まず図1乃至図4により、本実施の形態によるプラスチックボトル10について説明する。なお、本明細書中、「上」および「下」とは、それぞれプラスチックボトル10を正立させた状態(図1)における上方および下方のことをいう。
図1および図2に示すように、プラスチックボトル10は、口栓部15と、口栓部15下方に設けられたボトル本体11とを備えている。このうち口栓部15は、外ねじ13と、外ねじ13の下方に位置するカブラ16と、カブラ16の下方に位置するサポートリング17とを有している。
口栓部15には、図示しないいたずら防止機能付キャップが装着され、このキャップは開封時に剥離される剥離リングを有している。キャップを取外して開封する場合、キャップの剥離リングが口栓部15のカブラ16に当接して剥離リングがキャップ本体から剥離し、キャップ本体から剥離した剥離リングは環状面18まで落下してこのサポートリング17上に保持される。
また、外ねじ13は、一条ねじであるとともに上方端13aと下方端13bとを有している。この外ねじ13には、プラスチックボトル10の軸線Aに対して平行にベントスロット14が形成されている。ベントスロット14は、プラスチックボトル10内に充填する内容液として炭酸飲料を用いたり、仮に内容液が腐敗して内圧が上昇した場合、開栓時に内部の圧力を逃がし、キャップ飛びを防止する役割を果たす。したがって、内容液として例えば水等を用いる場合には、必ずしもベントスロット14を設けなくても良い。
外ねじ13は、上方端13aから下方端13bまでの所定の巻き角度θ(図2参照)を有している。この巻き角度θは、550°〜850°とすることが好ましく、650°〜780°とすることが更に好ましい。なお、巻き角度θは、平面方向から見て(図2参照)、外ねじ13が上方端13aから下方端13bまで配設された角度をいい、例えば巻き角度θが720°の場合、外ねじ13は口栓部15の周囲を2周することになる。この巻き角度θを550°以上とすることにより、内容液の圧力によってキャップ飛びが生じることを防止することができる。一方、巻き角度θを850°以下とすることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。
なお、外ねじ13が二条ねじである場合、巻き角度θは、それぞれ90°〜300°とすることが好ましく、外ねじ13が三条ねじである場合、各ねじの巻き角度θは、それぞれ70°〜180°とすることが好ましい。
また、外ねじ13のねじ幅wA(図3参照)は、0.5mm〜1.1mmとすることが好ましい。ねじ幅wAを0.5mm以上とすることにより、プリフォーム30(後述)を射出成形する際に、ショート(充填不良)と呼ばれる不具合が発生することを防止することができる。一方、ねじ幅wAを1.1mm以下とすることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。
図3に示すように、カブラ16は、キャップ装着時に剥離リングが乗り越える傾斜面16aを有している。このカブラ16の直径であるカブラ径dAは、25mm〜32mmとすることが好ましい。カブラ径dAを25mm以上とすることにより、プラスチックボトル10の成形ラインおよび充填ラインにおいてプラスチックボトル10を搬送する際、グリッパ(図示せず)からプラスチックボトル10が落下する不具合を防止することができる。一方、カブラ径dAを32mm以下とすることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。
また、カブラ16の幅wBは、1.2mm〜2.0mmとすることが好ましい。カブラ16の幅wBを1.2mm以上とすることにより、キャップ装着時に剥離リングが部分的にカブラ16上に残りキャップが斜めに装着される不具合(斜め被り)を防止することができる。一方、カブラ16の幅wBを2.0mm以下とすることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。
ところで、図3に示すように、口栓部15のカブラ16とサポートリング17との間の外面に、半径方向内方に凹む凹状環状面18が形成されている。凹状環状面18は、口栓部15の全周にわたって形成されており、この凹状環状面18の直径dBはプラスチックボトル10の軸線Aに沿って上下方向に均一となっている。
凹状環状面18の直径dBは、24mm〜27mmとすることが好ましい。凹状環状面18の直径dBを24mm以上とすることにより、プラスチックボトル10の成形ラインおよび充填ラインにおいてプラスチックボトル10を搬送する際、グリッパ(図示せず)からプラスチックボトル10が落下する不具合を防止することができる。一方、凹状環状面18の直径dBを27mm以下とすることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。なお、凹状環状面18の直径dBとカブラ径dAとの間で、dB/dA<1という関係が成り立つ。
さらに、図1および図3に示すように、サポートリング17のうち上面17a(すなわち凹状環状面18側の面)は、段差21を有して多段に形成されている。この場合、サポートリング17は1つの段差21を有して2段に形成されているが、これに限らず、2つ以上の段差21を有していても良い。一方、サポートリング17のうち下面17b(ボトル本体11側の面)は、水平な平坦面からなっている。
また、サポートリング17は、段差21の半径方向(図3の左右方向)外方に位置する外側領域22と、段差21の半径方向内方に位置する内側領域23とを含んでいる。このようにサポートリング17が段差21を有することにより、この段差21の分だけサポートリング17の体積を減らすことができる。このため、段差21が設けられていない場合と比較して、サポートリング17を軽量化することができる。
図4に示すように、サポートリング17の外側領域22の表面22aは傾斜面からなっている。この場合、外側領域22の表面22aとサポートリング17の下面17bとのなす角度をαとしたとき、10°<α<16°とすることが好ましい。角度αが10°を上回ることにより、プリフォーム30を射出成形する際に、サポートリング17の先端まで充分に樹脂を行き渡らせることができ、射出成形性を良好にすることができる。また、角度を設ける事によりつけ根の肉厚が確保でき、サポートリングの強度が向上する。一方、角度αが16°未満であることにより、凹状環状面18の高さが短くなることを防止し、プラスチックボトル10を搬送する際に搬送不良が発生することを防止することができる。
また、サポートリング17の内側領域23の表面23aは傾斜面からなっている。この場合、内側領域23の表面23aとサポートリング17の下面17bとのなす角度をβとしたとき、β>αとなることが好ましい。また、角度βは、20°<β<60°とすることが好ましい。角度βが20°を上回ることにより、射出成形性を良好にすることができる。また、角度を設ける事によりつけ根の肉厚が確保でき、サポートリングの強度が向上する。一方、角度βが60°未満であることにより、凹状環状面18の高さが短くなることを防止し、プラスチックボトル10を搬送する際に搬送不良が発生することを防止することができる。
さらに、図4に示すように、外側領域22の半径方向長さをL1とし、内側領域23の半径方向長さをL2としたとき、1.5<L1/L2<4.0という関係が成り立つことが好ましい。L1/L2の値が1.5を上回ることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。一方、L1/L2の値が4.0未満であることにより、プリフォーム30を射出成形する際に、サポートリング17の先端まで充分に樹脂を行き渡らせることができ、射出成形性を良好にすることができる。
さらにまた、サポートリング17の外端(すなわち外側領域22の外端)における厚みtAは、1.0mm〜1.5mmとすることが好ましい。厚みtAを1.0mm以上とすることにより、プリフォーム30を射出成形する際に、サポートリング17の先端まで充分に樹脂を行き渡らせることができ、射出成形性を良好にすることができる。また、厚みtAを1.5mm以下とすることにより、凹状環状面18の高さが短くなることを防止し、プラスチックボトル10を搬送する際の搬送不良を防止することができる。
ところで、ボトル本体11の形状は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種形状をもっていても良い。例えば、図1において、ボトル本体11は、首部11aと肩部11bと胴部11cと底部11dとを有している。
また、プラスチックボトル10のサイズ(容量)は限定されるものではなく、どのようなサイズのボトルからなっていても良いが、例えば500ml〜600mlとすることができる。
なお、プラスチックボトル10の主材料としては熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)を使用する事が好ましく、植物由来のバイオマス系プラスチック、例えばPLA(ポリ乳酸)を用いる事も可能である。なお、プラスチックボトル10は、過酸化水素、過酢酸を添加して無菌化させることが好ましい。
次に、図5により、本実施の形態によるプリフォーム30について説明する。図5は、図1乃至図4に示すプラスチックボトル10を作製する際に用いられるプリフォーム30を示す図である。
図5に示すように、プリフォーム30は、口栓部15と、口栓部15下方に設けられたプリフォーム本体31とを備えている。このうち口栓部15は、外ねじ13と、外ねじ13の下方に位置するカブラ16と、カブラ16の下方に位置するサポートリング17とを有している。またプリフォーム本体31は、上述したボトル本体11に対応するものであり、略円筒状の胴部31aと、略半球状の底部31bとを有している。なお、プリフォーム本体31は、これに限られるものではなく、従来公知の各種形状を有していても良い。
口栓部15のカブラ16とサポートリング17との間の外面に、凹状環状面18が形成されている。また、サポートリング17のうち凹状環状面18側の面は、段差21を有して多段に形成されている。サポートリング17は、段差21の半径方向外方に位置する外側領域22と、段差の半径方向内方に位置する内側領域23とを含んでいる。
図5において、口栓部15の構成は、図1乃至図4に示すプラスチックボトル10の口栓部15の構成と同一である。図5において、図1乃至図4に示す実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
所定時間の経過後、射出成形金型内で溶融プラスチックが硬化し、プリフォーム30が形成される。その後、射出成形金型を分離し、射出成形金型内から図5に示すプリフォーム30を取り出す。
プリフォーム30は、次にブロー成形機内の加熱装置50において加熱される(図10参照)。このとき、プリフォーム30は、マンドレル51によって口栓部15を下方に向けた状態で搬送され、中心軸を中心に回転しながら、加熱装置50のヒーター52によって周方向に均等に加熱される。なお、符号53は、ヒーター52からの熱をプリフォーム30側に反射させるための反射板、符号54は、ヒーター52からの熱を加熱装置50外方へ逃がさないようにするための遮蔽部材である。なお、マンドレル51やブロー成形機の構造によっては、口栓部15は上方に向けた状態で搬送されても良い。
この間、プリフォーム30は加熱装置50のヒーター52によって例えば80℃〜140℃の温度に加熱される。その後、加熱されたプリフォーム30は、図示しないブロー成形部に送られる。
ブロー成形部に送られたプリフォーム30は、ブロー成形部のブロー成形金型内に挿着される。その後、プリフォーム30内に挿入された延伸ロッドからプリフォーム30内へ高圧エアを供給するとともに、延伸ロッドが伸長することによってプリフォーム30を延伸させ、2軸延伸ブロー成形が行なわれる(ブロー成形工程)。このようなブロー成形によって、図1および図2に示すプラスチックボトル10が得られる。
ところで、ヒーター52によってプリフォーム30が加熱される際、プリフォーム30のうち口栓部15は、延伸されない部分であるため、本来加熱されないことが好ましい。しかしながら、実際には、プリフォーム本体31に近接するサポートリング17がヒーター52により加熱され、サポートリング17に熱変形が生じることが考えられる。
これに対して本実施の形態によれば、図6(a)に示すように、サポートリング17が加熱された場合であっても、段差21が支点(図6(a)の丸印)となり、段差21より外側に位置する外側領域22のみが変形し、内側領域23の変形は抑えられる。このため、サポートリング17の体積を小さくしているにも関わらず、サポートリング17の熱変形を軽減することができる。これにより、サポートリング17に等の不具合が生じることを防止することができる。これに対して、比較例として図6(b)に示すように、サポートリング17に段差21を設けない場合、サポートリング17の付け根部分が支点(図6(b)の丸印)となる。このため、サポートリング17が支点を中心に湾曲し、サポートリング17全体としての熱変形が大きくなってしまう。この場合、ブロー成形機又は搬送ラインで詰まりが発生するおそれがある。
ブロー成形ラインで成形されたプラスチックボトル10は、エア搬送手段またはネック搬送手段により、ブロー成形部から図示しない充填機内に搬送される。その後、充填機内でプラスチックボトル10内に内容液を充填し、次いで、キャッパーを用いて、プラスチックボトル10にキャップが装着される。この際、プラスチックボトル10はサポートリング17の下面17bにおいて支持され、キャップが口栓部15を覆うようにして装着される。このとき、キャップの剥離リングは、カブラ16を乗り越え、サポートリング17の上面17aに当接して停止する。剥離リングがサポートリング17の上面17aに当接した際、サポートリング17に対して上方から下方に向けて力が加わるため、サポートリング17に変形が生じるおそれがある。
これに対して本実施の形態によれば、図7(a)に示すように、サポートリング17に対して上方から下方に向けて(矢印参照)力が加わった場合であっても、段差21が支点(図7(a)の丸印)となり、段差21より外側に位置する外側領域22のみが変形し、内側領域23の変形は抑えられる。このため、サポートリング17の体積を小さくしているにも関わらず、サポートリング17の変形を軽減することができる。これにより、サポートリング17に割れ等の不具合が生じることを防止することができる。これに対して、比較例として図7(b)に示すように、サポートリング17に段差21を設けない場合、サポートリング17の付け根部分が支点(図7(b)の丸印)となる。このため、サポートリング17が支点を中心に湾曲し、サポートリング17全体としての変形が大きくなってしまう。この場合、サポートリング17に割れが生じる要因になるおそれがある。
このように本実施の形態によれば、サポートリング17の上面17aは、段差21を有して多段に形成され、サポートリング17は、段差21の半径方向外方に位置する外側領域22と、段差21の半径方向内方に位置する内側領域23とを含んでいる。このためサポートリング17の厚みを薄くすることができ、プラスチックボトル10およびプリフォーム30全体の軽量化を図ることができる。この場合、プラスチックボトル10の成形ラインおよび充填ラインにおいて、既設のグリッパおよび既設のキャップをそのまま用いることができるので、グリッパおよびキャップの形状を変更する必要が生じない。
図8および図9に示すように、凹状環状面18に、半径方向内方へ凹む環状溝26が形成されていても良い。この凹状環状面18は、搬送時にグリッパによって挟持される部分である挟持部25と、挟持部25より直径が小さい環状溝26とを有している。すなわち、挟持部25と環状溝26とは、互いに直径の異なる円形状断面をそれぞれ有している。なお、環状溝26は、凹状環状面18の周方向全域にわたり形成されている。
このように、凹状環状面18に環状溝26を設けたことにより、口栓部15の体積をより小さくすることができ、プラスチックボトル10およびプリフォーム30全体の軽量化を図ることができる。
なお、図8および図9に示す形態は、凹状環状面18の形状を除き、上述した実施の形態と略同一である。図8および図9において、図1乃至図7に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
次に、本実施の形態の具体的実施例について説明する。
まず、以下に挙げる6種類のプラスチックボトル(実施例1〜5および比較例1)を作製した。
(実施例1)
図5に示す本実施の形態によるプリフォーム30を射出成形により作製し、このプリフォーム30をブロー成形することにより、図1乃至図4に示すプラスチックボトル10(実施例1)を得た。このプラスチックボトル10(実施例1)において、サポートリング17の外側領域22の表面22aとサポートリング17の下面17bとのなす角度αを14°とした。また、外側領域22の半径方向長さL1の、内側領域23の半径方向長さL2に対する比(L1/L2)を3.10とした。プラスチックボトル10(実施例1)の重量は、18gであった。
(実施例2)
角度αを8°としたこと、以外は実施例1と同様にして、プラスチックボトル10(実施例2)を作製した。
(実施例3)
