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JP2021042335A - 粘着剤組成物、粘着剤及び粘着シート - Google Patents

粘着剤組成物、粘着剤及び粘着シート Download PDF

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JP2021042335A JP2019166789A JP2019166789A JP2021042335A JP 2021042335 A JP2021042335 A JP 2021042335A JP 2019166789 A JP2019166789 A JP 2019166789A JP 2019166789 A JP2019166789 A JP 2019166789A JP 2021042335 A JP2021042335 A JP 2021042335A
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聖子 三ツ谷
直也 三ツ谷
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Abstract

【課題】 被着体に対する接着性に優れるとともに、低温環境下(例えば、−30〜10℃)で長時間さらされた場合でも粘着力の上昇が抑制され、良好な剥離性を有する粘着剤を形成する粘着剤組成物を提供すること。【解決手段】 アクリル系樹脂(A)及びアクリル系樹脂(B)を含有する粘着剤組成物であって、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(TgA)が−100℃以上0℃未満で、アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)が0℃以上250℃以下であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)におけるアルキル基の平均炭素数(α)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)におけるアルキル基の平均炭素数(β)の差が1〜5であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)におけるアルキル基の平均炭素数(β)が1超である粘着剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、アクリル系樹脂を含有する粘着剤組成物に関し、更に詳しくは、被着体に対する接着性に優れるとともに、常温から高温環境下(例えば、20〜40℃)で貼合後、低温環境下(例えば、−30〜10℃)で長時間さらされた場合でも粘着力の上昇が抑制され、良好な剥離性を有する粘着剤を形成する粘着剤組成物に関するものである。
従来より、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分とするアクリル系粘着剤は、タック、粘着力、凝集力等の基本物性に加え、耐熱性、耐候性、耐水性、耐油性に優れていることから、粘着ラベル、粘着シート、粘着テープ等の粘着製品に幅広く用いられている。
一般的に、これらの粘着製品は、被着体に貼付した後は剥離されることがほとんどない永久接着型と被着体に貼付した後に剥離されることが想定される剥離型に分類することができ、近年は、環境対応やリサイクルの必然性から、剥離型粘着製品の使用量が増大している。
剥離型粘着製品に用いられる粘着剤は、被着体に貼付されてから長時間経過した後であっても、糊残り等の被着体汚染を起こさず、きれいに剥離できることが要求される。特に、建材に使用される養生シートは、使用中にはウキや剥がれがなく、被着体に良くつく一方で、養生後は貼り跡の痕跡なく剥離できることが必要とされる。更に、建築施工時間が長くなると季節をまたぎ、特に夏場から秋の気温が高い時期に着工し使用したシートを冬場の低温時に剥離すると、糊残りや、粘着力上昇、またシート基材の破断が発生するという問題がある。
かかる要求に対して、例えば、永久接着型の粘着剤の架橋密度を上げる、あるいは、粘着剤用ポリマーのガラス転移温度を高める、といった方法で、凝集力の向上を図れば、糊残りがなくなって剥離性が向上すると考えられるが、これらの方法では、剥離性は向上するものの、粘着力が低下してしまうという問題があった。
かかる問題に関して、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシ基含有ビニルモノマーからなる(メタ)アクリル系共重合体に、粘着付与剤として特定の水酸基価、軟化点を有する重合ロジンエステル、架橋剤としてイソシアネート化合物及びアジリジン化合物を配合してなるアクリル系粘着剤組成物(例えば、特許文献1参照)や、少なくとも2−エチルヘキシルアクリレート20〜40重量部、ブチルアクリレート60〜80重量部を主成分として共重合させた粘着剤主剤と、2−エチルヘキシルアクリレート60〜90重量部、ブチルアクリレート10〜40重量部を主成分として共重合させた粘着剤主剤を混合して得た粘着剤(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
特開平10−330722号公報 特開平10−120990号公報
しかしながら、上記各特許文献の開示技術では、初期の粘着物性はある程度得られるものの、長期施工時間の使用状況を鑑みると、常温から高温環境下(例えば、20〜40℃)で貼合後、低温環境下、例えば−30〜10℃といったような環境下での粘着力上昇や剥離時の糊残りといった問題が残るものであり、それ故、低温環境下で長時間さらされた場合でも粘着力の上昇が抑制され、良好な剥離性を有する粘着剤が求められる。
そこで、本発明ではこのような背景下において、被着体に対する接着性に優れるとともに、低温環境下(例えば、−30〜10℃)で長時間さらされた場合でも粘着力の上昇が抑制され、良好な剥離性を有する粘着剤を形成する粘着剤組成物を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、粘着剤組成物として用いられるようなガラス転移温度の低いアクリル系樹脂に、ガラス転移温度の高いアクリル系樹脂を含有させ、両アクリル系樹脂の原料成分である(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の平均炭素数の差が所定範囲とすることにより、被着体に対する接着性に優れるとともに、低温環境下(例えば、−30〜10℃℃)で長時間さらされた場合でも粘着力の上昇が抑制され、良好な剥離性を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を含む重合成分が重合されたアクリル系樹脂(A)及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)を含む重合成分が重合されたアクリル系樹脂(B)を含有する粘着剤組成物であって、
