以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図10は作業車両1の一実施形態を示す側面図であり、図10は作業車両1の一実施形態を示す平面図である。本実施形態の場合、作業車両1はトラクタである。但し、作業車両1は、トラクタに限定されず、コンバインや移植機等の農業機械(農業車両)であってもよいし、ローダ作業機等の建設機械(建設車両)等であってもよい。
以下、トラクタ(作業車両)1の運転席10に着座した運転者の前側(図10の矢印A1方向)を前方、運転者の後側(図10の矢印A2方向)を後方、運転者の左側(図10の矢印B1方向)を左方、運転者の右側(図10の矢印B2方向)を右方として説明する。また、作業車両1の前後方向に直交する方向である水平方向(図10の矢印B3方向)を車体幅方向として説明する。
図10に示すように、トラクタ1は、車体3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。車体3は走行装置7を有していて走行可能である。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。
原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディーゼルエンジンで構成されている。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。車体3には運転席10が設けられている。
また、車体3の後部には、3点リンク機構等で構成された連結部8が設けられている。連結部8には、作業装置を着脱可能である。作業装置を連結部8に連結することによって、車体3によって作業装置を牽引することができる。作業装置は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
図1に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、主変速部5bと、副変速部5cと、シャトル部5dと、PTO動力伝達部5eと、前変速部5fと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケース(ミッションケース)に回転自在に支持さ
れ、当該推進軸5aには、エンジン4のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部5bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
シャトル部5dは、シャトル軸12と、前後進切換部13とを有している。シャトル軸12には、副変速部5cから出力された動力がギア等を介して伝達される。前後進切換部13は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸12の回転方向、即ち、トラクタ1の前進及び後進を切り換える。シャトル軸12は、後輪デフ装置20Rに接続されている。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。
PTO動力伝達部5eは、PTO推進軸14と、PTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、回転自在に支持され、推進軸5aからの動力が伝達可能である。PTO推進軸14は、ギア等を介してPTO軸16に接続されている。PTOクラッチ15は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によって、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達する状態と、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達しない状態とに切り換わる。
前変速部5fは、第1クラッチ17と、第2クラッチ18とを有している。第1クラッチ17及び第2クラッチ18は、推進軸5aからの動力が伝達可能であって、例えば、シャトル軸12の動力が、ギア及び伝動軸を介して伝達される。第1クラッチ17及び第2クラッチ18からの動力は、前伝動軸22を介して前車軸21Fに伝達可能である。具体的には、前伝動軸22は、前輪デフ装置20Fに接続され、前輪デフ装置20Fは、前輪7Fが取り付けられた前車軸21Fを回転自在に支持している。
第1クラッチ17及び第2クラッチ18は、油圧クラッチ等で構成されている。第1クラッチ17には油路が接続され、当該油路には油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される第1作動弁25に接続されている。第1クラッチ17は、第1作動弁25の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第2クラッチ18には油路が接続され、当該油路には第2作動弁26に接続されている。第2クラッチ18は、第2作動弁26の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第1作動弁25及び第2作動弁26は、例えば、電磁弁付き二位置切換弁であって、電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、接続状態又は切断状態に切り換わる。
第1クラッチ17が切断状態で且つ第2クラッチ18が接続状態である場合、第2クラッチ18を通じてシャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達される。これにより、前輪7F及び後輪7Rが動力によって駆動する四輪駆動(4WD)で且つ前輪7Fと後輪7Rとの回転速度が略同じとなる(4WD等速状態)。一方、第1クラッチ17が接続状態で且つ第2クラッチ18が切断状態である場合、四輪駆動になり且つ前輪7Fの回転速度が後輪7Rの回転速度に比べて速くなる(4WD増速状態)。また、第1クラッチ17及び第2クラッチ18が接続状態である場合、シャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達されないため、後輪7Rが動力によって駆動する二輪駆動(2WD)となる。