角度αを18°としたこと、以外は実施例1と同様にして、プラスチックボトル10(実施例3)を作製した。
(実施例4)
L1/L2の値を1.30としたこと、重量が19gであったこと、以外は実施例1と同様にして、プラスチックボトル10(実施例4)を作製した。
(実施例5)
L1/L2の値を4.50としたこと、以外は実施例1と同様にして、プラスチックボトル10(実施例5)を作製した。
(比較例1)
サポートリング17の上面17aに段差21が形成されていないこと、以外は実施例1と同様にして、プラスチックボトル(比較例1)を作製した。なお、プラスチックボトル(比較例1)の重量は、18gであった。
ここで上記6種類のプラスチックボトル(実施例1〜5および比較例1)をそれぞれ1万本ずつ作製した。次に、各プラスチックボトルにそれぞれ緑茶を充填し、その後、キャッパーを用いて各プラスチックボトルを閉栓した。
実施例1〜5および比較例1のそれぞれについて、プリフォームの射出成形性について評価した。また、プラスチックボトルの成形ラインおよび充填ラインにおいて、サポートリングが変形してプラスチックボトルに詰まりが生じたか否かを調査した。さらに、閉栓されたプラスチックボトルのうち、サポートリングに割れが生じたものの割合を算出した。
この結果、実施例1、4のプラスチックボトル10については、射出成形性が良好であり、成形ラインおよび充填ラインでプラスチックボトルの詰まりが発生することがなく、しかもサポートリングに割れが生じたものは存在しなかった。
また、実施例2、5のプラスチックボトル10については、射出成形性が良好であり、成形ラインおよび充填ラインでプラスチックボトルの詰まりが発生することがなかったが、それぞれ4%、3%のものにサポートリングの割れが発生した。
また、実施例3のプラスチックボトル10については、射出成形性が良好であり、サポートリングに割れが生じたものは存在しなかったが、成形ラインおよび充填ラインでプラスチックボトルの詰まりが発生した。
一方、比較例1のプラスチックボトルについては、射出成形性が良好であったが、成形ラインおよび充填ラインでプラスチックボトルの詰まりが発生した。また、その17%のものにサポートリングの割れが発生した。
以上の結果をまとめて表1に示す。表1において、評価基準「◎」は「優(excellent)」を示し、評価基準「○」は「良(good)」を示し、評価基準「×」は「不可(poor)」を示す。
次に図11により、本発明のプラスチックボトル成形用プリフォーム30の形状について述べる。
プリフォーム30は、口栓部15と、サポートリング17と、胴部31a及び底部31bを有するプリフォーム本体31とを有し、樹脂重量が17.7g〜19.9gであり、サポートリング17の下方に長さ3〜7.5mmの最小肉厚部31cが形成され、更に胴部31aの肉厚を最小肉厚部31cより厚くし、且つ底部31bはゲート部31dの方向に向けて徐々に肉厚が薄くなっている。
最小肉厚部31cは、長さ3〜7.5mmに形成することが望ましい。
最小肉厚部31cの長さが3mmよりも小さいときは、最小肉厚部31cの十分な延伸性が得られず、プリフォーム30の最大肉厚部が延伸されやすくなり、肉薄のボトル胴部が形成されてしまう。
一方、最小肉厚部31cの長さが7.5mmよりも大きいときは、ボトル肩部が薄くなる。
底部31bの下方のゲート部の肉厚は、通常用いられている容量600ml以下のプラスチックボトル成形用プリフォームの場合、最小肉厚部31cの肉厚の1.11〜1.19倍となることが望ましい。
ゲート部の肉厚が、1.11倍より薄い場合、射出成形時に、樹脂の流れが悪くなり、賦型不良等の不具合が生じる可能性が高い。
また、ゲート部の肉厚が1.19倍より厚い場合、胴部の肉厚との差がより小さくなり、プリフォームのゲート部が延伸されにくくなり、肉薄のボトル胴部が形成されてしまう。
胴部31aの肉厚は、通常用いられている容量600ml以下のプラスチックボトル成形用プリフォームの場合、最小肉厚部31cの肉厚の1.19〜1.9倍となることが望ましい。
1.19倍より薄いときは、サポートリング下方の最小肉厚部31cの十分な遠心性が得られず、プリフォームの最大肉薄部が延伸されやすくなり、著しく肉薄のボトル胴部が形成されてしまう。
1.9倍より厚いときは、ブロー成形の予備加熱の際、プリフォームの内面と外面の温度差が生じ易く、プリフォームの内面の温度が低いことからボトル物性及び外観に悪影響を及ぼす。
プリフォーム30のサポートリング17下の長さは、59.0〜63.0mmとすることが望ましい。
容量600ml以下のプラスチックボトルの一般的な胴径は約66mmであることを考慮して、抜きテーパ開始位置31eの外径は、22.5〜22.6mmとすることが望ましい。
また、プリフォーム搬送時に、プリフォーム同士が重なり動かなくなることを防止するため、抜きテーパ開始位置31eの外径は、プリフォーム30の口栓部15内径に対し、0.4mm以上大きいことが必要となる。
抜きテーパの角度は、射出成形金型からのボトルの取り出しの際に必要となり、0.2〜0.5°とすることが望ましい。
サポートリング17下から抜きテーパ開始位置31eまでの長さは、プラスチックボトルの肩部に相当するように決定することが望ましい。
したがって、サポートリング下から抜きテーパ開始位置までの長さは、12.0〜14.5mmとすることが望ましい。
本発明において、プリフォームの全長は85.0mmとし、胴径は22.2mm、または全長80.0mmとし、胴径は22.2mmとすることが望ましい。
図11に示すプリフォームは、樹脂重量19.9g、全長85mm、500ml(または樹脂重量17.7g、全長80mm、500ml)のプラスチックボトル成形用のプリフォームの例を示す。以下、樹脂重量19.9gのプリフォーム30の各値を示すとともに、かっこ内に樹脂重量17.7gのプリフォームの各値を示す。。図11において、1aは、サポートリング17の下方の最小肉厚部31cの長さ=3mm(3mm)を示し、1bは、サポートリング17の下方の最小肉厚部31cの厚さ=2.1mm(21.1mm)を示し、1cは、サポートリング17から抜きテーパ開始位置31eまでの長さ=14.5mm(12mm)を示し、1dは、胴部31aの厚さを示す。
1eは、プリフォームの全長=85.0mm(80.0mm)、1fは、プリフォームの胴部31aの外径=22.2mm(22.2mm)、1gは、ゲート部の肉厚を示す。
1hはプリフォームの先端からサポートリング17下までの長さ=21.01mm(21.01mm)を示す。
1iは、サポートリング下の長さを示す。
本発明のプラスチックボトル成形用プリフォーム1において、サポートリング17下方の最小肉厚部31cの長さを3〜7.5mmとし、底部31bをゲート部31dのほうに向けて徐々に肉厚を薄くしたことにより、サポートリング17下方の最小肉厚部31cの延伸性が向上し、ボトル胴部の肉厚を厚く成形することができ、ボトルの物性を向上させることができる。また、サポートリング17下方の最小肉厚部31cの長さを3〜7.5mmとしたことにより、ボトルの肩部の肉厚もボトル物性に影響を及ぼさない範囲にとどめることができる。
本発明のプラスチックボトル成形用プリフォーム1を構成する熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、又はこれらの共重合体等の熱可塑性ポリエステル、これらの樹脂或いは他の樹脂とのブレンド物が好適であり、特にポリエチレンテレフタレート等のエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルを好適に使用することができる。
又、アクリロニトリル樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等も使用することができる。
前記した樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で、種々の添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤等を配合することができる。
プリフォーム30を構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂として、エステル反復部分の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであって、ガラス転移点(Tg)が50〜90℃であり、融点(Tm)が200〜275℃の範囲にあるものが好適である。
又、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているが、エチレンテレフタレート単位以外にイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸とプロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
又、プリフォーム30は、二層以上の熱可塑性ポリエステル層により構成することもできる。
さらにプリフォーム30は、二層以上の熱可塑性ポリエステル層により構成する場合、層間にバリア層や酸素吸収層等の中間層を備えることができる。
酸素吸収層としては、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒の組合せ、或いは実質的に酸化しないガスバリア性樹脂等を含む層を使用することができる。
次に本発明のプリフォーム30を用いてプラスチックボトルを成形する工程について説明する。
先ず140〜150℃に加熱した金型に本発明のプリフォーム30をセットし、プリフォーム1を延伸ロッドで上方に延伸させながらプリフォーム内にブロー口からエアブローする。
その後、金型にてヒートセットするために数秒間保持し、成形したものの中にエアを吹き込み冷却し、同時にブロー口から排気される。
次いで金型を開き製品を取り出す。このようにして、プラスチックボトルを成形することができる。
<第2の実施の形態>
以下、図面を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。
まず図12乃至図17により、本実施の形態によるプラスチックボトル10について説明する。なお、本明細書中、「上」および「下」とは、それぞれプラスチックボトル10を正立させた状態(図12)における上方および下方のことをいう。
図12および図13に示すように、プラスチックボトル10は、口栓部15と、口栓部15下方に設けられたボトル本体11とを備えている。このうち口栓部15は、外ねじ13と、外ねじ13の下方に位置するカブラ16と、カブラ16の下方に位置するサポートリング17とを有している。カブラ16とサポートリング17との間の外面には、半径方向内方に凹む凹状環状面18が形成されている。
口栓部15には、いたずら防止機能付キャップ60(図17参照)が装着され、このキャップ60は開封時に剥離される剥離リング70を有している。キャップ60を取外して開封する場合、キャップ60の剥離リング70が口栓部15のカブラ16に当接して剥離リング70がキャップ本体61から剥離し、キャップ本体61から剥離した剥離リング70は、凹状環状面18まで落下してサポートリング17上に保持される。なお、キャップ60の構成については、後述する。
また、口栓部15は、全体として略円筒状であり、一端に開口栓部19を有し、他端がボトル本体11に連設されている。口栓部15は、開口栓部19側の端面である天面15aと、この天面15aから口栓部15の径方向外側であってボトル本体11側に延びる外周面15bと、この天面15aから口栓部15の径方向内側であってボトル本体11側に延びる内周面15cとを有している。なお天面15aは、平坦面である。
口栓部15の外周面15bには、外ねじ13が設けられている。外ねじ13は、一条ねじが好ましいが二条、三条ねじでも良く、上方端13aと下方端13bとを有している。この外ねじ13には、プラスチックボトル10の軸線Aに対して平行にベントスロット14が形成されている。ベントスロット14は、プラスチックボトル10内に充填する内容液として炭酸飲料を用いたり、仮に内容液が腐敗して内圧が上昇した場合、開栓時に内部の圧力を逃がし、キャップ飛びを防止する役割を果たす。したがって、内容液として炭酸を含まないもの、例えば水等を用いる場合には、必ずしもベントスロット14を設けなくても良い。
外ねじ13は、上方端13aから下方端13bまでの所定の巻き角度θ(図13参照)を有している。この巻き角度θは、550°〜800°とすることが好ましく、650°〜750°とすることが更に好ましい。なお、巻き角度θは、平面方向から見て(図13参照)、外ねじ13が上方端13aから下方端13bまで配設された角度をいい、例えば巻き角度θが720°の場合、外ねじ13は口栓部15の周囲を2周することになる。この巻き角度θを550°以上とすることにより、内容液の圧力によってキャップ飛びが生じることを防止することができる。一方、巻き角度θを800°以下とすることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。
図14に示すように、外ねじ13の外径(ねじ山径d1)は、例えば26mm〜28mmとすることが好ましく、とりわけ27.43mm±0.13mmとした場合、一般に流通している既存のキャップを口栓部15の密閉に用いることができる。また外ねじ13の内径(ねじ谷径d2)、すなわち外周面15bの直径は、例えば23mm〜25mmとすることが好ましい。さらに口栓部15の内周面15cの直径(口内径d3)は、例えば21mm〜23mmとすることが好ましい。
この場合、ねじ山径d1とねじ谷径d2との間で、1.125≦d1/d2≦1.165という関係が成立することが好ましい。上記値d1/d2を1.125以上とすることにより、既存のキャップ60の形状を変更することなく、すなわちねじ山径d1の大きさを、一般に流通している既存のキャップを取り付け可能な大きさに維持しつつ、ねじ谷径d2の大きさを小さくすることができるので、口栓部15の軽量化を図ることができる。一方、上記値d1/d2を1.165以下とすることにより、プリフォーム30(後述)を射出成形する際の射出成形性を良好にすることができる。また、上記値d1/d2を1.165以下とすることにより、口栓部15の強度が低下することを防止できるので、プラスチックボトル10をブロー成形する際、図示しない加熱装置によって口栓部15が加熱されたとき、熱によって口栓部15が変形する不具合を防止することができる。さらに、上記値d1/d2を1.165以下とすることにより、キャップ60と口栓部15の外ねじ13との間に隙間が生じることがなく、キャップ60の密閉性を保持することができる。
また、外ねじ13のねじ幅wAは、0.5mm〜1.0mmとすることが好ましい。ねじ幅wAを0.5mm以上とすることにより、プリフォーム30(後述)を射出成形する際に、ショート(充填不良)と呼ばれる不具合が発生することを防止することができる。
一方、ねじ幅wAを1.0mm以下とすることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。
ところで、口栓部15は、上述したように、上方部のカブラ16と下方部のサポートリング17とを有している。
カブラ16は、キャップ60の装着時に剥離リング70が乗り越える傾斜面16aを有している。このカブラ16の直径であるカブラ径dAは、25mm〜32mmとすることが好ましい。カブラ径dAを25mm以上とすることにより、プラスチックボトル10の成形ラインおよび充填ラインにおいてプラスチックボトル10を搬送する際、グリッパ(図示せず)からプラスチックボトル10が落下する不具合を防止することができる。一方、カブラ径dAを32mm以下とすることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。
また、カブラ16の幅wBは、1.2mm〜2.0mmとすることが好ましい。カブラ16の幅wBを1.2mm以上とすることにより、キャップ60の装着時に剥離リング70が部分的にカブラ16上に残りキャップ60が斜めに装着される不具合(斜め被り)を防止することができる。一方、カブラ16の幅wBを2.0mm以下とすることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。
一方、凹状環状面18は、口栓部15の全周にわたって形成されており、この凹状環状面18の直径dBは、プラスチックボトル10の軸線Aに沿って上下方向に均一となっている。
凹状環状面18の直径dBは、24mm〜27mmとすることが好ましい。凹状環状面18の直径dBを24mm以上とすることにより、プラスチックボトル10の成形ラインおよび充填ラインにおいてプラスチックボトル10を搬送する際、グリッパ(図示せず)からプラスチックボトル10が落下する不具合を防止することができる。一方、凹状環状面18の直径dBを27mm以下とすることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。なお、凹状環状面18の直径dBとカブラ径dAとの間で、dB/dA<1という関係が成り立つ。