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(TgA)が−100℃以上0℃未満で、アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)が0℃以上250℃以下であり、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)におけるアルキル基の平均炭素数(α)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)におけるアルキル基の平均炭素数(β)の差が1〜5であり、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)におけるアルキル基の平均炭素数(β)が1超である粘着剤組成物に関するものである。
更に、本発明は、前記粘着性組成物が架橋剤により架橋された粘着剤、かかる粘着剤から粘着剤層を有する粘着シートも提供するものである。
本発明の粘着剤組成物は、被着体に対する接着性に優れるとともに、低温環境下で長時間さらされた場合であっても粘着力の上昇が抑制され、良好な剥離性を有する粘着剤を形成することができるものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
また、アクリル系樹脂とは、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
なお、本発明において、「シート」とは、特に「フィルム」、「テープ」と区別するものではなく、これらも含めた意味として記載するものである。
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を含む重合成分が重合されたアクリル系樹脂(A)及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)を含む重合成分が重合されたアクリル系樹脂(B)を含有するものである。
<アクリル系樹脂(A)>
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を含む重合成分、好ましくは更に官能基含有モノマー(a2)を含む重合成分、必要に応じて更に、その他の共重合性モノマー(a3)を含む重合成分を重合させて得られるものである。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)は後記の官能基含有モノマー(a2)を除くものである。
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)は、アルキル基の炭素数が、通常1〜20であり、好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8、さらに好ましくは4〜8である。炭素数が大きすぎると粘着剤にしたときの凝集力が低下する傾向にある。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)として、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環族の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の中でも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさおよび原料入手のしやすさの点で、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の重合成分中における含有量は、通常30〜99.99重量%であり、好ましくは40〜99.8重量%、特に好ましくは50〜99.5重量%である。かかる含有量が少なすぎると、アクリル系樹脂(B)との相溶性が低下する傾向があり、多すぎると相対的に官能基や極性基が少なくなり凝集力が低下する傾向がある。
上記官能基含有モノマー(a2)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー等を挙げることができる。これらの中でも水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく用いられる。また、これらの官能基含有モノマーは、単独でもしくは2種類以上を併用することができる。
上記官能基含有モノマー(a2)の重合成分中における含有量は、通常0.01〜30重量%であり、好ましくは0.2〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、殊に好ましくは1〜5重量%である。かかる含有量が多すぎると、樹脂溶液の安定性が低下したり、粘着剤としたときのガラス転移温度が高くなりタックが低下したり、乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向があり、少なすぎると架橋度が低下し、被着体への汚染性が増大しやすくなる傾向がある。
上記水酸基含有モノマーとしては、水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーであることが好ましく、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマー等を挙げることができる。
上記水酸基含有モノマーのなかでも、後述の架橋剤(C)との反応性に優れる点で、1級水酸基含有モノマーが好ましく、特には2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
上記水酸基含有モノマーの重合成分中における含有量は、通常0.1〜20重量%であり、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。かかる含有量が多すぎると、乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向があり、少なすぎると架橋度が低下し、被着体への汚染性が増大しやすくなる傾向がある。
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられる。なかでも共重合性の点で(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
上記カルボキシ基含有モノマーの重合成分中における含有量は、通常0.01〜15重量%であり、好ましくは0.05〜8重量%、より好ましくは0.1〜5量%である。かかる含有量が多すぎると、被着体を変質させやすい傾向があったり、乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アミド基含有モノマーとしては、例えば、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、(メタ)アクリルアミドN−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー等が挙げられる。
