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JP2021152076A - B細胞悪性腫瘍の治療のためのセルデュラチニブ - Google Patents

B細胞悪性腫瘍の治療のためのセルデュラチニブ Download PDF

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JP2021152076A
JP2021152076A JP2021108659A JP2021108659A JP2021152076A JP 2021152076 A JP2021152076 A JP 2021152076A JP 2021108659 A JP2021108659 A JP 2021108659A JP 2021108659 A JP2021108659 A JP 2021108659A JP 2021152076 A JP2021152076 A JP 2021152076A
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Abstract

【課題】B細胞悪性腫瘍の治療のためのセルデュラチニブの提供。【解決手段】それを必要とするヒト患者にて再発性または難治性の血液癌を治療する組成物及び方法が本明細書で提供される。該方法は、約10mg〜約75mgの1日用量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩を患者に投与することを伴い、その際、患者は、B細胞悪性腫瘍、慢性リンパ球性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)または他の形質転換FLの1以上を患っている、及び/または再発している、または以前の化学療法に応答していない。【選択図】図1

Description

関連出願への相互参照
本出願は、その双方とも、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる2015
年5月29日に出願された米国仮特許出願第62/168,530号及び2015年12
月4日に出願された同第62/263,582号の米国特許法第119条(e)のもとで
の利益を主張する。
発明の分野
本開示は一般に、B細胞悪性腫瘍及び再発性または難治性の血液癌を含む血液癌を治療
するためのセルデュラチニブ(cerdulatinib)の使用方法に関する。
造血組織及びリンパ組織の腫瘍または造血系及びリンパ系の悪性腫瘍は、血液、骨髄、
リンパ及びリンパ系を冒す腫瘍である。それらの要因は循環系及び免疫系の双方を介して
最終的にはすべてつながるので、1つを冒している疾患は同様に他を冒すことが多く、骨
髄増殖及びリンパ増殖(従って白血病及びリンパ腫)は密接に関連した且つ重複すること
が多い問題となる。
血液悪性腫瘍は2つの主要な血液細胞系列:骨髄細胞系とリンパ細胞系のいずれかに由
来してもよい。骨髄細胞系は正常では、顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ及び肥
満細胞を生じ、リンパ細胞系はB細胞、T細胞、NK細胞及び形質細胞を生じる。リンパ
腫、リンパ性白血病及び骨髄腫はリンパ系に由来する一方で、急性及び慢性の骨髄性白血
病、骨髄異形成症候群及び骨髄増殖性疾患は起源が骨髄である。
B細胞リンパ腫はB細胞を冒すリンパ腫の型である。リンパ腫はリンパ節における「血
液癌」である。B細胞リンパ腫にはホジキンリンパ腫とほとんどの非ホジキンリンパ腫の
双方が挙げられる。
濾胞性リンパ腫(FL)は一種の血液癌である。それは進行が遅い(緩慢増殖の)非ホ
ジキンリンパ腫の最も一般的なものであり、非ホジキンリンパ腫全体の中で2番目に最も
一般的なものである。それは濾胞中心B細胞(中心細胞及び胚中心細胞)のリンパ腫とし
て定義され、少なくとも部分的に濾胞パターンを有する。
慢性リンパ性白血病(CLL)としても知られるB細胞慢性リンパ球性白血病(B−C
LL)は、成人における白血病(白血球の癌の型)の最も一般的な型である。CLLは、
骨髄を起源とし、リンパ節で発達し、正常では抗体を産生することによって感染と闘うB
細胞リンパ球を冒す。CLLは、主としてリンパ節で症状が見つかるB細胞リンパ腫の型
である小リンパ球性リンパ腫(SLL)の一段階である。CLL及びSLLは見かけだけ
が異なる同じ基礎疾患と見なされる。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCLまたはDLBL)は、抗体を産生するこ
とに関与する白血球の種類であるB細胞の癌である。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は
、生物学的に且つ臨床的に多様なセットの疾患を包含し、その多くは明確に定義され、広
く受け入れられている基準によって互いに分けることができない。
シグナル伝達に介在するB細胞受容体(BCR)は慢性リンパ球性白血病(CLL)の
病態形成に必要とされ、BCRのシグナル伝達複合体中でのキナーゼを標的とする薬剤は
この疾患の治療に変革をもたらしている。
CLLの治療法に採用される一部の化学療法剤には、BTKを標的とするイブルチニブ
(IMBRUVICA(登録商標))及びPI3Kδを標的とするイデラリシブ(ZYD
ELIG(登録商標))が挙げられる。しかしながら、これらの化合物は疾患を抑制する
が、通常治癒させるものではない。さらに、CLL患者はBTLもしくは下流のシグナル
伝達タンパク質の突然変異または他のメカニズムを介してこれらの化学療法剤に対する耐
性を発生し得る。
CLL、SLL、DLBCL及びFLについての標準治療ができない患者にとっての現
在の治療選択肢は限られている。その結果、血液悪性腫瘍に対する新しい治療法の必要性
がある。
本明細書で提供されるのは、約10mg〜約75mgの1日用量のセルデュラチニブま
たは薬学上許容できるその塩を患者に投与すること含む、それを必要とするヒト患者にて
血液癌またはB細胞悪性腫瘍を治療する方法である。
本明細書で提供されるのはまた、有効量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるそ
の塩を患者に投与すること含む、それを必要とする患者にて再発性または難治性の血液癌
を治療する方法である。
一部の実施形態は、有効量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩を患者に
投与すること含む、それを必要とする患者にて再発性または難治性の血液癌を治療する方
法を提供し、
その際、患者は、再発及び/または血液癌を治療するための薬剤に対する耐性に関連があ
る突然変異を有し、
有効量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩は約30mg〜約80mgの1
日用量のセルデュラチニブである。
一部の実施形態では、血液癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リン
パ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん
性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)またはマントル細胞リンパ腫(MCL)である。
一部の実施形態では、それを必要とする患者は多数の理由で血液癌に対する薬剤耐性及
び/または再発を示している患者である。たとえば、患者は再発及び/または血液癌を治
療するための薬剤に対する耐性に関連がある突然変異を有してもよい。たとえば、患者は
、del17pの突然変異、P53の突然変異、ATMの突然変異、STATの突然変異
、STAT6の突然変異、C481S STAT6の突然変異、NOTCH経路に関連す
る突然変異、カデリン経路に関連する突然変異、またはそれらの組み合わせを有してもよ
い。一部の実施形態によれば、患者はP53、BTK及びEP300のすべてにおいて突
然変異を有さない。
2μMのセルデュラチニブで72時間の種々のDLBCL細胞株におけるFACS解析によるEdu取り込みの阻害を示すグラフである。 2μMのセルデュラチニブで72時間の種々のDLBCL細胞株におけるFACS解析によるカスパーゼ3切断の先行する誘導の阻害を示すグラフである。 溶媒または種々の用量レベルのセルデュラチニブで処理する間の時間に対してプロットした後肢炎症スコア(平均値±平均値の標準誤差(「SEM」);y軸;n=群当たり8匹)を提供する。各投与群の平均血漿濃度(Cmax)をグラフの右にて示す。星印はスチューデントt検定による溶媒と比べた統計的な有意性を示す(p<0.05)。 WTのBTKを形質移入したTMD8細胞におけるイブルチニブ及びセルデュラチニブの効果の結果を示す。250nMのイブルチニブまたはセルデュラチニブを培養物に加え、7日間毎日、生細胞の数を数えた。示した結果は4回の反復実験の平均値±標準誤差(「SE」)である。白抜きの丸=ジメチルスルホキシド(「DMSO」)、黒丸=イブルチニブ(「IBR」);三角=セルデュラチニブ(「Cerd」)。 BTKC481Sで形質移入したTMD8細胞におけるイブルチニブ及びセルデュラチニブの効果を示す。250nMのイブルチニブまたはセルデュラチニブを培養物に加え、7日間毎日、生細胞の数を数えた。示した結果は4回の反復実験の平均値±SEである。白抜きの丸=ジメチルスルホキシド(「DMSO」)、黒丸=イブルチニブ(「IBR」);三角=セルデュラチニブ(「Cerd」)。 変異させていない(「UM」)IGHVを有するCLL細胞(N=33)の方がIGHVを変異させた(「M」)CLL(N=27)よりもセルデュラチニブに感受性であることを示す。データはスチューデントt検定で解析した。IC50の平均値+SEをプロットする。p=0.0395 種々の細胞遺伝学的な異常を有するCLL細胞のセルデュラチニブ感受性を示す。各亜群についての症例数を示す。データはANOVA検定によって解析した。IC50の平均値+SEをプロットする。*,p<0.05
1. 定義
定義されない限り、本明細書で使用されている専門用語及び科学用語はすべて本開示が
属する技術の当業者によって共通して理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用
されるとき、以下の用語は以下の意味を有する。
本明細書にて及び添付のクレームにて使用されるとき、文脈が明瞭に指示しない限り、
単数形態「a」、「an」、及び「the」は複数の指示対象を含むことが言及されなけ
ればならない。従って、たとえば、「an agent」に対する言及は複数のagen
tsを含む。
本明細書で使用されるとき、用語「comprising(含んでいる)」または「c
omprises(含む)」は組成物及び方法が引用された要素を含むが、他を排除しな
いことを意味するように意図される。「consisting essentially
of(本質的に〜からなる)」は組成物及び方法を定義するのに使用される場合、示さ
れた目的での組み合わせに対して本質的な意義の他の要素を排除することを意味すべきで
ある。従って、本明細書で定義されているような要素から本質的に成る組成物は、請求さ
れている基本的で新規の特徴に実質的に影響を与えない他の物質または工程を排除しない
ことになる。「consisting of(からなる)」は、他の成分及び実質的な方
法工程の少し以上の要素を排除することを意味するべきである。これらの移行用語のそれ
ぞれによって定義される実施形態は本開示の範囲の中にある。
用語「約」は数字表示、たとえば、範囲を含む温度、時間、量及び濃度の前で使用され