さらに、図12および図14に示すように、サポートリング17のうち上面17a(すなわち凹状環状面18側の面)は、段差21を有して多段に形成されている。この場合、サポートリング17は1つの段差21を有して2段に形成されているが、これに限らず、2つ以上の段差21を有していても良い。一方、サポートリング17のうち下面17b(ボトル本体11側の面)は、水平な平坦面からなっている。
また、サポートリング17は、段差21の半径方向(図14の左右方向)外方に位置する外側領域22と、段差21の半径方向内方に位置する内側領域23とを含んでいる。このようにサポートリング17が段差21を有することにより、この段差21の分だけサポートリング17の体積を減らすことができる。このため、段差21が設けられていない場合と比較して、サポートリング17を軽量化することができる。
図15に示すように、サポートリング17の外側領域22の表面22aは傾斜面からなっている。この場合、外側領域22の表面22aとサポートリング17の下面17bとのなす角度をαとしたとき、10°<α<16°とすることが好ましい。角度αが10°を上回ることにより、プリフォーム30を射出成形する際に、サポートリング17の先端まで充分に樹脂を行き渡らせることができ、射出成形性を良好にすることができる。また、角度を設ける事によりつけ根の肉厚が確保でき、サポートリングの強度が向上する。一方、角度αが16°未満であることにより、凹状環状面18の高さが短くなることを防止し、プラスチックボトル10を搬送する際に搬送不良が発生することを防止することができる。
また、サポートリング17の内側領域23の表面23aは傾斜面からなっている。この場合、内側領域23の表面23aとサポートリング17の下面17bとのなす角度をβとしたとき、β>αとなることが好ましい。また、角度βは、20°<β<60°とすることが好ましい。角度βが20°を上回ることにより、射出成形性を良好にすることができる。また、角度を設ける事によりつけ根の肉厚が確保でき、サポートリングの強度が向上する。一方、角度βが60°未満であることにより、凹状環状面18の高さが短くなることを防止し、プラスチックボトル10を搬送する際に搬送不良が発生することを防止することができる。
さらに、図15に示すように、外側領域22の半径方向長さをL1とし、内側領域23の半径方向長さをL2としたとき、1.5<L1/L2<4.0という関係が成り立つことが好ましい。L1/L2の値が1.5を上回ることにより、プラスチックボトル10の重量が増加することを防止することができる。一方、L1/L2の値が4.0未満であることにより、プリフォーム30を射出成形する際に、サポートリング17の先端まで充分に樹脂を行き渡らせることができ、射出成形性を良好にすることができる。
さらにまた、サポートリング17の外端(すなわち外側領域22の外端)における厚みtAは、1.0mm〜1.5mmとすることが好ましい。厚みtAを1.0mm以上とすることにより、プリフォーム30を射出成形する際に、サポートリング17の先端まで充分に樹脂を行き渡らせることができ、射出成形性を良好にすることができる。また、厚みtAを1.5mm以下とすることにより、凹状環状面18の高さが短くなることを防止し、プラスチックボトル10を搬送する際の搬送不良を防止することができる。
なお、図14において、口栓部15の天面15aとサポートリング17の下面17bとの距離h1は、例えば20mm〜22mmであり、口栓部15の天面15aとサポートリング17の段差21上端との距離h2は、例えば18mm〜20mmであり、口栓部15の天面15aとカブラ16の下面との距離h3は、例えば13mm〜15mmである。
図16は、口栓部15の上端部近傍を示す拡大断面図である。図16に示すように、天面15aと内周面15cとの接合部の稜線には、面取り部15dが形成されている。このように、天面15aと内周面15cとの接合部の稜線に面取り部15dを形成したことにより、口栓部15の軽量化を図ることができ、且つ口栓部15の天面15aと内周面15cとの接合部近傍(面取り部15dを設けた箇所近傍)における打痕などの傷を低減することが出来る。
さらに、面取り部15dの天面15a側の端部15e(面取り部15dと天面15aとの接合部の稜線)と、面取り部15dの内周面15c側の端部15f(面取り部15dと内周面15cとの接合部の稜線)には、それぞれR取り部が形成されている。なお、このR取り部の大きさは、半径0.2mm〜0.4mmが好ましい。このR取り部を形成しない場合、面取り部15dと天面15aとの接合部の稜線と、面取り部15dと内周面15cとの接合部の稜線はエッジとなる。口栓部15に後述するキャップ60を螺合する際、キャップ60のインナーリング65やコンタクトリング66がこのエッジと当接する。このエッジとの当接によって、キャップ60のインナーリング65やコンタクトリング66に傷が発生する場合がある。したがって、上述のように、端部15e、15fには、それぞれR取り部を形成することが望ましい。
ここで、天面15aに対する面取り部15dの角度γは、20°〜60°であることが好ましい。面取り部15dの角度γが20°未満または60°を超える場合、後述する、口栓部15の天面15aと内周面15cとの接合部近傍(面取り部15dを設けた箇所近傍)における打痕などの傷を低減することが難しくなるおそれがある。
また、面取り部15dの径方向の幅w1と面取り部15dの高さ方向の幅w2は、それぞれ0,15mm〜0.45mmであること好ましい。面取り部15dの幅w1または幅w2が0.15mm未満の場合、面取り部15dが小さいため、後述する、口栓部15の天面15aと内周面15cとの接合部近傍(面取り部15dを設けた箇所近傍)における打痕などの傷を低減することができない。また、面取り部15dの幅w1または幅w2が0.45mmを超える場合、面取り部15dが大きいため、後述するキャップ60による口栓部15の密閉やキャッピングが適切に行えない場合がある。
なお、外周面15bの上端には、側方に突出する円環状の環状突出部27が形成されている。
図17は、口栓部15にねじ込み式のキャップ60を螺合した状態を示している。図17に示すように、口栓部15は、キャップ60が螺合されることで密閉される。キャップ60は、キャップ本体61と剥離リング70とから構成される。キャップ本体61は、円板状の上部62と、上部62の周縁から垂下される円筒状の胴部63とからなる。胴部63の内周面には、口栓部15の外ねじ13と螺合する内ねじ64が形成されている。上部62には、インナーリング65と、コンタクトリング66と、アウターリング67とが形成されている。
インナーリング65、コンタクトリング66、アウターリング67は、上部62の内面から垂下される環状の突起である。インナーリング65の外周面には、キャップ60の外方に向かって突出する突出部が形成されている。このインナーリング65の突出部は、口栓部15の内周面15cと接触する。コンタクトリング66の下方先端部は、口栓部15の天面15aと接触する。アウターリング67の内周面には、キャップ60の内方に向かって突出する突出部が形成されている。このアウターリング67の突出部は、口栓部15の環状突出部27と接触する。
剥離リング70はリング状である。剥離リング70の内周面には、内方かつ上方に向かって突出する複数のフラップ71が形成されている。キャップ本体61と剥離リング70とは、キャップ60の初期開栓時に破断可能な連結部材72を介して連結している。
初期密閉時において、フラップ71は、カブラ16とサポートリング17との間に配置されている。キャップ60を開封方向に回動させると、フラップ71の上端がカブラ16に当接し、剥離リング70の移動が阻止される。さらに、キャップ60を回動させると、連結部材72が破断し、キャップ本体61と剥離リング70とが切り離される。そして、剥離リング70は、カブラ16とサポートリング17との間に保持されるとともに、キャップ本体61を口栓部15から取り外すことができる。
ところで、ボトル本体11の形状は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種形状をもっていても良い。例えば、図12において、ボトル本体11は、首部11aと肩部11bと胴部11cと底部11dとを有している。なお、プラスチックボトル10内に充填する内容液として炭酸飲料を用いる場合、底部11dはペタロイド形状を有していても良い。
また、プラスチックボトル10のサイズ(容量)は限定されるものではなく、どのようなサイズのボトルからなっていても良いが、例えば500ml〜600mlとすることができる。
なお、プラスチックボトル10の主材料としては熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)を使用する事が好ましく、植物由来のバイオマス系プラスチック、例えばPLA(ポリ乳酸)を用いる事も可能である。なお、プラスチックボトル10は、過酸化水素、過酢酸を添加して無菌化させることが好ましい。
次に、図18により、本実施の形態によるプリフォーム30について説明する。図18は、図12乃至図17に示すプラスチックボトル10を作製する際に用いられるプリフォーム30を示す図である。
図18に示すように、プリフォーム30は、口栓部15と、口栓部15下方に設けられたプリフォーム本体31とを備えている。このうち口栓部15は、外ねじ13と、外ねじ13の下方に位置するカブラ16と、カブラ16の下方に位置するサポートリング17と、カブラ16とサポートリング17との間の外面に形成された凹状環状面18とを有している。またプリフォーム本体31は、上述したボトル本体11に対応するものであり、略円筒状の胴部31aと、略半球状の底部31bと、最小肉厚部31cと、底部31bの中央部に位置するゲート部31dとを有している。なお、プリフォーム本体31は、これに限られるものではなく、従来公知の各種形状を有していても良い。
上述したように、口栓部15において、天面15aと内周面15cとの接合部の稜線には、面取り部15dが形成されている。そして、口栓部15の開口栓部19に、他のプリフォーム30の底部31bが挿入される場合、この底部31bの外周面と面取り部15dとが衝突する。また、口栓部15の開口栓部19に、他のプリフォーム30の口栓部15が挿入される場合は、この口栓部15の外周面15bと面取り部15dとが衝突する。この時、衝突部位が面取り部15dであるため、口栓部15の天面15aおよび内周面15cの傷の発生を低減することができる。そして、口栓部15の傷の発生が低減することで、キャップ60の螺合時における、インナーリング65やコンタクトリング66への傷の発生を低減することができる。そして、キャップ60による口栓部15の密閉性を向上することができる。
図18において、口栓部15の構成は、図12乃至図17に示すプラスチックボトル10の口栓部15の構成と同一である。図18において、図12乃至図17に示す実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
まず、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂製ペレットを図示しない射出成形機に投入し、このペレットが射出成形機によって加熱溶融および加圧される。その後ペレットは溶融プラスチックとなって、プリフォーム30(図18参照)に対応する内部形状を有する射出成形金型内に射出される。
所定時間の経過後、射出成形金型内で溶融プラスチックが硬化し、プリフォーム30が形成される。その後、射出成形金型を分離し、射出成形金型内から図18に示すプリフォーム30を取り出す。
プリフォーム30は、次にブロー成形機内の図示しない加熱装置において加熱される。このとき、プリフォーム30は、加熱装置内で搬送され、中心軸を中心に回転しながら、ヒーターによって周方向に均等に加熱される。この間、プリフォーム30は、例えば80℃〜140℃の温度に加熱される。その後、加熱されたプリフォーム30は、図示しないブロー成形部に送られる。
ブロー成形部に送られたプリフォーム30は、ブロー成形部のブロー成形金型内に挿着される。その後、プリフォーム30内に挿入された延伸ロッドからプリフォーム30内へ高圧エアを供給するとともに、延伸ロッドが伸長することによってプリフォーム30を延伸させ、2軸延伸ブロー成形が行なわれる(ブロー成形工程)。このようなブロー成形によって、図12および図13に示すプラスチックボトル10が得られる。
ブロー成形ラインで成形されたプラスチックボトル10は、エア搬送手段またはネック搬送手段により、ブロー成形部から図示しない充填機内に搬送される。その後、充填機内でプラスチックボトル10内に内容液を充填し、次いで、キャッパーを用いて、プラスチックボトル10にキャップ60が装着される。この際、プラスチックボトル10はサポートリング17の下面17bにおいて支持され、キャップが口栓部15を覆うようにして装着される。このとき、キャップ60の剥離リング70は、カブラ16を乗り越え、サポートリング17の上面17aに当接して停止する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、外ねじ13の上方端から下方端までの巻き角度を550°〜800°としている。これにより、既設のキャップ60の形状を変更することなく、口栓部15の一部(外ねじ13)の容積を小さくすることができ、プラスチックボトル10およびプリフォーム30全体の軽量化を図ることができる。
また、本実施の形態によれば、ねじ山径d1とねじ谷径d2との間で、1.125≦d1/d2≦1.165という関係が成立している。これにより、既設のキャップ60の形状を変更することなく、口栓部15の一部(外ねじ13)の容積を小さくすることができ、プラスチックボトル10およびプリフォーム30全体の軽量化を図ることができる。
<変形例>
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
上述した実施の形態において、凹状環状面18は、上下方向(軸線A方向)に沿って均一な直径を有しているが、これに限られるものではない。
図19および図20に示すように、凹状環状面18に、半径方向内方へ凹む環状溝26が形成されていても良い。この凹状環状面18は、搬送時にグリッパによって挟持される部分である挟持部25と、挟持部25より直径が小さい環状溝26とを有している。すなわち、挟持部25と環状溝26とは、互いに直径の異なる円形状断面をそれぞれ有している。なお、環状溝26は、凹状環状面18の周方向全域にわたり形成されている。
このように、凹状環状面18に環状溝26を設けたことにより、口栓部15の体積をより小さくすることができ、プラスチックボトル10およびプリフォーム30全体の軽量化を図ることができる。
なお、図19および図20に示す形態は、凹状環状面18の形状を除き、上述した実施の形態と略同一である。図19および図20において、図12乃至図18に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
(実施例)
次に、本実施の形態の具体的実施例について説明する。
まず、以下に挙げる3種類のプラスチックボトル(実施例1および比較例1〜2)を作製した。
(実施例1)
図18に示す本実施の形態によるプリフォーム30を射出成形により作製し、このプリフォーム30をブロー成形することにより、図12乃至図17に示すプラスチックボトル10(実施例1)を得た。このプラスチックボトル10(実施例1)において、外ねじ13の上方端13aから下方端13bまでの巻き角度θを700°とした。また、ねじ山径d1の、ねじ谷径d2に対する比(d1/d2)を1.135とした。プラスチックボトル10(実施例1)の口栓部の重量は、4.2gであった。
(比較例1)
外ねじ13の巻き角度θを500°としたこと、以外は実施例1と同様にして、プラスチックボトル(比較例1)を作製した。口栓部の重量は、3.5gであった。
(比較例2)
外ねじ13の巻き角度θを800°としたこと、以外は実施例1と同様にして、プラスチックボトル(比較例2)を作製した。口栓部の重量は、5.0gであった。
ここで上記3種類のプラスチックボトル(実施例1および比較例1〜2)をそれぞれ1万本ずつ作製した。次に、各プラスチックボトルにそれぞれ炭酸飲料を充填し、その後、キャッパーを用いて各プラスチックボトルを閉栓した。
実施例1および比較例1〜2のそれぞれについて、軽量化効果が得られたか否か、およびプリフォームの射出成形性について評価した。
また、キャップ密封性確認試験(漏れ試験)及びキャップ飛び試験を実施し、それぞれキャップ密封性に欠けるボトルの割合及びキャップ飛びが生じたボトルの割合を算出した。このうち、キャップ密封性確認試験(漏れ試験)においては、密栓したプラスチックボトルを水中に浸漬し、キャップ天面から0.7MPaの空気を注入した際、水中に泡が生じたか否かを確認した。また、キャップ飛び試験においては、ボトルを急開栓したとき、キャップ飛びが生じたか否かを確認した。
この結果、実施例1のプラスチックボトル10については、軽量化効果およびプリフォームの射出成形性がともに良好であり、キャップ密封性確認試験で漏れが生じるものは存在せず、しかもキャップ飛び試験でキャップ飛びが生じたものも存在しなかった。
一方、比較例1のプラスチックボトルについては、軽量化効果に優れ、プリフォームの射出成形性が良好であり、キャップ密封性確認試験で漏れが生じるものは存在しなかったが、キャップ飛び試験で一部のものにキャップ飛びが発生した。
