JP2977208B2 - 楽音合成装置 - Google Patents
楽音合成装置Info
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- JP2977208B2 JP2977208B2 JP1202633A JP20263389A JP2977208B2 JP 2977208 B2 JP2977208 B2 JP 2977208B2 JP 1202633 A JP1202633 A JP 1202633A JP 20263389 A JP20263389 A JP 20263389A JP 2977208 B2 JP2977208 B2 JP 2977208B2
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Description
「産業上の利用分野」 この発明は、特に管楽器音の合成に用いて好適な楽音
合成装置に関する。 「従来の技術」 自然楽器の発音メカニズムをシミュレートすることに
より得られたモデルを動作させ、これにより、自然楽器
の楽音を合成する方法が知られている。クラリネット等
の管楽器の最も基本的なモデルとしては、リードの弾性
特性をシミュレートした非線形増幅素子と、共鳴管をシ
ミュレートした双方向伝送回路とを接続した閉ループ構
造のモデルが知られている。このモデルでは、非線形増
幅素子から信号が出力されると、この信号は進行波信号
として双方向伝送回路に入力され、双方向伝送回路の終
端部で反射され、この反射波信号が双方向伝送回路を介
し、非線形増幅素子に帰還される。このように、非線形
増幅素子と双方向伝送回路とからなる閉ループ回路によ
って、管楽器における空気圧力波の伝播が忠実にシミュ
レートされる。また、実際の管楽器には、音高操作用の
孔、いわゆるトーンホールが設けられているが、このト
ーンホールをも含めて管楽器をシミュレートしたモデル
が知られている。このモデルでは、複数の双方向伝送回
路が信号散乱ジャンクション(以下、ジャンクションと
略す)と呼ばれる信号処理回路を介してカスケード接続
される。ここで、ジャンクションは、複数のトーンホー
ルの各々に対応して設けられる。そして、各ジャンクシ
ョンにより、隣接する双方向伝送回路からの各入力信号
に対し係数乗算等の演算処理が行われ、演算結果が隣接
する双方向伝送回路に供給される。この演算処理におけ
る乗算係数等は当該音孔の開閉状態に対応し切り換えら
れ、音孔付近における空気圧力波の散乱がシミュレート
される。この種の技術は、例えば特開昭63−40199号公
報に開示されている。 「発明が解決しようとする課題」 ところで、上述した従来の楽音合成装置は、シミュレ
ートしようとする楽器の各トーンホールに対応してジャ
ンクションを設けるようにしているため、実現しようと
するトーンホール数が多くなると、回路規模が著しく大
きくなってしまう。また、楽音合成装置をソフトウェア
によって実現しようとする場合は、演算量の増大を招致
し、このため、リアルタイムな楽音合成に支障を来すと
いう問題があった。特に、このことは、音域の広い管楽
器について、基本的な音高のピッチを犠牲にすることな
く、全音域の楽音を合成しようとする場合、非常に重要
な問題となる。 この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであ
り、基本的な音高のピッチを犠牲にすることなく、広い
音域の楽音を合成することが可能であり、かつ、小規模
な回路構成あるいは少ない演算回数により実現される楽
音合成装置を提供することを目的としている。 「課題を解決するための手段」 上記課題を解決するため、本発明は、共鳴管をシミュ
レートした楽音合成装置であって、双方向に信号を伝送
するとともに所定の遅延時間だけ入力信号を遅延させる
複数の信号処理手段と、前記複数の信号処理手段の中の
2組の信号処理手段間に介挿され、該2組の信号処理手
段の各出力信号に対し所定の演算処理を施し、該演算結
果を該2組の信号処理手段に供給する1個の信号散乱ジ
ャンクションと、音高を表す音高情報に応じて、シミュ
レートする共鳴管の全長に対応した総遅延時間を前記複
数の信号処理手段の各遅延時間に配分するとともに、前
記音高情報に応じて、前記信号散乱ジャンクションにお
ける演算処理を制御する制御手段とを具備し、前記複数
の信号処理手段と前記1個の信号散乱ジャンクションを
接続してなるループ状の信号路に励振信号を入力するこ
とにより楽音信号を合成するようにしたことを特徴とし
ている。 「作用」 上記本発明によれば、複数の信号処理手段とこの複数
の信号処理手段間に1個の信号散乱ジャンクションとを
設け、音高を表す音高情報に応じて、制御手段が、シミ
ュレートする共鳴管の全長に対応した総遅延時間を複数
の信号処理手段の各遅延時間に配分するとともに、音高
情報に応じて、信号散乱ジャンクションにおける演算処
理を制御する。これにより、信号散乱ジャンクションを
1個だけ設けるという簡易な構成で、例えば、自然楽器
の管楽器のトーンホールによる楽音変化を模倣しつつ、
多数の音高の楽音を合成することができる。 「実施例」 以下、図面を参照し、本発明の実施例を説明する。
合成装置に関する。 「従来の技術」 自然楽器の発音メカニズムをシミュレートすることに
より得られたモデルを動作させ、これにより、自然楽器
の楽音を合成する方法が知られている。クラリネット等
の管楽器の最も基本的なモデルとしては、リードの弾性
特性をシミュレートした非線形増幅素子と、共鳴管をシ
ミュレートした双方向伝送回路とを接続した閉ループ構
造のモデルが知られている。このモデルでは、非線形増
幅素子から信号が出力されると、この信号は進行波信号
として双方向伝送回路に入力され、双方向伝送回路の終
端部で反射され、この反射波信号が双方向伝送回路を介
し、非線形増幅素子に帰還される。このように、非線形
増幅素子と双方向伝送回路とからなる閉ループ回路によ
って、管楽器における空気圧力波の伝播が忠実にシミュ
レートされる。また、実際の管楽器には、音高操作用の
孔、いわゆるトーンホールが設けられているが、このト
ーンホールをも含めて管楽器をシミュレートしたモデル
が知られている。このモデルでは、複数の双方向伝送回
路が信号散乱ジャンクション(以下、ジャンクションと
略す)と呼ばれる信号処理回路を介してカスケード接続
される。ここで、ジャンクションは、複数のトーンホー
ルの各々に対応して設けられる。そして、各ジャンクシ
ョンにより、隣接する双方向伝送回路からの各入力信号
に対し係数乗算等の演算処理が行われ、演算結果が隣接
する双方向伝送回路に供給される。この演算処理におけ
る乗算係数等は当該音孔の開閉状態に対応し切り換えら
れ、音孔付近における空気圧力波の散乱がシミュレート
される。この種の技術は、例えば特開昭63−40199号公
報に開示されている。 「発明が解決しようとする課題」 ところで、上述した従来の楽音合成装置は、シミュレ
ートしようとする楽器の各トーンホールに対応してジャ
ンクションを設けるようにしているため、実現しようと
するトーンホール数が多くなると、回路規模が著しく大
きくなってしまう。また、楽音合成装置をソフトウェア
によって実現しようとする場合は、演算量の増大を招致
し、このため、リアルタイムな楽音合成に支障を来すと
いう問題があった。特に、このことは、音域の広い管楽
器について、基本的な音高のピッチを犠牲にすることな
く、全音域の楽音を合成しようとする場合、非常に重要
な問題となる。 この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであ
り、基本的な音高のピッチを犠牲にすることなく、広い
音域の楽音を合成することが可能であり、かつ、小規模
な回路構成あるいは少ない演算回数により実現される楽
