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JP2896580B2 - アミロース―リゾチームハイブリッドと活性化糖およびその製造法 - Google Patents

アミロース―リゾチームハイブリッドと活性化糖およびその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は還元末端を有しカルボキシル基を含まない糖
をペプチドを介してリゾチームと結合してなるハイブリ
ッドとその合成法に関し、その目的はリゾチームの安定
性を増加させることである。又、糖−リゾチームハイブ
リッドを合成するのに必要な還元末端を有し、カルボキ
シル基を含まない糖とペプチドを介してN−ヒドロキシ
スクシンイミドを結合している活性化糖を提供するもの
である。
これら糖−リゾチームハイブリッド、活性化糖および
その製造法に関するものである。
[従来の技術] 蛋白質は20種のアミノ酸の結合による1次構造とそれ
によって規定される立体構造から成っている。蛋白質の
機能が種々あることはすでに知られていることであり、
生体内に於て安定な蛋白質も、生体外で利用すると不安
定となる。
蛋白質のすぐれた機能を種々の用途に応用しようとす
る場合、次の様な欠点が蛋白質にはある。すなわち、
熱、アルカリ、酸に不安定で変成しやすい、有機溶媒
に不溶で活性を失いやすい、抗原性がある、などであ
る。
これらの欠点を解決するために、蛋白質を化学修飾す
ることがおこなわれてきた。蛋白質を化学修飾して蛋白
質ハイブリッドにすれば、これらの欠点を補うことは可
能となってきた。化学修飾の方法としては種々の方法が
提案されているが、最も良く使用されているのは非免疫
性合成高分子であるポリエチレングリコール(以下PE
G)を修飾剤とする方法である。
この方法は次の式に示す様にモノメトキシポリエチレ
ングリコールと塩化シアヌル(2,4,6−トリクロロ−S
−トリアジン)の合成物(活性化PEG)をつくり、この
活性化PEGと蛋白質と反応させPEG−蛋白質ハイブリッド
を製造する。この蛋白質ハイブリッドを利用して次に示
す様な数多くの応用例が報告されているが、まだ実際に
産業上に利用されている例は少ない様である。
これは活性化PEGが不安定であり、又、均一な性質の
ものが得られていない、塩化シアヌルの毒性問題、活性
化PEGと蛋白質の反応が定量的にスムーズにいかないな
どの欠点があるためである。
PEG−蛋白質−ハイブリッドの応用例を次に示す。
(1)PEG−アスパラギナーゼ(T.Pharmac,Y.Kamisaki
et al;Exp.Therap.216,410) 抗腫瘍酵素であるアスパラギナーゼを血中半減期の延
長、抗原性の低下。
(2)PEG−酵素−ハイブリッドを利用して酵素反応を
有機溶媒の中でも可能にした(Y.Imada et al;Trends i
n Biotechnology190(1986)、K.Takahasi et al;J.O
rg Chem503414(1985),K.Takahashi et al;Enzyme3223
5(1984),K.Takahasi et al;Biochem Biophys Res.Com
mun:125761(1984))。
カタラーゼ、リパーゼ、キモトリプシン、ペルオキシ
ダーゼなど。
(3)PEG−アデノシンデアミナーゼ(M.S.Hershfield
at al;N.Engl.J.Mol.316,493(1985)) 遺伝的酵素欠損症の一つにアデノシンアミナーゼ(AD
A)欠損症があるが、このADAを投与する場合PEG−PDAハ
イブリッドにすると血中半減期が著しく延長するなどの
効果が報告されている。
(4)PEG−インターロイキン2(井本泰治:化学と生
物 VOL27,page426 1989) リンホカインの一種であるインターロイキン2は遺伝
子組換えの技術によって大量に生産されるが糖鎖が欠け
ているため不安定であり、PEG−インタロイキン2のハ
イブリッドとすることで安定化でき抗腫瘍効果も向上で
きた。
蛋白質とのハイブリッドをつくるにはPEGの他に糖類
も利用されている。これらの利用方法としては次の
(イ)〜(ニ)の様な方法があるが得られたハイブリッ
ドの効果については前に記述したPEGの場合とほぼ同様
である。
(イ)の方法は過ヨウ素酸による反応が過酷であるの
で糖が分解することもあり、又、蛋白質との結合に還元
剤を使う必要があり、蛋白質の変性の可能性があるなど
の欠点がある。(ロ)の方法は、毒性のある臭化シアン
を使用する。又、蛋白質を結合させる時にpHの調製を厳
密にする必要があるなどの欠点がある。(ハ)の方法
は、塩化シアヌルが毒性があり、塩化シアヌルと糖との