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチロールプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸あるいはその塩等が挙げられる。
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
上記その他の共重合性モノマー(a3)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステルモノマー;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香環を含有するモノマー;ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはオキシアルキレン基を含有するモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記その他の共重合性モノマー(a3)の重合成分中における含有量としては、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。その他の共重合性モノマー(a3)が多すぎると粘着特性が低下しやすくなる傾向がある。
本発明では、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、官能基含有モノマー(a2)、その他の共重合性モノマー(a3)を重合成分として重合することにより、(メタ)アクリル系樹脂(A)を製造するのであるが、かかる重合法としては通常、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法により適宜行うことができる。中でも溶液ラジカル重合で製造することが、安全に、安定的に、任意のモノマー組成でアクリル系樹脂(A)を製造できる点で好ましい。
上記溶液ラジカル重合では、例えば、有機溶剤中に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)、官能基含有モノマー(a2)、その他の共重合性モノマー(a3)等のモノマー成分および重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは通常50〜98℃で0.1〜20時間程度重合すればよい。
上記重合反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
上記重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を用いることができ、具体的には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
かくして本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)が得られるが、本発明においては、アクリル系樹脂(A)の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)におけるアルキル基の平均炭素数(α)が2〜12であることが粘着剤としたときの粘着物性(タック、粘着力、再剥離性)の点で好ましく、より好ましくは2.5〜10、特に好ましくは3〜8である。平均炭素数(α)が小さすぎると粘着剤としたときのタックが低下する傾向があり、大きすぎると凝集力が低下する傾向がある。
なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)におけるアルキル基の平均炭素数(α)は(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)中の各モノマー成分の炭素数を重量比率で掛けて合計して算出したものである。例えば、各モノマー成分の炭素数がブチルアクリレート(BA)の場合は「4」、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)の場合は「8」となり、下記の実施例中のアクリル系樹脂(A−1)(BA(a1)/2EHA(a1)/AAc(a2)/HEMA(a2)/VAc(a3)=46/46/2.9/0.15(重量比))では、(α)は「6」となる。なお、AAcはアクリル酸、HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、VAcは酢酸ビニルの略称である。
また、本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(TgA)は、−100以上0℃未満であり、特に好ましくは−80〜−20℃、さらに好ましくは−70〜−30℃であることが好ましい。ガラス転移温度が高すぎると粘着性が低下する傾向があり、低すぎると被着体に対する汚染性が増大する傾向がある。
なお、上記ガラス転移温度(TgA)は、アクリル系樹脂(A)を構成するそれぞれのモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率を、Foxの式に当てはめて算出した値である。
ここで、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K7121−1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
また、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、30万〜200万であることが好ましく、より好ましくは35万〜180万、特に好ましくは40万〜160万、殊に好ましくは50万〜150万である。重量平均分子量が小さすぎると、被着体に対する汚染性が高くなる傾向があり、大きすぎると塗工性が低下しやすくなり、またコストの面で不利となる傾向がある。
さらに、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、特には10以下が好ましく、さらには7以下が好ましく、殊には6以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると被着体に対する汚染性が増大する傾向がある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常1.1である。
上記アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×10、分離範囲:100〜2×10、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列にして用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で得ることができる。
<アクリル系樹脂(B)>