音合成装置を提供することを目的としている。 「課題を解決するための手段」 上記課題を解決するため、本発明は、共鳴管をシミュ
レートした楽音合成装置であって、双方向に信号を伝送
するとともに所定の遅延時間だけ入力信号を遅延させる
複数の信号処理手段と、前記複数の信号処理手段の中の
2組の信号処理手段間に介挿され、該2組の信号処理手
段の各出力信号に対し所定の演算処理を施し、該演算結
果を該2組の信号処理手段に供給する1個の信号散乱ジ
ャンクションと、音高を表す音高情報に応じて、シミュ
レートする共鳴管の全長に対応した総遅延時間を前記複
数の信号処理手段の各遅延時間に配分するとともに、前
記音高情報に応じて、前記信号散乱ジャンクションにお
ける演算処理を制御する制御手段とを具備し、前記複数
の信号処理手段と前記1個の信号散乱ジャンクションを
接続してなるループ状の信号路に励振信号を入力するこ
とにより楽音信号を合成するようにしたことを特徴とし
ている。 「作用」 上記本発明によれば、複数の信号処理手段とこの複数
の信号処理手段間に1個の信号散乱ジャンクションとを
設け、音高を表す音高情報に応じて、制御手段が、シミ
ュレートする共鳴管の全長に対応した総遅延時間を複数
の信号処理手段の各遅延時間に配分するとともに、音高
情報に応じて、信号散乱ジャンクションにおける演算処
理を制御する。これにより、信号散乱ジャンクションを
1個だけ設けるという簡易な構成で、例えば、自然楽器
の管楽器のトーンホールによる楽音変化を模倣しつつ、
多数の音高の楽音を合成することができる。 「実施例」 以下、図面を参照し、本発明の実施例を説明する。
【第1実施例】 第1図はこの発明の第1実施例による楽音合成装置の
構成を示すブロック図である。また、第2図はこの楽音
合成装置がシミュレートするクラリネットの物理モデル
の構成図である。 まず、第2図の物理モデルについて説明する。第2図
において、1は管楽器の共鳴管(管部)、2はマウスピ
ース部、2aはリード、THは共鳴管1に形成された1個の
トーンホールを示す。 以下、この物理モデルを参照し、クラリネットの発音
メカニズムを説明する。吹奏者がマウスピース部2をく
わえ、息を吹き込むと、その吹奏圧Pおよび自身の弾性
特性によりリード2に変位が生ずる(矢印2S)。この
結果、リード2aの管内側に空気の圧力波(粗密波)が発
生し、これが進行圧力波Fとなって共鳴管1の終端部1E
に向かって送出される。そして、進行圧力波Fは共鳴管
1内の各所および終端部1Eにおいて反射され、反射圧力
波Rとなってリード2aに戻り、リード2aは反射圧力波R
からの圧力PRを受ける。従って、吹奏中、リード2aが受
ける全圧力PAは、反射圧力波Rの圧力をPRとすると、 PA=P−PR ……(1) となり、結局、リード2aは自身の弾性特性と上記圧力PA
とにより振動する。そして、リード2の振動と共鳴管
1内の圧力波FおよびRの往復運動とが共振状態となる
ことにより楽音が発生される。 この時の共振周波数は、共鳴管1に形成されたトーン
ホールTHの開閉操作により切り換えられる。すなわち、
トーンホールTHの開閉操作が行われると、それに伴って
トーンホールTH近傍における圧力波の流れが変化し、共
鳴管1の実効的な長さが変化することによって共振周波
数の切換がなされる。 以下、共鳴管1のトーンホールTHの近傍点jにおける
空気圧力波の状態について説明する。 <トーンホールTHが開状態の場合> トーンホールTHが開状態の場合、点jの空気圧Pjは、 Pj=a1off P1 ++a2off P2+a3off P3 + ……(2) となる。ここで、P1 +は共鳴管1のリード2a側から点j
に流入する空気圧力波の圧力、P2 +は共鳴管1の終端部1
E側から点jに流入する空気圧力波の圧力、また、P3 +は
トーンホールTHから流入する空気圧力波の圧力を示す。
また、a1off,a2offおよびa3offは、点jに流入する各空
気圧力波の点jの空気圧Pjへの寄与度に相当する係数で
あり、下記式(3)〜(5)で与えられる。 a1off=2φ1 2/(φ1 2+φ2 2+φ3 2) ……(3)2 off=2φ2 2/(φ1 2+φ2 2+φ3 2) ……(4) a3off=2φ3 2/(φ1 2+φ2 2+φ3 2) ……(5) ここで、φ1は共鳴管1のリード2a側の部分の直径、φ
2は共鳴管1の終端部1E側の直径、φ3はトーンホール
THの直径を示す。 一方、第2図において、点jから共鳴管1のリード2
方向に流出する空気圧力波の圧力P1 -、共鳴管1の終
端部1E方向に流出する空気圧力波の圧力P2 -およびトー
ンホールTHへと流出する空気圧力波の圧力をP3 -とする
と、これらは各々 P1 -=Pj−P1 + ……(6) P2 -=Pj−P2 + ……(7) P3 -=Pj−P3 + ……(8) となる。 点jから終端部1E側へと伝播する空気圧力波(圧力P2
-)は、やがて終端部1Eに到達して一部がリード2側
へ反射されるが、クラリネット等のように終端が開いた
管楽器の場合、この反射の際、位相の反転が行われる。
また、トーンホールTHが開状態の場合、j点からトーン
ホールTHの外側に向けて流出された空気圧力波(圧力P3
-)は開口部において反射されるが、この場合も、進行
波は逆相で反射される。 <トーンホールTHが閉状態の場合> この場合、トーンホールTHの直径φ3が0になった状
態と等価であると考えられる。従って、上記式(3)〜
(5)にφ3=0を代入することにより、トーンホール
THが閉状態の場合における各空気圧力波の空気圧Pjへの
寄与度に相当する係数a1on,a2on,a3onが、下記式(9)
〜(11)のように導かれる。 a1on=2φ1 2/(φ1 2+φ2 2) ……(9)2 on=2φ2 2/(φ1 2+φ2 2) ……(10) a3on=0 ……(11) そして、点jの空気圧Pjは、 Pj=a1on P1 ++a2on P2 +a3on P3 + ……(12) となる。 次に第2図の物理モデルに基づいて構成された第1図
の楽音合成装置について説明する。同図において、励振
回路10は第2図におけるマウスピース部2に対応してお
り、共振回路30は共鳴管1に対応している。また、励振
回路10と共振回路30との間に介挿されるジャンクション
20は、マウスピース部2と共鳴管1との接続部における
空気圧力波の散乱をシミュレートしたものである。この
ジャンクション20では、共振回路30からの出力信号と励
振回路10の出力信号が加算器18によって加算されて共振
回路30に入力され、加算器18の出力信号と共振回路30の
出力信号が加算器19によって加算されて励振回路10に入
力されるようになっている。 励振回路10は、減算器11、フィルタ12および13、加算
器14、ROM15、乗算器16、17およびINVとで構成される。
そして、楽音発生時、楽音制御回路100から吹奏圧P、
エンブシュアE(マウスピースを口にくわえる時の圧
力)に相当する情報が与えられる。減算器11には、共振
回路30からジャンクション20を介して入力される信号、
すなわち、第2図における共鳴管1からの反射波Rの空
気圧PRに相当する信号と、吹奏圧Pに相当する信号が入
力される。そして、上記式(1)の演算が行われ、リー
ド2aに加わる空気圧PAに相当する信号が得られる。 減算器11の出力信号はフィルタ12によって帯域制限さ
れる。このフィルタ12は1次のローパスフィルタによっ
て構成されており、励振回路10と共振回路30との間を循
環する信号の振幅が特定周波数において著しく大きくな
らないようにするために介挿されている。そして、フィ
ルタ12の出力信号P1はフィルタ13に入力されると共に、
乗算器INVによって反転されて乗算器16に入力される。
信号P1はフィルタ13を介すことにより、高周波成分が除
去される。これにより、急激な圧力変化を吸収するリー
ド2の応答特性がシミュレートされる。 そして、加算器14によって、フィルタ13の出力信号P2
