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JP3036362B2 - 酸化物分散鋼の製造法 - Google Patents

酸化物分散鋼の製造法

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JP3036362B2
JP3036362B2 JP6141961A JP14196194A JP3036362B2 JP 3036362 B2 JP3036362 B2 JP 3036362B2 JP 6141961 A JP6141961 A JP 6141961A JP 14196194 A JP14196194 A JP 14196194A JP 3036362 B2 JP3036362 B2 JP 3036362B2
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JP
Japan
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oxide
steel
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molten steel
dispersed
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隆之 西
徹 加藤
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C32/00Non-ferrous alloys containing at least 5% by weight but less than 50% by weight of oxides, carbides, borides, nitrides, silicides or other metal compounds, e.g. oxynitrides, sulfides, whether added as such or formed in situ
    • C22C32/001Non-ferrous alloys containing at least 5% by weight but less than 50% by weight of oxides, carbides, borides, nitrides, silicides or other metal compounds, e.g. oxynitrides, sulfides, whether added as such or formed in situ with only oxides
    • C22C32/0015Non-ferrous alloys containing at least 5% by weight but less than 50% by weight of oxides, carbides, borides, nitrides, silicides or other metal compounds, e.g. oxynitrides, sulfides, whether added as such or formed in situ with only oxides with only single oxides as main non-metallic constituents
    • C22C32/0026Matrix based on Ni, Co, Cr or alloys thereof
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C1/00Making non-ferrous alloys
    • C22C1/10Alloys containing non-metals
    • C22C1/1036Alloys containing non-metals starting from a melt

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  • Manufacture Of Alloys Or Alloy Compounds (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高い溶接熱影響部靱性
が要求される厚板用鋼種である酸化物分散鋼の製造法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、溶接工程の合理化のため厚鋼板等
の鋼材の大入熱溶接化が指向されているが、一般に大入
熱溶接では鋼材溶接時には母材側熱影響部 (以後、HAZ
部と呼ぶ) の結晶粒が粗大化し、靱性が著しく低下する
ことが知られており、厚鋼板にあっても上述のような大
入熱溶接法を実用化するにはHAZ 部の結晶粒粗大化の問
題の解決を図らなければならない。
【0003】ところで、従来より、鋼材中に適当な酸化
物や窒化物などの微細粒子を分散させることにより、組
織が微細化され、HAZ 部靱性が著しく改善されることが
知られている。
【0004】このような微細な分散粒子を利用する方法
として、特公平5−17300 号公報には、鋼中のSi量およ
びAl量を規定し、Tiを添加することにより凝固過程でTi
O やTi2O3 といった微細なTi系酸化物を析出、分散させ
る、HAZ 部が高い靱性を有する鋼の製造法が提案されて
いる。
【0005】このようなTi酸化物を凝固過程で鋼材内に
微細に析出、分散させる方法としては、その他、特開平
3−267311号公報および同4−2713号公報に示されてい
るような、第1脱酸元素にSi、Mnを用い、第2脱酸元素
にTi、Zr、Caを添加して酸素濃度を重量割合にて、50pp
m 以下にしてTi、Zrを主成分とするTi−Zr系酸化物粒子
を析出させる方法がある。
【0006】また、特開平4−191314号公報には、凝固
時にTi系酸化物を微細に析出させるために、未脱酸の溶
鋼を真空処理して溶存酸素濃度を、重量割合で、0.002
〜0.015 %に調整した後、Tiを添加する方法が開示され
ている。
【0007】さらにこのようなTi系酸化物の析出粒子を
微細化するために、特公平3−67467 号公報には鋳造後
の冷却速度を制御する方法が、特開平4−6243号公報に
はTi添加後の出鋼までの時間を規定する方法が提案さ
れている。
