以下、本発明の「平型導体用コネクタ」の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本発明の「平型導体用コネクタ」は、基板P(図3等参照)に実装されて、「接続対象物」としてのFFCやFPC等を基板回路に導通接続するものである。本明細書では、第1実施形態〔図1〜図7〕及び第2実施形態〔図8〜図9〕において、実装時に嵌合面が基板Pの実装面と平行となるストレートタイプのコネクタを例示して本発明の「平型導体用コネクタ」を説明する。さらに、本明細書では、第3実施形態〔図10〜図13〕において、実装時に嵌合面が基板Pの実装面と垂直となるライトアングルタイプのコネクタを例示して本発明の「平型導体用コネクタ」を説明する。
本明細書及び特許請求の範囲に「第1」、「第2」と記載する場合、それらは、発明の異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣等を示すために用いるものではない。本明細書及び特許請求の範囲では、便宜上、図1等に示されるように、「平型導体用コネクタ」としての平型導体用コネクタ1の幅方向(左右方向)をX方向、奥行き方向(前後方向)をY方向、高さ方向(上下方向)をZ方向として記載する。そして、平型導体用コネクタ1のZ方向における基板Pの側を「下側」とし、平型導体用コネクタ1の側を「上側」として記載する。しかしながら、それらは、平型導体用コネクタ1等の嵌合接続の方向や基板Pに対する実装の仕方を限定するものではない。
なお、「平型導体用コネクタ」は、「接続対象物」の挿抜方向が、第1実施形態及び第2実施形態ではZ方向となるように配置され、第3実施形態ではY方向となるように構成されている。
第1実施形態〔図1〜図7〕
以下、本発明の「平型導体用コネクタ」の第1実施形態としての平型導体用コネクタ1について図面を参照しつつ説明する。
平型導体2
まず、平型導体用コネクタ1に導通接続する平型導体2について説明する。平型導体2は、平型導体用コネクタ1と図示しない外部機器とを導通接続する平板状に細長く伸長する導通配線である。平型導体2は、図1においては、Z方向における下方に位置する先端部2aが平型導体用コネクタ1への挿入側となっている。平型導体2は、絶縁性の材料によって形成されている。平型導体2の図1で示す表面とは反対側の裏面における先端部2aの近くには、導電線が露出しており、先端部2aから離隔した位置には、グランドプレートが露出している。
平型導体2は、板幅方向(X方向)における左右両端の付近に側縁部2b、2bを有している。側縁部2b、2bには、先端部2aからは離隔した位置に、平型導体2の左右の側縁からX方向におけるそれぞれの内方に向かって直方体状に欠落する係止凹部2c、2cが形成されている。係止凹部2c、2cのZ方向における下方には、それぞれ先端部2aに沿って伸長する「被係合部」としての係止縁2d、2dが形成されている。そして、係止縁2d、2dと先端部2aとの間、すなわち、係止凹部2c、2cよりも先端側には、それぞれ係止片2e、2eが形成されている。係止片2e、2eは、それぞれ係止凹部2c、2cに対して耳状に突出する突片として形成されている。平型導体2は、剛性を有しながら、側縁部2b、2bを含めて板厚方向に湾曲するように弾性変形可能な柔軟性を併有している。
平型導体用コネクタ1
本実施形態の平型導体用コネクタ1は、ハウジング1aと、ハウジング1aに保持される端子3と、グランド端子4と、可動部材5とを備えている。そして、平型導体用コネクタ1は、図1及び図3で示すように、ハウジング1aとして、第1のハウジング6と、「付設部材」としての第2のハウジング7とを有している。ハウジング1aは、第1のハウジング6が基板Pの側に位置し、第2のハウジング7が第1のハウジング6よりもZ方向における上方に位置するように構成されている。
第1のハウジング6
第1のハウジング6は、図1及び図3で示すように、有底筒状の直方体状に形成された絶縁性の樹脂成形体である。第1のハウジング6は、前壁部6aと、左右の側壁部6b、6bと、奥壁部6cと、底壁部6dとを有している。前壁部6a及び奥壁部6cは、Y方向における前後にそれぞれ位置し、左右の側壁部6b、6bは、X方向における左右にそれぞれ位置している。底壁部6dは、XY平面に伸長する基板Pの実装面に沿っている。第1のハウジング6の上面には、平型導体2を挿入するための開口部6eが形成されている(図3参照)。第1のハウジング6の内側には、開口部6eからZ方向における下方に向かう深さを有する平型導体2の嵌合室6fが設けられている。嵌合室6fは、平型導体2を嵌合接続した状態で収容するための空間である。
嵌合室6fのY方向における後側の面を形成する奥壁部6cには、複数の端子3をそれぞれ配置する複数の端子収容溝8が形成されている。複数の端子収容溝8は、それぞれY方向における後方にくぼんだ溝形状としてZ方向に沿って形成されている。嵌合室6fに面する隣り合う端子収容溝8どうしは、Z方向に沿って伸長する隔壁8aによって仕切られている。さらに、奥壁部6cの上面には、一対のグランド端子収容溝9、9がX方向における左右両側に配置されている。グランド端子収容溝9、9は、それぞれ端子収容溝8よりもY方向における後方において、Z方向における下方に向かってくぼむ溝がX方向に伸長している。
奥壁部6cは、開口部6eから嵌合室6fに向かってZ方向に沿って伸長する第1の挿入案内面10を有している。第1の挿入案内面10は、嵌合室6fに挿入される平型導体2の側縁部2bの裏面を支持するようにXZ平面に沿った平坦面として形成されている。第1の挿入案内面10は、開口部6eの開口側に、嵌合室6fのY方向における幅が下方に向かって狭くなる勾配である第1の誘導傾斜面10aを有している。第1のハウジング6は、第1の誘導傾斜面10aを有することによって、平型導体2を開口部6eに挿入しやすい構成とされている。