に対し、エンブシュアEに相当する信号が加算され、実
際にリードに加えられる圧力に相当する信号P3が求めら
れる。そして、この信号P3がROM15にアドレスとして与
えられる。これにより、ROM15内に予め記憶された非線
形関数のテーブルが参照され、リード2とマウスピー
ス部2との間隙の断面積、すなわち、空気流に対するア
ドミッタンスに相当する信号Yが出力される。そして、
信号Yと信号−P1とが乗算器16によって乗算され、リー
ド2aとマウスピース部2との間隙を通過する空気の流速
に相当する信号FLが得られる。 そして、信号FLに対し、乗算器17によって乗算係数G
が乗じられる。ここで、乗算係数Gは共鳴管1における
マウスピース部2の取り付け部付近の管径に応じて決め
られる定数であり、空気流の通りにくさ、すなわち、空
気流に対するインピーダンスに相当するものである。従
って、乗算器17からは、共鳴管1のマウスピース側の入
口において発生する空気の圧力変化に相当する信号が得
られる。そして、この信号がジャンクション20を介し、
共振回路30に入力される。 共振回路30において、遅延回路Dnf,Dmf,D,D
は、各々、第2図は共鳴管1内における空気圧力波の伝
播経路に対応している。さらに詳述すると、リード2
から発された空気圧力波(進行波F)がトーンホールTH
に達するまでの遅延は遅延回路Dnfによってシミュレー
トされ、トーンホールTHを通過した空気圧力波が終端部
1Eに達するまでの遅延は遅延回路Dmfによってシミュレ
ートされ、終端部1Eで反射された空気圧力波がトーンホ
ールTHに到達するまでの遅延は遅延回路Dによって
シミュレートされ、トーンホールTHを通過した空気圧力
波(反射波R)がリード2に帰還されるまでの遅延は
遅延回路Dによってシミュレートされる。 共振回路30の出力信号が終端回路TRMに入力される
と、ローパスフィルタMLによって帯域制限され、さらに
乗算器IVによって負の係数γが乗算されて共振回路30に
戻される。このようにして、終端部1Eにおける音響損失
の周波数特性および反射に伴う位相反転がシミュレート
される。 共振回路30におけるジャンクションJTHは、第2図に
おけるトーンホールTHの近傍点jにおける空気圧力波の
散乱をシミュレートしたものであり、加算器Aj、乗算器
M1,M2,M3,M4、減算器A1,A2,A3、遅延回路DTH1,DTH2、ロ
ーパスフィルタLPFTHとで構成される。加算器Ajには、
遅延回路Dnfの出力信号(第2図の圧力P1 +に対応)に乗
算器M1によって係数1を乗じた信号、遅延回路Dmrの
出力信号(第2図の圧力P2 +に対応)に乗算器M2によっ
て係数2を乗じた信号、および遅延回路DTH2の出力信
号(第2図の圧力P3 +に対応)に乗算器M3によって係数
3を乗じた信号が入力される。また、各係数a1,a2,a3
としては、当該トーンホールTHが開状態の場合は、楽音
制御回路100から上記式(3)〜(5)に従った係数a1o
ff,a2off,a3offが与えられ、当該トーンホールTHが閉状
態の場合は、上記式(9)〜(11)に従った係数1
,2,3が与えられる。 そして、加算器Ajの加算結果、すなわち、点jの空気
圧Pjに相当する信号は、減算器A1、A2およびA3に入力さ
れる。そして、減算器A1では加算器Ajの出力信号から遅
延回路Dfの出力信号(圧力P1 +相当)が減算され、
減算結果(圧力P1 -相当)が遅延回路Dに送られ
る。また、減算器A2では加算器Ajの出力信号から遅延回
路Dmrの出力信号(圧力P2 +相当)が減算され、減算結果
(圧力P2 -相当)が遅延回路Dmrに送られる。さらに、減
算器A3では加算器Ajの出力信号から遅延回路DTH2の出力
信号(圧力P3 +相当)が減算され、減算結果(圧力P3 -相
当)が遅延回路DTH1に送られる。 そして、遅延回路DTH1に入力された信号は所定時間遅
延されてローパスフィルタLPFTHに入力され、トーンホ
ール開口部における音響損失が付与される。そして、ロ
ーパスフィルタLPFTHの出力信号に対し、トーンホールT
H開口部における空気圧力波に対する反射係数thcが乗算
器M4によって乗算される。この反射係数thcは楽音制御
回路100から供給され、当該トーンホールTHが開状態の
場合は−1に、閉状態の場合は1に切り換えられる。そ
して、乗算器M4の乗算結果は遅延回路DTH2によって遅延
されて減算器A3および乗算器M3に入力される。遅延回路
DTH1およびDTH2の遅延時間はトーンホールTHの高さ、す
なわち、空気圧力波がトーンホールTHの筒状部分を往復
するのに要する時間に等しい。このようにして上述した
トーンホールTHの近傍点jにおける空気圧力波の伝播が
シミュレートされる。 さて、実際のクラリネットでは、トーンホールTHは第
2図のように1個ではなく多数設けられている。しかし
ながら、クラリネットのすべてのトーンホール対応し、
ジャンクションJTHを設けると、装置全体の回路規模が
かなり大規模なものとなってしまう。また、楽音合成装
置をソフトウェアにより実現する場合は、計算量が増大
するので演算時間が長くなり、リアルタイムな楽音合成
に支障を来す。そこで、この楽音合成装置では、以下説
明する方式を採ることにより、多数のトーンホールに対
応した信号処理を1個のジャンクションJTHのみで行う
ことを可能とした。 すなわち、この楽音合成装置における遅延回路Df,
D,Df,Dは遅延時間の制御が可能な構成となっ
ており、トーンホールの開閉操作に応じてこれらの遅延
時間の配分が切り換えられるようになっている。なお、
この種の遅延時間の制御可能な遅延回路の具体的回路と
しては、例えば入力信号を所定周期のシフトクロックに
よって駆動されるシフトレジスタに入力し、シフトレジ
スタの各段出力の内、所望の遅延時間に対応したものを
セレクタ等によって選択して出力するといった方式のも
のを用いることができる。 ここで、上述のトーンホールの開閉操作に対応した遅
延時間の配分の制御について詳述する。今、第1図にお
けるトーンホールTHが、共鳴管1に多数設けられたトー
ンホールの内、開状態であり、かつ、最もリード2a寄り
のトーンホールであるものとする。この場合、リード2
から当該トーンホールTHまでの距離に対応した遅延段
数データが楽音制御回路100から遅延回路Dfおよ
びDnrに供給される。また、共鳴管1の全長に対応した
遅延段数がlsの場合、=ls−なる段数データmが遅
延回路DmfおよびDmrに供給される。このようにして、遅
延回路DnfおよびDnr、遅延回路DfおよびDの遅
延時間が設定される。そして、ジャンクションJTHに
は、係数a1off,a2off,3offが供給されると共に反射係
数thcとして−1が供給される。一方、トーンホールを
すべて指でふさいだ場合は、最も終端部1E寄りのトーン
ホール位置に対応し、段数データnおよびmが決められ
る。そして、ジャンクションJTHには、係数a1on,a2on,a
3onが供給されると共に反射係数thcとして1が供給され
る。 ところで、実際のクラリネットでは、共鳴管1の直径
(φ1およびφ2相当)は一定でなく、また、すべての
トーンホールTHの直径φ3が同じに作られているとは限
らない。そこで、この楽音合成装置では、クラリネット
に形成された各トーンホール毎に、当該トーンホールに
おける各直径φ1〜φ3から上記各乗算係数a1off,a2of
f,a3offを演算{上記式(3)〜(5)}すると共に、
最後のトーンホールについては、乗算係数a1on,a2on,a3
onを演算し{上記式(9)〜(11)}、各係数を各トー
ンホールに対応して配列した係数テーブルを例えばROM
等の記憶手段に記憶しておき、楽音発生時は、音高を決
定するトーンホール、すなわち、最もリード2寄りの
開いたトーンホールに対応する係数を楽音制御回路100