【0008】また特公平5−25580 号公報および特開平
3−177535号公報などでは、さらにZrやYなどを添加す
ることが、凝固過程で析出する粒子を微細に分散させる
ために効果的であることが述べられている。
【0009】ところでこれらの方法は、いずれもTi系酸
化物を凝固過程で微細に析出、分散させる方法であり、
酸化物組成がTi系酸化物を有するものについて示されて
いるのみであった。
【0010】また、Ti系酸化物を主体とする粒子を析
出、分散させることによって得られるHAZ 部の靱性の改
善は、本発明者らの知る限り、実際の効果として充分で
はなく、さらに効果的にHAZ 部を高靱化させる分散粒子
を含有する材料およびそれを安定して容易に製造する方
法の開発が望まれていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところで、本件出願人
は、このような安定してHAZ 部を高靱化させる厚板用鋼
として、特願平6−77057 号においてAl−Mn系酸化物相
を有する酸化物が鋼中に分散された酸化物分散鋼を提案
した。すなわち、直径0.2 〜20μmの分散粒子が鋼材断
面の1mm2 当たり4個以上1000個未満分散しており、か
つその分散粒子を構成する酸化物相として金属元素の原
子割合で (Al+Mn) が40%以上、Al:Mnの比率が1:1
以上5:1未満という特徴を有するAl−Mn酸化物相を有
する酸化物を鋼中に分散させた酸化物分散鋼である。
【0012】しかしながら、かかる酸化物分散鋼は安定
して製造できる方法がまだ確立していないため、工業的
に十分な特性が発揮できず、その製造方法について更な
る改良が求められている。
【0013】したがって、本発明の目的は、溶接熱影響
部に高い靱性が要求される厚板用鋼として高い性能を有
するAl−Mn系酸化物相を含有する酸化物が鋼中に分散さ
れた酸化物分散鋼のより安定した製造法を提供すること
である。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、予備脱酸
に際してSiおよびMnを添加して、一次脱酸生成物からな
る介在物組成をMnO −SiO2系にすることによって、介在
物が10μm より大きいものは浮上、除去されやすく効果
的な予備脱酸が可能となるばかりでなく、残留した介在
物は5μm 以下の小径介在物となること、また次の工程
でAlを添加する際に酸素ポテンシャルを制御できる酸化
物を一緒に添加することにより、それらが微小なAl−Mn
系介在物形成のための核となることを知り、溶鋼中酸素
ポテンシャルおよび溶鋼中微量Al濃度の制御を同時に行
うことによって、Al−Mn系酸化物を鋼中に微細に分散さ
せることができることを見い出し、本発明を完成するに
至った。
【0015】かくして、本発明の要旨とするところは、
分散粒子としてAl−Mn酸化物相および不可避的に共存す
る酸化物相を有する酸化物分散鋼を溶製するに際して、
SiおよびMnで溶鋼を予備脱酸して全酸素濃度を0.0020%
以上0.0100%以下に調整した後、Al含有合金と溶鋼中酸
素ポテンシャルを制御することが可能な酸化物、または
溶鋼中酸素ポテンシャルを制御することが可能な、Alを
含有する酸化物のいずれかを前記溶鋼に添加することに
より溶鋼中Al濃度を重合割合にて0.0001%以上0.0030%
以下に制御することを特徴とするAl−Mn系酸化物分散鋼
の製造法である。
【0016】別の面からは、本発明は、分散粒子として
Al−Mn酸化物相および不可避的に共存する酸化物相を有
する酸化物分散鋼を溶製するに際して、転炉もしくは電
気炉にて炭素濃度を調整し、出鋼中もしくは取鍋中でSi
およびMnで溶鋼を予備脱酸するとともにスラグ改質を行
い、取鍋炉の取鍋精錬設備にて全酸素濃度を0.0020%以
上0.0100%以下に調整した後、Al含有合金と溶鋼中酸素
ポテンシャルを制御することが可能な酸化物、または酸
素ポテンシャルを制御することが可能な、Alを含有する
酸化物のいずれかを取鍋精錬中に前記溶鋼に添加するこ
とにより、溶鋼中Al濃度を重量割合にて0.0001%以上0.
0030%以下に制御することを特徴とするAl−Mn系酸化物
分散鋼の製造法である。
【0017】本発明の好適態様によれば、上述のAl含有
合金と酸化物またはAlを含有する酸化物を溶鋼に添加し
てから、該溶鋼にTiを重量割合にて0.050 %以下添加す
るようにしてもよい。
【0018】また、本発明の別の好適態様によれば、出
鋼中もしくは取鍋中でSiおよびMnで予備脱酸するととも
にスラグ改質を行った後に、さらに取鍋炉の取鍋精錬設
備にてイオウ濃度を0.002 %以下にまで脱硫してもよ
い。
【0019】かくして、本発明によれば、Al−Mn系酸化
物相および不可避的に存在する酸化物相を有する酸化物
であって、より詳細には、直径が0.2 〜20μm の大きさ
で、金属元素のモル分率として (Al+Mn) が40%以上で
あり、かつAl:Mn の比率が1,0 以上5.0 未満という特徴
を備えるAl−Mn系酸化物相を含む酸化物が分散した酸化
物分散鋼が安定して製造される。
【0020】
【作用】次に、本発明の作用についてさらに具体的に説
明する。本発明において使用する溶鋼としては目的とす
る最終鋼組成を実現できる所要組成をもって溶製された
溶鋼であれば、いずれであってもよく、例えば適宜溶解
炉で単に溶製されただけのものであっても、あるいは転
炉、電気炉で脱炭製錬されたものであってもよい。
【0021】好ましくは炭素含有量0.05〜0.08%、酸素
含有量0.04〜0.07%に予め調製させたものである。特に
転炉、電気炉によって溶鋼を準備する場合にはC:0.01
〜0.25%に調製したものが好ましい。
【0022】予備脱酸:まず、鋼中に分散粒子としてAl
−Mn系酸化物相および不可避的に共存する酸化物相を有
する酸化物分散鋼を溶製するためには、上述のように準
備された溶鋼の溶製初期においては、溶鋼中で酸素と親
和力を有するSiおよびMnにて予備脱酸を行い、全酸素濃
度を所定範囲内に来るよう調整する。SiおよびMnは通常
の脱酸のように合金鉄 (Fe−Si、Fe−Mn)、Mn鉱石等の形
態で溶鋼に投入すればよく、特に制限はない。
【0023】ここで、予備脱酸に際して、SiおよびMnの
添加量は、全酸素濃度を20〜100ppmとする限りにおいて
特に制限ないが、好ましくは、溶鋼濃度がSi:0.05〜0.
