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JP2023542924A - 治療タンパク質を生産するための方法 - Google Patents

治療タンパク質を生産するための方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、一般に、細胞培養物にカルボキシペプチダーゼを添加する事による、バイオリアクターで培養した宿主細胞から分泌される目的の治療タンパク質の生産方法に関する。

Description

関連出願の相互参照
本願は、2020年9月22日に出願された米国仮出願第63/081380号、および2021年7月26日に出願された米国仮出願第63/225832号の優先権を主張するものであり、ここに本明細書の一部として参照によりその全体を援用する。
発明の技術分野
本発明は、一般に、宿主細胞から分泌される目的の治療タンパク質を生産するための方法に関する。
発明の背景
治療タンパク質は多くのヒト疾患の処置においてより一般的なものとなっている。様々な翻訳後修飾を受けるため、それらは製造過程においてある程度の不均一性を持つ事が知られている。それらの内、電荷変異体種(charge variant species)(酸性種、主要ピークおよび酸性種)は非常に一般的に観察され、例えばモノクローナル抗体(mAb)において観察される(Hintersteiner et al.,2016)。規制の観点からみれば、C末端リジンに由来する高塩基性種は、それらは患者への静脈注射後に内因性血清カルボキシペプチダーゼB(CpB)によって急速に切断され、半減期は1時間程度と推定されるため、あまり懸念されない(Brorson &Jia,2014)。とはいえ、製造の一貫性および製品の同等性(comparability)を確保するためには、電荷変異体を監視する必要がある(Chung et al.,2019)。主要ピークは、mAb製品のリリース規格(release specification)に制御される必要がある。製造過程を首尾よく制御することが、治療タンパク質製品の品質、安全性およびロット間の一貫性を確保するために肝心である。
mAb重鎖におけるC末端リジン変異体は、mAb製造過程において残存した0、1または2個のリジンを伴い、内因性カルボキシペプチダーゼによるC末端リジン残基の非効率的な切断に起因すると考えられていた(Zhang et al.,2015)。リジンが正に荷電しており、mAb分子のPIを下げるため、残存したリジンが増えると電荷変異体プロファイル中の塩基性種の割合が増加する(Brorson et al.,2014)。製造過程におけるmAbのC末端リジンの不均一性を低減するために、1つの解決策は生産段階における宿主細胞の培養期間を短くすることである。しかしながら、この方法ではmAbの生産性が著しく低下する。
したがって、高い力価および低い不均一性を伴う、治療タンパク質の生産性を増加するための改善した細胞培養方法を開発する必要がある。
発明の概要
本発明のある実施形態では、上流の細胞培養過程の終点においてバイオリアクターに直接CpB処置を施す事によって、費用対効果の高い酵素処置戦略を開発した。多数の利点によってこの戦略が選択された。第1に、細胞培養条件は通常、温度、pH、混合等の点で酵素反応条件に相当するため、CpBの添加後に追加的な条件の調節を必要としない。CpBは下流の一連の精製工程の前に導入され、および後続の精製過程の間にCpBは容易に取り除くことができる。作用濃度の50倍の酵素が添加された場合であっても、タンパク質A工程によって、ELISAアッセイによる検出限界以下まで導入されたCpBを除去できた事が示されている。これにより、適格な治療タンパク質製品の製造という目標を達成しながら、力価の向上を伴いつつ全体の過程を大幅に簡素化する事ができる。
本発明のある実施形態では、本開示は目的の治療タンパク質の製造方法であって、a)タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼ(CP)を添加する工程;c)清澄化バルク(clarified bulk)(CB)を回収する工程;およびd)清澄化バルクを精製過程に供する工程を含む方法を提供する。
本発明のある実施形態では、本開示は、目的の治療タンパク質の生産性を改善する方法であって、a)タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼ(CP)を添加する工程;c)清澄化バルク(CB)を回収する工程;およびd)清澄化バルクを精製過程に供する工程を含む方法を提供する。
本発明のある態様では、バイオリアクターは生産バイオリアクターである。
本発明のある態様では、タンパク質はC末端にリジンまたはアルギニン残基を有するタンパク質である。
本発明のある態様では、タンパク質はFc-融合タンパク質または抗体である。
本発明のある態様では、抗体はmAbである。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、カルボキシペプチダーゼA(CPA)、カルボキシペプチダーゼB(CpB)、カルボキシペプチダーゼD(CPD)、カルボキシペプチダーゼH(CPH)、カルボキシペプチダーゼE(CPE)、カルボキシペプチダーゼM(CPM)、カルボキシペプチダーゼN(CPN)、カルボキシペプチダーゼT(CPT)、カルボキシペプチダーゼY(CPY)、カルボキシペプチダーゼM32、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ(GCP)、プロリルカルボキシペプチダーゼ(PCP)、D-アラニル-D-アラニンカルボキシペプチダーゼ(AACP)またはプロカルボキシペプチダーゼから選択される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼはカルボキシペプチダーゼBである。
本発明のある態様では、細胞は約14日間培養される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、培養細胞の生産段階中に添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは収穫の0~24時間前に培養細胞に添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは収穫の約2時間前に培養細胞に添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは収穫時に培養細胞に添加される。
本発明のある態様では、細胞は灌流、バッチまたはフェドバッチ細胞培養物中である。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼはタンパク質の塩基性種を低減するために十分な量で添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、Cp:目的のタンパク質比が0.0001%~1%w/wの間の比率で添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは生産バイオリアクターに1回以上添加される。
本発明のある態様では、宿主細胞はCHO細胞である。
本発明のある態様では、抗体は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、TIGIT、GITR、CXCR4、CD73 HER2、VEGF、CD20、CD40、CD11a、組織因子(TF)、PSCA、IL-8、IL-13、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、EGFR、HER3、およびHER4からなる群より選択される抗原に結合する。
本発明のある態様では、mAbはニボルマブ(Nivolumab)である。
図面の簡単な説明
図1A、図1Bおよび図1Cは、ラボ用バイオリアクターにおける、mAb-1についてのCHO細胞培養物の生産性能を示す;それぞれ、(図1A)過程B(富化N-1シードを使用した強化フェドバッチ生産)(n=4)、(図1B)過程C(灌流N-1シードを使用した強化フェドバッチ生産)(n=4)、および(図1C)過程D(強化灌流生産)(n=2、バッチ1およびバッチ2を別々に)について、正規化空間収率(実線、過程Bの10日目力価の平均を100%として正規化)、および正規化空時収率(破線、期間にわたる正規化力価に基づいて算出)。標準偏差が非常に小さいため、いくつかの時点においてエラーバーは観察されない。
図2A、図2Bおよび図2Cは、ラボ用バイオリアクター(図1A~Cと同様)における、CpB処置(破線)および未処置コントロール(実線)を用いたmAb-1についての正規化主要ピークレベル(主要ピークについてのリリース規格(規格(spec))を100%として正規化)を示す:それぞれ(図2A)過程B(n=4)、(図2B)過程C(n=4)、および(図2C)過程D(n=2、バッチ1およびバッチ2を別々に)。標準偏差が非常に小さいため、いくつかの時点においてエラーバーは観察されない。
図3A、図3Bおよび図3Cは、ラボ用バイオリアクター(図1A~Cと同様)における、CpB処置(破線)および未処置コントロール(実線)を用いたmAb-1についての正規化塩基性種レベル(主要ピークについてのリリース規格を100%として正規化)を示す:それぞれ(図3A)過程B(n=4)、(図3B)過程C(n=4)、および(図3C)過程D(n=2、バッチ1およびバッチ2を別々に)。標準偏差が非常に小さいため、いくつかの時点においてエラーバーは観察されない。
図4は、CpB処置(実線)および未処置コントロール(破線)によるmAb-1のiCEクロマトグラムの比較を示す。主要ピークおよび塩基性種レベルは、主要ピークについてのmAb-1リリース規格を100%として正規化した。
図5は、異なるマトリクスにおいて、34°Cで2時間、異なる酵素濃度でCpB処置した後のmAb-1正規化主要ピークレベルおよび塩基性種レベルを示す:CpB未処置サンプルをコントロールとして使用し(n=3)、およびそれぞれ1%、0.05%、0.01%(w/w)濃度での全細胞培養物;0.01%および0.001%(w/w)濃度での細胞培養上清、および0.01%および0.001%(w/w)濃度での、Tris緩衝液、pH7.6における5mg/mL mAb-1。
図6は、CpB未処置サンプルをコントロールとして使用し(n=3)、過程Bから生成した細胞培養上清において、0.01%(w/w)CpB濃度で2時間、異なる温度(例えば、室温(RT)、32°C、34°Cおよび36°C)でCpB処置した後のmAb-1正規化主要ピークレベルおよび塩基性種レベルを示す。
図7は、CpB未処置サンプルをコントロールとして使用し(n=3)、および精製したmAb-1を添加し34°Cで2時間、0.01%(w/w)CpB濃度で、異なるpH値、例えばpH 5.0(25mM 酢酸ナトリウム、12mM 酢酸);pH6.1(25mM 酢酸ナトリウム、12mM 酢酸);pH7.0(25mM Tris-HCl、100mM NaCl);pH8.0(25mM Tris-HCl、100mM NaCl);pH8.9(25mM Tris-HCl、100mM NaCl)においてCpB処置した後のmAb-1正規化主要ピークレベルおよび塩基性種レベルを示す。
図8はmAb-1製造過程のフローチャートを示す。
図9は、過程B(n=2)に続いて0.05%(w/w)濃度、34°Cで2時間のCpB処置に使用され、その後CpB処置条件および未処置条件の両方について下流過程全体が実行された、5Lバイオリアクター中でのmAb-1細胞培養物の性能プロファイル(例えば、VCD、生存率および正規化力価)を示す(表1)。
図10は、in vitroのCpB処置プロトコルの模式図を示す。
図11Aおよび図11Bは、250mL振盪フラスコでのmAb-8生産について、VCD、生存率および正規化力価のフェドバッチ細胞培養物の性能プロファイル(図11A)およびグルコース、乳酸およびアンモニウムレベルの代謝産物プロファイル(図11B)を示す。
図12A、図12Bおよび図12Cは、250mL振盪フラスコでのmAb-8生産について、全細胞培養物のコントロールおよびCpB処置条件(CpB:mAb-8比1:10,000(w/w))についての工程内品質特性(正規化塩基性電荷変異体種のレベルおよび正規化主要ピークレベル、図12A;G0、G0F、G1F、G2F、およびMan5を含むNグリカン、図12B;高分子量(HMW)、低分子量(LMW)および単量体を含むSEC不純物、図12C)を示す。
図13Aおよび図13Bは、250mL振盪フラスコでのmAb-3生産の間の、例えばVCD、生存率および正規化力価のフェドバッチ細胞培養物の性能プロファイル(図11A)およびグルコース、乳酸およびアンモニウムレベルの代謝産物プロファイル(図11B)を示す。
図14A、図14Bおよび図14Cは、250mL振盪フラスコでのmAb-3生産について、全細胞培養物のコントロールおよびCpB処置条件(CpB:mAb-3比1:10,000(w/w))についての工程内品質特性(正規化塩基性電荷変異体種のレベルおよび正規化主要ピークレベル、図14A;G0、G0F、G1F、G2F、およびMan5を含むNグリカン、図12B;高分子量(HMW)、低分子量(LMW)および単量体を含むSEC不純物、図12C)を示す。
