルが踏み込まれたか否か、スロットルバルブ開度が設定
開度以上か否か等に基づいてエンジン回転数が設定回転
数になる可能性があるか否かを検出することができる。
このように、運転者の操作部材の操作に基づいて車両が
レーシング状態にある可能性があるか否かを推定する場
合には、レーシングの可能性の推定が車両が四輪駆動車
であっても、二輪駆動車であっても可能となる。 (5)前記レーシング推定手段が、当該車体速度検出装
置が搭載された車両の駆動系に共振が生じたことに基づ
いて前記エンジンがレーシング状態にあると推定する共
振依拠レーシング推定手段を含む請求項1〜4,態様1
〜3のいずれか1つに記載の車体速度検出装置。共振依
拠レーシング推定手段によってエンジンがレーシング状
態にあると推定されれば、エンジンがレーシング状態に
あるとの推定結果が正しい確率は高くなる。そのため、
エンジンがレーシング状態にないにもかかわらずレーシ
ング時車体速度推定手段によって車体速度が推定されて
しまう確率を低くすることができる。 (6)当該車体速度検出装置が搭載された車両が、少な
くとも前輪側および後輪側に複数個の車輪を含むもので
あり、前記共振依拠レーシング推定手段が、前記前輪側
および後輪側のいずれか一方の側に属するすべての車輪
の回転速度に関連する回転速度関連量の大きさが共に適
正範囲外にあるか否かを検出し、共に適正範囲外にある
場合に、前記駆動系に共振が生じたと推定する適正範囲
外依拠共振推定手段を含む態様5に記載の車体速度検出
装置。エンジンがレーシング状態にある場合には、前輪
側および後輪側のいずれか一方の側のみに共振が生じる
ことが多い。前輪側に属するすべての車輪に共振が生じ
た場合には、前輪側に属するすべての車輪の回転速度関
連量の大きさが適正範囲外となり、後輪側に属するすべ
ての車輪に共振が生じた場合には、後輪側に属するすべ
ての車輪の回転速度関連量の大きさが適正範囲外にな
る。当該車体速度検出装置が二輪駆動車に搭載された場
合には、前輪側および後輪側のいずれか一方の側に属す
る車輪が駆動輪でいずれか他方の側に属する車輪が非駆
動輪となり、駆動輪側に共振が生じ易い。それに対し
て、四輪駆動車である場合には、どの車輪に共振が生じ
るかは一般的にはわからないが、車の構造等によって前
輪側と後輪側とのいずれか一方に属する車輪に共振が生
じ易くなっていることがあり、この場合には、本態様の
共振依拠レーシング推定手段によってレーシング状態に
あることを推定することができる。また、共振が生じや
すい車輪が予め決められている車両もあり、その場合に
は、その車輪の回転速度関連量が適正範囲外の大きさに
なった場合にレーシングに起因する共振が生じたと、駆
動輪適正範囲外依拠共振推定手段によって推定される場
合もある。 (7)前記共振依拠レーシング推定手段が、複数の回転
速度検出装置によって検出された回転速度の少なくとも
1つの回転速度の単位時間当たりの変化量が設定変化量
より大きい場合には、前記駆動系に共振が生じたと推定
する回転速度変化量依拠共振推定手段を含む態様5に記
載の車体速度検出装置。共振が生じると、回転速度の単
位時間当たりの変化量である回転加速度が非常に大きく
なる。したがって、回転加速度が設定変化量より大きく
なれば、共振が生じたと推定することができる。回転加
速度は、車輪速度センサ等車輪の回転速度を直接検出す
るセンサの出力信号、すなわち、フィルタ処理を行う以
前の出力信号(または弱いフィルタ処置後の出力信号や
処理回数が少ない出力信号)の変化量とすることも、フ
ィルタ処理後の出力信号(または強いフィルタ処置後の
出力信号や処理回数が多い出力信号)の変化量とするこ
とも可能である。前者は後者より回転速度の変化量が大
きく、共振の有無を検出し易いが、検出すべき共振の種
類によってはフィルタ処理後の出力信号による方がよい
場合もあるのである。 (8)前記回転速度検出装置が、少なくとも、前輪側と
後輪側とのいずれか一方の側に属する左側車輪および右
側車輪の回転速度をそれぞれ検出する左側回転速度検出
装置および右側回転速度検出装置を含み、前記共振依拠
レーシング推定手段が、前記左側回転速度検出装置によ
って検出された左側回転速度と右側回転速度検出装置に
よって検出された右側回転速度との左右回転速度差に関
連する左右回転速度差関連量が設定量より大きいことに
基づいて、前記駆動系に共振が生じたと推定する左右回
転速度差依拠共振推定手段を含む態様5に記載の車体速
度検出装置。共振が生じる場合に、左右両輪において同
時に共振し始めることは稀で、時間差があるのが普通で
ある。したがって、左右車輪の回転速度差に関連する回
転速度差関連量が設定量より大きい場合には、左右車輪
のいずれか一方に共振が生じたと推定することができ、
それに基づいてエンジンがレーシング状態にあると推定
することができる。ここで、回転速度差関連量は、右側
回転速度と左側回転速度との左右回転速度差自体であっ
ても、その左右回転速度差が予め定められた関数に従っ
て演算された結果であっても、右側回転速度と左側回転
速度とが回転速度差に関連する関数に従って演算された
結果であってもよい。また、設定量は、例えば、車両が
最小旋回半径で旋回していると仮定した場合の回転速度
差である極限旋回時回転速度差や、スリップに起因して
左側車輪と右側車輪とに実際に生じ得る回転速度差の最
大値であるスリップ起因最大回転速度差等を考慮して決
定することができる。 (9)前記共振依拠レーシング推定手段が、共振が生じ
た車輪を検出する共振車輪検出手段を含み、前記レーシ
ング時車体速度推定手段が、その共振車輪検出手段によ
って検出された車輪を除いた車輪の回転速度に基づいて
車体速度を推定する非共振車輪回転速度依拠車体速度推
定手段を含む態様5〜8のいずれか1つに記載の車体速
度検出装置。共振車輪検出手段によって共振が生じてい
ると検出された車輪を除いた車輪の回転速度に基づいて
車体速度が推定されれば、レーシングに起因して誤って
車体速度が推定されることを回避することができる。本
態様において非レーシング時車体速度推定手段は、上述
のレーシング時車体速度推定規則と異なる規則であれ
ば、どのような非レーシング時車体速度推定規則に基づ
いて推定する手段であってもよい。 (10)当該車体速度検出装置が、駆動輪と非駆動輪と
を含む車両に搭載され、かつ、前記共振依拠レーシング
推定手段が、共振が生じた車輪が前記駆動輪側と非駆動
輪側とのいずれの側に属するかを検出する共振車輪所属
側検出手段を含み、前記レーシング時車体速度推定手段
が、前記共振車輪所属側検出手段によって検出された側
とは反対側に属する車輪の回転速度に基づいて車体速度
を推定する非共振側回転速度依拠車体速度推定手段を含
む態様5〜9のいずれか1つに記載の車体速度検出装
置。本態様によれば、共振が生じた車輪が駆動輪側に属
すると検出された場合には、車体速度が非駆動輪の回転
速度に基づいて推定され、共振が生じた車輪が非駆動輪
側に属すると検出された場合には、駆動輪の回転速度に
基づいて推定される。レーシング状態にあると推定され
た場合に、車体速度の推定の基礎となる回転速度を予め
決めておく必要はなく、共振が生じた車輪が属する側と
は反対側の車輪の回転速度とすることができる。態様9
の車体速度検出装置によれば、共振が生じた車輪が駆動
輪のいずれか一方である場合には、共振が生じていない
他方の駆動輪に基づいて車体速度が推定される場合があ
るが、本態様の車体速度推定装置においては、共振が生
じた車輪が駆動輪の少なくとも一方である場合には、非
駆動輪の車輪の回転速度に基づいて車体速度が推定され
ることになる。また、本態様の共振車輪所属側検出手段
は、共振が生じた車輪を検出可能な手段でなくても、駆
動輪側と非駆動輪側とのいずれの側に属するかを検出可
能な手段であればよい。したがって、共振車輪検出手段
は共振車輪所属側検出手段の一態様であると考えること
ができる。例えば、態様6に記載の適正範囲外依拠共振
推定手段によれば、共振が生じている車輪が前輪側に属
するか後輪側に属するかが検出されるため、態様10の
共振車輪所属側検出手段の一態様であると考えることが
でき、態様7の回転速度変化量依拠共振推定手段によれ
ば、共振がいずれの車輪(どの位置の車輪)に生じたか
が検出されるため、態様9の共振車輪検出手段の一態様
であると考えることができる。 (11)前記複数個の回転速度検出装置が、駆動輪の回
転速度を検出する駆動輪回転速度検出装置と、非駆動輪
の回転速度を検出する非駆動輪回転速度検出装置とを含
み、かつ、前記レーシング時車体速度推定手段が、前記
駆動輪回転速度検出装置によって検出された駆動輪回転
速度と前記非駆動輪回転速度検出装置によって検出され
た非駆動輪回転速度との小さい方に基づいて車体速度の
推定を行う小回転速度依拠車体速度推定手段を含む請求
項1,態様4〜8のいずれか1つに記載の車体速度検出
装置。レーシングに起因して生じる共振が駆動輪側と非
駆動輪側とのいずれか一方の側において生じれば、その
共振が生じた側に属する車輪の回転速度にノイズが重畳
し、その回転速度が非常に大きくなる。したがって、駆
動輪側の回転速度と非駆動輪側の回転速度との小さい方
に基づいて車体速度が推定されれば、車体速度がレーシ
ングに起因して誤って推定されることが回避される。本
態様の車体速度検出装置におけるように、車体速度が回
転速度が小さい方の側に属する車輪の回転速度に基づい
て推定されれば、結果的に、請求項3あるいは態様10
の車体速度検出装置におけるように、レーシングの影響
を受けない側(共振が生じていない側)に属する車輪の
回転速度に基づいて推定されることになる。 (12)前記レーシング時車体速度推定手段が、前記非
駆動輪回転速度に基づいて車体速度の推定を行うレーシ
ング時非駆動輪回転速度依拠車体速度推定手段を含み、
前記非レーシング時車体速度推定手段が、前記駆動輪回
転速度に基づいて車体速度の推定を行う非レーシング時
駆動輪回転速度依拠車体速度推定手段を含む請求項1に
記載の車体速度検出装置。本態様の車体速度検出装置