60%およびMn:0.3 〜3.0 %となるようにする。その理
由は、予備脱酸で形成される一次脱酸生成物が凝集しや
すく効果的な脱酸が可能なMnO-SiO2系にし、かつこの予
備脱酸によって全酸素濃度を0.0020〜0.0100%にして分
散酸化物の核を形成するためである。
【0024】すなわち、上記好適態様にあって、Si濃度
が0.60%より大きくなるとMn濃度が3.0 %以下であって
も介在物はSiO2系が多くなるとともに、全酸素濃度が20
ppm未満となってしまうことがあるために分散させる酸
化物の核となる一次脱酸生成物の量が不十分となるため
である。一方、Si濃度が0.05%未満ではMn濃度が0.3%
以上であっても介在物は FeO−MnO 系となりAl−Mn系酸
化物の核には不適であるばかりか、全酸素濃度は100 pp
m を超えてしまい、未脱酸状態に近い酸素供給源が過多
の状態となり溶鋼の清浄性が不十分となる。
【0025】Mn濃度についても同様で、Mn濃度0.3 %未
満ではSi脱酸領域となり介在物はSiO2系となり、Al−Mn
系酸化物の生成に不適である。一方、Mn濃度が3.0 %を
超えるとSi濃度が0.60%以下でも酸素濃度が20ppm 未満
となり、分散酸化物の核となるようなMnO-SiO2系介在物
を残留させることができなくなってしまうことがある。
【0026】ところで、一般に鋼中Si濃度を増加させる
とSi脱酸が強くなり、後工程で行うAl添加前の全酸素濃
度低下が大きく、結果としてAl添加前に鋼中に分散する
必要がある微小なMnO-SiO2系介在物量が低下してしまう
ので、低Siであることが望ましい。さらに鋼中Si濃度が
0.20%を越えると低温靱性の劣化を招くことが知られて
いるので、鋼質的にも低Siであることが望ましく、これ
らのことからSi量はSi:0.20%以下がよい。
【0027】従って、これらの点を考慮にいれると、本
発明の好適態様では、Si濃度0.05〜0.20%、Mn濃度0.8
〜2.0 %に制御するものである。この濃度域でより安定
して介在物をMnO-SiO2系にし、かつ全酸素濃度を0.0020
〜0.0100%とすることができる。
【0028】ところで、介在物をMnO-SiO2系にする理由
は、この介在物が10μmより大きいものは浮上、除去さ
れやすく効果的な予備脱酸が可能となるばかりでなく、
残留した介在物は10μm以下の小径介在物となり、溶存
酸素とともに次の工程での微小なAl−Mn系介在物形成の
ための核となるからである。なお、全酸素濃度を0.0020
〜0.0100%とするのは、分散する酸化物の核となるMnO-
SiO2系を残留させ、かつ充分な清浄性を確保するためで
ある。
【0029】Al+酸化物またはAl含有酸化物添加:本発
明によれば、上述のようにしてSiおよびMnを添加して予
備脱酸を行い全酸素濃度を制御した後、溶鋼中酸素ポテ
ンシャルおよび溶鋼中微量Al濃度の制御を同時に行うこ
とで、Al−Mn系酸化物を鋼中に微細に分散させることが
できる。
【0030】本発明によれば、そのためにAl含有合金と
溶鋼中酸素ポテンシャルを制御することが可能な酸化
物、または溶鋼中酸素ポテンシャルを制御することが可
能な、Alを含有する酸化物のいずれかを前記溶鋼に添加
するのである。
【0031】そのような溶鋼中酸素ポテンシャルの制御
と溶鋼中微量Al濃度の制御を行う手段として、Al添加と
ともにAl−Mn系酸化物と同程度の酸素ポテンシャルを有
する酸化物を溶鋼へ添加して、溶鋼中酸素ポテンシャル
と溶鋼中Al濃度を同時に制御する。
【0032】このとき、溶鋼中のAl濃度の制御を行うた
めには、合金鉄中に含有されるAl量で制御するか、もし
くは上記酸化物にAlを含有する酸化物を用いて制御する
のである。
【0033】図1には、製鋼温度における種々の酸化物
の酸素1モル当たりの生成自由エネルギー変化をグラフ
で示す。ここで、今目標とするAl−Mn系酸化物のうち、
最も代表的な複合酸化物としてAl2O3・MnO について考
えると次の通りである。
【0034】まず、目標とする Al2O3・MnO の生成自由
エネルギーは、代表的な製鋼用酸化物であるSiO2より小
さく、Al2O3 より大きい。一般に、SiO2はSi−Mn脱酸鋼
のような弱脱酸溶鋼であってもSiO2の還元が生じ溶鋼汚
染を生じることが知られている。一方、Al2O3 は、 Al2
O3・MnO と比較して安定であり、弱脱酸鋼では溶鋼に対
して影響を及ぼさない。
【0035】したがって、溶鋼中に MnO・SiO2を核とし
てAl−Mn系酸化物を生じさせるためには、第1にSiO2
Al2O3 の間の酸素ポテンシャルを有する酸化物であり、
Al2O3・MnO と同様の酸素ポテンシャルを有する酸化物
を用いることが望ましいと考えられる。
【0036】したがって、本発明において「溶鋼中酸素
ポテンシャルを制御することが可能」との趣旨は、例え
ば図1の生成自由エネルギーがSiO2より小さく、Al2O3
より大きいことであると言うことができる。
【0037】さらに第2には、溶鋼とわずかに反応して
溶鋼中に極微量のAlを供給する酸化物であることが望ま
しい。このような酸化物として前者は、ZrO2・SiO2、 M
gO・SiO2、2MgO・SiO2、 MgO・2TiO2 、 MgO・TiO2、Ti
O2、 CaO・MgO・2SiO2 、 Ce2O3・Cr2O3 等が考えられ
る。
【0038】また、Alも供給し得る後者の化合物には、
それ自身である Al2O3・MnO 以外にAl2O3・TiO2、3Al2O
3・2SiO2 、 CaO・Al2O3・2SiO2 、 FeO・Al2O3 が適用