反応がスムーズにいかないなどの欠点がある。(ニ)の
方法はエピクロルヒドリンによって糖同士が架橋する。
などの欠点を有する。(イ)〜(ニ)の方法の共通の欠
点は構成糖の−OHと反応するため、結合する位置が一定
とならないことであり、又、糖のどの−OHとも反応する
ため各々の糖が持つ特有の性質が失われることである。
溶菌酵素であるリゾチームは医業などに広く利用され
ているが、その安定性を増すためには遺伝子工学の技術
により構成しているアミノ酸の組成を変更したり、目的
のアミノ酸の間を架橋するなどの高度な技術を要したり
手間がかかる操作を必要とする(参照:井本泰治:化学
と生物 VOL27,page426,1989). [発明が解決しようとする問題点] 本発明は下記(1)〜(3)の主要目的を有する。
(1)還元末端を有しカルボキシル基を含まない糖と蛋
白質のアミノ基とを毒性がある試薬を使うこともなく糖
の還元末端のみと反応させて糖本来の性質を失うことな
く、反応をスムースにおこなわせて結合させるための活
性化糖を提供することを目的とする。
(2)又、上の発明を利用してリゾチームの安定性を増
すためにリゾチームと糖のハイブリッドを提供すること
を目的とする。
(3)これらの活性化糖、糖−リゾチームの製造方法を
目的とする。
その他の目的は、以下の記述から明らかにされる。
[問題点を解決するための手段] 本発明の構成と効果につき以下に詳述する。
(1)還元末端を有しカルボキシル基を含まない多糖か
ら選ばれたものをグリシルグリシンを介してリゾチーム
と結合してなるハイブリッド。
(2)前記第1項記載の糖がアミロースであるハイブリ
ッド。
(3)還元末端を有しカルボキシル基を含まない多糖か
ら選ばれたものをグリシルグリシンを介してN−ヒドロ
キシスクシンイミドと結合してなる活性化糖。
(4)還元末端を有し、カルボキシル基を含まない多糖
から選ばれたものをグリシルグリシンと反応させ、つい
で縮合剤の存在下にN−ヒドロキシスクシンイミドを結
合させることを特徴とする活性化糖の製造法。
A.活性化糖の合成: (1)第1工程: 還元糖を有する糖を緩衝液中あるいはジメチルスルホ
キシドなどの有機溶媒中に溶解させ両端にアミノ基、カ
ルボキシル基を持つペプチドと還元剤を加えて反応させ
て後述の式[I]の様な化合物をつくる。
この場合の緩衝液は特に限定しないがアミノ基を含ま
なくてpH5〜9であれば良い。該糖としては単糖、オリ
ゴ糖、多糖である。ペプチドは特に限定しないが、構成
するアミノ酸は2〜10個が適当である。還元剤として
は、ソディゥムボロハイドライド(以下SBH)、ソディ
ゥムシアノボロハイドライド(NaBH3CN、以下SCBHとす
る)や、ジメチルアミンボラン((CH3)2NHBH3、以下DMA
Bとする)が良い。反応温度は10〜60℃が好ましい。反
応終了後、未反応のペプチド、還元剤はゲル濾過や限外
濾過膜で分離して除く。
(2)第2工程: 前記[I]を緩衝液、有機溶媒中に溶解させN−ヒド
ロキシスクシンイミド(以下HONSuとする)と縮合剤を
加え[II]を合成する。縮合剤はジシクロヘキシルカル
ボジイミド(以下DCCとする)、1−エトキシカルボニ
ル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキシキノリン(以下E
EDQ)、ジサクシイミドカーボネイト(以下DSCとす
る)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピ
ル)−カルボジイミドハイドロクロライド(以下EDCと
する)などが適当である。
[II]はペプチド糖とHONSuと結合している化合物
で、今まで得られていない新しい化合物であり、蛋白質
のアミノ基と容易に反応できる様なかたちなっており活
性化糖と以下称す。
B.リゾチーム−糖ハイブリッドの合成: 活性化糖[II]とリゾチームをアミノ基を含まない緩
衝液中で反応させた後、ゲル濾過クロマトグラフィーあ
るいは限外濾過膜で糖−リゾチームハイブリッドと活性
化糖[II]を分離する。
この反応はほぼ定量的に進むが、未反応のリゾチーム
の存在する場合は、陽イオン交換体のCM−イオン交換体
でリゾチームと糖−リゾチームハイブリドーマを分離し
てリゾチーム−糖ハイブリドーマを得ることができる。
この様に本発明によれば比較的簡単に糖の還元末端と
結合したリゾチーム−糖ハイブリッドを得ることができ
画期的である。リゾチーム以外の蛋白質についても糖−
蛋白質ハイブリッドを調製することが可能である。
C.糖−リゾチームハイブリッドの安定性: 糖−リゾチームハイブリッドがリゾチームに比較して
どの様に安定性が増加したかを調べるために熱に対する
リゾチーム活性を検討した。リゾチーム活性はグルコー
ルキチンを基質として測定した。