る場合、(+)または(−)10%、5%または1%変化してもよい近似値を示す。
本明細書で使用されるとき、用語「薬学上許容できる塩」は、その対イオンが塩の薬学
的用量にて患者にとって毒性ではない酸または塩基の付加塩を指す。薬学上許容できる塩
のホストは薬学の分野で周知である。本開示の化合物の薬学上許容できる塩がこれらの組
成物で利用されるのであれば、それらの塩は好ましくは無機または有機の酸及び塩基に由
来する。そのような酸塩の中で挙げられるのは、以下:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン
酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエ
ン酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジ
グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ルコヘプタン酸塩、
グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、
ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンス
ルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペク
チン酸塩、過硫酸塩、3−フェニル−プロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロ
ピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、ヒ
ドロハロゲン化合物(たとえば、ヒドロ塩化物及びヒドロ臭化物)、硫酸塩、リン酸塩、
硝酸塩、スルファミン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、メチレン−ビス−b−ヒドロキ
シナフトエ酸塩、ゲンチジン酸塩、イセチオン酸塩、ジ−p−トルオイル酒石酸塩、エタ
ンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キナ酸塩、等である。薬学上許容で
きる塩基付加塩には限定しないで、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩基に由来す
るもの、または従来の有機塩基に由来するもの、たとえば、トリエチルアミン、ピリジン
、ピペリジン、モルフォリン、N−メチルモルフォリン、アンモニウム塩、アルカリ金属
塩、たとえば、ナトリウム及びカリウム塩、アルカリ土類金属塩、たとえば、カルシウム
及びマグネシウム塩、有機塩基を伴う塩、たとえば、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メ
チル−D−グルカミン、及びたとえば、アルギニン、リジンのようなアミノ酸を伴う塩、
等が挙げられる。
さらに、たとえば、塩化、臭化、及びヨウ化メチル、エチル、プロピル及びブチルのよ
うな低級アルキルハロゲン化合物、たとえば、硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジ
アミルのような硫酸ジアルキル、たとえば、塩化、臭化、及びヨウ化デシル、ラウリル、
ミリスチル及びステアリルのような長鎖ハロゲン化合物、たとえば、臭化ベンジル及び臭
化フェネチル等のようなアラルキルハロゲン化合物のような作用物質によって、塩基性窒
素含有基を四級化してもよい。それによって水溶性または油溶性または水分散性または油
分散性の生成物が得られる。
セルデュラチニブまたは本明細書に記載されている他の化合物の「プロドラッグ」も熟
考され、それらは生理的条件下で化学的変化を容易に受けて本開示の化合物を提供する化
合物である。さらに、プロドラッグは生体外環境にて化学的方法または生化学的方法によ
って本開示の化合物に変換することができる。たとえば、プロドラッグは、好適な酵素ま
たは化学試薬と共に経皮貼付剤リザーバに入れると本開示の化合物にゆっくり変換するこ
とができる。プロドラッグは活性のある薬剤に変換されるまで薬理学上不活性であること
が多いが、必ずしもそうではない。プロドラッグは通常、使用の特定の条件下で、たとえ
ば、切断のような形質転換を受けて官能基、従って活性のある薬剤を放出するプロ部分を
形成するプロ基(以下で定義される)による活性にある程度必要とされる考えられる薬剤
における官能基を覆い隠すことによって得られる。プロ部分の切断は、たとえば、加水分
解反応を手段としてのように自然発生的に進んでもよく、またはそれは、たとえば、酵素
によって、光によって、酸もしくは塩基によって、または温度の変化のような物理的もし
くは環境のパラメータの変化もしくはそれへの曝露によってのような別の作用因子によっ
て触媒されてもよいし、もしくは誘導されてもよい。作用因子は、たとえば、プロドラッ
グが投与される細胞に存在する酵素もしくは胃における酸性条件のように、使用の条件に
対して内在性であってもよく、またはそれは外来性に供給されてもよい。
「プロ基」は、活性のある薬剤の中での官能基を覆い隠してプロ部分を形成するのに使
用される場合、薬剤をプロドラッグに変換する保護基の種類を指す。プロ基は通常、使用
の特定の条件下で切断できる結合を介して薬剤の官能基に連結される。従って、プロ基は
、使用の特定の条件下で官能基を放出するように切断するプロ部分のその部分である。具
体例として、式−NH−C(O)CHのアミドプロ部分はプロ基−C(O)CHを含
む。
本明細書に記載されている化合物における官能基を覆い隠してプロドラッグを得るのに
好適な多種多様なプロ基と同様に得られるプロ部分は当該技術分野で周知である。たとえ
ば、アミノ官能基はアミド、カルバメート、イミン、尿素、ホスフェニル、ホスホリルま
たはスルフェニルというプロ部分として覆い隠されてもよく、それは生体内で加水分解さ
れてアミノ基を提供してもよい。本開示には、徐放性製剤またはプロドラッグ製剤として
使用するために溶解性または加水分解の特徴を改変するための当該技術分野で既知のエス
テル及びアシル基が含まれる。好適なプロ基及びそのそれぞれのプロ部分の他の具体例は
当業者に明らかであろう。
本明細書で使用されるとき、「阻害剤」は、刺激または活性を阻害するまたはそれに結
合する、部分的にまたは完全にそれを阻止する、活性化または酵素活性を減らす、終わら
せる、防止する、遅延させる、受容体の活性を不活化する、鈍感にするまたは下方調節す
る作用因子または分子を指す。
用語「薬学上許容できるキャリアまたは賦形剤」は一般に安全で、毒性ではなく、生物
学的にもその他にも望ましくない医薬組成物を調製するのに有用であるキャリアまたは賦
形剤を意味し、それには、ヒト医薬での使用と同様に家畜での使用に許容できるキャリア
または賦形剤が挙げられる。「薬学上許容できるキャリアまたは賦形剤」には本明細書で
使用されるとき、1及び1を超えるそのようなキャリアまたは賦形剤が含まれる。
用語「投与すること」は、経口投与、坐薬としての投与、局所接触、静脈内の、腹腔内
の、筋肉内の、病変内の、鼻内のまたは皮下の投与、または徐放用用具、たとえば、ミニ
浸透圧ポンプの対象への埋め込みを指す。投与は、非経口及び経粘膜(たとえば、頬内、
舌下、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸または経皮)を含む任意の経路による。非経口投与には
、たとえば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内及び頭蓋内が挙げ
られる。他の送達の方式には、リポソーム製剤の使用、静脈内点滴、経皮貼付剤等が挙げ
られるが、これらに限定されない。
「患者」は、ヒト及び非ヒト動物、特に哺乳類を指す。患者の例には、ヒト、ウシ、イ
ヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ及びウサギが挙げられるが、これらに限定されない。
用語「治療する」、「治療すること」、「治療」及びその文法的変形には本明細書で使
用されるとき、疾患または状態の1以上の付随する症状の激しさを部分的にまたは完全に
遅延させる、緩和する、和らげるまたは軽減すること、及び/または疾患または状態の1
以上の原因を緩和する、和らげるまたは妨げることが含まれる。本明細書に記載されてい
るような治療は予防的に、予防上、一時緩和で、または救済的に適用されてもよい。
用語「予防する」、「予防すること」、「予防」及びその文法的変形は本明細書で使用
されるとき、疾患または状態の発症もしくは再発及び/またはその付随する症状の1以上
を部分的にまたは完全に遅延させるまたは不可能にする、または対象が疾患または状態に
罹るまたは再び罹るのを防ぐ、または疾患または状態またはその付随する症状の1以上に
罹るまたは再び罹る対象のリスクを軽減する方法を指す。
本文脈では、用語「治療上有効な」または「有効量」は、投与された際の化合物または
物質または化合物もしくは物質の量が、治療される疾病、疾患または病状の1以上の症状
を予防する、緩和するまたは改善する、及び/または治療される対象の生存を延長するの
に十分であるまたは有効であることを示す。治療上有効な量は疾病、疾患または状態及び
その重症度ならびに治療される哺乳類の年齢、体重等に応じて変化するであろう。投与量
は、たとえば、1日4回までの分割用量でまたは徐放性形態で好都合に投与することがで
きる。
本明細書で使用されるとき、「1日用量」は24時間以内に服用されるべきである治療
物質の総量を指す。
本明細書に記載されている方法及び組成物は通常、ヒト対象のための治療法で使用され
るであろう。しかしながら、それらは他の動物対象における類似のまたは同一の適応を治
療するのにも使用されてもよい。この文脈で、「対象」、「動物対象」等は、ヒト及び非
ヒト脊椎動物、たとえば、非ヒト霊長類、スポーツ及び商業用動物、たとえば、ウマ、ウ
シ、ブタ、ヒツジ、齧歯類、及びペット、たとえば、イヌ及びネコのような哺乳類を指す
2.使用方法
悪性腫瘍B細胞は、腫瘍自体と同様に微細環境に存在する非腫瘍細胞を起源とする生存
シグナルを受け取る。B細胞抗原受容体(BCR)及びサイトカイン受容体は生存に寄与
する。
B細胞リンパ腫のサブセットは生存のためのBCR及び/またはサイトカインJAK/
STATシグナル伝達への依存を明らかにしている。SYKはBCRのシグナル伝達経路
におけるBTK、PI3Kδ及びPLCγ2の上流に位置して潜在的治療標的となってい
る。追加の生存支援は、サイトカインが誘導するJAK/STAT経路が介在すると思わ
れ、それは腫瘍自己分泌のシグナル伝達ループによって、または腫瘍微細環境に存在する
非腫瘍性浸潤白血球を起源とする炎症誘発性サイトカインによって活性化することができ
る。
幾つかのサイトカインの上昇した血清濃度はCLL及び非ホジキンリンパ腫(「NHL
」)で観察され、さらに悪性の疾病の進行を予測する。これらのサイトカインの供給源は
、自己分泌刺激の方法で腫瘍自体に由来してもよく、または腫瘍微細環境内での無効な免
疫応答を開始している非腫瘍性白血球に由来してもよい。実験的に、IL4は、培養にて
CLLのB細胞の生存を促進し、フルダラビン及びクロラムブシルでの治療による死滅か
らそれらを保護することが示されている。この生存支援の根底にあるメカニズムはBCL
2ファミリーメンバーのサイトカインが誘導する上方調節であると思われる。
慢性リンパ球性白血病(CLL)の病態形成におけるB細胞受容体(BCR)が介在す
るシグナル伝達の重要性は近年さらに一層明らかになっており、BCRシグナル伝達複合
体内でのキナーゼを標的とする薬剤はこの疾病の治療を変革しつつある。最近認可された