できることが分かった。
【0039】第1の酸化物を添加剤として使用する際
は、溶鋼へ微量Al分を供給できる別の供給源を設ける必
要がある。溶鋼中への微量Al分の供給には、合金鉄とし
て利用されるFe−Siのほか厚板用の成分として利用され
るFe−Nb、Fe−V、Fe−Mo、Fe−B等がある。
【0040】ここで、微量のAl供給に、金属Alではなく
合金鉄を用いる理由は、本鋼種が厚板用であるのでSi、
Nb、V、Moを添加する機会があるのみならず、これら合
金鉄に含まれるAl量は重量割合にして高々1〜5%程度
でありAl2O3 系介在物を生成する可能性が低減されるこ
と、その結果、添加されたAlは溶存成分となり緩やかに
Mn0-SiO2系介在物や溶存酸素と反応してAl−Mn系酸化物
の分散形成が可能になること、および鋼種の必要成分量
にもよるが、合金鉄としての添加量が多くなり微量のAl
成分調整し易いことがあげられる。
【0041】一方、第2の酸化物については、酸化物自
身がAl供給源として作用する。すなわち、酸化物自身が
一部分解して溶鋼中へ微量Alを供給できる、もしくは懸
濁したMnO-SiO2系酸化物と反応して、鋼中への分散酸化
物としてAl−Mn系酸化物を形成できる。
【0042】添加する酸化物は、いずれも当該酸化物
を、重量割合にて、90%以上含有すれば充分であり、粒
度についても特に限定されないが、添加時の取扱いを考
えれば、平均粒径0.05mmないし0.5 mmが適当と考えられ
る。
【0043】酸化物を添加する方法は、その酸化物を溶
鋼と接触、反応させることが主たる目的であるので、一
括添加、粉体吹き込み等特に方法は問わない。次に、溶
存Al量を規定する理由は以下のようである。本発明で
は、一時脱酸過程でMnO-SiO2系介在物を核として溶存酸
素を消費しながら、Al−Mn系酸化物を溶鋼内に分散生成
させようとするものである。
【0044】ここに、1527℃から1723℃の製鋼温度域で
Al−Mn系酸化物の酸素ポテンシャルはおおよそ図2の傾
斜部分のようになる。なお、同図には併せて、溶存酸素
濃度[%O]=0.002 〜0.01%での酸素ポテンシャル領域お
よび[%Al] =0.001 %添加時のAl2O3 酸化物 (活量Al2O
3 =0.1)の時の酸素ポテンシャルも示している。
【0045】Al −Mn系酸化物の上限は、[%Mn] =0.3
%、[%Al] =0.0001%の時、また下限は[%Mn] =3%、
[%Al] =0.003 %の時で、この間で示されるAl−Mn系酸
化物生成領域は、おおよそ溶存酸素濃度0.002 〜0.01%
の酸素ポテンシャル領域と重なる。
【0046】したがって、[%Mn] =0.3 %、[%Al] =0.
0001%未満では、酸素濃度が高くなりすぎて脱酸不足と
なり、[%Mn] =3%、[%Al] =0.003 %を超えるとAl2O
3 系酸化物が生成する可能性が急速に高まることがわか
る。
【0047】転炉または電気炉を用いる精錬プロセスに
ついて:次に、本発明にしたがってAl−Mn酸化物が分散
した酸化物分散鋼を転炉または電気炉を用いて溶製する
場合の具体的処理操作に従って述べる。もちろん、本発
明は高周波溶解炉のような溶解炉を用いることで実施す
ることもできる。
【0048】例えば慣用法によって転炉もしくは電気炉
にて製錬された溶鋼は、炭素濃度を、好ましくは、0.01
〜0.25%に調整する。この理由は、本発明で対象として
いる鋼種が厚板材として利用されているために、通常
は、炭素濃度に上限があり、0.25%以下である必要があ
るからである。一方、炭素を0.01%以上に制限すること
により溶鋼およびスラグが過酸化状態にならず、後工程
であるSiおよびMnによる予備脱酸工程およびスラグ改質
工程が容易に行えるからである。
【0049】次に、SiおよびMnが出鋼中もしくは取鍋内
にて添加調整される。このときの組成範囲の理由につい
ては前述したが、ここで実際の操業プロセスでは、転炉
もしくは電気炉からの出鋼時に不可避的に持ち来される
スラグにより予備脱酸の制御が困難になる。そこで、ス
ラグ流出を極力抑制するとともに、望ましくはスラグ改
質によりスラグの低酸素ポテンシャル化を実現する。
【0050】さらに、実際の操業プロセスでは溶鋼量が
多く予備脱酸による酸素濃度の調整に時間を要する。例
えば、RH脱ガス装置による還流によって脱酸生成物の浮
上を促進したり、LF加熱装置により溶鋼を加熱しながら
生成物の浮上時間を充分に与えたり、もしくはVOD 炉に
よりガス攪拌で大型脱酸生成物の浮上を促進し酸素濃度
を制御することが有効となる。
【0051】これらいわゆる二次精錬設備は、スラグ改
質も含めて予備脱酸を促進し全酸素濃度を制御すること
に有効であるばかりでなく、脱ガスや熱付与の効果もあ
り、トータルとしてのプロセスの最適化に役立つ。
【0052】スラグ改質:このときのスラグ改質方法お
よびスラグ改質剤については、特に限定されないが、例
えばAl-CaCO3剤、Al灰、Si系改質剤等を使用することが
できる。このスラグ改質によって、予備脱酸を容易にす
るために、スラグ中 (T.Fe+%MnO) 濃度を重量割合にし
て2%以下にすることが好ましい。
【0053】Ti添加:次にTi添加量を限定する理由につ
いて述べる。全酸素濃度を[%O]:0.002 〜0.010 %に調
整した後、前述したような作用でAlを含有する合金を添
加するとともに溶鋼中酸素ポテンシャルを制御する酸化
物を添加するか、もしくは酸素ポテンシャルを制御し得
るAlを含有する酸化物を取鍋精錬中に添加することによ
り溶鋼中Al濃度を重量割合にして[%Al]:0.0001%以上0.