は、共振が駆動輪側においては生じる可能性があるが非
駆動輪側においては生じない車両において、特に有効で
ある。レーシング状態にあると推定された場合には、共
振が生じない非駆動輪の回転速度に基づいて車体速度が
推定され、レーシング状態にないと推定された場合に駆
動輪の回転速度に基づいて推定される。 (13)前記非レーシング時車体速度推定手段が、前記
駆動輪回転速度検出装置によって検出された駆動輪回転
速度と前記非駆動輪回転速度検出装置によって検出され
た非駆動輪回転速度との大きい方に基づいて車体速度の
推定を行う大回転速度依拠車体速度推定手段を含む請求
項1に記載の車体速度検出装置。本態様によれば、レー
シング状態にないと推定された場合には、非駆動輪の回
転速度と駆動輪の回転速度との大きい方に基づいて車体
速度が推定される。最大の回転速度に基づく車体速度
は、実際の車体速度を最もよく推定し得る。すべての車
輪の回転速度のうちの最大値に基づいて推定されるよう
にしてもよいが、駆動輪の回転速度と非駆動輪の回転速
度との大きい方に基づいて推定されるようにしてもよ
い。特に、本態様の車体速度検出装置によって検出され
た車体速度に基づいてアンチスキッド制御が行われる場
合には、車体速度の推定精度が高くなるため、アンチス
キッド制御精度を向上させることができる。 (14)駆動輪の回転速度を検出する駆動輪回転速度検
出装置と、非駆動輪の回転速度を検出する非駆動輪回転
速度検出装置と、前記駆動輪回転速度検出装置によって
検出された駆動輪回転速度と、前記非駆動輪回転速度検
出装置によって検出された非駆動輪回転速度との小さい
方に基づいて車体速度を推定する車体速度推定手段とを
含む車体速度検出装置。本態様によれば、常に、車体速
度が回転速度が小さい方の側に属する車輪の回転速度に
基づいて推定されることになる。非レーシング状態にお
いて、車両が直進しておりかつ定速走行中あるいは加速
中であれば、非駆動輪回転速度の方が駆動輪回転速度よ
り小さくなり、エンジンブレーキによる減速中であれ
ば、駆動輪回転速度の方が非駆動輪回転速度より小さく
なる。また、車両が旋回中であれば、上記直進時の事情
に、旋回半径が小さい後輪の回転速度の方が前輪の回転
速度より小さくなる傾向が加わり、その結果によって駆
動輪回転速度と非駆動輪回転速度との大小が決まる。ま
た、ブレーキの作用による減速中であれば、後輪のスリ
ップ率が前輪のスリップ率より小さくなるようにされる
ことが多いため、前輪の回転速度が後輪の回転速度より
小さくなる傾向が加わり、それによっても駆動輪回転速
度と非駆動輪回転速度との大小が左右される。非レーシ
ング状態においては、車体速度が駆動輪回転速度に基づ
いて推定されるか非駆動輪回転速度に基づいて推定され
るかは場合によるのである。それに対し、レーシング時
に駆動輪に共振が生じれば、駆動輪の回転速度が非駆動
輪の回転速度より著しく大きくなるため、車両の直進,
旋回,定速,加速,減速等の状態いかんを問わず、非駆
動輪の回転速度に基づいて車体速度が推定されることと
なる。以上の場合のうちで、基礎となる回転速度がレー
シング時と非レーシング時とで異なる場合は、レーシン
グ時と非レーシング時とで推定規則が異なると考えるこ
とも可能であり、そのように考えた場合には、駆動輪回
転速度と非駆動輪回転速度との小さい方に基づいて車体
速度を推定する車体速度推定手段が、レーシング推定手
段,非レーシング時車体速度推定手段およびレーシング
時車体速度推定手段を兼ねていることになり、本態様の
車体速度検出装置は、請求項1の車体速度検出装置の一
態様であると考えることもできる。 (15)前記レーシング推定手段が、エンジンがレーシ
ング状態にあると推定された場合に、その推定結果の正
しさの確率の高さを決定する推定確率決定手段を含み、
前記レーシング時車体速度推定手段が、その推定確率決
定手段によって決定された推定確率に応じてレーシング
時推定規則を変更するレーシング時推定規則変更手段を
含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の車体速度検出
装置。 (16)前記複数個の回転速度検出装置が、非駆動輪の
回転速度を検出する非駆動輪回転速度検出装置を含み、
かつ、前記レーシング時車体速度推定手段が、車体速度
を、レーシング状態にあると推定される直前の車体速度
と同じ大きさであると推定する直前車体速度維持手段
と、予め定められた設定速度であると推定する設定車体
速度維持手段と、前記非駆動輪回転速度検出装置によっ
て検出された回転速度に基づいて推定する非駆動輪回転
速度依拠車体速度推定手段とのうちの少なくとも2つ
と、これら複数の推定手段から1つを、前記レーシング
確率決定手段によって決定された推定確率に応じて選択
する確率対応推定手段選択手段とを含む態様15に記載
の車体速度検出装置。推定確率決定手段により、レーシ
ング状態にあるとの推定結果が正しい確率が決定され
る。例えば、レーシング推定手段がレーシング可能性推
定手段,共振依拠レーシング推定手段等を含む場合に
は、レーシング可能性推定手段によってレーシング状態
にあると推定された場合には推定結果が正しい確率は低
く、共振依拠レーシング可能性推定手段によって推定さ
れた場合には確率は高い。また、レーシング可能性推定
手段によってレーシング状態にあると推定された場合に
おいても、上述のように、エンジンが無負荷状態にある
場合と、エンジン回転数が設定回転数以上である場合と
のいずれか一方の状態にある場合と、両方の状態にある
場合とにでは前者の場合の方が後者の場合より推定結果
が正しい確率は低くなる。さらに、エンジン回転数の大
きさに応じて推定確率を連続的に検出することも可能で
ある。そして、その決定された推定確率に応じてレーシ
ング時推定規則を変更することができる。例えば、推定
確率が高い場合には、車体速度を、レーシング状態であ
ると推定される直前の回転速度に基づいて推定し、推定
確率が低い場合には、非駆動輪の回転速度に基づいて推
定するようにしてもよい。前者の場合には、直前車体速
度維持手段によって車体速度が推定され、後者の場合に
は、非駆動輪回転速度依拠車体速度推定手段によって推
定されると考えることができ、この場合は、態様16に
記載したように、レーシング時車体速度推定手段が複数
個の推定手段を含み、これら複数個の推定手段のうち推
定確率に応じて選択された推定手段によって車体速度が
推定されることになる。 (17)前記回転速度検出装置が、複数個の車輪各々と
一体的に回転可能な被検出部と、その被検出部と相対回
転可能に車体側部材に設けられ、被検出部との距離の周
期的変化に応じた信号を出力する検出部とを含む請求項
1〜4,態様1〜16のいずれか1つに記載の車体速度
検出装置。 (18)前記被検出部が磁性材料によって形成されたも
のであり、前記検出部が磁気発生部およびコイルを備
え、被検出部との距離の周期的変化に起因する磁束の周
期的な変化に伴ってコイルに発生する交流電流を前記出
力信号とするものである態様17に記載の車体速度検出
装置。回転速度検出装置が、車輪側の被検出部と車体側
の検出部との距離の周期的な変化に基づいて車輪の回転
速度を検出するものである場合には、車体側部材と車輪
との間に相対的な振動が生ずれば、回転速度にノイズが
重畳する。検出部に回転速度演算手段が接続されるが、
この演算手段が出力信号の周波数に基づいて回転速度を
演算するものである場合には特にノイズが回転速度の演
算結果に影響を及ぼし易い。車輪の回転速度を検出する
場合には、態様18の電磁ピックアップ式回転センサが
使用され、回転速度演算手段が、コイルから出力された
交流電流の周波数に基づいて回転速度を演算するものと
されることが多い。上記電磁ピックアップ式回転センサ
においては、レーシングに起因して生じる検出部と被検
出部との距離の変化の振幅は、たいてい、実際に車輪が
回転した場合に生じる距離の変化の振幅より小さい。そ
のため、コイルから出力された交流電流の周波数を求め
るためにその交流電流の電圧(以下、出力電圧と称す
る)と比較すべきしきい値を、レーシングに起因して生
じる振幅の小さな距離の変化が検出されない高さに定め
ることにより、レーシングに起因して誤った回転速度が
検出されないようにすることができる。しかし、そのよ
うにしきい値を高くすると、回転速度の検出精度が低下
したり、低い回転速度を検出することができなくなった
りする別の問題が生じる。電磁ピックアップ式回転セン
サにおいては、車輪の回転速度が小さい場合には出力電
圧の振幅も小さくなってしまうからである。レーシング
に起因する誤った車体速度の検出を回避しつつ、小さな
車体速度でも検出し得るようにしきい値を定めることは
非常に困難なことなのである。それに対して、本発明に
よれば、しきい値を高くすることなくレーシングに起因
する誤った車体速度の検出を回避することができるた
め、小さな車体速度も検出できる車体速度検出装置が得
られる。 (19)当該車体速度検出装置が、前記車体速度推定手
段によって推定された車体速度を外部機器に供給する車
体速度供給手段を含む請求項1〜4,態様1〜18のい
ずれか1つに記載の車体速度検出装置。 (20)当該車体速度検出装置が搭載された車両が、駆
動系制御装置(エンジン制御装置,駆動力配分制御装
置,トランスミッション制御装置),操舵系制御装置
(後輪操舵制御装置),サスペンション制御装置,制動
系制御装置(アンチスキッド制御装置,トラクション制
御装置),ナビゲータ制御装置,スピードメータのうち
の1個以上を含み、前記車体速度供給手段が、これらの
うち少なくとも1個の装置に車体速度を供給するもので
ある態様19に記載の車体速度検出装置。車体速度検出
装置によって推定された車体速度を外部機器に供給すれ
ば、その外部機器において車体速度を推定する必要がな
くなり、その分、制御プログラムを簡単にすることがで
きる。また、車体速度を複数個の外部機器に供給すれ
ば、それぞれの外部機器において個別に車体速度を推定
する必要がなくなり、車両全体のセンサの統合化を図る