第1の挿入案内面10は、嵌合室6fの室内をZ方向に沿って第1のハウジング6の中間位置まで伸長している。そして、第1の挿入案内面10のZ方向における下端には、平型導体2の側縁部2bの湾曲変形を許容する平型導体変形用凹部11が形成されている。平型導体変形用凹部11は、Y方向に伸長する段差面11aと、第1の挿入案内面10と段差面11aとによる角部に形成されている傾斜面11bと、段差面11aの後端からZ方向における下方に伸長する凹面11cとが形成されている。
前壁部6aは、開口部6eから嵌合室6fに向かってZ方向に沿って伸長する第2の挿入案内面12を有している。第2の挿入案内面12は、嵌合室6fに挿入される平型導体2の側縁部2bの表面を支持するようにXZ平面に沿った平坦面として形成されている。第2の挿入案内面12は、開口部6eの開口側に、嵌合室6fのY方向における幅が下方に向かって狭まる勾配である第2の誘導傾斜面12aを有している。第2の誘導傾斜面12aは、第1の誘導傾斜面10aよりも長い緩斜面として形成されている。第1のハウジング6は、第2の誘導傾斜面12aを有することによって、平型導体2をより第1の挿入案内面10及び第2の挿入案内面12に沿って挿入しやすい構成とされている。
第2の挿入案内面12は、第1の挿入案内面10に対して平行な対向面として形成されている。第1の挿入案内面10と第2の挿入案内面12との間は、平型導体2の側縁部2bが通過する挿通路13となっている。第1の挿入案内面10と第2の挿入案内面12との距離(挿通路13の奥行き)は、平型導体2の板厚よりも僅かに大きく形成されている。すなわち、挿通路13は、平型導体2の挿入時に、側縁部2bが湾曲せずに平坦な平板形状を維持できる挿入代を有するように形成されている。
第2の挿入案内面12は、嵌合室6fの室内をZ方向に沿って第1のハウジング6の中間位置まで伸長している。そして、第2の挿入案内面12のZ方向に沿う下端には、ロック突起14が形成されている。ロック突起14は、平型導体用コネクタ1に嵌合接続した平型導体2を抜け止めする部位である。ロック突起14は、第2の挿入案内面12から伸長する変形誘導面14aと、「突出端部」としての突出面14bと、「係合部」としての係止面14cとを有している。
変形誘導面14aは、第2の挿入案内面12に対してY方向における後方に傾斜している。変形誘導面14aは、平型導体2の嵌合室6fへの挿入時に、平型導体2の側縁部2bの係止片2eを湾曲変形させる部位である。変形誘導面14aの傾斜が始まる上端は、図3で示すように、Z方向において、平型導体変形用凹部11の傾斜面11bの上端と略同じ位置である。
変形誘導面14aは、傾斜面11bに沿って形成されている。しかしながら、変形誘導面14aに比べて傾斜面11bは、よりY方向における後方に傾斜している。したがって、変形誘導面14aの傾斜が始まる上端の位置と比べて傾斜が終わる下端の位置では、挿通路13は、奥行きがより大きくなっている。このため、傾斜面11bと変形誘導面14aとによって形成される挿通路13は、変形誘導面14aを通過する係止片2eを無理なく湾曲変形させることができる。
さらに、変形誘導面14aの傾斜が始まる上端は、図3で示すように、Z方向において、嵌合室6fの室内に端子3が伸長する箇所よりも僅かに上方の位置である。このため、平型導体2は、嵌合室6fに挿入されると、係止片2eが変形誘導面14aと接触して湾曲変形し始めた直後に、先端部2aが複数の端子3の接点部3aと接触する。したがって、複数の導電線を配列した平型導体2の導通接続領域に対して、複数の端子3が、その弾性力によってY方向における前向きに付勢する。すると、平型導体2は、全体的に嵌合室6fに面する前壁部6aの内面に押し付けられる。これに対し、係止片2eは、導通接続領域とは逆に、Y方向における後方に向かって湾曲変形する。したがって、係止片2eは、変形誘導面14aの傾斜が始まる上端側から大きく湾曲変形させることができる。
さらに、変形誘導面14aの上端は、平型導体変形用凹部11の段差面11aに対してZ方向で上側に位置している。したがって、湾曲変形している途中でスムースに係止片2eを平型導体変形用凹部11に導入することができる。
突出面14bは、変形誘導面14aの下端からZ方向に沿って伸長する平面として形成されている。突出面14bは、第1の挿入案内面10に対してY方向で離間している。そして、第1の挿入案内面10と第2の挿入案内面12との間に形成されている挿通路13は、ロック突起14と平型導体変形用凹部11との間にも伸長して形成されている。
係止面14cは、突出面14bの下端からY方向における前方に伸長している。係止面14cは、Y方向に沿う長さが平型導体2の板厚方向に沿う係止縁2dと係止可能な長さとして形成されている。
第1のハウジング6の前壁部6aにおける前面6a1には、Y方向における後方にくぼんでおり、Z方向に沿って伸長する操作部材収容溝部15が形成されている。この操作部材収容溝部15には、Z方向における上下に変位可能に可動部材5が配置されている。すなわち、操作部材収容溝部15は、可動部材5のZ方向への変位を許容するための変位空間として設けられている。
さらに、前壁部6aのX方向における左右両側には、一対の操作部材抜け止め部16が形成されている(図1参照)。これらの操作部材抜け止め部16は、XY方向に伸長する平面として形成されている。これによって、可動部材5は、Z方向における下方への移動が規制され、第1のハウジング6から外れてしまうことがない。
第2のハウジング7