発明の詳細な記載
本発明は、目的の治療タンパク質の生産方法であって、a)タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼ(CP)を添加する工程;c)清澄化バルクを回収する工程;およびd)清澄化バルクを精製過程に供する工程、を含む方法を提供する。
本発明のある実施形態では、本開示は、目的の治療タンパク質の生産性を改善する方法であって、a)タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼ(CP)を添加する工程;c)清澄化バルクを回収する工程;およびd)清澄化バルクを精製過程に供する工程、含む方法を提供する。
定義
本開示をより容易に理解できるようにするために、特定の用語を最初に定義する。本願で使用される場合、本明細書で別段の規定が明示的に提供される場合を除き、以下の各用語は以下に記載する意味を有するものとする。さらなる定義は本願を通じて記載される。
不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、任意の記載された、または列記された成分の「1つ以上」を指す事が理解されるべきである。
本明細書で使用される場合、用語「約」は、当業者によって決定された特定の値または組成物について許容できる誤差範囲内にある値または組成物を指し、これは値または組成物が測定または決定される方法、すなわち測定システムの限界にある部分依存するはずである。例えば、「約」は、記載された参照値のプラスマイナス50%の範囲、好ましくはプラスマイナス25%の範囲、またはより好ましくはプラスマイナス10%の範囲を意味し得る。特定の値または組成物が本願および特許請求の範囲において提供される場合、別段の記載が無い限り、「約」の意味は、当該特定の値または組成物について許容可能な誤差範囲内であると想定されるはずである。
本明細書で使用される用語「および/または」は、2つの特定された特徴または成分の各々について、他方の有無に関わらない具体的な開示であると理解されるものである。よって、本明細書において「Aおよび/またはB」などのフレーズにおいて使用される用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(のみ)、および「B」(のみ)を含む事が意図される。同様に、「A、Bおよび/またはC」などのフレーズにおいて使用される用語「および/または」は、以下の態様の各々を包含する事が意図される:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(のみ);B(のみ);およびC(のみ)。選択肢の使用(例えば「または」)は、選択肢のいずれか1つ、両方またはその任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」は、長さに関わらず、ペプチド結合したアミノ酸鎖を指す。タンパク質中の1つ以上のアミノ酸残基は修飾、例えば、しかし非限定的に、グリコシル化、リン酸化またはジスルフィド結合の形成を含み得る。用語「タンパク質」は本明細書において「ポリペプチド」と互換的に使用される。
本明細書で使用される場合、用語「目的のタンパク質」は最も広い意味において使用され、精製が望ましい混合物中に存在する、任意のタンパク質(天然または組み換えのいずれか)を含む。係る目的のタンパク質には、非限定的に、酵素、ホルモン、成長因子、サイトカイン、免疫グロブリン(例えば、抗体)、および/または任意の融合タンパク質を含む。
本明細書で使用される場合、用語「治療タンパク質」は、疾患または障害の予防、処置または緩和に有用である事が知られている任意のタンパク質を示し、例えば抗体、成長因子、細胞表面受容体、サイトカイン、ホルモン、トキシン、または前述のいずれかの断片および/もしくは融合タンパク質を指す。
本明細書で使用される場合、用語「Fc-融合タンパク質」は、免疫グロブリン由来部分(すなわちFc部分)および、第2の、非免疫グロブリンタンパク質に由来する部分を含む治療タンパク質を包含する事を意味する。
「抗体」には、非限定的に、ジスルフィド結合によって相互接続した少なくとも2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)を含み、抗原に特異的に結合する糖タンパク質免疫グロブリン(Ig)、またはその抗原結合部分を含む。
本明細書で使用される場合、「単離された」または「精製された」Abは、異なる抗原特異性を有するその他のAbを実質的に含まないAbを指す。さらに、単離されたAbはまた、その他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まないように精製されたAbを意味し得る。
本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、単一分子組成のAb分子、すなわちその一次配列が実質的に同一であり、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す複数のAb分子の天然には生じない調製物を指す。mABは単離されたAbの一例である。mAbは、ハイブリドーマ、組み換え、遺伝子導入(transgenic)または当業者に知られたその他の技術によって生産され得る。
本明細書で使用される場合、用語「目的のmAb」は、精製が望ましい混合物中に存在するmAbを指す。
本明細書で使用される場合、「キメラ」Abは、可変領域がある種に由来し、定常領域が別の種に由来するAb、例えば可変領域がマウスAbに由来し、定常領域がヒトAbに由来するAbを指す。
本明細書で使用される場合、「ヒト」mAb(HuMAb)は、可変領域中のフレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有するmAbを指す。さらに、Abが定常領域を含む場合、当該定常領域もまたヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒトAbは、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroの無作為もしくは部位特異的な変異導入によって、またはin vivoの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかし、本明細書で使用される場合、用語「ヒト」Abは、別の哺乳類種、例えばマウスの生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されたAbを含むことは意図されない。用語「ヒト」Abおよび「完全ヒト」Abは同義的に使用される。
本明細書で使用される場合、「ヒト化」mAbは、非ヒトmAbのCDRドメインの外側のアミノ酸の一部、大部分または全部がヒト免疫グロブリンに由来する対応するアミノ酸で置き換えられたmAbを指す。Abのヒト化形態の1つの実施形態では、CDRドメイン外のアミノ酸の一部、大部分、または全部がヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸で置換されているが、1つまたは複数のCDR領域内のアミノ酸の一部、大部分または全部は変更されていない。アミノ酸の小規模な付加、欠失、挿入、置換または修飾は、特定の抗原に結合するAbの能力を損なわない限り、許容される。「ヒト化」Abは、元のAbと同様の抗原特異性を保持する。
本明細書で使用される場合、「抗-抗原」Abは、抗原に特異的に結合するAbを指す。例えば、抗-PD-1 AbはPD-1に特異的に結合するAbである。
本明細書で使用される場合、用語「培養物」、「細胞培養物」、および「哺乳類細胞培養物」は、哺乳類細胞集団であって、当該細胞集団の生存および/または増殖に好適な条件下で培地中に懸濁された細胞集団を指す。当業者にとり明らかなように、本明細書で使用される場合、これらの用語は、哺乳類細胞集団および当該集団が懸濁される培地を含む組み合わせを指し得る。
用語「培養」または「細胞培養」は、物理的条件の制御された設定下において、液体培養培地中での哺乳類細胞の維持または増殖を意味する。
本明細書で使用される場合、用語「播種」、「播種された」、「接種」、「接種する」および「接種された」は、細胞培養物をバイオリアクターまたは別の容器に供する過程を指す。細胞は別のバイオリアクターまたは容器中で事前に増殖されていてもよい。あるいは、細胞は冷凍されていて、バイオリアクターまたは容器にそれらを供する直前に解凍されてもよい。この用語は、1つの細胞を含む任意の数の細胞を指す。
本明細書で使用される場合、用語「基本培地」は、増殖中の哺乳類細胞を養うための栄養を含む溶液を指す。典型的には、この溶液は、細胞の最低限の増殖および/または生存のために要求される必須および非必須のアミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質および微量元素を提供する。この溶液はまた、ホルモンおよび成長因子を含む、上記の最低限の速度を超えて増殖および/または生存を促進する成分を含み得る。溶液は、好ましくは細胞の生存および増殖に最適なpHおよび塩濃度に調製される。細胞の成長に資するための様々な成分が基本培地に添加され得る。培地はまた、血清、加水分解物または組成が不明な成分を含まない「化学的規定培地」であり得る。規定培地は動物由来成分を含まず、且つ全ての成分が既知の化学構造を有する。
本明細書で使用される場合、用語「バッチ」または「バッチ培養」は、細胞自体や基本培地を含む、細胞培養において最終的に使用される全ての成分が培養過程の開始時に供される細胞培養方法を指す。バッチ培養は典型的にはいくつかの時点において停止され、培地中の細胞および/または成分が収穫され、および任意には精製される。
用語「フェドバッチ」または「フェドバッチ培養」は、細胞培養物から初期の基本培地を実質的または顕著に除去することなく、初期の細胞培養物に漸増的または継続的にフィード培地を添加する事を意味する。ある場合では、フィード培地は初期の基本培地と同じである。ある場合では、フィード培地は基本培地を濃縮した形態である。ある場合では、フィード培地は基本培地と異なって、所望の栄養補助剤を含み得る。
本明細書で使用される場合、用語「灌流」または「灌流過程」とは、細胞をリアクター中に保持したまま、等量の培地(栄養補助剤を含む)をバイオリアクターに同時に添加・除去する細胞培養方法を指す。補充培地に相当する量の細胞および培地は、典型的には連続的または半連続的に除去され、任意には精製される。典型的には、灌流過程を含む細胞培養過程を「灌流培養」を呼ぶ。新鮮な培地は、細胞培養過程における基本培地と同一、類似または異なり得る。
本明細書で使用される場合、用語「N-1段階」は、生産用接種の直前の最後のシード増殖段階を指す。N-1段階は、目的のタンパク質の生産のために生産バイオリアクターに播種する前の最後の細胞増殖段階である。本明細書で使用される場合、用語「N-2段階」および「N-3段階」は、細胞成長および増殖中の期間であって、典型的にはN生産段階の接種の前の期間を指す。N-3段階は、N-2段階において使用するための生細胞密度を増加するために使用される細胞増殖段階である。N-2段階は、N-1段階において使用するための生細胞密度を増加するために使用され得る細胞増殖段階である。
用語、細胞培養物の「生産段階」または「N生産段階」は、細胞培養の最終段階を指す。生産段階において、細胞は、目的のタンパク質、例えばmAbを生産することに主眼を置いて培養される。生産段階は、一般的に細胞培養物製造の「N」または最終段階と呼ばれる。
本明細書で使用される場合、用語「バイオリアクター」は、哺乳類細胞培養物の増殖のために使用される任意の容器を指す。バイオリアクターは、哺乳類細胞の培養においてそれが有用である限り、任意の大きさであり得る。典型的には、バイオリアクターは、少なくとも1リットルであり、および2、5、10、100、250、500、1000、2500、5000、8000、10,000、12,000、15,000、20,000リットルもしくはそれ以上、またはその間の任意の容量であり得る。バイオリアクターの内部条件はpH、および温度などを含むがこれに限定されず、および典型的には培養期間中制御される。バイオリアクターは、本発明の培養条件下で培地に懸濁された哺乳類細胞培養物を保持するために好適に任意の材料で構成され得、ガラス、プラスチックまたは金属を含む。
本明細書で使用される場合、「生産バイオリアクター」は、目的のタンパク質(例えば、mAB)の生産のための細胞培養物の生産段階において使用される最終的なバイオリアクターを指す。大規模細胞培養物生産バイオリアクターの容量は、典型的には少なくとも500リットル、および1000、2500、5000、8000、10,000、12,000、15,000、20,000リットルもしくはそれ以上、またはその間の任意の容量であり得る。当業者であれば本発明の実施において使用するための好適なバイオリアクターを認識し、選択する事ができるはずである。
