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JP2020095261A - フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】青色波長光(ブルーライト)、熱線反射光をカットしつつ、可視光を透過するフィルムを提供する。【解決手段】長400nm〜450nmの平均反射率が18%以上50%以下であり、波長460nm〜780nmの平均反射率が15%以下であり、波長900nm〜1150nmの平均反射率が50%以上であるフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、青色波長光(ブルーライト)、熱線反射光をカットしつつ、可視光を透過するフィルムに関する。
近年、環境保護による二酸化炭素排出規制を受けて、夏場の外部、特に太陽光による熱の流入を抑制できる熱線反射フィルムが電車などの乗り物、建材、屋外での使用を目的とするアミューズメント用として注目されている。また、熱線反射フィルムの組み合わせの一例として、屈折率の異なるポリマーが交互に積層されたポリマー多層積層熱線反射フィルムを挟みこんだ合わせガラスが知られている(たとえば特許文献1)。これらの熱線反射フィルムの普及が進む一方で、近年ではより多くの機能を有するフィルムが求められるようになってきている。その機能の1つとして、青色波長光(ブルーライト)をカットするフィルムがある。(特許文献2、3参照)大きなエネルギーを有するブルーライトは、人体の特に眼球に有害である可能性が高く、また、屋外での使用を目的とする建材においても構成材料の劣化を促進させる可能性がある。近年の高度化する用途においては、熱線反射及びブルーライトを選択的にカットし、可視光を透過させるフィルムが、求められている。
特許第4310312号公報 国際公開第2017/099016号パンフレット 特開2017−132255号公報
特許文献2記載の技術は近紫外線、ブルーライトの領域の波長の光をカットしつつ、可視光を透過させるフィルムがあるが、近紫外線、ブルーライトのみの特定領域をカットする技術であり、熱線反射及びブルーライトを同時にカットするフィルムではなく、近年の高度化する用途においては要望を満たさない。また、特許文献3記載の技術では多層積層の技術により、ある特定領域の波長の光をカットし、幅および長手方向の選択的波長カット性能の安定性に優れた技術であるが、熱線反射及びブルーライトを同時にカットするフィルムではなく、高度化する用途においては要望を満たさない。
本発明はかかる従来技術の欠点を改良し、青色波長光(ブルーライト)、熱線反射光をカットしつつ、可視光を透過するフィルムを提供することを、その課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、下記の構成からなる。
(1) 波長400nm〜450nmの平均反射率が18%以上50%以下であり、波長460nm〜780nmの平均反射率が15%以下であり、波長900nm〜1150nmの平均反射率が50%以上であるフィルム。
(2) 示差走査熱量測定(DSC)において観測される微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が160℃以上220℃以下である、(1)に記載のフィルム。
(3) 150℃30分の熱収縮率が1.0%以下である、(1)〜(2)のいずれかに記載のフィルム。
(4) A層とB層を交互に積層してなる積層フィルムであって、A層およびB層は、紫外線吸収剤を実質的に含有しない層である、(1)〜(3)のいずれかに記載のフィルム。
(5) フィルムの厚みが50μmを超え150μm以下である(1)〜(4)のいずれかに記載のフィルム。
(6) フィルムを構成する樹脂をフィードブロックより押出し、少なくともフィルムの走行方向に対して垂直な方向にフィルムを延伸した後に、第1熱処理として、165℃以上225℃以下のテンターに導き熱処理を施す工程を有して得られたフィルムを、無張力の状態で120℃以上160℃以下の温度で第2熱処理を施してなる(1)〜(5)のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
(7) 第1熱処理後のフィルムが以下の特徴を有する(6)に記載のフィルムの製造方法。
波長400nm〜450nmの平均反射率が3%以上18%未満であり、波長460nm〜780nmの平均反射率が15%以下であり、波長900nm〜1150nmの平均反射率が50%以上であること。
(8) 第1熱処理後のフィルムの厚みに対して第2熱処理後のフィルムの厚みを1.02以上1.15倍厚くすることを特徴とする(6)に記載のフィルムの製造方法。
本発明により、波長400nm〜450nmの平均反射率が18%以上50%以下であり、波長460nm〜780nmの平均反射率が15%以下であり、波長900nm〜1150nmの平均反射率が50%以上であるフィルムとすることで、青色波長光(ブルーライト)、熱線反射光をカットしつつ、可視光を透過するフィルムを得ることができる。