第2のハウジング7は、図1〜図3で示すように、有天筒状の直方体状に形成された絶縁性の樹脂成形体である。第2のハウジング7は、前壁部7aと、左右の側壁部7b、7bと、奥壁部7cとを有している。第2のハウジング7は、第1のハウジング6よりもXY方向に1周り大きい寸法で形成されている。第2のハウジング7は、第1のハウジング6に対して付設することで、平型導体2を嵌合室6fに挿入しやすくするとともに、嵌合室6fに挿入された平型導体2の嵌合状態をより安定させる機能を有している。
左右の側壁部7b、7bには、図1で示すように、それぞれ係合部7d、7dが形成されている。係合部7d、7dは、それぞれZ方向に沿って下方に片持ち梁状に伸長している。そして、係合部7d、7dは、それぞれYZ平面に沿った板面を有する平板状に形成されている。これによって係合部7d、7dは、それぞれZ方向における下端においてX方向に弾性を有して撓むように構成されている。
第1のハウジング6の全周を覆うようにしてZ方向における上方から第2のハウジング7を嵌合させることで、第1のハウジング6と第2のハウジング7とが一体化したハウジング1aが形成される。その際に、第2のハウジング7は、係合部7d、7dによって第1のハウジング6を挟み込む。係合部7d、7dは、第2のハウジング7を第1のハウジング6に固定する機能を有している。
第2のハウジング7の上面には、平型導体2が挿入されるための挿入口7eが形成されている(図1及び図3参照)。第2のハウジング7の内側には、挿入口7eからZ方向における下方に向かって貫通する貫通孔7fが設けられている。貫通孔7fは、第1のハウジング6の開口部6eに連通している。貫通孔7fは、開口部6eよりもXY方向に1周り大きい寸法で形成されている。貫通孔7fは、嵌合室6fに挿入される平型導体2が通過する空間である。第2のハウジング7の上面においては、前壁部7aが、左右の側壁部7b、7b及び奥壁部7cよりも1段低く形成されている。これによって、第2のハウジング7は、特にY方向に平型導体2を動かすことで挿入口7eに挿入しやすい構成とされている。
奥壁部7cは、挿入口7eから開口部6eに向かってZ方向に沿って伸長する第3の挿入案内面17を有している。第3の挿入案内面17は、貫通孔7fを通過する平型導体2の側縁部2bの裏面を支持するようにXZ平面に沿った平坦面として形成されている。第3の挿入案内面17は、挿入口7eの開口側に、貫通孔7fのY方向における幅が下方に向かって狭まる勾配である第3の誘導傾斜面17aを有している。第2のハウジング7は、第3の誘導傾斜面17aを有することによって、平型導体2を挿入口7eに挿入しやすい構成とされている。
他方で、第3の挿入案内面17のZ方向における下端は、第1の誘導傾斜面10aの上方に位置している。これによって、ハウジング1aは、第3の挿入案内面17に沿って挿入される平型導体2を第1の誘導傾斜面10aと接触させることで第1の挿入案内面10に受け流し、嵌合室6fのY方向における中央付近に位置させるように構成されている。
前壁部7aは、挿入口7eから開口部6eに向かってZ方向に沿って伸長する第4の挿入案内面18を有している。第4の挿入案内面18は、貫通孔7fを通過する平型導体2の側縁部2bの表面を支持するようにXZ平面に沿った平坦面として形成されている。第4の挿入案内面18は、第3の挿入案内面17に対して平行な対向面として形成されている。第4の挿入案内面18は、挿入口7eの開口側に、貫通孔7fのY方向における幅が下方に向かって狭まる勾配である第4の誘導傾斜面18aを有している。第4の誘導傾斜面18aは、第3の誘導傾斜面17aよりも長い緩斜面として形成されている。第2のハウジング7は、第4の誘導傾斜面18aを有することによって、平型導体2をより第3の挿入案内面17及び第4の挿入案内面18に沿って挿入しやすい構成とされている。
他方で、第4の挿入案内面18のZ方向における下端は、第2の誘導傾斜面12aの上方に位置している。これによって、ハウジング1aは、第4の挿入案内面18に沿って挿入される平型導体2を第2の誘導傾斜面12aと接触させることで第2の挿入案内面12に受け流し、嵌合室6fのY方向における中央付近に位置させるように構成されている。
このように、平型導体用コネクタ1は、第2のハウジング7を有することによって、平型導体2の第1のハウジング6への挿入性を向上させることができ、平型導体用コネクタ1に対して平型導体2を容易に嵌合することができる。さらに、貫通孔7fは、嵌合室6fと連通することで、Z方向における長さを延ばしている。すなわち、第2のハウジング7は、貫通孔7fを有することによって、平型導体2との係り代をより長く確保している。したがって、平型導体用コネクタ1は、第2のハウジング7を有することによって、嵌合室6fに挿入された平型導体2の嵌合状態をより安定させることができる。そして、第2のハウジング7は、作業員の指等が不用意に当たることで平型導体2の抜けや破損が生じてしまうことを防ぐことができる。
第2のハウジング7は、上述のように、第1のハウジング6よりもXY平面に1周り大きい寸法で形成されているため、基板Pの実装面と対向する方向からの視点、すなわち平面視において、第1のハウジング6の周囲に死角の領域を有している。このような構造を有する平型導体用コネクタ1の第2のハウジング7には、欠落部19が形成されている。欠落部19は、第2のハウジング7が存在することで平面視において死角となっている領域を視認可能とする構造である。欠落部19は、図1及び図2で示すように、前壁部7aの前面からY方向における後方に向かうくぼみがZ方向における上下に突き抜けるようにして直方体状に欠落している。
平型導体用コネクタ1は、平型導体2との係合の状況に連動して後述の可動部材5が欠落部19越しに視認可能な領域(欠落部19の直下)に入り込むように構成されている。すなわち、欠落部19は、平型導体2の嵌合接続が確認可能に構成されている。平型導体2が嵌合室6fの正規の挿入位置まで挿入されているか否かは、この欠落部19を目視することで確認可能である。
