(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。本実施形態の温熱感調整装置は、図1に示す車両1の車室内において運転席2に座る乗員3の温熱感を調整する。温熱感調整装置は、ダッシュボード4の内部に配置される空調ユニット5、運転席2に取り付けられる腰部ヒータ6、大腿部ヒータ7、下腿部ヒータ8、サーモカメラ9を備える。以下、上、下、左、右は、車両における上、下、左、右をいう。
空調ユニット5は、温度調整された空気を、ダッシュボード4の表面に取り付けられたデフロスタ吹出口41、フェイス吹出口42、フット吹出口43から車室内に吹き出す装置である。
腰部ヒータ6は、運転席2のシートバックの上下方向中央部よりも下方において、シートバックの前面側に設けられている電気ヒータである。腰部ヒータ6は、主に乗員3の腰部36を加熱する。
大腿部ヒータ7は、運転席2のシートクッションにおいて、シートクッションの上面側に設けられている電気ヒータである。大腿部ヒータ7は、主に乗員3の左右大腿部37を加熱する。
下腿部ヒータ8は、運転席2のシートクッションにおいて、シートクッションの前面側に設けられている電気ヒータである。下腿部ヒータ8は、主に乗員3の左右下腿部38を加熱する。
空調ユニット5、腰部ヒータ6、大腿部ヒータ7、下腿部ヒータ8、サーモカメラ9は、全体として、乗員3に対して温熱刺激を加える1つの温熱刺激部に対応する。温熱刺激とは、乗員3が皮膚に熱的な刺激が与えられたことを感じ得る刺激のことである。
サーモカメラ9は、あらかじめ決められた撮影範囲内から放射される赤外線を取得し、取得した赤外線に基づいて、当該撮影範囲内の位置毎の表面温度を画素値として表す画像を生成して出力するセンサである。サーモグラフィの撮影範囲内には、乗員3の体全体が含まれる。
空調ユニット5は、空調ケース11、内外気切替ドア12、遠心ファン131、エバポレータ14、ヒータコア15、エアミックスドア16、フェイスドア17、フットドア18を備えている。また、空調ユニット5は、フェイスダクト51、フットダクト52、デフロスタダクト53、風向調整板110を備えている。また、空調ユニット5は、ファンアクチュエータ131a、エアミックスアクチュエータ16a、吹出モードアクチュエータ17a、内外気モードアクチュエータ12a、風向アクチュエータ110a等を備えている。
空調ケース11は、温度調整されて車室内に吹き出される空気が通る通風路111を囲む。内外気切替ドア12は、内気導入口112の開口面積と、外気導入口113の開口面積を調整する部材である。内外気切替ドア12は、内気導入口112と外気導入口113のうち、一方の開口部を開くほど他方の開口部を閉じるように回転動作する。これにより、内外気切替ドア12は、通風路111に導入される内気の風量と外気の風量の割合(すなわち、内外気比率)を調整することが可能である。ここで、内気は、車室内空気であり、外気は、車室外空気である。内外気モードアクチュエータ12aは、内外気切替ドア12を駆動するアクチュエータであり、図3に示すように、エアコンECU40によって制御される。エアコンECU40も、温熱感調整装置の構成要素である。
遠心ファン131は、回転することで、内気導入口112が開口していればそこから内気を、外気導入口113が開口していればそこから外気を、通風路111内に導入し、導入した空気を、通風路111内における遠心ファン131の空気流れ下流側に送る。ファンアクチュエータ131aは、遠心ファン131を駆動するアクチュエータであり、図3に示すように、エアコンECU40によって制御される。
エバポレータ14は、通風路111内で、遠心ファン131の空気流れ下流に、配置される。エバポレータ14は、遠心ファン131から送られた空気を冷却する。エバポレータ14は、図示していない圧縮機、凝縮器および膨張弁などと共に周知の冷凍サイクルを構成している。この冷凍サイクルも、温熱感調整装置の構成要素である。当該冷凍サイクルを流れる冷媒がエバポレータ14内を通る際、冷媒と空気が熱交換する。この熱交換により、冷媒が蒸発し、空気が冷やされる。
ヒータコア15は、通風路111内で、エバポレータ14の空気流れ下流に、配置されている。ヒータコア15は、エバポレータ14を通過した空気を加熱する。ヒータコア15には、エンジン冷却水が流れ、このエンジン冷却水と空気とが熱交換することで空気が加熱される。なお、ヒータコア15は、エバポレータ14を通過した空気を加熱電気ヒータに置き換えられてもよい。
エアミックスドア16は、エバポレータ14とヒータコア15との間に設けられている。エアミックスドア16は、エバポレータ14を通過した後にヒータコア15を迂回して流れる冷風の風量と、エバポレータ14を通過した後にヒータコア15を通過する暖風の風量との割合すなわちエアミックス比率を調整するドアである。エアミックスアクチュエータ16aは、エアミックスドア16を駆動するアクチュエータであり、図3に示すように、エアコンECU40によって制御される。
図2に示すように、空調ケース11には、通風路111の空気流れ方向下流側に、通風路111から車室内に空気を送風するためのフェイス開口部114、フット開口部115、デフロスタ開口部116が形成されている。通風路111のうち、ヒータコア15を迂回した空気とヒータコア15を通った空気とが混合されるエアミックス空間から、これらフェイス開口部114、フット開口部115、デフロスタ開口部116に空気が流れる。
フェイス開口部114、フット開口部115およびデフロスタ開口部116には、それぞれの開口部を開閉するためのモード切替ドアが設けられている。モード切替ドアは、フェイスドア17、フットドア18およびデフロスタドア19により構成されている。フェイスドア17は、フェイス開口部114を開閉する。フットドア18は、フット開口部115を開閉する。デフロスタドア19は、デフロスタ開口部116を開閉する。
吹出モードアクチュエータ17aは、これらフェイスドア17、フットドア18、デフロスタドア19を駆動するアクチュエータであり、図3に示すように、エアコンECU40によって制御される。エアミックスアクチュエータ16aによって、吹出口モードが制御される。吹出口モードには、例えば、フェイスモード、フットモード、デフロスタモードがある。フェイスモードは、フェイスドア17が開いてフットドア18、デフロスタドア19が閉じる吹出口モードである。フットモードは、フットドア18が開いてフェイスドア17、デフロスタドア19が閉じる吹出口モードである。デフロスタモードは、デフロスタドア19が開いてフェイスドア17、フットドア18が閉じる吹出口モードである。
フェイスダクト51は、一端がフェイス開口部114に接続され、他端であるフェイス吹出口42が空調ユニット5において運転席2のシートバックに対向する位置に開口している。通風路111からフェイス開口部114を通った空気はフェイスダクト51内を通った後、フェイス吹出口42から車室内に吹き出される。フェイス吹出口42から吹き出された空気は、運転席2に着座する乗員3の上半身またはその周囲に向けて流れる。
フットダクト52は、一端がフット開口部115に接続され、他端であるフット吹出口43がダッシュボード4において運転席2のシートクッションの前方の足元空間に対向して開口している。通風路111からフット開口部115を通った空気はフットダクト52内を通った後、フット吹出口43から車室内に吹き出される。フット吹出口43から吹き出された空気は、運転席2に着座する乗員3の左右の足先およびその周囲に向けて流れる。
デフロスタダクト53は、一端がデフロスタ開口部116に接続され、デフロスタ吹出口41がダッシュボード4においてフロントガラスに対向して開口している。通風路111からデフロスタ開口部116を通った空気はデフロスタダクト53内を通った後、デフロスタ吹出口41から車室内に吹き出される。デフロスタ吹出口41から吹き出された空気は、フロントガラスまたはその周囲に向けて流れる。
このように、デフロスタ吹出口41、フェイス吹出口42、フット吹出口43は、車室内の異なる位置に開口している。そして、乗員3の身体部位のうち、上半身に属する身体部位は、フェイス吹出口42から吹き出される空気の影響を最も強く受ける。また、乗員3の身体部位のうち、左右の足先は、フット吹出口43から吹き出される空気の影響を最も強く受ける。
また、図2に示すように、フェイス吹出口42には、風向調整板110が取り付けられている。風向調整板110は、フェイス吹出口42から車室内に吹き出される空気の向きを調整する。具体的には、風向調整板110の姿勢が変化することで、フェイス吹出口42から吹き出される空気の流れの向きが、車幅方向および車両上下方向に変わる。風向アクチュエータ110aは、風向調整板110を駆動するアクチュエータであり、図3に示すように、エアコンECU40によって制御される。
また、図3に示すように、温熱感調整装置は、外気温センサ22、内気温センサ23、日射センサ24、状態設定部21を備えている。外気温センサ22は、車室外の空気(すなわち外気)の温度に応じた検出信号を出力する。内気温センサ23は、車室内の空気(すなわち内気)の温度に応じた検出信号を出力する。日射センサ24は、車室内への日射量に応じた検出信号を出力する。
状態設定部21は、乗員3の入力操作を受け付ける装置である。具体的には、状態設定部21は、それぞれが個別に操作可能な4つのスイッチ211、212、213、214を有している。
エアコンECU40は、処理部401、記憶部402等を有する。記憶部402は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の各種メモリを含む。RAMは、書き込み可能な揮発性記憶媒体である。ROMは、書き込み不可能な不揮発性記憶媒体である。フラッシュメモリは、書き込み可能な不揮発性記憶媒体である。CPUに相当する処理部401は、ROM、フラッシュメモリに記憶された不図示のプログラムを実行し、その実行の際にRAMを作業領域として用いることで、後述する種々の処理を実現する。RAM、ROM、フラッシュメモリは、いずれも、非遷移的実体的記憶媒体である。以下、簡単のため、処理部401が行う処理を、エアコンECU40が行う処理であるとして説明する。
なお、空調ユニット5、腰部ヒータ6、大腿部ヒータ7、下腿部ヒータ8から構成される温熱刺激部は、乗員3に与える温熱刺激の身体部位別の分布を変更可能に構成されている。実際、腰部ヒータ6、大腿部ヒータ7、下腿部ヒータ8は、エアコンECU40によって互いに独立に出力調整が可能である。また、そして、空調ユニット5が車室内に送る空気の温度および風量も、腰部ヒータ6、大腿部ヒータ7、下腿部ヒータ8の作動とは独立にエアコンECU40によって調整可能である。また、エアコンECU40は、吹出口モードを変更することで、空気をフェイス吹出口42から吹き出すかフット吹出口43から吹き出すかを切り換えることができる。また、エアコンECU40は、風向調整板110の向きを制御することで、フェイス吹出口42から吹き出される空気の方向を調整することができる。これによって、例えば、乗員3の複数の身体部位30〜39のどれに対しても、その身体部位に最も強い温熱刺激が与えられるよう、温熱刺激の身体部位別の分布が調整可能である。