が選択し、ジャンクションJTHに係数1,2,3とし
て供給するようにしている。このように、この楽音合成
装置では、1個のジャンクションJTHによって、実際の
クラリネットにおける多数のトーンホールに対応した信
号処理を行うことができる。 勿論、シミュレートしようとするクラリネットの管径
およびトーンホールの形状が一様である場合は、すべて
のトーンホールについて、共通の係数a1off,a2off,a3of
f,a1on,a2on,a3onを供給するようにしてもよい。 以下、この楽音合成装置を電子楽器に搭載した場合を
想定し、その動作を説明する。電子楽器本体に複数装備
されたトーンホール開閉用操作子(例えば鍵盤)がオン
されたとすると、その操作子に対応するトーンホール位
置が楽音制御回路100によって検出され、トーンホール
位置に対応する段数データn,mが発生され、遅延回路Dn
f,Dnr,Df,Dの遅延時間の設定が行われる。また、
同時に、当該トーンホールに対応した係数a1,a2,3,
がジャンクションJTHに供給される。 そして、吹奏圧PおよびエンブシュアEに相当する信
号が励振回路10に供給される。この結果、吹奏圧Pおよ
びエンブシュアEに基づく初期励振信号が励振回路10か
ら出力される。この信号はジャンクション20を介し、共
振回路30に入力される。そして、上述したように共振回
路30内を伝播し、ジャンクション20を介して励振回路10
に帰還される。そして、励振回路10では共振回路30から
帰還した信号と、当該時点における吹奏圧Pおよびエン
ブシュアEに基づき上述した信号処理が行われ、新たな
励振信号がジャンクション20を介し、共振回路30に入力
される。以下同様の動作が行われ、励振回路10と共振回
路30との間で信号の循環が行われ、この循環する信号
(例えば励振回路10の出力信号)が楽音信号として出力
される。 この楽音信号の音高および音色は共振回路30の共振周
波数特性によって決まる。そして、トーンホールTHが開
かれた状態の場合、1次の共振周波数は励振回路10とジ
ャンクションJTHとの間に介挿される遅延回路Dnfおよび
Dnrの遅延時間の和の逆数となる。また、励振回路10に
帰還される信号には、ジャンクションJTHで折り返され
て戻る信号(上述、1次の共振周波数に対応)の他、終
端回路TRMで折り返されて戻る信号の成分も含まれ、ま
た、トーンホールTHの開口端に相当するローパスフィル
タLPFTHまで到達して折り返される成分も含まれる。従
って、実際のクラリネット内部における空気圧力波の散
乱状態が忠実に音色に反映される。
構成を示すブロック図である。また、第2図はこの楽音
合成装置がシミュレートするクラリネットの物理モデル
の構成図である。 まず、第2図の物理モデルについて説明する。第2図
において、1は管楽器の共鳴管(管部)、2はマウスピ
ース部、2aはリード、THは共鳴管1に形成された1個の
トーンホールを示す。 以下、この物理モデルを参照し、クラリネットの発音
メカニズムを説明する。吹奏者がマウスピース部2をく
わえ、息を吹き込むと、その吹奏圧Pおよび自身の弾性
特性によりリード2に変位が生ずる(矢印2S)。この
結果、リード2aの管内側に空気の圧力波(粗密波)が発
生し、これが進行圧力波Fとなって共鳴管1の終端部1E
に向かって送出される。そして、進行圧力波Fは共鳴管
1内の各所および終端部1Eにおいて反射され、反射圧力
波Rとなってリード2aに戻り、リード2aは反射圧力波R
からの圧力PRを受ける。従って、吹奏中、リード2aが受
ける全圧力PAは、反射圧力波Rの圧力をPRとすると、 PA=P−PR ……(1) となり、結局、リード2aは自身の弾性特性と上記圧力PA
とにより振動する。そして、リード2の振動と共鳴管
1内の圧力波FおよびRの往復運動とが共振状態となる
ことにより楽音が発生される。 この時の共振周波数は、共鳴管1に形成されたトーン
ホールTHの開閉操作により切り換えられる。すなわち、
トーンホールTHの開閉操作が行われると、それに伴って
トーンホールTH近傍における圧力波の流れが変化し、共
鳴管1の実効的な長さが変化することによって共振周波
数の切換がなされる。 以下、共鳴管1のトーンホールTHの近傍点jにおける
空気圧力波の状態について説明する。 <トーンホールTHが開状態の場合> トーンホールTHが開状態の場合、点jの空気圧Pjは、 Pj=a1off P1 ++a2off P2+a3off P3 + ……(2) となる。ここで、P1 +は共鳴管1のリード2a側から点j
に流入する空気圧力波の圧力、P2 +は共鳴管1の終端部1
E側から点jに流入する空気圧力波の圧力、また、P3 +は
トーンホールTHから流入する空気圧力波の圧力を示す。
また、a1off,a2offおよびa3offは、点jに流入する各空
気圧力波の点jの空気圧Pjへの寄与度に相当する係数で
あり、下記式(3)〜(5)で与えられる。 a1off=2φ1 2/(φ1 2+φ2 2+φ3 2) ……(3)2 off=2φ2 2/(φ1 2+φ2 2+φ3 2) ……(4) a3off=2φ3 2/(φ1 2+φ2 2+φ3 2) ……(5) ここで、φ1は共鳴管1のリード2a側の部分の直径、φ
2は共鳴管1の終端部1E側の直径、φ3はトーンホール
THの直径を示す。 一方、第2図において、点jから共鳴管1のリード2
方向に流出する空気圧力波の圧力P1 -、共鳴管1の終
端部1E方向に流出する空気圧力波の圧力P2 -およびトー
ンホールTHへと流出する空気圧力波の圧力をP3 -とする
と、これらは各々 P1 -=Pj−P1 + ……(6) P2 -=Pj−P2 + ……(7) P3 -=Pj−P3 + ……(8) となる。 点jから終端部1E側へと伝播する空気圧力波(圧力P2
-)は、やがて終端部1Eに到達して一部がリード2側
へ反射されるが、クラリネット等のように終端が開いた
管楽器の場合、この反射の際、位相の反転が行われる。
また、トーンホールTHが開状態の場合、j点からトーン
ホールTHの外側に向けて流出された空気圧力波(圧力P3
-)は開口部において反射されるが、この場合も、進行
波は逆相で反射される。 <トーンホールTHが閉状態の場合> この場合、トーンホールTHの直径φ3が0になった状
態と等価であると考えられる。従って、上記式(3)〜
(5)にφ3=0を代入することにより、トーンホール
THが閉状態の場合における各空気圧力波の空気圧Pjへの
寄与度に相当する係数a1on,a2on,a3onが、下記式(9)
〜(11)のように導かれる。 a1on=2φ1 2/(φ1 2+φ2 2) ……(9)2 on=2φ2 2/(φ1 2+φ2 2) ……(10) a3on=0 ……(11) そして、点jの空気圧Pjは、 Pj=a1on P1 ++a2on P2 +a3on P3 + ……(12) となる。 次に第2図の物理モデルに基づいて構成された第1図
の楽音合成装置について説明する。同図において、励振
回路10は第2図におけるマウスピース部2に対応してお
り、共振回路30は共鳴管1に対応している。また、励振
回路10と共振回路30との間に介挿されるジャンクション
20は、マウスピース部2と共鳴管1との接続部における
空気圧力波の散乱をシミュレートしたものである。この
ジャンクション20では、共振回路30からの出力信号と励
振回路10の出力信号が加算器18によって加算されて共振
回路30に入力され、加算器18の出力信号と共振回路30の
出力信号が加算器19によって加算されて励振回路10に入
力されるようになっている。 励振回路10は、減算器11、フィルタ12および13、加算
器14、ROM15、乗算器16、17およびINVとで構成される。
そして、楽音発生時、楽音制御回路100から吹奏圧P、
エンブシュアE(マウスピースを口にくわえる時の圧
力)に相当する情報が与えられる。減算器11には、共振
回路30からジャンクション20を介して入力される信号、