ことができ、その結果、コストダウンを図ることができ
る。また、車体速度の他に、レーシング推定手段による
推定結果、回転速度検出装置の出力値等を外部装置に供
給することもできる。各外部機器において、これらが利
用されれば、制御プログラムを容易にしたり、制御精度
を向上させたりすることができるとともにセンサの統合
化およびコストダウンをより一層図ることができる。な
お、エンジン制御装置なる用語は、燃料噴射制御,点火
時期制御,ノック制御,アイドル回転数制御等を総合的
に行うエンジン総合制御装置と、これら制御を個々に行
うエンジン個別制御装置との両方を包含するものとす
る。 (21)前記車体速度供給手段が、前記車体速度推定手
段によって推定された車体速度を複数個の外部機器に供
給するものであり、かつ、当該車体速度検出装置が、前
記車体速度推定手段によって推定された車体速度を処理
する処理手段と、その処理手段を、前記外部機器の種類
に対応して制御する処理手段制御手段とを含む態様19
または20に記載の車体速度検出装置。ここで、処理手
段による処理は、例えば、フィルタ処理であり、フィル
タ自体を処理手段と考えることも可能である。車体速度
推定手段によって推定された車体速度を、複数個の外部
機器にそれぞれ供給する場合には、外部機器各々に供給
される車体速度はすべて同じであっても、外部機器の種
類に応じて異なっていてもよい。例えば、車体速度推定
手段によって推定された車体速度をアンチスキッド制御
装置とスピードメータとに供給する場合において、アン
チスキッド制御装置に供給する車体速度は、制御精度を
向上させるため、変動が多少大きくても遅れが小さい方
が望ましい。したがって、車体速度推定手段によって推
定された車体速度のフィルタ処理の回数を少なくした
り、弱いフィルタ処理を施したりして、フィルタ処理の
度合いを小さくすることが望ましい。それに対して、ス
ピードメータに供給する車体速度は、表示速度の変動が
小さい方がよいため、フィルタ処理回数を多くしたり、
強いフィルタ処理を施したりして、フィルタ処理の度合
いを大きくすることが望ましい。このような処理は、外
部機器各々において行われるようにしてもよいが、車体
速度検出装置において行われるようにしてもよい。ま
た、これら処理手段および処理手段制御手段は、車体速
度推定手段が有していても、車体速度供給手段が有して
いても、両方が有していてもよい。 (22)請求項1〜4,態様1〜21のいずれか1つに
記載の車体速度検出装置を含むアンチスキッド制御装置
あるいはトラクション制御装置。本車体速度検出装置
は、車輪の回転速度に基づいて車体速度を推定により求
めるものであるため、車輪の回転速度と車体速度との両
方を必要とするアンチスキッド制御装置やトラクション
制御装置の一部とするのに適している。その上、本車体
速度検出装置を、アンチスキッド制御装置やトラクショ
ン制御装置以外の1個以上の外部機器に車体速度を供給
する装置にも兼用すれば、専用の車体速度検出装置を省
略することができ、コストダウンを図ることができる。 (23)複数個の車輪の回転速度を各々検出する複数個
の回転速度検出装置と、前記複数の回転速度のうちの少
なくとも1つに基づいて車体速度を推定する車体速度推
定手段と、その車体速度推定手段によって推定された車
体速度を複数の外部機器に供給する車体速度供給手段と
を含む車体速度供給装置。複数の外部機器、特に3個以
上の外部機器に車体速度を共通に供給する車体速度供給
装置を設ければ、車両全体としてセンサを統合すること
ができ、コストダウンあるいは車両重量の軽減を図るこ
とができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、第一および第二発明に共通
の一実施形態である車体速度検出装置について説明す
る。車体速度検出装置は液圧制御装置に含まれ、この液
圧制御装置は、図1に示す液圧ブレーキ装置に備えられ
ている。本液圧ブレーキ装置は、駆動輪が後輪である二
輪駆動車に搭載されている。
【0023】図1において、10はマスタシリンダであ
り、12,13は駆動輪としての左右後輪14,15に
設けられたホイールシリンダであり、16,17は、非
駆動輪としての左右前輪18,19に設けられたホイー
ルシリンダである。マスタシリンダ10の一方の加圧室
に発生させられた液圧は液通路20を経てそれぞれホイ
ールシリンダ12,13に供給される。液通路20の途
中には3位置電磁弁22が設けられている。3位置電磁
弁22は、常には図示のマスタシリンダ10とホイール
シリンダ12,13とを連通させる第一位置にあるが、
図示しないソレノイドの強弱2段階の励磁により、ホイ
ールシリンダ12,13をマスタシリンダ10からもマ
スタシリンダ10とは別の後述する副液圧源24からも
遮断する第二位置と、ホイールシリンダ12,13をマ
スタシリンダ10から遮断して副液圧源24に連通させ
る第三位置とにそれぞれ切換え可能なものである。ソレ
ノイドは、後に詳述する液圧制御装置26の指令に基づ
いて図示しない駆動回路により制御される。
【0024】液通路20のホイールシリンダ12,13
と3位置電磁弁22との間には、3位置電磁弁30が設
けられている。3位置電磁弁30をバイパスするバイパ
ス通路32の途中には、逆止弁34が設けられている。
3位置電磁弁30は、ホイールシリンダ12,13をマ
スタシリンダ10に連通させる増圧位置と、ホイールシ
リンダ12,13をマスタシリンダ10からもリザーバ
38からも遮断する保持位置と、ホイールシリンダ1
2,13をリザーバ38に連通させ、マスタシリンダ1
0から遮断する減圧位置とに切り換え可能なものであ
る。本実施形態においては、駆動輪としての後輪側につ
いてはローセレクト制御が行われるようになっている。
【0025】逆止弁34はホイールシリンダ12,13
からマスタシリンダ10への作動液の流れを許容する
が、逆方向の流れを阻止するものである。バイパス通路
32および逆止弁34は、ブレーキペダル36の踏込み
が緩められた場合に、ホイールシリンダ12,13の作
動液をマスタシリンダ10に早急に戻すために設けられ
たものである。また、アンチスキッド制御中に3位置電
磁弁30が保持位置にあってホイールシリンダ12,1
3をマスタシリンダ10からもリザーバ38からも遮断
している状態でブレーキペダル36の踏込みが緩められ
た場合に、ホイールシリンダ12,13の作動液がマス
タシリンダ10に戻ることを許容し、ホイールシリンダ
圧を低下させる機能も果たす。
【0026】前記リザーバ38は、ポンプ42を介して
液通路20に接続されている。リザーバ38に収容され
た作動液は、ポンプ42によってくみ上げられてマスタ
シリンダ10に戻される。ポンプ42を駆動するモータ
44は、液圧制御装置26の指令に基づいて図示しない
駆動回路によって制御される。モータ44は、アンチス
キッド制御中あるいはトラクション制御中は継続して駆
動される。
【0027】前記副液圧源24は、アキュムレータ5
4,ポンプ56,モータ58等を備えたものである。モ
ータ58の駆動によりポンプ56が作動させられると、
マスタシリンダ10に取り付けられたリザーバ60の作
動液が加圧されてアキュムレータ54に蓄えられる。モ
ータ58は、圧力センサ62によって検出されるアキュ
ムレータ圧がほぼ設定範囲内にあるように制御される。
また、副液圧源24とリザーバ60との間には、リリー
フ弁64が設けられ、万一圧力センサ62が故障した場
合にもアキュムレータ圧が設定圧以上にならないように
されている。
【0028】同様に、非駆動輪としての前輪18,19
のホイールシリンダ16,17とマスタシリンダ10の
他方の加圧室とを接続する液通路68の途中には、3位
置電磁弁70,72がそれぞれ設けられている。また、
3位置電磁弁70,72をバイパスするバイパス通路7
4,76の途中には逆止弁78,80が設けられてい
る。リザーバ82はポンプ84を介して液通路68に接
続されており、ポンプ84はモータ86によって作動さ
せられるようになっている。前輪側においては、各車輪
18,19に対して独立にアンチスキッド制御が行われ
る。3位置電磁弁70,72は、それぞれ独立に制御さ
れる。3位置電磁弁70,72のソレノイドが、図示し
ない駆動回路により、液圧制御装置26の指令に基づい
て制御される。
【0029】前記液圧制御装置26は、図2に示すよう
に、CPU90,ROM92,RAM94,入力部9
6,出力部98等を含むコンピュータを主体として構成
されたものであり、入力部96には、各車輪14,1
5,18,19の回転速度を検出する車輪速センサ14
2〜145,ブレーキペダル36が踏み込まれた場合に
ON信号を出力するブレーキスイッチ146,図示しな
いシフトレバーの位置を検出するシフトポジションセン
サ148,図示しないエンジンの出力軸の回転数を検出
する回転数センサ150等が接続され、出力部98に
は、各3位置電磁弁22,30,70,72のソレノイ
ド,モータ44,58,86が図示しない駆動回路を介
して接続されるとともに、スピードメータ152および
エンジン制御装置154が接続されている。回転数セン
サ150は、エンジン制御装置154にも直接接続され
ている。また、ROM92には、図4のフローチャート
で表されるレーシング推定プログラム,図5のフローチ
ャートで表される車体速度推定プログラム,図6のフロ
ーチャートで表されるパルス幅検出プログラムの他、フ
ローチャートは省略するが、アンチスキッド制御プログ
ラム,トラクション制御プログラム等が格納されてい
る。RAM94には、車体速度メモリ,パルス幅データ
メモリ等が設けられている。
【0030】本実施形態においては、車体速度推定プロ
グラムの実行により、車輪速センサ142〜145によ
って検出された回転速度に基づいて車体速度が推定さ
れ、その車体速度が車体速度メモリに格納される。車体
速度メモリに格納された車体速度がスピードメータ15
2およびエンジン制御装置154に供給されるととも