0030%以下に調整して、Al−Mn系酸化物を鋼中に分散さ
せる。
【0054】ここで、Al濃度調整後にTiを重量割合にし
て0.050 %以下になるように添加すると、耐火物あるい
は雰囲気からの影響によりAl−Mn系酸化物が吸収、消滅
したり、他の介在物組成に変化することを抑制できる効
果がある。これによりAl−Mn系酸化物は、微小な介在物
としてより分散しやすくなり、Al−Mn系酸化物の微細分
散がより効果的に行われることになる。
【0055】一方、Tiは分散酸化物の微細化に寄与する
ために、望ましくは0.005 %以上添加し、また脱酸に影
響を及ぼさないために、0.02%以下であることが良い。
また、Tiを0.050 %を越えて添加するとTiによる脱酸が
優勢となり、Al−Mn系酸化物の生成、分散を阻害してし
まう。
【0056】ところでTiを添加することにより、Al−Mn
系介在物の一部は不可避的にTi酸化物およびTi−Mn系酸
化物と複合することもあるが、本発明では鋼中にAl−Mn
系酸化物を含有する酸化物を分散させることが主たる目
的であるためそのような酸化物が共存しても問題はな
い。
【0057】脱硫:本発明によれば、適切なスラグ改
質、予備脱酸およびAl+酸化物添加を行う過程で本鋼種
のような弱脱酸鋼であってもスラグに生石灰などの脱硫
剤をスラグ改質剤とともに投入することによりイオウを
除去することができる。そこで、イオウを重量割合にし
て0.002 %以下にすると、Al−Mn系酸化物はより安定に
存在することができる。その理由は、Mnを多量に含有し
てもイオウを20ppm 以下に抑制した鋼種ではMnS 系介在
物が生成し難いためである。さらに、このMnS は鋼質的
には応力腐食割れを起こしたりすることがよく知られて
おり、付随的に鋼質改善も期待できる。
【0058】本発明が対象とする鋼種は特に制限されな
いが、代表例として例示すればほぼ次のような組成を有
するものである。C:0.05〜0.20%、Si:0.05〜0.02
%、Mn:0.8 〜2.0 %、S:0.005 %以下、P:0.03%
以下、Cu:0.2 〜1.0 %、Ni:0.1 〜1.0 %、Nb:0.01
〜0.15%、V:0.01〜0.2 %、B:0.00005 〜0.0004
%、Ti:0.005 〜0.02%、N:0.0005〜0.0100%、残部
Feおよび不可避不純物である。ただし、Cu、Nb、V 、B
、Tiについては少なくとも1種含有されていればよ
い。
【0059】
【実施例】次に、本発明を実施例によってさらに具体的
にその作用を説明する。 (実施例1)本発明の効果を確認するために150 kg高周波
加熱炉を用いて本発明の実施例および比較例を示す試験
を行った。
【0060】炭素濃度:0.05〜0.08%、初期酸素濃度:
0.04〜0.07%の溶鋼を1550℃から1650℃でMgO スタンプ
耐火物中で溶解した。この溶鋼を用いて金属形態のSi、
Mnを添加して、SiおよびMn濃度を調整して予備脱酸を行
い、全酸素濃度を確認した。
【0061】次いで、酸化物粉体としてAl濃度を合金鉄
中Al分等で調整する場合には、ZrO2・SiO2、2MgO・Si
O2、 MgO・2TiO2 、MgO ・TiO2、TiO2、 CaO・MgO・2Si
O2 、Ce2O3・Cr2O3 等の酸化物粉末を用い、特にAl濃度
の調整を行わない (合金鉄中Al分を考慮し上限は越えな
い) 場合には、 Al2O3・MnO 、 Al2O3・TiO2、3Al2O3
2SiO2 、 CaO・Al2O3・2SiO2 、および FeO・Al2O3
の酸化物を用いた。
【0062】粉体はいずれも上記酸化物が90mass%以上
含有され、粒度は直径0.05〜0.5 mmを主体とする酸化物
で、添加量は10gないし100 gであった。酸化物添加
後、5分ないし30分で出鋼、鋳造した。
【0063】鋼塊中の分散酸化物の個数と組成を光学顕
微鏡とエネルギー分散型X線マイクロアナライザーで調
べた。なお、この溶鋼には、その上記成分以外にCu:0.
