JP2563171B2 - 輪転印刷機のインキ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は輪転印刷機において版胴上の版面へインキを
供給するインキ装置に関するものである。

〔従来の技術〕

オフセツト印刷機などの輪転印刷機に設けられている
インキ装置は、インキ壷と多数のローラ群とを備えてお
り、インキ壷内に蓄えられたインキは、インキ壷ローラ
の回転により引き上げられてその表面にインキ皮膜とな
つて付着し、このインキ皮膜はローラ群の間で転移しな
がら各方向へ均らされて練られたのち、着ローラによつ
て版胴上の版面に供給される。

このようなインキ装置において、着ローラと版面との
接触圧力、いわゆるニツプ圧は、ローラの熱膨張や、摩
耗による径の変化、版胴の胴仕立等によつて変動し、こ
のニツプ圧は印刷物の品質に大きく影響するので、イン
キ装置にニツプ圧調節装置を付設して印刷の準備段階ま
たは印刷の途中でこれを調節することが行われている。
また、複数個の着ローラには、これを印刷作業の開始、
中断時に版面に対して一斉に着脱させる通称ローラ上げ
装置が設けられている。

このようなニツプ圧調整装置およびローラ上げ装置と
しては従来、例えば本出願人が提案して特開昭58−1756
63号公報に開示されているもの等が知られている。この
うちニツプ圧調整装置は、複数個の着ローラを揺動自在
なローラアームにそれぞれ支持させてばね部材により着
ローラを版面に圧接させる方向の回動力をローラアーム
に付与し、各ローラアームごとに設けたねじ部材と前記
ばね部材との協動により各ローラアームを個々に揺動さ
せて着ローラを微動させるものである。またローラ上げ
装置は、揺動自在な円弧状のローラ上げカム設けてこれ
に各着ローラの軸端部を対接させ、ローラ上げカムを操
作手段で回動操作することによりすべての着ローラを一
斉に版胴の半径方向へ進退させるものである。

〔発明が解決しようとする問題点〕

しかしながら、このような従来のインキ装置において
は、上記のようにニツプ圧調整装置の操作箇所が数箇所
に分散されているので、作業者が印刷ユニツト間を頻繁
に移動しなければならず、多色刷機では多大の調整時間
と労力を必要とし、厳密なニツプ圧管理を行うためには
手間がかかり過ぎて精神的にも大きな負担となつてい
た。さらに、これに上記ローラ上げ装置が加わるので操
作がより頻繁になるばかりでなく、ローラ上げ装置は別
装置側から駆動をとつているので、構成が大がかりにな
り、ことに、インキ装置を印刷胴群と切り離して移動さ
せるようにした機種のものにおいては、構成がほとんど
不可能であつた。

〔問題点を解決するための手段〕

このような問題点を解決するために本発明では、着ロ
ーラ用各ローラアームにそれぞれ対応してフレーム側に
回動自在に支持させた同軸上の着ローラ着脱用カムと複
数個のニツプ圧調整用カムとのカム面に、前記各ローラ
アームに枢着したころを対接させるとともに、前記各カ
ムには、これを回動操作する操作手段を付設した。

〔作 用〕

版面に対する着ローラのニツプ圧を調整する場合に
は、作業者は一箇所に位置して複数個の操作部材を順次
操作すると、各カムが回動してローラアームを回動さ
せ、各着ローラが版胴の半径方向に微動するので、ニツ
プ圧が調整される。また別の操作部材を操作すると、別
のカムが回動してすべてのローラアームを順次回動さ
せ、すべての着ローラが版胴の半径方向に進退して版胴
に対し着脱される。