すなわち、第2図における共鳴管1からの反射波Rの空
気圧PRに相当する信号と、吹奏圧Pに相当する信号が入
力される。そして、上記式(1)の演算が行われ、リー
ド2aに加わる空気圧PAに相当する信号が得られる。 減算器11の出力信号はフィルタ12によって帯域制限さ
れる。このフィルタ12は1次のローパスフィルタによっ
て構成されており、励振回路10と共振回路30との間を循
環する信号の振幅が特定周波数において著しく大きくな
らないようにするために介挿されている。そして、フィ
ルタ12の出力信号P1はフィルタ13に入力されると共に、
乗算器INVによって反転されて乗算器16に入力される。
信号P1はフィルタ13を介すことにより、高周波成分が除
去される。これにより、急激な圧力変化を吸収するリー
ド2の応答特性がシミュレートされる。 そして、加算器14によって、フィルタ13の出力信号P2
に対し、エンブシュアEに相当する信号が加算され、実
際にリードに加えられる圧力に相当する信号P3が求めら
れる。そして、この信号P3がROM15にアドレスとして与
えられる。これにより、ROM15内に予め記憶された非線
形関数のテーブルが参照され、リード2とマウスピー
ス部2との間隙の断面積、すなわち、空気流に対するア
ドミッタンスに相当する信号Yが出力される。そして、
信号Yと信号−P1とが乗算器16によって乗算され、リー
ド2aとマウスピース部2との間隙を通過する空気の流速
に相当する信号FLが得られる。 そして、信号FLに対し、乗算器17によって乗算係数G
が乗じられる。ここで、乗算係数Gは共鳴管1における
マウスピース部2の取り付け部付近の管径に応じて決め
られる定数であり、空気流の通りにくさ、すなわち、空
気流に対するインピーダンスに相当するものである。従
って、乗算器17からは、共鳴管1のマウスピース側の入
口において発生する空気の圧力変化に相当する信号が得
られる。そして、この信号がジャンクション20を介し、
共振回路30に入力される。 共振回路30において、遅延回路Dnf,Dmf,D,D
は、各々、第2図は共鳴管1内における空気圧力波の伝
播経路に対応している。さらに詳述すると、リード2
から発された空気圧力波(進行波F)がトーンホールTH
に達するまでの遅延は遅延回路Dnfによってシミュレー
トされ、トーンホールTHを通過した空気圧力波が終端部
1Eに達するまでの遅延は遅延回路Dmfによってシミュレ
ートされ、終端部1Eで反射された空気圧力波がトーンホ
ールTHに到達するまでの遅延は遅延回路Dによって
シミュレートされ、トーンホールTHを通過した空気圧力
波(反射波R)がリード2に帰還されるまでの遅延は
遅延回路Dによってシミュレートされる。 共振回路30の出力信号が終端回路TRMに入力される
と、ローパスフィルタMLによって帯域制限され、さらに
乗算器IVによって負の係数γが乗算されて共振回路30に
戻される。このようにして、終端部1Eにおける音響損失
の周波数特性および反射に伴う位相反転がシミュレート
される。 共振回路30におけるジャンクションJTHは、第2図に
おけるトーンホールTHの近傍点jにおける空気圧力波の
散乱をシミュレートしたものであり、加算器Aj、乗算器
M1,M2,M3,M4、減算器A1,A2,A3、遅延回路DTH1,DTH2、ロ
ーパスフィルタLPFTHとで構成される。加算器Ajには、
遅延回路Dnfの出力信号(第2図の圧力P1 +に対応)に乗
算器M1によって係数1を乗じた信号、遅延回路Dmrの
出力信号(第2図の圧力P2 +に対応)に乗算器M2によっ
て係数2を乗じた信号、および遅延回路DTH2の出力信
号(第2図の圧力P3 +に対応)に乗算器M3によって係数
3を乗じた信号が入力される。また、各係数a1,a2,a3
としては、当該トーンホールTHが開状態の場合は、楽音
制御回路100から上記式(3)〜(5)に従った係数a1o
ff,a2off,a3offが与えられ、当該トーンホールTHが閉状
態の場合は、上記式(9)〜(11)に従った係数1
,2,3が与えられる。 そして、加算器Ajの加算結果、すなわち、点jの空気
圧Pjに相当する信号は、減算器A1、A2およびA3に入力さ
れる。そして、減算器A1では加算器Ajの出力信号から遅
延回路Dfの出力信号(圧力P1 +相当)が減算され、
減算結果(圧力P1 -相当)が遅延回路Dに送られ
る。また、減算器A2では加算器Ajの出力信号から遅延回
路Dmrの出力信号(圧力P2 +相当)が減算され、減算結果
(圧力P2 -相当)が遅延回路Dmrに送られる。さらに、減
算器A3では加算器Ajの出力信号から遅延回路DTH2の出力
信号(圧力P3 +相当)が減算され、減算結果(圧力P3 -相
当)が遅延回路DTH1に送られる。 そして、遅延回路DTH1に入力された信号は所定時間遅
延されてローパスフィルタLPFTHに入力され、トーンホ
ール開口部における音響損失が付与される。そして、ロ
ーパスフィルタLPFTHの出力信号に対し、トーンホールT
H開口部における空気圧力波に対する反射係数thcが乗算
器M4によって乗算される。この反射係数thcは楽音制御
回路100から供給され、当該トーンホールTHが開状態の
場合は−1に、閉状態の場合は1に切り換えられる。そ
して、乗算器M4の乗算結果は遅延回路DTH2によって遅延
されて減算器A3および乗算器M3に入力される。遅延回路
DTH1およびDTH2の遅延時間はトーンホールTHの高さ、す
なわち、空気圧力波がトーンホールTHの筒状部分を往復
するのに要する時間に等しい。このようにして上述した
トーンホールTHの近傍点jにおける空気圧力波の伝播が
シミュレートされる。 さて、実際のクラリネットでは、トーンホールTHは第
2図のように1個ではなく多数設けられている。しかし
ながら、クラリネットのすべてのトーンホール対応し、
ジャンクションJTHを設けると、装置全体の回路規模が
かなり大規模なものとなってしまう。また、楽音合成装
置をソフトウェアにより実現する場合は、計算量が増大
するので演算時間が長くなり、リアルタイムな楽音合成
に支障を来す。そこで、この楽音合成装置では、以下説
明する方式を採ることにより、多数のトーンホールに対
応した信号処理を1個のジャンクションJTHのみで行う
ことを可能とした。 すなわち、この楽音合成装置における遅延回路Df,
D,Df,Dは遅延時間の制御が可能な構成となっ
ており、トーンホールの開閉操作に応じてこれらの遅延
時間の配分が切り換えられるようになっている。なお、
この種の遅延時間の制御可能な遅延回路の具体的回路と
しては、例えば入力信号を所定周期のシフトクロックに
よって駆動されるシフトレジスタに入力し、シフトレジ
スタの各段出力の内、所望の遅延時間に対応したものを
セレクタ等によって選択して出力するといった方式のも
のを用いることができる。 ここで、上述のトーンホールの開閉操作に対応した遅
延時間の配分の制御について詳述する。今、第1図にお
けるトーンホールTHが、共鳴管1に多数設けられたトー
ンホールの内、開状態であり、かつ、最もリード2a寄り
のトーンホールであるものとする。この場合、リード2
から当該トーンホールTHまでの距離に対応した遅延段
数データが楽音制御回路100から遅延回路Dfおよ
びDnrに供給される。また、共鳴管1の全長に対応した
遅延段数がlsの場合、=ls−なる段数データmが遅
延回路DmfおよびDmrに供給される。このようにして、遅
延回路DnfおよびDnr、遅延回路DfおよびDの遅
延時間が設定される。そして、ジャンクションJTHに
は、係数a1off,a2off,3offが供給されると共に反射係
数thcとして−1が供給される。一方、トーンホールを
すべて指でふさいだ場合は、最も終端部1E寄りのトーン
ホール位置に対応し、段数データnおよびmが決められ
る。そして、ジャンクションJTHには、係数a1on,a2on,a