また、比較例2のプラスチックボトルについては、プリフォームの射出成形性が良好であり、キャップ密封性確認試験で漏れが生じるものは存在せず、キャップ飛び試験でキャップ飛びが生じたものも存在しなかったが、軽量化効果が得られなかった。
以上の結果をまとめて表2に示す。表2において、評価基準「◎」は「優(excellent)」を示し、評価基準「○」は「良(good)」を示し、評価基準「×」は「不可(poor)」を示す。
<変形例>
次に図21乃至図23により本実施の形態の変形例について説明する。
本変形例は、面取り部15dを有する口栓部15の構造を更に説明したものであり、図12乃至図20に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図21に示すように、キャップ60を口栓部15に螺合した際、口栓部15の内周面15cは、接触部C1でインナーリング65の外周面の突起部と接触する。つまり、接触部C1は、口栓部15の内周面15cのインナーリング65との接触部である。
口栓部15の天面15aは、接触部C2でコンタクトリング66の下方先端部と接触する。つまり、接触部C2は、口栓部15の天面15aのコンタクトリング66との接触部である。
口栓部15の外周面15bは、接触部C3でアウターリング67の内周面の突出部と接触する。つまり、接触部C3は、口栓部15の外周面15bのアウターリング67との接触部である。
そして、口栓部15とキャップ60との接触部であるこれら3つの接触部C1,C2,C3によって、口栓部15が密閉される。
ここで、内周面15cの接触部C1と、面取り部15dの内周面15c側の端部15fとの距離L1は、1.5mm以上かつ3.0mm以下であること好ましい。また、天面15aの接触部C2と、面取り部15dの天面15a側の端部15eとの距離L2は、0.05mm以上かつ0.8mm以下であること好ましい。
距離L1が1.5mm未満の場合には、キャップ60の螺合状態や寸法誤差によって、インナーリング65の外周面の突起部が面取り部15d、または端部15fに形成されたR取り部に位置することがある。したがって、インナーリング65が口栓部15の内周面15cと確実に接触しない場合があり、口栓部15の密閉性が低下する場合がある。
また、距離L1が3.0mmを越える場合には、適正なキャッピングを得るためには、面取り部15dの高さ方向の幅W2の寸法を確保できなくなる。
また、距離L2が0.05mm未満の場合には、キャップ60の螺合状態や寸法誤差によって、コンタクトリング66の下方先端部が面取り部15d、または端部15eに形成されたR取り部に位置することがある。したがって、コンタクトリング66が口栓部15の天面15aと確実に接触しない場合があり、口栓部15の密閉性やキャッピング適性が低下する場合がある。
また、距離L2が0.8mmを越える場合には、コンタクトリング66の下方先端部が天面15aの外方端部より外方に位置し、天面15aと確実に接触しない場合がある。したがって、口栓部15の密閉性が低下する場合がある。
なお、距離L1が距離L2よりも長いのは、キャップ60が完全に閉められていない状態(キャップ60と口栓部15の天面15aとの間に多少の隙間がある状態)であっても、口栓部15を密閉可能とするためである。
なお、キャップ60は、上述の形状に限定されるものではない。ねじ込み式のキャップであって、少なくともインナーリング65を備え、口栓部15の内周面15cとインナーリング65とが接触し、口栓部15を密閉可能とするものであれば良い。
例えば、キャップ60は、コンタクトリング66やアウターリング67を備えない構成であってもよい。
また、キャップ60は、キャップ本体61が同一材料で形成されている1ピース仕様のものであってもよく、口栓部15の天面15a、外周面15b、内周面15cなどと接触する部位を別部材で形成する、いわゆるライナーを内側に有する2ピース仕様のものであってもよい。2ピース仕様の形態としては、例えば、口栓部15の天面15a、外周面15bが接触し、インナーリング65は内周面15cに接触しない場合の構成であってもよい。
また、インナーリング65、コンタクトリング66、アウターリング67のそれぞれの口栓部15との接触は、上述の態様に限定されるものではない。
次に、プリフォーム30の搬送について詳述する。上述したように、プラスチックボトル10の製造において、一般的には、プリフォーム30の射出成形工程とプラスチックボトル10のブロー成形工程とは連続した工程として行われない場合がある。
これにはいくつかの理由があるが、その1つとして、ボトル製造及び充填工程にプリフォーム30で輸送することにより、保管スペースや輸送費の削減につながりコストを低減できるためである。
したがって、プリフォーム30の射出成形工程とプラスチックボトル10のブロー成形工程との間でプリフォーム30の搬送が行われる。
プリフォーム30の搬送方法の一例を説明する。プリフォーム30は、コンテナからなる直方体の箱の乱雑に収容して行われる。搬送コストを低減するため、プリフォーム30を整列させたり、プリフォーム30同士の間に緩衝材などを配置して収容することはない。
このように、プリフォーム30同士が当接する状態で搬送した場合、搬送時の振動によって、プリフォーム30同士が強く衝突することがある。
ここで、従来のプリフォームは、口栓部15の天面15aと内周面15cとの接合の稜線には面取り部15dは設けられておらず、その代わりに外方に彎曲するR取り部が設けられている。R取り部の半径は、一般的に0.3mmである。
そして、搬送時の振動によるプリフォーム30同士の衝突によって、このR取り部に打痕などの傷が稀に発生する。
この打痕が形成される明確な要因は不明であるが、口栓部15の開口栓部19に、他のプリフォーム30の底部31bや口栓部15が挿入されて、この底部31bの外周面や口栓部15の外周面15bとコーナーRとが衝突することが要因と考えられる。
そして、打痕が発生した口栓部15に、上述のねじ込み式のキャップ60を螺合すると、螺合時に、インナーリング65やコンタクトリング66が回動しながら打痕と当接する。この打痕などの傷には、隆起した突起が形成されることがあり、この突起がインナーリング65やコンタクトリング66を傷つける。
ここで、キャップ60の回動にともない、インナーリング65やコンタクトリング66も回動する。したがって、口栓部15の打痕などの傷の突起によって、インナーリング65やコンタクトリング66には周方向に連続した傷が発生する。
このインナーリング65やコンタクトリング66の傷は、充填された内容物が漏れ出すことの要因となる。
ここで、本実施形態に係るプリフォーム30は、上述のように、天面15aと内周面15cとの接合部の稜線には、面取り部15dが形成されている。そして、口栓部15の開口栓部19に、他のプリフォーム30の底部31bが挿入される場合、この底部31bの外周面と面取り部15dとが衝突する。また、口栓部15の開口栓部19に、他のプリフォーム30の口栓部15が挿入される場合は、この口栓部15の外周面15bと面取り部15dとが衝突する。
この時、衝突部位が面取り部15dであるため、口栓部15の天面15aおよび内周面15cの傷の発生を低減することができる。そして、口栓部15の傷の発生が低減することで、キャップ60の螺合時における、インナーリング65やコンタクトリング66への傷の発生を低減することができる。そして、キャップ60による口栓部15の密閉性を向上することができる。
ここで、面取り部15dを形成することによって、口栓部15の天面15aおよび内周面15cの傷の発生が低減することの明確な要因は不明である。しかし、面取り部15dは、従来のR取り部とは異なり、外方に彎曲していない。したがって、面取り部15dと底部31bの外周面との衝突時において、R取り部の場合と比較して衝突荷重の集中を抑制することができ、傷の発生が低減されるのではないかと考えられる。
なお、2ピース仕様のキャップよりも1ピース仕様のキャップの方が、打痕の発生を低減することが望まれる。キャップの螺合時の傷は、上述のように、インナーリングやコンタクトリングが回動しながら打痕と当接することで発生する。ここで、2ピース仕様のキャップは、1ピース仕様のキャップに比べ、口栓部15の天面15a部分をより接触させ、密封性を強化している。仮に口栓部15のR取り部やその近傍に傷が発生しても、口栓部15の天面15a部分の密封性が向上しており、漏れにくい傾向になるからである。なお、2ピース仕様のキャップよりも1ピース仕様のキャップの方がコストは低いため、コスト低減の観点から、1ピース仕様のキャップによって口栓部を密閉する構成における口栓部の密閉性を向上させることが望まれる。
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例1)
主材料がPETのプリフォーム30を射出成形機によって成形した。このプリフォーム30は、500ml炭酸用丸型のプラスチックボトルに用いられるものであって、口栓部15には結晶化処理を施さない。口栓部15の外径は25.8mmであった。面取り部15dの角度θは30°、幅W1は0.39mm、幅W2は0.22mmであった。
(実施例2)
実施例1における面取り部15dの形状のみを変更したプリフォームを射出成形機によって成形した。面取り部15dの角度θは45°、幅W1および幅W2はいずれも0.35mmであった。
(比較例1)
実施例1における面取り部15dの代わりにR取り部を有するプリフォームであって、口栓部15を有するプリフォーム30を射出成形機によって成形した。R取り部の大きさは、半径0.3mmであった。これは、一般的に流通している口栓部の形状である。
(落下テスト)
実施例1,2、比較例1のプリフォームを、それぞれ恒温槽35℃、45℃に保存し、プリフォームの表面温度が35℃、45℃になるように6時間保管した。保管した後、その室温下において、縦335mm×横280mm×高さ600mmの筒にそれぞれ90個のプリフォームを入れた状態で1mの高さから落下させた。サンプルは、90個を1セットとし、2回に分けて合計180個のプリフォームを落下させた。表3に結果を示す。面取り部またはR取り部の近傍に傷が発生したプリフォームの数と、発生した傷の大きさを評価した。傷の大きさは、最大外形の大きさで3種類に分類し、大:1.5mm以上、小:1mm以上かつ1.5mm未満、極小:1mm未満、とした。
表3に示すように、実施例1,2は、いずれの保管温度においても、比較例1よりも傷の発生を低減することができた。また、実施例1は、実施例2よりも傷の発生を低減することができた。
(密閉性瞬間耐圧試験)
実施例1,2、比較例1のプリフォームを用いて、図12に示す形状の500ml炭酸用丸型のプラスチックボトルをブロー成形機によって成形した。クエン酸重曹法を用いてガスボリューム(GV)4の炭酸水をこのプラスチックボトル内に充填した。図17に示すインナーリングとコンタクトリングとアウターリングとを備えるキャップをプラスチックボトルの口栓部に螺合し、手締めによって口栓部を密閉した。このキャップは、内容物が炭酸飲料であるプラスチックボトルに用いる1ピース仕様のキャップであり、日本クロージャー株式会社製のTAキャップ(以下NCCと称する)と株式会社CSIジャパン製のGA−LOKキャップ(以下CSIと称する)の2種類を用いた。それぞれのキャップはTAバンドを有し、巻締角度は、NCC社製が255°、CSI社製が280°である。
キャップを螺合したプラスチックボトルを22℃の水槽内に沈め、プラスチックボトル内の圧力を昇圧速度34.4kpa/secで0.88MPaまで上昇させた。そして、この状態でプラスチックボトルを水槽中に1分間保持した。その際の口栓部とキャップからの気泡の発生の有無を確認した。実施例1,2、比較例1のサンプル数は、それぞれのキャップに対して5であった。その結果を表4に示す。
表4に示すように、実施例1,2、比較例1の口栓部は、NCC社製およびCSI社製のどちらのキャップに対しても漏れがなく、良好な密封性が確認された。
(閉栓性評価試験)
実施例1,2、比較例1のプリフォームを用いて、上述の密閉性瞬間耐圧試験と同様に、図12に示す形状の500ml炭酸用丸型のプラスチックボトルをブロー成形機によって成形し、NCC社製とCSI社製のキャップを口栓部に螺合し、口栓部を密閉した。この時のキャップの巻き締め時のトルク(閉栓トルク)を測定した。閉栓トルクは、自動トルク測定装置(京都技研工業株式会社製:MTP)を用いて測定した。なお、キャップの閉栓速度は3rpmであった。
NCC社製キャップの結果を図22に、CSI社製キャップの結果を図23に示す。ここで、実施例1の結果は点線で、実施例2の結果は破線で、比較例1の結果は実線で示す。また、縦軸は閉栓トルク(N・cm)、横軸はキャップの回転角度(°)である。
図22および図23に示すように、実施例1,2と比較例1において、閉栓トルクに大きな差異はなく、閉栓性に差異はなかった。
したがって、実施例1,2は、密閉性の要件を満たすので、密閉可能な口栓部を有するプリフォームとして使用が可能である。さらに、実施例1,2は、比較例1と閉栓性に差異がないため、閉栓工程は従来と同様の工程で行うことができる。
本願発明のプリフォームは、内容物に、例えば、緑茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、果汁等の各種非炭酸飲料、炭酸飲料、天然発泡水、薬品、化粧品、あるいはソースやみりんなどの調味料を含む食品などを収容する、あらゆるプラスチックボトルの製造に有用である。
<第3の実施の形態>
以下に、図面を参照しつつ、本発明の第3の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係るPET(Poly Ethylene Terephthalate:ポリエチレンテレフタラート)ボトル成形用のプリフォーム100(予備成形体)の構成を詳細に説明する。図24は本実施形態に係るプリフォーム100の一例が示された正面図である。更に、図25は図24のプリフォーム100の断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、プリフォーム100の一端側の開放された側が上を向いた図24の状態におけるプリフォーム100の口栓部111を上とする。
本実施形態に係るプリフォーム100は、一端側が開放された有底筒状であって、開放された側の口栓部111と、底の側のプリフォーム本体120とを備える。口栓部111は、その上端に円形の開口栓部112を有するとともに、下端に外方に突出する環状のサポートリング114を有する。
口栓部111の外周には、ブロー成形機でプリフォーム100がボトル状に形成された後に図示せぬ蓋が取り付けられるためのねじ部113が設けられる。また、ねじ部113とサポートリング114との間には、外方に突出する環状のカブラ115が設けられる。また、口栓部111は、ブロー成形機による成形後も、その形状が変化しない。したがって、プリフォーム100の口栓部111の内径D1、及び外径D2(ねじ谷径に相当)は例えば、飲料用のPETボトルで標準的に用いられる寸法とされることが好ましい(図25参照)。
口栓部111は例えば、PCO1810規格や、PCO1881規格に対応した寸法とされると良い。なお、サポートリング114の下面から口栓部111の上端までの距離が口栓部111の長さL1である。より具体的に、口栓部111の長さL1は21.00mm±0.25mm(PCO1810規格)であることが好ましい。
プリフォーム本体120は、円筒状であって、ブロー成形の際に、ボトルの形状となるように膨らむ部分である。プリフォーム本体120は、口栓部111のサポートリング114の下端(下面)に連接される。そして、プリフォーム本体120は、サポートリング114の下端に連設された大径部121と、大径部121の下端に連設されたくびれ部122と、くびれ部122の下端に連設された小径部123と、小径部123の下端に連設された底部124とを有する。なお、サポートリング114の下面から底部124の下端までの距離がプリフォーム本体120の全長L2である。
大径部121、及び小径部123は円筒状であり、大径部121の外径D3は小径部123の外径D4より大である。くびれ部122は、下方に向けて、つまり、大径部121の側から小径部123の側に向けて徐々に縮径して円錐台状に構成される。なお、くびれ部122の上端と下端は、それぞれ大径部121の下端と小径部123の上端に滑らかにされている。そして、くびれ部122の上端における外径は大径部121の外径D3であり、下端における外径は小径部123の外径D4である。
プリフォーム本体120は、その肉厚が一定ではなく、肉厚の異なる部分を有する。そして、プリフォーム本体120は、その肉厚に関して、口栓部111のサポートリング114の下端から下方に向けて最小の肉厚が均一に形成された最小肉厚部125と、最小肉厚部125の下端から下方に向けて肉厚が徐々に厚くなるよう形成された肉厚増加部126と、肉厚増加部126の下端から下方に向けて肉厚が均一に形成された所定肉厚部127とを有する。なお、肉厚増加部126の上端における肉厚は最小肉厚部125の肉厚T1であり、下端における肉厚は所定肉厚部127の肉厚T2である。また、所定肉厚部127の下端は、小径部123の下端に対応している。