その結果未修飾リゾチームは80℃以上の高温になると
著しく活性が低下するのに対し、糖リゾチームハイブリ
ッドは90〜100℃の高温でも80%の活性が維持できその
安定性の高さは画期的であった。
糖としては、アミロースをはじめ、アミロペクチン、
キトサン、デキストラン、アガロースなどが応用され
る。
たゞし、カルボキシル基を有する糖質は蛋白質同志の
分子間架橋が生じるため本法を適用するには望ましくな
い。
[実施例] 以下、実施例について説明する。
実施例1 アミロース−グリシルグリシンの合成: アミロース(平均重量分子量29,000)1.0gを0.1Mリン
酸緩衝液(pH8.5)10mlに溶解し、グリシル−グリシン
をアミロースの5倍モル比相当量、SCBHを50倍モル比相
当量を加えて80℃で2日間撹拌する。濃塩酸でpH3に調
整し、さらに60℃で5時間攪拌する。N-NaOHでpH7に調
整する。
この反応液をゲル濾過剤(商品名セルロファインGCL-
25)でゲルクロマトグラフィーをおこない、未反応のグ
リシル−グリシンSCBHを除去する。第1図にゲル濾過の
結果を示すが、始めのピークの部分を分取する。後のピ
ークは、グリシル−グリシンSCBHである。分取した液は
凍結乾燥した。なお、ゲル濾過は(カラム 1.2×60cm,
溶出液:水、 流速:10ml/hr)で行った。
アミロース−グリシルグリシンは0.9g得られた。
実施例2 活性化アミロースの合成: 実施例1で得たアミロース−グリシルグリシン0.5gを
ジメチルスルホキサイド2mlに溶解させて、HONSu、DCC
をアミロース−グリシルグリシンの10倍モル比相当量を
加え、室温で1夜攪拌する。
不溶解物を濾過しアセトン 20mlを加え、3,000回転
で5分間攪拌し析出してくる沈殿を濾取する。減圧下で
乾燥して活性化アミロース0.4gを得た。
実施例3 アミロース−リゾチームハイブリッドの合成: 11mgのリゾチームを0.1Mホウ酸緩衝液(pH8.5)に溶
解させ、17.2mgの実施例2で得た活性化アミロースを加
え室温で1夜攪拌する。
0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)+0.1M NaClに対し、透析
する。不溶解物を濾別し、濾液をゲル濾過剤(セルロフ
ァィン GCL-300)にかけゲルクロマトグラフィーをお
こなう。この結果を第2図に示す、先のピークの部分を
分取する。後のピークの部分は未反応の活性化アミロー
スである。なお、ゲル濾過は(カラム:1.5×64cm、緩衝
液:0.1Mリン酸緩衝液+0.1% NaCl、流速:10.2ml/hr)
で行った。
分取した部分を脱塩後凍結乾燥してアミロースリゾチ
ームハイブリッドを8mg得た。
実施例4 リゾチームの活性測定法: 1mlの0.1%グリコールキチン溶液に0.1mlのリゾチー
ムアミロース−リゾチームハイブリッドを加え40℃で30
分間放置後、2mlの0.05%K3Fe(CN)3を加える。15分間沸
騰させて420mmの吸収を測定する。濃度と吸光度の関係
を第3図に示す。
実施例5 アミロースリゾチームハイブリッドの安定性: 500μlのアミロース−リゾチームハイブリッド、リ
ゾチーム溶液を20℃、80℃、90℃、100℃に30分間静置
する。
さらに室温に2.5時間放置後、実施例4の方法にした
がってリゾチーム活性を測定する。
結果を第4図に示す。アミロースリゾチームハイブリ
ッドはリゾチームの90%の活性を維持していた。100℃3
0分間の処理すると、未修飾リゾチームの活性の低下は
著しいのに対しアミロースリゾチームハイブリッドの活
性は90%維持されて、熱安定性が非常に増加されたこと
がわかる。
【図面の簡単な説明】
第1図〜4図は、本発明の実施例の説明図である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】還元末端を有しカルボキシル基を含まない
    多糖から選ばれたものをグリシルグリシンを介してリゾ
    チームと結合してなるハイブリッド。
  2. 【請求項2】請求項第1項記載の糖がアミロースである
    ハイブリッド。
  3. 【請求項3】還元末端を有しカルボキシル基を含まない
    多糖から選ばれたものをグリシルグリシンを介してN−
    ヒドロキシスクシンイミドと結合してなる活性化糖。
  4. 【請求項4】還元末端を有し、カルボキシル基を含まな
    い多糖から選ばれたものをグリシルグリシンと反応さ
    せ、ついで縮合剤の存在下にN−ヒドロキシスクシンイ
    ミドを結合させることを特徴とする活性化糖の製造法。
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