トラクタ1は、測位装置40を備えている。測位装置40は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出する装置である。即ち、測位装置40は、測位衛星から送信された受信信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、受信信号に基づいて位置(例えば、緯度、経度)を検出する。測位装置40は、受信装置41と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。受信装置41は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された受信信号を受信する装置であり、慣性計測装置42とは別に車体3に取付けられている。この実施形態では、受信装置41は、車体3に設けられたロプスに取付けられている。なお、受信装置41の取付
箇所は、実施形態に限定されない。
慣性計測装置42は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。車体3、例えば、運転席10の下方に設けられ、慣性計測装置42によって、車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
図1に示すように、トラクタ1は、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、運転者の操作によって車体3の操舵を行う手動操舵と、運転者の操作によらずに自動的に車体3の操舵を行う自動操舵とを行うことが可能な装置である。
操舵装置11は、ステアリングハンドル(ステアリングホイール)30と、ステアリングハンドル30を回転可能に支持するステアリングシャフト(回転軸)31とを有している。また、操舵装置11は、補助機構(パワーステアリング装置)32を有している。補助機構32は、油圧等によってステアリングシャフト31(ステアリングハンドル30)の回転を補助する。補助機構32は、油圧ポンプ33と、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される制御弁34と、制御弁34により作動するステアリングシリンダ35とを含んでいる。制御弁34は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁であり、ステアリングシャフト31の操舵方向(回転方向)に対応して切り換わる。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)36に接続されている。
したがって、運転者がステアリングハンドル30を把持して一方向又は他方向に操作すれば、当該ステアリングハンドル30の回転方向に対応して制御弁34の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁34の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ35が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。つまり、車体3は、ステアリングハンドル30の手動操舵によって、進行方向を左又は右に変更することができる。
次に、自動操舵について説明する。
図2に示すように、自動操舵を行うに際しては、まず、自動操舵を行う前に走行基準ラインL1を設定する。走行基準ラインL1の設定後に、当該走行基準ラインL1に平行な走行予定ラインL2の設定を行うことによって自動操舵を行うことができる。自動操舵では、測位装置40によって測定された車体位置と走行予定ラインをL2とが一致するように、トラクタ1(車体3)の進行方向の操舵を自動的に行う。
具体的には、自動操舵を行う前にトラクタ1(車体3)を圃場内の所定位置に移動させ(S1)、所定位置にて運転者がトラクタ1に設けられた操舵切換スイッチ52の操作を行うと(S2)、測位装置40によって測定された車体位置が走行基準ラインL1の始点P10に設定される(S3)。また、トラクタ1(車体3)を走行基準ラインL1の始点P10から移動させ(S4)、所定の位置で運転者が操舵切換スイッチ52の操作を行うと(S5)、測位装置40によって測定された車体位置が走行基準ラインL1の終点P11に設定される(S6)。したがって、始点P10と終点P11とを結ぶ直線が走行基準ラインL1として設定される。
走行基準ラインL1の設定後(S6後)、例えば、トラクタ1(車体3)を、走行基準ラインL1を設定した場所とは異なる場所に移動させ(S7)、運転者が操舵切換スイッチ52の操作を行うと(S8)、走行基準ラインL1に平行な直線である走行予定ラインL2が設定される(S9)。走行予定ラインL2の設定後、自動操舵が開始され、トラクタ1(車体3)の進行方向が走行予定ラインL2に沿うように変更される。例えば、現在の車体位置が走行予定ラインL2に対して左側にある場合には、前輪7Fが右に操舵され、現在の車体位置が走行予定ラインL2に対して右側にある場合には、前輪7Fが左に操舵される。なお、自動操舵中において、トラクタ1(車体3)の走行速度(車速)は、運転者が手動で当該トラクタ1に設けられたアクセル部材(アクセルペダル、アクセルレバー)の操作量を変更したり、変速装置5の変速段を変更することにより変更することができる。
また、自動操舵の開始後、運転者が任意の箇所で操舵切換スイッチ52の操作を行うと、自動操舵を終了することができる。即ち、走行予定ラインL2の終点は、操舵切換スイッチ52の操作による自動操舵の終了によって設定することができる。つまり、走行予定ラインL2の始点から終点までの長さは、走行基準ラインL1よりも長く設定したり、短く設定することができる。言い換えれば、走行予定ラインL2は、走行基準ラインL1の長さとは関連付けされておらず、走行予定ラインL2によって、走行基準ラインL1の長さよりも長い距離を自動操舵しながら走行させることができる。