、再発性/難治性のCLLのための作用物質には、イブルチニブ(BTK阻害剤)及びイ
デラリシブ(PI3Kδ阻害剤)が挙げられる。今日まで、腫瘍に由来するシグナルがあ
る程度介在してもよいこれらの化合物は治癒性であるとは証明されていない。重要なこと
に、ある割合の患者は、イブルチニブについてはBTKもしくはPLCγにおける突然変
異を介して、または未知のメカニズムのためにこれらの新しい作用物質に耐性を発生して
いる。脾臓チロシンキナーゼ(SYK)は非受容体キナーゼのSYK/ZAP70ファミ
リーに属し、B細胞内でのBCR、ケモカイン及びインテグリンの受容体の下流のシグナ
ルを活性化することの伝達で中心的な役割を担い、特定のB細胞の悪性腫瘍及び自己免疫
疾患の治療のための興味ある標的のままである。
CLL細胞は微細環境を構成する種々の細胞に由来するシグナルに依存する。リンパ球
におけるIL−4のシグナルは、Janusタンパク質チロシンキナーゼJAK1及びJ
AK3を介した1型IL−4受容体(IL−4R)を介して優勢に導出され、STAT6
のリン酸化(pSTAT6)を生じる。
慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)及び濾胞性リンパ
腫(FL)の標準治療ができない患者にとって現在の治療選択肢は限られている。
本明細書で提供されるのは、セルデュラチニブの投与によって血液癌を治療する方法で
ある。セルデュラチニブは小分子のATP競合性のSYKとJAKファミリーメンバー双
方の可逆性阻害剤である。以前記載されている(たとえば、米国特許第8,138,33
9号を参照のこと)セルデュラチニブは、化学名4−(シクロプロピルアミノ)−2−(
4−(4−(エチルスルホニル)ピペラジン−1−イル)フェニルアミノ)ピリミジン−
5−カルボキサミドを有し、式:
Figure 2021152076

を有する。
本明細書に記載されている実施形態では、セルデュラチニブはまた薬学上許容できるそ
の塩またはプロドラッグも指してもよい。
セルデュラチニブは、強い前治療を行った患者及び/またはCLL、FL、NHL及び
DLBCLを含むが、これらに限定されない再発/難治性の血液癌に有用であってもよい
。セルデュラチニブはまた原発CLLでアポトーシスを誘導し、たとえば、変異していな
いIGHV、高いCD49d、ZAP−70または表面IgMの発現のような予後不良の
症例で優先的な活性がある。
本明細書で提供されるのは、約10mg〜約75mgの1日用量のセルデュラチニブま
たは薬学上許容できるその塩、または約10mg〜約75mgの1日用量のセルデュラチ
ニブまたは薬学上許容できるその塩を含む医薬組成物と、少なくとも1つの薬学上許容で
きる賦形剤またはキャリアとを患者に投与することを含む、それを必要とするヒト患者に
て血液癌を治療する方法である。
本明細書で提供されるのはまた、有効量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるそ
の塩、または約10mg〜約75mgの1日用量のセルデュラチニブもしくは薬学上許容
できるその塩を含む医薬組成物と、少なくとも1つの薬学上許容できる賦形剤またはキャ
リアとを患者に投与することを含む、それを必要とする患者にて再発性または難治性の血
液癌を治療する方法である。
一部の実施形態は、有効量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩、または
有効量のセルデュラチニブもしくは薬学上許容できるその塩を含む医薬組成物と、少なく
とも1つの薬学上許容できる賦形剤またはキャリアとを患者に投与することを含む、それ
を必要とする患者にて再発性または難治性の血液癌を治療する方法を提供し、
その際、セルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩の有効量はセルデュラチニブの
約30mg〜約80mgの1日用量である。
一部の実施形態は、有効量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩、または
有効量のセルデュラチニブもしくは薬学上許容できるその塩を含む医薬組成物と、少なく
とも1つの薬学上許容できる賦形剤またはキャリアとを患者に投与することを含む、それ
を必要とする患者にて再発性または難治性の血液癌を治療する方法を提供し、
その際、患者は再発及び/または血液癌を治療するための薬剤に対する耐性に関連がある
突然変異を有し、且つ
セルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩の有効量はセルデュラチニブの約30m
g〜約80mgの1日用量である。
本明細書で提供される一部の実施形態は、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性
リンパ球性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大型B細胞リンパ腫(
DLBCL)または他の形質変換したFLの1以上を患っている患者を治療する方法に関
連する。
一部の実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍、慢性リンパ球性白血病(CLL)、濾胞
性リンパ腫(FL)または形質変換したFLの1以上を患っている。
一部の実施形態では、患者は進行した悪性腫瘍を患っている。
一部の実施形態では、患者は再発しているまたは以前の化学療法に応答していない。一
部の実施形態では、患者は少なくとも2回の以前の治療法で失敗している。一部の実施形
態では、患者は少なくとも1回の以前の治療法で失敗している。
一部の実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍を有する。一部の実施形態では、本明細書
で提供されている方法は、たとえば、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リ
ンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びま
ん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)、及び/またはマントル細胞リンパ腫(MCL)
のような血液癌を治療するのに使用される。一部の実施形態では、本明細書で提供されて
いる方法は、たとえば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病(CLL
)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ
腫(tFL)、びまん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)、及び/またはマントル細胞
リンパ腫(MCL)のような血液癌を治療するのに使用される。
一部の実施形態によれば、血液癌はCLLである。一部の実施形態によれば、血液癌は
DLBCLである。一部の実施形態によれば、血液癌はFLである。一部の実施形態によ
れば、血液癌はSLLである。一部の実施形態によれば、血液癌はNHLである。一部の
実施形態によれば、血液癌はtFLである。一部の実施形態によれば、血液癌はMCLで
ある。
一部の化学療法剤は、たとえば、血液癌を守ろうとするBCR IL−4が介在するシ
グナル伝達及び/またはBCR活性化経路のせいで患者における薬剤耐性に悩まされてい
る。本開示の実施形態によれば、セルデュラチニブは薬剤耐性につながるこれらの保護メ
カニズムを克服することができる。
一部の実施形態では、それを必要とする患者は、多数の理由で血液癌に対する薬剤耐性
を示す、及び/または血液癌について再発を示す患者である。たとえば、患者は再発及び
/または血液癌を治療するための薬剤に対する耐性に関連がある突然変異を有してもよい
。たとえば、患者は、del17pの突然変異、P53の突然変異、ATMの突然変異、
STATの突然変異、STAT6の突然変異、C481S STAT6の突然変異、NO
TCH経路に関連する突然変異、またはカデリン経路に関連する突然変異を有してもよい
一部の実施形態では、患者はSTATにおけるS86A突然変異を有してもよい。
一部の実施形態では、患者は、del17pの突然変異、del11qの突然変異、P
53の突然変異、ATMの突然変異、STATの突然変異、STAT6の突然変異、C4
81S STAT6の突然変異、NOTCH経路に関連する突然変異、カデリン経路に関
連する突然変異、またはそれらの組み合わせを有してもよい。
一部の実施形態によれば、患者はP53、BTK及びEP300のそれぞれで突然変異
を有さない。
一部の実施形態では、患者はMYD88の突然変異、CARD11の突然変異、または
A20の突然変異を有する。一部の実施形態では、患者はdel11q、トリソミー12
及びdel17pを含む高リスクの遺伝子異常を有する。一部の実施形態では、患者はd
el17pの突然変異を有する。一部の実施形態では、患者はdel11qの突然変異を
有する。
一部の実施形態では、患者はBTKの突然変異を有する。
一部の実施形態では、患者はたとえば、変異していないIGHV、高いCD49d、Z
AP−70または表面IgMの発現のような不良な予後を有してもよい。
一部の実施形態では、患者はセルデュラチニブではない薬剤に対する耐性を有する。こ
れらの薬剤の非限定例は、抗CD20抗体、BCL−2阻害剤、BTK阻害剤、P13K
δ阻害剤、リツキシマブ、白金系薬剤、代謝拮抗剤、イブルチニブ、イデラリシブ、フル
ダラルビン(リン酸フルダラビン、FLUDARA(登録商標)、アントラサイクリン、
BCR経路阻害剤、ABT−199(ベネトクラックス)、または血液癌を治療するのに
使用される別の化学療法剤である。化学療法剤の他の非限定例には、アルキル化剤、細胞
骨格破壊剤、エポチオロン、ヒストン脱アシル化酵素阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害
剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体、抗生剤、白
金系作用物質、レチノイド、ビンカアルカロイド、またはそれらの組み合わせが挙げられ
る。
一部の実施形態では、患者は、抗CD20抗体、BCL−2阻害剤、BTK阻害剤、P
13Kδ阻害剤、白金系薬剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、BCR経路阻害剤、ま
たは血液癌を治療するのに使用される別の化学療法剤に対する耐性を有する。一部の実施
形態では、患者は、ABT−199(ベネトクラックス)、リツキシマブ、イブルチニブ
、イデラリシブ、及びフルダラルビン(リン酸フルダラビン、FLUDARA(登録商標
)に対する耐性を有する。一部の実施形態では、患者はイブルチニブに対する耐性を有す
る。
一部の実施形態では、患者は血液癌を治療する薬剤を以前投与された。非限定例の薬剤
には、アルキル化剤、抗CD20抗体、BCL−2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻
害剤、リツキシマブ、白金系薬剤、代謝拮抗剤、イブルチニブ、イデラリシブ、フルダラ
ルビン(リン酸フルダラビン、FLUDARA(登録商標)、アントラサイクリン、BC
R経路阻害剤、ABT−199(ベネトクラックス)、または血液癌を治療するのに使用
される他の作用物質が挙げられる。化学療法剤の他の非限定例には、細胞骨格破壊剤、エ