本明細書で使用される場合、用語「力価」は、組み換え的に発現される目的のタンパク質、例えば哺乳類細胞培養物によって産生されるmAbの総量を所定の培地容量で除算して得られる値である。力価は典型的には、培地1リットル当たりのポリペプチドまたはタンパク質のグラム、という単位で表される。
用語「収穫」は、タンパク質精製に好適な清澄化バルク(CB)を得るために細胞および細胞残渣を除去する手順を指す。これは一般に、規模や設備能力に応じて、遠心分離、深層濾過、無菌濾過を含むがこれらに限定されない、任意の好適な技術によって達成される。
本明細書で使用される場合、「清澄化バルク」および「CB」は互換的に使用され、細胞培養液を清澄化するために使用される遠心分離、深層濾過、または凝集などの一次回収ステップの後に回収される溶液を指す。
用語「精製」は、目的のタンパク質を、細胞培養培地中に存在する1つ以上の他の成分(例えば、哺乳類細胞タンパク質または培養培地タンパク質)から、または哺乳類細胞溶解液中に存在する1つ以上の他の成分(例えば、DNA、RNAまたは他のタンパク質)から少なくとも部分的に精製または単離(例えば、重量の少なくともまたは約5%純粋、例えば少なくともまたは約10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または少なくともまたは約95%純粋)する手順を指す。典型的には、組成物から少なくとも1つの不純物を除去(完全に、または部分的に)する事によって目的のタンパク質の純度は増加する。
用語「カルボキシペプチダーゼ」は、タンパク質をC末端から切断する多機能酵素を指す。多数の異なる種類のカルボキシペプチダーゼが存在し、カルボキシペプチダーゼA(CpA)、カルボキシペプチダーゼB(CpB)、カルボキシペプチダーゼD(CpD)カルボキシペプチダーゼE(CpE)、カルボキシペプチダーゼM(CpM)、カルボキシペプチダーゼN(CpN)、カルボキシペプチダーゼT(CpT)、カルボキシペプチダーゼY(CpY)、カルボキシペプチダーゼM32、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ(GCP)、プロリルカルボキシペプチダーゼ(PCP)、D-アラニル-D-アラニンカルボキシペプチダーゼ(AACP)、プロカルボキシペプチダーゼおよび他、を含む。
本発明のある実施形態では、本開示は、目的の治療タンパク質の生産方法であって、a)タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼを添加する工程;c)清澄化バルク(CB)を収穫および回収する工程;およびd)清澄化バルクを精製過程に供する工程、を含む方法を提供する。
本発明のある実施形態では、本開示は、目的の治療タンパク質の生産性を改善する方法であって、a)タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼを添加する工程;c)清澄化バルク(CB)を収穫および回収する工程;およびd)清澄化バルクを精製過程に供する工程、含む方法を提供する。
用語「カルボキシペプチダーゼB」は、タンパク質のC末端からアルギニンおよびリジンなどの塩基性アミノ酸を順次切断するカルボキシペプチダーゼを指す。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼはカルボキシペプチダーゼB(CpB)である。
本発明のある実施形態では、本開示は、目的の治療タンパク質の生産方法であって、a)タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼBを添加する工程;c)清澄化バルク(CB)を収穫および回収する工程;およびd)清澄化バルクを精製過程に供する工程、を含む方法を提供する。
本発明のある実施形態では、本開示は目的の治療タンパク質の生産性を改善する方法であって、a)タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼBを添加する工程;c)清澄化バルク(CB)を収穫および回収する工程;およびd)清澄化バルクを精製過程に供する工程、含む方法を提供する。
本開示の種々の態様は、以下の小節においてさらに詳細に記載される。
本発明のある実施形態では、本開示は、目的のモノクローナル抗体(mAb)の生産性を改善する方法であって、a)mAbを発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼ(CP)を添加する工程;c)清澄化バルク回収する工程;およびd)清澄化バルクを精製過程に供する工程、含む方法を提供する。
本発明のある態様では、タンパク質はC末端にリジンまたはアルギニンを有する。
本発明のある態様では、タンパク質はFc-融合タンパク質または抗体である。
本発明のある態様では、抗体はmAbである。
本発明のある態様では、バイオリアクターは生産バイオリアクターである。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、バッチ、フェドバッチまたは灌流細胞培養物に収穫の前に添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、カルボキシペプチダーゼA(CPA)、カルボキシペプチダーゼB(CpB)、カルボキシペプチダーゼD(CPD)、カルボキシペプチダーゼH(CPH)、カルボキシペプチダーゼE(CPE)、カルボキシペプチダーゼM(CPM)、カルボキシペプチダーゼN(CPN)、カルボキシペプチダーゼT(CPT)、カルボキシペプチダーゼY(CPY)、カルボキシペプチダーゼM32、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ(GCP)、プロリルカルボキシペプチダーゼ(PCP)、D-アラニル-D-アラニンカルボキシペプチダーゼ(AACP)またはプロカルボキシペプチダーゼから選択される。
本発明のある態様では、細胞は生産バイオリアクター中で約14日間培養される。本発明のある態様では、細胞は生産バイオリアクター中で約15日間培養される。本発明のある態様では、細胞は生産バイオリアクター中で約16日間培養される。本発明のある態様では、細胞は生産バイオリアクター中で約17日間培養される。本発明のある態様では、細胞は生産バイオリアクター中で約18日間培養される。本発明のある態様では、細胞は生産バイオリアクター中で約19日間培養される。本発明のある態様では、細胞は生産バイオリアクター中で約20日間培養される。本発明のある態様では、細胞は生産バイオリアクター中で約21日間培養される。本発明のある態様では、細胞は生産バイオリアクター中で約22日間培養される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、培養細胞の生産段階の間に添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、収穫の0~24時間前に培養細胞に添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは収穫の約0.5時間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、または24時間前に培養細胞に添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは収穫の約2時間前に培養細胞に添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼBは収穫の約2時間前に培養細胞に添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは収穫時に培養細胞に添加される。
本発明のある態様では、細胞は灌流、バッチまたはフェドバッチ細胞培養物中である。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、目的のタンパク質の塩基性種を低減するために十分な量で添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、CP:目的のタンパク質比が0.0001%~1%w/wの間の比率で添加される。本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、CP:目的のタンパク質比が約0.001%、約0.002%、約0.005%、約0.01%、約0.02%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.5%、または約1%w/wの比率で添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、目的のmAbの塩基性種を低減するために十分な量で添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼBはCP:目的のmAb比が0.0001%~1%w/wの間の比率で添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼBは、CP:目的のmAb比が、約0.001%、約0.002%、約0.005%、約0.01%、約0.02%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.5%、または約1%w/wの比率で添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼBは、約0.01%、w/wのCP:目的のmAbで添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは生産バイオリアクターに複数回添加される。
本発明のある態様では、宿主細胞はCHO細胞である。
本発明のある態様では、抗体は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、TIGIT、GITR、CXCR4、CD73 HER2、VEGF、CD20、CD40、CD11a、組織因子(TF)、PSCA、IL-8、IL-13、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、EGFR、HER3、およびHER4からなる群より選択される抗原に結合する。
ある態様では、mAbはニボルマブである。
mAb電荷変異体
モノクローナル抗体(mAb)は、複数の翻訳後修飾および分解事象のために、その生化学的および生物物理学的性質において不均一である。mAbの電荷の不均一性は、これらの修飾によって正味の電荷または局所的な電荷分布が変化する事により影響をうけ得る。mAbの電荷変異体は、酸性種、塩基性種および主要種として特定される。本明細書で使用される場合、用語、mAbの「主要種」、「主要ピーク」または「主要変異体」は、中性の等電点(PI)を持つ、主要ピークとして溶出されるmAbを指す。本明細書で使用される用語、mAbの「酸性種」または「酸性変異体」は、主要種よりも低いpIを持つ変異体を指す。本明細書で使用される場合、用語、mAbの「塩基性種」または「塩基性変異体」は、主要種よりも高いpIを持つ変異体を指す。mAbのC末端リジン残基は正電荷を付加し、mAbの塩基性種の増加をもたらす。抗体産生において内在性カルボキシペプチダーゼによるC末端リジン残基の切断が非効率的であることが、0、1つまたは2つのC末端リジンを持つmAbをもたらす主要な理由の1つである(Zhang et al.,2015)。
電荷変異体は、電荷に基づく分離技術、例えば等電点(isoelectric focusing(IEF))ゲル電気泳動法、キャピラリー等電点(cIEF)ゲル電気泳動法、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)法および陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)法を使用する事によって分離され得る。本明細書では、電荷変異体種を、Protein Simple iCE3 instrument with an Alcott 720NV autosamplerを使用して、画像キャピラリー等電点(iCIEF)法によって解析した。サンプルを適切なpIマーカー、両性電解質(ampholytes)および尿素と混合し、そしてフルオロカーボンでコーティングしたキャピラリーカートリッジに注入した。高電圧を印加し、この電圧下でカラム内にpH勾配が形成された。電荷変異体はそれぞれのpIに移動した。UVカメラで280nMにおける画像を撮影した。主要ピークを特定し、および酸性域および塩基性域に移動したピークを合計、定量し、相対パーセント面積として報告した。
電荷変異体のプロファイルを制御するいくつかの方法には、銅濃度の低い細胞培養培地の使用(Kim et al.,2016)、培地中のリジン濃度の調製、温度シフト(Kim et al.,2016)、培養期間の延長、リジンのC末端の欠失を持つmAbの構築(Luo et al.,2012;Jiang et al.,2016)を含む。これらの戦略は、細胞培養段階の最中かそれ以前に起こるため、よって複数の経路に総じて影響を及ぼし、および予測できない全体的な細胞培養特性、力価特性、または製品の品質に繋がり得る。米国特許第5,672,347号は、清澄化バルクにカルボキシペプチダーゼを添加する方法を開示し、これは余分な工程およびインキュベーション時間を伴う。