図1に示すように、操舵装置11は、自動操舵機構37を有している。自動操舵機構37は、車体3の自動操舵を行う機構であって、測位装置40で検出された車体3の位置(車体位置)に基づいて車体3を自動操舵する。自動操舵機構37は、ステアリングモータ38とギア機構39とを備えている。ステアリングモータ38は、車体位置に基づいて、回転方向、回転速度、回転角度等が制御可能なモータである。ギア機構39は、ステアリングシャフト31に設けられ且つ当該ステアリングシャフト31と供回りするギアと、ステアリングモータ38の回転軸に設けられ且つ当該回転軸と供回りするギアとを含んでいる。ステアリングモータ38の回転軸が回転すると、ギア機構39を介して、ステアリングシャフト31が自動的に回転(回動)し、車体位置が走行予定ラインL2に一致するように、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。
図1に示すように、トラクタ1は、表示装置45を備えている。表示装置45は、トラクタ1に関する様々な情報を表示可能な装置であって、少なくともトラクタ1の運転情報を表示可能である。表示装置45は、運転席10の前方に設けられている。
図1に示すように、トラクタ1は、設定スイッチ51を備えている。設定スイッチ51は、少なくとも自動操舵の開始前の設定を行う設定モードに切り換えるスイッチである。設定モードは、自動操舵を開始する前に当該自動操舵に関する様々な設定を行うモードであり、例えば、走行基準ラインL1の始点、終点の設定等を行うモードである。
設定スイッチ51は、ON又はOFFに切換可能であり、ONである場合には設定モードが有効である信号を出力し、OFFである場合には設定モードが無効である信号を出力する。また、設定スイッチ51は、ONである場合には設定モードが有効である信号を表示装置45に出力し、OFFである場合には設定モードが無効である信号を表示装置45に出力する。
トラクタ1は、操舵切換スイッチ52を備えている。操舵切換スイッチ52は、自動操舵の開始又は終了を切り換えるスイッチである。具体的には、操舵切換スイッチ52は、中立位置から上、下、前、後に切換可能であり、設定モードが有効である状態で中立位置から下方に切り換えられた場合には自動操舵の開始を出力し、設定モードが有効である状態で中立位置から上方に切り換えられた場合には自動操舵の終了を出力する。また、操舵切換スイッチ52は、設定モードが有効である状態で中立位置から後に切り換えられた場合には、現在の車体位置を走行基準ラインL1の始点P10に設定することを出力し、操舵切換スイッチ52は、設定モードが有効である状態で中立位置から前に切り換えられた場合には、現在の車体位置を走行基準ラインL1の終点P11に設定することを出力する。
トラクタ1は、補正スイッチ53を備えている。補正スイッチ53は、測位装置40によって測定された車体位置(緯度、経度)を補正するスイッチである。即ち、補正スイッチ53は、衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)と、慣性計測装置42で計測した測定情報(加速度、角速度)とで演算された車体位置(演算車体位置という)を補正するスイッチである。
補正スイッチ53は、押圧可能なプッシュスイッチ又はスライド可能なスライドスイッチで構成されている。以下、補正スイッチ53がプッシュスイッチ、スライドスイッチのそれぞれである場合について説明する。
補正スイッチ53がプッシュスイッチである場合、当該プッシュスイッチの操作回数に基づいて、補正量が設定される。補正量は、補正量=操作回数×1回の操作回数当たりの補正量(単位当たりの補正量)により決定される。例えば、図3Aに示すように、プッシュスイッチを操作する毎に、補正量が数センチ或いは数十センチずつ増加する。プッシュスイッチの操作回数が第1制御装置60Aに入力され、当該第1制御装置60Aが操作回数に基づいて補正量を設定(演算)する。なお、第1制御装置60Aは、プッシュスイッチの所定の操作、即ち、1回の操作回数当たりの補正量を変更可能である。図10Aに示すように、表示装置45に対して所定の動作を行うと、第1制御装置60Aは、表示装置45に補正量を設定する設定画面M30を表示する。設定画面M30では、プッシュスイッチの1回の操作当たりの補正量(単位当たりの補正量)を入力する設定入力部91が表示される。設定入力部91の単位当たりの補正量は、表示装置45を操作することによって入力することができる。表示装置45の設定入力部91に入力した単位当たりの補正量は、第1制御装置60Aに記憶することができる。つまり、設定入力部91に単位当たりの補正量を入力することによって、例えば、図3Aで示した単位当たりの補正量を2cmから4cmに変更することができる。
また、補正スイッチ53がスライドスイッチである場合、当該スライドスイッチの操作量(変位量)に基づいて、補正量が設定される。例えば、補正量は、補正量=所定位置からの変位量により決定される。例えば、図3Bに示すように、スライドスイッチの変位量が5mm増加する毎に、補正量が数センチ或いは数十センチずつ増加する。スライドスイッチの操作量(変位量)は、第1制御装置60Aに入力され、当該第1制御装置60Aが変位量に基づいて補正量を設定(演算)する。なお、補正スイッチ53がスライドスイッチあっても、プッシュスイッチと同様に補正量を変更することができる。
図10Bに示すように、表示装置45に対して所定の動作を行うと、第1制御装置60Aは、表示装置45に補正量を設定する設定画面M31を表示する。設定画面M31では、スライドスイッチの所定の操作、即ち、スライドスイッチの変位量に対する補正量(単位当たりの補正量)を入力する設定入力部92が表示される。設定入力部92の単位当たりの補正量は、表示装置45を操作することによって入力することができ、入力した単位当たりの補正量は、第1制御装置60Aに記憶することができる。つまり、設定入力部92に単位当たりの補正量を入力することによって、例えば、図3Bで示したように変位量が5mm増加毎での補正量(単位当たりの補正量)を2cmから4cmに変更することができる。なお、上述した補正量の増加方法及び増加の割合は、上述した数値に限定されない。