以下、上記のように構成された温熱感調整装置の作動について説明する。エアコンECU40は、乗員3の精神の状態または身体の状態を達成すべき状態に導くために、乗員3の複数の身体部位に個別に必要に応じて温熱感を与える。
このために、エアコンECU40は、図4に示す処理を実行する。エアコンECU40は、図4の処理を、車両1のメインスイッチがオンの場合に実行する。メインスイッチとは、車両1の主電源のオン、オフを切り換えるスイッチである。メインスイッチがオンのとき、車両1の主電源がオンとなる。図4の処理が実行されているとき、車両1は走行している場合もあれば、停止している場合もある。
エアコンECU40は、図4の処理において、まずステップS110で、4つのモードから1つのモードを選択する。ここで、モードとは、乗員3について達成したい精神または身体の状態を表すモードをいう。4つのモードは、具体的には、図5に示すように、リラックスモードM1、フォーカスモードM2、スリープモードB1、エナジーモードB2である。
リラックスモードM1は、乗員の精神を安静化させるモードである。後述するように、リラックスモードM1では、温熱感調整装置は、乗員3がリラックスできるように、乗員3へ温熱刺激を与える。例えば、車両1が停止しているときや、乗員3の運転操作を全く必要としない自動運転を車両1が実行している場合に、リラックスモードM1が選択可能である。
フォーカスモードM2は、乗員の精神を活性化させるモードである。後述するように、フォーカスモードM2では、温熱感調整装置は、乗員3が車両1の運転操作等の知的作業に集中できるように、乗員3へ温熱刺激を与える。
スリープモードB1は、乗員の身体を安静化させるモードである。後述するように、スリープモードB1では、温熱感調整装置は、乗員3が仮眠できるように、乗員3へ温熱刺激を与える。例えば、車両1が停止しているときや、乗員3の運転操作を全く必要としない自動運転を車両1が実行している場合に、スリープモードB1が選択可能である。
エナジーモードB2は、乗員の身体を活性化させて疲労感を回復させるモードである。後述するように、エナジーモードB2では、温熱感調整装置は、乗員3が車両1の運転操作に集中できるように、乗員3へ温熱刺激を与える。
このように、リラックスモードM1およびフォーカスモードM2は、乗員3について達成したい精神の状態を表し、スリープモードB1およびエナジーモードB2は、乗員3について達成したい肉体の状態を表す。また、リラックスモードM1およびスリープモードB1は、安静状態または安定状態を表し、フォーカスモードM2およびエナジーモードB2は、活性状態または覚醒状態を表す。
エアコンECU40は、状態設定部21への乗員3の操作内容に基づいて、これら4つのモードのうちから1つを選択する。具体的には、乗員3によってスイッチ211が操作された場合は、リラックスモードM1を選択する。また、乗員3によってスイッチ212が操作された場合は、フォーカスモードM2を選択する。また、乗員3によってスイッチ213が操作された場合は、スリープモードB1を選択する。また、乗員3によってスイッチ214が操作された場合は、エナジーモードB2を選択する。このようになっていることで、乗員3は、自らが望む精神状態または身体状態に誘導されるよう、車室内の環境を調整することができる。
続いてエアコンECU40は、ステップS120で、乗員3の複数の身体部位の各々に対する目標SET*を、ステップS110で決定したモードに基づいて決定する。ここで、乗員3の複数の身体部位は、図1に示すように、頭部30、首31、胸部32、左右上腕部33、左右前腕部34、左右手35、腰部36、左右大腿部37、左右下腿部38、左右足先39を含んでいる。
具体的には、エアコンECU40は、まず、ステップS110で決定したモードに応じて、図6、図7、図8、図9に示すように、目標温熱感分布を設定する。目標温熱感分布は、複数の身体部位30〜39のそれぞれを対象とする複数の温熱感の目標値を表すデータである。各モードの目標温熱感分布は、エアコンECU40のROMまたはフラッシュメモリ等の記憶部402にあらかじめ標準温熱感分布として記憶されている。エアコンECU40は、当該記憶部402から、決定したモードに応じた目標温熱感分布を読み出すことで、当該目標温熱感分布を設定する。
図6、図7、図8、図9は、それぞれ、リラックスモードM1、フォーカスモードM2、スリープモードB1、エナジーモードB2に対応する目標温熱感分布である。図6〜図9において、縦軸は身体部位を表し、横軸は、対応する身体部位の温熱感の目標値を表す。温熱感の目標値が大きいほど、対応する身体部位における温熱感はより暖かいものになる。温熱感の目標値が小さいほど、対応する身体部位における温熱感はより涼しいものになる。
各モードに対応した目標温熱感分布は、そのモードの精神状態または身体状態において乗員3が快適に感じると想定される分布として、作成されている。これら分布は、不特定多数の乗員を平均的に満足させるものとしてあらかじめ実験により決定されている。このように作成されていることで、あるモードについての目標温熱感分布が実現すれば、そのモードの精神状態または身体状態が実現するよう、乗員3の状態が誘導される。
4つのモードは、複数の身体部位30〜39に亘る温熱感の目標値の分布が、互いに異なる。また、4つのモードのいずれにおいても、頭部30、首31における温熱感の目標値よりも、左右大腿部37、左右下腿部38、左右足先39における温熱感の目標値の方が、大きい。
また、頭部30の温熱感の目標値は、4つのモードのうちどの2つを取っても互いに異なっている。具体的には、頭部30の温熱感の目標値は、スリープモードB1、リラックスモードM1、エナジーモードB2、フォーカスモードM2の順に大きい。また、スリープモードB1における身体部位30〜39の温熱感の目標値は、いずれも、他のモードにおける同じ身体部位の温熱感の目標値と同じかそれより大きい。
また、リラックスモードM1よりもフォーカスモードM2の方が、左右足先39を除く各身体部位の温熱感の目標値が、大きい。また、スリープモードB1よりもエナジーモードB2の方が、各身体部位の温熱感の目標値が、大きい。これは、精神または身体を活性化させるためには、安静化させる場合よりも体感温度を低くする方が望ましいからである。
ステップS120で更にエアコンECU40は、上述のように決定した目標温熱感分布に含まれる複数の身体部位の温熱感の目標値から、図10に示す対応テーブルを用いて、複数の身体部位のSET*を特定する。そして、特定したSET*を目標SET*とする。つまり、10個の温熱感の目標値から、それぞれに対応する10個の目標SET*を特定する。図10においては、横軸がSET*を表し、縦軸が身体部位の温熱感の目標値である。ここでエアコンECU40が使用するこの対応テーブルは、エアコンECU40のROMまたはフラッシュメモリ等の記憶部402にあらかじめ記憶されている。
ここで、SET*について説明する。SET*は、標準新有効温度と呼ばれる温度指標である。SET*は、環境側の気温、湿度、放射、気流と人体側の代謝量、着衣量の6要素を考慮して求められる。SET*ではASHRAEの標準環境というものが定義される。実在環境にいた人が、当該標準環境に移動した時に、当該実在環境と体感的に同じと感じた時の当該標準環境の気温が、当該実在環境におけるSET*である。SET*の詳細については、周知技術であるので説明を割愛する。SET*は、目標温熱感分布に示されている温熱感と1対1の対応関係を有している。したがって、SET*も、温熱感を表す指標である。
続いてエアコンECU40は、ステップS130で、乗員3の複数の身体部位30〜39の各々におけるSET*を算出する。ここで算出する10個のSET*は、目標値ではなく、現在の値、すなわち、現在SET*である。
SET*の値の算出方法は周知であるので、詳細な説明を省略する。例えばエアコンECU40は、種々のセンサから、乗員3の身体部位30〜39の各々における現在のSET*を算出する。種々のセンサとしては、サーモカメラ9、外気温センサ22、内気温センサ23、日射センサ24、および、フェイス吹出口42およびフット吹出口43から吹き出る空気の温度を検出する不図示の温度センサ、不図示の湿度センサ等がある。また、エアコンECU40は、身体部位30〜39の各々における現在のSET*を算出するために、種々のアクチュエータの作動内容の情報を用いてもよい。種々のアクチュエータとしては、ファンアクチュエータ131a、エアミックスアクチュエータ16a、吹出モードアクチュエータ17a、内外気モードアクチュエータ12a、風向アクチュエータ110a等がある。また、SET*の算出において、乗員3の身体部位毎の着衣量および代謝量は、あらかじめ固定的に定められていてもよいし、乗員3によって設定されてもよい。
続いてエアコンECU40は、ステップS140で、ステップS120で算出した身体部位30〜39の目標SET*と、ステップS130で算出した身体部位30〜39のSET*との差を算出する。算出される差は、同じ身体部位について目標SET*からSET*を減算することで行われる。この結果、身体部位30〜39の各々について、目標SET*とSET*との差が算出される。
続いてエアコンECU40は、ステップS150で、ステップS140で算出された差のうち、絶対値が最大になるものを、1つ選択する。
続いてエアコンECU40は、ステップS160で、ステップS150で選択された差の絶対値が許容範囲内であるか否かを判定する。許容範囲は、当該差の絶対値を敢えて低減するまでもないとみなす範囲である。したがって、許容範囲は、ゼロ以上かつ基準値以下の範囲である。エアコンECU40は、当該範囲が許容範囲内であると判定した場合、ステップS110に戻る。
ステップS160に続いてステップS110を実行する場合、エアコンECU40は、乗員3が前回のステップS110以降に状態設定部21を操作していれば、スイッチ211、212、213、214のうち操作されたスイッチに対応するモードを選択する。操作していなければ、前回のステップS110で選択したのと同じモードを選択する。
エアコンECU40は、ステップS160で、当該範囲が許容範囲内でないと判定した場合、ステップS170に進む。ステップS170では、エアコンECU40は、ステップS150で選択した差の絶対値に対応する身体部位、すなわち、目標SET*とSET*の差の絶対値が最大となる身体部位を、対象の身体部位として選ぶ。そして、対象の身体部位に対して、個別に、温熱刺激を与える。対象の身体部位に対して個別に温熱刺激を与えるとは、身体部位30〜39のうち他の身体部位よりも、対象の身体部位のSET*が大きく変化するよう、主に対象の身体部位に温熱刺激を与えることをいう。
例えば、対象の身体部位が頭部30、首31、胸部32、左右上腕部33、左右前腕部34、左右手35のうちいずれかであったとする。その場合、エアコンECU40は、吹出モードアクチュエータ17aを制御して吹出口モードをフェイスモードにする。更にエアコンECU40は、フェイス吹出口42から吹き出される空気が対象の身体部位に主に当たるよう、風向アクチュエータ110aを制御して風向調整板110の姿勢を変化させる。