ポチオロン、ヒストン脱アシル化酵素阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメ
ラーゼIIの阻害剤、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体、抗生剤、白金系作用物質、
レチノイド、ビンカアルカロイド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
一部の実施形態では、患者は、アルキル化剤、抗CD20抗体、BCL−2阻害剤、B
TK阻害剤、P13Kδ阻害剤、白金系薬剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、BCR
経路阻害剤、及び血液癌を治療するのに使用される別の化学療法剤から成る群から選択さ
れる薬剤を以前投与された。一部の実施形態では、患者は、ベネトクラックス、リツキシ
マブ、イブルチニブ、イデラリシブ及びフルダラルビンから成る群から選択される薬剤を
以前投与された。一部の実施形態では、薬剤は、R−CHOP(リツキシマブ;サイクロ
ホスファミド;ドキソルビシン塩酸塩;オンコビン(ビンクリスチン);プレドニゾン)
である。一部の実施形態では、薬剤はR−CVP(リツキシマブ、サイクロホスファミド
、ビンクリスチン;プレドニゾン)である。一部の実施形態では、薬剤はベバシズマブで
ある。一部の実施形態では、薬剤は、フルダラビンとリツキシマブの併用、ベンダムスチ
ンとリツキシマブの併用、またはベバシズマブとリツキシマブの併用である。
特定の実施形態では、患者は60歳以上であり、第1選択の癌治療法ののち再発した。
特定の実施形態では、患者は18歳以上であり、第2選択の癌治療法ののち再発した、ま
たは不応性である。特定の実施形態では、患者は60歳以上であり、第1選択の癌治療法
に対して原発性不応性である。特定の実施形態では、患者は70歳以上であり、以前治療
されていない。特定の実施形態では、患者は70歳以上であり、癌治療法から利益を得ら
れる資格がない及び/または利益を得られそうにない。
投与される種々の化合物の量は、たとえば、化合物のIC50、化合物の生物学的半減
期、対象の年齢、大きさ及び体重、ならびに治療される適応のような因子を考慮に入れて
標準の手順によって決定することができる。これらの因子及び他の因子の重要性は当業者
に周知である。一般に、用量は、約0.01〜50mg/治療される対象のkgの間また
は0.1〜20mg/kgの間であろう。複数の用量が使用されてもよい。
一部の実施形態では、それを必要とするヒト患者にて再発性または難治性の血液癌を治
療する方法は、約10mg〜約75mgの1日用量のセルデュラチニブまたは薬学上許容
できるその塩、または約10mg〜約75mgの1日用量のセルデュラチニブもしくは薬
学上許容できるその塩を含む医薬組成物と、少なくとも1つの薬学上許容できるキャリア
または賦形剤とを患者に投与することを含む。
一部の実施形態では、それを必要とするヒト患者にて再発性または難治性の血液癌を治
療する方法は、約45mgの用量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩を患
者に1日2回投与することを含む。
一部の実施形態では、それを必要とするヒト患者にて再発性または難治性の血液癌を治
療する方法は、約35mgの用量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩を患
者に1日2回投与することを含む。
本明細書で提供される一部の実施形態では、セルデュラチニブの1日用量は約10mg
〜約75mgである。本明細書で提供される一部の実施形態では、セルデュラチニブの1
日用量は約25mg〜約45mgである。一部の実施形態では、セルデュラチニブの1日
用量は約15mg、30mg、45mgまたは50mgである。
一部の実施形態では、セルデュラチニブの1日用量は、約15mg、約20mg、約2
5mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、
約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約90mg、約95m
g、約100mg、約105mg、または約110mgである。一部の実施形態では、セ
ルデュラチニブの1日用量は約90mgである。一部の実施形態では、セルデュラチニブ
の1日用量は約70mgである。一部の実施形態では、セルデュラチニブの1日用量は投
与当たり約35mgで1日2回投与される。
一部の実施形態では、セルデュラチニブの投与は1日1回である。一部の実施形態では
、投与は1日2回である。一部の実施形態では、投与は1日3回である。
特定の実施形態では、本明細書で提供されている方法で使用されるセルデュラチニブの
治療上有効な量は1日当たり少なくとも約10mgである。一実施形態では、セルデュラ
チニブの治療上有効な量は投与量当たり少なくとも約10、20、30、40または50
mgである。一実施形態では、セルデュラチニブの治療上有効な量は1日当たり少なくと
も約10、20、30、40、50、60、70、80、90または100mgである。
一実施形態では、セルデュラチニブの治療上有効な量は1日当たり少なくとも30mg
、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mgまたは65mgである
。一実施形態では、セルデュラチニブの治療上有効な量は少なくとも約15mg、20m
g、25mg、30mgまたは35mgであり、1日2回投与される。
特定の実施形態では、セルデュラチニブの治療上有効な量は1日当たり約500、40
0、300、200、150、120または100mg以下である。一実施形態では、セ
ルデュラチニブの治療上有効な量は投与量当たり約300、200、150、120、1
00、90、80、70、60、55または50mg以下である。
特定の実施形態では、セルデュラチニブの治療上有効な量は1日当たり約100mg、
95mg、90mg、85mg、80mgまたは75mgである。特定の実施形態では、
セルデュラチニブの治療上有効な量は45mg、40mg、35mgまたは30mg以下
であり、1日2回投与される。
一実施形態では、セルデュラチニブの治療上有効な量は、単独であれ、または別の作用
物質との併用であれ、1日約10mg〜200mg、約25mg〜150mg、約50〜
120mg、約80〜100mgで投与される。
一実施形態では、セルデュラチニブの治療上有効な量は、単独であれ、または別の作用
物質との併用であれ、日々、25mg〜120mgである。一部の実施形態では、セルデ
ュラチニブの有効量は、1日2回の25mg〜50mgである。
一実施形態では、治療上有効な量のセルデュラチニブは、単独であれ、または別の作用
物質との併用であれ、1日1回または2回、投与量当たり約10mg〜150mg、約2
5mg〜120mg、約30〜80mg、約40〜50mgで投与される。特定の実施形
態では、セルデュラチニブは、単独であれ、または別の作用物質との併用であれ、1日1
回、2回、3回または4回投与される。
一実施形態では、セルデュラチニブは、単独であれ、または別の作用物質との併用であ
れ、1日1回約30mg〜約80mg投与される。一実施形態では、セルデュラチニブは
、単独であれ、または別の作用物質との併用であれ、1日2回約15mg〜約40mg投
与される。
一実施形態では、45mgのセルデュラチニブが、単独であれ、または別の作用物質と
の併用であれ、1日2回投与される。一実施形態では、35mgのセルデュラチニブが、
単独であれ、または別の作用物質との併用であれ、1日2回投与される。
一部の実施形態では、セルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩の有効量は、1
日2回投与される約40mg〜約50mgである。
一部の実施形態では、セルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩の有効量は、1
日2回投与される約30mg〜約40mgである。
別の実施形態では、本開示は、癌を治療することにおいて有効な1以上の他の治療法ま
たは医療処置との併用でセルデュラチニブを含む有効量の組成物を対象に投与することに
よってそれを必要とする対象にて癌を治療する方法を提供する。他の治療法または医療処
置には、好適な抗癌療法(たとえば、薬物療法、ワクチン療法、遺伝子療法、光線力学療
法)または医療処置(たとえば、手術、放射線治療、温熱加熱、骨髄移植または幹細胞移
植)が挙げられる。一実施形態では、1以上の好適な抗癌療法または医療処置は、化学療
法剤(たとえば、化学療法薬)による治療、放射線治療(たとえば、X線、−線、または
電子、光子、中性子、または粒子線)、温熱加熱(たとえば、マイクロ波、超音波、高周
波アブレーション)、ワクチン療法(たとえば、AFP遺伝子肝細胞癌ワクチン、AFP
アデノウイルスベクターワクチン、AG−858、同種GM−CSF分泌乳癌ワクチン、
樹状細胞ペプチドワクチン)、遺伝子療法(たとえば、Ad5CMV−p53ベクター、
アデノウイルスがコードするMDA7、アデノウイルス5−腫瘍壊死因子α)、光線力学
療法(たとえば、アミノレブリン酸、モテキサフィンルテニウム)、手術、または骨髄移
植及び幹細胞移植から選択される。
3.医薬組成物及びキット
本明細書で提供されている一部の実施形態は、有効量のセルデュラチニブと、少なくと
も1つの薬学上許容できるキャリアまたは賦形剤とを含む医薬組成物を指向する。
キャリアまたは賦形剤を用いて組成物を製造することができる。セルデュラチニブのよ
うな化合物の投与を円滑にするためにキャリアまたは賦形剤を選択することができる。キ
ャリアの例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、たとえば、ラクトース、グルコー
スもしくはスクロースのような種々の糖類、またはデンプンの種類、セルロース誘導体、
ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、及び生理的に適合性の溶媒が挙げられる。
生理的に適合性の溶媒の例には、注射用の無菌水溶液(WFI)、生理食塩水溶液、及び
デキストロースが挙げられる。
好適な剤形はある程度、使用または投与の経路、たとえば、経口、経皮、経粘膜、吸入
の経路または注射による(非経口)投与に左右される。そのような剤形は化合物が標的細
胞に到達できるようにすべきである。他の因子は当該技術分野で周知であり、それには、
毒性及び化合物または組成物がその効果を発揮するのを遅らせる剤形のような検討事項が
挙げられる。技法及び製剤化は一般に、The Science and Practi
ce of Pharmacy,21st edition,Lippincott,W
illiams及びWilkins,Philadelphia,PA,2005(参照
によって本明細書に組み入れられる)にて見いだされてもよい。
セルデュラチニブは、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経口、経粘膜、直腸、経皮また
は吸入を含む様々な経路によって投与することができる。一部の実施形態では、セルデュ
ラチニブは経口投与によって投与することができる。経口投与については、たとえば、セ
ルデュラチニブは、たとえば、カプセル剤、錠剤のような従来の経口剤形及び、シロップ
、エリキシルのような液体製剤、及び濃縮点滴剤に製剤化することができる。
吸入については、セルデュラチニブは、乾燥粉末または好適な溶液、懸濁液またはエア
ロゾルとして製剤化されてもよい。粉末及び溶液は当該技術分野で既知の好適な添加剤と