図4A及び図4Bに示すように、補正スイッチ53は、第1補正部53Aと、第2補正部53Bとを有している。第1補正部53Aは、車体3の幅方向における一方側、即ち、左側に対応する車体位置の補正を指令する部分である。第2補正部53Bは、車体3の幅方向における他方側、即ち、右側に対応する車体位置の補正を指令する部分である。
図4Aに示すように、補正スイッチ53がプッシュスイッチである場合、第1補正部53A及び第2補正部53Bは、操作を行う毎に自動的に復帰するON又はOFFのスイッチである。第1補正部53Aを構成するスイッチと第2補正部53Bを構成するスイッチとは一体化されている。なお、第1補正部53Aを構成するスイッチと第2補正部53Bを構成するスイッチとは互いに離間して配置されていてもよい。図3Aに示すように、第1補正部53Aを押圧する毎に、車体3の左側に対応する補正量(左補正量)が増加する。また、第2補正部53Bを押圧する毎に、車体3の右側に対応する補正量(右補正量)が増加する。
図4Bに示すように、補正スイッチ53がスライドスイッチである場合、第1補正部53A及び第2補正部53Bは、長孔の長手方向に沿って左又は右に移動する摘み部55を含んでいる。補正スイッチ53がスライドスイッチである場合、第1補正部53Aと第2補正部53Bとは互いに幅方向に離間して配置されている。図3Bに示すように、摘み部55を予め定められた基準位置から徐々に左側へ変位させると、変位量に応じて左補正量が増加する。また、摘み部55を予め定められた基準位置から徐々に右側へ変位させると、変位量に応じて右補正量が増加する。なお、図4Bに示すように、スライドスイッチである場合、第1補正部53Aと第2補正部53Bとを一体化に形成し、摘み部55の基準位置を中央部に設定し、基準位置から左側に移動した場合に左補正量が設定され、摘み部55を中間位置から右側に移動した場合に右補正量が設定される構成としてもよい。
次に、補正スイッチ53による補正量(左補正量、右補正量)と、走行予定ラインL2
と、トラクタ1(車体3)の挙動(走行軌跡)との関係について説明する。
図5Aは、自動操舵中で直進中に演算車体位置W1が右にずれた場合の状態を示している。図5Aに示すように、自動操舵が開始された状態において、実際のトラクタ1(車体3)の位置(実際位置W2)と演算車体位置W1とが一致し、且つ、実際位置W2と走行予定ラインL2とが一致している場合、トラクタ1は走行予定ラインL2に沿って走行する。即ち、測位装置40の測位に誤差がなく、測位装置40で検出した車体位置(演算車体位置W1)が実際位置W2と同じである区間P1では、トラクタ1は走行予定ラインL2に沿って走行する。なお、測位装置40の測位に誤差がなく補正も行われていない場合は、演算車体位置W1と、補正量で補正した補正後の車体位置(補正車体位置)W3とは同じ値である。補正車体位置W3は、補正車体位置W3=演算車体位置W1-補正量である。
ここで、位置P20の付近において、実際位置W2が走行予定ラインL2に対してズレていないのにも関わらず、様々な影響により、測位装置40の測位に誤差が生じ、測位装置40で検出した車体位置W1が走行予定ラインL2(実際位置W2)に対して右側にズレてしまい、ズレ量W4が維持されているとすると、トラクタ1は、演算車体位置W1と走行予定ラインL2とにズレが生じたと判断し、演算車体位置W1と走行予定ラインL2とのズレ量W4を解消するように、当該トラクタ1を左に操舵する。そうすると、トラクタ1の実際位置W2は左の操舵によって走行予定ラインL2にシフトする。その後、運転者がトラクタ1が走行予定ラインL2からズレていることに気づき、位置P21にて第2補正部53Bを操舵して右補正量を零から増加させたとする。演算車体位置W1に対して右補正量が加えられ、補正後の車体位置(補正車体位置)W3は、実際位置W2と略同じにすることができる。つまり、第2補正部53Bによって右補正量を設定することにより、位置P20の付近において発生したズレ量W4を解消する方向に、測位装置40の車体位置を補正することができる。なお、図5Aの位置P21に示すように、車体位置の補正後、トラクタ1の実際位置W2が走行予定ラインL2から左側に離れている場合は、トラクタ1は右に操舵され、当該トラクタ1の実際位置W2を、走行予定ラインL2に一致させることができる。
図5Bは、自動操舵中で直進中に演算車体位置W1が左にずれた場合の状態を示している。図5Bに示すように、自動操舵が開始された状態において、実際位置W2と演算車体位置W1とが一致し、且つ、実際位置W2と走行予定ラインL2とが一致している場合、図5Aと同様に、トラクタ1は走行予定ラインL2に沿って走行する。即ち、図5Aと同様に、測位装置40の測位に誤差がない区間P2では、トラクタ1は走行予定ラインL2に沿って走行する。また、図5Aと同様に、演算車体位置W1と補正車体位置W3とは同じ値である。
ここで、位置P22において、様々な影響により、測位装置40の測位に誤差が生じ、測位装置40で検出した車体位置W1が実際位置W2に対して左側にズレてしまい、ズレ量W5が維持されているとすると、トラクタ1は、演算車体位置W1と走行予定ラインL2とのズレ量W5を解消するように、当該トラクタ1を右に操舵する。その後、運転者がトラクタ1が走行予定ラインL2からズレていることに気づき、運転者が位置P23にて第1補正部53Aを操舵して左補正量を零から増加させたとする。そうすると、演算車体位置W1に対して左補正量が加えられ、補正後の車体位置(補正車体位置)W3は、実際位置W2と略同じにすることができる。つまり、第1補正部53Aによって左補正量を設定することにより、位置P22の付近において発生したズレ量W5を解消する方向に、測位装置40の車体位置を補正することができる。なお、図5Bの位置P23に示すように、車体位置の補正後、トラクタ1の実際位置W2が走行予定ラインL2から右側に離れている場合は、トラクタ1は左に操舵され、当該トラクタ1の実際位置W2を、走行予定ラインL2に一致させることができる。
次に、設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54について説明する。