底部124は外方に湾曲した略半球状に構成されている。底部124は、小径部123の下端から中央にかけて徐々に肉厚が薄くなるように形成されている。なお、底部124は、円錐形状であったり、角に丸みをもった円柱状であったり、その他の形状であっても良い。底部中央128には、プリフォーム100が射出成形によって作製される際の溶融樹脂の流入口(ゲート)において付随的に形成された固化した部分が付着する。なお、図24及び図25は、その部分が切り取られた後の形態が示されている。ここで、最小肉厚部125の肉厚T1、所定肉厚部127の肉厚T2、及び底部中央128の肉厚T3の間には、T1<T3<T2という関係が成立している。
このように、プリフォーム本体120には、大径部121の側から小径部123の側に向けて徐々に縮径するくびれ部122が形成されており、プリフォーム100の軽量化が図られている。また、プリフォーム本体120は、最小の肉厚が均一に形成された最小肉厚部125をサポートリング114の直下に有しており、プリフォーム100の軽量化が図られている。更に、プリフォーム本体120の底部124は、中央にかけて徐々に肉厚が薄くなるように形成されおり、この構成によってもプリフォーム100の軽量化が図られている。
ここで、本実施形態に係るプリフォーム100は、プリフォーム本体120の全長L2が59mm以上、65mm以下であり、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下から最小肉厚部125の下端までの距離L4の比L4/L2が0.02以上、0.25以下であり、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下からくびれ部122の上端までの距離L6の比L6/L2が0.02以上、0.20以下である。そして、詳細については後述するが、最小肉厚部125、及びくびれ部122がプリフォーム本体120に対してこのように形成されることによって、射出成形機でプリフォーム100が成形される際の射出成形性が良好であるとともに、ブロー成形機でプリフォーム100がボトル状に成形される際に、サポートリング114の直下からくびれ部122にかけて適切な延伸性を有するように構成されている。なお、プリフォーム100は、射出成形性やブロー成形性だけでなく、搬送適性が加味された上での設計がなされたものである。したがって、本実施形態に係るプリフォーム100は原料から製品となるまで総合的に優れた性能を発揮するものである。
次に、本実施形態に係るプリフォーム100の製造方法の一例を詳細に説明する。図26は、プリフォーム100を製造するための射出成形装置140の一例が示された概略図である。射出成形装置140は、ホッパドライヤ141と、ホッパ142と、加熱シリンダ143と、金型144とを備える。
ホッパドライヤ141は、プリフォーム100の主原料となる例えばペレット形状の成形材料の投入口である。ホッパドライヤ141は、成形材料を乾燥した後にホッパ142に送り出すように構成される。ホッパドライヤ141は投入された成形材料を予め定められた水分率まで乾燥することができれば良く、例えば、熱風乾燥型や、除湿熱風乾燥型、減圧伝熱乾燥型であっても良い。
射出成形装置140は、ホッパ142に投入された成形材料が、加熱シリンダ143で溶融可塑化され、金型144に送り出されるように構成される。筒状の加熱シリンダ143は、外周に図示せぬヒータを備えるとともに、内部には、金型144への射出用の図示せぬスクリュを備える。加熱シリンダ143は、ヒータからの伝熱によって成形材料を例えば270℃〜300℃に加熱させるように構成される。
複数に分割されて構成される金型144には、成形品としてのプリフォーム100の形状に該当する空間部分であるキャビティ145が形成される。なお、キャビティ145は、本実施形態に係るプリフォーム100の特徴を有する形状に対応するように形成される。加熱シリンダ143から射出された成形材料がキャビティ145に注入されるように構成される。金型144には、金型144を加熱する図示せぬヒータと、金型144を冷却する図示せぬ冷却機とが設けられる。金型144は、ヒータによって加熱されたキャビティ145に溶融した成形材料が注入、及び加圧された後に冷却機によって冷却され、プリフォーム100が成形されるように構成される。
このような射出成形装置140が用いられてプリフォーム100が製造される。まず、射出成形装置140のホッパドライヤ141で乾燥された上でホッパ142に投入されたPET樹脂が加熱シリンダ143で溶融可塑化されて、金型144に射出される。PET樹脂が、加熱シリンダ143から金型144のキャビティ145に射出、及び加圧された後に冷却機によって冷却されることによってプリフォーム100が成形される。
なお、成形されたプリフォーム100は、箱積み、いわゆるパレタイジングされて倉庫等でいったん保管されても良く、そのまま、引き続き、次の工程へと進められても良い。すなわち、プリフォーム100の成形と、ブロー成形とが別の場所や装置で行われる、いわゆるコールドパリソン方式(2ステージ方式)であっても良く、プリフォーム100の成形と、ブロー成形とが同じの場所や装置で行われる、いわゆるホットパリソン方式(1ステージ方式)であっても良い。更に、プリフォーム100の成形から内容物の充填等に至るまでの製造工程がインラインで連続的なものであっても良い。
次に、本実施形態に係るプリフォーム100からボトル状に成形する方法の一例を詳細に説明する。プリフォーム100がボトル状に成形されるにあたってまず、プリフォーム100の加熱が行われる。図27は、プリフォーム100の加熱装置150の一例が示された断面図である。なお、図27は、プリフォーム100の搬送方向に対して垂直方向の断面を示す。
加熱装置150は、搬送装置151と、ヒータ152とを備える。搬送装置151は、プリフォーム100を周方向に均等に加熱するために、プリフォーム100の軸を中心に回転させながら搬送するように構成される。ヒータ152は、複数の例えばハロゲンランプによって構成され、ブロー成形に適した温度例えば80℃〜140℃にプリフォーム100を加熱するように構成されている。更に、加熱装置150は、ヒータ152からの熱をプリフォーム100に反射させるための反射板153や、ヒータ152からの熱を加熱装置150の外方へ逃がさないようにするための遮蔽部材154等を備えていても良い。なお、図27の加熱装置150では、プリフォーム100は口栓部111が下側を向いた状態で搬送、及び加熱されている。
ここで、本実施形態に係るプリフォーム100のプリフォーム本体120は、サポートリング114の下端に連設された大径部121と、大径部121に連設され、底部124の側へ向けて縮径するくびれ部122と、くびれ部122に連設された小径部123とを有する。つまり、ヒータ152とプリフォーム本体120の位置関係は、大径部121が最も近く、くびれ部122の大径部121の側から小径部123の側に向けて徐々に遠くなり、小径部123が最も遠くなるように構成されている。したがって、ヒータ152との位置関係が近い大径部121が温まりやすく、延伸されやすい。一方で、大径部121と比較して、くびれ部122は、底部124の側(図27では上方)に向けて徐々に温まりにくくなるので、底部124の側に向けて徐々に延伸されにくくなる。
また、プリフォーム本体120は、サポートリング114の下端から底部124の側(図27では上方)に向けて最小の肉厚が均一に形成された最小肉厚部125と、最小肉厚部125から底部124の側に向けて肉厚が徐々に厚くなるように形成された肉厚増加部126と、肉厚増加部126から底部124の側に向けて肉厚が均一に形成された所定肉厚部127とを有する。つまり、プリフォーム本体120は、最小の肉厚である最小肉厚部125が温まりやすく、延伸されやすい。一方で、最小肉厚部125と比較して、肉厚増加部126は、底部124の側に向けて徐々に温まりにくくなるので、底部124の側に向けて徐々に延伸されにくくなる。
そして、プリフォーム100は、プリフォーム本体120の全長L2が42mm以上、65mm以下であり、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下から最小肉厚部125の下端までの距離L4の比L4/L2が0.02以上、0.25以下であり、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下からくびれ部122の上端までの距離L6の比L6/L2が0.02以上、0.20以下である。つまり、プリフォーム100は、プリフォーム本体120の全長L2が所定の範囲内であって、最小肉厚部125とくびれ部122を有することで軽量化が図られるとともに、大径部121及び最小肉厚部125に対応する延伸されやすい易延伸領域がサポートリング114の直下から底部124の側に向かって所定の範囲に形成されている。また、プリフォーム100は、くびれ部122及び肉厚増加部126に対応する領域であり、易延伸領域の下端から底部124の側に向かって徐々に延伸しにくくなる領域が形成されている。そして、ブロー成形機でプリフォーム100がボトル状に成形される際に、サポートリング114の直下からくびれ部122における樹脂が効果的に延伸されるような設計となっている。
加熱されたプリフォーム100は次に、ブロー成形機によって、プラスチックボトル例えばPETボトル100Aに成形される。図28は、プリフォーム100と、ブロー成形後のPETボトル100Aとが模式的に示された断面図である。ブロー成形機の一例としての二軸延伸ブロー成形装置160は、金型161と、延伸ロッド162と、図示せぬ高圧エア供給装置と、これらを制御する図示せぬ制御装置とを備える。なお、図28には、下向きのブロー成形方法が例示されているものの、材料が重力の影響を受けにくい上向きのブロー成形方法が用いられても良い。
金型161は、形成されるPETボトル100Aに対応した形状を有している。金型161は、例えば、胴部130に対応して半割りで構成される胴金型161aと、底部140Aに対応した底金型161bとを有する。金型161の表面の温度は、PETボトル100Aの用途、特に耐熱性に応じて適宜設定されるものであり、例えば、胴金型161aの表面の温度は20℃〜130℃、底金型161bの表面の温度は5℃〜30℃に制御されるように構成されている。
延伸ロッド162は金型161内を伸縮自在に構成される。そして、延伸ロッド162は、金型161に口栓部111が取り付けられたプリフォーム100のプリフォーム本体120、及び底部124を縦(軸)方向に延伸するように構成される。高圧エア供給装置からは、温度調節された高圧エアAが吹き出されるように構成される。高圧エアAは、金型161に取り付けられたプリフォーム100の内部に供給されれば良く、延伸ロッド162から吹き出されても良く、延伸ロッド162とは別の部材から吹き出されても構わない。高圧エアAは、プリフォーム100のプリフォーム本体120を横(径)方向に延伸するとともに、延伸の後に、プリフォーム本体120の表面温度を下げるように構成される。
加熱されたプリフォーム100は、二軸延伸ブロー成形装置160の金型161に装着される。その後には、金型161に装着されたプリフォーム100のプリフォーム本体120、及び底部124が延伸ロッド162によって縦方向に延伸される。この際のプリフォーム100からPETボトル100Aへの縦延伸倍率は1.3倍以上、3.6倍以下であることが好ましい。
ここで、縦延伸倍率とは、プリフォーム100のプリフォーム本体120の上端から底部124の下端までの長さL2(図24参照)に対するPETボトル100Aの首部110Aの上端から底部140Aの下端までの長さL3(図28、及び図29参照)の比である。なお、サポートリング114の下面から底部140Aの下端の底壁141Aまでの距離が長さL3である。非晶部と、結晶部との集合体であるアモルファス構造を有するプリフォーム100の分子は延伸によって配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル100Aの強度や、剛性、及び耐熱性等が上がる。縦延伸倍率が1.3倍未満の場合にはPETボトル100A(プリフォーム100)の分子の配向性が上がらず、一方で、縦延伸倍率が3.6倍以上の場合にはPETボトル100Aが成形しにくくなる。
更に、縦方向に延伸されたプリフォーム100のプリフォーム本体120が高圧エアAによって横方向に、金型161に当たるまで延伸される。この際のプリフォーム100からPETボトル100Aへの横延伸倍率は2.0倍以上、4.1倍以下であることが好ましい。
ここで、横延伸倍率とは、プリフォーム100のプリフォーム本体120の小径部123における外径D4(図24及び図25参照)に対するPETボトル100Aの胴部130における外径D5の比である。プリフォーム100の分子は横方向の延伸によっても同様に配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル100Aの強度や、剛性、耐熱性等が上がる。横延伸倍率が2.0未満の場合にはPETボトル100A(プリフォーム100)の分子の配向性が上がらず、一方で、横延伸倍率が4.1以上の場合にはPETボトル100Aが成形しにくくなる。
このように、二軸延伸ブロー成形装置160による成形が、縦方向の延伸倍率が1.3倍以上、3.6倍以下、横方向の延伸倍率が2.0倍以上、4.1倍以下の二軸延伸ブロー成形である構成によれば、プリフォーム100からより良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル100Aを成形することができる。
ここで、PETボトル100Aの首部110Aから肩部120Aは、おおよそプリフォーム100のサポートリング114の直下からくびれ部122における樹脂が縦方向及び横方向に延伸されて形成される。また、上述したように、プリフォーム100は、大径部121及び最小肉厚部125に対応する所定の範囲に規定された易延伸領域がサポートリング114の直下に形成されている。したがって、プリフォーム100は、縦方向に延伸される際に、この易延伸領域である大径部121及び最小肉厚部125に対応する樹脂が効果的に延伸されるので、PETボトルの肩部120Aに十分な樹脂を行き渡らせることができ、プリフォーム100から良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル100Aを成形することができる。
なお、プリフォーム100のプリフォーム本体120の全長L2は、42mm以上、65mm以下である。プリフォーム本体120の全長L2が65mmより大であると、所定肉厚部127の肉厚T2が薄くなり過ぎ、ブロー成形性が低下して好ましくない。一方で、全長L2が42mmより小であると、プリフォーム100の重心が口栓部111の側により過ぎる。詳細な説明は省略するが、プリフォーム100は、口栓部111が上方を向いた図24の状態で、口栓部111のカブラ115の下の部分やサポートリング114の下の部分を把持する把持装置によって搬送される場合がある。このような把持装置を用いて搬送する場合、プリフォーム100の重心が口栓部111の側により過ぎると、プリフォーム100がふらつきやすくなり、横倒して詰まる場合がある。したがって、全長L2が42mmより小であると、搬送適性が低下して好ましくない。また、全長L2が42mmより小であると、良好なブロー成形が可能なPETボトル100Aの首部110Aの上端から底部140Aの下端までの長さL3が短くなり、プリフォーム100の汎用性が低下して好ましくない。
また、大径部121及び最小肉厚部125に対応する易延伸領域の範囲は、上述したように、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下から最小肉厚部125の下端までの距離L4の比L4/L2が0.02以上、0.25以下であり、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下からくびれ部122の上端までの距離L6の比L6/L2が0.02以上、0.20以下であることによって規定される。また、大径部121の範囲と最小肉厚部125の範囲とのバランスよって、易延伸領域の下部からくびれ部122及び肉厚増加部126の上部における延伸が適切となるように設計されている。
なお、比L4/L2が0.02より小であると、最小肉厚部125の範囲が狭くなり、PETボトル100A(プリフォーム100)の軽量化の効果が発揮されにくくなる。また、易延伸領域の範囲が狭くなり、PETボトル100の肩部120Aが厚肉になるとともに、PETボトル100Aの底部140Aに十分な樹脂が行き渡らなくなって底部140Aが薄肉になる。したがって、PETボトル100Aのブロー成形性が低下して好ましくない。一方で、比L4/L2が0.25より大であると、プリフォーム100を射出成形する際のキャビティ145において、狭い流路空間となる最小肉厚部125に対応する部位が長くなる。したがって、ゲートからの樹脂の流れがキャビティ145の最小肉厚部125に対応する部位で悪くなり、ショートモールドやウェルド等の成形不良が生じやすく、射出成形性が低下して好ましくない。また、比L6/L2が0.02より小であると、易延伸領域としての大径部121の範囲が狭くなり、PETボトル100Aの肩部120Aが厚肉になるとともに、PETボトル100Aの底部140Aに十分な樹脂が行き渡らなくなって底部140Aが薄肉になる。したがって、PETボトル100Aのブロー成形性が低下して好ましくない。一方で、比L6/L2が0.20より大であると、易延伸領域としての大径部121の範囲が広くなり、大径部121が延伸されすぎてPETボトル100Aの肩部120Aが薄肉になる。したがって、PETボトル100Aのブロー成形性が低下して好ましくない。また、くびれ部122及び小径部123の範囲が狭くなり、PETボトル100A(プリフォーム100)の軽量化の効果が発揮されにくくなる。また、鉛直方向に対するくびれ部122の傾きが大きくなり、プリフォーム100の射出成形の際に、ゲートからの樹脂の流れがキャビティ145のくびれ部122に対応する部位で悪くなり、射出成形性が低下して好ましくない。