更にエアコンECU40は、フェイス吹出口42から対象の身体部位に吹き出される空気の温度を調整することで、対象の身体部位に主に温熱刺激を与える。例えば、対象の身体部位における目標SET*とSET*の差が正の値であれば、SET*を増大させるよう、内気温センサ23によって検出された車室内の温度よりも高い温度に、目標吹出温度TAOを設定する。また、対象の身体部位における目標SET*とSET*の差が負の値であれば、SET*を減少させるよう、内気温センサ23によって検出された車室内の温度よりも高い温度に、目標吹出温度TAOを設定する。
頭部30、首31、胸部32、左右上腕部33、左右前腕部34、左右手35の各々が対象の身体部位であったときに風向調整板110の姿勢をどのようにするかを示す姿勢データは、あらかじめ、エアコンECU40に記録されている。具体的には、エアコンECU40のROMまたはフラッシュメモリ等の記憶部402に記録されている。エアコンECU40は、その姿勢データを用いて、風向調整板110の姿勢を決定する。なお、姿勢データの値は、乗員3の設定操作によって修正されてもよい。また、姿勢データの値は、サーモカメラ9に写された上記身体部位30〜35の位置に基づいて修正されてもよい。
なお、エアコンECU40は、目標吹出温度TAOに応じて、周知の方法で、遠心ファン131の送風量、エアミックス比率、内外気比率を決定する。そして、決定した量を実現するよう、ファンアクチュエータ131a、エアミックスアクチュエータ16a、内外気モードアクチュエータ12aを制御する。目標吹出温度TAOが高いほど、より暖かいと乗員が感じる温熱感が与えられるよう送風空気の状態が調整される。また、目標吹出温度TAOが低いほど、より涼しいと乗員が感じる温熱感が与えられるよう送風空気の状態が調整される。
また例えば、対象の身体部位が腰部36、左右大腿部37、左右下腿部38のいずれかであった場合は、エアコンECU40は、対象の身体部位に対応するヒータの出力を調整することで、対象の身体部位に主に温熱刺激を与える。
具体的には、対象の身体部位における目標SET*とSET*の差が正の値であれば、SET*を増大させるよう、対応するヒータの出力を増大させる。また、対象の身体部位における目標SET*とSET*の差が負の値であれば、SET*を減少させるよう、対応するヒータの出力を減少させる。なお、腰部36、左右大腿部37、左右下腿部38に対応するヒータは、それぞれ、腰部ヒータ6、大腿部ヒータ7、下腿部ヒータ8である。
なおこのとき、エアコンECU40は、ファンアクチュエータ131aを制御して遠心ファン131を停止させることで、デフロスタ吹出口41、フェイス吹出口42、フット吹出口43から乗員3に空気が流れないようにしてもよい。
また例えば、対象の部位が左右足先39であった場合は、エアコンECU40は、吹出モードアクチュエータ17aを制御して吹出口モードをフットモードにする。更にエアコンECU40は、フット吹出口43から左右足先39に吹き出される空気の温度を調整することで、左右足先39に主に温熱刺激を与える。温熱刺激を与えるときの目標吹出温度TAOの設定は、頭部30、首31、胸部32、左右上腕部33、左右前腕部34、左右手35の各々が対象の身体部位であったときと、同等である。
ステップS170の後、エアコンECU40は、ステップS110に戻る。ステップS170に続いてステップS110を実行する場合、エアコンECU40は、乗員3が前回のステップS110以降に状態設定部21を操作していれば、スイッチ211、212、213、214のうち操作されたスイッチに対応するモードを選択する。操作していなければ、前回のステップS110で選択したのと同じモードを選択する。
エアコンECU40は、このような処理により、各時点において目標SET*とSET*の差の絶対値が最も大きい身体部位に個別に温熱刺激を与えることで、当該差の絶対値を低減させる。これが繰り返されることで、目標SET*とSET*の差の絶対値が最も大きい身体部位が、時々刻々と変化していく。したがって、身体部位30〜39の各々において、個別に、目標SET*とSET*の差の絶対値が低減されていく。その結果、どの身体部位についても、目標SET*とSET*の差の絶対値が許容範囲内に治まるようになる。つまり、SET*の身体部位別の分布と目標SET*の身体部位別の分布の類似度が高くなっていく。その結果、ステップS110で決定されたモードに対応する精神状態または身体状態に、乗員3が誘導されていく。
このとき、ステップS110で決定されたモードが異なる場合、目標温熱感分布が異なるので、ステップS170の温熱刺激によって実現される身体部位30〜39のSET*の分布も異なる。
特に、頭部30の温熱感の目標値は、4つのモードのどの2つを取っても互いに異なっている。したがって、同じ車内環境において、ステップS110で選択されたモードが異なれば、頭部30に与えられる温熱刺激が異なる。他の身体部位31〜39についても同様である。すなわち、ある身体部位について、或るモードと、別のモードとで、温熱感の目標値が異なっていたとする。その場合、同じ車内環境において、ステップS110で選択されたモードが当該或るモードであったときと当該別のモードであったときとでは、頭部30に与えられる温熱刺激が異なる。
このように、エアコンECU40は、モード別に、乗員3の身体部位ごとの温熱感を検出し、モード毎にかつ身体部位毎に異なる目標温熱感をめざすように、空調ユニット5、腰部ヒータ6、大腿部ヒータ7、下腿部ヒータ8を制御することができる。
以上の通り、エアコンECU40は、リラックスモードM1、フォーカスモードM2、スリープモードB1、エナジーモードB2から1つのモードを選択する。そして、選択した1つのモードに対応する1つの目標温熱感分布に基づいて、空調ユニット5、腰部ヒータ6、大腿部ヒータ7、下腿部ヒータ8の作動を制御する。そして、エアコンECU40は、選択されるモードが異なれば、少なくとも1つの身体部位に対して異なる温熱刺激を与える。このようになっていることで、達成したい乗員3の精神の状態または身体の状態に応じて、乗員3の身体部位30〜39の温熱感の分布を調整することができる。
具体的には、エアコンECU40は、選択されるモードがどのように異なっても、少なくとも頭部30の身体部位に対して異なる温熱刺激を与える。乗員3の脳の状態は、精神活動に対しても身体活動に対しても強い相関を有する。したがって、選択されるモードが異なれば頭部30に対して異なる温熱刺激を与えるようになっていることで、達成したい乗員3の精神の状態または身体の状態に更に適した形態で、乗員3の身体の複数部位の温熱感の分布を調整することができる。
もちろん、頭部30以外の身体部位のいずれに対しても、選択されるモードが異なれば、少なくとも当該頭部30の身体部位に対して異なる温熱刺激を与える場合がある。
また、エアコンECU40は、或る1つの身体部位を対象とする温熱感の現在の値に基づいて、当該1つの身体部位を対象とする温熱感の値が、当該1つの身体部位を対象とする温熱感の目標値に近づくよう、当該1つの身体部位に温熱刺激を与える。このように、温熱感の現在の値に基づいて、温熱感の値が目標値に近付くようにすることで、より効果的に、達成したい乗員の精神の状態または身体の状態へ乗員3を誘導することができる。
なお、エアコンECU40は、ステップS110を実行することで選択部に対応し、ステップS170を実行することで刺激制御部に対応する。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、図11に示すように、第1実施形態の構成に対して、表示装置60、タッチパネル61が追加されている。
表示装置60は、車両の乗員に画像を見せる装置である。表示装置60は、車両のインストルメントパネルまたはダッシュボードに取り付けられていてもよいし、ステアリングハンドルに取り付けられていてもよい。あるいは、表示装置60は、車両のウインドシールドにおける光の反射を利用してウインドシールドの前方に虚像としての画像があるように乗員に見せるヘッドアップディスプレイであってもよい。
あるいは、表示装置60は、車両の乗員が携帯する端末であってもよい。その場合、エアコンECU40は、表示装置60と無線通信することにより、表示装置60の表示内容を制御する。
タッチパネル61は、表示装置60が表示する画像の内容に応じて乗員が操作する操作装置である。タッチパネル61の所定の部分が乗員によって操作されることで、表示装置60によって表示される画像が連動して変化する。タッチパネル61は、表示装置60の表示画面に重ねて配置されている。
また、本実施形態のエアコンECU40は、第1実施形態で示した図4の処理において、ステップS120の処理内容が変更されている。エアコンECU40は、ステップS110に続くステップ120で、乗員3の複数の身体部位の各々に対する目標SET*を、ステップS110で決定したモードに基づいて決定する。この点は、第1実施形態と同様であるが、ステップS120の詳細が異なる。
具体的には、エアコンECU40は、ステップS120において、図12に示す処理を行う。図12の処理においてエアコンECU40は、まずステップS122で、ステップS110で決定したモードに応じて、乗員3の複数の身体部位の各々に対する温熱感の目標値を、ステップS110で決定したモードに基づいて決定する。本実施形態では、対象となる乗員3の複数の身体部位は、図1に示した頭部30、首31、胸部32、左右上腕部33、左右前腕部34、左右手35、腰部36、左右大腿部37、左右下腿部38、左右足先39に加え、背部、臀部、大腿裏部も含んでいる。つまり、対象となる乗員3の身体部位の数は13である。
具体的には、エアコンECU40は、まず、ステップS110で決定したモードに応じて、図13、図14、図15、図16に示すように、温熱感の目標値の分布である目標温熱感分布を設定する。各モードの目標温熱感分布は、エアコンECU40の記憶部402に、標準温熱感分布として、あらかじめ記憶されている。エアコンECU40は、当該記憶部402から、決定したモードに応じた目標温熱感分布を読み出すことで、当該目標温熱感分布を設定する。
図13−図16における菱形印は、それぞれ、ステップS122で決定するリラックスモードM1、フォーカスモードM2、スリープモードB1、エナジーモードB2の目標温熱感分布(すなわち、デフォルト値)である。図13−図16表示の形式は、図6−図9と同じである。各モードM1、M2、B1、B2における頭部30、首31、胸部32、左右上腕部33、左右前腕部34、左右手35、腰部36、左右大腿部37、左右下腿部38、左右足先39の温熱感の目標値は、第1実施形態と同じである。背部、臀部、大腿裏部は、他の身体部位31〜39とは異なり、運転席2との接触面に位置する身体部位である。
続いてステップS124では、エアコンECU40は、季節判定を行う。すなわち、現在の季節が、夏であるか、冬であるか、あるいは夏でも冬でもない中間期であるかを、判定する。