共に製剤化されてもよい。たとえば、粉末には、たとえば、ラクトースまたはデンプンの
ような好適な粉末基剤が含まれてもよく、溶液は、プロピレングリコール、無菌水、エタ
ノール、塩化ナトリウム、及びたとえば、酸、アルカリ及び緩衝液の塩のような添加剤を
含んでもよい。そのような溶液または懸濁液は、スプレー、ポンプ、噴霧器または吸入器
等を介して吸入することによって投与されてもよい。セルデュラチニブはまた、他の吸入
療法、たとえば、フルチカゾンプロピオン酸塩、ベクロメタゾンジプロピオン酸塩、トリ
アムシノロンアセトニド、ブデソニド及びモメタゾンフランカルボン酸エステルのような
コルチコステロイド;アルブテロール、サルメテロール及びフォルモテロールのようなβ
アゴニスト;臭化イプラトロピウムまたはチオトロピウムのような抗コリン作用剤;トレ
プロスチナル及びイロプロストのような血管拡張剤;DNA分解酵素のような酵素;治療
用タンパク質;免疫グロブリン抗体;一本鎖または二本鎖DNAまたはRNA、siRN
Aのようなオリゴヌクレオチド;トブラマイシンのような抗生剤;ムスカリン受容体アン
タゴニスト;ロイコトリエンアンタゴニスト;サイトカインアンタゴニスト;プロテアー
ゼ阻害剤;クロモリンナトリウム;ネドクリルナトリウム;及びクロモグリク酸ナトリウ
ムとの併用でも使用されてもよい。
経口使用のための医薬製剤は、たとえば、セルデュラチニブを固形賦形剤と混ぜ合わせ
、得られた混合物を任意で粉砕し、所望であれば好適な補助剤を加えたのち顆粒の混合物
を処理して錠剤または糖衣錠の芯を得ることによって得ることができる。好適な賦形剤は
特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類;セルロー
ス調製物、たとえば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプンジャガイモ
デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル
セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)及び/またはポリビニル
ピロリドン(PVP:ポビドン)のような充填剤である。所望であれば、たとえば、架橋
されたポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムのよ
うなその塩のような崩壊剤を添加してもよい。
糖衣錠の芯には好適なコーティングが提供される。この目的で、濃縮された糖溶液が使
用されてもよく、それは任意で、たとえば、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリド
ン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール(PEG)、及び/または二酸化チタン
、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有してもよい。活性化合物の
用量の特定のために、またはその様々な組み合わせを特徴付けるために染料または顔料を
錠剤または糖衣錠のコーティングに加えてもよい。
経口で使用することができる医薬製剤には、ゼラチンで出来た押し込み型のカプセル剤
(「ゲルカップ」)、と同様にゼラチンと、グリセロールまたはソルビトールのような可
塑剤とで出来た軟質の被覆カプセルが挙げられる。押し込み型のカプセルは、ラクトース
のような充填剤、デンプンのような結合剤、及び/またはタルクまたはステアリン酸マグ
ネシウムのような潤滑剤、及び任意で安定剤との混合で有効成分を含有することができる
。軟質カプセルでは、セルデュラチニブは、好適な液体、たとえば、脂肪油、流動パラフ
ィンまたは液状ポリエチレングリコール(PEG)に溶解されてもよいし、または懸濁さ
れてもよい。加えて、安定剤が添加されてもよい。
或いは、注射(非経口投与)、たとえば、筋肉内、静脈内、腹腔内、及び/または皮下
の注射が使用されてもよい。注射については、無菌の溶液にて、たとえば、生理的に適合
性の緩衝液または溶液、たとえば、生理食塩水溶液、ハンクス溶液またはリンガー溶液に
て製剤化される。加えて、セルデュラチニブは固体の形態で製剤化されて使用直前に再溶
解されてもよいし、または懸濁されてもよい。凍結乾燥された形態を製造することもでき
る。
投与は経粘膜、局所、経皮、または吸入の手段によることもできる。経粘膜、局所、ま
たは経皮の投与については、透過されるバリアに適する浸透剤が製剤で使用される。その
ような浸透剤は一般に当該技術分野で既知であり、それには、たとえば、経粘膜投与につ
いては胆汁塩及びフシジン酸誘導体が挙げられる。加えて、界面活性剤を使用して浸透を
促してもよい。経粘膜投与は、たとえば、鼻スプレーまたは坐薬(直腸または膣)を介し
てもよい。
本開示の局所組成物は、当該技術で既知の適当なキャリアの選択によって油、クリーム、
ローション、軟膏等として製剤化される。好適なキャリアには、植物油または鉱物油、白
色ワセリン(白色軟質パラフィン)、分岐鎖油脂、動物脂肪及び高分子量アルコール(C
12を超える)が挙げられる。別の実施形態では、キャリアは有効成分が可溶性であるも
のである。乳化剤、安定剤、保湿剤及び抗酸化剤も、所望であれば、着色剤または香料と
同様に含まれてもよい。局所塗布のためのクリームは、その混合物にて少量の溶媒(たと
えば、油)に溶解された有効成分が混合される鉱物油、自己乳化蜜蝋及び水の混合物から
製剤化される。さらに、経皮の手段による投与は、有効成分及び任意で当該技術分野にて
既知の1以上のキャリアまたは希釈剤を含浸させた経皮貼付剤または帯具のような包帯を
含んでもよい。経皮送達系の形態で投与されるには、投与量の投与は投与計画全体にわた
って当然、間欠的ではなく連続的であろう。
別の実施形態では、本開示はセルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩またはそ
の医薬組成物を含むキットを提供する。一部の実施形態では、化合物または組成物は、さ
らにたとえば、箱、封筒または袋の中に包装されてもよい、たとえば、バイアル、ビン、
フラスコに包装され;化合物または組成物は、哺乳類、たとえば、ヒトへの投与について
米国食品医薬品局または類似の規制当局によって認可され;化合物または組成物は、タン
パク質キナーゼが介在する疾患または状態について哺乳類、たとえば、ヒトへの投与につ
いて認可され;本明細書に記載されているキットは、化合物または組成物が、血液癌のよ
うな本明細書に記載されているような疾患または状態について哺乳類、たとえば、ヒトへ
の投与のために好適であるまたは認可されているという使用のため文書での指示書及び/
または他の指示を含んでもよく;化合物または組成物は単位用量または単回用量形態、た
とえば、単回用量の丸薬、カプセル等にて包装されてもよい。
実施例1:前臨床モデル、臨床PK/PD及び腫瘍反応
材料及び方法
精製キナーゼアッセイ:300nMのATPの固定濃度でMilliporeにて実施
した。10点濃度曲線を使用してIC(阻害濃度)を決定した。
ヒト全血アッセイ:SYK−及びJAK−依存性及び非依存性のシグナル伝達の阻害は
、BCR及びサイトカイン受容体に対する種々のアゴニストによってヒト全血を刺激する
ことによって測定した。ヘパリン処理した健常ヒト全血の100μLアリコートを以前記
載された(Coffey,et al,J.of Pharm.and Experim
ental Therapeutics,351:538−548,2014))ように
刺激し、8点濃度曲線を用いてIC50を決定した。シグナル伝達及び活性化の反応は蛍
光活性化細胞選別(「FACS」)によって測定した。臨床試験については、投与の前と
後に全血試料を採取した。阻害百分率は投与前の刺激応答に対して基準化することによっ
て算出した。
DLBCL細胞株の生存率アッセイ:10点濃度反応曲線を用いた384穴プレートに
おけるCellTiterGlo(Promega)アッセイを用いてATCCから購入
した細胞株をスクリーニングしてIC50を生成した。各IC50値は少なくとも4つの
反復実験の平均である。FACSに基づいたカスパーゼ3切断検出キット(BD Bio
sciences)を用いたその後の解析及びEduの取り込みを行った。
ラットのコラーゲン誘導関節炎:セルデュラチニブの生体内での抗炎症活性はラットの
コラーゲン誘導関節炎モデルを用いて測定し、どこかに(Coffey,et al,J
.of Pharm.and Experimental Therapeutics,
340:350−359,2012)記載されたように正確に実施した。コラーゲン抗体
の力価はELISA(R&D Systems)によって測定した。液体クロマトグラフ
ィ/タンデム質量分析を用いて定常状態の血清Cmaxを測定した。
サイトカインの分析:ヒト炎症マップを用い、MyriadRBM(Austin、T
X)によって血清タンパク質を分析した。
臨床試験の設計:これは、再発性/難治性のCLL/SLLまたはB細胞NHLの患者
におけるセルデュラチニブのフェーズI非盲検多用量の用量上昇試験である。試験は、1
5mgのQD(1日1回)で開始し、28日の安全性ウインドウで3+3の設計にて用量
を上昇させた。患者は72時間のPK評価について1日目に単回用量を受け取った。次い
で4日目に連続投与を開始した。
結果
健常全血生体外スパイク実験では、セルデュラチニブは、0.2〜0.9μM(15m
g〜40mgの臨床用量で達成される)の範囲でのIC50でBCR/SYK及びサイト
カイン(IL2、IL4、IL6)のJAK/STATシグナルを選択的に阻害し、0.
3μMの平均血漿濃度(≧30mgの用量で達成される)でラットのコラーゲン誘導関節
炎モデルにて炎症と関節の破壊を停止させ、2μM(≧40mgの用量で達成される)で
細胞株の大半にてアポトーシスを誘導した。約1μMの定常状態Cminを維持しながら
、2μMを超える血漿濃度は1日1回の経口投与後の癌患者において安全に達成されてい
る。
SYK及びJAKのシグナル伝達に対するセルデュラチニブの能力及び特異性
表1は、270のキナーゼのパネル検査(Millipore)にて>80%阻害した
精製キナーゼに対するセルデュラチニブのIC50を示す。酵素反応における阻害にもか
かわらず、AMPK、JAK2、TBK−1、RSK2、及びRSK4については細胞レ
ベル及び/または患者にて阻害の証拠はない。
Figure 2021152076
表2は、種々の健常ヒト全血アッセイにおけるセルデュラチニブのICの要約である。
このデータはSYK、JAK1/3及びJAK1/TYK2に依存性の経路に対する選択
性を明らかにしている。SYK及びJAK1/3/TYK2の経路に対する能力は同等で
ある。
Figure 2021152076
セルデュラチニブは2μMにて15のDLBCL細胞株に対して広く活性がある
セルデュラチニブはさらに多く標的作用物質に比べてDLBCL細胞株にて広い抗腫瘍
活性を実証した。以下の表3は、他の関連するキナーゼ阻害剤:PRT06318(Sy
k阻害剤、米国特許第6,432,963号に記載されている);InSolution
(商標)JAK阻害剤I(CAS 457081−03−7;表3における「汎Jak」
);CP−690550(Jak3阻害剤);イデラリシブ(PI3Kδ阻害剤);IP
I−145(PI3Kδ及びγ阻害剤);及びドキソルビシン(「Doxo;」アントラ
サイクリン)と比べたセルデュラチニブのIC50値を要約する。これらの阻害剤は市販
されている、または当業者に既知の合成方法に従って作製される。
Figure 2021152076