なお、プリフォーム100の射出成形性やプリフォーム100から軽量化されたPETボトル100Aを成形する際のブロー成形性を良好にするという観点から、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下からくびれ部122の下端までの距離L7の比L7/L2が0.10以上、0.40以下であることが好ましい。比L7/L2が0.10より小であると、鉛直方向に対するくびれ部122の傾きが大きくなり、プリフォーム100の射出成形の際に、ゲートからの樹脂の流れがキャビティ145のくびれ部122に対応する部位で悪くなり、射出成形性が低下して好ましくない。また、くびれ部122が横方向に延伸しにくくなり、ブロー成形性が低下して好ましくない。一方で、比L7/L2が0.40より大であると、小径部123の範囲が狭くなり、PETボトル100A(プリフォーム100)の軽量化の効果が発揮されにくくなる。
また、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下から肉厚増加部126の下端までの距離L5の比L5/L2は、0.10以上、0.32以下であることが好ましい。比L5/L2が0.10より小であると、肉厚増加部126の範囲が狭くなるので肉厚増加部126における肉厚の変化が局所的となり、ブロー成形性が低下して好ましくない。一方で、比L5/L2が0.32より大であると、所定肉厚部127の範囲が狭くなり、ブロー成形する際に、PETボトル100Aの胴部130の肉厚に偏りが生じやすくなる。
また、所定肉厚部127の肉厚T2に対する最小肉厚部125の肉厚T1の比T1/T2は、0.60以上、0.85以下であることが好ましい。比T1/T2が0.6より小であると、ブロー成形する際に、最小肉厚部125が効果的に延伸されず、PETボトル100Aの肩部120Aが厚肉になるとともに、PETボトル100Aの底部140Aが薄肉となり、ブロー成形性が低下して好ましくない。また、プリフォーム100の射出成形の際に、ゲートからの樹脂の流れがキャビティ145の最小肉厚部125に対応する部位で悪くなり、射出成形性が低下して好ましくない。また、PETボトル100Aの首部110Aの肉厚が薄くなり、首部110Aに十分な強度を付与しにくくなる。一方で、比T1/T2が0.6より大であると、PETボトル100A(プリフォーム100)の軽量化の効果が発揮されにくくなる。また、易延伸領域としての最小肉厚部125が効果的に延伸されず、PETボトル100Aの肩部120Aや底部140Aの肉厚に偏りが生じやすくなる。
また、最小肉厚部125の肉厚T1に対する底部中央128の肉厚T3の比T3/T1は、1.01以上、1.30以下であることが好ましい。比T3/T1が1.01より小であると、ブロー成形する際に、底部中央128が効果的に延伸されず、PETボトル100Aの肩部120Aが薄肉になるとともに、PETボトル100Aの底部140Aが厚肉となり、ブロー成形性が低下して好ましくない。また、プリフォーム100の射出成形の際に、ゲートからの樹脂の流れがキャビティ145の底部中央128に対応する部位で悪くなり、射出成形性が低下して好ましくない。一方で、比T3/T1が1.30より大であると、ブロー成形する際に、底部中央128が効果的に延伸されず、PETボトル100Aの肩部120Aや底部140Aの肉厚に偏りが生じやすくなる。また、PETボトル100A(プリフォーム100)の軽量化の効果が発揮されにくくなる。
また、大径部121の外径D3に対する小径部123の外径D4の比D4/D3は、0.60以上、0.90以下であることが好ましい。比D4/D3が0.60より小であると鉛直方向に対するくびれ部122の傾きが大きくなり、プリフォーム100の射出成形の際に、ゲートからの樹脂の流れがキャビティ145のくびれ部122に対応する部位で悪くなり、射出成形性が低下して好ましくない。また、くびれ部122が横方向に延伸しにくくなり、ブロー成形性が低下して好ましくない。一方で、比D4/D3が0.90より大であると、PETボトル100A(プリフォーム100)の軽量化の効果が発揮されにくくなる。
また、最小肉厚部125の下端はくびれ部122内の上端部近傍に位置し、肉厚増加部126の下端はくびれ部122内の下端部近傍に位置していることが好ましい。このような構成にすることで、最小肉厚部125と肉厚増加部126との接合部、及び肉厚増加部126と所定肉厚部127との接合部において、プリフォーム本体120の延伸性が急激に変化することがなく、プリフォーム100から軽量化されたPETボトル100Aを成形する際のブロー成形性を良好にすることができる。しかしながら、くびれ部122に対する、最小肉厚部125、及び肉厚増加部126の配置は上述の構成に限定されるものではなく、PETボトル100Aの形態や重量等に応じて適宜設計でき、例えば、最小肉厚部125の下端は大径部121内に位置していても良く、肉厚増加部126の下端は、小径部123内に位置していても良い。また、所定肉厚部127の下端は、底部124内に位置していても良い。また、底部124は肉厚が均一になるように形成されていても良く、底部124の上端よりも下方の位置から中央にかけて徐々に肉厚が薄くなるように形成されていても良い。しかしながら、PETボトル100A(プリフォーム100)を効果的に軽量化する観点から、底部124は、小径部123の下端から中央にかけて徐々に肉厚が薄くなるように形成されることが好ましい。
以上のように、本実施形態に係るPETボトル100Aの製造方法は、プリフォーム本体120は、大径部121、くびれ部122、小径部123、底部124を有し、更にその肉厚に関して、最小の肉厚が均一に形成された最小肉厚部125と、肉厚が徐々に厚くなるよう形成された肉厚増加部126と、肉厚が均一に形成された所定肉厚部127とを有し、プリフォーム本体120の全長L2が42mm以上、65mm以下であり、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下から最小肉厚部125の下端までの距離L4の比L4/L2が0.02以上、0.25以下であり、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下からくびれ部122の上端までの距離L6の比L6/L2が0.02以上、0.20以下であるプリフォーム100を射出成形装置140で製造する工程と、プリフォーム100を二軸延伸ブロー成形装置160でボトル状に成形する工程とを備える。そして、この製造方法によって、プリフォーム100から良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル100Aを製造することができる。そして、その際に、特殊な製法を用いる必要がない。
なお、PETボトル100Aの胴部130の成形後の肉厚T4が0.05mm以上、0.18mm以下であることが好ましい。胴部130の厚さがこの範囲であれば、プリフォーム100からより良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル100Aを成形することができる。
更に、プリフォーム100の内で、大径部121の下部、及びくびれ部122が、PETボトル100Aの内で、水平方向に対して傾斜を有する肩部120Aを形成するように成形されることが好ましい。このように成形されることによって、プリフォーム100からより良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル100Aを成形することができる。
なお、本実施形態においては、成形されるPETボトル100Aの用途が限定されない。したがって、PETボトル100Aは、耐圧性や耐熱性等を有するように成形されても良い。更に、PETボトル100Aへの内容物の充填方法についても限定されない。したがって、PETボトル100Aは、ホット充填に用いられても、アセプティック充填に用いられても良い。
以上のように、本実施形態に係るPETボトル100Aはプリフォーム100が、二軸延伸ブロー成形装置160でボトル状に成形される。そして、二軸延伸ブロー成形装置160が用いられることによって効果的に、本実施形態に係るプリフォーム100から良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル100Aを成形することができる。
次に、本実施形態に係るプリフォーム100から形成されるPETボトル100Aの構成を詳細に説明する。図29は、本実施形態に係るプリフォーム100から形成されたPETボトル100Aが示された正面図である。図29に例示されたPETボトル100Aは水平方向の断面視が略正方形の角ボトルである。上述されたように、PETボトル100Aは、口栓部111と、首部110Aと、肩部120Aと、胴部130と、底部140Aとを有する。そして、上述されたように、PETボトル100Aの口栓部111の構成はプリフォーム100の口栓部111の構成と同様である。
首部110Aはその上側が口栓部111のサポートリング114の下面に連なり、一方で、その下側が肩部120Aに連なる。首部110Aは、円筒形状を有する。
肩部120Aは、その上側が首部110に連なり、一方で、その下側が胴部130に連なる。肩部120Aは、上方から下方に向かって拡径する略四角錐台の形状を有する。
胴部130は、互いに同一の形状からなる4つの壁部131が周(水平)方向に連接して、全体として略正四角筒の形状を有している。壁部131の各々は、圧力吸収パネル132や、複数の横溝133、縦溝134等を有している。凹凸形状の圧力吸収パネル132は、PETボトル100Aの内部の圧力が特に、減圧側に変化した際に、自身が変形することによって圧力変化を吸収するとともに、PETボトル100Aの特に、水平方向の荷重に耐える強度である側壁強度を保持する機能を有する。横溝133も、胴部130の側壁強度を保持する機能を有する。一方で、縦溝134は、胴部130の上下方向の荷重に耐える強度である座屈強度を向上させる機能を有する。
底部140Aはその上側が、胴部130の下側に連なる。底部140Aは、底壁141Aや、ドーム142A等を有している。略平板環状の底壁141Aは、胴部130に対して垂直方向に延び、PETボトル100Aの接地面となる。ドーム142Aは、底壁141Aの内周において底壁141Aから、PETボトル100Aの内方(上方)へ突出するように構成され、底部140Aの強度を向上させる機能を有する。なお、底部140Aの構成は、図29の例示に限らず、内容物に対応した形状、例えば放射状にリブが設けられた形状や、いわゆるペタロイド形状であっても良い。
PETボトル100Aの特にサポートリング114より下の形状は、図29の例示に限らず、プリフォーム100がブロー成形されることによって形成されるものであればどのような形状であっても良い。例えば、本実施形態においては、図29に示された角ボトルを好適に形成することができる。しかしながら、本実施形態において形成されるプラスチックボトルは角ボトルには限定されず、丸ボトルであっても良い。更に、胴部130の幅が下方に向けて拡開する形状であっても良い。そして、胴部130に形成される圧力吸収パネル132や、横溝133、縦溝134の形状についても自由に設計することができる。
図30は、本実施形態に係るプリフォーム100から形成された別のPETボトル100Aが示された正面図である。上述された角ボトルのPETボトル100Aと同様に、PETボトル100Aは、口栓部111と、首部110A、肩部120Aと、胴部130と、底部140Aとを有する。本実施形態においては、図30に示された丸ボトルも好適に形成することができる。
なお、このようにして成形されたPETボトル100Aと、このPETボトル100Aに充填される内容物と、内容物の充填されたPETボトル100Aを密閉するキャップとによって充填体が構成される。
本実施形態に係るPETボトル100Aにはサイズによる限定はなく、種々のサイズに対して適用することができる。例えば、PETボトル100Aの容積が100ml〜2000mlであっても良く、特に、容積が200ml〜600mlであるPETボトル100Aに対して好適である。とりわけ、PETボトル100Aの全高が100mm〜250mmであり、胴部130の外径D5が40mm〜80mmであることが好ましく、本実施形態に係るPETボトル100Aの奏する効果を好適に得ることができる。
上述においては、本実施形態に係るプリフォーム100に特に好適な材料としてPETが用いられた例が示された。しかしながら、本実施形態においては、ブロー成形に対する適性を有する材料であれば良い。したがって、本実施形態に係るPETボトル100Aの材料としては熱可塑性樹脂が用いられることが好ましい。
PETボトル100Aを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタラート以外にも例えば、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、又はこれらの共重合体等の熱可塑性ポリエステル、これらの樹脂、あるいは他の樹脂とのブレンド物が好適であり、特に、ポリエチレンテレフタラート等のエチレンテレフタラート系熱可塑性ポリエステルを好適に使用することができる。更に、アクリロニトリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等も使用することができる。更に、植物由来のバイオマス系プラスチック、例えば、ポリ乳酸(PLA:PolyLactic Acid)を用いることも可能である。
上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で、種々の添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤等を配合することができる。なお、PETボトル100Aは、過酸化水素、過酢酸を添加して無菌化させることが好ましい。
PETボトル100Aを構成するエチレンテレフタラート系熱可塑性樹脂として、エステル反復部分の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタラート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50〜90℃であり、融点(Tm)が200〜275℃の範囲にあるものが好適である。また、エチレンテレフタラート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタラートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタラート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
更に、PETボトル100Aは、二層以上の熱可塑性ポリエステル層により構成することもできる。更に、PETボトル100Aは、二層以上の熱可塑性ポリエステル層により構成する場合には、層間にバリア層や、酸素吸収層等の中間層を備えることができる。酸素吸収層としては、酸化可能有機成分、及び遷移金属触媒の組み合わせ、あるいは実質的に酸化しないガスバリア性樹脂等を含む層を使用することができる。
本実施形態に係るプリフォーム100は、プラスチック、特に、PETである構成によれば、適度な強度と、塑性変形性を併せ持ち、汎用性の高い材料で効果的に成形することができる。そして、プラスチック、特にPETは、PETボトル100Aとしての成形が容易であり、PETボトル100Aは、汎用性の高い装置で製造することができる。
以上に説明がなされたように、本実施形態に係るプリフォーム100は、下端にサポートリング114を有する口栓部111と、サポートリング114の下端に連設されたプリフォーム本体120とを備える有底筒状であり、プリフォーム本体120は、サポートリング114の下端に連設された大径部121と、大径部121の下端に連設され、下方へ向けて縮径するくびれ部122と、くびれ部122の下端に連設された小径部123と、小径部123の下端に連設された底部124とを有し、プリフォーム本体120は、肉厚の異なる部分を有し、サポートリング114の下端から下方に向けて最小の肉厚が均一に形成された最小肉厚部125と、最小肉厚部125の下端から下方に向けて肉厚が徐々に厚くなるよう形成された肉厚増加部126と、肉厚増加部126の下端から下方に向けて肉厚が均一に形成された所定肉厚部127とを有し、プリフォーム本体120の全長L2が42mm以上、65mm以下であり、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下から最小肉厚部125の下端までの距離L4の比L4/L2が0.02以上、0.25以下であり、プリフォーム本体120の全長L2に対するサポートリング114の直下からくびれ部122の上端までの距離L6の比L6/L2が0.02以上、0.20以下であるように構成されている。そして、本実施形態に係る構成によれば、プリフォーム100から二軸延伸ブロー成形装置160で軽量化ボトルが成形される際のブロー成形性を良好にすることができる。