本発明で用いられるアクリル系樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)、必要に応じて、官能基含有モノマー(b2)、その他の共重合性モノマー(b3)を含む重合成分を重合させて得られるものである。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)は官能基含有モノマー(b2)を除くものである。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)、官能基含有モノマー(b2)、その他の共重合性モノマー(b3)については、上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、官能基含有モノマー(a2)、その他の共重合性モノマー(a3)と同様のものが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)の重合成分中における含有量は、 30〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは40〜100重量%、特に好ましくは50〜100重量%である。かかる含有量が少なすぎると、アクリル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向がある。
また、本発明で用いられるアクリル系樹脂(B)は、(メタ)アクリル系樹脂(A)と同様の重合法により得ることができる。
本発明において、(メタ)アクリル系樹脂(B)の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)におけるアルキル基の平均炭素数(β)が1超であることがアクリル系樹脂(A)との相溶性の点で重要であり、より好ましくは1.1〜8、特に好ましくは1.5〜4である。平均炭素数(β)が小さすぎるとアクリル樹脂(A)との相溶性が低下する傾向がある。なお、大きすぎると粘着剤としたときの凝集力が低下する傾向がある。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)におけるアルキル基の平均炭素数(β)は、平均炭素数(α)のときの算出方法と同様に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)中の各モノマー成分の炭素数を重量比率で掛けて合計して算出したものである。
また、本発明で用いられるアクリル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)は、0℃以上250℃以下であり、特に好ましくは20〜150℃、さらに好ましくは50〜100℃であることが好ましい。ガラス転移温度が高すぎると粘着剤としたときにジッピングしやすくなる傾向があり、低すぎると凝集力が低下する傾向がある。
なお、上記ガラス転移温度(TgA)は、アクリル系樹脂(B)を構成するそれぞれのモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率を、Foxの式に当てはめて算出した値である。
ここで、アクリル系樹脂(B)を構成するモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K7121−1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
また、アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量は、1万〜30万であることが好ましく、より好ましくは1.5万〜20万、特に好ましくは2万〜15万、殊に好ましくは2.5万〜10万である。重量平均分子量が小さすぎると、粘着剤とした際の凝集力が低下する傾向があり、大きすぎるとアクリル樹脂(A)との相溶性が低下する傾向がある。
さらに、アクリル系樹脂(B)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、特には10以下が好ましく、さらには7以下が好ましく、殊には5以下が好ましい。かかる分散度が大きすぎると被着体に対する汚染性が増大する傾向がある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常1.1である。
なお、上記アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC XT 450(分子量範囲:20000~400000)を1本、ACQUITY APC XT 200(分子量範囲:3000~70000)を1本、ACQUITY APC XT 45(分子量範囲:200~5000)を2本の計4本を直列にして用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で得ることができる。
本発明においては、アクリル系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)を含有させるに際して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)におけるアルキル基の平均炭素数(α)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)におけるアルキル基の平均炭素数(β)の差が1〜5であることが必要であり、好ましくは1.2〜4.8、更に好ましくは1.5〜4.5、特に好ましくは1.8〜4.3、殊に好ましくは2.0〜4.0である。かかる差が大きすぎても小さすぎても低温経時後の粘着力変化率が高くなる傾向となる。
また、本発明において、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(TgA)とアクリル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)との差が50〜300℃であることが好ましく、より好ましくは60〜250℃、更に好ましくは65〜200℃、特に好ましくは70〜180℃である。かかるガラス転移温度の差が上記範囲内とすることにより、粘着物性のバランスにより優れたものとなる。
更に、アクリル系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)の含有割合については、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、アクリル系樹脂(B)が2〜60重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜40重量部、特に好ましくは7〜30重量部、更に好ましくは8〜25重量部である。アクリル系樹脂(B)の含有量が少なすぎると低温での粘着力が高くなる傾向があり、多すぎると常温での粘着力が低くなる傾向がある。
かくして、上記のアクリル系樹脂(A)及びアクリル系樹脂(B)を含有する粘着剤組成物を得ることができるが、更に、架橋剤を含有することが凝集力を向上させる点で好ましい。