3onが供給されると共に反射係数thcとして1が供給され
る。 ところで、実際のクラリネットでは、共鳴管1の直径
(φ1およびφ2相当)は一定でなく、また、すべての
トーンホールTHの直径φ3が同じに作られているとは限
らない。そこで、この楽音合成装置では、クラリネット
に形成された各トーンホール毎に、当該トーンホールに
おける各直径φ1〜φ3から上記各乗算係数a1off,a2of
f,a3offを演算{上記式(3)〜(5)}すると共に、
最後のトーンホールについては、乗算係数a1on,a2on,a3
onを演算し{上記式(9)〜(11)}、各係数を各トー
ンホールに対応して配列した係数テーブルを例えばROM
等の記憶手段に記憶しておき、楽音発生時は、音高を決
定するトーンホール、すなわち、最もリード2寄りの
開いたトーンホールに対応する係数を楽音制御回路100
が選択し、ジャンクションJTHに係数1,2,3とし
て供給するようにしている。このように、この楽音合成
装置では、1個のジャンクションJTHによって、実際の
クラリネットにおける多数のトーンホールに対応した信
号処理を行うことができる。 勿論、シミュレートしようとするクラリネットの管径
およびトーンホールの形状が一様である場合は、すべて
のトーンホールについて、共通の係数a1off,a2off,a3of
f,a1on,a2on,a3onを供給するようにしてもよい。 以下、この楽音合成装置を電子楽器に搭載した場合を
想定し、その動作を説明する。電子楽器本体に複数装備
されたトーンホール開閉用操作子(例えば鍵盤)がオン
されたとすると、その操作子に対応するトーンホール位
置が楽音制御回路100によって検出され、トーンホール
位置に対応する段数データn,mが発生され、遅延回路Dn
f,Dnr,Df,Dの遅延時間の設定が行われる。また、
同時に、当該トーンホールに対応した係数a1,a2,3,
がジャンクションJTHに供給される。 そして、吹奏圧PおよびエンブシュアEに相当する信
号が励振回路10に供給される。この結果、吹奏圧Pおよ
びエンブシュアEに基づく初期励振信号が励振回路10か
ら出力される。この信号はジャンクション20を介し、共
振回路30に入力される。そして、上述したように共振回
路30内を伝播し、ジャンクション20を介して励振回路10
に帰還される。そして、励振回路10では共振回路30から
帰還した信号と、当該時点における吹奏圧Pおよびエン
ブシュアEに基づき上述した信号処理が行われ、新たな
励振信号がジャンクション20を介し、共振回路30に入力
される。以下同様の動作が行われ、励振回路10と共振回
路30との間で信号の循環が行われ、この循環する信号
(例えば励振回路10の出力信号)が楽音信号として出力
される。 この楽音信号の音高および音色は共振回路30の共振周
波数特性によって決まる。そして、トーンホールTHが開
かれた状態の場合、1次の共振周波数は励振回路10とジ
ャンクションJTHとの間に介挿される遅延回路Dnfおよび
Dnrの遅延時間の和の逆数となる。また、励振回路10に
帰還される信号には、ジャンクションJTHで折り返され
て戻る信号(上述、1次の共振周波数に対応)の他、終
端回路TRMで折り返されて戻る信号の成分も含まれ、ま
た、トーンホールTHの開口端に相当するローパスフィル
タLPFTHまで到達して折り返される成分も含まれる。従
って、実際のクラリネット内部における空気圧力波の散
乱状態が忠実に音色に反映される。
【第2実施例】 管楽器の共鳴管は多峰性の伝送量周波数特性を有す
る。そして、その場合における最も低い共振周波数、す
なわち、1次周波数はトーンホールの開閉操作によって
制御される。しかし、吹奏においては、トーンホールの
開閉状態を変えないで、吹奏圧の調整等の操作により、
例えば1次周波数の3倍,5倍といった高次の周波数の楽
音を発生することが行われる。 第3図にその構成を示す本発明の第2実施例による楽
音合成装置は、上述したような高次の共振周波数による
楽音発生を促進する手段を備えている。第4図は第3図
の楽音合成装置に対応するクラリネットの物理モデルを
示したものである。本物理モデルは、共鳴管1における
高次の共振周波数での共振を促進するためのレジスタチ
ューブRTCを設けた点が前述の第2図のモデルと異な
る。実在の管楽器の中にも、1オクターブ以上の音高切
換を容易にするために、レジスタチューブRTCに相当す
る孔(オクターブキーと呼ばれる)を備えた管楽器も存
在する。なお、第3図および第4図において、第1図お
よび第2図と対応する部分には同一の符号が付してあ
る。 レジスタチューブRTCは、トーンホールTHと同様、共
鳴管1に開口する孔である。第4図に示すように、レジ
スタチューブRTCの近傍点kでは、空気圧力波の散乱が
発生する。Q1 +,Q2 +,Q3 +は近傍点kに流入する空気圧力
波の圧力、Q1 -,Q2 -,Q3 -は近傍点kから流出する空気圧
力波の圧力である。第3図におけるジャンクションJRTC
はレジスタチューブRTCの空気圧力波の散乱を演算する
ために設けたものである。ここで、各乗算係数b1,b2,b3
は、レジスタチューブRTCに対応した各径φ1,φ2
,φ3に基づいて決められる。また、LPFRTCはレジ
スタチューブRTC開放時の音響損失を与えるローパスフ
ィルタ、DRTC1およびDRTC2はレジスタチューブRTCの高
さに応じた遅延時間を有する遅延回路である。また、反
射係数rtcはレジスタチューブRTCの開閉に対応し切り換
えられる。なお、ジャンクションJRTCの構成は、ジャン
クションJTHと全く同じであり、以上説明したように演
算に用いられる各係数に相異があるだけである。従っ
て、ジャンクションJRTCに関する詳細な構成の説明は省
略する。 第3図において、リード2aとレジスタチューブRTCと
の間の遅延は、遅延回路DjfおよびDjによってシミュ
レートされており、レジスタチューブRTCとトーンホー
ルTHとの間の遅延が遅延回路DkfおよびDkによってシ
ミュレートされている。すなわち、第1図における遅延
回路DnfおよびDは、第2図の構成では、遅延回路D
jfおよびDjfと、遅延回路DkfおよびDkfに分解されてい
る。 以上説明した第3図の構成の楽音合成装置を試作し、
各遅延回路の遅延時間、各種乗算係数等のパラメータを
色々変化させ、楽音波形の評価を行った。以下、今回の
評価において試作品に適用した各パラメータを列挙し説
明する。 <設計パラメータ一覧> [フィルタ類] ◇トーンホールTH用ローパスフィルタLPFTHのカットオ
フ周波数fcTH=2500[Hz] ◇レジスタチューブRTC用ローパスフィルタLPFRTCのカ
ットオフ周波数 fcRTC=7000[Hz] ◇終端部1E用ローパスフィルタMLのカットオフ周波数fc
ML=2000[Hz] ◇フィルタ13(ローパスフィルタ)のカットオフ周波数
fcdcf=1500[Hz] [遅延回路の段数(シフトレジスタ段数)] ◇遅延回路Djf,DkfおよびDmf(遅延回路Djr,Dkおよび
D)の総遅延段数(共鳴管1の全長に対応)ls=82 ◇遅延回路DTH1およびDTH2の各々の遅延段数(トーンホ
ールTHの高さに対応)lTH=1 ◇遅延回路DRTC1およびDRTC2の各々の遅延段数(レジス
タチューブRTCの高さに対応)lRTC=1 [トーンホールTH関連の各パラメータ] φ1=24[] φ2=24[mm] φ3は8〜48[mm]の範囲で可変 これら各径の値に基づいて上記乗算係数a1off,2of
f,3offを演算し、ジャンクションJTHに設定した。 また、乗算器M4の乗算係数(反射係数)thcは−1
(トーンホールTHが開放した状態に対応)とした。 [レジスタチューブRTC関連の各パラメータ] φ1b=19[] φ2b=19[mm] φ3b=3[] これらの各径の値に基づいて上記乗算係数b1off,2o