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態について図面を参照して説明する。
<実施の形態1>
この実施の形態では、図31(A)に示すプリフォーム201が殺菌の対象物である凹状体とされる。本発明の殺菌方法及び装置によれば、プリフォーム201に限らず、プリフォーム201をブロー成形して得られる同図(B)に示すボトル202、その他の各種材料で各種の形態に形成された容器を殺菌することができる。
プリフォーム201は、図31(A)に示すように、全体として凹状形であり、雄ネジ203aを有する口栓部203、口栓部203に続く有底筒状の胴部204、口栓部203の下端に形成されたフランジ部205等を備え、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)を射出成形することにより一体で形成される。射出成形されたプリフォーム201は後述するように殺菌液を噴射された後、収納体に入れられて運搬、保管され、有底筒状の胴部204がブロー成形され、図31(B)に示すようなより大きな容積を有するボトル202とされる。そして、ボトル202には内容物が充填され、図示しないキャップ等で打栓される。
プリフォーム201を殺菌する装置は、図32及び図33に示す構成を有しており、殺菌液を計量し、この計量した殺菌液をプリフォーム201の凹部内に噴射し、噴射された殺菌液からその量の多寡を判別し、適量の殺菌液の付着したプリフォーム201のみを収納体であるコンテナ206内に開口部から収納し、その後コンテナ206の開口部を塞いで所定時間保持してプリフォーム収納体を作製するようになっている。
殺菌液は、例えば過酸化水素水溶液を揮発性の溶剤で希釈したものが使用される。殺菌液中の過酸化水素の濃度は例えば0.1〜10重量%とされる。溶剤としては例えばエチルアルコール、メチルアルコール、アセトン、イソプロピルアルコール又は複数種の溶剤を混ぜた混合溶剤が用いられる。殺菌液としては過酸化水素水溶液を単独で用いることもできるが、揮発性の溶剤で希釈することにより、過酸化水素溶液がプリフォーム201の内面に速やかに薄い被膜となって拡がることになる。従って、過酸化水素の蒸発が促進され、凹状体であるプリフォーム201の内面の殺菌時間が短縮される。
殺菌装置は、具体的には、図32及び図33に示すように、凹状体であるプリフォーム201を搬送する手段である搬送装置207と、殺菌液を計量して搬送中のプリフォーム201の凹部内に噴射する手段である噴射装置208と、噴射装置208に殺菌液を供給する手段である殺菌液供給装置212と、噴射装置208から噴射される殺菌液を撮像して液量の適否を判別する手段である液量判別装置209と、殺菌液の付着したプリフォーム201を封入する収納体であるコンテナ206とを具備する。
搬送装置207は、複数個のターンテーブル207a,207bを備える。各ターンテーブル207a,207bはその回りに多数のプリフォーム201を把持するクランプ210を等間隔で有し、ターンテーブル207a,207b同士が隣接して同じ周速度で回転しつつ、クランプ210間でプリフォーム201を授受するようになっている。上流側のターンテーブル207aには例えば射出成形機211が供給コンベア207cを介して接続される。射出成形機211で射出成形されたプリフォーム201が供給コンベア207cによってターンテーブル207aのクランプ210に渡される。射出成形機211が他の場所に置かれている場合は、射出成形された多数のプリフォーム201が供給コンベア207cの入口まで図示しないコンテナ等により運搬され、供給コンベア207cからターンテーブル207aへと供給される。下流側のターンテーブル207bには排出コンベア207dを介して収納体であるコンテナ206が連結される。下流側のターンテーブル207bにより搬送されつつ噴射装置208により殺菌液を噴射されたプリフォーム201は下流側のターンテーブル207bから排出コンベア207d上に放出され、排出コンベア207dはプリフォーム201をコンテナ206内に投入する。ターンテーブル207a,207bはプリフォーム201を正確に授受することができるように一定間隔で間欠送りされるようになっているが、連続的に送るようにすることも可能である。
殺菌液供給装置212は、クッションタンク213を備える。クッションタンク213は垂直方向に長いタンクであり、殺菌液の導入管214、循環管215a,215b、ドレイン管216等が接続される。クッションタンク213内には上レベルセンサ217aと下レベルセンサ217bが取り付けられ、上下のレベルセンサ217a,217b間に殺菌液の液面218が来るように殺菌液の流入量が制御される。
導入管214は、一端が殺菌液貯留タンク219からクッションタンク213へと伸び、他端が循環管215bに接続される。導入管214には、供給ポンプ220、フィルタ221、バルブ222,223が設けられる。循環管215a,215bはクッションタンク213に対し環状に連結される。循環管215a,215bには循環ポンプ224、各種バルブ225,226,227、濃度計228等が設けられ、溶剤貯留タンク229、ドレイン管230等が接続される。
濃度計228は、殺菌液の濃度を管理するための装置であり、例えば殺菌液に吸収される紫外線量を検出することにより殺菌液の濃度を測定するUV濃度計が用いられる。もちろん、UV濃度計に限らず、可視光、赤外光を吸収させる方式の濃度計、光の屈折量を検出して濃度を測定する方式の濃度計等も使用可能である。
この殺菌液供給装置212には、殺菌液の調合装置が付属する。図34に示すように、この調合装置231は、過酸化水素水を貯留した殺菌剤貯留タンク232と、殺菌剤を計量する殺菌剤計量タンク233と、揮発性の溶剤である例えばエチルアルコールを貯留した溶剤貯留タンク234と、溶剤を計量する溶剤計量タンク235と、殺菌剤と溶剤を混合する混合タンク236と、混合された殺菌液を貯留する殺菌液貯留タンク219と、これら各種タンク間を結ぶ管路とを具備する。管路上には各種バルブ、ポンプ等が配置される。各種バルブ、ポンプ等の制御により、過酸化水素水が殺菌剤貯留タンク232から殺菌剤計量タンク233を経て混合タンク236に所定量送られ、溶剤が溶剤貯留タンク234から溶剤計量タンク235を経て混合タンク236に所定量送られ、混合タンク236で過酸化水素水と溶剤とが混合され殺菌液が作られる。この殺菌液は殺菌液貯留タンク219に貯留され、この殺菌液貯留タンク219がクッションタンク213の近傍まで運搬される。もちろん、殺菌液貯留タンク219とクッションタンク213とを配管で直結してもよい。
この殺菌液供給装置による殺菌処理は、以下のように進行する。
まず、殺菌装置の稼動に先立ち、殺菌装置内の殺菌液交換プロセスを次の要領で行う。
クッションタンク213と循環管215a,215bのドレイン管216のバルブを開いて前回の稼動に使用した殺菌液をすべて排除する。
次に、溶剤貯留タンク229からのバルブ226を切り替え、循環ポンプ224を作動させて溶剤をドレイン管230のバルブから排出させつつ、濃度計228のゼロレベルを設定する。
濃度計228のゼロレベルが設定されると、バルブ226を切り換え、殺菌液をドレイン管230のバルブから排出させつつ、殺菌液の濃度を計測する。濃度が設定範囲外であれば濃度計228からの信号で警報が発せられる。これにより、殺菌液の交換プロセスが停止され、再度殺菌液が調合され、濃度計228のゼロレベル設定からやり直される。
調合した殺菌液の濃度が正常であることが確認されると、バルブ226を閉じ、供給ポンプ220を作動させて全配管内を殺菌液で満たし、クッションタンク213内の液面218が上レベルセンサ217aに達したところで供給ポンプ220を停止させる。
これにより、殺菌液交換プロセスが終了し、殺菌工程が可能な状態になる。
殺菌工程の開始にあたって、バルブ223を閉じ、循環ポンプ224によりクッションタンク213内の殺菌液を循環管215a、濃度計228、循環管215bを通って循環させる。濃度計228による殺菌液の濃度の監視は殺菌工程中常時行う。殺菌液の濃度が設定範囲外になると、濃度計228からの信号で警報が発せられる。濃度の異常が検出されると、殺菌装置が停止し、再度殺菌液が調合され、濃度計228のゼロレベル設定からやり直される。
殺菌工程中、殺菌液が消費されクッションタンク213内の液面218が下レベルセンサ217bに達すると、供給ポンプ220が作動し、液面218が上レベルセンサ217aに達するまでクッションタンク213内に殺菌液を供給する。
噴射装置208は、クッションタンク213と協働して殺菌液を計量するようになっている。すなわち、図32及び図33に示すように、噴射装置208はクッションタンク213と殺菌液の導管237により連結され、噴射装置208内にはクッションタンク213内の殺菌液の液面218と同じ高さの液面218で殺菌液が溜まるようになっている。殺菌液の液高を噴射装置208の外から監視することができるように、噴射装置208には液面計238が取り付けられている。図示例では噴射装置208がターンテーブル207a上の前後二つのプリフォーム201に対向するように配置される。もちろん、噴射装置208はひとつのプリフォーム201に対向するように一基のみ配置してもよいし、三つ以上のプリフォーム201に対向するように三基以上配置してもよい。
この噴射装置208は、噴射装置208内にクッションタンク213の液高と同じ液高で一定量溜まった殺菌液を計量し一定方向に噴出させる装置であり、図35に示すように、先端にノズル239aを有するシリンダ239を備える。シリンダ239にはクッションタンク213からの導管237が連結され、導管237の連結箇所よりも上方にオーバーフロー用の開口239bが形成される。
オーバーフロー用の開口239bにはパイプ239cが取り付けられ、オーバーフローする殺菌液がシリンダ239の外壁面をプリフォーム201の方に伝い落ちることがないよう措置される。
シリンダ239内には、シリンダ239内の殺菌液を定量取り込む筒状の枡弁240と、枡弁240内をスライド可能なプランジャ241と、プランジャ241の中心をスライド可能なノズル239aに対向するニードル弁242とが設けられる。枡弁240、プランジャ241及びニードル弁242はエア等の作動流体を利用した図示しないエアシリンダ装置によりそれぞれ駆動されるようになっている。作動流体による駆動に限らず、サーボモータ等による駆動方式を採用することも可能である。
噴射装置208は、図36に示すように動作し、ノズル239a下にプリフォーム201が到達すると、プリフォーム201の凹部の開口に向かって殺菌液を一定量ずつ噴射する。まず、図35に示すように、枡弁240がノズル239a側に降下して一定量の殺菌液を計量して捕捉し(図36A)、ニードル弁242が上昇してノズル239aを開け(図36B)、プランジャ241が降下して枡弁240内の殺菌液をノズル239aから矢印方向に噴射させる(図36C)。この殺菌液の噴射量はプリフォーム201の容積、内表面積等によって相違するが、大体0.05〜100μリットルの範囲内における所定の容量である。殺菌液をプリフォーム201に対して噴射すると、ニードル弁242が降下してノズル239aを閉じ(図36D)、続いて枡弁240が上昇する(図36E)。最後にプランジャ241が上昇し(図36F)、殺菌液がクッションタンク213からシリンダ239内に流入する。以上の動作がプリフォーム201ごとに繰り返され、各プリフォーム201内に殺菌液が計量された量だけ噴射される。
なお、殺菌液の噴射手段としては、ここに示した噴射手段に限るものではなく、ラインの生産能力に追従する噴射速度を有し、噴射量が安定していれば、他の噴射方式を採用することも可能である。
噴射装置208はその軸心がプリフォーム201の軸心の延長線上に来るように配置してもよいが、望ましくは図37(A)に示すように、搬送装置207上のプリフォーム201に対して軸心が傾斜し軸心同士が交差するように設置される。これにより、噴射された殺菌液はプリフォーム201の側壁である胴部204又は口栓部203の内面に付着し側壁の内面上を伝い落ちるので、それだけ殺菌液が凹状体であるプリフォーム201の凹部内に広い範囲で付着し、殺菌効果が高まる。
液量判別装置209は、噴射装置208から噴射される殺菌液を撮像して噴射量の適否を判別するためのもので、図32及び図33に示すように、噴射装置208のノズル239aから吐出される殺菌液を照明するランプ243と、吐出される殺菌液を撮像するカメラ244とを備える。
カメラ244は例えばCCDカメラであり、ランプ243により照明された殺菌液を撮像するようになっている。カメラ244によって撮られた画像は画像コントローラ245を介してモニタ246に映し出される。図38(A)に示すように、モニタ246の画面246aには噴射装置208のノズル239aの画像239dと、ノズル239aから直線状に噴射される殺菌液の画像247と、プリフォーム201の口栓部203の画像203bとが映し出される。
液量判別装置209は、殺菌液の画像247の部分をウインドウ248により切り取り、プリフォーム201が噴射装置208の下に来るタイミングにおいて殺菌液の存否を判別し殺菌液が存在しないことを検知すると殺菌不良の旨の信号を発する。また、液量判別装置209は、ウインドウ248内の殺菌液の画像247における画素数をカウントし、カウント値が予め設定した所定の画素数よりも多すぎる場合と少なすぎる場合に殺菌不良の信号を発する。
図33に示すように、ターンテーブル207bには殺菌不良のプリフォーム201を除去するための除去装置249が設置され、除去装置249は殺菌不良信号を受けると、該当するプリフォーム201をターンテーブル207bから除去する。除去装置249はターンテーブル207b上のクランプ210を開いてプリフォーム201をターンテーブル207b下に落下させる装置であるが、その他エアを噴射してプリフォーム201を吹き飛ばすようにしたり、プリフォーム201を下から受け止めるトラップ板を外したりするようなものであってもよい。
また、液量判別装置209は、搬送装置207であるターンテーブル207a,207bが凹状体であるプリフォーム201を搬送するタイミングでないときに液量判別装置209が殺菌液の画像247の存在を検出する場合は、殺菌液が垂れ流し状態になったものとしてターンテーブル207a,207bを停止させるための信号を出力するようになっている。すなわち、図38(B)に示すように、搬送されるプリフォーム201とプリフォーム201の間で殺菌液の画像247が検出されると、液量判別装置209は噴射装置208から殺菌液の垂れ流しが発生したものと判断して搬送停止信号を出力する。これにより、殺菌液の供給状態が修復され、プリフォーム201への殺菌液の過度の付着、搬送ラインの殺菌液による汚れ等の発生が防止される。
また、液量判別装置209は、搬送装置207であるターンテーブル207a,207bが凹状体であるプリフォーム201を搬送するタイミングにおいて殺菌液の画像247の画素数が予め設定した範囲外の場合は、殺菌液が噴射されなかったものとして殺菌不良の信号を発する。ターンテーブル207a,207bは引き続き駆動し、除去装置249が該当するプリフォーム201をターンテーブル207bから排除する。これにより、殺菌不良のプリフォーム201が良品のプリフォーム201と共に収納体に収納されないようにすることができる。
収納体は例えば蓋付きのコンテナ206として構成され、このコンテナ206内に排出コンベア207dから排出される適正な量及び濃度の殺菌液が付着したプリフォーム201が投入される。コンテナ206内には合成樹脂製の袋が膨らんだ状態で入れられ、この袋内にプリフォーム201が投入される。プリフォーム201が所定量蓄積すると、袋が塞がれ、殺菌装置からコンテナ206ごと搬出される。塞がれたコンテナ206はその後運搬され、保管され、その間コンテナ206の袋内では各プリフォーム201内で殺菌液が蒸発し、プリフォーム201内を殺菌する。このようなエイジングが行われた後、コンテナ206が開封され、殺菌済のプリフォーム201がコンテナ206内の袋から取り出されてブロー成形機(図示せず)に送られ、ボトル202として成形される。収納体としては、封入可能であればコンテナ206その他の箱単体としてもよいし、或いは袋単体としてもよい。封入の方法としては、袋の口を折り畳んだり、ヒートシールしたり、クリップで挟んだりする等種々の方法を採用することができる。
次に、上記構成の殺菌装置の作用について説明する。