図6に示すように、ステアリングシャフト31の外周は、ステアリングポスト180に
より覆われている。ステアリングポスト180の外周は、カバー177により覆われている。カバー177は、運転席10の前方に設けられている。カバー177は、パネルカバー178とコラムカバー179とを含んでいる。
パネルカバー178は、表示装置45を支持している。パネルカバー178の上板部178aには、表示装置45を支持する支持部178eが設けられている。支持部178eは、ステアリングシャフト31の前方且つステアリングハンドル30の下方において表示装置45を支持している。また、上板部178aは、設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54が取り付けられた取付面178fを有している。取付面178fは、支持部178eの後方であって且つステアリングハンドル30の下方に設けられている。支持部178eと取付面178fとは連続しており、支持部178eは上板部178aの前部に位置し、取付面178fは上板部178aの後部に位置している。設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、取付面178fに取り付けられている。これにより、設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。
パネルカバー178の左板部178bからはシャトルレバー181が突出している。シャトルレバー181は、車体3の走行方向を切り換える操作を行う部材である。より詳しく説明すると、シャトルレバー181を前方に操作(揺動)することにより、前後進切換部13が走行装置7へ前進動力を出力する状態となり、車体3の走行方向が前進方向に切り換えられる。また、シャトルレバー181を後方に操作(揺動)することにより、前後進切換部13が走行装置7へ後進動力を出力する状態となり、車体3の走行方向が後進方向に切り換えられる。シャトルレバー181が中立位置にあるときには、走行装置7へ動力が出力されない。
コラムカバー179は、ステアリングハンドル30の下方に配置されており、ステアリングシャフト31の上部の周囲を覆っている。コラムカバー179は、略四角筒状に形成されており、パネルカバー178の取付面178fから上方に突出している。つまり、取付面178fは、コラムカバー179の周囲に設けられている。そのため、取付面178fに取り付けられた設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、コラムカバー179の周囲に配置されている。
次に、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54のそれぞれの配置について詳しく説明する。図6に示すように、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。
設定スイッチ51は、ステアリングシャフト31の一側方(左方)に配置されている。操舵切換スイッチ52は、ステアリングシャフト31の一側方(左方)に配置されている。本実施形態の場合、操舵切換スイッチ52は、揺動可能なレバーから構成されている。操舵切換スイッチ52は、ステアリングシャフト31側に設けられた基端部を支点として揺動可能である。操舵切換スイッチ52の基端部は、コラムカバー179の内部に設けられている。操舵切換スイッチ52は、コラムカバー179の一側方(左方)に突出している。
補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の他側方(右方)に配置されている。より詳しくは、補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の右方且つ後方(斜め右後方)に配置されている。補正スイッチ53は、コラムカバー179との位置関係では、コラムカバー179の右方且つ後方(斜め右後方)に配置されている。補正スイッチ53は、パネルカバー178の取付面178fとの位置関係では、取付面178fの右後部に配置されている。補正スイッチ53が傾斜した取付面178fの後部に配置されていることによって、補正スイッチ53とステアリングハンドル30との距離を長く確保することができる。これにより、意図しない補正スイッチ53の操作やステアリングハンドル30の操舵をより確実に防止できる。
画面切換スイッチ54は、ステアリングシャフト31の他側方(右方)に配置されている。より詳しくは、画面切換スイッチ54は、ステアリングシャフト31の右方且つ前方
(斜め右前方)に配置されている。画面切換スイッチ54は、コラムカバー179との位置関係では、コラムカバー179の右方且つ前方(斜め右前方)に配置されている。画面切換スイッチ54は、パネルカバー178の取付面178fとの位置関係では、取付面178fの右前部に配置されている。また、画面切換スイッチ54は、補正スイッチ53の前方に配置されている。
上述の通り、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。言い換えれば、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、ステアリングシャフト31の周囲に集約して存在している。そのため、運転者は、各スイッチの位置を一目瞭然で把握することができる。加えて、運転者は、運転席10に着座したままの状態で姿勢を変えずに各スイッチを操作することができる。そのため、操作性が良好となり、且つ誤操作を防止することができる。また、各スイッチから配策されるハーネス(配線)を短くすることができる。
尚、上述したスイッチの配置について、左と右とを入れ替えて配置してもよい。つまり、一側方が左方であって他側方が右方であってもよいし、一側方が右方であって他側方が左方であってもよい。具体的には、例えば、設定スイッチ51及び操舵切換スイッチ52をステアリングシャフト31の右方に配置し、補正スイッチ53をステアリングシャフト31の左方に配置してもよい。