対照的に、本発明の方法は、これらの細胞培養物に影響を及ぼす不確定要素を避けるために、カルボキシペプチダーゼを細胞培養物製造段階の終点近くで使用する。添加されたカルボキシペプチダーゼは通常の下流の精製過程を経て除去されるため、当初の運転設計を何ら変更する事なく、この導入した新しい実体を除去するための追加的な工程は必要ない。これは手順全体を大きく簡略化する。
電荷変異体プロファイルはmAb依存的であり、およびあるmAb(例えばmAb-1)は、細胞培養中に宿主細胞から分泌された際に、塩基性種の割合が高く、および主要種の割合が低い。例えば、生産バイオリアクターで10日間培養した後のmAb-1塩基性種の割合は8パーセント超である。生産時間が長くなればなるほどmAb塩基性変異体の割合は増加し続けることになる。したがって、これらのmAbについて、高力価であるがmAb塩基性変異体の割合は低いままで生産期間をより長くする事は不可能かもしれない。本発明では、塩基性変異体の割合が高いという問題をもつこれらのmAbについて、生産バイオリアクター中での細胞培養期間を10日から14日に延長し得る。本方法は、同様の電荷変異体プロファイルの問題を有する他の生物製剤に適用し得る。
本発明において、本出願人らは、工業的CHO細胞株を使用したmAb-1生産のための強化細胞培養過程の品質および生産性を改善するための、単純、堅牢および費用対効果の高いCpB処置方法を開発した。強化過程、例えば非灌流N-1によって強化された過程B、灌流N-1によって強化された過程C、および生産段階における灌流によって強化された過程D、は従来のフェドバッチ製造過程Aに比して非常に高い生産性を達成した。しかし、強化フェドバッチ過程BおよびCではかなり早期に収穫する必要があり、および灌流過程Dは主要ピークが低く、リリース規格に適合しなかったため実施できなかった。低い主要ピークは、強化過程に関してC末端リジン変異体がより多いために塩基性種が多くなることに主に起因する。CpB処置後、C末端リジンは効果的に除去され、全ての強化過程について、塩基性種の顕著な減少および主要ピークレベルの増加をもたらし、培養期間全体にわたってリリース規格を満たしていた。CpB処置後のより長い細胞培養生産ウィンドウにおいて、フェドバッチ過程BおよびCはより高い最終力価を達成した。加えて、下流の過程におけるCpBのクリアランスは、CpB処置の有無に依らず、下流工程の収量および工程内品質特性プロファイルが類似する事によって実証された。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、目的のmAbの塩基性種を低減するために十分な量で培養細胞に添加される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、目的のmAbの主要種を増加させるために十分な量で培養細胞に添加される。
宿主細胞
細胞培養物およびタンパク質の発現に感受性のある任意の哺乳類細胞または細胞種が本発明に従って利用され得る。本発明に従って使用され得る哺乳類細胞の非限定的な例には、BALB/c マウス骨髄腫株(NSO/1、ECACC No:85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6(CruCell,Leiden,The Netherlands));SV40で形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓株(懸濁培養における増殖のためにサブクローニングされた293または293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.,36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞±DHFR(CHO、Urlaub およびChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.,23:243-251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI 細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌由来細胞株(Hep G2)を含む。本発明の1つの実施形態では、宿主細胞はCHO細胞株である。
哺乳類細胞培養物の提供
目的のタンパク質を発現する細胞を特定したら、当該細胞を、当分野で当業者に知られた様々な方法のいずれかによって培養物中に増殖させる。目的のタンパク質を発現する細胞を、典型的には細胞の生存、増殖および生存率に資する温度および培地中において成長させる事で増殖させる。初期培養量は任意の規模であり得るが、通常は目的のタンパク質の最終的な製造において使用される生産バイオリアクターの培養量よりも小さく、および生産バイオリアクターへの播種の前に、段階的に容量を増したバイオリアクター中で細胞を何度か継代する事も多い。細胞が特定の生細胞密度に達したら、さらに生存細胞数を増加させるために細胞をバイオリアクター中で成長させる。これらのバイオリアクターはN-1、N-2、N-3などと呼ばれる。例えば、「N」は本生産培養バイオリアクターを指し、「N-1」は本生産培養の前のバイオリアクターを意味する等である。
一般に、N-1の細胞培養物は、次の生産バイオリアクターへの播種前に所望の密度まで増殖させ得る。播種の前に、細胞の大部分が生存を保っている事が好ましいが、完全や完全に近い生存率は要求されない。
発現タンパク質の生産
生産段階において、細胞は、目的のタンパク質、例えば目的のmAbを生産することに主眼を置いて培養される。生産段階は、一般的に細胞培養物製造の「N」または最終段階と呼ばれる。一般に、生産バイオリアクターは、目的のタンパク質(例えば、mAB)の生産のための細胞培養物の生産段階において使用される最終的なバイオリアクターに適用される。大規模細胞培養物生産バイオリアクターの容量は、典型的には少なくとも500リットル、および1000、2500、5000、8000、10,000、12,000、15,000、20,000リットルもしくはそれ以上、またはその間の任意の容量であり得る。当業者であれば本発明の実施において使用するための好適なバイオリアクターを認識し、選択する事ができるはずである。
本発明のある態様では、細胞培養物は灌流、バッチ、またはフェドバッチ細胞培養物である。ある好ましい態様では、生産バイオリアクター中の細胞培養物はフェドバッチ細胞培養物である。
細胞株工学、培地の開発およびバイオリアクターの最適化による細胞培養物生産期間の延長はここ何十年かにおけるフェドバッチ過程の力価改善のための主要な戦略の1つである。(Druz,Son,Betenbaugh,&Shiloach,2013;Fan et al.,2015;Powers et al.,2019;Wurm,2004)。細胞培養物生産期間に関わらず、1つの生産バッチではVCDをピークにするための同様の細胞増殖時間、バッチ間のターンアラウンド時間ならびに、シードの増殖、培地の調製およびバイオリアクターの操作を含むバッチのセットアップに同様のコストを要する(Chen,et al.,2018;Xu,et al.,2020)。よって、定常期において細胞培養物生産ウィンドウを延長することによる力価の増加は、製造の生産性を向上し、製造コストを低下させ得る(Wurm,2004;Xu et al.,2012;Xu,et al.,2020)。とはいえ、2週間以上の期間にわたるフェドバッチ細胞培養物は、やがて毒性代謝産物の増加、VCDの低下および細胞生存性の低下を伴う死滅期に入り、製品の品質の低下をもたらし得る(Arden &Betenbaugh,2004;Henry et al.,2020)。ある場合では、品質要件およびリリース規格を満たすために、フェドバッチ細胞培養物を定常期の最中でより早めに収穫する事が要求され得る。
ここでは、14日目において主要ピークが規格を満たさなかったため、強化過程BおよびCを早期に終了する必要があった(図1A~C)。しかし、CpB処置後では、全ての強化過程についての全期間にわたって主要ピークは規格を満たした(図1A~C)。過程Bは10日から14日に延長され、CpB処置によって空間収率は38%向上し、最終原薬1gあたりの上流消耗品コストは22%低下した。同様に、過程Cは6日から14日に延長され、空間収率は108%向上し、および上流消耗品コストは46%低下した(図1A~C、および表2)。従来の過程Aと比較して、このCpB処置工程の追加および以前に記載された過程強化戦略によって、過程B、CおよびDについて、空時収率はそれぞれ3.7倍、5.4倍および11倍と大幅に向上した(図1A~C)。
C末端リジンレベルに影響する他の緩和戦略、例えば細胞株工学および細胞培養培地および過程の最適化が文献において報告されている。Huら(Hu et al.,2017)は、C末端リジン欠失DNA配列を持つCHO細胞は実際にC末端リジン関連塩基性変異体をより少なく産生するが、しかし野生型CHO細胞よりもプロリンのアミド化が多いため、力価の低下および塩基性種全体の増加がもたらされた事を報告している。さらに、C末端リジンおよびグリシン欠失CHO細胞は、野生型CHO細胞よりも少ない塩基性種および同等の力価を産生する事が明らかになった。とはいえリジンおよびグリシン欠失mAbの安全性は、商業的製造に使用する前に患者において試験される必要が依然ある(Hu et al.,2017)。また、カルボキシペプチダーゼD遺伝子をノックアウトした後、CHO細胞は、mAb重鎖の末端に100%C末端リジンを産生した(Hu et al.,2016)。これはC末端リジンの不均一性を排除するための別の解決策を提供するが、C末端リジンを最小限に抑制するという本発明者らの目的とは反対であり、そのため細胞株を変更してより均一な製品を生産する事は選択肢に入らない。一般に、細胞株の変更は、細胞株の生成、リードクローンのスクリーニングおよび新規過程の開発のために必要な時間のために長い時間を必要とするだろう。最も重要なことに、開発の段階によっては、細胞株の変更は、規制当局の厳しい調査が要求される大きな過程変更である。したがって、細胞株の変更は、今回開発した酵素処置を採用するよりも実施が困難であり得る。
C末端リジンの調節はまた、細胞培養培地を使用したアプローチが行われてきた。銅濃度を低くすることおよび亜鉛濃度を高くする事(Luo et al.,2012;Yuk et al.,2015)および培地中のリジン濃度を調節する事(Zhang et al.,2015)が、C末端のレベルを低下させるために使用され得る。過程制御戦略について、低温への温度のシフトが細胞培養物における主要ピークレベルを増加させることがよく研究されている(Kishishita et al.,2015;McHugh,Xu,Aron,Borys,&Li,2020)。しかし、これらの培地および温度シフト戦略は、予想通り細胞株および過程に依存する事となる。
本発明のある実施形態では、バイオリアクター中で目的のタンパク質を産生するため、細胞を規定期間増殖させる。例えば、細胞培養物の開始濃度、細胞増殖温度および細胞固有の増殖速度に応じて、細胞を5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日以上バイオリアクター中で増殖させ得る。本発明の実施者は、ポリペプチドの生産要件および細胞自体の要求に応じて増殖期間を選択できる。本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、生産バイオリアクター中で少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも16日間、少なくとも17日間、少なくとも18日間、少なくとも19日間、少なくとも20日間、少なくとも21日間、または少なくとも22日間細胞を増殖させた後で添加される。
生産バイオリアクターの運転終了時において、細胞培養物ブロスを取り出し、細胞および細胞残渣を除去して収穫し、タンパク質の生成に好適な清澄化バルクを得る。これは一般に、規模および設備能力に応じて、遠心分離、深層濾過および無菌濾過を含むがこれに限定されない、任意の好適な技術によって達成される。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは細胞培養物の生産段階の任意の時点において添加される。本発明のいくつかの態様では、収穫の0、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間、またはそれ以上、またはその間の任意の時間前、または収穫中に、生産バイオリアクター中で増殖する細胞に添加される。本発明のある好ましい態様では、カルボキシペプチダーゼは収穫の約2時間前に添加される。
本発明のある態様では、生産バイオリアクターにカルボキシペプチダーゼを添加した後で、培養温度はそれ以前の培養条件に使用されたものと同じ温度に維持されるか、または温度はシフトされる。当分野における当業者は、本発明の実施における使用のために好適な温度を認識し、選択することができるはずである。