<架橋剤>
上記架橋剤(C)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられるが、これらの中でも基材との接着性を向上させる点やアクリル系樹脂中の官能基との反応性に優れる点で、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、とりわけイソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系架橋剤、1,3−キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系架橋剤、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート等のジフェニルメタン系架橋剤、1,5−ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート系架橋剤等の芳香族系イソシアネート系架橋剤;イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート系架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート系架橋剤;及び上記イソシアネート系化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。
これらイソシアネート系架橋剤のなかでも、トリレンジイソシアネート系架橋剤がポットライフと耐久性の点で好ましく、キシリレンジイソシアネート系架橋剤またはイソシアヌレート骨格含有イソシアネート系架橋剤がエージング時間短縮の点で好ましく、非芳香族非含有イソシアネート系架橋剤が耐黄変性の点で好ましい。これらの中で具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体、及びヌレート体が、耐久性、ポットライフ、架橋速度のバランスに優れている点で好ましい。
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
上記架橋剤(C)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記架橋剤(C)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.05〜8重量部、更に好ましくは0.1〜5重量部、殊に好ましくは0.3〜3重量部である。かかる含有量が少なすぎると、凝集力が低下する傾向があり、多すぎると粘着力が低下する傾向がある。
かくして本発明の粘着剤組成物が得られるが、かかる粘着剤組成物には、必要に応じて、粘着付与剤が配合されていてもよい。
粘着付与剤としては、例えば、(重合)ロジン系、(不均化)ロジン系、(水添)ロジン系、(重合)ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系、クマロン系、クマロンインデン系、スチレン樹脂系、キシレン樹脂系、フェノール樹脂系、石油樹脂系等が挙げられる。
粘着付与剤の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、1〜100重量部であり、更に好ましくは2〜50重量部である。粘着付与剤の含有量が少なすぎると粘着付与剤による粘着力向上効果が発揮されないことがあり、多すぎると逆にタックが減少して粘着力が低下する傾向がある。
また、本発明の粘着剤組成物には、必要に応じて更に、通常配合される充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等の従来公知の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、1種類又は2種以上使用可能である。これらの添加剤の添加量は、所望する物性が得られるように適時設定すればよい。
本発明において、アクリル系樹脂(A)及びアクリル系樹脂(B)、好ましくは更に架橋剤(C)、必要に応じて更に、上記各種添加剤や溶剤を混合して調製された粘着剤組成物は、例えば、粘着シート、両面テープ等の各種粘着製品の製造に好適に用いることができる。このような粘着製品は、基材レスで、又は基材に粘着剤組成物の層を形成し、架橋反応させることにより製造される。
基材としては、上質紙、クラフト紙、クレープ紙、グラシン紙等の従来公知の紙類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、セロファン等のプラスチック、織布、不織布等の繊維製品等を利用することができる。基材の形状は、例えば、フィルム状、シート状、テープ状、板状等が挙げられ、これらの性状としては発泡体でもよく、特に限定されるものではない。基材の片面に粘着剤組成物を公知の方法によって塗布することによって、粘着シート、粘着ラベル等を得ることができる。
粘着剤組成物を基材に塗布する方法は、特に限定されるものではなく、ロールコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング法等の公知の方法を採用することができる。この場合、粘着剤組成物を基材に直接塗布する方法、離型紙等に粘着剤組成物を塗布した後、この塗布物を基材上に転写する方法等いずれも採用可能である。
粘着剤組成物を塗布した後、乾燥させることにより、基材上に粘着剤層が形成される。乾燥温度は、特に限定されるものではないが、加熱乾燥時に架橋反応が進行するので、架橋剤の種類に応じて架橋反応が速やかに進行する温度で乾燥することが好ましい。また、粘着剤層の厚みは特に限定されないが、5〜100μm、更には10〜60μmであることが接着力と剥離性の点で好ましい。
本発明において、粘着剤組成物が架橋された粘着剤層のゲル分率については、粘着剤としたときの粘着物性のバランスの点から30〜99%であることが好ましく、特に好ましくは35〜90%であり、更に好ましくは50〜80%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低くなり保持力が低下する傾向にあり、高すぎると粘着力が低下する傾向がある。
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材に粘着剤層が形成されてなる粘着シートから粘着剤をピッキングにより採取し、粘着剤を200メッシュのSUS製金網で包み酢酸エチル中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
基材上に形成された粘着剤層の表面には、例えば、粘着剤表面を好適に保護、保存するために離型紙を貼着してもよい。離型紙は、粘着製品を使用する際に、粘着剤層表面から引き剥がされる。なお、シート状やテープ状等の基材の背面に粘着剤層が形成されている場合は、この基材の背面に公知の離型剤を塗布して離型剤層を形成しておけば、粘着剤層を内側にして、粘着シートをロール状に巻くことにより、粘着剤層は、基材背面の離型剤層と当接することになるので、粘着剤層表面が保護、保存される。