〔実施例〕

第１図および第２図は本発明に係る輪転印刷機のイン
キ装置をオフセツト印刷機に実施した例を示し、第１図
はその着ローラ近傍の正面図、第２図は同じく一部破断
展開側面図である。これらの図において、周面に刷版が
装着された版胴１の上方には、一部のみを図示するイン
キ装置２が配設されており、このインキ装置２には、イ
ンキが蓄えられた図示しないインキ壷と、このインキ壷
内で回転することによりインキを引き上げて周面にイン
キ皮膜として付着させるインキ壷ローラと、このインキ
壷ローラの下流側に順次対接してインキを転移させる移
しローラ，振りローラ，練りローラ等、多数のローラ群
とを備えている。3,4はこれらローラ群を構成する最終
ローラとしての一対の振りローラであつて版胴１に近接
し左右のフレーム５に軸受6,7を介して回転自在に軸支
されており、図示しない原動側において回転および軸線
方向へ往復動するように駆動されている。左右のフレー
ムから内側へ突出する軸受６のボス部には、くの字状に
形成されたローラアーム８がスナツプリングで軸線方向
の移動を規制されて回動自在に嵌装されており、また軸
受７のボス7aには、三叉状に形成されたローラアーム９
と、Ｌ字状に形成されたローラアーム10とが、隣接しス
ナツプリングで軸線方向への移動を規制されて回動自在
に嵌装されている。左右のローラアーム8,9,10の遊端部
に形成された軸受には、振りローラ3,4に周面を対接さ
せた着ローラ11,12,13の両端軸が軸支されており、ロー
ラアーム８は、フレーム５側のスタツド14との間に介装
された圧縮コイルばね15により、着ローラ11を版面に圧
接させる方向の回動力を付与されている。また、ローラ
アーム9,10は、これらの遊端部間に張架された圧縮コイ
ルばね16により着ローラ12,13を版面に圧接させる方向
の回動力を付与されている。振りローラ3,4の軸心を結
ぶ線のほゞ垂直２等分線上には、ローラ群のうちの１個
である練りローラ17が軸受18を介して左右のフレーム５
に軸支されており、この練りローラ17と振りローラ3,4
との間には、同じくローラ群を構成する練りローラ19,2
0がローラ3,4,17に周面を対接させて設けられている。
左右の軸受18の内側突出ボス18aには、３個のニツプ圧
調整用のカム21,22,23と後述する着ローラ着脱用のカム
33とが隣接して回動自在に嵌装されており、各カム21,2
2,23は各ローラアーム8,9,10にそれぞれ対応している。
各カム21,22,23の外周カム面には、各ローラアーム8,9,
10の着ローラ11,12,13反対側の遊端部に枢着されたころ
24,25,26がそれぞれ対接されており、カム21,22,23のカ
ム面は、ころ24,25,26に対応するように位相を違えたそ
れぞれ緩やかな曲面に形成されている。また各カム21,2
2,23の外周の一部には、円弧状の歯21a,22a,23aが切ら
れている。なお、第１図では歯22a,23aが歯21aに重なつ
ているため図示されていない。27,28,29は操作側フレー
ム５に、互いに近接して回動自在かつ摺動不能に指示さ
れた操作部材としてのつまみ付きの操作軸であつて、こ
れらの内側突出側には、前記歯21a,22a,23aと噛合うピ
ニオン30,31,32がそれぞれ軸着されており、操作軸27,2
8,29を回動操作することにより、カム21,22,23が回動し
てローラアーム8,9,10を介し着ローラ11,12,13が微動し
てニツプ圧が調整されるように構成されている。

前記ニツプ圧調整用カム21,22,23と同軸上に設けた着
ローラ着脱用カム33の外周カム面には、前記各ころ24,2
5,26と同軸上のころ34,35,36が対接されており、カム33
の外周カム面はニツプ圧調整カム21,22,23のカム面より
もやゝ急な曲面に形成されている。カム33に一体形成さ
れたレバー37と図示しない操作部材との間は、ロツド38
で連結されており、操作部材を操作することによりカム
33が回動してカム面の作用によりローラアーム8,9,10を
介してすべての着ローラ11,12,13が版面に対し着脱され
るように構成されている。