ff,3off,1o,2o,3oを演算し、ジャンク
ションJRTCに設定した。 また、反射係数rtcは、1(レジスタチューブRTC閉状
態)および−0.9(レジスタチューブRTC開状態)に2条
件に切り換えた。 [その他のパラメータ] ◇反転回路IVの乗算係数(終端部1Eの反射係数)=−
0.9 ◇乗算器17の乗算係数(共鳴管1の空気流に対するイン
ピーダンス)G=0.3 そして、レジスタチューブRTCの開閉操作に対応した
係数rtc、遅延回路Djf(Djf)の遅延段数(リード2aか
らレジスタチューブRTCまでの距離に対応)1、遅延
回路DjfおよびDkf(DjfおよびDkr)の遅延段数(リード
2aからトーンホールTHまでの距離に対応)n、およびト
ーンホールTHの直径φ3を下記表−1に示すように各種
切り換えて楽音合成を試行した。 今回の試行では、表−1に示すように、遅延段数1
を遅延段数の1/4に設定すると共に、遅延段数nが大
きくなるに従ってトーンホールTHの直径φ3を小さくし
た。なお、rtc=−0.9でn=20の場合に限り、ローパス
フィルタLPFTHのカットオフ周波数fcTH=4000[Hz]、
フィルタ13のカットオフ周波数fcdcf=4000[Hz]とし
た。この結果、共振回路30aにおいて第5図()〜
()に示す共振波形が得られた。第5図()〜
(d)はrtc=1、すなわち、レジスタチューブRTCを閉
じた場合の発振波形である。これらの波形を見ると、リ
ード2からトーンホールTHまでの距離に対応した遅延
段数nが20,40,60,80と大きくなるに従い、発振周期T
がT,2Ta,3Ta,4Taと長くなることが分かる。また、第
5図(e)〜(h)はrtc=−0.9、すなわち、レジスタ
チューブRTCが開いた場合も同様に、遅延段数nが大き
くなるに従い、発振周期が長くなる。また、遅延段数
が同じ条件で第5図(a)〜(d)と第5図(e)〜
(h)とを比較して見ると、例えば第5図(e)の波形
の周期Tは第5図()の波形の周期Taの1/3である
(n=20の場合)。また、他の遅延段数=40,60,80の
場合を比較して見ると、n=20の場合と同様、レジスタ
チューブRTCを開放することによって、開放しない場合
の約1/3の発振周期が得られることが分かる。このよう
にして、この楽音合成装置において、3オクダーブ半の
音域の楽音合成が可能であることが確認された。 なお、上述した実施例では、進行波の遅延時間と反射
波の遅延時間を等しくした場合について説明したが、励
振回路10から出力された信号が、ジャンクションJRTCあ
るいはJTH、あるいは終端回路TRMを介して励振回路10に
帰還されるまでの時間の総和が一定であるならば、進行
波に対する遅延時間と反射波に対する遅延時間との配分
を不均衡にしても構わない。 「発明の効果」 以上説明したように、本発明によれば、素子数あるい
は演算回数を増やすことなく、各音高間のピッチが正確
であり、かつ、多くの種類の音高の楽音を合成すること
が可能な楽音合成装置を実現することができるという効
果が得られる。
る。そして、その場合における最も低い共振周波数、す
なわち、1次周波数はトーンホールの開閉操作によって
制御される。しかし、吹奏においては、トーンホールの
開閉状態を変えないで、吹奏圧の調整等の操作により、
例えば1次周波数の3倍,5倍といった高次の周波数の楽
音を発生することが行われる。 第3図にその構成を示す本発明の第2実施例による楽
音合成装置は、上述したような高次の共振周波数による
楽音発生を促進する手段を備えている。第4図は第3図
の楽音合成装置に対応するクラリネットの物理モデルを
示したものである。本物理モデルは、共鳴管1における
高次の共振周波数での共振を促進するためのレジスタチ
ューブRTCを設けた点が前述の第2図のモデルと異な
る。実在の管楽器の中にも、1オクターブ以上の音高切
換を容易にするために、レジスタチューブRTCに相当す
る孔(オクターブキーと呼ばれる)を備えた管楽器も存
在する。なお、第3図および第4図において、第1図お
よび第2図と対応する部分には同一の符号が付してあ
る。 レジスタチューブRTCは、トーンホールTHと同様、共
鳴管1に開口する孔である。第4図に示すように、レジ
スタチューブRTCの近傍点kでは、空気圧力波の散乱が
発生する。Q1 +,Q2 +,Q3 +は近傍点kに流入する空気圧力
波の圧力、Q1 -,Q2 -,Q3 -は近傍点kから流出する空気圧
力波の圧力である。第3図におけるジャンクションJRTC
はレジスタチューブRTCの空気圧力波の散乱を演算する
ために設けたものである。ここで、各乗算係数b1,b2,b3
は、レジスタチューブRTCに対応した各径φ1,φ2
,φ3に基づいて決められる。また、LPFRTCはレジ
スタチューブRTC開放時の音響損失を与えるローパスフ
ィルタ、DRTC1およびDRTC2はレジスタチューブRTCの高
さに応じた遅延時間を有する遅延回路である。また、反
射係数rtcはレジスタチューブRTCの開閉に対応し切り換
えられる。なお、ジャンクションJRTCの構成は、ジャン
クションJTHと全く同じであり、以上説明したように演
算に用いられる各係数に相異があるだけである。従っ
て、ジャンクションJRTCに関する詳細な構成の説明は省
略する。 第3図において、リード2aとレジスタチューブRTCと
の間の遅延は、遅延回路DjfおよびDjによってシミュ
レートされており、レジスタチューブRTCとトーンホー
ルTHとの間の遅延が遅延回路DkfおよびDkによってシ
ミュレートされている。すなわち、第1図における遅延
回路DnfおよびDは、第2図の構成では、遅延回路D
jfおよびDjfと、遅延回路DkfおよびDkfに分解されてい
る。 以上説明した第3図の構成の楽音合成装置を試作し、
各遅延回路の遅延時間、各種乗算係数等のパラメータを
色々変化させ、楽音波形の評価を行った。以下、今回の
評価において試作品に適用した各パラメータを列挙し説
明する。 <設計パラメータ一覧> [フィルタ類] ◇トーンホールTH用ローパスフィルタLPFTHのカットオ
フ周波数fcTH=2500[Hz] ◇レジスタチューブRTC用ローパスフィルタLPFRTCのカ
ットオフ周波数 fcRTC=7000[Hz] ◇終端部1E用ローパスフィルタMLのカットオフ周波数fc
ML=2000[Hz] ◇フィルタ13(ローパスフィルタ)のカットオフ周波数
fcdcf=1500[Hz] [遅延回路の段数(シフトレジスタ段数)] ◇遅延回路Djf,DkfおよびDmf(遅延回路Djr,Dkおよび
D)の総遅延段数(共鳴管1の全長に対応)ls=82 ◇遅延回路DTH1およびDTH2の各々の遅延段数(トーンホ
ールTHの高さに対応)lTH=1 ◇遅延回路DRTC1およびDRTC2の各々の遅延段数(レジス
タチューブRTCの高さに対応)lRTC=1 [トーンホールTH関連の各パラメータ] φ1=24[] φ2=24[mm] φ3は8〜48[mm]の範囲で可変 これら各径の値に基づいて上記乗算係数a1off,2of
f,3offを演算し、ジャンクションJTHに設定した。 また、乗算器M4の乗算係数(反射係数)thcは−1
(トーンホールTHが開放した状態に対応)とした。 [レジスタチューブRTC関連の各パラメータ] φ1b=19[] φ2b=19[mm] φ3b=3[] これらの各径の値に基づいて上記乗算係数b1off,2o
ff,3off,1o,2o,3oを演算し、ジャンク
ションJRTCに設定した。 また、反射係数rtcは、1(レジスタチューブRTC閉状
態)および−0.9(レジスタチューブRTC開状態)に2条
件に切り換えた。 [その他のパラメータ] ◇反転回路IVの乗算係数(終端部1Eの反射係数)=−
0.9 ◇乗算器17の乗算係数(共鳴管1の空気流に対するイン
ピーダンス)G=0.3 そして、レジスタチューブRTCの開閉操作に対応した