かくして本発明の粘着剤組成物を用いた粘着製品(粘着シート等)が得られるが、被着体としては特に限定されることなく、ステンレス、アルミニウム、鋼、銅、鉄、ニッケル等をはじめとする金属類、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ABS、塩化ビニル等の樹脂類、木材類、ガラス類等が挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、被着体に対する接着性に優れるとともに、常温から高温環境下で貼合後、低温環境下で長時間さらされた場合でも粘着力の上昇が抑制され、良好な剥離性を有する粘着剤を形成するため、マスキングシートや養生シート等として非常に有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるアクリル系樹脂の重量平均分子量、分散度、粘着剤層のゲル分率は、前述の方法に従って測定した。
アクリル系樹脂のガラス転移温度についてはFoxの式を用いて算出し、アクリル系樹脂を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は通常DSCにより測定されてなる文献値及びカタログ記載値を用いた。
以下の通り、アクリル系樹脂を調製した。
<アクリル樹脂(A)の調製>(表1参照)
〔アクリル系樹脂(A−1)〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、 酢酸エチル58.58部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.0476部を仕込み、内温を沸点まで上昇させて、そこにn−ブチルアクリレート(BA)92.5部、アクリル酸(AAc)1.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1部、酢酸ビニル(VAc)5部の混合モノマーを2時間滴下させた。滴下終了から1時間反応した後AIBNを0.91%含む酢酸エチル溶液を2.813部滴下し、還流温度で2時間反応した。その後、さらにAIBNを0.91%含む酢酸エチル溶液を2.813部滴下し、還流温度で2時間反応した後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)(重量平均分子量84.4万、分散度5.39、ガラス転移温度−50.7℃)溶液(固形分50%、粘度38000mPa・s/25℃)を得た。
〔アクリル系樹脂(A−2)〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに酢酸エチル42.184部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.0796部を仕込み、内温を沸点まで上昇させて、そこにn−ブチルアクリレート(BA)46部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)46部、アクリル酸(AAc)2.9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.1部、酢酸ビニル(VAc)5部の混合モノマーを2時間滴下し反応させた。滴下終了から1時間反応した後AIBNを0.479%含むトルエン溶液を13.674部滴下し、還流温度で2時間反応した。その後、さらにAIBNを0.479%含むトルエン溶液を13.674部滴下し、還流温度で2時間反応した後、トルエンにて希釈してアクリル系樹脂(A−2)(重量平均分子量62.6万、分散度4.97、ガラス転移温度−57.1℃)溶液(固形分40%、粘度3800mPa・s/25℃)を得た。
〔アクリル系樹脂(A−3)〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに酢酸エチル30.314部、アセトン8.771部を仕込み、内温を沸点まで上昇させて、そこに2エチルヘキシルアクリレート(2EHA)93.8部、アクリル酸(AAc)3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.2部、酢酸ビニル(VAc)3部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部と酢酸エチル2.186部の混合溶液を2時間滴下し反応させた。滴下終了から1時間反応した後AIBNを0.333%含む酢酸エチル溶液を9.03部滴下し、還流温度で2時間反応した。その後、さらにAIBNを0.667%含む酢酸エチル溶液を6.04部滴下し、還流温度で2時間反応した後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−3)(重量平均分子量98.0万、分散度4.71、ガラス転移温度−64.9℃)溶液(固形分47%、粘度20000mPa・s/25℃)を得た。
<アクリル樹脂(B)の調製>(表2参照)
〔アクリル系樹脂(B−1)〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル42.857部、メチルエチルケトン57.143部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.286部を仕込み、内温を沸点まで上昇させて、そこにエチルメタクリレート(EMA)100部とAIBNを28.57%含む酢酸エチル溶液3.14部のモノマー溶液を2時間滴下し反応させた。滴下終了から1時間反応した後AIBNを14.286%含む酢酸エチル溶液を5.857部滴下し、還流温度で2.5時間反応した後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(B−1)(重量平均分子量4万、分散度2.07、ガラス転移温度65℃)溶液(固形分28%、粘度29.3mPa・s/25℃)を得た。
〔アクリル系樹脂(B−2)〜(B−4)、(B’−1)〕
上記アクリル系樹脂(B−1)において、表2に示すモノマー組成とした以外は同様に行い、アクリル系樹脂を得た。
<架橋剤(C)>
・C−1:東ソー株式会社製、商品名「コロネートL55E」
Figure 2021042335
Figure 2021042335
(実施例1〜8、比較例1〜4)
上記のアクリル系樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)及び架橋剤(C)を表3に示す組成となるように配合し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を用いて、以下の通り粘着シートを作製した。
(粘着シートの作製)