2 〜0.5 %、Ni:0.2 〜0.8 %、Nb:0.02〜0.8 %、
V:0.03〜0.09%、およびB:0.0001〜0.0016%が含ま
れていた。また、イオウ濃度は、0.0001〜0.004 %、Ti
濃度は0.005 〜0.05%であった。本例の実施例および比
較例の処理条件および介在物の形態観察結果の一覧を表
1にまとめて示す。
【0064】
【表1】
【0065】表1には、本実施例の処理条件と介在物形
態の調査結果を示した。同表中、介在物の形態は直径0.
2 μm以上20μm以下のAl−Mn酸化物主体の介在物で、
溶鋼もしくは鋼塊内で10個/mm2以上1000個/mm2未満ある
ものを◎、4個/mm2以上10個/mm2未満あるものを○とし
た。
【0066】表1の本発明例1から7に示したように、
いずれの例でも、[%Si] および[%Mn] 量を調整して全酸
素濃度を調整し、かつ合金鉄中に含有されるAl分を考慮
してAl濃度を制御し該酸化物を添加すれば、Al−Mn系酸
化物が鋼塊中へ分散されることが分かる。
【0067】また、本発明例8から12に示すように、[%
Si] および[%Mn] 量を調整して全酸素濃度を調整し、か
つ合金鉄中に含有されるAl分を考慮しつつAlを含有する
該酸化物を添加すれば、酸素ポテンシャルの制御が可能
となるとともにAl濃度の制御も可能となり、結果として
Al−Mn系酸化物が鋼塊中へ分散されることが分かる。
【0068】一方、表1に比較例13および14として示し
たように、酸化物を添加しない場合、SiとMn複合脱酸に
より酸素濃度を調整してもAl濃度の制御が難しく、結果
としてAl濃度が制御しきれずに、Al−Mn系酸化物が鋼塊
中へ分散されないことがわかる。
【0069】比較例15、16および17に示したように、該
酸化物 (この場合Alを含有しないZrO2・SiO2酸化物また
は2MgO・SiO2酸化物) を添加しても溶鋼中のAl濃度を制
御できないか、もしくは上限を越えると、Al−Mn系酸化
物が鋼塊中へ分散されないことが分かる。
【0070】また、Alを含有しかつ酸素ポテンシャルを
制御できる該酸化物を添加した場合でも、Si量およびMn
量の制御が不適切で全酸素濃度が下限を下回る場合、も
しくは上限を上回る場合には、Al−Mn系酸化物が鋼塊中
へ分散されないことが分かる。
【0071】(実施例2)本例では250t転炉、LF加熱装置
およびRH脱ガス真空装置を用いて本発明を実施した。
【0072】予備処理により重量割合にしてP:<0.03
%以下にした溶銑を用いて、転炉で脱炭を行った。転炉
により炭素濃度を0.01%以上0.25%以下にした後、転炉
スラグ流出を抑制するとともに、出鋼時に流出したスラ
グへ、Al−CaCO3 剤あるいはAl灰等の改質剤を添加して
スラグ改質を行った。また出鋼時に、予備脱酸を主たる
目的としてSiおよびMnを添加して所定の濃度に調整し
た。
【0073】その後、取鍋炉加熱装置により15ないし30
分間の加熱処理を行ってから、RH脱ガス装置による全酸
素濃度の調整は、RHにより真空度1〜5torr程度を維持
しながら20分ないし40分の還流処理によって行った。こ
の際、処理途中に試料採取を行い、全酸素濃度を調べる
とともに、真空槽内にFe−Si、Fe−Nb、Fe−VおよびFe
−B等の合金鉄によりAl濃度の調整を行った。
【0074】次に、全酸素濃度を調整してからZrO2・Si
O2、2MgO・SiO2、 Al2O3・MnO もしくは3Al2O3・2SiO2
の各酸化物を1〜12kg/tの量だけ真空槽内で溶鋼に添加
し、さらに5分ないし20分の環流を行った。また、Tiを
添加する場合には、その後真空槽内にて合金鉄とともに
添加を行った。
【0075】精錬終了後、取鍋内で試料を採取し、分散
酸化物の個数と組成を光学顕微鏡とエネルギー分散型X
線マイクロアナライザーで調べた。また連続鋳造により
スラブ形状に鋳造後、鋳片試料中に分散した酸化物につ
いても個数と組成を同様の手法で調査した。
【0076】なお、このときの溶鋼組成は、上記成分以
外は、Cu:0.2 〜0.4 %、Ni:0.2〜0.7 %、Nb:0.02