図1に示すように、トラクタ1は、複数の制御装置60を備えている。複数の制御装置60は、トラクタ1における走行系の制御、作業系の制御、車体位置の演算等を行う装置である。複数の制御装置60は、第1制御装置60A、第2制御装置60B及び第3制御装置60Cである。
第1制御装置60Aは、受信装置41が受信した受信信号(受信情報)と、慣性計測装置42が測定した測定情報(加速度、角速度等)を受信し、受信情報及び測定情報に基づいて車体位置を求める。例えば、第1制御装置60Aは、補正スイッチ53による補正量が零である場合、即ち、補正スイッチ53による車体位置の補正が指令されていない場合、受信情報と測定情報とで演算された演算車体位置W1に対して補正を行わず、演算車体位置W1を自動操舵時に用いる車体位置に決定する。一方、第1制御装置60Aは、補正スイッチ53による車体位置の補正が指令されている場合、補正スイッチ53の操作回数及び補正スイッチ53の操作量(変位量)のいずれかに基づいて車体位置の補正量を設定し、演算車体位置W1を補正量で補正した補正車体位置W3を自動操舵時に用いる車体位置に決定する。
第1制御装置60Aは、車体位置(演算車体位置W1、補正車体位置W3)及び走行予定ラインL2に基づいて制御信号を設定し、制御信号を第2制御装置60Bに出力する。第2制御装置60Bは、第1制御装置60Aから出力された制御信号に基づいて車体3が走行予定ラインL2に沿って走行するように自動操舵機構37のステアリングモータ38を制御する。
図7に示すように、車体位置と走行予定ラインL2との偏差が閾値未満である場合、第2制御装置60Bは、ステアリングモータ38の回転軸の回転角を維持する。車体位置と走行予定ラインL2との偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ラインL2に対して左側に位置している場合は、第2制御装置60Bは、トラクタ1の操舵方向が右方向となるようにステアリングモータ38の回転軸を回転する。車体位置と走行予定ラインL2との偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ラインL2に対して右側に位置している場合は、第2制御装置60Bは、トラクタ1の操舵方向が左方向となるようにステアリングモータ38の回転軸を回転する。なお、上述した実施形態では、車体位置と走行予定ラインL2との偏差に基づいて操舵装置11の操舵角を変更していたが、走行予定ラインL2の方位とトラクタ1(車体3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)F1とが異なる場合、即ち、走行予定ラインL2に対する車体方位F1の角度θが閾値以上である場合、第2制御装置60Bは、角度θが零(車体方位F1が走行予定ラインL2の方位に一致)するように操舵角を設定してもよい。また、第2制御装置60Bは、偏差(位
置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位(方位偏差θ)に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動操舵における最終の操舵角を設定してもよい。上述した実施形態における自動操舵における操舵角の設定は一例であり、限定されない。
第3制御装置60Cは、運転席10の周囲に設けられた操作部材の操作に応じて、連結部8を昇降させる。なお、第1制御装置60A、第2制御装置60B及び第3制御装置60Cは一体化されていてもよい。また、上述した走行系の制御、作業系の制御、車体位置の演算は限定されない。
車体3の走行に関する設定は、表示装置45により行うことができる。
以下、表示装置45の詳細について説明する。
図1に示すように、表示装置45は、検出装置47が検出した様々な情報を、車載ネットワーク等を介して取得可能である。検出装置47は、アクセルペダルセンサ、シフトレバー検出センサ、クランク位置センサ、燃料センサ、水温センサ、原動機回転センサ、操舵角センサ、油温センサ、車軸回転センサ等である。例えば、表示装置45は、運転情報として、燃料センサが検出した燃料残量、水温センサが検出した水温値、原動機回転センサが検出した原動機回転数等を表示することができる。
また、表示装置45は、様々なスイッチの情報、例えば、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53の情報を取得可能である。表示装置45は、設定スイッチ51のON又はOFFの情報、操舵切換スイッチ52における自動操舵の開始、終了の情報、操舵切換スイッチ52における走行基準ラインL1の始点P10及び終点P11の指令の情報を取得することができる。
図6に示すように、表示装置45は、様々な情報を表示する表示部46を備えている。表示部46は、警告等を表示する固定表示部46Aと、表示する情報を可変することが可能な可変表示部46Bとを含んでいる。固定表示部46Aは、警告等の図形が示されたパネルと、パネルの図形に対して光源を照射するLED等の照射部とを有している。また、可変表示部46Bは、有機EL、液晶等のパネルで構成され、トラクタ1の運転(走行)等に関する様々な情報を表示する。
表示装置45は、車体3と走行予定ラインL2とのズレ量(偏差)を表示可能である。具体的には、表示装置45は、偏差として測位装置40によって検出した車体位置(演算車体位置)W1と走行予定ラインL2との位置偏差(ズレ量)を表示する。表示装置45に対して所定の動作を行うと、当該表示装置45は、運転画面M1を表示する。
運転画面M1は、運転情報を示す運転表示部61を有している。運転表示部61は、運転情報として原動機4の回転数(原動機回転数)を表示する回転表示部62を含んでいる。回転表示部62は、レベル表示部63を含んでいる。レベル表示部63は、原動機回転数を段階的に表示する部分である。例えば、レベル表示部63は、目盛部65と、指標部80とを含んでいる。目盛部65は、例えば、第1ライン65Aと、第1ライン65Aに沿って所定の間隔で割り当てられた複数の第2ライン65Bとを有している。また、目盛部65は、第1ライン65Aと所定の間隔で離間した第3ライン65Cとを有している。第1ライン65A及び第3ライン65Cは、例えば、半円形状に形成されていて、一端側(例えば、左側)が最小値とされ、他端側(例えば、右側)が最大値とされている。