以上のように構成されたインキ装置の動作を説明す
る。印刷作業に先立ち、着ローラ11,12,13のニツプ圧を
調整する。すなわち、作業者は操作側フレーム５の側方
に位置して操作軸27,28,29を順次回動操作すると、ピニ
オン30,31,32と歯21a,22a,23aとの噛合によりカム21,2
2,23が回動し、カム面の作用により各ころ24,25,26が微
動するので、ローラアーム8,9,10が揺動し、着ローラ1
1,12,13が版胴１の半径方向へ微動してニツプ圧が調整
される。

こうしてニツプ圧を調節したのち、給紙を開始して印
刷胴が胴入れされると、自動または手動操作でロツド38
が移動し、カム33が回動するので、カム面の作用により
ローラアーム8,9,10を介し着ローラ11,12,13が、調整さ
れたニツプ圧をもつて一斉に版面へ圧接される。この結
果、インキ壷内のインキは、インキ壷ローラから振りロ
ーラ3,4に至るローラ群間で転移したのち、着ローラ11,
12,13により版面に供給される。

なお、本実施例においては本発明をオフセツト印刷機
に実施した例を示したが、凹版印刷機や凸版印刷機な
ど、各種の輪転印刷機にも同様に実施することができ、
同様の作用効果を奏する。

〔発明の効果〕

以上の発明により明らかなように本発明によれば輪転
印刷機のインキ装置において、着ローラ用各ローラアー
ムにそれぞれ対応してフレーム側に回動自在に支持させ
た同軸上の着ローラ着脱用カムと複数個のニツプ圧調整
用カムとのカム面に、前記各ローラアームに枢着したこ
ろを対接させるとともに、前記各カムには、これを回動
操作する操作手段を設けたことにより、ニツプ圧調整用
の操作部材と着ローラ着脱用の操作部材とを一箇所に容
易に集中させることができ作業者はフレーム外の一箇所
に位置してこれらの操作部材を操作することができるの
で、操作性と安全性とが大幅に向上するとともに、着ロ
ーラの着脱用カムを従来の大型カムよりも遥かに小さく
構成することができ、操作スペースが縮小され装置を安
価に提供することができる。さらに着ローラ周辺の部品
が無くなり振りローラや着ローラの保守点検が容易にな
つて作業性が向上し、殊にインキ装置ユニツトを本機か
ら切り離して移動可能にした機種のものへの適用が可能
になり、ユニツト化が容易になる。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は本発明に係る輪転印刷機のインキ
装置の実施例を示し、第１図はその着ローラ近傍の正面
図、第２図は同じく一部破断展開側面図である。 ２……インキ装置、３……振りローラ、５……フレー
ム、8,9,10……ローラアーム、11,12,13……着ローラ、
15,16……圧縮コイルばね、21,22,23……ニツプ圧調整
用カム、21a,22a,23a……歯、24,25,26……ころ、27,2
8,29……操作軸、30,31,32……ピニオン、33……着ロー
ラ着脱用カム、34,35,36……ころ、37……レバー、38…
…ロツド。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】左右のフレーム側にそれぞれ揺動自在に支
   持された左右１対を１組とする複数組のローラアーム
   と、これら各組のローラアームの遊端部にそれぞれ両端
   軸が軸支された複数個の着ローラと、これら各着ローラ
   を版胴上の版面に圧接させる方向の回動力を前記各ロー
   ラアームに付与するばね部材とを備えた輪転印刷機のイ
   ンキ装置において、前記各ローラアームにそれぞれ対応
   して前記左右のフレーム側に回動自在に支持され前記各
   ローラアームに枢着されたころをカム面に対接させた複
   数個のニップ圧調整カムと、これら各ニップ圧調整カム
   の位相を個々に回動操作する複数組の操作手段と、前記
   各ローラアームにそれぞれ枢着された複数個の着ローラ
   着脱用ころと、前記ニップ圧調整カムと同軸上に回動自
   在に支持され前記すべての着ローラ着脱用ころをカム面
   に対接させた着ローラ着脱用カムと、この着ローラ着脱
   用カムを回動操作する操作手段とを設けたことを特徴と
   する輪転印刷機のインキ装置。