季節判定は、例えば、不図示の入力装置を用いて乗員3が入力した季節に基づいて行ってもよい。あるいは、エアコンECU40は、各日付が夏に属するか冬に属するか中間期に属するかを規定するカレンダデータを記憶部402から読み出し、読み出したカレンダデータに現在の日付を適用することで、現在の季節を判定してもよい。あるいは、エアコンECU40は、外気温センサ22からの情報に基づいて、例えば記憶部402に記憶されている外気温と季節との対応マップを利用して、現在の季節を判定してもよい。
続いてエアコンECU40はステップS126で、ステップS124にて判定した季節に応じて、必要であれば、ステップS122で決定した各身体部位の温熱感の目標値を補正する。具体的には、ステップS124にて判定した季節が中間期であれば、補正を行わない。
また、ステップS124にて判定した季節が夏季であれば、図13−図16のうちステップS110で決定したモードに対応する図の三角印のような変更を、同じ図における菱形印のデフォルト値に対して行った結果の目標温熱感分布を設定する。
例えば、ステップS110でリラックスモードに決定されている場合は、図13に示すように、菱形印のデフォルト値に対して背部、臀部、大腿裏部の温熱感の目標値が、「暖かい」から2レベル涼しい「中立」に補正される。このとき、背部、臀部、大腿裏部以外の身体部位の温熱感の目標値は、補正されずに維持される。
また例えば、ステップS110でスリープモードに決定されている場合は、図15に示すように、菱形印のデフォルト値に対して背部、臀部、大腿裏部の温熱感の目標値が、「暖かい」から1レベル涼しい「やや暖かい」に補正される。
これらのようにするのは、中間期に対して夏季は着座時に運転席2に押圧される接触部において発汗しやすいからである。発汗により温熱快適が大きく損なわれてしまわないよう、背部、臀部、大腿裏部の温熱感の目標値を、中間期に対して涼しめに設定される。
発汗は、蒸れを起こすので、人の快適感に大きく影響するため、前述の接触部においてはリラックス、集中、仮眠を狙いとした快適感が密接な関係にあるモード設定においては発汗をさせない温熱感を上限とし、エナジーのように活性化を狙いとする場合には、活性化を優先、発汗許容し最低限の快適感の確保可能な、より暖かめの上限とする。
なお、ステップS110でフォーカスモード、エナジーモードに設定されている場合は、図14、図16に示すように、ステップS124にて判定した季節が夏季であっても背部、臀部、大腿裏部の温熱感の目標値が補正されなくてもよい。あるいは、それらの温熱感の目標値がリラックスモード、スリープモードと同様に補正されてもよい。
また例えば、ステップS124にて判定した季節が夏季であり、ステップS110でフォーカスモードに決定されている場合は、図14のように、頭部の温熱感の目標値が、菱形印のデフォルト値から補正される。すなわち、デフォルト値の「涼しい」から1レベル涼しい「やや寒い」に補正される。このとき、頭部以外の身体部位の温熱感の目標値は、補正されずに維持される。このようにするのは、運転中において、窓越しの日射による輻射熱を頭部が受けることが、火照り等により乗員3の快適感に大きく影響を及ぼすからである。このように、日射による快適感への影響を補償するよう、頭部の温熱感の目標値を変えることができる。
また例えば、ステップS124にて判定した季節が夏季であり、ステップS110でスリープモードに決定されている場合は、図15のように、菱形印のデフォルト値に対して、複数の身体部位31−39の温熱感の目標値が、1レベル涼しい値に補正される。このとき、頭部30の身体部位の温熱感の目標値は、補正されずに維持される。このようにするのは、スリープモードにおいては、乗員3は運転席2のシートバックを大きく倒して仰向けの姿勢を取っている可能性が高いからである。そのような姿勢では、運転姿勢に比べて、頭部が日射を受けにくい。その分、窓越しの日射による輻射熱を頭部以外の身体部位が受けることが、乗員3の快適感に大きく影響を及ぼすようになる。このように、日射による快適感への影響を補償するよう、頭部の温熱感の目標値を変えることができる。
また例えば、ステップS124にて判定した季節が夏季であっても、ステップS110でエナジーモードに決定されている場合は、どの身体部位の温熱感の目標値も、
補正されずに維持される。
このようにするのは、過度な発汗による人の汗冷えを阻止するためである。夏季のエナジーモードでは、乗員3の身体が活性化されて汗が出やすい。そのようなときに、さらなる暖かい側への補正は許容を超える発汗をさせ、汗冷えが発生すると、乗員の快適感が損なわれる可能性がある。
また、ステップS124にて判定した季節が冬季であれば、図13−図16のうちステップS110で決定したモードに対応する図の丸印のような変更を、同じ図における菱形印のデフォルト値に対して行った結果の目標温熱感分布を設定する。
例えば、ステップS110でリラックスモードまたはフォーカスモードに決定されている場合は、図13、14に示すように、菱形印のデフォルト値に対して、人体末梢部である左右手35および左右足先39の温熱感の目標値が、1レベル暖かい値に補正される。
このように、人体抹消部の温熱感の目標値を温かめに補正するのは、冬季には、体幹の体温維持のため抹消の血流が絞られるため、抹消部が冷えるからである。抹消部周辺を中心に温めることで抹消部の冷えによる不快を改善できる。このようにすることで、温熱快適を確保しながらも目的に適した温熱分布を作ることができる。
なお、ステップS110でスリープモードに設定されている場合は、図15、図16に示すように、ステップS124にて判定した季節が冬季であっても左右手35、左右足先39の温熱感の目標値が補正されなくてもよい。あるいは、それらの温熱感の目標値がリラックスモード、フォーカスモードと同様に補正されてもよい。
また、冬季の場合には発汗しにくくなっているので、ステップS110でエナジーモードに設定されている場合は、デフォルトで「暖かい」よりも涼しめに設定されている身体部位の温熱感の目標値が、デフォルトに対して1レベル暖かめの値に補正される。デフォルトで「暖かい」よりも涼しめに設定されている身体部位は、温熱感過剰とならない接触部(すなわち、背部、臀部、および大腿裏部)を除いた部位である。
このような、夏季、冬期においてデフォルト値に対して温熱感の目標値をどのように補正するかの情報は、モード毎かつ身体部位毎に、あらかじめ記憶部402に季節対応テーブルとして記録されている。エアコンECU40は、この季節対応テーブルを記憶部402から読み出して、季節判定で判定された季節に応じた目標温熱感分布の補正に利用する。
ステップS126に続くステップS128でエアコンECU40は、連動データに応じて目標温熱感分布を補正する。連動データは、複数の身体部位の各々における温熱感の目標値の補正量を示すデータであり、後述する図17の処理において乗員3の修正操作に基づいて設定されてエアコンECU40の記憶部402に記録されている。図17の処理で設定される前の連動データの初期値は、すべての身体部位でゼロであってもよいし、それ以外であってもよい。連動データは、各モードの目標温熱感分布の変更後の値が特定可能なデータである。
例えば、連動データにおいて、頭部30の温熱感の目標値を1段階涼しめに補正し、他の身体部位の温熱感の目標値を維持することが示されていたとする。その場合、エアコンECU40は、ステップS122で決定されてステップS126において必要に応じて補正された目標温熱感分布に対して、頭部30の温熱感の目標値を1段階涼しめに補正し、他の身体部位の温熱感の目標値を補正しない。
続いてエアコンECU40はステップS129に進む。そして、ステップS122で決定され、S126、S128で必要に応じて補正された目標温熱感分布に含まれる複数の身体部位の温熱感の目標値から、図10に示した対応テーブルを用いて、複数の身体部位のSET*を特定する。そして、特定したSET*を目標SET*とする。つまり、13個の温熱感の目標値から、それぞれに対応する13個の目標SET*を特定する。ここでエアコンECU40が使用するこの対応テーブルは、エアコンECU40の記憶部402にあらかじめ記憶されている。ステップS129の後、図12の処理は終了し、エアコンECU40はステップS130に進む。
またエアコンECU40は、図4の処理に加えて、マルチタスク処理によって図4の処理と同時並行的に、図17に示す処理を実行する。図17の処理においてエアコンECU40は、まずステップS205で、目標温熱感分布、現在温熱感分布等を表示装置60の表示画面に表示させる。
具体的には、エアコンECU40は、図18に示すように、表示装置60の表示画面に、モード表示画像501、人体画像502、一括マイナスボタン503a、一括プラスボタン503b、一括スライドバー503c、および一括スライダー503dを表示させる。
またエアコンECU40は、図18に示すように、当該表示画面に、身体部位ウィジェットを複数個表示させる。各身体部位ウィジェットは、部位別マイナスボタン504a、部位別プラスボタン504b、部位別スライドバー504c、部位別スライダー504d、現状インジケータ504eを1個ずつ含む。
モード表示画像501は、4つのモードのうち図4の処理において現在選択されているモードを示す画像である。図18の例では、リラックスモードが選択されていることが、当該モードの名称が反転表示されることで示されている。
人体画像502は、複数の身体部位ウィジェットの各々が乗員3のどの身体部位に対応するかを示すための画像である。この目的のために、人体画像502は、人体を模した形状を有している。
一括マイナスボタン503aおよび一括プラスボタン503bは、乗員3がタッチパネル61を用いて選択操作可能な画像である。一括スライドバー503cは、一括マイナスボタン503aから一括プラスボタン503bの方向に伸びた棒形状の画像である。
一括スライダー503dは、一括スライドバー503cに重ねて配置される画像である。一括スライダー503dは、一括マイナスボタン503a、一括プラスボタン503bに対する乗員3の操作に従って、一括スライドバー503cの伸びる方向に沿って移動可能である。
部位別マイナスボタン504aおよび部位別プラスボタン504bは、乗員3がタッチパネル61を用いて選択操作可能な画像である。部位別スライドバー504cは、同じ身体部位ウィジェットに属する部位別マイナスボタン504aから部位別プラスボタン504bの方向に伸びた棒形状の画像である。
部位別スライダー504dは、同じ身体部位ウィジェットに属する部位別スライドバー504cに重ねて配置される画像である。部位別スライダー504dは、同じ身体部位ウィジェットに属する部位別マイナスボタン504a、部位別プラスボタン504bに対する乗員3の操作に従って、部位別スライドバー504cの伸びる方向に沿って移動可能である。
現状インジケータ504eは、同じ身体部位ウィジェットに属する部位別スライドバー504cに重ねて配置され、ステップS130で算出された現在SET*に応じて当該部位別スライドバー504cの伸びる方向に沿った位置が変化可能な画像である。
複数個の身体部位ウィジェットは、人体画像502の横において、人体画像502の上下方向に並んで配置されている。このような配置により、複数個の身体部位ウィジェットと、その身体部位ウィジェットが対象としている身体部位との対応関係が示されている。