〜0.5 %、V:0.03〜0.09%、およびB:0.0001〜0.00
16%であった。本例の実施例および比較例の処理条件お
よび介在物の形態観察結果の一覧を表2にまとめて示
す。
【0077】
【表2】
【0078】表2には、本実施例の条件と介在物形態の
調査結果を示した。同表中、介在物の形態の分類は、表
1と同様である。分散酸化物については、溶製末期の溶
鋼および連続鋳造後のスラブ中での状態を調査した。溶
製末期試料と連続鋳造スラブ内では、分散酸化物の組成
形態および個数、直径分布に多少の差はあるものの、本
発明に影響を与える本質的な差は認められなかった。
【0079】表2に示した結果のうち、本発明例1、2
および3に示したように、[%Si] および[%Mn] 量を調整
して全酸素濃度を0.002 〜0.01%に制御した後、Al濃度
を調整しかつ各酸化物を添加した結果、溶鋼中Al濃度は
0.0001〜0.003 %に制御され、結果的に、Al−Mn系酸化
物が鋼塊中へ分散されたことがわかる。
【0080】また、表2に示した結果のうち、本発明例
4および5に示したように[%Si] および[%Mn] 量を制御
して全酸素濃度を0.002 〜0.01%に制御した後、Alを含
有する各酸化物を添加した結果、溶鋼中Al濃度は0.0001
〜0.003 %に制御され、結果的にAl−Mn系酸化物が鋼塊
中に分散されることがわかる。
【0081】さらに、本発明例6から9に示したよう
に、[%Si] および[%Mn] 量を制御して全酸素濃度調整
し、Al濃度を調整しかつ酸化物を添加する、もしくはAl
を含有する各酸化物を添加して溶鋼中Al濃度は0.0001〜
0.003 %に制御された後、Tiを0.05%以下添加すること
により、Al−Mn系酸化物は鋼塊中への分散されたことが
わかる。
【0082】一方、比較例10および11に示したように、
SiおよびMnによる予備脱酸後、全酸素濃度が0.002 %未
満もしくは0.01%を越えた場合には、Al濃度を調整して
各酸化物を添加してもAl−Mn系酸化物が鋼中に必要量分
散しなかった。
【0083】また比較例12および13に示したように、Si
およびMnによる予備脱酸後、全酸素濃度が0.002 %未満
もしくは0.01%を越えた場合には、Alを含有する各酸化
物を添加しても、溶鋼中Al濃度は0.0030%を越える、も
しくは0.0001%未満となり、Al−Mn酸化物が鋼中に必要
量分散しなかった。
【0084】次に、比較例14および15に示したように、
SiおよびMnによる予備脱酸により酸素濃度を0.002 〜0.
01%に制御しても、Al濃度0.0001〜0.003 %に調整しな
いとAlを含有しない酸化物の添加では、Al−Mn酸化物が
必要量生成しなかった。
【0085】比較例16および17には、Ti濃度を0.05%を
越えて添加した場合を示したが、この場合もAl−Mn系酸
化物が鋼中に必要量生成しなかった。さらに、比較例18
および19に示したように、SiおよびMnによる予備脱酸に
より酸素濃度を0.002 〜0.01%に制御しても、Alを含有
する酸化物を添加しない場合にはAl濃度の調整が困難で
あり、結果としてAl−Mn系酸化物が必要量生成しなかっ
た。
【0086】比較例20および21には、転炉出鋼時にスラ
グ改質を実施しなかった場合であるが、SiおよびMnによ
る予備脱酸濃度が高くなる傾向にあり、Al濃度を制御し
てかつ該酸化物を添加する、もしくはAlを含有する酸化
物を添加しても、Al−Mn系酸化物が鋼中に必要量生成し
なかった。
【0087】図3に、本例における重量割合での分散酸
化物中平均イオウ濃度と溶鋼中イオウ濃度の関係を示
す。分散介在物中イオウはMnS もしくはMnを含有するオ
キシサルファイドを形成しているため、図に示したよう
に溶鋼中イオウ濃度を減少させて分散酸化物中平均イオ
ウ濃度が少なくしたものほど、Al−Mn系酸化物の割合が
多くなり、脱硫が進んだ0.002 %以下ではほとんどAl−
Mn酸化物となっている。
【0088】(実施例3)次に30t電気炉およびVOD 装置
を用いて本発明を実施した。電気炉により炭素濃度を0.
