JP3048449B2 - アクリロニトリル系前駆体繊維 - Google Patents
アクリロニトリル系前駆体繊維Info
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Description
繊維製造用アクリロニトリル系前駆体繊維に関するもの
である。
素繊維および黒鉛繊維(以下、一括して炭素繊維と称す
る)はその優れた力学的性質により、航空宇宙用途を始
め、スポーツ、レジャー用途等の高性能複合材料の補強
繊維素材として商業的に生産・販売されているが、これ
らの複合材料の高性能化のために炭素繊維の品質および
性能の向上に対する要求はますます厳しくなってきてい
る。
衣料用アクリル繊維とは異なりあくまでも最終製品であ
る炭素繊維を製造するための中間製品であるから、得ら
れる炭素繊維の品質や性能の向上につながるものである
ことが不可欠であり、さらに製造時において紡糸が安定
になされ、また生産性が高く、低コストで提供されるも
のであることが極めて重要である。
クリル繊維について数多くの提案がなされてきたが、得
られる炭素繊維の品質・性能を主眼に置いた場合、原料
重合体の高重合化、アクリロニトリル以外の共重合成分
含有量の低減等の提案であり、また紡糸方式に関して
は、乾−湿式紡糸法の採用などの提案であった。しかし
ながら、前者の場合においては一般的に原料重合体の溶
剤への溶解性が低下し、紡糸原液の安定性が損なわれる
と共に、重合体の析出凝固性が著しく高くなり、前駆体
繊維の安定した製造を行うことは困難である。
繊維の製造には、ノズルホールの高密度化において有利
であり、かつ製造設備への投資が比較的少なくて済むな
どの点より、紡糸方式として湿式紡糸法が採用されてい
る。しかし得られる繊維束は一般に単繊維切れ、毛羽が
多い。さらに紡糸方式の特徴として得られる前駆体繊維
の構造の緻密性は低いものとなり、炭素繊維にした時に
力学的性能において満足できるものが得られなかった。
湿式紡糸法を用いながら繊維構造の緻密性に言及した報
告がなされているが、これは焼成における工程通過性お
よびそれに伴う炭素繊維品質面での改善を主目的として
おり、炭素繊維の性能向上、あるいは前駆体繊維の品質
向上という観点からは十分な方法とはいえない。さらに
製造コストに重大な影響を及ぼす、前駆体繊維の連続的
な紡糸操作面での安定性に関してもなんら研究がなされ
た報告がない。
かわらず、工業生産において安定してかつ効率的に紡糸
され、単繊維切れ・毛羽等を抑えられた品質の高いもの
であると同時に、高度な繊維構造の緻密性を有し、また
その前駆体繊維から優れた高水準の力学的性能を有する
炭素繊維を提供することのできる炭素繊維前駆体繊維は
今だ得られていないのが現状である。
うな従来の技術に対し、前駆体繊維製造の安定性向上、
前駆体繊維の繊維構造の微細化・緻密化について鋭意検
討した結果本発明を完成するに至った。すなわち本発明
の目的は、高生産性・高品質であって、しかも炭素繊維
にしたときに容易に高強度と高弾性率を発現し得るアク
リロニトリル系前駆体繊維を提供することにある。
ロニトリル系重合体を湿式紡糸し、凝固繊維の引張弾性
率を約2.0〜3.0g/dとすることによって得ら
れ、かつヨウ素吸着量が繊維重量あたり1重量%以下で
あることを特徴するアクリロニトリル系前駆体繊維であ
る。
はアクリロニトリル、あるいはアクリロニトリルおよび
これと共重合可能な他の単量体(コモノマー)1種類以
上からなる。ここにおいてコモノマーとしては例えば、
(メタ)アクリル酸およびそのエステル類、酢酸ビニ
ル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、ジ
アセトンアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリ
ルアミド、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロト
ン酸、無水マレイン酸、メタクリロニトリル、スチレ
ン、α−メチルスチレン等を挙げることができる。なか
でも親水性・水溶性のコモノマーが好ましい。このよう
なアクリロニトリル系重合体の重合度は極限粘度[η]
が0.8以上のものが好ましい。
得られる。ここにおいて本発明者らは湿式紡糸における
工程糸である凝固繊維の引張弾性率と、この繊維を後処
理して得られる最終的な前駆体繊維の単繊維切れ・毛羽
等前駆体繊維としての品質を損なう現象との関係を見い
だした。すなわち凝固繊維の引張弾性率が約2.0〜
3.0g/d(d=デニールは凝固繊維中の重合体分の
重量に基づいたもの)である場合、該凝固繊維をさらに
延伸・洗浄・乾燥等の後処理して得られる前駆体繊維