離型ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(三井東セロ株式会社製:商品名「SP−PET38−01」)に、アプリケータを用いて乾燥後の膜厚が25μmに塗布し80℃で4分間乾燥させた。その後、形成された粘着剤層側を離型処理していないPETシート(膜厚38μm;東レ株式会社製:商品名「ルミラー38T60」)と貼り合せ、ついで40℃で4日間エージングして粘着シートを得た。
得られた粘着シートについて、以下の評価を行った。なお、離型PETシートは各種測定試験を実施する際に引き剥がした。
(初期接着力)
上記粘着シートを幅25mm×長さ100mmに裁断し、離型PETシートを剥離して、粘着剤層側を被着体(JIS Z−0237の「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じ研磨したSUS304)に23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラーを2往復して加圧貼付し、同雰囲気下で30分静置した後、引張試験機(島津オートグラフAG−X)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
(低温経時後の粘着力)
上記粘着シートを幅25mm×長さ100mmに裁断し、離型PETシートを剥離して、粘着剤層側を被着体(JIS Z−0237の「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じ研磨したSUS304)に23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラーを2往復して加圧貼付し、60℃雰囲気下で3時間静置した後、5℃の雰囲気下で3時間静置し、その後、引張試験機(島津オートグラフAG−X)を用いて、5℃の雰囲気下で剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
(粘着力の上昇率)
上記の、初期粘着力と低温経時後の粘着力から下式より上昇率を算出した。
粘着力の上昇率(%)=(低温経時後の粘着力/初期粘着力)×100
上記実施例及び比較例について、評価結果を表4に示す。
Figure 2021042335
Figure 2021042335
上記結果より、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)におけるアルキル基の平均炭素数(α)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)におけるアルキル基の平均炭素数(β)の差が範囲内である実施例においては、低温環境下で長時間さらされた場合でも粘着力の上昇が抑制されているのに対して、アクリル系樹脂(B)を満足しない比較例1、平均炭素数の差が「0」である比較例2及び3、「6」である比較例4は低温経時後の粘着力の上昇が大きく、本発明の目的を満足するものではなかった。
本発明の粘着剤組成物は、被着体に対する接着性に優れるとともに、常温から高温環境下で貼合後、低温環境下で長時間さらされた場合でも粘着力の上昇が抑制され、良好な剥離性を有する粘着剤を形成するため、マスキングシートや養生シート等として非常に有用である。

Claims (10)

  1. (メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を含む重合成分が重合されたアクリル系樹脂(A)及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)を含む重合成分が重合されたアクリル系樹脂(B)を含有する粘着剤組成物であって、
    アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(TgA)が−100℃以上0℃未満で、アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)が0℃以上250℃以下であり、
    (メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)におけるアルキル基の平均炭素数(α)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)におけるアルキル基の平均炭素数(β)の差が1〜5であり、
    (メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)におけるアルキル基の平均炭素数(β)が1超である
    ことを特徴とする粘着剤組成物。
  2. アクリル系樹脂(A)の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)におけるアルキル基の平均炭素数(α)が2〜12であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
  3. アクリル系樹脂(B)の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)におけるアルキル基の平均炭素数(β)が1.1〜8であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤組成物。
  4. アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(TgA)とアクリル系樹脂(B)のガラス転移温度(TgB)との差が50〜300℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  5. アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が30万〜200万であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  6. アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)が1万〜30万であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  7. アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、アクリル系樹脂(B)が2〜60重量部含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  8. 更に、架橋剤(C)を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の粘着剤組成物が、架橋剤(D)により架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
  10. 請求項9記載の粘着剤からなる粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
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