本実施形態では、図5で示すように、少なくともハウジング1aに係合した平型導体2の幅方向長さd1(X方向)よりも外方に欠落部19が位置するように平型導体用コネクタ1を構成することができる。こうすることで、平型導体2がハウジング1aに係合した上で覆い重なるような状態となっていたとしても、平面視で欠落部19が露出した状態が維持され、欠落部19に入り込む可動部材5を目視することで係合が完了しているか未完了であるかを判別できる。
可動部材5
可動部材5は、金属片により形成されており、図7で示すように、操作部5aと、「可動部」としての左右の作動部5b、5bと、左右の取付部5c、5cと、左右の嵌合表示片5d、5dとを有している。可動部材5は、第1のハウジング6における左右の側壁部6b、6bと隣接するようにして底壁部6dから圧入するとともに、前壁部6aに沿ってZ方向における上方に向かって押し込むことで第1のハウジング6に取り付けられるように構成されている。
操作部5aは、平型導体用コネクタ1に嵌合接続した平型導体2を抜去する際に、平型導体2のロックを解除する操作を加える部分である。操作部5aは、連結部5a1と、操作片部5a2と、一対の抜け止め片5a3、5a3とを有している。操作部5aは、第1のハウジング6の外部に導出され、左右の作動部5b、5bを変位させるように構成されている。
連結部5a1は、XZ平面に沿う平板状に形成されている。連結部5a1は、前壁部6aの前面6a1に形成されている操作部材収容溝部15に配置されている。連結部5a1は、図3で示すように、可動部材5に外力がかかっていない状態では、Z方向における下部が上部よりもY方向における後方になるように配置されている。操作片部5a2は、連結部5a1のZ方向における上端が三角筒状に折り曲げられている。そして、操作片部5a2は、連結部5a1からY方向における前方に三角筒状の2側面が突出するように配置されている。操作片部5a2は、指でZ方向における下方に押し込むことで可動部材5を操作するように構成されている。
抜け止め片5a3、5a3は、連結部5a1のX方向における両外側からそれぞれ分岐して連結部5a1と同様にXZ平面に沿って伸長しており、Z方向における上端で折り返されている。抜け止め片5a3、5a3は、それぞれ操作部材抜け止め部16、16に、Z方向における下方から差し込まれるようにして取り付けられている。抜け止め片5a3、5a3は、操作部5aが過度にZ方向における下方に動かされた際に、折り返されている先端が操作部材抜け止め部16のXY方向に伸長する平面と当たることによって、これ以上の下方への変位を規制している。
左右の作動部5b、5bは、連結部5a1のX方向における両端部からそれぞれY方向における後方へ屈曲し、YZ平面に沿う平板状に形成されている。左右の作動部5b、5bは、それぞれ左右の側壁部6b、6bに隣接するように配置されている。作動部5bは、基部5b1と、当接部5b2と、「ばね部」としての弾性腕5b3と、「ばね部」としての屈曲部5b4とを有している。
基部5b1は、連結部5a1とつながっており、Y方向における後方に向かって伸長している。基部5b1のZ方向における上端は二股に分かれており、Y方向における前方に位置する当接部5b2と、後方に位置する弾性腕5b3とつながっている。
当接部5b2は、連結部5a1に沿って、Z方向における上方、かつ、Y方向における前方に向かって長方形状に伸長する平板状に形成されている。当接部5b2は、平型導体用コネクタ1から平型導体2を抜去する際の「係合解除部」としても機能する。すなわち、「係合解除部」としての当接部5b2は、平型導体2と接触し、操作部5aによる操作を受けて第1のハウジング6の係止面14cに対する平型導体2の係止縁2dの係合を解除する機能を有している。
このように、可動部材5が「係合解除部」としての当接部5b2を有するので、第1のハウジング6に対する平型導体2の係合を解除することができ、平型導体2を繰り返し挿抜することができる。さらに、平型導体用コネクタ1では、可動部材5が「係合解除部」としての当接部5b2を有するので、可動部材5に係合を表示する機能と、係合を解除する機能とを併有させることができる。よって、本実施形態によれば、可動部材5の部品点数が増加することを防ぐことができる。
弾性腕5b3も、連結部5a1に沿って、Z方向における上方、かつ、Y方向における前方に向かって伸長しており、弾性変形可能に構成されている。弾性腕5b3は、Z方向における上端で屈曲部5b4につながっている。
屈曲部5b4は、逆U字状に屈曲している。屈曲部5b4の後端は取付部5cにつながっている。作動部5bは、取付部5cに対して操作部5aの側、すなわち当接部5b2や、弾性腕5b3等が変位するように構成されている。このように、平型導体用コネクタ1は、「ばね部」としての弾性腕5b3及び屈曲部5b4を有している。これによって、作動部5bは、挿入される平型導体2によって変位可能でありながら、後述の第2変形例及び第3変形例とは異なり、平型導体2が未挿入の状態において平型導体用コネクタ1の姿勢が変化してもその形状が維持される。したがって、基板Pに対する平型導体用コネクタ1の取付方向等によらず、作動部5bと連動する左右の嵌合表示片5d、5dがより確実に予め定められた場所に変位するように平型導体用コネクタ1を構成することができる。
左右の取付部5c、5cは、それぞれ屈曲部5b4、5b4の後端からZ方向における下方に伸長している。左右の取付部5c、5cは、可動部材5を第1のハウジング6に取り付ける部位である。左右の取付部5c、5cは、圧入固定部5c1、5c1と、クランク部5c2、5c2と、基板取付部5c3、5c3とを有している。