本発明のある態様では、生産バイオリアクターにカルボキシペプチダーゼを添加した後で、培養pHはそれ以前の培養条件に使用されたものと同じpHに維持されるか、またはpHはシフトされる。ある態様では、カルボキシペプチダーゼの添加後、pHは7.0よりも高い。当分野における当業者は、本発明の実施における使用のために好適なpHを認識し、選択することができるはずである。
本発明において開発されたCpB処置は、単純、堅牢、柔軟および費用対効果の高い、効率的なC末端リジンの除去のための方法を提供し、およびこれは細胞培養物の製造への影響が最小限であると期待される。基礎となるメカニズムの性質上、この酵素処置戦略は同様の品質問題を有する他の過程にも適用し得る。
発現タンパク質の精製
一般に、目的のタンパク質(例えばmAb)を清澄化バルクから単離および/または精製する事は通常望ましいことである。一般に、清澄化バルクは、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、タンパク質Aクロマトグラフィー)、ウイルス不活化&深層濾過、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ウイルス濾過、濃縮およびダイアフィルトレーションを含むがこれに限定されない一連の精製工程を経ることとなる。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼはこれらの精製過程のいずれかの間に添加される。
本発明のある実施形態では、本開示は、目的の治療タンパク質の生産性を改善する方法であって、a)タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;b)清澄化バルクを回収する工程;c)清澄化バルクを精製過程に供する工程;およびd)精製過程にカルボキシペプチダーゼを添加する工程、含む方法を提供する。
本発明のある実施形態では、本開示は、目的の治療タンパク質の生産方法であって、a)タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;b)清澄化バルクを回収する工程;c)清澄化バルクを精製過程に供する工程;およびd)精製過程にカルボキシペプチダーゼを添加する工程、含む方法を提供する。
組み換え抗体
本発明の方法は任意の抗体の大規模生産のために使用され得る。本発明の範囲内の抗体には、以下を含むがこれに限定されない:Trastuzumab(HERCEPTIN(登録商標))を含む抗-HER2抗体(Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285-4289(1992);抗-HER3抗体;抗-HER4抗体;米国特許第5,725,856号);抗-CD20抗体、例えば米国特許第5,736,137号におけるキメラ抗-CD20「C2B8」RITUXAN(登録商標)、米国特許第5,721,108号における2H7抗体のキメラまたはヒト化変異体、またはTositumomab(BEXXAR(登録商標));抗-IL-8(St John et al.,Chest,103:932(1993),および国際公開第95/23865号);ヒト化および/または親和性成熟抗-VEGF抗体、例えばヒト化抗-VEGF抗体huA4.6.1 AVASTIN(登録商標)(Kim et al.,Growth Factors,7:53-64(1992),国際公開第96/30046号,および1998年10月15日に公開された国際公開第第98/45331号)を含む抗-VEGF抗体;抗-PSCA抗体(国際公開第01/40309号);S2C6およびそのヒト化変異体(国際公開第00/75348号)を含む抗-CD40抗体;抗-CD11a(米国特許第5,622,700号,国際公開第98/23761号,Steppe et al.,Transplant Intl.4:3-7(1991),およびHourmant et al.,Transplantation58:377-380(1994));抗-IgE(Presta et al.,J.Immunol.151:2623-2632(1993),および国際公開第95/19181号);抗-CD18(1997年4月22日発行の米国特許第5,622,700号,または1997年7月31日公開の国際公開第97/26912号);抗-IgE(E25,E26およびE27を含む;1998年2月3日発行の米国特許第5,714,338号,または1992年2月25日発行の米国特許第5,091,313号,1993年3月4日公開の国際公開第93/04173号,または1998年6月30日出願の国際出願番号PCT/US98/13410,米国特許第5,714,338号);抗-Apo-2受容体抗体(1998年11月19日公開の国際公開第98/51793号);cA2(REMICADE(登録商標))、CDP571およびMAK-195を含む抗-TNF-α抗体(1997年9月30日発行の米国特許第5,672,347号,Lorenz et al.,J.Immunol. 156(4):1646-1653(1996),およびDhainaut et al., Crit.Care Med.23(9):1461-1469(1995)参照);抗-組織因子(TF)(1994年11月9日付与の欧州特許番号第0420937号);抗-ヒトαβインテグリン(1998年2月19日公開の国際公開第98/06248号);抗-EGFR(1996年12月19日公開の国際公開第96/40210号におけるキメラ化またはヒト化225抗体);抗-CD3抗体、例えばOKT3(1985年5月7日発行の米国特許第4,515,893号);抗-CD25または抗-tac抗体、例えばCHI-621(SIMULECT(登録商標))および(ZENAPAX(登録商標))(1997年12月2日発行の米国特許第5,693,762号参照);抗-CD4抗体、例えばcM-7412抗体(Choy et al.,Arthritis Rheum 39(1):52-56(1996));抗-CD52抗体、例えばCAMPATH-1H(Riechmann et al.,Nature 332:323-337(1988));抗-Fc受容体抗体、例えばGraziano et al.,J.Immunol.155(10):4996-5002(1995)におけるFcγRIに対して指向性のM22抗体;抗-がん胎児性抗原(CEA)抗体、例えばhMN-14(Sharkey et al., Cancer Res.55(23Suppl):5935s-5945s(1995);huBrE-3,hu-Mc3およびCHL6を含む、乳房上皮細胞に対して指向性の抗体(Ceriani et al.,Cancer Res.55(23):5852s-5856s(1995);およびRichman et al.,Cancer Res.55(23Supp):5916s-5920s(1995));結腸がん細胞に結合する抗体、例えばC242(Litton et al.,Eur J.Immunol.26(1):1-9(1996));抗-CD38抗体,例えばAT 13/5(Ellis et al.,J.Immunol.155(2):925-937(1995));抗-CD33抗体、例えばHu M195(Jurcic et al.,Cancer Res 55(23Suppl):5908s-5910s(1995)およびCMA-676またはCDP771;抗-CD22抗体、例えばLL2またはLymphoCide(Juweid et al.,Cancer Res 55(23Suppl):5899s-5907s(1995));抗-EpCAM抗体、例えば17-1A(PANOREX(登録商標));抗-GpIIb/IIIa抗体、例えばabciximabまたはc7E3 Fab(REOPRO(登録商標));抗-RSV抗体、例えばMEDI-493(SYNAGIS(登録商標));抗-CMV抗体、例えばPROTOVIR(登録商標);抗-HIV抗体、例えばPRO542;抗-肝炎抗体、例えば抗-HepB抗体OSTAVIR(登録商標);抗-CA125抗体OvaRex;抗-イディオタイプGD3エピトープ抗体BEC2;抗-αvβ3抗体VITAXIN(登録商標);抗-ヒト腎細胞癌抗体、例えばch-G250;ING-1;抗-ヒト17-1A抗体(3622W94);抗-ヒト結腸直腸がん抗体(A33);GD3ガングリオシドに対して指向性の抗-ヒトメラノーマ抗体R24;抗-ヒト扁平上皮がん(SF-25);抗-ヒト白血球抗原(HLA)抗体、例えばSmart ID10;抗-PD-1抗体;抗-PD-L1抗体;抗-LAG-3抗体;抗-GITR抗体;抗-TIGIT抗体;抗-CXCR4抗体;抗-CD73抗体;抗-IL-13抗体、抗-SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗体および抗-HLA DR抗体Oncolym(Lym-1)。
本発明のある態様では、mAbはニボルマブである。
本発明のある態様では、本開示は、細胞培養物中の目的のモノクローナル抗体(mAb)の不均一性を低減する方法であって、a)mAbを発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、生産バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程であって、ここでmAb塩基性種の割合は全mAbの8%よりも高い、工程、b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼを添加する工程;c)清澄化バルクを回収する工程;e)精製過程に供する工程、を含む方法を提供する。
本発明のある態様では、本開示は、細胞培養物中の目的のモノクローナル抗体(mAb)の不均一性を低減する方法であって、a)mAbを発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、生産バイオリアクター中で少なくとも10日間培養する工程であって、ここでmAb塩基性種の割合は全mAbの10%よりも高い、工程、b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼを添加する工程;c)清澄化バルクを回収する工程;e)精製過程に供する工程、を含む方法を提供する。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、mAb塩基性種を低減するのに十分なCP:mAb比で生産バイオリアクターに添加され、ここで、CP処置した清澄化バルクにおけるmAb塩基性種の割合は全mAbの10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%以下に低下する。
本発明のある態様では、カルボキシペプチダーゼは、mAb塩基性種を低減するのに十分なCP:mAb比で生産バイオリアクターに添加され、ここで、CP処置した清澄化バルクにおけるmAb塩基性種の割合は全mAbの8%未満に低下する。
本発明のある好ましい態様において、CP処置した清澄化バルクにおけるmAb塩基性種の割合は全Abの5%未満に低下する。
前述の記載は、単に代表例であるとして理解されるべきであり、限定する事を意図したものではない。本発明を実施するための代替的な方法および材料、また追加の用途は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
実施例1
材料および方法
mAb-1についての細胞株、培地および上流の細胞培養過程
本研究におけるmAb-1(IgG4)生産のために、4つの異なる細胞培養過程、過程A、B、CおよびDを使用した。内因性グルタミンシンテターゼ(GS)遺伝子を有し、GSを選択マーカーとして使用する事で操作された組み換えCHO細胞株を、独自の無血清培地を用いて過程Aに使用した。過程B、C、Dについては、内因性GSをノックアウトした新しいCHO細胞株(GS-/-)を、異なる独自の化学的規定培地で使用することに変更した。
過程Aは、5日目に36.5°Cから34°Cへの温度シフトを伴う5000Lおよび15,000Lのバイオリアクター規模での商業的製造に使用される、接種細胞密度0.3×10細胞/mLでの従来的な14日間のフェドバッチ過程であった。過程Bは、富化N-1シード培養物を伴う強化フェドバッチ過程であり(Yongky et al.,2019)、14日間のプロセスの6日目に36.5℃から34℃への温度シフトを伴い、3Lの初期作業量から開始して5Lバイオリアクター(Sartorius,Germany)中での目標接種細胞密度を3×10細胞/mLとして、開発された。過程Cは、灌流N-1シード培養物を伴う強化フェドバッチ過程であり(J.Xu,Rehmann,Xu,et al.,2020)、14日間のプロセスの4日目に36.5℃から34℃への温度シフトを伴い、3Lの初期作業量から開始して5Lバイオリアクター(Sartorius,Germany)中での目標接種細胞密度を15×10細胞/mLとして、開発された。過程Dは、1Lの作業量から開始して、3Lバイオリアクター(Applikon,USA)中での目標接種細胞密度が10×10細胞/mLであり、全期間にわたって36.5°Cである、灌流生産過程である。0日目から、ATF1システム(Repligen,USA)を使用した培地交換を行い、50×10細胞/mLの目標VCDに到達するまで、2~4バイオリアクター容量あたり培地量/日(volume of media per bioreactor volume per day )(VVD)にゆっくりと増量した。過程Dのバッチ1は、目標VCDに5日目に到達した。その後バッチ1についての培地交換について「Push-to-Low」(Konstantinov et al.,2006)戦略を使用し、5日目~11日目に4VVD、11日目~18日目に3VVD、18日目~25日目に2VVD、および26日目~31日目に1VVDを用いた。過程Dのバッチ2は目標VCDに6日目に到達し、その後培地交換を2VVDに変更し、21日間の運転期間中維持した。