ABC及びGCBの亜型の双方を代表する15細胞株のパネルにて、9がアポトーシス
を受け、追加の2が細胞サイクルの停止を受けた。SYKとJAKの阻害の共同効果は、
細胞株のうち4つで認められたのに対して3つの細胞株はSYKの阻害に感受性だったが
、JAKの阻害には感受性ではなく、細胞株の1つはJAKの阻害に感受性だったが、S
YKの阻害には感受性ではなかった。15細胞株のうち3つ(DB、TOLEDO及びR
CK8)はセルデュラチニブに耐性だった。
図1及び図2はそれぞれ、FACS解析によるEdUの取り込みの阻害百分率及びカス
パーゼ3切断の誘導百分率を示すグラフである。
上記のデータは、セルデュラチニブが2μMでDLBCL細胞株に対して広く活性があ
り、アポトーシスを誘導することによって優勢に作用することを実証している。
セルデュラチニブはラットにて0.52μMのCmaxで自己免疫機構を停止させる
図3は、ラットのコラーゲン誘導関節炎モデルからのデータを示す。溶媒または種々の
用量レベルのセルデュラチニブで処理する間の時間(x軸)に対して後肢炎症スコア(平
均値±SEM;y軸;n=群当たり8匹)をプロットする。各投与群についての平均血漿
濃度(Cmax)はグラフの右に示す。星印はスチューデントt検定による溶媒に比べた
統計的有意性(p<0.05)を示す。
ラットにおける炎症及び自己抗体の生成は、0.5〜0.6μMのCmax(約0.3
〜0.4μMのCaverageに相当する)の間のセルデュラチニブの血漿濃度で完全
に阻止された。これらの曝露はヒトでは30mgの1日1回用量で安全に達成され、末梢
全血アッセイにおけるSYK及びJAKのおよそ50%の阻害に相当する。血清β2M(
及び他の炎症性マーカー)の低下の明瞭な証拠は臨床的に調べた用量レベルすべてにおい
て観察された。
患者における経口投与に続くSYK及びJAKの阻害の能力
患者における経口投与に続いて、健常志願者の生体外スパイク実験で観察されたのと同
様の能力でSYK及びJAKの経路が阻害され、複数のサイクルの治療でSYK及びJA
Kの>90%の阻害が安全に達成されている。
CTスキャンによって測定されるような腫瘍反応は、患者に由来する全血におけるSY
K及びJAKのシグナル伝達の阻害百分率及び炎症の血清マーカー(たとえば、β2M、
CRP、IL10、VCAM1、sTNFR、CCL3)の阻害百分率と有意に相関した
結論
アポトーシス及び/または細胞サイクルの停止を誘導するのに必要とされるセルデュラ
チニブの濃度は可変であるが、一般に2μMであると認められる。1〜2μMのCmin
〜Cmaxの定常状態の濃度は40mgのQDで安全に達成される。CTスキャンによっ
て評価されるような患者の腫瘍の縮小は、SYK及びJAKの%阻害、幾つかの血清炎症
マーカーの%阻害に有意に相関し、またセルデュラチニブの血漿濃度にも関連する。用量
の上昇は100mgのQDまで良好な忍容性を継続する。
これらの結果に基づいて、セルデュラチニブは、たとえば、DLBCLのようなB細胞
リンパ腫の治療に有用であることが熟考される。
実施例2:初代ヒトCLL細胞に対するセルデュラチニブの効果
24の初代CLL試料におけるセルデュラチニブ
CLL細胞の単離及び培養:CLL細胞(ATCCから市販されている)はヒトB細胞
濃縮カクテルキット(Stemcell Technologies,Vancouve
r,BC,Canada)を用いて精製し、精製の検証のために全症例で95%を超える
抗CD5/CD19で染色した。2.5mg/mLのCpG、100ng/mLのCD4
0L、10ng/mLのIL−4の存在下または非存在下で1×10個/mLの密度に
て15%ウシ胎児血清(Gibco,Grand Island,NY,USA)、ペニ
シリン(100IU)及びストレプトマイシン(100μg/mL)を伴ったRPMI-
1640において単離したCLL細胞を培養した。プレートに結合させた抗IgM(10
μg/mL)で抗IgM刺激を行った。CLL細胞を10ng/mLのIL−6(R&D
Systems,Minneapolis,MN)で刺激してJAK1/JAK2(C
ell Signaling Technology,Danvers,MA)及びST
AT3(Cell Signaling Technology,Danvers,MA
,USA)のリン酸化を検出した。
細胞生存率アッセイ及びIC50の決定:CLL患者から単離されたCD5/CD1
細胞を漸増する濃度のセルデュラチニブ(10〜10nM)の有無にて72時間
インキュベートし、以前記載されたように2μg/mLのヨウ化プロピジウム(PI)(
Molecular Probe)で染色することによって細胞の生存率を測定した。F
ACSLSR2(BD Biosciences)によって生細胞ゲート内での10,0
00個の細胞を計数し、各検体について一致する溶媒対照(100%)に対してデータを
基準化した。次いで、GraphPad Prism 6プログラム(San Dieg
o,CA,USA)を用いてIC50を生成した。
共培養条件:ヒト骨髄間質細胞株HS−5はATCCから入手し、NK−Tert(N
KTert)はJan A.Burger博士(M.D. Anderson)によって
親切に提供され、CLL細胞及び間質細胞の共培養アッセイは以前記載された(たとえば
、Cheng,et al.,Leukemia.2014;28(3):649−65
7)。手短には、間質細胞を24穴プレートのウェル当たり5×10個の濃度で播き、
24時間インキュベートして細胞を付着させた。次いでRPMI培地における間質細胞の
集密層の上にて100:1(5×10個の細胞/mL)の比でCLL細胞を培養に加え
た。穏やかにピペッティングすることによって、付着した間質細胞をそのままにしてCL
L細胞を回収した。
連続希釈したセルデュラチニブを伴った初代CLL試料及び72時間後にPI/7AA
Dフローサイトメトリーによって測定した細胞生存率。
IL−4/CD40Lの存在下または非存在下にてSYK/JAK二重阻害剤であるセ
ルデュラチニブによって24の初代CLL試料を処理し、ヨウ化プロピジウム/アネキシ
ンVの染色及びPARP切断によってアポトーシスを評価した。B細胞受容体及びサイト
カイン受容体が誘導するシグナル伝達に対するセルデュラチニブの効果は免疫ブロット及
びフローサイトメトリーによって評価した。
24人の患者に由来するCLL細胞をセルデュラチニブによって24、48及び72時
間処理し、ヨウ化プロピジウム及びアネキシンVの染色を用いて生存率を評価した。セル
デュラチニブは濃度及び時間に依存してアポトーシスを誘導した。
変異していないIGHVとCD49dの高い発現とはCLLにおける進行性の疾患及び
予後不良に関連する。治療上の使用にとって重要なことに、セルデュラチニブは、M−C
LLに比べてU−CLLにて及び低いCD49dまたはZAP70の発現(<30%)の
CLL細胞に比べて高いCD49dまたはZAP70の発現(>30%)のCLL細胞に
て有意に多くのアポトーシスを誘導した。
セルデュラチニブによるCLL細胞の処理は、アポトーシス誘発性カスパーゼ3タンパ
ク質の切断/活性化を誘導すること、且つアポトーシスのマーカーである高いレベルの8
5kDaのPARPサブ断片を誘導することも見いだされた。セルデュラチニブが誘導す
るアポトーシスがカスパーゼ阻害剤ZVADによる共処理によって阻害されるということ
は、CLL細胞のセルデュラチニブが誘導するアポトーシスはカスパーゼ依存性のメカニ
ズムを介して発生することを示している。加えて、ZVADの存在下でのセルデュラチニ
ブ処理の24時間後、アポトーシス誘発性タンパク質NOXAのレベルが上昇した一方で
、抗アポトーシスタンパク質MCL1は低下した。
リンパ節におけるBCRのライゲーションはCLLの生存及び化学療法への耐性を高め
る。セルデュラチニブの前処理は、可溶性の抗IgM及び不動化した抗IgMの双方が誘
導するシグナル伝達経路を阻害することができた。IL−4はCLL細胞にてJAK/S
TAT−6経路を介してシグナルを伝達するが、化学療法からの保護に介在することにお
いて重要であることが示されている。セルデュラチニブによるCLL細胞の処理はIL−
4が誘導するSTAT6のリン酸化を無効にした。加えて、セルデュラチニブは、ZVA
Dの存在下で24時間後、IL−4が増加させるIgMの表面発現を阻害した。
患者にて、リンパ節の組織部位はアポトーシスからCLL細胞を保護する種々のシグナ
ルを提供する。従って我々は、IL−4及びCD40Lを用いて試験管内でリンパ節環境
を模倣した。IL−4/CD40Lによる処理は24時間後、未処理の細胞に比べてCL
L細胞の生存率を高めた。
この実施例は、セルデュラチニブによる初代ヒトCLL細胞の処理がカスパーゼ依存性
のアポトーシスを誘導し、CLL試料の予後不良マーカーにて高い能力を伴い;セルデュ
ラチニブは患者で達成可能な濃度(約2.2μM)にてBCR及びIL−4が介在するシ
グナル伝達に打ち勝ち;セルデュラチニブはIL−4/CD40Lの支援の存在下または
非存在下でアポトーシスを誘導したことを示している。
60のCLL試料におけるセルデュラチニブ
上述の方法に従って解析した60のCLL試料では、60のCLLにおけるIC50
0.37μMから10.02μMに及んだ。セルデュラチニブの平均IC50は臨床的に
達成可能である2.57μMだった。
既知の予後因子によって階層化されるCLLの亜群の間でセルデュラチニブによる細胞
の殺傷が異なるかどうかも検討した。変異したIGHV(N=27)に対比した変異して
いないIGHV(N=33)を伴うCLL細胞は低いIC50を有するので、セルデュラ
チニブに対してさらに感受性であることが見いだされた(P=0.0395)(スチュー
デントt検定によって解析されたデータ)(図6)。高リスクの遺伝子異常(del(1
1q)、トリソミー12及びdel(17p)を含む)を伴うCLL細胞は、del(1
3q)を伴うものまたはこれらの特定の遺伝子異常を完全に欠いているものよりもセルデ
ュラチニブに感受性だった(図7)。従って、CLL細胞は、特にIGHV及び細胞遺伝
学によって予後不良である症例においてセルデュラチニブに感受性である。
セルデュラチニブはまた、たとえば、Zap70によって証拠付けられるような予後不
良の症例でも有用であろうことも熟考される。
実施例3:セルデュラチニブのフェーズI試験の臨床成績及び相関的結果
再発性/難治性のCLL/SLLまたはB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の患者に
おけるセルデュラチニブのヒト初回投与試験を実施した。28日サイクルでの3+3用量
漸増試験を行い、1日1回15mg〜65mgに及ぶ用量、及び1日2回45mgまでの
用量を検討した。患者は72時間のPK評価のために1日目に単回用量を受け取った。連
続投与は4日目に開始した。CLL/SLLまたはB細胞NHLの43人の患者に投与し
た。年齢の中央値は67歳(範囲は23〜85)であり、以前の治療(tx)の中央値は
3(範囲1〜8)だった。
薬物動態(「PK」)、薬物力学(「PD」)及び安全性をモニターした。標準の基準
によって応答を評価した。B細胞抗原、IL2、IL4、IL6及びGM−CSFに対す
る受容体を介したシグナル伝達を測定する種々の全血アッセイを用いてSYK及びJAK
の阻害のレベルを測定した。CCL3、CCL4及び炎症の他のマーカー(β2M及びC
RP)を含む、腫瘍量の血清マーカーも測定した。
PKは1日1回投与に好適であり、12〜16時間の半減期と2:1のピークトラフ比
を持つことが観察された。サイクル1の28日目に、循環しているリンパ球におけるSY
K及びJAKの飽和阻害(80〜90%の阻害)、ならびに血清炎症マーカーの飽和阻害