係数rtc、遅延回路Djf(Djf)の遅延段数(リード2aか
らレジスタチューブRTCまでの距離に対応)1、遅延
回路DjfおよびDkf(DjfおよびDkr)の遅延段数(リード
2aからトーンホールTHまでの距離に対応)n、およびト
ーンホールTHの直径φ3を下記表−1に示すように各種
切り換えて楽音合成を試行した。 今回の試行では、表−1に示すように、遅延段数1
を遅延段数の1/4に設定すると共に、遅延段数nが大
きくなるに従ってトーンホールTHの直径φ3を小さくし
た。なお、rtc=−0.9でn=20の場合に限り、ローパス
フィルタLPFTHのカットオフ周波数fcTH=4000[Hz]、
フィルタ13のカットオフ周波数fcdcf=4000[Hz]とし
た。この結果、共振回路30aにおいて第5図()〜
()に示す共振波形が得られた。第5図()〜
(d)はrtc=1、すなわち、レジスタチューブRTCを閉
じた場合の発振波形である。これらの波形を見ると、リ
ード2からトーンホールTHまでの距離に対応した遅延
段数nが20,40,60,80と大きくなるに従い、発振周期T
がT,2Ta,3Ta,4Taと長くなることが分かる。また、第
5図(e)〜(h)はrtc=−0.9、すなわち、レジスタ
チューブRTCが開いた場合も同様に、遅延段数nが大き
くなるに従い、発振周期が長くなる。また、遅延段数
が同じ条件で第5図(a)〜(d)と第5図(e)〜
(h)とを比較して見ると、例えば第5図(e)の波形
の周期Tは第5図()の波形の周期Taの1/3である
(n=20の場合)。また、他の遅延段数=40,60,80の
場合を比較して見ると、n=20の場合と同様、レジスタ
チューブRTCを開放することによって、開放しない場合
の約1/3の発振周期が得られることが分かる。このよう
にして、この楽音合成装置において、3オクダーブ半の
音域の楽音合成が可能であることが確認された。 なお、上述した実施例では、進行波の遅延時間と反射
波の遅延時間を等しくした場合について説明したが、励
振回路10から出力された信号が、ジャンクションJRTCあ
るいはJTH、あるいは終端回路TRMを介して励振回路10に
帰還されるまでの時間の総和が一定であるならば、進行
波に対する遅延時間と反射波に対する遅延時間との配分
を不均衡にしても構わない。 「発明の効果」 以上説明したように、本発明によれば、素子数あるい
は演算回数を増やすことなく、各音高間のピッチが正確
であり、かつ、多くの種類の音高の楽音を合成すること
が可能な楽音合成装置を実現することができるという効
果が得られる。
第1図はこの発明の第1実施例による楽音合成装置の構
成を示すブロック図、第2図は同実施例がシミュレート
するクラリネットの基本的な物理モデルを示す図、第3
図はこの発明の第2実施例による楽音合成装置の構成を
示すブロック図、第4図は同実施例に対応したレジスタ
チューブを有する物理モデルを示す図、第5図は同実施
例の動作を示す波形図である。 JTH……トーンホール用ジャンクション、JRTC……レジ
スタチューブ用ジャンクション、Dnf,Dmf,Dmr,Nnr,Dif,
Dkf,Dkr,Djr……遅延回路、100……楽音制御回路。
成を示すブロック図、第2図は同実施例がシミュレート
するクラリネットの基本的な物理モデルを示す図、第3
図はこの発明の第2実施例による楽音合成装置の構成を
示すブロック図、第4図は同実施例に対応したレジスタ
チューブを有する物理モデルを示す図、第5図は同実施
例の動作を示す波形図である。 JTH……トーンホール用ジャンクション、JRTC……レジ
スタチューブ用ジャンクション、Dnf,Dmf,Dmr,Nnr,Dif,
Dkf,Dkr,Djr……遅延回路、100……楽音制御回路。
Claims (1)
- 【請求項1】共鳴管をシミュレートした楽音合成装置で
あって、 双方向に信号を伝送するとともに所定の遅延時間だけ入
力信号を遅延させる複数の信号処理手段と、 前記複数の信号処理手段の中の2組の信号処理手段間に
介挿され、該2組の信号処理手段の各出力信号に対し所
定の演算処理を施し、該演算結果を該2組の信号処理手
段に供給する1個の信号散乱ジャンクションと、 音高を表す音高情報に応じて、シミュレートする共鳴管
の全長に対応した総遅延時間を前記複数の信号処理手段
の各遅延時間に配分するとともに、前記音高情報に応じ
て、前記信号散乱ジャンクションにおける演算処理を制
御する制御手段と を具備し、 前記複数の信号処理手段と前記1個の信号散乱ジャンク
ションを接続してなるループ状の信号路に励振信号を入
力することにより楽音信号を合成するようにしたことを
特徴とする楽音合成装置。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1202633A JP2977208B2 (ja) | 1989-08-04 | 1989-08-04 | 楽音合成装置 |
US07/562,102 US5187313A (en) | 1989-08-04 | 1990-08-02 | Musical tone synthesizing apparatus |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1202633A JP2977208B2 (ja) | 1989-08-04 | 1989-08-04 | 楽音合成装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0365999A JPH0365999A (ja) | 1991-03-20 |
JP2977208B2 true JP2977208B2 (ja) | 1999-11-15 |
Family
ID=16460578
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1202633A Expired - Lifetime JP2977208B2 (ja) | 1989-08-04 | 1989-08-04 | 楽音合成装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2977208B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2812222B2 (ja) * | 1994-10-31 | 1998-10-22 | ヤマハ株式会社 | 電子楽器および音源手段の置き換え方法 |
JP6520268B2 (ja) * | 2015-03-20 | 2019-05-29 | カシオ計算機株式会社 | 楽音合成装置、方法、およびプログラム、電子楽器 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5230417A (en) * | 1975-09-03 | 1977-03-08 | Kawai Musical Instr Mfg Co Ltd | Device for combining musical sound waves of electronic musical instrum ent |
DE3752231T2 (de) * | 1986-05-02 | 1999-03-25 | The Board Of Trustees Of The Leland Stanford Junior University, Palo Alto, Calif. | Tonerzeugungssystem |
-
1989
- 1989-08-04 JP JP1202633A patent/JP2977208B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0365999A (ja) | 1991-03-20 |
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