図18の表示画面の例では、本実施形態において目標温熱感の目標値が設定されている13個の身体部位のうち代表的な6個の身体部位を対象とする6個の身体部位ウィジェットが表されている。例えば、最上段から最下段までの身体部位ウィジェットが、それぞれ、頭部、胸部、左右手、腰、左右大腿、左右足先を対象としてもよい。なお、表示画面は、13個の身体部位をそれぞれ対象とする13個の身体部位ウィジェットを含んでいてもよい。
エアコンECU40は、ステップS205においては、一括スライダー503d、各部位別スライダー504d、および各現状インジケータ504eの表示位置を、以下のように制御する。
エアコンECU40は、一括スライダー503dについては、記憶部402に記録されている一括補正データに基づいて、一括スライドバー503c上の位置を決定する。一括補正データは、温熱感に関する補正値(例えば、1段階暖かめという値)を1つ有するデータである。具体的には、エアコンECU40は、一括補正データに含まれる温熱感の補正値が大きいほど一括スライダー503dが一括プラスボタン503bにより近くなるよう、一括スライダー503dの位置を決定する。例えば、補正値がゼロである場合は、一括マイナスボタン503aと一括プラスボタン503bから等距離の位置に一括スライダー503dの位置を決定してもよい。後述するとおり、一括補正データは、図17のステップS230で必要に応じて更新される。
また、エアコンECU40は、複数の部位別スライダー504dの、同じ身体部位ウィジェットに属する部位別スライドバー504cの伸びる方向に沿った位置を、以下のようにして決定する。
まずエアコンECU40は、図12のステップS122、S124、S126、S128と同じ処理で、各身体部位の温熱感の目標値を決定し、更に必要に応じて補正する。そして、その結果得られた各身体部位の温熱感の目標値に応じて、対応する部位別スライダー504dの位置を決定する。このとき、温熱感の目標値が高いほど、同じ身体部位を対象とする部位別プラスボタン504bにより近くなるよう、当該部位別スライダー504dの位置が決定される。以上のようにして、複数の部位別スライダー504dの、同じ身体部位ウィジェットに属する部位別スライドバー504cの伸びる方向に沿った位置が決定される。
また、エアコンECU40は、図4のステップS130で算出された最新の現在SET*に基づいて、同じ身体部位ウィジェットに属する部位別スライドバー504cの伸びる方向に沿った現状インジケータ504eの位置を決定する。
具体的には、各身体部位を対象とする部位別スライダー504dについて、当該身体部位の最新の現在SET*から、図10に示した対応テーブルを用いて、現在の温熱感の値を特定する。そして、特定した温熱感の値が高いほど、当該身体部位を対象とする部位別プラスボタン504bにより近くなるよう、当該現状インジケータ504eの位置を決定する。
ステップS205に続くステップS215では、エアコンECU40は、タッチパネル61に対する温熱感の目標値の変更操作が所定期間内に行われたか否かを判定する。所定期間は、例えば、今回よりも1回前のステップS215の実行機会の後から現在までの期間である。なお、図17の処理が始まってから今回が初めてのステップS215の実行機会であれば、図17の処理が始まってから現在までの期間が所定期間となる。
温熱感の目標値の変更操作は、タッチパネル61を用いて一括マイナスボタン503a、一括プラスボタン503b、複数個の部位別マイナスボタン504a、複数個の部位別プラスボタン504bのいずれか1つを選択する操作である。
タッチパネル61に対する温熱感の目標値の変更操作が所定期間内に行われなかった場合は、続いてステップS205に戻る。タッチパネル61に対する温熱感の目標値の変更操作が所定期間内に行われた場合、続いてステップS218に進む。
ステップS218では、ステップS215で判定された変更層が、一括操作であるか否かを判定する。一括操作は、一括マイナスボタン503aおよび一括プラスボタン503bのどちらかを操作することである。一括操作でない操作は、部位別マイナスボタン504aおよび部位別プラスボタン504bのどちらかを操作する部位別操作である。一括操作でないと判定した場合、ステップS220に進み、一括操作であると判定した場合、ステップS225に進む。
ステップS220では、部位別操作の内容に従って図12の処理のステップS128で説明した連動データの値を変更して記憶部402に上書き記録して、ステップS205に戻る。これにより、後に実行される図12の処理のステップS128および図17の処理のステップS205で用いられる連動データの値が、変化する。
具体的には、部位別マイナスボタン504aが選択されたことに起因してステップS215で変更操作があったと判定された場合、連動データを更新する。すなわち、連動データ中の当該部位別マイナスボタン504aに対応する身体部位のみの温熱感の目標値の補正量を、涼しめの方向に1段階変化させて上書き記録する。
また、部位別プラスボタン504bが選択されたことに起因してステップS215で変更操作があったと判定された場合、連動データを更新する。すなわち、連動データ中の当該部位別プラスボタン504bに対応する身体部位のみの温熱感の目標値の補正量を、暖かめの方向に1段階変化させて上書き記録する。
このように変更された連動データは、上述の通り、後に実行される図12の処理のステップS128で使用される。また、このように変更された連動データは、上述の通り、後に実行される図17の処理のステップS205で使用される。
つまり、乗員3の操作に応じた温熱感の目標値に対する補正量は、記憶部402に学習値として更新可能に保存されると共に温熱感制御および表示に利用される。しかも、この連動データは、4つのモードのいずれにおいても共通に用いられる。
ステップS225では、一括操作の内容に従って、連動データの値を変更して記憶部402に上書き記録して、ステップS230に進む。これにより、後に実行される図12の処理のステップS128および図17の処理のステップS205で用いられる連動データの値が、変化する。
具体的には、一括マイナスボタン503aが選択されたことに起因してステップS215で変更操作があったと判定された場合、連動データ中のすべての身体部位の温熱感の目標値の補正量を、涼しめの方向に1段階変化させて上書き記録する。また、一括プラスボタン503bが選択されたことに起因してステップS215で変更操作があったと判定された場合、連動データ中のすべての身体部位の温熱感の目標値の補正量を、暖かめの方向に1段階変化させて上書き記録する。
なお、これら具体例において、エアコンECU40は、連動データ中の全部の身体部位ではなく、ステップS205で表示装置60の表示画面に表示された全部の身体部位のみの温熱感の目標値の補正量を、変化させて上書き記録してもよい。
このように変更された連動データは、上述の通り、後に実行される図12の処理のステップS128で使用される。また、このように変更された連動データは、上述の通り、後に実行される図17の処理のステップS205で使用される。
つまり、乗員3の操作に応じた温熱感の目標値に対する補正量は、記憶部402に学習値として更新可能に保存されると共に温熱感制御および表示に利用される。しかも、この連動データは、4つのモードのいずれにおいても共通に用いられる。
ステップS225に続くステップS230では、エアコンECU40は、一括操作の内容に従って、一括補正データの値を変更して記憶部402に上書き記録して、ステップS205に戻る。これにより、後に実行されるステップS205で用いられる一括補正データの値が、変化する。
具体的には、一括マイナスボタン503aが選択されたことに起因してステップS215で変更操作があったと判定された場合、一括補正データに含まれる補正値を涼しめの方向に1段階変化させて上書き記録する。また、一括プラスボタン503bが選択されたことに起因してステップS215で変更操作があったと判定された場合、一括補正データに含まれる補正値を暖かめの方向に1段階変化させて上書き記録する。
このように変更された一括補正データは、上述の通り、後に実行される図17の処理のステップS205で使用される。つまり、乗員3の操作に応じた温熱感の目標値に対する一括の補正量は、記憶部402に学習値として更新可能に保存されると共に温熱感の表示に利用される。しかも、この連動データは、4つのモードのいずれにおいても共通に用いられる。
ここで、特定の身体部位に対してのみ温熱感の目標値の補正量を変更する操作が行われた場合の例について説明する。例えば、連動データ中のすべての身体部位において温熱感の目標値の補正量がゼロであるときに、乗員3がタッチパネル61を用いて表示画面中で一番上の身体部位ウィジェットにおける部位別マイナスボタン504aを選択したとする。この部位別マイナスボタン504aは頭部30が対象であるとする。また、このときは、リラックスモードM1が選択されているとする。この例では、リラックスモードM1が、第1のモードに対応する。
この場合、エアコンECU40は、図17のステップS215で変更操作ありと判定して、ステップ218からステップS220に進み、連動データにおける頭部30のみの補正量を涼しめの方向に1段階変化させて記憶部402に上書き記録する。これにより、連動データにおける頭部30のみの補正量が更新される。
そして直後のステップS205において、そのように更新された頭部30のみの補正量に基づいて、表示装置60の表示画面において、図19に示すように、頭部30の身体部位ウィジェットに属する部位別スライダー504dを涼しめの方向に1段階移動させる。このようにして、乗員3による部位別の温熱感の目標値の補正量が表示に反映される。なお、図19において部位別スライダー504dから伸びる破線92は、更新前の目標値と更新後の目標値との違いを示すために仮想的に示したものであって、実際には表示装置60の表示画面には表示されない。
更にエアコンECU40は、図12のステップS128で、更新された連動データ中の頭部30の補正量に基づいて、頭部30の温熱感の目標値を補正し、更に図4のステップS130−S170で、更新された頭部30の補正量を反映した温熱刺激の制御を行う。このような作動は、頭部30以外の身体部位の補正量が更新された場合も、対象の身体部位が異なる以外は同様である。
また例えば、上記のように頭部30の温熱感の目標値の補正量が更新された後、乗員3が状態設定部21を操作した結果、エアコンECU40がステップS110で今までと異なるモードを選択したとする。これにより、例えば、選択されるモードがリラックスモードM1からスリープモードB1に変更されたとする。この例では、スリープモードB1が第2のモードに対応する。
その場合でも、連動データはすべてのモードに共通に適用される。したがって、エアコンECU40は、その後の図17のステップS205において、変更後のスリープモードB1においても、図20に示すように、頭部30の補正量が、1段階涼しめに設定された連動データに従って表示される。すなわち、スリープモードB1の標準温熱感分布に対して、頭部30のみの温熱感の目標値が1段階涼し目に補正された目標温熱感分布を示すよう、部位別スライダー504dが表示される。なお、図20において部位別スライダー504dから伸びる破線91は、標準温熱感分布における目標値と補正後の目標値との違いを示すために仮想的に示したものであって、実際には表示装置60の表示画面には表示されない。