mAb-1に関する上流の細胞培養物力価、生産性およびその他の工程内アッセイ
産物濃度または力価(g/L)をタンパク質A UPLCを使用して測定した。フェドバッチ法と灌流法の生産性を比較するために、本研究では空時収率または全体の容量あたり生産性(g/L/日)および空間収率(g/L)を使用した。空時収率は、0日目からmAb-1濃度を測定した日までの培養期間にわたっての、培養容量1L当たりの生産された全mAb-1と定義される(Bausch et al.2019)。空間収率とは、本研究で提示する新しい細胞培養用語であり、培養容量1L当たりの生産された全mAb-1として定義する。フェドバッチ過程の空間収率はバイオリアクター力価に等しく、一方で、産物を含む細胞培養物ブロスがバイオリアクターから除去されつつ新鮮な培地がバイオリアクターへと供給され続けるため、灌流過程の空間収率はバイオリアクター力価よりもかなり大きい。正規化空間収率または力価(正規化重量/L)は、過程Bの10日目平均力価を100%として、さらに相対的に正規化した。正規化空時収率(正規化重量/L/日)は、正規化空間収率(過程Bの10日目平均力価に対する相対値)を培養期間で除算したものに等しい。
その他の工程内細胞培養物アッセイは、以下のように行った。オフラインpH、pCO2およびpO2を、Bioprofile pHOx analyzer(Nova Biomedical,USA)を使用して検出した。VCDおよび細胞生存率をVi-CELL XR automatic cell counter(Beckman Coulter,USA)を使用してオフラインで測定した。グルコース、グルタミン、グルタミン酸、乳酸およびアンモニアを、CEDEX Bio HT analyzer(Roche,USA)を使用して計測した。
CpB処置方法
完全なC末端リジン残基の切断のためのCpB処置プロトコルは以下である:CpB酵素濃度は、25mM Tris-HCl および100mM NaClを含むTris緩衝液、pH7.6中に、CpB:mAb比1%(w/w)であり、37°Cで一晩インキュベートした。この方法を、全細胞培養物または上清を含む様々なマトリクスに適用した。mAb-1についてのCpB処置プロトコルは、0.01%(w/w)の非常に低濃度のCpBを、34°C、2時間で使用し、この場合も同様に完全なC末端リジンの切断を達成した。mAb-1の全細胞培養物および上清のpH値はpH7.5~8.0の最適範囲内であったため、全細胞培養物および上清のpH調製は行わなかった。バイオリアクターサンプルを1000gで10分間遠心分離することで上清を得た。CpB処置に使用した上清は、新鮮に調製されたもの、または-80°Cで保存した冷凍サンプルを解凍したもののいずれかであった。異なるpHおよび温度での研究に関する方法は結果の節に記載する。
異なる供給源に由来する3つの異なるCpB製品を本研究において使用した:大腸菌(E.coli)から製造された組み換えCpB(ProSpec-Tany TechnoGene Ltd.,Israel)、P.pastorisから製造されたGMPグレードの組み換えCpB(Roche,USA)、およびブタの膵臓から抽出されたブタCpB(Sigma-Aldrich Corporation,USA)。
下流過程およびCpBクリアランスの研究
下流過程のための細胞培養物を生成するため、およびCpBクリアランスを評価するために、結果の節に記載するように、2つの過程Bの5Lバイオリアクターを使用した。14日目の収穫において、収穫前の1つの5L全細胞培養物を0.05%(w/w)CpBで34°Cで2時間処置し、もう一方の5LバイオリアクターはコントロールとしてCpB処置なしで34°Cで2時間維持した。その後、処置したまたは未処置の5L全細胞培養物の両者を同一の下流工程を経て処理した。1000gで30分間遠心分離した後、上清を0.2μm無菌濾過によって濾過した。その後、清澄化バルクを、以下:タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーによる精製、低pHウイルス不活化および深層濾過、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、限外濾過およびダイアフィルトレーション(UF/DF)による濃縮、から構成される下流工程を経て処理し、最終的な製剤化DSを生成した。
製品の品質特性
全細胞培養物および上清サンプルの品質特性の評価のためには、品質特性アッセイに供する前にタンパク質Aクロマトグラフィーによる精製が必要である。タンパク質A工程の後の下流の工程内のサンプル(タンパク質A溶出、HICおよびCEXプール等)は直接、品質特性アッセイに供される。
電荷変異体種(主要、酸性および塩基性ピーク)を、Protein Simple iCE3 instrument with an Alcott 720NV autosampler(San Jose,CA)を使用して、画像キャピラリー等電点(iCIEF)法によって解析した。サンプルを適切なpIマーカー、両性電解質(ampholytes)および尿素と混合し、そしてフルオロカーボンでコーティングしたキャピラリーカートリッジに注入した。高電圧を印加すると、電荷変異体はその各々のpIに従って移動した。UVカメラで280nMにおける画像を撮影した。主要ピークを特定し、および酸性域および塩基性域に移動したピークを合計、定量し、相対パーセント面積として報告した。主要ピークについてのmAb-1の規格を100%に正規化した。正規化した主要ピークレベルが100%以上である場合、mAb-1原薬は規格を満たす。正規化した主要ピークレベルが100%未満である場合、mAb-1原薬は規格を満たさない。全ての主要ピークレベルおよび塩基性種レベルを、本研究においてはこのDS規格を100%として使用して、主要ピーク値に対して正規化した。酸性種のレベルは全ての過程についてCpB処置に依らず十分に規格内であったため、酸性種のレベルは報告しなかった。
N-グリカン解析を、Waters(Milford,MA)のGlyco Works RapiFluor-MS kitを使用して行った。遊離のオリゴ糖を、温度制御オートサンプラーおよび蛍光検出器を備えたWaters Acquity H-Class system(Milford,MA)上で、Acquity UPLC Glycan BEH Amide,130Å,1.7μm,2.1×10mm column(Milford,MA)を使用したグラジエント溶出により解析した。
不純物のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、Waters Acquity BEH200,4.6mm×30mm,1.7μmとWaters Acquity guard columnとを連結し、温度制御オートサンプラーおよびWaters 2996PDA detectorを備えたWaters Acquity UPLC system(Milford,MA)で、280nmで監視するアイソクラティックグラジエントを使用して行った。
サンプルを、CE-SDSによるタンパク質の純度のために、還元条件および非還元条件の両者において調整した。その後、サンプルを、UV detector(AB Sciex,Framingham,MA,USA)および50μm internal diameter pre-cut capillariesを備え、Karat softwareを使用するPA800instrument上に注入した。15kVの定圧を印加して分離を行った。データはWaters(Milford,MA,USA)のEmpower 3 softwareを使用してエクスポートおよび解析した。
HCPを、過程特異的なサンドイッチ酵素結合免疫吸着法(ELISA)を用いて定量した。サンプルをVWR(Radnor,PA,USA)のコーティングされたアッセイプレート上にロードし、吸光度をTecan Inc.(Morrisville,NC,USA)のMagellan Infinite M1000 Pro plate readerを使用して測定した。濃度は4-praramter logistic curve fittingアルゴリズムを使用して逆算した。
残存宿主細胞DNAを、Integrated DNA Technologies(Skokie,IL,USA)のフォワードおよびリバースプライマー、およびApplied Biosystems(Foster Cite,CA,USA)のTaqMan and extraction kitを使用したqPCRによってアッセイした。サンプルをApplied Biosystems(Foster City,CA,USA)の7900 real time PCR systemを使用して解析し、データは標準曲線を使用して処理した。
残存タンパク質Aを、Repligen(Waltham,MA,USA)の市販のELISAキットを使用してアッセイし、吸光度をTecan Inc.(Morrisville,NC,USA)のMagellan Infinite M1000Pro plate readerを使用して測定した。濃度は4-praramter logistic curve fittingアルゴリズムを使用して逆算した。
精製工程を通じて、残存CpBをELISAによって測定した。抗CpB抗体は社内で生成したが、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体はThermo Fisher Scientific Inc.,USAから購入した。
上流のコスト分析
上流の消耗品コストは、発明者らの以前の出版物(J.Xu,Xu,et al.,2020)において詳細に記載されるように、最終的な製剤化DS 1gあたりのドルとして計算された。本研究において、全ての上流コストは、10日目に収穫された過程Bについてのコストを100%として正規化した。略述すると、上流の消耗品コストは、培地、フィルター、プローブおよびバッグに焦点を当て、下流の処理(収穫を含む)コストは含めなかった。本研究において記載される強化ラボ過程は、5Lのバイオリアクターと同じ力価または空間収率、および同じ原材料消費率で2000Lの使い捨てバイオリアクター規模にスケールアップできると仮定した。DSリリース規格を満たすためにCpB処置により主要ピークを増加させることが必要とされるため、14日目の過程Bおよび過程Cについて、0.01%(w/w)での追加的なCpBコストを仮定した。DS 1gあたりの上流コストを算出するために、ラボスケールでの性能に基づいて下流全体の収率を70%と仮定した。
結果
CpB処置による強化過程の、mAb-1の生産性および品質(主要ピーク)の改善
従来的な製造過程AからのmAb-1の生産性を改善するために、本報告において3つの強化過程が開発された。方法の節に記載するように、空間収率(新しい用語であり、本研究においてバイオリアクター培養物1L当たりの生産されたタンパク質の全グラム数として定義する)および空時収率を、異なるフェドバッチ過程および灌流過程の生産性の比較のために使用した。空時収率は、フェドバッチ過程におけるバイオリアクターの力価に等しいが、灌流によって産物がバイオリアクター外に除去されるために連続過程についてはバイオリアクターの力価よりもかなり大きくなる。目標接種細胞密度0.3×10細胞/mLの過程Aでは、14日目において、37.0±2.4%(正規化重量/L)の正規化空間収率(または力価)、および2.6±0.2%(正規化重量/L/日)の正規化空時収率(または全体の容量あたり生産性)が得られた(n=29)。目標接種細胞密度3×10細胞/mLのフェドバッチ過程Bは、N-1シードにおいて富化培地を使用する事で強化され、14日目における正規化空間収率が138±5%(正規化重量/L)および正規化空時収率が9.9±0.9%(正規化重量/L/日)(n=4)であった(図1A)、一方で目標接種細胞密度15×10細胞/mLのフェドバッチ過程CはN-1シード培養について灌流することで強化され、14日目における正規化空間収率が198±2%(正規化重量/L)(n=4)であり、および正規化空時収率が14.1±0.2%(正規化重量/L/日)(n=4)で得られた(図1B)。灌流過程Dは、生産工程における灌流によって強化した。方法の節において記載するように「Push-to-Low」戦略による可変培地交換率を持つ過程Dのバッチ1では、31日目において994%(正規化重量/L)の正規化空間収率を得た(図1C)。過程Dのバッチ1では、17日目において30%(正規化重量/L/日)の正規化空時収率を得て、およびその後17日から31日までの間、バッチ1の正規化空時収率は30~33%(正規化重量/L/日)の間で維持された(図1C)。2VVDの固定培地交換率を持つ過程Dのバッチ2では、21日目において599%(正規化重量/L)の正規化空間収率を得た(図1C)。過程Dのバッチ2では、18日目において28%(正規化重量/L/日)の正規化空時収率を得て、およびその後18日から21日までの間、バッチ2の正規化空時収率は28~29%(正規化重量/L/日)の間で維持された(図1C)。