は、単繊維切れ・毛羽が極めて少なく、湿式紡糸法によ
って得られたものであるにもかかわらず安定した高品質
を有するものである。
満の場合、凝固液中など紡糸工程の初期段階において不
均一な伸張を招き、得られる繊維束の繊度も極めて不均
一なものとなる。さらに紡糸各工程での延伸性の変動が
顕著になり安定した連続紡糸が困難となる。一方、引張
弾性率が約3.0g/dを越えると、凝固浴中での単繊
維切れおよび後工程での延伸性低下を招き、機械的特
性、品質および生産の安定性のすべてにおいて満足でき
る前駆体繊維を得ることができない。また凝固繊維の引
張弾性率が本発明の範囲から外れている前駆体繊維から
高強度・高弾性率の炭素繊維は得られ難い。凝固繊維の
引張弾性率は、原料重合体の重合度およびコモノマーを
加えた場合はその種類およびその含有量によって、さら
に紡糸原液濃度、凝固条件(凝固液組成、温度、凝固ド
ラフト等)および凝固繊維繊度等の要素によって定ま
る。
重量あたり1重量%以下であることが必要である。前駆
体繊維のヨウ素吸着量が1重量%を越えると繊維構造の
微細性・緻密性が損なわれ不均質なものとなり、繊維の
欠陥点を形成することとなる。従ってヨウ素吸着量が1
重量%を越える前駆体繊維を用いて焼成して得られる炭
素繊維は緻密性が低下しまた構造欠陥を有するために、
優れた引張強度や引張弾性率を発揮することができな
い。
製造例について説明する。本発明のアクリロニトリル系
重合体の重合方法は溶液重合、スラリー重合等公知の方
法のいずれにも限定されない。紡糸に際して用いられる
溶剤は有機、無機の公知のものを使用することができ
る。
溶液を公知の方法にしたがって湿式紡糸法により紡出、
凝固、延伸(浴中、あるいは空気中および浴中)および
乾燥緻密化を行う。浴中延伸は凝固繊維を直接行っても
よいし、また空気中にて凝固繊維をあらかじめ延伸した
後に行ってもよい。浴中延伸は通常50〜98℃の延伸
浴中で1回あるいは2回以上の多段に分割するなどして
行われ、その前後あるいは中間に水洗を行ってもよいが
本発明はそれに限定されない。これらの操作によって凝
固繊維を浴中延伸完了時までに約6倍以上延伸されるこ
とが好ましい。
方法のよっても油剤処理、乾燥緻密化が可能であるが、
乾燥速度、設備の簡便さ、繊維の緻密化効果などを考慮
した場合100〜200℃程度の加熱ローラーによる方
法が好ましい。また必要に応じて乾燥緻密化前あるいは
後に、繊維をさらに高温の加熱ローラーあるいは加圧ス
チームによって延伸を施してもよい。
る。「%」は重量%を表す。 (イ)「凝固繊維の引張弾性率」:凝固繊維束を採取
後、速やかに温度23℃、湿度50%の雰囲気中、試料
長(掴み間隔)10cm、引張速度10cm/minに
てテンシロンによる引張試験を行う。弾性率表示は、下
式により凝固繊維束のデニール(d;凝固繊維束900
0mあたりの重合体の占める重量)を求め、g/dにて
示した。 d=9000×f×Qp/V f:フィラメント数、Qp:ノズル1ホールあたりの重
合体吐出量(g/min)、V:凝固繊維引取速度(m
/min) (ロ)「重合体の極限粘度[η]」:25℃のジメチル
ホルムアミド溶液で測定した。 (ハ)「繊維のヨウ素吸着量」:前駆体繊維2gを精ひ
ょう採取し100mlの三角フラスコに入れる。これに
ヨウ素溶液(ヨウ化カリウム100g、酢酸90g、
2、4−ジクロロフェノール10g、ヨウ素50g、を
蒸留水に溶解し1000mlの溶液とする)100ml
を入れ60℃で50分間振とうしヨウ素吸着処理を行
う。この後吸着処理糸を30分間イオン交換水にて洗浄
し、さらに蒸留水にて洗い流した後延伸脱水する。脱水
糸を300mlビーカーに入れジメチルスルホキシド2
00mlを加え60℃にて溶解する。この溶液をN/1
00硝酸銀水溶液で電位差滴定しヨウ素吸着量を求め
た。 (ニ)「炭素繊維のストランド強度・弾性率」:JIS
−7601に記載の方法に準じて測定した。
%、メタクリル酸1%からなり極限粘度[η]が1.7
の共重合体を、共重合体濃度23%でジメチルホルムア
ミドに溶解して紡糸原液とし、12000ホールのノズ
ルを用いて濃度70%、温度35℃のジメチルホルムア
ミド水溶液中に湿式紡糸した。得られた凝固繊維の引張
弾性率は2.2g/dであった。この凝固繊維を沸水中
で7倍延伸しながら洗浄・脱溶剤した後、シリコン系油
剤溶液中に浸漬し、140℃の加熱ローラーにて乾燥緻
密化を行うことにより前駆体繊維を得た。この繊維のヨ
ウ素吸着量を測定したところ0.9%であった。また紡
糸工程中、単繊維切れ・毛羽の発生はほとんど認められ
ず、安定性は良好であった。この繊維を230〜270
℃の熱風循環式耐炎化炉にて5%の伸張を付与しながら
繊維密度が1.36g/cm3の耐炎化繊維となし、引