圧入固定部5c1は、YZ平面に沿う平板状に形成されている。圧入固定部5c1は、底壁部6dから圧入されることによって取付部5cを第1のハウジング6に固定する部位である。圧入固定部5c1は、作動部5bに対してX方向における外側に位置している。これによって、作動部5bが変位した際に、取付部5cとぶつかることがなく、可動部材5がY方向に大きな寸法となってしまうことを防いでいる。そして、圧入固定部5c1と作動部5bとがこのように配置されることによって、可動部材5を小型化することができる。さらに、圧入固定部5c1と、作動部5bとを一度の圧入工程で第1のハウジング6に配置して可動部材5を第1のハウジング6に固定することができる。
このX方向にずれた圧入固定部5c1と作動部5bとの間は、X方向に屈曲するクランク部5c2によってつながれている。クランク部5c2は、可動部材5のばね長を確保して圧入固定部5c1に対する屈曲部5b4、すなわち取付部5cに対する作動部5bを弾性変形しやすくする効果も有している。したがって、クランク部5c2は、「ばね部」としての機能も有している。基板取付部5c3は、圧入固定部5c1のZ方向における下端につながっている。基板取付部5c3は、基板Pに対して半田付けされて固定される。
左右の嵌合表示片5d、5dは、操作部5aのZ方向における下部、かつ、X方向における左右両側からそれぞれY方向における前方に突出している。さらに、左右の嵌合表示片5d、5dは、それぞれY方向における前方においてX方向における両外側に伸長しており、平面視でL字状の平板状に形成されている。
複数の端子3
金属片でなる複数の端子3は、図2で示すように、第1のハウジング6の幅方向に沿って配列されている。各端子3は、端子収容溝8から嵌合室6fに突出するように配置される接点部3aと(図3参照)、底壁部6dに圧入固定される固定部3bと(図3及び図6参照)、基板Pに半田付けされる基板接続部3cとを有する(図3及び図6参照)。そして、端子3は、嵌合室6fの室内でY方向に沿って接点部3aが弾性変形可能となるように第1のハウジング6に取り付けられている。
複数の端子3の接点部3aは、嵌合室6fに挿入される平型導体2の裏面に露出する導電線と導通接触する。その際に、接点部3aは、Y方向における前向きに平型導体2を押圧して前壁部6aの内面に押し付けることによって、平型導体2を嵌合室6fに保持する。しかしながら、平型導体2が抜去されないようにするには、この接点部3aによる押圧接触による保持力では不充分であるため、第1のハウジング6のロック突起14が平型導体2を抜け止めしている。
グランド端子4
金属片でなる複数のグランド端子4、4は、それぞれグランド接点部4aと、圧入固定部4b、4bと、基板固定部4c、4cとを有している。そして、グランド端子4、4は、端子3と同様に、嵌合室6fの室内でY方向に沿ってグランド接点部4a、4aが弾性変形可能となるように第1のハウジング6に取り付けられている。
圧入固定部4b、4bは、グランド端子収容溝9、9に圧入されることによって、グランド端子4を第1のハウジング6に固定する部位である。圧入固定部4b、4bは、それぞれ左右の外側に向かって奥壁部6cに沿って伸長した後、左右の側壁部6b、6bに沿ってZ方向における下方に向かって伸長しており、基板Pに半田付けする基板固定部4c、4cとつながっている。この基板固定部4c、4cは基板Pに対する固定金具として機能する。圧入固定部4b、4bのZ方向における上方には、幅の太い帯状にグランド接点部4aが、上方に向かって湾曲するようにして嵌合室6fの室内に伸長して形成されている。
グランド端子4のグランド接点部4aは、嵌合室6fに挿入される平型導体2の裏面に露出するグランドプレートの所定の導通接続部分と導通接触する。その際に、グランド接点部4aは、Y方向における前向きに平型導体2を押圧して前壁部6aの内面に押し付けることによって、平型導体2を嵌合室6fに保持する。
平型導体用コネクタ1と平型導体2との嵌合接続
図1で示す平型導体2は、図3及び図6で示すように、基板Pに実装された平型導体用コネクタ1の開口部6eを通じて嵌合室6fに挿入される。平型導体2は、挿通路13によって挿入がガイドされる。なお、図6で示すように、平型導体2において挿通路13を通過するのは、平型導体2の係止片2eと係止凹部2cである。これとともに、平型導体2における係止片2e及び係止凹部2cよりもX方向の内側部分は、前壁部6aの嵌合室6fに面する内面と、奥壁部6cの嵌合室6fに面する端子収容溝8どうしを仕切る隔壁8aの上面とによって、挿入がガイドされる。
平型導体2の挿入を続けると、係止片2eがロック突起14の変形誘導面14aに対して接触する。その直後に、平型導体2の先端部2aが複数の端子3の接点部3aと接触する。
そのまま平型導体2を挿入し続けると、係止片2eが変形誘導面14aに沿って湾曲変形する。このとき係止片2eは、変形誘導面14aと平型導体変形用凹部11の傾斜面11bとの間に入り込むようにして進む。
そのまま挿入を続けて、係止片2eの係止縁2dがロック突起14の突出面14bを通過し、さらに係止面14cに到達すると、図6で示すように、剛性を有する係止片2eはそれ自体の復元力により湾曲変形した状態から前方に変位する。これによって平型導体用コネクタ1は平型導体2の嵌合接続状態を得る。このとき、係止片2eは、図6で示すように、当接部5b2を平型導体2の挿入方向に沿う位置まで押す。これによって、当接部5b2と連動する嵌合表示片5dは、第1のハウジング6のY方向における前端よりも前方に位置するように押し出される。
このような嵌合接続状態では、平型導体2を嵌合室6fから抜き取る抜去方向(Z方向における上方)に引っ張ると、係止縁2dがロック突起14の係止面14cに対して当接する。すなわち、平型導体2は、係止縁2dが係止面14cに対して抜去方向で係止する「係止位置」にある。こうして、平型導体2は、平型導体用コネクタ1に対して抜け止めされている。