本発明のフィルムは、波長400nm〜450nmの平均反射率が18%以上50%以下であることが重要である。波長400nm〜450nmの領域は、大きなエネルギーを有するブルーライトの領域であり、人体の特に眼球に有害である可能性が高い。また、屋外での使用を目的とする建材においても、波長400nm〜450nmの領域は、近紫外線近傍の領域の波長であり大きなエネルギーを有するため構成材料の劣化を促進させる可能性が高い。そのため、波長400nm〜450nmの平均反射率が18%以上とすることで、例えば建材やアミューズメント用など、主に屋外での使用を目的とする用途に好適なフィルムとすることができる。好ましくは波長400nm〜450nmの平均反射率の平均反射率が20%以上で、より好ましくは25%以上であり、さらに好ましくは35%以上である。波長400nm〜450nmの平均反射率が高くなるほど、ブルーライトカット性能が高いフィルムが得られるようになる。一方、波長400nm〜450nmの平均反射率の上限は、18%以上であれば、設ける必要はないが、50%を超えるとフィルム自体が強く黄色を呈し、優れた色調のフィルムが得られないことから波長400nm〜450nmの平均反射率は50%以下であり、より好ましくは45%以下である。
本発明のフィルムは、波長460nm〜780nmの平均反射率が15%以下であることが重要である。波長460nm〜780nmの領域は、人間が光を感知できる可視光線領域であるので、波長460nm〜780nmの平均反射率が15%以下であることにより、例えば建材やアミューズメント用など、高い透明性が求められる用途に好適なフィルムとすることができる。好ましくは波長460nm〜780nmの平均反射率が12%以下で、より好ましくは10%以下である。波長460nm〜780nmの平均反射率が低くなるほど、透明性の高いフィルムが得られるようになる。本発明では可視光領域における透明性を有することを前提としている。
本発明のフィルムは、波長900nm〜1150nmの平均反射率が50%以上であることが重要である。太陽光は可視光領域に主に強度分布を備えており、波長が大きくなるにつれてその強度分布は小さくなる傾向にある。しかし、例えば建材やアミューズメント用など、高い透明性が求められる用途で使用するためには、可視光領域の透過率は高くする必要があるため、太陽光の主たる強度分布を有する可視光領域を遮蔽することがほとんどできない。そこで、可視光領域よりもやや大きな波長900nm〜1150nm(全太陽光の強度の約18%)の光を効率的に反射することにより、高い熱線反射性能を付与することができるようにする必要がある。一方、波長900nm〜1150nmでの平均反射率が50%未満の場合、その熱線反射性能が十分でなくなるため好ましくない。好ましくは、波長900nm〜1150nmでの平均反射率が65%以上であり、より好ましくは波長900nm〜1150nmでの平均反射率が70%以上であり、さらに好ましくは波長900nm〜1150nmでの平均反射率が75%以上であり、特に好ましいのは波長900nm〜1150nmでの平均反射率が80%以上である。波長900nm〜1150nmでの平均反射率が大きくなるに従い、高い熱線反射性能を付与することが可能となる。本発明の構成とすることで、可視光領域における透明性を有しながらもブルーライトカット性能、熱線反射性能を両立させることができる。
フィルムの平均反射率を上記の範囲とする方法は、特に限定されるものではないが、後述のフィルムの構成、及び、製造方法で得られる。詳しくは後述する。
本発明のフィルムは、150℃30分の熱収縮率は寸法安定性の観点から1.0%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましく、0.3%以下がとくに好ましい。より好ましい150℃30分の熱収縮率を達成する方法としては、特に限定されるものではないが、後述する第2熱処理において後述する好ましい温度、条件にて熱処理を施すことが好ましい。
本発明のフィルムの厚みは本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、50μmを超え150μm以下であることが好ましい。寸法安定性に優れ、かつキズの少ないフィルムとするために、125μm未満であることがより好ましく、120μm以下であることがさらに好ましく、110μm以下が特に好ましい。厚みが150μmを超えると製膜工程でキズが発生しやすく、50μm未満になると可視光領域における透明性を維持しつつ、全体の厚みとしての積層の各層厚みが薄く、積層数が少なくなる場合があり、ブルーライトカット性能、熱線反射性能を本発明の範囲にしにくくなる場合がある。
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂からなることが好ましい。熱可塑性樹脂は一般的に熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂と比べて安価であり、かつ公知の溶融押出により簡便かつ連続的にフィルム化することができることから、低コストでフィルムを得ることが可能となるからである。