次に、複数の身体部位に対して温熱感の目標値の補正量を一括で変更する操作が行われた場合の例について説明する。例えば、連動データ中のすべての身体部位において温熱感の目標値の補正量がゼロであるときに、乗員3がタッチパネル61を用いて表示画面中で一括マイナスボタン503aを選択したとする。このときは、リラックスモードM1が選択されているとする。この例では、リラックスモードM1が、第1のモードに対応する。
この場合、エアコンECU40は、図17のステップS215で変更操作ありと判定してステップS218からステップS225に進む。そして、連動データにおけるすべての身体部位の補正量を、または、表示画面に表示されているすべての身体部位のみの補正量を、涼しめの方向に1段階変化させて記憶部402に上書き記録する。これにより、連動データにおける各身体部位の補正量が更新される。そしてエアコンECU40はステップS230で、一括補正データ中の補正値の値を現在よりも1段階涼しめに変更して記憶部402に上書き記録する。
そして直後のステップS205において、そのように更新された各身体部位の補正量に基づいて、表示画面において、図21に示すように、表示されているすべての身体部位ウィジェットに属する部位別スライダー504dを涼しめの方向に1段階移動させる。それと共に、一括補正データに基づいて、一括スライダー503dの位置を、それまでのよりも涼しめの方向に1段階移動させる。このとき、図17の処理の開始時における一括スライダー503dの位置を図21に示すように、固定的に示すデフォルト位置インジケータ503eを、表示画面に表示してもよい。
このようにして、乗員3による複数部位に亘る一括の温熱感の目標値の補正量が表示に反映される。なお、図21における破線90は、更新前の目標値と更新後の目標値との違いを示すために仮想的に示したものであって、実際には表示装置60の表示画面には表示されない。
更にエアコンECU40は、図12のステップS128で、更新された連動データに基づいて、各身体部位の温熱感の目標値を補正し、更に図4のステップS130−S170で、更新された各身体部位の補正量を反映した温熱刺激の制御を行う。
また例えば、上記のように一括スライダー503dの操作に応じて各身体部位の目標値の補正量が更新された後、乗員3が状態設定部21を操作した結果、エアコンECU40がステップS110で今までと異なるモードを選択したとする。これにより、例えば、選択されるモードがリラックスモードM1からスリープモードB1に変更されたとする。この例では、スリープモードB1が第2のモードに対応する。
その場合でも、連動データはすべてのモードに共通に適用される。したがって、エアコンECU40は、その後の図17のステップS205において、変更後のスリープモードB1においても、図22に示すように、各身体部位の補正量が、1段階涼しめに設定された連動データに従って表示される。すなわち、スリープモードB1の標準温熱感分布に対して、各身体部位の温熱感の目標値が1段階涼し目に補正された目標温熱感分布を示すよう、部位別スライダー504dが表示される。なお、図22における破線90は、標準温熱感分布における目標値と補正後の目標値との違いを示すために仮想的に示したものであって、表示装置60の表示画面には表示されない。
本願発明者は、温熱感調整装置において、各乗員の温熱感の好みに応じて温熱感刺激を細かく制御する目的で、乗員による変更操作を後の目標温熱感分布調整に引き継いで反映させる、いわゆる学習技術について検討した。
第1実施形態の温熱感制御装置において、従来の学習技術を単純に適用した場合、ある目的(例えば、精神を落ち着かせたい)のときに特定の身体部位(例えば、頭部)の温熱感の目標値を学習させることになる。しかし、別の目的(例えば、身体を活性化させたい)における当該身体部位の温熱感の目標値にその学習が反映されることはない。本願発明者の検討によれば、乗員がある目的である身体部位への温熱刺激を変更した場合、別の目的でも当該身体部位への温熱刺激を同様に変更することを好む傾向がある。したがって、従来の学習技術を単純に適用しただけでは目標温熱感分布の変更を効率よく学習できない。
そこで、乗員の温熱感の好みを各々の温熱感分布に効率よく反映させるために、本実施形態では、連動データが導入されている。
具体的には、記憶部は、第1のモードが選択されているときに、第1のモードの目標温熱感分布に対して変更操作があった場合、当該変更操作に応じた連動データを記憶部が記憶する。そして、変更部が、第1のモードが選択されているときに連動データに基づいて第1のモードの目標温熱感分布を変更する。それと共に変更部は、第2のモードが選択されているときに、連動データに基づいて、第1のモードの目標温熱感分布に対する変更操作に連動して、第2のモードの目標温熱感分布を変更する。このようにすることで、目標温熱感分布の乗員による変更を効率よく学習することができる。
また、乗員3の変更操作として特定の1つの身体部位を選んだ変更操作が行われた場合、エアコンECU40は、当該1つの身体部位の温熱感の目標値を変更操作に基づいて変更する。特定の1つの身体部位を選んだ変更操作は、部位別マイナスボタン504a、部位別プラスボタン504bに対する操作に対応する。このようにすることで、身体部位別のきめ細かい学習が可能となる。
また、乗員3の変更操作として特定の身体部位を選ばない変更操作が行われた場合、エアコンECU40は、2つ以上の身体部位の温熱感の目標値を変更操作に基づいて変更する。特定の身体部位を選ばない変更操作は、一括マイナスボタン503a、一括プラスボタン503bに対する操作に対応する。このようにすることで、身体部位別の細かい調整と比べると、煩わしさが少なく簡易な調整が実現する。
また、エアコンECU40は、選択したモードの目標温熱感分布に対して、判定した季節に応じた変更を加える。このようにすることで、季節の変動に応じた適切な温熱感刺激の調整を行ことが可能となる。
なお、本実施形態においては、エアコンECU40が図12のステップS128を実行することで変更部として機能し、ステップS124を実行することで季節判定部として機能し、ステップS126を実行することで季節対応部として機能する。
また、本実施形態においては、シートバックの上下方向中央部かつ左右方向中央部に設けられて背部をあるときには加熱し別のときには冷却するペルチェ素子が、背部に温熱刺激を与える装置であってもよい。また、シートクッションの前後方向中央よりも後側に設けられて臀部をあるときには加熱し別のときには冷却するペルチェ素子が、臀部に温熱刺激を与える装置であっても。また、シートクッションの前後方向中央よりも前側に設けられて大腿裏部をあるときには加熱し別のときには冷却するペルチェ素子が、大腿裏部に温熱刺激を与える装置であってもよい。
(第3実施形態)
次に第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対して、エアコンECU40が図17の処理に変えて図23に示す処理を実行する。その他は、第2実施形態と同じである。
図17の処理と図23の処理において、同じ処理内容のステップには同じステップ番号が付されている。図23の処理は、図17の処理において、ステップS210が追加されている。以下、第2実施形態との違いを中心に説明し、第2実施形態と同等の部分について説明を省略する。
エアコンECU40は、図23の処理において、ステップS205に続いてステップ210を実行し、ステップS210に続いてステップS215を実行する。ステップS210では、エアコンECU40は、各身体部位ウィジェットが対象とする身体部位について、目標到達所要時間を算出する。目標到達所要時間は、対象とする身体部位の現実の温熱感が当該温熱感の目標値に到達するまでの時間の、予測値である。目標到達所要時間は、あらかじめ記憶部402に記憶された所定の算出式に基づいて算出される。
当該算出式においては、各目標到達所要時間は、対象とする身体部位の温熱感の現在値と目標値の差が大きくなるほど大きくなるよう、規定されている。また、当該算出式において、各目標到達所要時間は、対象とする身体部位の温熱感の現在値と目標値の差がゼロであればゼロになるよう、規定されている。また、当該算出式においては、各目標到達所要時間は、温熱刺激部のうち対象とする部位に温熱刺激を加える装置の出力値(例えば消費電力)が大きいほど小さくなるよう、規定されている。
更にエアコンECU40は同じステップS210で、算出した各目標到達所要時間に応じた情報を、表示装置60の表示画面に表示させる。具体的には、図24に示すように、ある身体部位を対象とする目標到達所要時間に応じた情報は、当該身体部位を対象とする身体部位ウィジェットの近傍に表示させる。
この際、エアコンECU40は、目標到達所要時間と所定の閾値との比較に基づいて、前者が後者よりも小さい場合と、前者が後者よりも大きい場合とで、目標到達所要時間に応じた情報の種別を切り替える。
ここで、所定の閾値は、あらかじめ固定的に定められた時間(例えば1時間)であってもよい。あるいは、所定の閾値は、車両1が目的地に到達するまでの目的地到達所用時間であってもよい。この目的地到達所要時間は、不図示のナビゲーション装置から取得してもよい。この場合、ナビゲーション装置は、目的地が入力されると、車両1の出発地点から目的地までの予定経路を算出し、当該予定経路に沿った車両1の進行を誘導する。車両1の進行中、ナビゲーション装置は、車両1の現在位置から目的地までの予定経路中の各区間における走行距離と各区間における車速の予測値に基づいて、目的地到達所用時間を算出する。そしてナビゲーション装置は、算出した目的地到達所要時間をエアコンECU40に出力する。
エアコンECU40は、目標到達所要時間が所定の閾値よりも小さい場合、目標到達所要時間を示す数字を表示装置60の表示画面に表示させる。これにより、乗員3は、温熱感の目標値と現在値が乖離しているが温熱感調整装置は作動していることを理解できるようになる。
また、エアコンECU40は、目標到達所要時間が所定の閾値よりも大きい場合、目標到達所要時間を示す数字ではなく、横線等の、目標の温熱感への到達が遅いことを示す画像を表示画面に表示させる。
また、エアコンECU40は、目標到達所要時間と所定の閾値とが同じ場合は、目標到達所要時間を示す数字を表示画面に表示させてもよいし、横線等の、目標の温熱感への到達が遅いことを示す画像を表示画面に表示させてもよい。
また、エアコンECU40は、目標到達所要時間がゼロより大きい値からゼロになった場合、目標到達所要時間に応じた情報を表示画面から消去してもよいし、目標到達所要時間であるゼロという数字を表示画面に表示させてもよい。前者においては、目標到達所要時間の表示形態が変化したことになる。また、エアコンECU40は、目標到達所要時間がゼロより大きい値からゼロになった場合、目標到達所要時間に応じた情報として、目標到達所要時間そのものを表示させることから、目標到達を示す所定の絵柄のアイコンを表示させてもよい。このようにすることで、目標値の通り温熱感が実現できていることが理解可能となる。