平型導体用コネクタ1に対する平型導体2の嵌合接続の過程では、係止片2eが可動部材5の当接部5b2に接触した後における平型導体2の挿入位置を平型導体用コネクタ1の外観から目視で確認することができる。
可動部材5は、図3で示すように、外力がかかっていない状態では、操作部5aの下部が上部よりもY方向における後方に位置するように第1のハウジング6に取り付けられている。このとき、左右の嵌合表示片5d、5dは、Y方向において、第1のハウジング6の前端よりも後方に位置している。この位置は、係止縁2dと係止面14cとの係合が未完了であることを嵌合表示片5dが表示する第1の位置である。
他方で、可動部材5は、図6で示すように、平型導体2が平型導体用コネクタ1と嵌合した際には、当接部5b2及び弾性腕5b3が平型導体2の挿入方向に沿う方向に変位、すなわち右側面視で時計回りに変位する。左右の嵌合表示片5d、5dは、左右の作動部5b、5bに連動して変位し、Y方向において、第1のハウジング6の前端よりも前方に位置することとなる。この位置は、係止縁2dと係止面14cとの係合が完了したことを嵌合表示片5dが表示する第2の位置である。
すなわち、嵌合表示片5dは、可動部材5が変位することで、平型導体用コネクタ1に対する平型導体2の係合が未完了であることを表示する第1の位置から、係合が完了したことを表示する第2の位置に変位するように構成されている。
このように、本実施形態では、第1のハウジング6に対する平型導体2の係合が未完了のときに第1の位置にある嵌合表示片5dが、係合が完了した時点で第2の位置に変位する。したがって、本実施形態の平型導体用コネクタ1によれば、嵌合表示片5dの位置を検査することによって係合が完了しているか未完了であるかを判別できる。したがって、本実施形態の平型導体用コネクタ1では、係合が未完了であるにもかかわらず、係合が完了したものと判定されてしまう錯誤を防ぐことができる。
このとき、嵌合表示片5dは、少なくとも、ハウジング1aが取り付けられる基板Pの実装面に沿った方向、ここではXY平面に沿った方向に第1の位置から第2の位置に変位するのが好ましい。嵌合表示片5dが第1の位置から第2の位置に変位する方向が実装面に沿った方向ではない、すなわち、実装面に対して垂直方向、ここではZ方向であると、嵌合表示片5dは、実装面と対向する方向(Z方向)からの視点で奥行き方向への変位となる。奥行き方向への変位は、深視力が必要となって判別が難しいものとなってしまう。これに対し、本実施形態によれば、嵌合表示片5dが第1の位置から第2の位置に変位する方向が実装面に沿っているので、変位を容易に認識することができる(図3及び図6参照)。
平型導体用コネクタ1は、図2及び図5で示すように、嵌合表示片5dが第1の位置から第2の位置に変位するとき、平面視において、欠落部19に対して進退するように構成されている。
このように、平型導体用コネクタ1では、第1のハウジング6に対する平型導体2の係合が完了した時点で、嵌合表示片5dが、平面視において、欠落部19に対して進退するように変位するので、係合が完了しているか未完了であるかを一見して判別できる。
例えば本実施形態では、図3及び図6で示すように、平型導体用コネクタ1に対する平型導体2の係合が完了である場合に、嵌合表示片5dが欠落部19に進入するように変位している。すなわち、第1の位置は、図3で示すように、Y方向において、第1のハウジング6の前端よりも後方である。このため、嵌合表示片5dは、欠落部19よりもY方向における後方に退避しており、図2で示すように、平面視では死角に入っていて視認できない。他方で、第2の位置は、図6で示すように、Y方向において、第1のハウジング6の前端よりも前方である。そして、嵌合表示片5dは、図5で示すように、平面視で欠落部19の領域に進入している。
本実施形態によれば、基板Pの実装面と対向する方向からの視点において、第1のハウジング6に対する平型導体2の係合が未完了のときに欠落部19から退避している嵌合表示片5dが、係合が完了した時点で進入する。このため、嵌合表示片5dの有無の二択で検査することによって係合が完了しているか未完了であるかを判別できる。したがって、係合が未完了であるにもかかわらず、係合が完了したものと判定されてしまう錯誤をより容易に防ぐことができる。
平型導体2を抜去する際には、可動部材5の操作片部5a2をZ方向における下方に押圧する操作が加えられる。すると、作動部5bの「係合解除部」としての当接部5b2が係止片2eを後方に押し曲げる。これとともに、弾性腕5b3がロック突起14(突出面14b)に対して後方に変位することで、当接部5b2と弾性腕5b3との間に有する挿通路13が変形誘導面14aと傾斜面11bとの間の挿通路13に沿った角度となる。これによって係止片2eがロック突起14と抜け止めされているロック状態が解除される。すなわち、平型導体2は、前述の「係止位置」から係止縁2dが係止面14cに対して抜去方向で係止しない「係止解除位置」まで変位する。この状態で、平型導体2を引き抜くことで、平型導体2を第1のハウジング6から容易に抜去することができる。
ここで例えば、可動部材5にロック突起14と同様のロック突起部を有し、第2の挿入案内面12の下方にロック突起14が存在せず平坦面が形成されている比較例(従来例)に対する平型導体用コネクタ1の優位性について説明する。このような比較例では、平型導体2を抜去方向で引っ張ると係止片2eが金属製のロック突起部と係止して抜け止めされる。しかしながら、ロック突起部が金属製であり、かつ、ロック突起部が平型導体2の板厚方向と交差する配置であるため、係止片2eが破損して平型導体2を再接続できなくなるおそれや、係止片2eが千切れてハウジングの嵌合室内に残るおそれがある。
これに対して本実施形態の平型導体用コネクタ1では、係止片2eの係止対象が樹脂成形体でなる第1のハウジング6のロック突起14であり、ロック突起14はX方向に沿って少なくとも作動部5bの板厚を超える幅を有する。したがって、平型導体用コネクタ1であれば、平型導体2を抜去方向で引っ張っても、係止片2eが破損したり千切れたりするのを抑制することができる。