き続き該繊維を窒素雰囲気下最高温度600℃、伸張率
5%にて低温熱処理し、さらに同雰囲気下で最高温度が
1400℃の高温熱処理炉にて−5%の伸張の下、約
1.5分間処理した。得られた炭素繊維のストランド強
度は460kg/mm2、ストランド弾性率は27.2
ton/mm2であった。
それ以外は実施例1と同様にして前駆体繊維を得た。こ
のときの凝固繊維の引張弾性率および前駆体繊維の単繊
維切れ・毛羽の程度、ヨウ素吸着量を表1に示す。さら
にこの繊維を実施例1と同様の条件にて焼成して炭素繊
維を得た。得られた炭素繊維のストランド特性を表1に
示す。
に示すように変更して、極限粘度[η]が1.7の共重
合体を製造し、共重合体濃度21%のジメチルアセトア
ミド溶液を紡糸原液とし、12000ホールのノズルを
用いて濃度70%、温度35℃のジメチルアセトアミド
水溶液中に湿式紡糸した。引き続きこの凝固繊維を空気
中にて1.5倍の延伸を施した後、沸水中で延伸しなが
ら洗浄・脱溶剤し、以後実施例1と同様にして前駆体繊
維を得た。このときの凝固繊維の引張弾性率および前駆
体繊維の単繊維切れ・毛羽の程度、ヨウ素吸着量を表2
に示す。さらにこの繊維を実施例1と同様の条件にて焼
成して炭素繊維を得た。得られた炭素繊維のストランド
特性を表2に示す。
リロニトリル99%、メタクリル酸1%からなるもので
あること以外は全て同様にしてヨウ素吸着量0.9%の
前駆体繊維を得た。このときの凝固繊維の引張弾性率は
3.9g/dであった。紡糸時に凝固浴中および延伸浴
中にて単繊維切れが多発すると共に乾燥緻密化を行うロ
ーラーへの巻き付きが生じた。さらに該前駆体繊維を実
施例2と同様に焼成を行いストランド強度380kg/
mm2、ストランド弾性率24.1ton/mm2の炭素
繊維を得た。
Claims (1)
- 【請求項1】 アクリロニトリル系重合体を湿式紡糸
し、凝固繊維の引張弾性率を約2.0〜3.0g/dと
することによって得られ、かつヨウ素吸着量が繊維重量
あたり1重量%以下であることを特徴するアクリロニト
リル系前駆体繊維。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3296062A JP3048449B2 (ja) | 1991-11-12 | 1991-11-12 | アクリロニトリル系前駆体繊維 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3296062A JP3048449B2 (ja) | 1991-11-12 | 1991-11-12 | アクリロニトリル系前駆体繊維 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH05132813A JPH05132813A (ja) | 1993-05-28 |
JP3048449B2 true JP3048449B2 (ja) | 2000-06-05 |
Family
ID=17828613
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3296062A Expired - Lifetime JP3048449B2 (ja) | 1991-11-12 | 1991-11-12 | アクリロニトリル系前駆体繊維 |
Country Status (1)
Country | Link |
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Families Citing this family (3)
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---|---|---|---|---|
WO1999010572A1 (fr) * | 1997-08-27 | 1999-03-04 | Mitsubishi Rayon Co., Ltd. | Fibre a base d'acrylonitrile comme fibre precurseur d'une fibre de carbone, procede d'obtention, et fibre de carbone obtenue a partir de cette fibre precurseur |
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-
1991
- 1991-11-12 JP JP3296062A patent/JP3048449B2/ja not_active Expired - Lifetime
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