に、その車体速度に基づいてアンチスキッド制御プログ
ラムやトラクション制御プログラムが実行される。な
お、エンジン制御装置154には、車体速度とともに後
述するレーシング状態にあるか否かの推定結果が供給さ
れる。このレーシング状態にあるか否かの推定結果は、
トラクション制御プログラムが実行される際にも考慮さ
れる。
【0031】アンチスキッド制御プログラムの実行によ
りアンチスキッド制御が行われる。ホイールシリンダ1
2,13,16,17の液圧が、各車輪14,15,1
8,19の制動スリップ率がほぼ適正値になるなど、制
動スリップ状態が適正状態になるように、3位置電磁弁
30,70,72が増圧位置,保持位置,減圧位置にそ
れぞれ切り換えられるのである。アンチスキッド制御
は、車輪のスリップ量Sが、回転減速度(負の回転加速
度)が設定値以上になった時点のスリップ量(ΔVSN
に設定量(ΔVR )を加えた値より大きくなった場合
(S>ΔVSN+ΔV R が満たされた場合)に開始され
る。
【0032】トラクション制御プログラムの実行により
トラクション制御が行われる。3位置電磁弁22が第三
位置に切り換えられた状態において、3位置電磁弁30
が増圧位置,保持位置,減圧位置にそれぞれ切り換えら
れ、ホイールシリンダ12,13の液圧が、駆動輪1
4,15の駆動スリップ率がほぼ適正値になるなど、駆
動スリップ状態が適正状態になるように制御されるので
ある。本実施形態においてトラクション制御は、駆動ス
リップが過大になった場合(駆動輪である後輪14,1
5の回転速度が車体速度に基づいて設定された設定速度
より大きくなった場合)に開始されるが、エンジンがレ
ーシング状態にあると推定された場合には行われないよ
うになっている。
【0033】上記車輪速センサ142〜145は、電磁
ピックアップ式のものである。図2に示すように、ヨー
ク160,コイル162,永久磁石164等を備えてお
り、固定部166において図示しない車体側部材に固定
される。ヨーク160の先端部が車輪14,15,1
8,19と一体的に回転可能に取り付けられているロー
タ168の外周部に近接した姿勢で固定されるのであ
る。また、ロータ168の外周部にはセレーション部が
形成され、多数個の凸部170と凹部172とが設けら
れている。永久磁石164による磁束がヨーク160,
ギャップ174,ロータ168を経て形成され、ロータ
168の回転につれてギャップ174の大きさが周期的
に変化するのに伴い、コイル162に交流電流が発生さ
せられる。ロータ168の回転速度が大きいほどコイル
162に発生させられる交流電流(出力電圧)の周波数
が大きく、周期が短くなる。
【0034】本実施形態においては回転速度に関連した
値として車輪速センサ142〜145の出力電圧の周期
が用いられる。例えば、回転速度が設定回転速度以下で
あるか否かを判定するために、周期が設定周期以上であ
るか否かが判定されるのである。車輪速センサ142〜
145の出力電圧は、0ボルトを中心とする交流電圧と
して出力される。そして、その周期は、出力電圧が正側
から負側に向かって0ボルトを下回る時点間の時間とし
て検出される。いわゆるゼロクロス点のうち1個おきの
ものの間の時間として検出されるのであり、本実施形態
においては出力電圧と比較されるべきしきい値が0ボル
トに設定されていることになる。ただし、実際には、耐
ノイズ性向上のためヒステリシスを設け、出力電圧が正
の設定値以上になり0以下に下がらない間はハイレベル
に保たれ、それ以外の間ローレベルに保たれるパルス信
号が作成され、このパルス信号の立ち下がりから立ち上
がりまでの時間、すなわちパルス周期が計測される。パ
ルス幅は、車輪速センサ142〜145の出力電圧の周
期に比例しているため、周期の代わりに使用し得るので
ある。
【0035】なお、上記しきい値を0ボルトから正また
は負の方向(本実施形態においては正の方向)に移動さ
せれば(しきい値を高くすれば)、振幅の小さいノイズ
は検出されないようにできるため、回転速度を正確に検
出することが可能となるが、回転速度が小さくなって出
力電圧の振幅が小さくなれば検出されなくなり、車輪1
4,15,18,19およびロータ168が実際には回
転しているにもかかわらず、回転速度0と検出されてし
まう不都合が生じる。それに対し、本実施形態において
はしきい値が0に設定されているため、このような不都
合を回避することができる。
【0036】本電磁ピックアップ式の車輪速センサ14
2〜145において、ロータ168が現実には回転して
いなくてもコイル162に交流電圧が発生させられる場
合がある。例えば、駆動系に共振が生じる場合である。
駆動系の共振により車輪と車体側部材(検出部と被検出
部)とが相対的に振動させられると、ヨーク160とロ
ータ168との距離(ギャップ174の大きさ)が周期
的に変化する。それに伴ってコイル162に交流電圧が
発生させられ、大きさが0でない回転速度が検出される
のである。車輪速センサ143によって検出された回転
速度は、車輪15の真の回転速度ではなく、振動に基づ
く贋の回転速度なのである。駆動系の共振は、例えば、
エンジンがレーシング状態になったことに起因して生じ
る。この共振に起因する交流電圧の振幅は、実際にロー
タ168が回転した場合に検出される交流電圧の振幅よ
り小さい。そのため、前述のように、しきい値を高くす
れば除去できる。しかし、本実施形態においては、後述
するように、しきい値を高くしないで駆動系の共振に基
づいて誤った車体速度が検出されないようにされてい
る。
【0037】図3は、車両の停止状態において図示しな
いアクセルペダルが踏み込まれた場合に生じた駆動系の
振動の状態を示す図である。図において、破線Aはエン
ジンの回転数を表し、実線Bは右後輪15の回転速度を
検出する車輪速センサ143の出力値に基づいて求めら
れた回転速度を表し、実線Cは同じく車輪速センサ14
3の出力値に基づいて求められた回転速度の単位時間当
たりの変化量である回転加速度を表している。
【0038】破線Aが示すようにエンジンの回転数が大
きくなると、実際には車輪が回転していないにもかかわ
らず、実線Bが示すように、時点P以降において0でな
い大きさの回転速度が検出される。レーシングの発生に
起因して駆動系に共振が生じ、検出部と被検出部との間
に相対的に振動が生じたため、車輪速センサ143の出
力電圧にノイズが重畳したからである。この車輪速セン
サ143の出力電圧に基づいて車体速度が推定される
と、実際には車両が停止状態にあるにもかかわらず、大
きさが0でない車体速度が推定されることになる。
【0039】それを回避するために、本実施形態におい
ては、エンジンがレーシング状態にあるか否かが推定さ
れるようになっており、レーシング状態にあると推定さ
れた場合には、車体速度がレーシング時推定規則に基づ
いて推定され、レーシング状態にないと推定された場合
には、非レーシング時推定規則に基づいて推定されるよ
うにされている。しきい値を高くするわけではないので
ある。
【0040】スピードメータ152においては、供給さ
れた車体速度が表示される。なお、スピードメータにお
いて表示される車体速度は、法令により駆動輪の回転速
度に基づいたものとするよう決められている。エンジン
制御装置154においては、エンジン回転数,車体速度
およびその他多数のセンサの出力値に基づいて燃料噴射
量制御が行われる。しかし、エンジンがレーシング状態
にあり、高いエンジン回転数が長時間持続すると、エン
ジン部品が過熱されるおそれがある。それを回避するた
め、燃料噴射量を減らす制御が行われる。これが過剰レ
ーシング防止制御であり、燃料噴射量が車体速度に基づ
いて制御されることになる。エンジンがレーシング状態
にあるか否かは液圧制御装置26に設けられたレーシン
グフラグの状態に基づいて判定される。
【0041】レーシングフラグは、エンジンがレーシン
グ状態にあると推定された場合にセットされ、レーシン
グ状態にないと推定された場合にリセットされるフラグ
であるが、本実施形態においては、車両が停止状態にあ
り(車体速度が設定速度以下であり)、シフトポジショ
ンがニュートラルおよびパーキングのいずれか一方にあ
り、かつ、エンジン回転数が設定回転数より大きい場合
に、レーシング状態にあると推定される。レーシング状
態にないと推定された場合には、車体速度が、駆動輪で
ある後輪14,15のいずれか一方の車輪の回転速度
(ここでは、右後輪15の回転速度とする)に基づいて
推定される。それに対して、レーシング状態にあると推
定された場合には、その時点における回転速度に基づく
推定が禁止され、それ以前の、レーシング状態にないと
推定された時点に推定された車体速度と同じ大きさであ
ると推定される。レーシング状態にある場合には車両が
停止状態にあるため、それ以前の車体速度の大きさと同
じであると推定しても差し支えないのである。
【0042】以上の処理をフローチャートに基づいてさ
らに具体的に説明する。図5のフローチャートで表され
る車体速度推定ルーチンにおいて、ステップ1(以下、
S1と略称する。他のステップについても同様とする)
において、レーシングフラグがセットされているか否か
が判定される。レーシングフラグがセットされておら
ず、S1における判定がNOの場合には、S2において
後述するパルス幅データメモリに格納されたパルス幅デ
ータが読み込まれ、S3においてそのパルス幅データに
基づいて回転速度の演算とフィルタ処理による平滑化が
行われ、フィルタ処理後の回転速度に基づいて車体速度
が推定される。具体的には、駆動輪の一方である右後輪
15の回転速度が更にフィルタ処理され、平滑化された
ものが車体速度とされるのである。推定された車体速度
を表すデータ(以下、単に車体速度と略称する)はRA
M94の車体速度メモリに格納される。それに対して、
レーシングフラグがセットされている場合には、S1に
おける判定がYESとなり、S2,3がスキップされ
る。車体速度が回転速度に基づいて推定されないのであ