第2実施形態〔図8、図9〕
以下、本発明の「平型導体用コネクタ」の第2実施形態としての平型導体用コネクタ101について図面を参照しつつ、主に、上述の平型導体用コネクタ1とは構成の異なる部分を説明する。すなわち、平型導体用コネクタ101は、特に記載のない限り、上述の平型導体用コネクタ1と同様の効果を奏することができる。平型導体2については、第1実施形態と同様である。
平型導体用コネクタ101
本実施形態の平型導体用コネクタ101は、ハウジング101aと、ハウジング101aに保持される端子3と、グランド端子4と、可動部材105とを備えている。そして、平型導体用コネクタ101は、図8及び図9で示すように、ハウジング101aとして、第1のハウジング106と、「付設部材」としての第2のハウジング107とを有している。端子3及びグランド端子4については、それぞれ平型導体用コネクタ1と平型導体用コネクタ101とで同様である。
第1のハウジング106
第1のハウジング106は、図8及び図9で示すように、奥壁部106cを有している。奥壁部106cには、X方向における両外端付近に、Y方向に貫通する隙間部106gが、Z方向に沿って第1のハウジング106の下端から中間位置まで伸長している。第1のハウジング106は、これ以外については第1のハウジング6と同様に構成されている。
第2のハウジング107
第2のハウジング107の奥壁部107cには、左右の欠落部119、119が形成されている。左右の欠落部119、119は、それぞれX方向における両外側の付近に配置されている。欠落部119は、図8及び図9で示すように、奥壁部107cの後面からY方向における前方に向かうくぼみがZ方向における上下に突き抜けるようにして直方体状に欠落している。欠落部119は、第2のハウジング107のY方向における中心を軸として欠落部19と対称の位置に形成されている。第2のハウジング107の前壁部107aについては、前壁部7aに形成されている欠落部19を有していても、有していなくても、どちらでもかまわない。第2のハウジング107は、これ以外については第2のハウジング7と同様に構成されている。
可動部材105
可動部材105は、左右の嵌合表示片5d、5dを有しておらず、代わりに左右の嵌合表示片105d、105dを有している。嵌合表示片105dは、第1のハウジング106のY方向における中心を軸として嵌合表示片5dと略対称の位置に形成されている。嵌合表示片105dは、延長片105a4を介して基部5b1とつながっている。延長片105a4は、基部5b1のY方向における後端から後方に伸長して第2のハウジング107の外部に導出された後に、X方向における内側に屈曲している。嵌合表示片105dは、延長片105a4からY方向における後方に伸長した後に、X方向における外側に屈曲しており、平面視でL字状の平板状に形成されている。
左右の嵌合表示片105d、105dは、図8で示すように、外力がかかっていない状態では、Y方向において、第1のハウジング106の後端よりも後方に位置している。この位置は、係止縁2dと係止面14cとの係合が未完了であることを嵌合表示片105dが表示する第1の位置である。嵌合表示片105dは、図8で示すように、第1の位置では欠落部119の直下にあり、平面視で欠落部119の領域に進入している。
他方で、左右の嵌合表示片105d、105dは、図9で示すように、平型導体2が平型導体用コネクタ101と嵌合した際には、Y方向において、第1のハウジング106の後端よりも前方に位置することとなる。この位置は、係止縁2dと係止面14cとの係合が完了したことを嵌合表示片105dが表示する第2の位置である。嵌合表示片105dは、図9で示すように、第2の位置では欠落部119の直下にはなく、平面視で欠落部119の領域から退避している。
本実施形態によれば、基板Pの実装面と対向する方向からの視点において、第1のハウジング106に対する平型導体2の係合が未完了の場合に欠落部119に進入している嵌合表示片105dが、係合が完了した時点で退避する。このため、嵌合表示片105dの有無の二択で検査することによって係合が完了しているか未完了であるかを判別できる。したがって、係合が未完了であるにもかかわらず、係合が完了したものと判定されてしまう錯誤をより容易に防ぐことができる。
本実施形態においては、特に係合が完了している場合にのみ嵌合表示片105dが視認不可能となるように調整することによって、嵌合表示片105dが少しでも見えている間は係合が未完了であると判定することができる。こうすることで、係合が未完了であるか完了しているかの判定の確実性をより高めることができる。
第3実施形態〔図10〜図13〕
以下、本発明の「平型導体用コネクタ」の第3実施形態としての平型導体用コネクタ201について図面を参照しつつ、主に、上述の平型導体用コネクタ1とは構成の異なる部分を説明する。すなわち、平型導体用コネクタ201は、特に記載のない限り、上述の平型導体用コネクタ1と同様の効果を奏することができる。平型導体2については、第1実施形態と同様である。
平型導体用コネクタ201
本実施形態の平型導体用コネクタ201は、ハウジング201aと、ハウジング201aに保持される端子203と、グランド端子204と、可動部材205とを備えている。そして、平型導体用コネクタ201は、ハウジング201aとしては、図8で示すように、「付設部材」としての第2のハウジング7に相当する構成を有さず、第1のハウジング206のみによって構成されている点で平型導体用コネクタ1とは異なる。そして、端子203及びグランド端子204は、基板Pへの取付方向が異なるため、基板接続部203c及び基板固定部204cの形状がそれぞれ異なるものの、それ以外の構成については、端子3及びグランド端子4と同様に構成されている。