上記のように、強化過程の空間収率および空時収率は過程BからC、およびDへと顕著に増加し、いずれも過程Aに比して実質的に改善した。しかしフェドバッチ過程B(図2A)およびC(図2B)の両者ともに、主要ピークのレベルは、培養期間の増加につれて顕著に減少した。この特定のmAb-1について、主要ピークのDS規格限界は100%(正規化値)であり、これは商業的生産における過程Aに基づいて設定された。細胞培養物の生産性の改善は大きな利点であるが、タンパク質の品質特性はリリース規格を満たす必要がある。したがって、空間収率は14日の期間全体にわたって増加するが、過程Bについては10日目(図1A)および過程Cについては6日目(図1B)に収穫する必要があった。灌流過程Dは、全過程の内最も高い空間収率および空時収率を得たが、過程Dの主要ピークレベルは培養期間全体を通じて規格限界以下であったため(図2C)、過程Dは製造において実装できなかった。なお、電荷変異体プロファイルは下流過程の間で変化しなかった事に留意すべきである。その他の品質特性、例えばSEC不純物およびN-グリカンは、本研究において、細胞培養期間にかかわらず、強化工程B、CおよびDでは問題視されなかった(データは示さず)。
25~65%の範囲である強化過程における正規化塩基性種レベル(図3)は、5~18%である過程Aによりもかなり高かった(n=164)。強化過程の例として図4に示すように、塩基性種は主にC末端リジンによるものであり、これは標準的なCpB処置アッセイの後の値が実質的に低下する事から実証された。CpB処置後、塩基性種の大部分は主要ピークへと変換され、主要ピークは91.8%から107.7%に増加した。91.8%の主要ピークは規格(すなわち主要ピークが100%以上)を満たさないが、CpB処置後の107.7%の主要ピークは規格を満たしている(図4)。なお、酸性種のレベルは、CpB処置に関わらず、過程B、CおよびDからの全てのサンプルについて規格を満たしていた事は留意されるべきである(データは示さず)。したがって、CpB処置後の酸性種の変化は問題視されず、本研究においては主要ピークおよび塩基性種についてのみ報告する。
複数の時点における、過程B、CおよびDから生成された全ての工程内サンプルについて、CpB処置を行い、その主要ピークレベルへの影響を評価した。図2に示すように、CpB処置後(破線)、全ての強化過程について塩基性種の減少に伴い主要ピークレベルが実質的に増加した(図3)。全ての強化過程について、試験期間の全体にわたって、異なる時点での正規化主要ピークレベルは100%を超えていた(図2)。したがって、過程Bについて細胞培養期間を10日から14日に延長する事ができ、最終的な収穫力価は平均で38%増加した(10日目の力価との比較、図1A)、および過程Cについて細胞培養期間を6日から14日に延長する事ができ、最終的な収穫力価は平均で108%増加した(6日目の力価との比較、図1B)。過程Dについて、CpB処置(図2Cおよび3C)は最も顕著な影響を有し、この過程が製造において実行可能な選択肢となり得ることを可能にした。
mAb-1についてのCpB処置の最適化
予備的なラボでの試験の後で(データは示さず)、2時間の反応時間はC末端リジンの除去のために十分であり、生物学的製造作業における実装に容易であるため、2時間のCpB処置を選択した。最初の酵素:mAb比1%(w/w)に基づいてCpB処置方法をさらに最適化した。第1に、異なるマトリクスにおける酵素濃度を、CpB処置効率について評価した。全細胞培養物ブロスにおいて、標準的なCpB処置方法(例えば、1%(w/w)酵素濃度)は期待通り塩基性種の大部分を主要ピークへと変換した(図5)。CpB濃度を100分の1に減らして0.01%としても、1%(w/w)のCpBでの標準的な処置と同等の効率が得られる事が観察された(図5)。加えて、0.01%(w/w)CpB濃度はまた、細胞培養上清およびTris緩衝液中においてもよく機能した。とはいえ、図5に示すように、CpB濃度を0.001%(w/w)まで低下させると、細胞培養上清(t検定、p<0.0001)およびTris緩衝液(t検定、p<0.01)の両者において、主要ピークレベルは0.01%(w/w)での処置に比して顕著に低下した。C末端リジンの効果的な切り取りを確実にするため、0.01%(w/w)の濃度を選択し、以降の全ての研究を進めた。
第2に、CpB処置の温度を研究した。フェドバッチ細胞培養は36.5°Cで開始し、34°Cの低温へとシフトさせ、一方で、収穫および下流の精製工程は室温で行った。したがって、室温から、32、35、および36.5°Cにわたる異なる温度を、0.01%(w/w)CpBを2時間で使用して研究した(図6)。室温および36.5°C間で、類似の高いCpB処置効率が観察された(図6)。
第3に、pHの影響を研究した。フェドバッチ過程はpH6.5~8.0で操作され得るが、下流工程は通常さらに広いpH範囲で操作される。したがって、0.01%(w/w)CpBを34°C、2時間で用いて、pH5~9の範囲のpHの影響を評価した。34℃という温度は、操作を容易にするために、最終的なCpB処置工程が細胞培養過程の最後に行うことが好ましいために選択されたものであり、これについては、本研究の後半で詳しく説明する。塩基性種から主要ピークへの変換は、pH7.2~8.9で同様の高い効率が観察されたが、pH6.0~7.0では約4%低い効率が観察された(図7)。pH5.0では、はるかに低い効率が観察された(図7)。
以上より、CpB処置は、全細胞培養物、細胞培養上清(または収穫時の清澄化バルク)、およびTris緩衝液を含む異なるマトリクスにおいて、広範囲のpHおよび温度で有効であると考えられる(図5~7)。CpB処置は他の緩衝液、例えばクエン酸塩、リン酸塩においても同様に有効であることが分かった(データは示さず)。理論的には、これらの結果は、バイオリアクターの操作から、収穫および異なる下流の精製工程までの生物学的製造過程の複数の工程のいずれかにCpB処置を導入し得る事を示唆する(図8)。フェドバッチ過程の細胞培養部の終点において2時間のCpB処置を導入する事に決めた。その主な理由は以下である。濾過による収穫の開始前にバイオリアクターを34°Cから室温まで冷却するが、これは商業用の生物学的製造において2時間よりも長くかかる。34°Cから室温までの温度範囲および冷却時間は有効なCpB処置のために理想的である(図6)。細胞培養においては無菌操作が要求されるが、冷却段階の短い時間であれば、CpBを生産バイオリアクターに添加するために無菌操作は不要であった。これは既存の製造過程への影響を最小限にしつつCpB処置をより容易にする。全細胞培養物のpHはpH7.5~8.0の間であり、処置に最適であった(図7)。最終的な原薬中におけるCpB(新規原料)のクリアランスは完全に実証される必要があるが、製造バイオリアクター工程の完了時にCpBを導入する事で、収穫および下流の精製工程の間でその効果的な除去が可能である。灌流過程Dについては、0.2μm無菌濾過およびタンパク質A精製工程の前に、CpB処置は、サージ容器中に室温で2時間導入する事ができた。
5L規模でのCpB実装過程の実証
最終DS中において、生物学的製造において使用された全ての原料のクリアランスが実証されなければならないため(FDA,2016;J.Xu,Rehmann,Tian,et al.,2020)、過程Bを例として使用して、2つの5Lフェドバッチバイオリアクターを行った。一方にはCpB処置を行い、もう一方には行わず、続く収穫および下流の工程を行った。最終DSにおけるCpBの十分な除去を確実にするために、5倍のCpBレベルである0.05%(w/w)を使用した。細胞培養物の性能パラメーター、例えばVCD、細胞生存率および正規化力価は、未処置のコントロール過程Bのものと類似していた。タンパク質A工程だけでCpBの2log以上の低下を示した(図9)。タンパク質Aの溶出中においてCpBは検出限界よりも低く(<50μg/L)、下流の工程の残りにおいても検出できないままであった(表1)。電荷変異体プロファイルに関して、CpB処置サンプルの主要ピークレベルは、未処置サンプルのものよりも高く、および下流工程を通して各群(arm)について同様のレベルを維持していた(表1)。全ての他の品質特性、例えば工程由来不純物(process related impurities)および製品由来不純物(product related impurities)は、この2つの条件間で同等であり、同様の工程と全体の下流収率を達成した(表1)。
mAb-1についてのCpB処置コスト分析
CpB処置の実装による細胞培養期間の延長によって、平均最終力価はそれぞれ過程Bについて38%、および過程Cについて108%向上した(図1および表2)。0.01%(w/w)CpB添加は上流のバッチ当たりの全消耗品コストをわずかに増加させ、過程Bでは5%、および過程Cでは6%の増加であったが、培養期間を14日に延長することによって顕著な力価の向上が達成されたため、DS 1gあたりの上流の消耗品コストはそれぞれ過程Bでは22%、および過程Cでは46%低下した(表2)。
CpB処置の他のmAb製品への潜在的な応用
mAb-1に加えて、6つの他のmAb製品を、1%(w/w)CpB濃度を使用した標準的なCpB処置方法を用いて試験した。mAb-2、mAb-3およびmAb-4について、CpB処置により塩基性種が実質的に減少し、および主要ピークが増加した(表3)。mAb-5についても、塩基性種および主要ピークにおける効果は明らかであったが、その程度は小さかった。しかし、mAb-6およびmAb-7については、変化は観察されなかった(表3)。塩基性種の減少におけるCpBの有効性の違いは、これらのmAbの細胞培養物におけるC末端リジンの存在量の違いに起因するものであった。CpB処置はC末端リジンによる塩基性種のみを変換し得るが、N末端ピログルタミン酸、アミド化などの他の分子修飾に起因する塩基性種は変換できなかった。これらの結果は、主要ピークを増加させる事によってタンパク質の均一性を改善するためのCpB処置戦略を、C末端リジン種を含むmAb製品に適用し得る事を示唆する。
実施例2
材料および方法
細胞株、培地および細胞培養過程
独自のヒトmAb-8の発現のためにCHO GS細胞株を使用し、一方で独自のヒトmAb-3の発現のためにCHO DG44細胞株を使用した。独自の化学的規定シード培地、基礎培地およびフィード培地を使用した。バイアルの解凍およびシード増殖工程は、CHO GS細胞株の選択薬剤としてメチオニンスルホキシミンを含むシード培地、およびCHO DG44細胞株の選択薬剤としてメトトレキサートを含む別のシード培地を含む振盪フラスコ(Corning Life Sciences)を使用して行った。生産培養の接種の前に、少なくとも2週間、3~4日毎に細胞を継代した。フェドバッチ生産細胞培養の運転は、初期容量80mLの基礎培地および1.5×10細胞/mLの目標接種生細胞密度(VCD)を持つシード培養物を含む250mLの振盪フラスコ(n=3)を使用して行った。独自のフィード培地および300g/Lグルコース溶液をフェドバッチ生産培養物への良好な栄養供給を維持するために使用し、12日目に収穫した。全てのシード培養物および生産培養物を加湿インキュベーター(Climo-Shaker,Kuhner)内で、最初の5日間は、36.5°C、5%COおよび150rpmの標準的な条件を使用して培養した。その後、全ての生産細胞培養物について、5日目に温度を34°Cに変更し、12日目の収穫まで培養した。
In-vitro CpB処置プロトコル
本実験における使用の前に、P.pastoris(Roche)から産生された2.6mg/mLのGMPグレード組み換えCpBを-20°Cで凍結保存した。C末端リジン残基を切断するためのin-vitro CpB処置プロトコルを図10に示す。使用の直前に1mLの凍結CpBアリコートを解凍し、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(Gibco)で50倍に希釈した。フェドバッチ生産の終点において、各振盪フラスコから、20mLの全細胞培養物を2つの50mLファルコンチューブに分注した。1セットのファルコンチューブ(n=3)をCpB無しのコントロールとして保管した。もう一方のセットのファルコンチューブ(n=3)に、50倍希釈したCpBを、1:10,000(w/w)のCpB:mAb比で添加した。続いて、全てのファルコンチューブを同じ生産細胞培養条件(150rpm、34°Cおよび5%CO)の加湿インキュベーターに戻した。2時間のインキュベーション後、培養物を1000×gで10分間遠心分離し、および上清を回収し、品質特性アッセイの前に2~8°Cで保存した。
工程内細胞培養物および品質特性アッセイ
各振盪フラスコから細胞培養物ブロスをサンプリングし、細胞数、栄養素および代謝産物について直接解析した。VCDおよび細胞生存率はVi-CELL XR automatic cell counter(Beckman Coulter)を使用してオフラインで定量した。グルコース、乳酸およびアンモニアはCEDEX Bio HT analyzer(Roche)を使用して定量した。