り、それ以前に推定された値と同じであると推定され
る。車体速度メモリには、新たな車体速度の値が書き込
まれないため、記憶された車体速度の値はそのまま維持
される。
【0043】レーシングフラグのセット,リセットは、
図4のフローチャートで表されるレーシング推定プログ
ラムの実行により行われる。S11〜13において、車
両が停止状態にあるか否か、シフトレバーの位置がニュ
ートラルとパーキングとのいずれか一方にあるか否か、
エンジン回転数が設定回転数より大きいか否かが判定さ
れる。車両が停止状態にあるか否かは、非駆動輪である
前輪18,19の回転速度の平均値に基づいて推定され
た車体速度が設定速度より小さいか否かに基づいて判断
される。設定速度は、ここでは、3km/hであり、車両が
停止状態にあると見なし得る大きさである。車両が停止
状態にあるか否かの判定の基準とされる車体速度は、エ
ンジンがレーシング状態にあるか否かを推定するために
便宜的に定めされた値であり、非駆動輪の回転速度に基
づいて推定された値であるため、法令上、スピードメー
タ152用の値としては使用できない。また、シフトレ
バーの位置は、シフトポジションセンサ148の出力信
号に基づいて検出され、エンジン回転数は回転数センサ
150の出力値に基づいて検出される。S11〜13す
べてのステップにおける判定がYESの場合には、レー
シング状態にあると推定され、S14においてレーシン
グフラグがセットされる。いずれか1つのステップにお
ける判定でもNOの場合には、レーシング状態にないと
推定され、S15においてレーシングフラグがリセット
される。
【0044】上記設定回転数は、通常、レーシング状態
にあると推定される場合の回転数より小さい値に設定さ
れている。本実施形態においてはレーシングフラグは、
近い将来レーシング状態になる可能性があると推定され
る時点にセットされるようになっているのである。前述
のように、本車体速度推定プログラムにおいては、レー
シングフラグがセットされた場合には、車体速度が、そ
れ以前に推定された車体速度と同じ大きさであると推定
されるようになっている。そのため、その車体速度が共
振に起因するノイズが重畳した回転速度に基づいて推定
された誤った大きさの値である場合には、レーシングフ
ラグがセットされている間、車体速度がその誤って推定
された値に維持されてしまう。これを回避するために、
未だレーシング状態にはなっていないが近い将来レーシ
ング状態になる可能性があると推定される時点において
レーシングフラグがセットされるようにされているので
あり、図3において、時点P以前の時点Qにおいてレー
シングフラグがセットされることになる。
【0045】車体速度は、パルス幅データから演算され
る車輪15等の回転速度に基づいて推定される。パルス
幅データは、前述のように車輪速センサ143等の出力
電圧に対応して作成されるパルス信号のパルス幅を表す
データであり、一定時間経過毎に1ずつインクリメント
されるカウンタにより計測される。図6のフローチャー
トで表されるパルス幅検出ルーチンは、パルス信号の立
ち下がりに応じて発生させられるインパルス信号を割込
み信号としてパルススタートフラグがセットされた後、
パルススタートフラグがセットされている間タイマ割込
みで一定時間毎に実行される。まず、S21において、
カウンタのカウント値が最大値であるか否かが判定され
る。カウンタは初期設定でリセットされているため、最
初にS21が実行される場合には判定がNOとなり、S
22において、カウント値が1増大させられる。本パル
ス幅検出ルーチンは2ms毎に実行されるため、カウント
値1は2msに相当する。S23において、パルスエンド
が検出されたか否かが判定される。パルスエンドは、前
記パルス信号の立ち下がりを意味するが、本実施形態に
おいてはパルス信号の立ち上がり信号を割込み信号とし
てパルスエンドフラグがセットされるようになってお
り、S23においてはこのパルスエンドフラグの状態が
判定される。パルスエンドが検出されない場合には、判
定はNOとなり、S24において、カウント値が設定値
より大きいか否かが判定される。S24が最初に実行さ
れる場合には、判定はNOとなり、S21の実行に戻さ
れる。
【0046】S21〜24が繰り返し実行され、カウン
トが継続して行われるうちに、パルスエンドが検出され
れば、S23における判定がYESとなり、S25,2
6において、そのカウント値がパルス幅を表すデータと
してパルス幅データメモリに格納され、カウンタがクリ
アされるとともにパルススタートフラグおよびパルスエ
ンドフラグがリセットされる。周波数が大きく周期が短
く場合には、カウンタによるカウント値が小さい時点に
おいてパルスエンドが検出されるが、周期が長く周波数
が小さい場合には、カウント値が設定値より大きくなる
までパルスエンドが検出されない。
【0047】パルスエンドが検出される以前にカウント
値が設定値より大きくなれば、S24における判定がY
ESとなり、S27において、カウント値がパルス幅デ
ータメモリに格納される。この場合には、パルスエンド
が検出されなくてもカウント値がパルス幅データメモリ
に格納されるのである。カウンタがクリアされることな
く、S21の実行に戻されるため、パルスエンドが検出
されるまでの間は、S24における判定がYESとな
り、カウント値が順次カウントアップされ、パルス幅デ
ータメモリに格納されることになる。パルス幅データが
設定値より大きく、最大値より小さい場合には、S3に
おいて車体速度が0であると推定される。カウント値が
最大値に達すればS21の判定がYESとなり、それ以
後はS22〜S27がスキップされてカウント値が最大
値に保たれる。カウンタはカウント値が最大値の次には
0になるようにはされていないのである。
【0048】本車体速度検出装置における車体速度の推
定について図3に基づいて説明する。エンジンがレーシ
ング状態にあると推定される時点Q以前においては、実
線Bが示す右後輪15の回転速度に基づいて車体速度が
推定される。車体速度の大きさが0であると推定される
のである。時点Qにおいてエンジンがレーシング状態に
あると推定されると、レーシングフラグがセットされ、
実線Bが示す回転速度に基づく推定が禁止される。RA
M94の車体速度メモリには、車体速度が新たに書き込
まれないで、時点Q以前の車体速度がそのまま維持され
る。車体速度の大きさは、一点鎖線Dが示すように、時
点Q以降においても0であると推定される。RAM94
の車体速度メモリに格納された車体速度は、スピードメ
ータ152やエンジン制御装置154に供給される。ま
た、その車体速度に基づいてアンチスキッド制御プログ
ラムやトラクション制御プログラムが実行される。
【0049】以上のように、本実施形態においては、レ
ーシング状態にあると推定され、レーシングフラグがセ
ットされている間は、その時点の回転速度に基づく車体
速度の推定が禁止されるため、レーシングに起因して車
体速度の大きさが誤って推定されることを回避すること
ができる。また、従来の車体速度検出装置における場合
のように、しきい値が高くされるわけではないため、車
輪速センサ142〜145の振幅の小さい出力電圧も検
出することができ、小さな車体速度も検出することがで
きる。
【0050】また、共振が起こっている可能性が十分低
い時点においてレーシングフラグがセットされるため、
車体速度が、レーシングに起因してノイズが重畳した回
転速度に基づいて推定されることを良好に回避すること
ができる。レーシングに起因する車体速度の誤推定を良
好に回避でき、車両が停止状態にあることを良好に推定
することができるのである。また、レーシングフラグが
セットされている間は、車体速度が新たに推定されるわ
けではなく、直前に推定された大きさと同じであると推
定されるため、車体速度の推定が容易である。さらに、
パルスエンドが検出されなくても、カウント値が設定値
より大きくなれば、カウント値がパルス幅データメモリ
に格納されるため、車両が停止状態にあることを早期に
推定することができる。
【0051】本車体速度検出装置によって検出された車
体速度がスピードメータ152に供給されることによ
り、スピードメータ152において誤った大きさの車体
速度が表示されることが回避される。また、車体速度お
よびレーシングフラグの状態がエンジン制御装置154
に供給されることにより、レーシングフラグがリセット
状態にある場合には、燃料噴射量がエンジン回転数に基
づいて制御され、セット状態にある場合には、車体速度
に基づいて制御される。レーシングに起因した誤った車
体速度が供給されることがないため、過レーシング防止
制御が行われる際に、燃料噴射量を良好に抑制すること
ができる。また、レーシングフラグが近い将来レーシン
グ状態にある可能性がある時点でセットされるため、過
レーシング防止制御が、やや早めに開始されることにな
り、燃料噴射量を良好に抑制することができる。
【0052】本車体速度検出装置によって検出された車
体速度に基づいてアンチスキッド制御プログラムが実行
されることにより、制動スリップが過大であると誤って
推定されることが回避される。レーシングに起因してア
ンチスキッド制御開始条件が誤って満たされることを回
避し得、不要なアンチスキッド制御が開始されることを
回避し得る。無駄なエネルギの消費を防止し、騒音が発
生する回数を減らすことができるのである。
【0053】また、本車体速度検出装置によって検出さ
れた車体速度およびレーシング推定結果に基づいてトラ
クション制御プログラムが実行されることにより、駆動
スリップが過大であると検出されても、レーシング状態
にあると推定された場合にはトラクション制御は行われ
ない。したがって、レーシングに起因して駆動スリップ
が誤って過大であると検出されても、不要なトラクショ
ン制御が行われることを良好に回避し得る。
【0054】さらに、本車体速度検出装置がアンチスキ
ッド制御およびトラクション制御の可能な液圧制御装置
に備えられており、その検出結果が、スピードメータ1