この目標到達所要時間に応じた情報の表示は、時間の経過と共に変化する。例えば、図24に示したような表示がされた状態において、その後、モードが変化しないまま時間が経過すると、図25に示すように、現状インジケータ504eが部位別スライダー504dに近付いていく。これにより、乗員3は、温熱感が目標値に近付いていくことを体感だけでなく表示画面からも視覚的に認識できるようになる。
また、エアコンECU40は、乗員3の温熱感の現在値および目標値を身体部位別に表示すると共に、現在値が目標値に到達した場合と到達する前で表示形態を変化させる。更にエアコンECU40は、現在値が目標値に到達するまでの時間を身体部位別に表示する。このようにすることで、目標温熱感分布が実現した身体部位と実現しない身体部位との区別を体感のみならず視覚的に確認することもできる。
なお、本実施形態においては、エアコンECU40が図12のステップS128を実行することで変更部として機能し、ステップS124を実行することで季節判定部として機能し、ステップS126を実行することで季節対応部として機能する。また、エアコンECU40が図23のステップS205、S210を実行することで表示制御部として機能する。
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記複数の実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、上記実施形態において、センサから車両1の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両1の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両1の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。また、本発明は、上記実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち明らかに矛盾する組み合わせを除く任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
また、本開示に記載のエアコンECU40及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のエアコンECU40及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のエアコンECU40及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
(変形例1)
上記各実施形態では、運転席2に着座した乗員3の身体部位30〜39の温熱感分布の現在値と目標値との差に基づいて、温熱刺激部による乗員3の身体部位30〜39への温熱刺激が調整されている。つまり、温熱感分布の調整対象は、運転席2に着座した乗員3である。
しかし、温熱感分布の調整対象は、助手席に着座した乗員であってもよいし、後部座席に着座した乗員であってもよい。また、温熱感分布の調整対象は、1人の乗員のみならず、異なる座席に着座する複数の乗員であってもよい。これらの場合、温熱刺激部および各種センサの配置、構成、作動は、調整対象の乗員の座席位置に応じたものに変更される。
(変形例2)
上記各実施形態では、頭部30、首31、胸部32、左右上腕部33、左右前腕部34、左右足先39に個別に温熱刺激を与える装置として、空調ユニット5が例示されている。そして、腰部36、左右大腿部37、左右下腿部38に個別に温熱刺激を与える装置として、それぞれ、腰部ヒータ6、大腿部ヒータ7、下腿部ヒータ8が例示されている。しかし、身体部位30〜39に個別に温熱刺激を与える装置は、これらのようなものに限らない。
例えば、腰部ヒータ6、大腿部ヒータ7、下腿部ヒータ8は、対象の身体部位を冷やすための機能を備えた送風機に置き換えられてもよい。また例えば、腰部ヒータ6、大腿部ヒータ7、下腿部ヒータ8は、対象の身体部位を加熱することも冷却することもできるペルチェ素子を含む装置に置き換えられてもよい。また、腰部36、左右大腿部37、左右下腿部38も、空調ユニット5によって個別に温熱刺激を与えられてもよい。
また、蒸気式冷凍サイクルを利用する空調ユニット5は、外気温が基準温度より高いとき、電気ヒータよりもエネルギー効率が高い。外気温が基準温度よりも低い場合は、この関係が逆になる。したがって、腰部36、左右大腿部37、左右下腿部38は、外気温が基準温度(例えば−2℃)よりも高い場合は、空調ユニット5によって個別に温熱刺激が与えられ、基準温度よりも低い場合は、電気ヒータによって個別に温熱刺激が与えられてもよい。
また、各実施形態においては、頭部30、首31、胸部32、左右上腕部33、左右前腕部34、左右手35、腰部36、左右大腿部37、左右下腿部38、左右足先39の10箇所に別個に温熱刺激を与える10個の装置が設けられていてもよい。
その場合、ヘッドレストに設けられて主に頭部30に向けて空気を吹き出す頭部用吹出口が、頭部30に温熱刺激を与える装置であってもよい。そして、シートバックの上端部に設けられて主に首31に向けて空気を吹き出す首部用吹出口が、首31に温熱刺激を与える装置となる。そして、ダッシュボード4に設けられて主に胸部32に向けて空気を吹き出す胸部用吹出口が、胸部32に温熱刺激を与える装置となる。そして、運転席2の左右のアームレストにおいて上方に開口するよう設けられて主に左右上腕部33に向けて空気を吹き出す左右上腕部用吹出口が、左右上腕部33に温熱刺激を与える装置となる。そして、ステアリングホイールに設けられて主に左右前腕部34に向けて空気を吹き出す左右前腕部用吹出口が、左右前腕部に温熱刺激を与える装置となる。そして、ステアリングホイールに設けられてステアリングホイールの把持部分をあるときには加熱し別のときには冷却するペルチェ素子が、左右手に温熱刺激を与える装置となる。そして、運転席2の左右のアームレストにおいて下方に開口するよう設けられて主に左右大腿部37に向けて空気を吹き出す左右大腿部用吹出口が、左右大腿部37に温熱刺激を与える装置となる。そして、ダッシュボード4のうち足元空間を囲む部分に設けられて左右下腿部38をあるときには加熱し別のときには冷却する加熱冷却装置が、左右下腿部38に温熱刺激を与える装置となる。この加熱冷却装置は、例えば、ペルチェ素子でもよいし、あるいは、輻射ヒータと冷風を吹き出す足元用吹出口との組み合わせであってもよい。そして、足元空間の床部分に設けられて左右足先39をあるときには加熱し別のときには冷却するペルチェ素子が、左右足先39に温熱刺激を与える装置となる。
また、これら頭部用吹出口、首部用吹出口、胸部用吹出口、左右上腕部用吹出口、左右前腕部用吹出口、左右大腿部用吹出口という5種類の吹出口から吹き出される空気は、それぞれ独立に温度調整可能となっていてもよい。このようにするたには、空調ケース11内部がこれら吹出口専用の5個の仕切られた空気通路を有し、それら空気通路の各々に冷風と暖風の風量の比率を独立に調整するエアミックスドアが設けられていればよい。
(変形例3)
各モードの目標温熱感分布における身体部位30〜39の目標値は、上記各実施形態のものに限られない。
(変形例4)
上記各実施形態では、エアコンECU40は、温熱感の現在値と目標値の差の絶対値が最も大きい身体部位に対して、個別の温熱刺激を与える。しかし、個別の温熱刺激を与える対象は、温熱感の現在値と目標値の差以外の要因に基づいて選ばれてもよい。例えば、あらかじめ定められた固定的な順番が複数の身体部位に割り当てられていて、エアコンECU40は、その順番に従って個別の温熱刺激を与えてもよい。
(変形例5)
上記各実施形態では、エアコンECU40は、目標SET*とSET*の差の絶対値が最大となる身体部位に対して優先的に温熱刺激を与える。しかし、各身体部位への温熱刺激の優先順位は、目標SET*とSET*の差の絶対値に加え、温熱刺激部の効果の差に基づいて決定されてもよい。
例えば、ある身体部位と別の身体部位で上記絶対値の差が所定値以下である場合、温熱刺激部の効果の差に基づいて、これら身体部位間の温熱刺激の優先順位が決められてもよい。例えば暖房において人体に接触または近接し効果的に温熱刺激のできるステアリングヒータやシートヒータによって温熱刺激が与えられる身体部位は、車両1の内装壁面に設置されたヒータによって温熱刺激が与えられる身体部位よりも優先されてもよい。そして、車両1の内装壁面に設置されたヒータによって温熱刺激が与えられる身体部位は、暖風吹き出す空調装置によって暖められる身体部位よりも優先されてもよい。
(変形例6)
上記各実施形態では、個別の温熱刺激の付与は、同時には1つの身体部位に対してしか行われていない。しかし、個別の温熱刺激は、同時に複数の身体部位に対して行われてもよい。
(変形例7)
上記各実施形態では、温熱感を表す指標としてSET*が用いられている。しかし、温熱感を表す指標として、SET*に替えて、温熱環境評価指数PMV(Predicted Mean Vote、予測温冷感申告)が用いられてもよい。
(変形例8)
上各記実施形態では、エアコンECU40は、ステップS110において、状態設定部21に対する乗員3の操作に基づいて、4つのモードから1つのモードを選択している。しかし、エアコンECU40は、乗員3の操作以外に基づいて、4つのモードから1つのモードを選択してもよい。例えばエアコンECU40は、サーモカメラ9から得られた画像から、画像認識技術によって乗員の行動を特定し、特定した行動に応じて4つのモードから1つのモードを選択してもよい。すなわち、エアコンECU40は、車載のセンサから取得した乗員の生体情報に基づいて4つのモードから1つのモードを選択してもよい。
例えば、乗員が運転操作を行っている場合は、フォーカスモードM2を選択してもよい。また例えば、乗員がステアリングハンドルから手を離して眠っている場合は、スリープモードB1を選択してもよい。
(変形例8)
上記各実施形態は、記憶部402には、リラックスモードM1、フォーカスモードM2、スリープモードB1、エナジーモードB2という4つのモードに対応して4つの標準温熱感分布が記録されている。そして、エアコンECU40は、ステップS110において、4つのモードから1つのモードを選択している。つまり、モードの選択肢はリラックスモードM1、フォーカスモードM2、スリープモードB1、エナジーモードB2の4つであった。
しかし、モードの選択肢の数は、2つであってもよいし、3つであってもよい。その場合、選択肢に入るモードは、温熱感調整装置の製造時または設計時に、リラックスモードM1、フォーカスモードM2、スリープモードB1、エナジーモードB2のうちから任意に決められていればよい。その場合、記憶部402に記憶されている標準温熱感分布は、リラックスモードM1、フォーカスモードM2、スリープモードB1、エナジーモードB2のうち、決められた2つまたは3つのモードに対応するもののみが記録される。
(変形例9)