01〜0.25%に調整した後、電気炉からのスラグ流出を抑
制するとともに、出鋼時に流出したスラグへ、Al−CaCO
3 改質剤を添加してスラグ改質を行った。この出鋼時に
予備脱酸を主たる目的としてSiおよびMnを添加して所定
の濃度に調整した。
【0089】その後、VOD 装置により減圧下でArガス攪
拌を行いながら全酸素濃度を調整した。この場合には、
真空度1〜50torr程度を維持しながら10分ないし40分の
処理を行った。この際、処理途中に試料採取を行い全酸
素濃度を調べるとともに、真空槽内にFe−Si、Fe−Nb、
Fe−VおよびFe−B等のAl含有合金鉄によりAl濃度の調
整を行うとともに酸化物を添加するか、もしくはAlを含
有する酸化物を添加した。また、Tiを添加する場合に
は、真空槽内にて合金鉄とともに添加を行った。
【0090】精錬終了後、取鍋内で試料を採取し、分散
酸化物の個数と組成を光学顕微鏡とエネルギー分散型X
線マイクロアナライザーで調べた。また連続鋳造により
スラブ形状に鋳造後、鋳片試料中に分散した酸化物につ
いても個数と組成を同様の手法で調査した。
【0091】なお、このときの溶鋼組成は、上記成分以
外は、Cu:0.2 〜0.4 %、Ni:0.2〜0.7 %、Nb:0.02
〜0.5 %、V:0.03〜0.09%、およびB:0.0001〜0.00
16%であった。
【0092】
【表3】
【0093】表3の本発明例1および2に示したよう
に、電気炉出鋼後、VOD 装置内でSiおよびMnによる予備
脱酸を行い酸素濃度を0.002 〜0.01%に調整した後、さ
らにAl濃度を調整しつつ、ZrO2・SiO2を添加すれば、鋼
塊中にAl−Mn系酸化物を分散させることができる。
【0094】また表3の本発明例3に示したように、電
気炉出鋼後、VOD 装置内でSiおよびMnによる予備脱酸を
行い酸素濃度を0.002 〜0.01%に調整した後、さらにAl
を含有する Al2O3・TiO2酸化物を添加すれば、Al濃度は
0.0001〜0.003 %に制御され、結果として鋼中にAl−Mn
系酸化物を分散させることができる。
【0095】さらに表3の本発明例4および5に示した
ように、SiおよびMnによる予備脱酸後に各酸化物を添加
し、さらにTiを添加しても、鋼塊中にAl−Mn系酸化物を
分散させることができる。
【0096】一方、表3の比較例6および7に示したよ
うに、電気炉出鋼後、VOD 装置内でSiおよびMnによる予
備脱酸で酸素濃度を0.002 〜0.01%に調整できなかった
場合、さらにAl濃度を調整しつつZrO2・SiO2を添加す
る、もしくはAlを含有するAl2O3 ・TiO2酸化物を添加し
ても、鋼塊中Al−Mn系酸化物を分散させることができな
かった。
【0097】比較例8に示したように、SiおよびMnによ
る予備脱酸後、Al濃度を調整することなくAlを含有しな
い該酸化物を添加しても、鋼塊中にAl−Mn系酸化物を分
散させることができなかった。
【0098】また、比較例9に示したように、Siおよび
Mnによる予備脱酸後Al濃度を調整しながら各酸化物を添
加しても、Ti濃度が重量割合にして0.05%を越えると、
鋼塊中にAl−Mn系酸化物を分散させることができなかっ
た。
【0099】さらに比較例10および11に示したように、
SiおよびMnによる予備脱酸を行い酸素濃度を調整して
も、各酸化物を添加しなかった場合、Al濃度は所定の濃
度に調整されない、もしくは必要溶存Al濃度は達成され
ず、結果として鋼塊中にAl−Mn系酸化物を分散させるこ
とができなかった。
【0100】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、高い溶接熱影響部靱性が要求される厚板用鋼とし
て、Al−Mn酸化物相を有する酸化物が鋼中に微細に分散
されたAl−Mn系酸化物分散鋼を溶製する際において、Al
−Mn酸化物相を含む酸化物が鋼中に微細に分散したAl−
Mn系酸化物分散鋼を安定して溶製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】製鋼温度において種々の酸化物によって形成さ
れ酸素ポテンシャルを比較したグラフである。
【図2】製鋼温度において溶鋼中にAl−Mn系酸化物が安
定に存在する領域を示すグラフである。
【図3】溶鋼中イオウ濃度が分散酸化物中イオウ濃度に
及ぼす影響を示すグラフである。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分散粒子としてAl−Mn酸化物相および不
    可避的に共存する酸化物相を有する酸化物分散鋼を溶製
    するに際して、SiおよびMnで溶鋼を予備脱酸して全酸素
    濃度を0.0020%以上0.0100%以下に調整した後、Al含有
    合金と溶鋼中酸素ポテンシャルを制御することが可能な
    酸化物、または溶鋼中酸素ポテンシャルを制御すること
    が可能な、Alを含有する酸化物のいずれかを前記溶鋼に
    添加することにより溶鋼中Al濃度を重量割合にて0.0001
    %以上0.0030%以下に制御することを特徴とするAl−Mn
    系酸化物分散鋼の製造法。
  2. 【請求項2】 分散粒子としてAl−Mn酸化物相および不
    可避的に共存する酸化物相を有する酸化物分散鋼を溶製
    するに際して、転炉もしくは電気炉にて炭素濃度を調整
    し、出鋼中もしくは取鍋中でSiおよびMnで溶鋼を予備脱
    酸するとともにスラグ改質を行い、取鍋炉の取鍋精錬設
    備にて全酸素濃度を0.0020%以上0.0100%以下に調整し
    た後、Al含有合金と溶鋼中酸素ポテンシャルを制御する
    ことが可能な酸化物、または酸素ポテンシャルを制御す
    ることが可能な、Alを含有する酸化物のいずれかを取鍋
    精錬中に前記溶鋼に添加することにより、溶鋼中Al濃度
    を重量割合にて0.0001%以上0.0030%以下に制御するこ
    とを特徴とするAl−Mn系酸化物分散鋼の製造法。
  3. 【請求項3】 前記Al含有合金と酸化物またはAlを含有
    する酸化物を溶鋼に添加してから、該溶鋼にTiを重量割
    合にて0.050 %以下添加することを特徴とする請求項2
    記載のAl−Mn系酸化物分散鋼の製造法。
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