52やエンジン制御装置154に供給されるようになっ
ているため、それぞれにおいて車体速度を推定する必要
がないという利点がある。
【0055】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、本液圧制御装置26の車体速度推定プロ
グラム,レーシング推定プログラム,パルス幅検出プロ
グラム等を実行する部分および車輪速センサ142〜1
45等によって車体速度検出装置が構成されている。そ
のうちの、レーシング状態推定プログラムを実行する部
分によってレーシング推定手段が構成され、車体速度推
定プログラム,パルス幅検出プログラムを実行する部分
によって車体速度推定手段が構成される。また、車体速
度推定プログラムのS2,3を実行する部分によって非
レーシング時車体速度推定手段が構成され、S1におけ
る判定がNOの場合に、S2,3を実行しないため、車
体速度がそれ以前に推定された車体速度の大きさと同じ
であると推定される部分によってレーシング時車体速度
推定手段が構成され、S1における判定がNOの場合
に、S2,3の実行を禁止する部分によって推定禁止手
段が構成される。
【0056】なお、レーシング推定条件は、上記実施形
態におけるものに限らない。例えば、本車体速度検出装
置がオートマチックトランスミッション車に搭載される
場合には、シフトポジションはドライブであっても、車
両が停止状態にあり、かつ、エンジン回転数が設定回転
数以上であれば、レーシング状態にあると推定すること
ができる。また、マニュアルトランスミッション車に搭
載される場合には、クラッチが非接続状態にあり、か
つ、エンジン回転数が設定回転数以上であれば、レーシ
ング状態にあると推定することができる。さらに、車両
が停止状態にあるか否かあるいはシフトポジションがニ
ュトラルとパーキングとのいずれか一方にあるか否か
と、エンジン回転数が設定回転数以上か否かとの2つの
条件のうちの少なくとも一方の条件が満たされた場合に
レーシング状態にある可能性があると推定することもで
きる。そして、このレーシング状態にある可能性がある
との推定も、レーシング状態にあることの推定の一種で
あり、推定が正しい可能性が低いのみであると考えるこ
ともできる。車両が停止状態にあるか否かは、ブレーキ
スイッチ146の出力信号に基づいて推定することもで
きる。前記設定回転数を、通常のレーシング状態が推定
される場合より小さい値に設定することは必ずしも不可
欠ではない。シフトポジションとエンジン回転数とに基
づいてレーシング状態にあるか否かが推定される場合に
は、惰性走行中にレーシング状態にあるか否かを推定す
ることも可能となり、レーシング状態にあると推定され
た場合には、車体速度が予め決定された0以上の設定速
度であると推定されるようにすることもできる。
【0057】また、前記実施形態においては、車体速度
が右後輪15の回転速度に基づいて推定されるようにさ
れていたが、左後輪14の回転速度に基づいて推定され
るようにしても、左右後輪14,15の回転速度の平均
値に基づいて推定されるようにしてもよい。後者の場合
には、図示しないプロペラシャフトの回転速度に基づい
て推定されるようにしてもよい。
【0058】さらに、前記実施形態においては、車輪速
センサの出力信号としての交流電圧の周期が、その交流
電圧に基づいて発生させられるパルス信号のパルス幅で
検出されるようにされていたが、交流電圧もしくはパル
ス信号の周期自体が検出されるようにしてもよい。ま
た、複数のパルス幅データの平均値に基づいて推定する
場合には、移動平均後のデータに基づいて車体速度を検
出してもよい。さらに、しきい値は0でなくても、小さ
い値ならば移動させても小さな回転速度も検出すること
ができる。また、パルス信号の立ち上がりから立ち下が
りまでと、立ち下がりから立ち上がりまでとの少なくと
も一方の時間、すなわち、半周期に基づいて車体速度が
推定されるようにしてもよい。さらに、パルス信号の立
ち上がりを割り込み信号として、パルススタートフラグ
がセットされていたが、立ち下がりを割り込み信号とし
てセットされるようにしてもよい。また、パルス幅を計
測しなくても、一定時間内でのパルス信号の立ち上がり
まは立ち下がりの割り込み信号の数をカウントすること
で、その時間内の平均回転速度を求めることもできる。
【0059】前記実施形態においては、車体速度検出装
置がアンチスキッド制御およびトラクション制御が可能
な液圧制御装置26に含ませられていたが、液圧制御装
置26に含ませないことも可能である。例えば、スピー
ドメータ152やエンジン制御装置154に本発明に係
る車体速度検出装置を設け、あるいはすべての装置から
独立させて車体速度検出装置を設けることも可能であ
り、いずれの場合でも、車両全体または一部の装置にお
いてセンサの統合を図ることが可能となり、コストダウ
ンを図ることができる。
【0060】前記実施形態においては、車体速度検出装
置によって検出された車体速度がスピードメータ152
やエンジン制御装置154に供給されるとともに、その
車体速度に基づいてアンチスキッド制御プログラムやト
ラクション制御プログラムが実行されるようになってい
た。換言すれば、スピードメータ152やエンジン制御
装置154に供給される車体速度と、アンチスキッド制
御プログラムやトラクション制御プログラムの実行に使
用される車体速度とが同じであったが、互いに異なるよ
うにしてもよい。例えば、フィルタ処理回数の少ない車
体速度に基づいてアンチスキッド制御プログラムやトラ
クション制御プログラムが実行され、フィルタ処理回数
の多い車体速度が、スピードメータ152やエンジン制
御装置154に供給されるようにしてもよい。アンチス
キッド制御プログラムやトラクション制御プログラムの
実行時には、多少変動があっても遅れが小さい方が望ま
しく、スピードメータ152やエンジン制御装置154
においては、遅れが大きくても変動が小さい方が望まし
いからである。この場合、液圧制御装置26に複数種類
のフィルタを設け、弱いフィルタで処理された車体速度
に基づいてアンチスキッド制御プログラムやトラクショ
ン制御プログラムが実行され、強いフィルタで処理され
た車体速度がスピードメータ152やエンジン制御装置
154に供給されるようにしてもよく、液圧制御装置2
6には一種類のフィルタのみを設け、スピードメータ1
52やエンジン制御装置154にさらに別のフィルタを
設けることも可能である。
【0061】前記実施形態においては、車体速度がスピ
ードメータ152およびエンジン制御装置154に供給
されるようになっていたが、その他、トランスミッショ
ン制御装置等にも供給されるようにしてもよい。また、
レーシング状態にあるか否かの検出結果が、警告装置に
供給されるようにしてもよい。警告装置によってレーシ
ング状態にあること、あるいは、駆動系に共振が生じて
いることが知らされれば、運転者はアクセルペダルの踏
込みを緩め、駆動系に共振が発生すること自体、あるい
は共振が長時間継続することを回避することができる。
【0062】エンジン制御装置154にレーシング推定
結果を供給することは不可欠ではない。レーシング状態
か否かの推定がエンジン制御装置154において行われ
るようにしても差し支えないのである。また、前記実施
形態の液圧ブレーキ装置は駆動輪が前輪である二輪駆動
車に搭載することもでき、その場合には、車体速度が前
輪18,19の回転速度の平均値に基づいて推定される
ことになる。さらに、四輪駆動車に搭載することもでき
る。
【0063】次に、第一,第三および第四発明に共通の
一実施形態としての車体速度検出装置について説明す
る。本車体速度検出装置は液圧制御装置に含まれ、その
液圧制御装置は図1に示す液圧ブレーキ装置と同様な液
圧ブレーキ装置に備えられている。本液圧ブレーキ装置
の液圧制御装置26のROM92には、図7のフローチ
ャートで表される車体速度推定プログラムが格納されて
いる。本実施形態においては、シフトポジションがニュ
ートラルあるいはパーキングである場合において、駆動
輪の回転速度の平均値と非駆動輪の回転速度の平均値と
の差の絶対値が設定値より大きい場合には、エンジンが
レーシング状態にあると推定される。そして、レーシン
グ状態にあると推定された場合には、駆動輪の回転速度
の平均値と非駆動輪の回転速度の平均値とが比較され、
小さい方の回転速度の平均値に基づいて車体速度が推定
され、レーシング状態にないと推定された場合には、駆
動輪の回転速度に基づいて推定される。
【0064】エンジンがレーシング状態にある場合に
は、駆動輪側と非駆動輪側とのいずれか一方の側におい
て共振が生じる可能性がある。共振が生じるとその車輪
の回転速度にノイズが重畳し、回転速度が非常に大きく
なるため、駆動輪の回転速度の平均値と非駆動輪の回転
速度の平均値との差が設定値以上大きくなる。共振が駆
動輪側と非駆動輪側との両方において生じることは殆ど
ないからである。したがって、上述のように、シフトポ
ジションがニュートラルとパーキングとのいずれか一方
であり、かつ、駆動輪の回転速度の平均値と非駆動輪の
回転速度の平均値との差の絶対値が設定値より大きい場
合には、レーシングに起因した共振が生じたと推定する
ことができる。共振に基づいてエンジンがレーシング状
態にあると推定することができるのである。また、共振
に起因してノイズが重畳すると回転速度が非常に大きく
なるため、駆動輪の回転速度の平均値と非駆動輪の回転
速度の平均値とを比較すれば、共振が生じている車輪が
属する側を推定することができる。駆動輪の回転速度の
平均値の方が大きい場合には駆動輪に共振が生じ、小さ
い場合には非駆動輪に共振が生じたと推定し得る。
【0065】更に具体的に説明すれば、図7のフローチ
ャートのS51,52において、駆動輪である後輪1
4,15の回転速度の平均値VSP2 (以下、平均回転速
度VSP 2 と称する),非駆動輪である前輪18,19の
回転速度の平均値VSPD (以下、平均回転速度VSPD