第1のハウジング206
第1のハウジング206は、図10で示すように、天壁部206aと、左右の側壁部206bと、底壁部206cと、後壁部206dとを有している。天壁部206a及び底壁部206cは、Z方向における上下にそれぞれ位置し、左右の側壁部206bは、X方向における左右にそれぞれ位置している。後壁部206dは、Y方向における後方に位置している。平型導体用コネクタ201は、ライトアングルタイプであるため、第1のハウジング206は、第1のハウジング6とは向きが異なるものの、双方の構造は類似している。そして、天壁部206a、底壁部206c及び後壁部206dは、それぞれ第1のハウジング6の前壁部6a、奥壁部6c及び底壁部6dに対応する。
天壁部206aは、Y方向における前端付近が欠落しており、底壁部206cの前端付近を露出させている。さらに、天壁部206aには、挿入された平型導体2の係止片2eが位置する付近にZ方向に貫通する嵌合接続確認用の窓孔206eが形成されている。そして、天壁部206aは、操作部材抜け止め部16に相当する構成を有していない。以上の点を除くと、第1のハウジング206は、第1のハウジング6と同様に構成されている。そして、左右の側壁部206b、206b、底壁部206c及び後壁部206dは、それぞれ第1のハウジング6における左右の側壁部6b、6b、奥壁部6c及び底壁部6dと同様に構成されている。
可動部材205
可動部材205は、操作部205aと、「可動部」としての左右の作動部5b、5bと、左右の取付部5c、5cとを有している。可動部材205は、「嵌合表示片」を有するものの、「嵌合表示片」が操作部205aに含まれる点において可動部材5とは異なる。
操作部205aは、図11及び図13で示すように、連結部205a1と、操作片部205a2とを有している。しかしながら、操作部205aは、一対の抜け止め片5a3、5a3に相当する構成を有していない。連結部205a1は、作動部5bの基部5b1から、当接部5b2及び弾性腕5b3が伸長する方向とは反対側(Y方向における後方)に伸長し、X方向における内側に屈曲している。
操作片部205a2は、X方向における左右に伸長する連結部205a1のZ方向における上側の縁から伸長し、Y方向における前方に屈曲している。操作片部205a2は、操作部材収容溝部15のZ方向における上方に間隙を有して配置されている。
操作片部205a2は、図11で示すように、第1のハウジング206に平型導体2が係合していない状態では、前高後低状に傾斜して配置されている。この操作片部205a2の位置は、係止縁2dと係止面14cとの係合が未完了であることを「嵌合表示片」としての操作片部205a2が表示する第1の位置である。「嵌合表示片」としての操作片部205a2は、第1の位置ではY方向における前方において、操作片部205a2の前端部205a5と操作部材収容溝部15の縁部15aとの間に隙が生じている。
他方で、操作片部205a2は、図13で示すように、第1のハウジング206に対する平型導体2の係合が完了した状態では、天壁部206aに沿った状態で配置されている。この操作片部205a2の位置は、係止縁2dと係止面14cとの係合が完了したことを「嵌合表示片」としての操作片部205a2が表示する第2の位置である。「嵌合表示片」としての操作片部205a2は、第1の位置ではY方向における前方において、操作片部205a2の前端部205a5と操作部材収容溝部15の縁部15aとの間に隙が略生じていない。
このように、本実施形態によれば、「嵌合表示片」としての操作片部205a2が第1の位置から第2の位置に変位する方向が実装面に沿っている。すなわち、係合が未完了である場合には操作部材収容溝部15の縁部15aと間に隙を有するように退避している「嵌合表示片」としての操作片部205a2の前端部205a5が、係合が完了した時点で隙を略埋めるように進入している。このため、「嵌合表示片」としての操作片部205a2の変位を容易に認識することができる。よって、本実施形態の平型導体用コネクタ201でも、係合が未完了であるにもかかわらず、係合が完了したものと判定されてしまう錯誤を防ぐことができる。
操作片部205a2は、指でZ方向における下方に押し込むことで可動部材205を操作するように構成されている。これによって、第1実施形態と同様に、平型導体2を第1のハウジング206から容易に抜去することができる。
実施形態の変形例
以上のような平型導体用コネクタ1等については変形実施が可能であるため、その一例を説明する。
前記実施形態では、「ばね部」としての弾性腕5b3、屈曲部5b4及びクランク部5c2が弾性変形可能に構成されている例を示した。しかしながら、本願は、「ばね部」の変形を弾性範囲内に留めることを意図するものではなく、塑性の範囲が含まれていても良い。例えば平型導体用コネクタ1に対する平型導体2の挿入が1回限りの形態の場合には、「ばね部」が塑性変形するように構成されていても良い(第1変形例)。
前記実施形態では、「ばね部」が弾性変形することによって、当接部5b2、弾性腕5b3、嵌合表示片5d等が変位するように構成されている例を示した。しかしながら、可動部材5が「ばね部」を有さないように構成することもできる。例えば屈曲部5b4における取付部5cの側の端が固定されておらず、平型導体2が当接部5b2と当接した際に、屈曲部5b4がその湾曲形状に沿って摺動する構成としても良い(第2変形例)。また、屈曲部5b4における取付部5cの側の端が同様に固定されておらず、平型導体2が当接部5b2と当接した際に、屈曲部5b4を支点として揺動する構成としても良い(第3変形例)。平型導体2が挿入されていないときには、例えば自重で弾性腕5b3の部分が斜めに傾くように構成されていれば良い。