上記実施形態において、図4の処理を行うのはエアコンECU40であった。しかし、エアコンECU40とは別に設けられた処理装置によって、図4の処理が実行されてもよい。その場合、当該処理装置が、ステップS110を実行することで選択部に対応し、ステップS170を実行することで刺激制御部に対応する。
(変形例10)
上記実施形態において、空調ユニット5は、通風路111が単一の通路となっているが、通風路111は仕切り板によって複数の小通風路に分割されていてもよい。例えば、通風路111は、内気をフット吹出口43に導く内気通路と、外気をデフロスタ吹出口41およびフェイス吹出口42に導く外気通路とに、仕切り板によって分割されていてもよい。
また、デフロスタ吹出口41、フェイス吹出口42、フット吹出口43のそれぞれが複数あり、一方は運転席側に配置され、他方は助手席側に配置されていてもよい。その場合、上記内気通路は、内気を運転席側のフット吹出口43に導く運転席側内気通路と、内気を助手席側のフット吹出口43に導く助手席側内気通路とに、仕切り板によって分割されていてもよい。また、上記外気通路は、外気を運転席側のデフロスタ吹出口41およびフェイス吹出口42に導く運転席側外気通路と、外気を助手席側のデフロスタ吹出口41およびフェイス吹出口42に導く助手席側外気通路とに、仕切り板によって分割されていてもよい。
(変形例11)
上記各実施形態においては、車両1に搭載された記憶部402に、標準温熱感分布、連動データ、一括補正データ等が記憶されている。しかし、必ずしもこのようになっていなくてもよい。これら標準温熱感分布、連動データ、一括補正データのうち一部のみまたは全部が、車両1以外の場所に設置された1台または複数台のサーバ(例えばクラウド)に記憶されていてもよい。その場合、エアコンECU40は、当該サーバと通信することで、標準温熱感分布、連動データ、一括補正データのうちサーバにあるデータに対する読み出しおよび書き込みを行う。
あるいは、エアコンECU40自体が、車両1以外の場所に設置された1台または複数台のサーバに設けられていてもよい。その場合、エアコンECU40は、通信によって車内の機器と通信することで、上述の処理を実現する。
(変形例12)
上記第2、第3実施形態では、エアコンECU40は、図17、図23のステップS220で、連動データを変更しているが、全モードの標準目標温熱感分布を変更してもよい。この場合、記憶部402に記録されている全モードの標準目標温熱感分布が、各モードの目標温熱感分布の変更後の値が特定可能な連動データに相当する。
(変形例13)
上記第2、第3実施形態において、エアコンECU40は、リラックスモードM1、フォーカスモードM2、スリープモードB1、エナジーモードB2とは違う追加のモードを、乗員3のタッチパネル61等への操作に応じて新たに設定してもよい。そのモードにおける標準温熱感分布は、乗員3のタッチパネル61等への設定操作に応じて決定されてもよい。このようにして設定された追加のモードが、ステップS110で設定された場合は、他のモードと同様、連動データおよび季節に応じて補正される。このようにすることで、乗員3は好みの温熱感分布を新たに設定して享受することができる。
(変形例14)
上記第2、第3実施形態において、エアコンECU40は、タッチパネル61に所定の操作があった場合、連動データを無効化してもよい。連動データが無効化された場合は、ステップS128の補正は実行されない。またエアコンECU40は、連動データが無効かされている場合、タッチパネル61に所定の操作があったことに基づいて、連動データを有効化してもよい。連動データが有効化された場合は、ステップS128の補正が実行されるようになる。
なお、タッチパネル61への所定の操作は、例えば、タッチパネル61の所定の位置が所定時間以上押し続けられること、すなわち、タッチパネル61の所定の位置の長押しであってもよい。あるいは、タッチパネル61への所定の操作は、タッチパネル61の所定の位置が所定の期間内に2回押されること、すなわち、タッチパネル61の所定の位置のダブルクリックであってもよい。
(変形例15)
上記第2、第3実施形態では、タッチパネル61に対する操作に基づいて、連動データの変更が行われている。しかし、不図示の音声認識装置が不図示のマイクから取得した乗員3の音声に基づいて、連動データの変更が行われてもよい。つまり、乗員3の音声操作によって連動データの変更が行われてもよい。
(変形例16)
上記実施形態では、第1のモードとしれリラックスモードM1が例示され、第2のモードとしてスリープモードB1が例示されている。しかし、第1のモードと第2のモードの組み合わせとしては、このようなものに限られない。第1のモードと第2のモードの組み合わせは、互いに異なるモードであれば、どのような組み合わせでもよい。
(変形例17)
上記実施形態では、一括スライダー503dを移動させて一括補正データを変更させるための操作として、一括マイナスボタン503aまたは一括プラスボタン503bの操作が例示されている。しかし、一括スライダー503dを移動させて一括補正データを変更させるための操作としては、例えば、一括スライダー503dを選択してドラッグする操作であってもよい。また、上記実施形態では、部位別スライダー504dを移動させて連動データを変更させるための操作として、部位別マイナスボタン504a、部位別プラスボタン504bの操作が例示されている。しかし、部位別スライダー504dを移動させて連動データを変更させるための操作としては、例えば、部位別スライダー504dを選択してドラッグする操作であってもよい。
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、車両の乗員の温熱感を調整する温熱感調整装置は、前記乗員の複数の身体部位に温熱刺激を与えると共に、身体部位別の前記温熱刺激の分布を変更可能に構成されている温熱刺激部と、前記乗員の精神を安静化させるモード、前記乗員の精神を活性化させるモード、前記乗員の身体を安静化させるモード、前記乗員の身体を活性化させるモードのうち少なくとも2つのモードから1つのモードを選択する選択部と、前記選択部で選択されたモードに対応する目標温熱感分布に基づいて、前記温熱刺激部を制御する刺激制御部と、を備え、前記少なくとも2つのモードに対応する前記目標温熱感分布の各々は、前記複数の身体部位のそれぞれを対象とする複数の温熱感の目標値を表すデータであり、前記目標温熱感分布の各々は、前記複数の身体部位のうち特定の身体部位を対象とする温熱感の目標値が互いに異なっており、前記選択部によって前記少なくとも2つのモードのうち何れかが選択された場合に前記特定の身体部位に対して与えられる温熱刺激と、前記少なくとも2つのモードのうち他のモードが前記選択部によって選択された場合に前記特定の身体部位に対して与えられる温熱刺激とが、異なるよう、前記刺激制御部が前記温熱刺激部を制御する。
また、第2の観点によれば、前記特定の身体部位は乗員の頭部であり、前記何れかのモードが前記選択部によって選択された場合に前記頭部に対して与えられる温熱刺激と、前記他のモードが前記選択部によって選択された場合に前記頭部に対して与えられる温熱刺激とが、異なるよう、前記刺激制御部が前記温熱刺激部を制御する。
乗員の脳の状態は、精神活動に対しても身体活動に対しても強い相関を有する。したがって、選択部に選択されるモードが異なれば頭部に対して異なる温熱刺激を与えるようになっていることで、達成したい乗員の精神の状態または身体の状態に更に適した形態で、乗員の身体の複数部位の温熱感の分布を調整することができる。
また、第3の観点によれば、前記刺激制御部は、前記1つの身体部位を対象とする温熱感の現在の値に基づいて、前記1つの身体部位を対象とする温熱感の値が、前記1つの身体部位を対象とする温熱感の目標値に近づくよう、前記1つの身体部位に温熱刺激を与える。
このように、温熱感の現在の値に基づいて、温熱感の値が目標値に近付くようにすることで、より効果的に、達成したい乗員の精神の状態または身体の状態へ乗員を誘導することができる。
また、第4の観点によれば、温熱感調整装置は、前記少なくとも2つのモードのうち第1のモードが前記選択部によって選択されているときに、前記第1のモードの目標温熱感分布に対して前記乗員の変更操作があった場合、前記変更操作に応じた連動データを記憶する記憶部と、前記第1のモードが前記選択部によって選択されているときに、前記連動データに基づいて前記第1のモードの目標温熱感分布を変更する変更部と、を備える。そして前記変更部は、前記少なくとも2つのモードのうち前記第1のモードとは異なる第2のモードが前記選択部によって選択されているときに、前記連動データに基づいて、前記第1のモードの目標温熱感分布に対する前記変更操作に連動して、前記第2のモードの目標温熱感分布を変更する。
本願発明者は、温熱感調整装置において、各乗員の温熱感の好みに応じて温熱感刺激を細かく制御する目的で、乗員による変更操作を後の目標温熱感分布調整に引き継いで反映させる、いわゆる学習技術について検討した。
温熱感制御装置において、従来の学習技術を単純に適用した場合、ある目的(例えば、精神を落ち着かせたい)のときに特定の身体部位(例えば、頭部)の温熱感の目標値を学習させることになる。しかし、別の目的(例えば、身体を活性化させたい)における当該身体部位の温熱感の目標値にその学習が反映されることはない。本願発明者の検討によれば、乗員がある目的である身体部位への温熱刺激を変更した場合、別の目的でも当該身体部位への温熱刺激を同様に変更することを好む傾向がある。したがって、従来の学習技術を単純に適用しただけでは目標温熱感分布の変更を効率よく学習できない。
そこで、乗員の温熱感の好みを各々の温熱感分布に効率よく反映させるために、連動データが導入されている。これにより、目標温熱感分布の乗員による変更を効率よく学習することができる。
また、第5の観点によれば、前記変更操作として特定の1つの身体部位を選んだ変更操作が行われた場合、前記変更部は、前記1つの身体部位のみの温熱感の目標値を前記変更操作に基づいて変更する。このようにすることで、身体部位別のきめ細かい学習が可能となる。
また、第6の観点によれば、前記変更操作として特定の身体部位を選ばない変更操作が行われた場合、前記変更部は、2つ以上の身体部位の温熱感の目標値を前記変更操作に基づいて変更する。このようにすることで、身体部位別の細かい調整と比べると、煩わしさが少なく簡易な調整が実現する。
また、第7の観点によれば、温熱感調整装置は、季節を判定する季節判定部と、前記選択部が選択したモードの目標温熱感分布に対して、前記季節判定部が判定した季節に応じた変更を加える季節対応部と、を備える。このようにすることで、季節の変動に応じた適切な温熱感刺激の調整を行ことが可能となる。
また、第8の観点によれば、温熱感調整装置は、前記乗員の温熱感の現在値および目標値を身体部位別に表示すると共に、前記現在値が前記目標値に到達した場合と到達する前で表示形態を変化させ、更に、前記現在値が前記目標値に到達するまでの時間を身体部位別に表示する表示制御部を備える。このようにすることで、目標温熱感分布が実現した身体部位と実現しない身体部位との区別を体感のみならず視覚的に確認することもできる。