称する)がそれぞれ求められる。すなわち、車輪速セン
サ142,143の回転速度の平均値、車輪速センサ1
44,145の回転速度の平均値がそれぞれ求められる
のである。この際、必要に応じて、車輪速センサ142
〜145の回転速度にフィルタ処理が施されるようにし
てもよい。S53において、シフトポジションセンサ1
48の出力信号に基づいてシフトポジションがニュート
ラルとパーキングとのいずれか一方であるか否かが判定
され、いずれか一方である場合には、判定がYESとな
り、S54において、S51,52においてそれぞれ求
められた駆動輪の平均回転速度VSP2 と非駆動輪の平均
回転速度VSPD との差の絶対値が設定値より大きいか否
かが判定される。設定値より大きい場合には、レーシン
グ状態にあると推定され、S55においてレーシングフ
ラグがセットされた後、S56において駆動輪の平均回
転速度VSP2が非駆動輪の平均回転速度VSPD より大き
いか否かが判定される。
【0066】駆動輪の平均回転速度VSP2 が非駆動輪の
平均回転速度VSPD より大きい場合には判定がYESと
なり、駆動輪としての後輪14,15の少なくとも一方
に共振が生じたと推定されるため、S57において車体
速度が非駆動輪の平均回転速度VSPD に基づいて推定さ
れる。駆動輪の平均回転速度VSP2 が非駆動輪の平均回
転速度VSPD より小さい場合には判定がNOとなり、非
駆動輪としての前輪18,19の少なくとも一方に共振
が生じたと推定されるため、S58において車体速度が
駆動輪の平均回転速度VSP2 に基づいて推定される。レ
ーシング状態にあると推定された場合には、駆動輪の平
均回転速度VSP2 と非駆動輪の平均回転速度VSPD との
小さい方、すなわち、共振が生じていない方に基づいて
車体速度が推定されるのである。レーシングに起因する
共振は、たいていの場合には、駆動輪側において生じる
ため、レーシング状態にあると推定された場合には、車
体速度は非駆動輪の平均回転速度VSPD に基づいて推定
されるが、稀に、非駆動輪側に生じる場合もあり、その
場合には、駆動輪の平均回転速度VSP2 に基づいて推定
されるのである。
【0067】それに対して、シフトポジションがドライ
ブ等ニュートラルやパーキング以外である場合や、駆動
輪の平均回転速度VSP2 と非駆動輪の平均回転速度V
SPD との差の絶対値が設定値以下の場合には、S53あ
るいはS54における判定がNOとなる。これらの場合
には、レーシング状態にないと推定され、S59におい
てレーシングフラグがリセットされた後、S58におい
て車体速度が駆動輪の平均回転速度VSP2 に基づいて推
定される。なお、S55およびS59におけるレーシン
グフラグのセット,リセットは、レーシング状態にある
か否かの情報をエンジン制御装置154に供給するため
に行われるものである。
【0068】以上のように、本実施形態においては、レ
ーシング状態にないと推定された場合には車体速度が駆
動輪の平均回転速度VSP2 に基づいて推定されると予め
決められている。また、レーシング状態にあると推定さ
れた場合には、駆動輪の平均回転速度VSP2 と非駆動輪
の平均回転速度VSPD とのうちの小さい方に基づいて推
定される。そのため、レーシングに起因して誤った車体
速度が推定されることを良好に回避することができる。
また、車輪に共振が生じたことが検出された場合にレー
シング状態にあると推定されるため、レーシング状態に
あるとの推定結果が正しい確率が高い。レーシング状態
にないのに、レーシング状態にあると誤って推定される
ことを回避することができるのである。レーシングに起
因する共振が、駆動輪側と非駆動輪側とのいずれか一方
の側に生じることを利用して、レーシング状態にあるか
否かを高い確率で正しく推定することができ、車体速度
が誤って推定されることを良好に回避することができる
のである。駆動輪側に共振が生じた場合にも、非駆動輪
側に共振が生じた場合にも、誤った車体速度が推定され
ることを良好に回避することができる。
【0069】また、本実施形態の車体速度検出装置によ
って検出された車体速度がスピードメータ152に供給
されることにより、スピードメータ152において誤っ
た車体速度が表示されることを回避し得る。車体速度お
よびレーシング推定結果がエンジン制御装置154に供
給されることにより、エンジン制御装置154において
燃料噴射量が良好に制御される。本車体速度検出装置に
よって検出された車体速度に基づいてアンチスキッド制
御プログラムが実行され、車体速度およびレーシング推
定結果に基づいてトラクション制御プログラムが実行さ
れることにより、レーシングに基づく駆動輪側もしくは
非駆動輪側の共振に起因して不要なアンチスキッド制御
やトラクション制御が行われることを回避し得、エネル
ギの無駄な消費を回避し得、騒音の発生回数を減らすこ
とができる。
【0070】本実施形態においては、液圧制御装置26
の車体速度推定プログラムのS51,52,56,5
7,58を実行する部分によって車体速度推定手段が構
成され、S51〜54を実行する部分によってレーシン
グ推定手段が構成される。レーシング推定手段は回転速
度差依拠レーシング推定手段でも、共振依拠レーシング
推定手段でもある。また、S51,52,55,57,
58を実行する部分によってレーシング時車体速度推定
手段が構成され、S51,58を実行する部分によって
非レーシング時車体速度推定手段が構成される。非レー
シング時車体速度推定手段は、駆動輪回転速度依拠車体
速度推定手段でもある。レーシング時車体速度推定手段
は、小さい方の回転速度に基づいて車体速度を推定する
小回転速度依拠車体速度推定手段でも、共振が生じてい
る車輪が属さない側の車輪の回転速度に基づいて車体速
度を推定する非共振車輪所属側回転速度依拠車体速度推
定手段でもある。S56を実行する部分は、共振車輪所
属側検出手段を構成すると考えることもできる。
【0071】また、液圧制御装置26の車体速度推定プ
ログラムのS51〜59を実行する部分によって車体速
度推定手段が構成され、そのうちのS51〜54を実行
する部分によってレーシング推定手段が構成されると考
えることもでき、その場合には、レーシング推定手段が
車体速度推定手段に含まれると考えることができる。な
お、後輪14,15の回転速度の平均値は、図示しない
プロペラシャフトの回転数を検出することによって検出
してもよい。後輪14,15に共振が生じる場合には、
車体側部材とプロペラシャフトとの間においても同様
に、振動が生じるからである。
【0072】第一,第四発明においては、車体速度推定
プログラムを図8のフローチャートで表されるプログラ
ムとすることもできる。図8に示すフローチャートにお
いては、図7に示すフローチャートのS54,56の代
わりに、S55aが設けられている。S53において、
シフトポジションがニュートラルとパーキングとのいず
れか一方にあると検出された場合には、S55aにおい
て、駆動輪の平均回転速度V SP2 から非駆動輪の平均回
転速度VSPD を引いた値が設定値より大きいか否かが判
定される。設定値より大きい場合には、S57におい
て、非駆動輪の平均回転速度VSPD に基づいて車体速度
が推定され、設定値以下の場合には、S58において、
駆動輪の平均回転速度VSP2 に基づいて推定される。
【0073】すなわち、S53,S55aにおいて、駆
動輪の平均回転速度VSP2 が非駆動輪の平均回転速度V
SPD より設定値以上大きいことが原因でレーシング状態
にあると推定された場合には、S57において、車体速
度が非駆動輪の平均回転速度VSPD に基づいて推定され
るが、それ以外の場合には、レーシング状態にないと推
定され、S58において、駆動輪の平均回転速度VSP2
に基づいて推定されるのである。なお、レーシング状態
にあるか否かの情報をエンジン制御装置等に供給する必
要がある場合には、S57の直前にレーシングフラグを
セットするステップを、S58の直前にレーシングフラ
グをリセットするステップをそれぞれ設ければよい。
【0074】本車体速度検出装置がレーシング状態に起
因する共振が駆動輪側には生じる可能性があるが、非駆
動輪側に生じる可能性がない車両に搭載された場合に
は、レーシング状態にある場合には、駆動輪の平均回転
速度VSP2 が非駆動輪の平均回転速度VSPD より設定値
以上大きくなるため、駆動輪の平均回転速度VSP2 から
非駆動輪の平均回転速度VSPD を引いた値が設定値より
大きいか否かに基づいてレーシング状態にあるか否かを
推定することができるのである。
【0075】本実施形態においては、液圧制御装置26
のS51〜55aを実行する部分によってレーシング推
定手段が構成され、S52および57を実行する部分に
よってレーシング時車体速度推定手段が、S51,58
を実行する部分によって非レーシング時車体速度推定手
段がそれぞれ構成される。また、レーシング状態にある
と推定された場合には、車体速度が非駆動輪の平均回転
速度VSPD に基づいて推定され、レーシング状態にない
と推定された場合には、駆動輪の平均回転速度VSP2
基づいて推定されると予め決められていると考えること
もできる。共振が駆動輪側にのみ生じることが予めわか
っている車両においては、レーシング時車体速度推定規
則と、非レーシング時車体速度推定規則とを予め決めて
おくことができるのである。
【0076】なお、本実施形態において、仮に非駆動輪
側に共振が生じ、非駆動輪の平均回転速度VSPD が駆動
輪の平均回転速度VSP2 より大きくなったとしても、そ
の場合には、駆動輪の平均回転速度VSP2 から非駆動輪
の平均回転速度VSPD を引いた値が設定値以下になり、
車体速度が、S58において、駆動輪の平均回転速度V
SP2 に基づいて推定される。したがって、本実施形態に
よれば、万一レーシングに起因して共振が非駆動輪側に
生じても、誤った車体速度が推定されることはない。こ
の観点からすれば、レーシング時車体速度推定手段が、