(たとえば、β2M、CRP、CCL4;50〜90%の阻害)が、40mg用量のC
inで達成される約0.6〜1μMの血漿濃度で生じた。65mg用量では、これらのパ
ラメータがサイクル1の1日目で80〜90%阻害されたということは、低用量に比べて
さらに即効を示している。65mg用量では、定常状態Cmin及びCmaxの濃度はそ
れぞれおよそ1μM及び2μMだったが、調べたB細胞リンパ腫細胞株の大半でアポトー
シスを誘導するのに十分だった。
一般に、セルデュラチニブは上手く忍容されている。1年以上続けている2名を含めて
10名の患者全員が200日を超えてセルデュラチニブにとどまっている。
表4はn=28の場合の経口投与に続く定常状態の薬物動態のデータを要約してる。
Figure 2021152076
n=20で45mgBIDの用量群では、以下が観察された:Cmin=1.27±0
.6μM;Cmax=2.16±0.5μM;Cave=1.4±0.7μM;AUC_
tau=33.3±15.9μM*時間;T1/2=27.5±22.5時間
セルデュラチニブの単回65mgの投与に続いてFL患者に由来する全血にてBCRシ
グナル伝達の完全な阻害が観察されることが観察された。
表5はn=43の場合のPK/PDのデータを要約する。
Figure 2021152076
40〜100mgのQD用量の説明では、平均定常状態(SS)のCmin及びCma
の濃度はそれぞれ0.77±0.41μM及び1.63±0.56μMで頭打ちになり
、平均定常状態(SS)のCave濃度は1.07±0.44μMであることが見いださ
れた。BCRの%阻害(Cmin−Cmax)は92〜100%であり、IL4の%阻害
(Cmin−Cmax)は63〜78%だった。40〜100mgのQD投与は末梢血に
おけるSYK及びJAKのシグナル伝達の50〜100%(定常状態Cmin〜Cmax
)の阻害及び炎症の血清マーカーの有意な阻害を生じた。
これらの結果に基づいて、10mg〜約75mgのセルデュラチニブの1日用量はそれ
を必要とする患者における血液癌の治療に有用であることが熟考される。
SYK及びJAKのシグナル伝達の阻害と同様に炎症の血清マーカーの阻害の程度は腫
瘍反応に有意に相関した。12〜16時間のt1/2と2:1のピーク/トラフ比を持つ
PKはQD投与に好適である一方で、pH依存性の低溶解性が溶解を限定したこと及び生
理的なモデル化がBID投与は全体としての曝露を増やすことを示唆したことが熟考され
る。
このことは45mgのBID用量で達成され、その際、末梢血アッセイにおけるSS
minでのSYK及びJAKの完全な阻害が観察され、それは曝露におけるほぼ倍加に
一致した。45mgのBID用量では、SS Cminは、初代細胞及び細胞株の双方を
用いた前臨床腫瘍モデルにてアポトーシスを誘導するのに十分な濃度である約1.5μM
に上昇した。患者における45mgのBID用量のその後の評価は、この用量レベルで治
療した患者すべてについてさらに高いCmin、Cmax及びAUCの値を明らかにし、
PDマーカーは双方の経路の完全な阻害を示した。
試験に関連すると思われる且つ2名以上の患者に発生している≧等級3の治療中に発生
した有害事象(「AE」)は、倦怠感(n=5)、貧血及び好中球減少症(各n=3)、
及び腹痛、好中球数の低下及び肺炎(各n=2)であった。最高の全体的な曝露は45m
gのBID用量で達成されたが、2つの投与量規制毒性(「DLT」):等級3の膵炎及
び等級3の倦怠感が発生した。
PK/AEのプロファイルに基づいて、1.25〜1.5μM以上のSS Cmin
はさらに高い等級の有害事象があると思われた。PKモデル化は、35mgのBIDの用
量によって1.02μMのSS Cmin、1.3μMのSS Cmax、1.2μMの
SS Cave、100〜100%のBCRの%阻害(Cmin―max)、及び90
〜95%のIL4の%阻害(Cmin−max)が得られることを示したが、それは忍
容性であり、有効であることが予測され、一貫した抗腫瘍活性を提供する。
一貫した腫瘍反応は、0.7μMのSS Cminで再発性/難治性のCLL及びFL
の患者にて観察された。
30〜65mgの範囲の用量のQDで強く前治療されたCLL、FL及び形質転換DL
BCLの5名の患者にて部分応答が観察された。45mgのBID用量群で2名の部分応
答が観察されたが、1名はFL患者であり、別の1名はCLL患者だった。応答は通常、
治療の2サイクルののち生じた。複数の患者はリンパ節の縮小を示し、1年を超えて臨床
的利点を維持した。
結論
セルデュラチニブはリンパ系の悪性腫瘍の対象にて上手く忍容されている。セルデュラ
チニブは、好都合なPKプロファイルを示し、高いレベルのSYK及びJAKの阻害で良
好な忍容性を示した。PKのデータはCminでの実質的な阻害を維持して1日1回投与
を支持した。最大阻害を伴ったSYK/JAKシグナル伝達の用量依存性で且つ選択性の
阻害は80パーセントを超え、JAK2またはPKCの阻害は検出されなかった。BCR
のシグナル伝達経路は定常状態Cmin/Cmaxで90〜100%阻害されたが、JA
K/STATのシグナル伝達は60〜80%のCmin/Cmaxで阻害される。PKデ
ータは40mg〜100mgの経口1日1回からの曝露の頭打ちを示し、定常状態のC
inでマイクロモル以下の(約0.7μM)の曝露を生じた。溶解性がその理由であって
もよいことが熟考される。BID投与が曝露におけるこの頭打ちを克服し、PDの効果を
高めている。
セルデュラチニブは、血中の、β2M、CRP、TNFR及びCCL3/4のような炎
症のマーカーである複数の血清タンパク質を有意に低下させた。腫瘍反応と炎症の血清マ
ーカー(たとえば、β2M及びCCL4)の阻害との間で有意な相関が認められた。
セルデュラチニブは、強く前治療された患者にて有望な活性を有する。これらのデータ
は再発性/難治性のB細胞悪性腫瘍の患者のこの試験における臨床的な活性の証拠を明ら
かにした。今日まで、CLL、FL及びDLBCLの患者を含めて部分応答は観察されて
いる。腫瘍の縮小は、その疾患が他のBCR経路阻害剤で進行した(またはそれを忍容す
ることができなかった)者を含む複数の患者で見られた。他のBCR経路阻害剤で見られ
たようにリンパ球増多症の証拠が認められた。結果はまたセルデュラチニブがこれらの強
く前治療された患者にて上手く忍容されることも示した。
部分応答を含むこれらの結果は、再発性または難治性の血液癌の患者にてセルデュラチ
ニブは活性があり、且つ上手く忍容されるという追加の証拠を提供している。
実施例4:セルデュラチニブはイブルチニブ感受性及びイブルチニブ耐性の初代CLL細
胞及びBTKC481S形質導入細胞株の増殖を阻止することが見いだされた
イブルチニブはSelleckchem(Houston,TX,USA)から購入し
た。
細胞の単離及び培養:CLL細胞はヒトB細胞濃縮カクテルキット(Stemcell
Technologies,Vancouver,BC,Canada)を用いて精製
し、精製の検証のために全症例で95%を超える抗CD5/CD19(それぞれクローン
HIB19及びUCHT2、eBioscience,San Diego,CA)で染
色した。2.5mg/mLのCpG(ODN2006、刺激性CpG−ODN B型、ヒ
ト特異的、Invivogen(San Diego、CA)から購入した)、100n
g/mLのCD40L(Enzo Life Sciences、Plymouth M
eeting、PA)、10ng/mLのIL−4 CD40L(Enzo Life
Sciences、Plymouth Meeting、PA)の存在下または非存在下
で、1×10個/mLの密度にて15%ウシ胎児血清(Gibco,Grand Is
land,NY)、ペニシリン(100IU)及びストレプトマイシン(100μg/m
L)を伴ったRPMI1640において、単離されたCLL細胞を培養した。プレートに
結合した抗IgM(10μg/mL)によって抗IgM刺激を行った。
細胞増殖アッセイ:組み合わせた刺激(2.5μg/mLのCpG、100ng/mL
のCD40L、10ng/mLのIL−4及び10μg/mLのプレートに結合した抗I
gM)による8日目の培養物にブロモデオキシウリジン(BrdU)を加えた。製造元の
指示書に従ってBrdUフローキット(BD Biosciences)を用いてフロー
サイトメトリーによってBrdU細胞の比率を解析した。
BTKC481S及びT316A変異体構築物の生成:pCMV6発現ベクターにおけ
るBTK野生型(WT)のcDNAクローンをORIGENE(Rockville,M
D,USA)から購入した。製造元の指示書に従ってQuikChange II部位特
異的変異誘発キット(Agilent Technologies,CedarCree
k,TX,USA)を用いてBTKC481S及びBTKT316A の変異体ベクター
を生成した。変異体構築物の固有性はSanger配列決定によって確認した。
細胞の形質移入、細胞の計数及び生存率アッセイ:製造元のプロトコール(Amaxa
,Cologne,Germany)に従ってキットV、プログラムU−13 on A
maxa Nucleofectorを用いて、WTのBTKまたはBTKC481S
異体の構築物によってTMD8細胞に形質移入した。形質移入ののち、回復のために24
時間24穴プレートにて細胞をNKTert細胞と共に共培養した。次いでイブルチニブ
、セルデュラチニブ及び溶媒(DMSO)を形質移入したTMD8細胞に加え、Muse
(商標)細胞分析器(Millipore,Hayward,CA,USA)を用いてM
use計数&生存率キットによって細胞の生存率を測定した。
フローサイトメトリー:FACS解析のための細胞の染色は、以前記載された(たとえ
ば、Cheng,et al.,Leukemia.2014;28(3):649−6
57)ように最適化された量の蛍光色素を結合させたmAbによって行った。手短には、
洗浄緩衝液(1×PBS,0.5%のBSA,0.1%のNaN)で2回洗浄した後、
100μLの洗浄緩衝液に1×10個の細胞を浮遊させ、蛍光色素を結合させたmAb
によって染色し、室温で20分間インキュベートした。細胞をPerm/Wash緩衝液
で2回洗浄したのち、フローサイトメータによって走査した。細胞内ホスホフロー解析に
ついては、新たに単離したCLL細胞を直ちに2〜4%のパラホルムアルデヒドで固定し
、−80℃で保存した。凍結保存した細胞を室温で溶解し、氷上で4時間50%のメタノ
ールで透過化した。1×10個の細胞を100μLの洗浄緩衝液に浮遊させ、蛍光色素
を結合させたmAbによって染色し、室温で20分間インキュベートした。次いでLSR
2フローサイトメータ(BD Biosciences)によってフローサイトメトリー
を行い、FlowJoソフトウエア(FLOWJO LLC,Ashland,OR,U
SA)を用いてデータを解析した。
イブルチニブに応答する患者からイブルチニブ治療に先立って単離された初代細胞を組
み合わせ刺激の条件下で250nMのイブルチニブまたはセルデュラチニブによって処理
した。8日目にBrdUの取り込みを測定した。これらの細胞はこの濃度でどちらの薬剤
にも同等に十分応答した。
3名のイブルチニブ/再発患者から単離した細胞における類似の実験も行った。これら
の試料はイブルチニブ耐性を付与するBTKの突然変異を持っている。患者のうち2名は
既知の突然変異BTKC481Sを有し、他の1名はBTKT316Aを有した。生細胞の
数を7日間毎日数えた。
これらの変異した細胞をイブルチニブ及びセルデュラチニブに対して調べると、イブル
チニブ処理に続いて有意な数のBrdUCLL細胞が残っていたのに対して、3つの症
例すべてにてセルデュラチニブはBrdU細胞集団の出現をほぼ完全に阻止した。これ