指標部80は、原動機回転数の大きさに応じて、長さが変化するバーである。指標部80は、例えば、第1ライン65Aと第3ライン65Cとの間に位置されて、原動機回転数の値が零の最小値である場合には、第1ライン65A及び第3ライン65Cの一端側(左側)に位置して長さが最も短く、原動機回転数の値が最大値である場合には、第1ライン65A及び第3ライン65Cの一端側(左側)から第1ライン65A及び第3ライン65Cの他端側(右側)に延びて最も長さが長くなる。回転表示部62は、数字表示部64を含んでいる。数字表示部64は、原動機回転数を数字で表示する。例えば、回転表示部62は、第1ライン65A及び第3ライン65Cの半円形の内側に配置されている。
したがって、運転表示部61によれば、エンジン回転数等の原動機回転数を、レベル表示部63によって段階的に表示し且つ、回転表示部62によって数字で表示することができる。
運転画面M1は、複数のアイコン部66を表示するアイコン表示部67を有している。アイコン表示部67は、様々な情報をアイコン部66で示す部分である。即ち、自動操舵等の走行に関する設定、例えば、設定モードで設定された設定状態をアイコン部66で表示する。アイコン表示部67は、運転表示部61とは異なる位置であって、例えば、運転画面M1の上部に配置されている。
複数のアイコン部66は、第1アイコン部66A、第2アイコン部66B、第3アイコン部66C、第4アイコン部66D、第5アイコン部66E、第6アイコン部66F、第7アイコン部66Gである。なお、運転画面M1は、複数のアイコン部66(66A、66B、66C、66D、66E、66F、66G)の全てを有する必要はなく、上述した実施形態に限定されない。
第1アイコン部66Aは、警告が発生した場合に表示される。第2アイコン部66Bは、走行基準ラインL1の始点P10が設定された場合に表示される。第3アイコン部66Cは、走行基準ラインL1の終点P11が設定された場合に表示される。
第4アイコン部66Dは、自動操舵の許可がなされている場合に表示される。例えば、第4アイコン部66Dは、設定モードが有効及び走行基準ラインL1の設定の完了であり、第2制御装置60Bの方位判定部207が自動操舵の許可を行った場合に表示される。第4アイコン部66Dを見ることによって、作業者は自動操舵が許可になっていると把握することができる。そして、作業者が、操舵切換スイッチ52を操作することにより自動操舵の開始を行うことができる。
第5アイコン部66Eは、連結部8が昇降状態である場合に表示される。第6アイコン部66Fは、4WD増速状態である場合に表示される。第7アイコン部66Gは、受信装置41の受信信号の受信感度に応じて色等が変化する。
図8A、図8Bに示すように、運転画面M1は、位置偏差表示部68を有している。位置偏差表示部68は、演算車体位置W1と走行予定ラインL2との位置偏差(ズレ量)を段階的に表示する部分である。位置偏差表示部68は、目盛部68aと、指標部68bとを含んでいる。目盛部68aは、原点68a1と、原点68a1から運転画面M1を横方向に延びるデータライン68a2とを含んでいる。原点68a1は、位置偏差が零である点を示していて、データライン68a2の長手方向中央部に設けられている。データライン68a2は、位置偏差の大きさを示す部分であって、原点68a1と反対側が最大値に設定されている。データライン68a2において、原点68a1から左側(一方側)は、車体3が走行予定ラインL2から左側(一方側)に変位している場合の位置偏差を示す領域(部分)であり、原点68a1から右側(他方側)は、車体3が走行予定ラインL2から右側(他方側)に変位している場合の位置偏差を示す領域(部分)である。また、データライン68a2には、複数の段階に分けられた補助目盛が示されていて指標部68bが補助目盛を指し示すことで位置偏差の大きさを把握することが可能である。
指標部68bは、現在の位置偏差の大きさを指し示す部分であって、データライン68a2に沿って移動する。位置偏差が零である場合は、指標部68bはデータライン68a2の長手方向中央部に位置し、原点68a1と一致する。車体3が走行予定ラインL2から左側(一方側)に変位していて、位置偏差が最大値である場合は、指標部68bはデータライン68a2の左端部に位置する。車体3が走行予定ラインL2から右側(他方側)に変位していて、位置偏差が最大値である場合は、指標部68bはデータライン68a2の右端部に位置する。例えば、位置偏差が1cmである場合には、指標部68bは、原点68a1から左側又は右側にデータライン68a2の1目盛分だけ移動する。また、位置偏差が5cmである場合には、指標部68bは、原点68a1から左側又は右側にデータライン68a2の5目盛分だけ移動する。なお、位置偏差の数値は一例であり限定されない。
このように、位置偏差表示部68において、測位装置40が検出した結果、即ち、演算車体位置W1と走行予定ラインL2との位置偏差(ズレ量)を表示することによって、補正スイッチ53による補正のタイミング、補正の有無を簡単に把握することができる。例えば、自動操舵中において、トラクタ1(車体3)の実際位置W2と走行予定ラインL2
とが一致しているにも関わらず、位置偏差表示部68に位置偏差が示された場合は、運転者(作業者)は、位置偏差表示部68に表示された位置偏差は、測位装置40の測位誤差によるものと判断することができる。測位装置40の測位誤差によって位置偏差が増加している場合は、上述したように、補正スイッチ53を操作することにより、演算車体位置W1に対して補正量を加えることで、測位装置40の測位誤差によるトラクタ1(車体3)の移動を抑制することができる。
上述した実施形態では、位置偏差表示部68に演算車体位置W1と走行予定ラインL2との位置偏差を表示していたが、少なくとも補正スイッチ53の操作後は、補正スイッチ53で補正した補正後の位置偏差である補正車体位置W3と走行予定ラインL2との位置偏差を表示してもよい。以下説明の便宜上、演算車体位置W1と走行予定ラインL2との位置偏差のことを「第1位置偏差W10」、補正車体位置W3と走行予定ラインL2との位置偏差を「第2位置偏差W11」という。