S51,52,57,57を実行する部分によって構成
されることになる。
【0077】また、上記実施形態においては、本車体速
度検出装置が駆動輪側にのみ共振が生じる車両に搭載さ
れた場合について説明したが、非駆動輪側にのみ生じる
車両に搭載された場合には、S55aにおいて、非駆動
輪の平均回転速度VSPD から駆動輪の平均回転速度V
SP2 を引いた値が設定値より大きいか否かが判定され、
設定値より大きい場合には車体速度が駆動輪の平均回転
速度VSP2 に基づいて推定され、設定値以下の場合には
>非駆動輪の平均回転速度VSPD に基づいて推定される
ようにしてもよい(S57と58とを入れ替える)。本
実施形態によれば、レーシング状態にあると推定された
場合には駆動輪の平均回転速度VSP2 に基づいて推定さ
れ、非レーシング状態にあると推定された場合には、非
駆動輪の平均回転速度VSPD に基づいて推定されること
になる。本車体速度検出装置によって検出された車体速
度がスピードメータ152に供給されない場合には、車
体速度が、非駆動輪の平均回転速度VSPD に基づいて推
定されても差し支えない。しかも、非駆動輪の平均回転
速度VSPD に基づいて推定した方が車体速度の大きさを
良好に推定し得る。
【0078】次に、第一発明の一実施形態である車体速
度検出装置について説明する。本車体速度検出装置は液
圧制御装置に含まれ、液圧制御装置は図1の液圧ブレー
キ装置と同様の液圧ブレーキ装置に備えられている。R
OM92には、図9のフローチャートで表される車体速
度推定プログラムが格納されている。S71〜73にお
いて、車両が停止状態にあるか否か、シフトポジション
がニュートラルとパーキングとのいずれか一方であるか
否か,エンジン回転数が設定回転数より大きいか否かに
基づいてレーシング状態であるか否かが推定される。こ
の場合の設定回転数は、第一実施形態における設定数よ
り大きく、レーシングに起因する共振が生じる可能性の
ある大きさである。S71〜73におけるすべてのステ
ップにおける判定がYESの場合には、レーシング状態
にあると推定され、いずれか1つのステップにおける判
定でもNOの場合には、レーシング状態にないと推定さ
れる。
【0079】レーシング状態にあると推定された場合に
は、S74,75において、車体速度が、非駆動輪であ
る前輪18,19の平均回転速度VSPD に基づいて推定
され、レーシング状態にないと推定された場合には、S
76,77において、駆動輪である後輪14,15の平
均回転速度VSP2 に基づいて推定される。レーシングに
起因する駆動系の共振が殆どの場合には駆動輪側に生じ
ることが予めわかっているからである。また、本車体速
度検出装置において検出された車体速度がスピードメー
タ152およびエンジン制御装置154に供給されると
ともに、車体速度に基づいてアンチスキッド制御やトラ
クション制御が行われる。本実施形態においては、レー
シング状態にあるか否かの情報はエンジン制御装置15
4に供給されず、レーシング状態にあるか否かの判定が
エンジン制御装置154において独自に行われるように
なっているが、S74,75が実行される際にはレーシ
ング状態にある旨の情報が、S76,77が実行される
際にはレーシング状態にない旨の情報がそれぞれエンジ
ン制御装置154に供給されるようにしてもよい。
【0080】以上のように、本車体速度検出装置が、車
の構造等により、レーシングに起因する駆動系の共振が
駆動輪側において生じることが予めわかっている車両に
搭載される場合には、レーシング状態にあると推定され
た場合とレーシング状態にないと推定された場合とにお
いて、車体速度の推定の基本となる回転速度を予め決定
することができる。また、駆動輪側の回転速度と非駆動
輪側の回転速度とを比較する等駆動輪側に共振が生じて
いることを実際に検出する必要がないという利点もあ
る。さらに、スピードメータ152において、誤った車
体速度が表示されることを良好に回避し得、エンジン制
御装置154において、過レーシング防止制御が良好に
行われる。また、不要なアンチスキッド制御やトラクシ
ョン制御が行われることを良好に回避することができ
る。
【0081】なお、非駆動輪側に共振が生じ易い車両に
おいては、逆に、レーシング状態にあると推定された場
合に、駆動輪の平均回転速度VSP2 に基づいて推定さ
れ、非レーシング状態にないと推定された場合に非駆動
輪の平均回転速度VSPD に基づいて推定されることにな
る。その他、いちいち例示することはしないが、特許請
求の範囲を逸脱することなく当業者の知識に基づいて種
々の変形,改良を施した態様で本発明を実施することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一,第二発明に共通の一実施形態、第一,第
三および第四発明に共通の一実施形態、第一,第四発明
に共通の一実施形態および第一発明の一実施形態である
車体速度検出装置を含む液圧制御装置を備えた液圧ブレ
ーキ装置を示す回路図である。
【図2】上記液圧ブレーキ装置に設けられた車輪速セン
サの周辺を液圧制御装置の構成と共に示す図である。
【図3】上記液圧ブレーキ装置が搭載された車両におい
て、右後輪の回転速度にレーシングに起因したノイズが
重畳した状態を示すグラフである。
【図4】第一,第二発明に共通の一実施形態である車体
速度検出装置を含む上記液圧制御装置のROMに格納さ
れたレーシング推定プログラムを表すフローチャートで
ある。
【図5】上記ROMに格納された車体速度推定プログラ
ムを表すフローチャートである。
【図6】上記ROMに格納されたパルス幅検出プログラ
ムを表すフローチャートである。
【図7】第一,第三および第四発明に共通の一実施形態
である車体速度検出装置を含む液圧制御装置のROMに
格納された車体速度推定プログラムを表すフローチャー
トである。
【図8】第一および第四発明に共通の別の一実施形態で
ある車体速度検出装置を含む液圧制御装置のROMに格
納された車体速度推定プログラムを表すフローチャート
である。
【図9】第一発明の一実施形態である車体速度検出装置
を含む液圧制御装置のROMに格納された車体速度推定
プログラムを表すフローチャートである。
【符号の説明】
14,15 駆動輪 18,19 非駆動輪 26 液圧制御装置 142〜145 車輪速センサ 148 シフトレバーポジションセンサ 150 回転数センサ 152 スピードメータ 154 エンジン制御装置

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 各々1つ以上の車輪を含む複数の車輪群
    の回転速度をそれぞれ検出する複数個の回転速度検出装
    置と、 それら複数個の回転速度検出装置によって検出された回
    転速度のうちの少なくとも1つの回転速度に基づいて車
    体速度を推定する車体速度推定手段とを含む車体速度検
    出装置であって、 当該車体速度検出装置が搭載された車両のエンジンがレ
    ーシング状態にあるか否かを推定するレーシング推定手
    段を含み、かつ、前記車体速度推定手段が、レーシング
    推定手段によってエンジンがレーシング状態にあると推
    定された場合にレーシング時推定規則に基づいて車体速
    度を推定するレーシング時車体速度推定手段と、レーシ
    ング推定手段によってエンジンがレーシング状態にない
    と推定された場合に前記レーシング時推定規則とは異な
    る非レーシング時推定規則に基づいて車体速度を推定す
    る非レーシング時車体速度推定手段とを含むことを特徴
    とする車体速度検出装置。
  2. 【請求項2】 前記レーシング時車体速度推定手段が、
    前記レーシング推定手段によってエンジンがレーシング
    状態にあると推定された場合には、当該レーシング時車
    体速度推定手段に車体速度の推定を行わせない推定禁止
    手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の車体速度
    検出装置。
  3. 【請求項3】 当該車体速度検出装置が、駆動輪と非駆
    動輪とを含む車両に搭載され、前記複数個の回転速度検
    出装置が、駆動輪の回転速度を検出する駆動輪回転速度
    検出装置と、非駆動輪の回転速度を検出する非駆動輪回
    転速度検出装置とを含み、かつ、前記非レーシング時車
    体速度推定手段が、前記レーシング推定手段によってレ
    ーシング状態にないと推定された場合に、前記駆動輪回
    転速度検出装置によって検出された駆動輪回転速度と前
    記非駆動輪回転速度検出装置によって検出された非駆動
    輪回転速度とのうち予め定められた一方に基づいて車体
    速度の推定を行うものであり、前記レーシング時車体速
    度推定手段が、前記レーシング推定手段によってレーシ
    ング状態にあると推定された場合に、前記駆動輪回転速
    度と非駆動輪回転速度とのうちレーシングの影響を受け
    ていない側のものに基づいて車体速度の推定を行うもの
    であることを特徴とする請求項1に記載の車体速度検出
    装置。
  4. 【請求項4】 当該車体速度検出装置が、駆動輪と非駆
    動輪とを含む車両に搭載され、前記複数個の回転速度検
    出装置が、駆動輪の回転速度を検出する駆動輪回転速度
    検出装置と、非駆動輪の回転速度を検出する非駆動輪回
    転速度検出装置とを含み、かつ、前記レーシング推定手
    段が、少なくとも前記駆動輪回転速度と前記非駆動輪回
    転速度との差が設定回転速度差以上であることに基づい
    てエンジンがレーシング状態にあると推定する回転速度
    差依拠レーシング推定手段を含むことを特徴とする請求
    項1ないし3のいずれか1つに記載の車体速度検出装
    置。
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