力価測定について、細胞培養物ブロスを1000×gで10分間遠心分離し、およびその上清をタンパク質A UPLC法を使用して解析した。正規化重量/Lで表される正規化力価は、発明者らの以前の報告(Xu et al.2021b)に記載のように、各時点における真の力価(g/L)をmAb-1についての10日目の力価の平均(g/L)で除算したものに等しい。正規化重量/L/日で表される正規化容量あたり生産性は、正規化力価の差を2つの時点間の期間で除算したものとして計算した。
品質特性アッセイについて、-80°Cの、CpB処置した上清およびCpB処置しなかった上清の全ての上清を解凍し、最初にタンパク質Aクロマトグラフィーで精製した。品質特性アッセイは以前に記載されたように行った(Yongky et al.2019)。電荷変異体種(酸性、主要および塩基性)は画像キャピラリー等電点によって測定した。mAb-8およびmAb-3についての主要ピークおよび塩基性種の両方を、以前の発明者らの報告(Xu et al.2021b)に記載のように、主要ピークについてのmAb-1規格を100%として正規化した。Nグリカンプロファイル(例えばG0、G0F、G1F、G2FおよびMan5)はWatersの市販のRapiFluor-MS N-Glycan kitを使用して測定した。SECを使用してSEC不純物(例えば高分子(HMW)、低分子(LMW)および単量体)を測定した。
統計解析
別段の記載が無い限り、図中のデータは標準偏差を伴う標本の平均値である。スチューデントのt検定分析(Student’s t-test analysis)はMicrosoft Excelを使用して行い、有意水準はp値<0.05に設定した。
結果
工業用CHO GS細胞株によるmAb-8についての、in-vitro CpB処置前および処置後の細胞培養性能および重要品質特性
工業用CHO GS細胞株によるmAb-8生産のために、250mL振盪フラスコ(n=3)で12日間のプラットフォームフェドバッチ細胞培養過程を使用した。初期接種VCDは1.65±0.13×10細胞/mL(図11A)であった。6日目に25.83±0.71×10細胞/mLのVCDのピークに到達し、9日目まで約25×10細胞/mLを維持した。その後9日目から12日目にかけてVCDは減少し、最終VCDは19.83±0.65×10細胞/mLであった。初期の細胞生存率は98.1±0.65%であり、これは全期間にわたって十分に維持され、最終細胞生存率は97.0±0.15%であった(図11A)。
正規化力価は、6日目の13.5±0.0%から10日目の43.1±0.0%まで直線的に増加し、平均生産性は7.41%正規化重量/L/日であった。続いて、力価は徐々に横ばいになり、12日目における最終的な正規化力価は48.5±0.0%であり、および10日目から12日目の間の平均生産性は2.69%であった(図11A)。
mAb-8フェドバッチ生産についての代謝産物プロファイルを図11Bに示す。グルコース濃度は全期間にわたって1~6g/Lで維持された。予想通り、乳酸は早期細胞増殖期の間増加し、5日目に3.16±0.01g/Lの乳酸濃度のピークを示し、およびその後乳酸消費期に切り替わり、10日目から12日目には1.2~1.4g/Lの濃度に減少した(図11B)。アンモニウムは、早期細胞増殖期である4日目における3.60±0.02mMのアンモニウム濃度のピークまで増加し、7日目に1.12±0.04mMの最低レベルまで減少し、および7日目から12日目まで再度徐々に増加し、最終濃度は2.70±0.02mMであった(図11B)。細胞培養の早期に増加し、中期には減少し、そして後期には再度増加するというこのアンモニウムのパターンはフェドバッチ細胞培養において通常のものであり、他のCHO細胞株による異なるmAb生産についての本発明者らの以前の報告と一致する(Xu et al.2020b;Xu et al.2020c)。
mAb-8生産についてCpB処置したものおよび処置しなかったものの電荷変異体および他の重要な品質特性を図12A、図12Bおよび図12C(n=3)に示した。CpBの対象としなかったコントロール条件は47.6±1.60%の正規化塩基性種の平均値を示した。注目すべきことに、CpB処置条件において正規化塩基性種は29.0±0.37%に顕著に減少した(p<0.0001)(図12A)。これに応じて正規化主要ピークの平均値が108.8±0.31%へと増加する事がCpB処置条件について観察され、コントロールで示された93.9±1.12%の正規化主要ピーク値から顕著に増加した(p<0.0001)(図12A)。よって、CpB処置によって減少した塩基性種の大部分(18.6%中の14.8%)は主要ピークへと変換され、CpB処置によって減少した塩基性種の残りの3.8%は酸性種へと変換された。CpB処置はmAb-8の主要ピークを顕著に増加させたが、SEC不純物(図12B)およびNグリカン(図12C)は処置による影響を受けなかったため、このCpB処置は他の重要な品質特性に影響することなくmAbの塩基性電荷変異体を減少させる事が示唆された。
工業用CHO DG44細胞株によるmAb-3についての、in-vitro CpB処置前および処置後の細胞培養性能および重要品質特性
方法の節における記載のように、mAb-8について使用したものとは異なるシード培地および基礎培地を用いて工業用CHO DG44細胞株でmAb-3を生産した事を除いてmAb-8と同様に、mAb-3について、250mL振盪フラスコ(n=3)での12日間の同様のプラットフォームフェドバッチ細胞培養過程を使用した。初期接種VCDは1.51±0.08×10細胞/mLであり、および10日目に27.43±1.00×10細胞/mLのVCDのピークに到達した(図13A)。VCDは10日目から12日目にかけて減少し、最終VCDは24.03±1.01×10細胞/mLであった。0日目の細胞生存率は97.5±0.53%であり、これは培養期間の大部分にわたって十分に維持され、10日目の細胞生存率は94.6±0.62%であった。しかし、生存率は10日目から12日目の収穫にかけて減少し、最終細胞生存率は77.3±1.51%であった(図13A)。
正規化力価は6日目の13.5±0.0%から8日目の26.9±0.0%まで増加し、平均生産性は6.73%正規化重量/L/日であったが、8日目から10日目の間で9.43%の最も高い平均生産性が観察された。平均生産性は10日目から12日目の間で横ばいになり5.84%正規化重量/L/日であり、並行して最終正規化力価は57.5± 0.8%であった(図13A)。
mAb-3フェドバッチ生産についての代謝産物プロファイルを図13Bに示す。グルコース濃度は全期間にわたって1~9g/Lで維持された。乳酸は期間を通じて増加し、mAb-3については12日目に2.67±0.07g/Lの乳酸濃度のピークを示した(図13B)が、これはmAb-8についての乳酸のピークである3.16g/L(図11B)よりも低かった。mAb-3については乳酸消費期が無かったにも関わらず、乳酸のピークは2.67g/Lと低く、乳酸自体はフェドバッチ細胞培養の性能に影響しないはずである事を示唆する。アンモニウムは早期細胞増殖期の間、7日目の5.31±0.03mMのピーク濃度まで増加した。その後、アンモニウムは後期細胞増殖期の間、10日目の1.76±0.02mMの最低のレベルまで減少したが、11日目から12日目に約2.5mMまでわずかに再度増加した(図13B)。
mAb-8と同様に、全細胞培養物のin vitroのCpB処置は他の重要な品質特性に影響を及ぼすことなくmAb-3の主要ピークを増加させた(図14A、図14B および図14C、n=3)。CpB処置条件の正規化塩基性種の平均値は14.3±0.44%であり、これは未処置のコントロールの51.8±0.25%よりも顕著に低かった(p<0.0001)(図14A)。一方、CpB処置条件の正規化主要ピークの平均値は114.6±0.37%で、これはコントロールの92.1±0.51%よりも顕著に高かった(p<0.001)(図14A)。これは、CpB処置の後で、37.5%の塩基性種の内の22.5%が主要ピークへと変換され、塩基性種の残りの15%が酸性種へと変換された事を意味する。重要なことに、CpB処置はmAb-3の主要ピークを未処置のコントロールに比べて顕著に増加させたものの、SEC不純物(図14B)やN-グリコシル化(図14C)を含む他の重要な品質特性はCpB処置によって影響を受けなかった。

Claims (17)

  1. 目的の治療タンパク質の生産方法であって、
    a)該タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;
    b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼ(CP)を添加する工程;
    c)清澄化バルク(clarified bulk)を回収する工程;および
    d)清澄化バルクを精製過程に供する工程、
    を含む、方法。
  2. 目的の治療タンパク質の生産性を改善する方法であって、
    a)該タンパク質を発現する宿主細胞を、最適化された培養条件下で、バイオリアクター中で少なくとも6日間培養する工程;
    b)培養細胞にカルボキシペプチダーゼ(CP)を添加する工程;
    c)清澄化バルク(clarified bulk)を回収する工程;および
    d)清澄化バルクを精製過程に供する工程、
    を含む、方法。
  3. カルボキシペプチダーゼが、カルボキシペプチダーゼA(CPA)、カルボキシペプチダーゼB(CPB)、カルボキシペプチダーゼD(CPD)、カルボキシペプチダーゼH(CPH)、カルボキシペプチダーゼE(CPE)、カルボキシペプチダーゼM(CPM)、カルボキシペプチダーゼN(CPN)、カルボキシペプチダーゼT(CPT)、カルボキシペプチダーゼY(CPY)、カルボキシペプチダーゼM32、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ(GCP)、プロリルカルボキシペプチダーゼ(PCP)、D-アラニル-D-アラニンカルボキシペプチダーゼ(AACP)またはプロカルボキシペプチダーゼ、から選択される、請求項1~2に記載の方法。
  4. カルボキシペプチダーゼがカルボキシペプチダーゼB(CpB)である、請求項3に記載の方法。
  5. バイオリアクターが生産バイオリアクターである、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  6. 細胞が約14日間培養される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  7. カルボキシペプチダーゼが、収穫の0~24時間前に培養細胞に添加される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  8. カルボキシペプチダーゼが収穫の約2時間前に培養細胞に添加される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  9. 細胞が、灌流、バッチまたはフェドバッチ細胞培養物中である、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  10. カルボキシペプチダーゼが、CP:目的のタンパク質比が0.0001%~1%w/wの間の比率で添加される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  11. タンパク質が、C末端にリジンまたはアルギニン残基を有する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  12. タンパク質が、Fc-融合タンパク質または抗体である、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  13. 抗体がモノクローナル抗体(mAb)である、請求項12に記載の方法。
  14. カルボキシペプチダーゼが、目的のmAbの塩基性種を低減するために十分な量で添加される、請求項13に記載の方法。
  15. カルボキシペプチダーゼが、目的のmAbの主要種を増加させるために十分な量で添加される、請求項13に記載の方法。
  16. 宿主細胞が、CHO細胞である、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  17. 抗体が、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、TIGIT、GITR、CXCR4、CD73 HER2、VEGF、CD20、CD40、CD11a、組織因子(TF)、PSCA、IL-8、IL-13、EGFR、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、HER3、およびHER4からなる群より選択される抗原に結合する、請求項12に記載の方法。
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