具体的には、図9Aに示すように、自動操舵の開始後、補正スイッチ53が操作されていない状態では、位置偏差表示部68は第1位置偏差W10を表示する(S51)。また、自動操舵の開始後、補正スイッチ53が操作される(第1補正部53A及び第2補正部53Bのいずれかが操作される)と、図9B、図9Cに示すように、位置偏差表示部68は、表示を第1位置偏差W10から第2位置偏差W11に切り換える(S52)。例えば、補正スイッチ53の操作後は、指標部68bは、第2位置偏差W11の値を目盛部68aに指し示す。
図9Aは、トラクタ1(車体3)の実際位置W2と走行予定ラインL2とが一致しているにも関わらず、測位装置40の測位誤差に起因して位置偏差表示部68に左側に第1位置偏差W10が表示されている状態を示している。図9Bは、図9Aと同様に測位装置40の測位誤差に起因して第1位置偏差W10が生じているものの、第1補正部53Aを操作することにより位置偏差表示部68には、第2位置偏差W11が表示されている状態を示している。図9Bに示すように、位置偏差表示部68に表示された第2位置偏差W11が略零である場合、第1補正部53Aにより適正に補正が行われたと判断することができる。一方、第1補正部53Aの操作後に位置偏差表示部68に表示された第2位置偏差W11が零にならず比較的大きい場合は、第1補正部53Aの操作による補正量が小さいと判断することができる。即ち、補正スイッチ53の第1補正部53Aを操作後、位置偏差表示部68に表示された第2位置偏差W11が大きい場合は、運転者は、第1補正部53Aを操作して補正量をより増加させる必要があると分かる。この場合は、運転者は、図9Bに示すように第2位置偏差W11が零になるまで第1補正部53Aを操作する。このように、位置偏差表示部68に第2位置偏差W11を表示することによって、補正スイッチ53の操作による補正量が適正であるか否かを判断することができる。
また、補正スイッチ53の第1補正部53Aの操作後、位置偏差表示部68に表示された第2位置偏差W11が図9Bに示されるように零となった後、一定時間の経過後に第2位置偏差W11が図9Cに示すように増加した場合は、測位装置40の測位誤差が解消されたと判断することができる。この場合は、運転者は、補正スイッチ53による補正量を零にする操作を行うことによって、トラクタ1(車体3)の挙動を安定化することができる。
作業車両1は、走行可能な車体3と、車体3の操舵を回転の操作によって行うステアリングハンドル30と、車体3に設けられ且つ測位衛星の信号に基づいて車体3の位置である車体位置を検出する測位装置40と、測位装置40で検出された車体位置の補正を指令する補正スイッチ53と、測位装置40で検出された車体位置と走行予定ラインL2に基づいて車体3を自動操舵可能な自動操舵機構37と、測位装置40で検出された車体位置と走行予定ラインL2との位置偏差を表示可能な表示装置45と、を備えている。これによれば、補正スイッチ53によって車体位置の補正を行える場合において、表示装置45は、測位装置40で検出された車体位置(演算車体位置)と走行予定ラインL2との位置偏差を表示することができる。そのため、実際にはトラクタ1(車体3)と走行予定ラインL2とが一致している状況下において、演算車体位置と走行予定ラインL2との位置偏
差が表示装置45に表示された場合、運転者(作業者)は、測位装置40による測位誤差によって位置偏差が発生していることを把握することができる。即ち、表示装置45に表示された位置偏差を運転者が見ることによって、測位装置40による測位誤差(測位精度)の影響を把握することができ、測位誤差がある場合には補正スイッチ53によって自動操舵に用いる演算車体位置を補正することができる。
表示装置45は、補正スイッチ53で補正された車体位置である補正車体位置と走行予定ラインL2との位置偏差を表示する。これによれば、補正スイッチ53を操作後の補正車体位置に対する走行予定ラインL2の位置偏差を把握することができる。
補正スイッチ53は、車体3の幅方向における一方側の車体位置の補正を指令する第1補正部53Aと、車体の幅方向における他方側の車体位置の補正を指令する第2補正部53Bとを含んでいる。これによれば、車体3の一方側の車体位置又は車体3の他方側の車体位置を簡単に補正することができる。
作業車両1は、補正スイッチ53が接続され且つ自動操舵機構37を制御する制御装置60を備え、制御装置60は、補正スイッチ53の操作回数に基づいて車体位置の補正量を設定する。これによれば、補正スイッチ53の操作回数により、補正量を設定(変更)することができる。
制御装置60は、補正スイッチ53の1回当たりの操作に対応する補正量を変更する。これによれば、補正スイッチ53を1回操作した場合の補正量を変更することができるため、様々な状況に合わせて補正スイッチ53の操作による車体3の自動操舵の状況を変えることができる。例えば、補正スイッチ53の1回操作した場合の補正量を小さくすることで自動操舵において細かい調整を行うことができ、補正スイッチ53の1回操作した場合の補正量を大きくすることで自動操舵の大まかな調整を行うことができる。
制御装置60は、補正スイッチ53の操作量当たりの補正量を変更する。これによれば、補正スイッチ53を所定量で操作した場合の補正量を変更することができるため、様々な状況に合わせて補正スイッチ53の操作による車体3の自動操舵の状況を変えることができる。例えば、補正スイッチ53を、所定量を操作した場合の補正量を小さくすることで自動操舵において細かい調整を行うことができ、補正スイッチ53の所定量を操作した場合の補正量を大きくすることで自動操舵の大まかな調整を行うことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
上述した実施形態では、表示装置45は位置偏差を表示していたが、走行予定ラインL2の方位とトラクタ1(車体3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)F1との方位偏差を表示してもよい。表示装置45において、方位偏差を表示する場合、上述した位置偏差を方位偏差に読み替えればよい。