らの実験は、セルデュラチニブは、イブルチニブ感受性のCLL細胞にて細胞増殖を阻止
するだけでなく、イブルチニブ耐性のCLL細胞での細胞増殖も阻止することを明らかに
している。
セルデュラチニブがイブルチニブ耐性細胞の増殖を直接抑制するのかどうかを調べるた
めに、BTKC481S及び野生型BTK(WT)双方の発現ベクターを構築し、クロー
ニングし、次いでイブルチニブ感受性リンパ腫細胞株TMD8に形質移入した。イブルチ
ニブまたはセルデュラチニブへの曝露に続く細胞増殖を評価した。
WTのBTKを形質移入したTMD8細胞の増殖は250nMでのイブルチニブ及びセ
ルデュラチニブの双方によって同様に阻害されることが観察された(図4)。しかしなが
ら、BTKC481Sで形質移入した細胞は予想通りイブルチニブにはあまり感受性では
なかった(図5)。一方、これらの細胞の増殖はWTのBTKで見られた阻止と同様にセ
ルデュラチニブによって効果的に阻止された。
実施例5:濾胞性リンパ腫患者についての症例研究
症例研究1(患者1):患者は形質転換濾胞性3Bリンパ腫(IHCによりMYC/B
CL2/BCL6陽性)の71歳の白人女性だった。腫瘍はCD20+、CD10−、B
CL2(強い)、cMYC(50%)及びKi67(80%)だった。
患者の以前の治療にはR−CHOP(リツキシマブ、サイクロホスファミド、ドキソル
ビシン塩酸塩、オンコビン、プレドニゾン)(2013年11月〜2014年2月)が含
まれた。患者は2015年2月に再発した。2015年3月、患者は1日1回経口による
(「PO QD」)セルデュラチニブ65mgを開始した。
以下が観察された:定常状態Cmin−Cmaxは0.73〜1.74μMだった;B
CRシグナル伝達の%阻害は100%だった;IL2、IL4、IL6のシグナル伝達の
%阻害は60〜100%だった;及びGM−CSFの%阻害は約20%だった。患者は2
サイクルののちセルデュラチニブに対して部分応答(69%)を示した。
患者1は2015年8月に進行した。患者1は5サイクルの治療に続いて再発した。
症例検討2(患者2):患者は濾胞性リンパ腫の71歳の白人女性だった。
患者の以前の治療にはクロラムブシル(1998;CR)、フルダラビン/リツキサン
(1999−2000;CR)、及びアバスチン/リツキサン(2011年3月〜201
2年1月)が含まれた。患者2は2014年9月に再発した。患者2は2014年10月
、セルデュラチニブ45mgのPOQDを開始し、倦怠感のために用量を30mgに減ら
した。
以下が観察された:定常状態Cmin−Cmaxは0.25〜0.63μMだった。B
CRシグナル伝達の%阻害は;pSYK Y525/525について90%,pERK
Y204について0%だった;IL2、IL4、IL6のシグナル伝達の%阻害は60〜
100%だった;GM−CSFの%阻害は0%だった;2サイクル後のセルデュラチニブ
に対する部分応答(56%)及び1年の治療ののち76%のリンパ節縮小。
患者2はその薬物にとどまっている。
症例検討3(患者3):患者は濾胞性リンパ腫の79歳の白人男性だった。患者の腫瘍
はSTATにおけるS86A突然変異を持っている。
患者の以前の治療:R−CVP(リツキシマブ;サイクロホスファミド;ビンクリスチ
ン;プレドニゾロン)(2006〜2007)、R−維持(2006〜2008)、BR
(ベンダムスチン;リツキシマブ)(5/2013〜9/2013),イブルチニブ(1
0/2013〜4/2014)、R−CHOP(12/2013〜4/2014)。患者
3は2014年5月に再発した。患者3は2014年6月に1日2回の経口(「PO B
ID」)によるセルデュラチニブ15mgを与えられた。セルデュラチニブで6カ月間患
者3では安定な疾患が観察された(20%のリンパ節縮小)。
これらの症例検討は、セルデュラチニブが今日まで上手く忍容されており、強い前治療
を受けた濾胞性リンパ腫を有する患者にて有望な活性を有することを示している。応答は
他の非ホジキンリンパ腫(NHL)で見られている。
定義されない限り、本明細書で使用されている専門用語及び科学用語はすべて、本発明
が属する技術の当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書に説明的に記載されている本発明は、本明細書で具体的に開示されていない要
素(単数)または要素(複数)、限定(単数)または限定(複数)の非存在下で好適に実
践されてもよい。従って、たとえば、用語「comprising(含んでいる)」、「
including(含んでいる)」、「containing(含んでいる)」等は広
範に且つ限定しないで読み取られるべきである。さらに、本明細書で採用されている用語
及び表現は限定という点ではなく、記載という点で使用されており、示され、記載されて
いる特徴またはその一部の同等物を排除するそのような用語及び表現の使用の意図はない
が、請求されている本発明の範囲の中で種々の改変が可能であることが認識される。
従って、本発明は好まれる実施形態及び任意の特徴によって具体的に開示されているが
、本明細書で開示されているその中で具体化された本発明の改変、改善及び変化が当業者
によって再分類されてもよく、そのような改変、改善及び変化は本発明の範囲の中にある
と見なされることが理解されるべきである。ここで提供されている材料、方法及び実施例
は好まれる実施形態の代表であり、例示であり、本発明の範囲を限定するものとしては意
図されない。
本発明は本明細書に広く且つ一般的に記載されている。一般的な開示の範囲内に入るさ
らに狭い種及び亜属のグループ分けのそれぞれも本発明の一部を形成する。これには、削
除された物質が本明細書で具体的に引用されるかどうかにかかわらず、条件付きでまたは
属に由来する主題を取り除く消極的限定と共に本発明の一般的な記載が含まれる。
加えて、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群という点で記載されている場合、当
業者は本発明がそれによってマーカッシュ群の個々のメンバーまたはメンバーの亜群とい
う点でも記載されることを認識するであろう。
本明細書で言及されている出版物、特許出願、特許及び他の参考文献はすべて、それぞ
れが参照によって個々に組み入れられたかのような同じ程度にその全体が参照によって明
白に組み入れられる。対立する場合、定義を含む本明細書が支配するであろう。
本開示は上記の実施形態と併せて記載されている一方で、前述の記載及び実施例は説明
するように意図され、本開示の範囲を限定するようには意図されないことが理解されるべ
きである。本開示の範囲内にある他の態様、利点及び改変は本開示が関係する技術の当業
者に明らかであろう。
本開示の実施形態の例として以下の項目が挙げられる。
(項目1)
それを必要とするヒト患者における血液癌の治療方法であって、約10mg〜約75mgの1日用量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩を前記患者に投与することを含む、前記治療方法。
(項目2)
それを必要とする患者における再発性または難治性の血液癌の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩を前記患者に投与することを含む、前記治療方法。
(項目3)
それを必要とする患者における再発性または難治性の血液癌の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩を前記患者に投与することを含み、前記患者が、再発及び/または血液癌を治療するための薬剤に対する耐性と関連がある突然変異を有し、
セルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩の有効量が、セルデュラチニブの約30mg〜約80mgの1日用量である、前記治療方法。
(項目4)
前記患者が、再発及び/または血液癌を治療するための薬剤に対する耐性と関連がある突然変異を有する、項目1または2に記載の方法。
(項目5)
前記患者が、del17pの突然変異、P53の突然変異、ATMの突然変異、STATの突然変異、STAT6の突然変異、C481S STAT6の突然変異、NOTCH経路に関連する突然変異、またはカデリン経路に関連する突然変異を有する、項目3または4に記載の方法。
(項目6)
前記患者が、P53、BTK及びEP300のすべてにおいて突然変異を有さない、項目3〜5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記患者が、BTKの突然変異を有する、項目3または4に記載の方法。
(項目8)
前記患者が、イブルチニブに対する耐性を有する、項目3または4に記載の方法。
(項目9)
前記血液癌が、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)及びマントル細胞リンパ腫(MCL)から成る群から選択される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記血液癌がCLLである、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記血液癌がSLLである、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記血液癌がFLである、項目9に記載の方法。
(項目13)
前記血液癌がtFLである、項目9に記載の方法。
(項目14)
前記血液癌がDLBCLである、項目9に記載の方法。
(項目15)
前記血液癌がMCLである、項目9に記載の方法。
(項目16)
前記患者が、アルキル化剤、抗CD20抗体、BCL−2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻害剤、白金系薬剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、BCR経路阻害剤、及び血液癌を治療するのに使用される別の化学療法剤から成る群から選択される薬剤を以前投与された、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記患者が、ベネトクラックス、リツキシマブ、イブルチニブ、イデラリシブ及びフルダラルビンから成る群から選択される薬剤を以前投与された、項目1〜16に記載の方法。
(項目18)
前記セルデュラチニブが、薬学上許容できる賦形剤またはキャリアをさらに含む医薬組成物にて投与される、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目19)
セルデュラチニブの前記1日用量が約70mgである、項目1に記載の方法。
(項目20)
セルデュラチニブの前記1日用量が投与当たり約35mgで1日2回投与される、項目1に記載の方法。
(項目21)
セルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩の前記有効量が約15mg〜約40mgの用量で1日2回投与される、項目2または3に記載の方法。
(項目22)
セルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩の前記有効量が約30mg〜約40mgの用量で1日2回投与される、項目2または3に記載の方法。
(項目23)
セルデュラチニブまたは薬学上許容できるその塩の前記有効量が約35mgの用量で1日2回投与される、項目2または3に記載の方法。

Claims (1)

  1. 本明細書に記載の発明。

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