射出成形機211で射出成形されたプリフォーム201が供給コンベア207cから上流側のターンテーブル207aを経て下流側のターンテーブル207bに供給され、ターンテーブル207bは回転しつつプリフォーム201を順次受け取って噴射装置208の直下へと搬送する。
噴射装置208のシリンダ239内にはクッションタンク213を介して殺菌液供給装置212から一定濃度の殺菌液が供給される。殺菌液は、調合装置231により過酸化水素水と揮発性の溶剤とが一定の割合で調合されることにより得られる。殺菌液は殺菌液供給装置212内において濃度計228によりその濃度を常時監視され、そのため常時一定濃度の殺菌液が噴射装置208へと供給される。
クッションタンク213内には液面218が常に所定の液高となるように殺菌液が貯留され、噴射装置208のシリンダ239内にもクッションタンク213内と同じ液高で殺菌液が貯留される。噴射装置208は、シリンダ239内において枡弁240で一定容積の殺菌液を取り込み、ノズル239a下にプリフォーム201が到来すると、ニードル弁242でノズル239aを開け、プランジャ241で殺菌液をノズル239aから噴射させる。
噴射装置208のノズル239aから発射された殺菌液は直線状になってプリフォーム201の凹部内に速やかに入る。殺菌液はプリフォーム201の側壁の内面に付着し、側壁上を伝い落ち、プリフォーム201の凹部内に広い範囲で付着する。
液量判別装置209は、噴射装置208から噴射される殺菌液をカメラ244で撮像して噴射量の適否を判別する。カメラ244によって撮られた画像は画像コントローラ245を介してモニタ246に映し出される。
液量判別装置209は、モニタ246の画面における殺菌液の画像247をウインドウ248により切り取り、プリフォーム201が噴射装置208の下に来るタイミングにおいて殺菌液の存否を判別し、殺菌液が噴射されないことを検知すると殺菌不良の旨の信号を発する。
また、液量判別装置209は、ウインドウ248内の殺菌液の画像における画素数をカウントし、カウント値が予め設定した所定の画素数の数値よりも多すぎる場合と少なすぎる場合に殺菌不良の信号を発する。
液量判別装置209が殺菌不良と判別したプリフォーム201はターンテーブル207bにより除去装置249のところへと搬送されたときにターンテーブル207bから除去される。
また、液量判別装置209は、ターンテーブル207bがプリフォーム201を搬送するタイミングでないときに殺菌液の画像247の存在を検出すると、殺菌液の垂れ流しが発生したものとしてターンテーブル207a,207bを停止させる信号を出力する。これにより、プリフォーム201や搬送ラインの殺菌液による汚れが防止される。
一方、殺菌装置の稼動中、濃度計228による殺菌液の濃度の監視が常時行われる。殺菌液の濃度が設定範囲外になると、濃度計228からの信号で警報が発せられる。濃度の異常が検出されると、ターンテーブル207a,207bが停止し、再度殺菌液が調合された後、殺菌処理が再開される。
適正な濃度と量の殺菌液が噴射されたプリフォーム201はターンテーブル207b、排出コンベア207dを経てコンテナ206内の袋内に投入される。
コンテナ206内にプリフォーム201が所定量蓄積されると、コンテナ206内の袋が塞がれ、コンテナ206が殺菌装置から搬出される。
このコンテナ206はその後プリフォーム201のユーザー等へと運搬され、保管される。その運搬、保管等の間にコンテナ206の袋内では各プリフォーム201内で殺菌液が蒸発し、過酸化水素の蒸気がプリフォーム201内を殺菌する。このような殺菌のエイジングが行われた後、コンテナ206内の袋が開封され、殺菌済のプリフォーム201がコンテナ206から取り出される。
殺菌済のプリフォーム201はブロー成形機によりボトル202として成形され、無菌化された雰囲気内において内容物を充填され、打栓され、製品として搬出される。
<実施の形態2>
図39に示すように、この実施の形態2では、実施の形態1が搬送手段としてターンテーブル207a,207bを使用しているのに対し、スクリューコンベア250が使用される。スクリューコンベア250は一対のスクリューを平行に配置し、スクリュー間にプリフォーム201の胴部204を挟みながらプリフォーム201を搬送するようになっている。また、スクリューの上方にはプリフォーム201のフランジ部205に当接する一対のガイドレール251が平行に設置される。
スクリューコンベア250の上方には、図37(A)に示すような向きで噴射装置208が設置され、噴射装置208からプリフォーム201に向けて殺菌液が噴射される。プリフォーム201はスクリューコンベア250上において垂直に配置されているのに対し、噴射装置208は傾斜して設置される。あるいは、殺菌液は垂直に配置された噴射装置208から、図37(B)に示すように傾斜して配置されたプリフォーム201の側壁の内面に対して噴射してもよい。
本発明によれば、殺菌液を計量し、この計量した殺菌液を凹状体の凹部内に噴射し、噴射された殺菌液からその量の多寡を判別し、適量の殺菌液の付着した凹状体のみを収納体内に収納し、その後収納体を塞いで所定時間保持する殺菌方法であるから、殺菌液を計量した上で凹状体の凹部内に噴射すると共に、噴射された殺菌液からその量の多寡をも判別することとなり、適正量の殺菌液を容器、プリフォーム等の凹状体に付着させることができ、従って収納体内で効率的に殺菌することができ、殺菌不良という問題を生じない。
本発明によれば、噴射された殺菌液を撮像することにより殺菌液の噴射量の適否を判別する殺菌方法であるから、噴射された殺菌液を撮像し、その映像から殺菌液の噴射量の適否を判別することになり、殺菌液の噴射を乱すことなく適正に噴射量を検知することができる。
本発明によれば、殺菌液は凹状体の側壁の内面に向かって噴射する殺菌方法であるから、殺菌液が凹状体の側壁の内面に付着して側壁上を伝い落ちることになり、それだけ殺菌液が凹状体の凹部に広い範囲で付着し、殺菌効果が高まる。
本発明によれば、凹状体を搬送する搬送手段と、殺菌液を計量して搬送中の凹状体の凹部内に噴射する噴射手段と、噴射手段に殺菌液を供給する殺菌液供給手段と、噴射手段から噴射される殺菌液を撮像して液量の適否を判別する液量判別手段と、殺菌液の付着した凹状体を封入する収納体とを具備した殺菌装置であるから、殺菌液供給装置から供給される殺菌液を計量した上で噴射手段により凹状体の凹部内に噴射し、搬送手段により搬送する凹状体に連続的に一定量ずつ殺菌液を付着させて、収納体内に投入することができる。また、噴射後の殺菌液を撮像して液量の適否を判別するので、殺菌液の付着量をより厳密に管理し、適正量の殺菌液が付着した凹状体のみを収納体内に投入することができる。従って、大量の凹状体を効率的に殺菌することができ、殺菌不良や殺菌液の残留という問題を生じない。
本発明によれば、液量判別手段により殺菌液の垂れ流しが検知されると、搬送手段による凹状体の搬送を停止させる殺菌装置であるから、凹状体への殺菌液の過度の付着、搬送ラインの殺菌液による汚れ等の発生が防止される。
本発明によれば、液量判別手段により殺菌液が凹状体に噴射されないことが検知されると、当該凹状体を搬送手段から排除する殺菌装置であるから、殺菌液が供給されない殺菌不良の凹状体が搬送手段から除去される。従って、収納体内への殺菌不良の凹状体の混入が防止される。また、搬送手段はそのまま作動するので、殺菌処理を続行することができる。
本発明によれば、殺菌液の濃度の適否を判別する濃度判別手段が設けられた殺菌装置であるから、殺菌に必要な濃度の殺菌液を凹状体に噴射することができ、適正な殺菌を維持することができる。
本発明によれば、濃度判別手段により殺菌液の濃度不良が検知されると、搬送手段による凹状体の搬送を停止させる殺菌装置であるから、殺菌不良の凹状体の大量発生を防止することができる。
<第5の実施の形態>
次に、本発明の容器の殺菌方法をプリフォームに利用し、殺菌したプリフォームをブロー成形機によりボトルに成形し、そのボトルを無菌充填に供する方法について説明する。 先ず、射出成形機を用いて、図40(A)に示すように、プリフォーム301を作製する。
PETボトルの場合、プリフォーム301は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下PET樹脂とする)を用いて成形するが、PET樹脂に限らずナイロンやその他の熱可塑性樹脂を用いて作製することがある。
次いで、プリフォーム301の中に、図40(B)に示すように、35%過酸化水素水溶液を前述のエチルアルコール等の揮発性溶剤を用いて希釈した溶液、即ちH2O2溶液311を滴下し、このH2O2溶液311を滴下したプリフォーム301を、図40(C)に示すように、コンテナ(収納体)303に開口部から入れて、開口部に蓋304をして密閉し、プリフォーム入り収納体を作製する。
プリフォーム301を入れたコンテナ303はユーザ(食品メーカ等)に輸送される。揮発性溶剤で希釈したH2O2溶液は、過酸化水素(H2O2)濃度として、0.1〜10%のものが使用されるが、エチルアルコールで希釈した場合のH2O2濃度は0.5〜5%程度が好ましい。
また、プリフォーム301に滴下するH2O2溶液は、希釈溶剤によって異なり、0.1〜100μlの範囲で滴下されるが、エチルアルコールで希釈した場合は1〜30μlが好ましい。
本発明に用いられる過酸化水素としては、通常、市販の過酸化水素濃度が30〜35重量%の過酸化水素水溶液が用いられる。
また、オキシドールとして市販されている3重量%の過酸化水素水溶液も使用できる。 30〜35%の過酸化水素水溶液(以下過酸化水素濃度の重量%は単に%と記載する)としては、工業用と食品添加物用があり、本発明においてはいずれも使用可能であるが、工業用は過酸化水素の分解を防止するために安定剤等が添加されているので、添加物の少ない食品添加物用の過酸化水素水溶液が好適である。
本発明においては食品添加物用の30〜35%過酸化水素水溶液を用い、下記の揮発性溶剤で希釈して、0.1〜10%溶液として使用する。
H2O2溶液の濃度及び滴下量は、殺菌する容器の大きさによって異なるが、通常は0.5〜5%溶液を使用し、その滴下量は、H2O2溶液として0.05〜100μlの範囲で使用され、好ましくは1〜30μl程度である。
本発明に用いられる揮発性の溶剤としては、過酸化水素又は過酸化水素水溶液が可溶であり、且つ揮発性のある溶剤であれば使用可能であるが、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトンが好適である。
特に、エチルアルコールは過酸化水素水溶液との相溶性、プラスチック材料への濡れ性、浸透性、蒸発速度等取扱上の点で優れており、より好適である。
過酸化水素水溶液の希釈溶剤として揮発性溶剤を用いることにより、容器に滴下した過酸化水素溶液は容器内面に薄い被膜を形成して濡れ広がると共に、蒸発速度が促進されるので、過酸化水素の蒸気圧が高まり、殺菌効率が向上すると共に、容器の殺菌時間を短縮することができる。
即ち、過酸化水素の沸点が151.4℃であるため、過酸化水素水溶液を滴下した容器を15℃以下の室温に保管された場合、過酸化水素水溶液の蒸発速度が遅くなり、殺菌にかなりの時間を要すると共に、殺菌に必要な十分な過酸化水素蒸気圧が得られず、容器内面の殺菌が不十分になることがある。
そのため、本発明においては、35%の過酸化水素水溶液をエチルアルコール等の揮発性溶剤で希釈し、この希釈溶剤を容器の内面に滴下することにより、容器内面に過酸化水素溶液の薄い被膜を形成して濡れ広がると共に、容器内における過酸化水素の蒸発速度が促進されてH2O2蒸気圧を高め、容器の殺菌をより効率よく行うとともに、殺菌時間の短縮を図ったものである。
H2O2溶液を滴下したプリフォーム301は、図40(C)に示すように、コンテナ303に入れられて密閉された状態で、一時保管された後ユーザに輸送され、ユーザでまた保管された後にブロー成形機でボトルに成形される。
プリフォーム301に滴下したH2O2溶液は、保管中又は輸送中に、コンテナの中で気化し、気化したH2O2蒸気311aがプリフォーム内面を殺菌する。
即ち、プリフォーム301に滴下したH2O2溶液311は、希釈溶剤が揮発性の溶剤であるため、プリフォーム301に滴下した後速やかに蒸発し、プリフォーム301の内側に充満するようになる。
希釈溶剤と同時にH2O2も蒸発し、H2O2蒸気311aとなってプリフォーム301の内面に接し、プリフォーム301の内面を殺菌する。
H2O2の希釈溶剤が揮発性の溶剤であるため、H2O2の蒸発速度が促進されて、短時間でH2O2蒸気311aとなり、プリフォーム内のH2O2蒸気311aの密度が高まるので、プリフォーム301内面の殺菌効果が高まる。
また、コンテナ303に収納したプリフォーム301の開口栓部は開放状態のままであるので、プリフォーム301内に蒸発したH2O2蒸気311aは、時間の経過に伴ってプリフォーム301の外に出て行くが、コンテナ303は蓋304を被せて密閉状態になっているため、H2O2蒸気311aはコンテナ内にこもり、プリフォームの外側も殺菌することになる。
PET樹脂を用いてプリフォームを射出成形するとき、成形温度は260〜280℃であるので、プリフォームの成形時は完全に無菌状態となっており、その後の操作で微生物汚染されても、プリフォームの外側はかなり清潔で、微生物汚染が少ないので、H2O2蒸気311aにより殺菌されて、殆ど生菌数が残らない状態となる。
しかし、コンテナ303内のH2O2蒸気311aの密度はプリフォーム301の内側に比較してかなり低くなるので、プリフォームの外側の微生物汚染が多い場合は完全殺菌は期待できない。
次に、内面及び外面を殺菌したプリフォーム301はコンテナに入れられてユーザに搬入され、ブロー成形機に供給されてブローボトルに成形される。
即ち、図41(A)に示すように、殺菌されたプリフォーム301はブロー成形機(図示せず)でブロー成形されて、図41(B)に示すようなボトル302となる。
次いで、ボトル302は無菌充填機に供給されて、図41(C)に示すように、無菌チャンバー内で、過酸化水素水溶液の噴霧によりボトルの内面にH2O2ミスト311bを付着させ、これを熱風で乾燥させることによりボトル内面を殺菌し、更に、図41(D)に示すように、内面と同様に、ボトルの外面にもH2O2ミスト311bを付着、乾燥させてボトル外面を殺菌する。
上記工程において、殺菌したプリフォーム301を用いてブロー成形機でボトルを成形した場合、高価な無菌仕様のブロー成形機を使用しなくとも、通常のブロー成形機を用いて清浄な状態で運転すれば、成形されたボトルは微生物汚染が非常に少なくなるので、次の殺菌工程において、殺菌の負荷を少なくすることができ、殺菌効率を向上させることができる。
即ち、ボトルの微生物汚染が非常に少ないので、ボトルの殺菌工程において、ボトルへのH2O2ミストの付着量を少なくすることができる。
そのため、乾燥時間が短縮されると共に、殺菌工程時間も短縮されるので、無菌充填機の殺菌能力が増大し、生産能力が向上する。
また、ボトルの微生物汚染が非常に少なくなると、ボトルの殺菌不良がなくなりボトルの殺菌効果が高まるので、無菌充填製品の不良率が低減され、無菌充填機の生産効率が向上することになる。
殺菌したボトル302は、図41(E)に示すように、無菌チャンバー内で倒立し、ボトルの内部に洗浄用ノズル312から無菌水313を噴射して、ボトル内部を洗浄する。
この洗浄工程によって、ボトル内部に付着していた塵埃や僅かに残留していたH2O2を洗い流し、ボトル内部を清浄にする。
次に、洗浄したボトルを口栓部が上になるようにして充填工程に移動して、図41(F)に示すように充填ノズル314の下にボトルを配置し、滅菌した内容物315を充填し、次いで、キャッピング工程に移動して、図41(G)に示すように、別工程で殺菌したキャップ305をして無菌充填製品306を作製する。
また、本発明の殺菌方法により殺菌したプリフォームを用いて、ボトルの無菌充填を行う場合、内容物によっては、ボトルの内外面の殺菌を省略して無菌充填ができるため、無菌充填機を小型化することができると共に、生産能力を向上させることができるので、製品のコストダウンを図ることができる。
即ち、オレンジジュース等の酸性食品やミネラルウォータの場合は、図42(A)に示すように、プリフォーム301を射出成形した後、前述と同様にして殺菌したプリフォーム301をブロー成形機でボトルに成形して、図42(B)に示すように、ボトル302を作製する。
次に、前記ボトル302を無菌充填機に供給して、無菌チャンバー内で、図42(C)に示すように、ボトルの口栓部に殺菌灯を装備した紫外線照射装置317から紫外線(殺菌線)を照射して、ボトルの口栓部を殺菌する。
殺菌灯としては、一般的には、波長253.7nmの殺菌線を放射する低圧水銀灯が使用されるが、高出力の殺菌灯として高圧水銀灯を使用する場合がある。
殺菌したプリフォーム301をブロー成形機でボトルに成形し、無菌充填機に供給する工程において、ボトルの口栓部は外部からの微生物汚染の可能性が高く、且つ内容物に直接触れるので、ボトルの口栓部を殺菌することにより、無菌充填製品の不良率を低下させることができる。
口栓部を殺菌したボトル302は、前述と同様に、図42(D)に示すように、倒立した状態で無菌水で洗浄した後、図42(E)及び(F)に示すように、充填工程において内容物315が充填され、キャッピング工程においてキャップ305をして無菌充填製品306となる。