また、本発明のフィルムは、本発明の効果を損なわない限り、単層フィルムでも積層フィルムでも構わないが、高い透明性を維持しつつ、ブルーライトカット性能、熱線反射性能を付与するという観点から、少なくとも2つ以上の異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂が交互にそれぞれ50層以上積層されてなる積層フィルムであることが好ましい。ここでいう異なる光学的性質とは、積層フィルムの面内で任意に選択される直交する2方向および該面に垂直な方向のいずれかにおいて、屈折率が0.01以上異なることをいう。また、ここでいう交互に積層されてなるとは、異なる樹脂からなる層が厚み方向に規則的な配列で積層されていることをいい、たとえば異なる光学的性質を有する2つの熱可塑性樹脂A、Bからなる場合、各々の層をA層,B層と表現すれば、A(BA)n(nは自然数)の規則的な配列で積層されたものである。このように光学的性質の異なる樹脂が交互に積層されることにより、各層の屈折率の差と層厚みとの関係より設計した波長の光を反射させることができる干渉反射を発現させることが可能となる。また、積層する層数が50層未満の場合には、ブルーライトカット領域、及び赤外領域において十分な帯域に渡り高い反射率を得られず充分なブルーライトカット性能、熱線反射性能が得ることができないことがあるため好ましくない。好ましくは、400層以上であり、より好ましくは、800層以上である。前述の干渉反射は、層数が増えるほどより広い波長帯域の光に対して高い反射率を達成できるようになり、高いブルーライトカット性能、熱線反射性能を備えたフィルムが得られるようになる。また、層数に上限はないものの、層数が増えるに従い製造装置の大型化に伴う製造コストの増加や、フィルム厚みが厚くなることでのハンドリング性の悪化が生じ、特にフィルム厚みが厚くなることでは後加工工程での工程不良の原因ともなりうるために、現実的には10000層程度が実用範囲となる。
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリアセタールなどの鎖状ポリオレフィン、ノルボルネン類の開環メタセシス重合,付加重合,他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボーネート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。この中で、強度・耐熱性・透明性および汎用性の観点から、特にポリエステルを用いることがより好ましい。これらは、共重合体であっても、混合物であってもよい。
このポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも高い屈折率を発現するテレフタル酸と2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂が、例えば、上記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などを用いることが好ましい。
本発明のフィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルムに用いる異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂のうち、少なくとも2つの熱可塑性樹脂からなる各層の面内平均屈折率の差が0.03以上であることが好ましい。より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上0.15以下である。面内平均屈折率の差が0.03より小さい場合には、十分な反射率が得られないために、ブルーライトカット性能、熱線反射性能が不足する場合がある。この達成方法としては、少なくとも一つの熱可塑性樹脂が結晶性であり、かつ少なくとも一つの熱可塑性樹脂が非晶性もしくは非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂の混合物であることが挙げられる。この場合、フィルムの製造における延伸、熱処理工程において容易に屈折率差を設けることが可能となる。
本発明のフィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルムに用いる異なる光学的性質を有する各熱可塑性樹脂の好ましい組み合わせとしては、各熱可塑性樹脂のSP値(溶解性パラメータともいう)の差の絶対値が、1.0以下であることが好ましい。SP値の差の絶対値が1.0以下であると層間剥離が生じにくくなる。より好ましくは、異なる光学的性質を有するポリマーは同一の基本骨格を供えた組み合わせからなることが好ましい。ここでいう基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことであり、たとえば、一方の熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、高精度な積層構造が実現しやすい観点から、ポリエチレンテレフタレートと同一の基本骨格であるエチレンテレフタレートを含むことが好ましい。異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂が同一の基本骨格を含む樹脂であると、積層精度が高く、さらに積層界面での層間剥離が生じにくくなるものである。
また、本発明のフィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルムに用いる異なる光学的性質を有する各熱可塑性樹脂の好ましい組み合わせとしては、各熱可塑性樹脂のガラス転移温度差が20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度の差が20℃より大きい場合には積層フィルムを製膜する際の厚み均一性が不良となり、ブルーライトカット性能、熱線反射性能にバラツキが生じる原因となる。また、積層フィルムを成形する際にも、過延伸が発生するなどの問題が生じやすいためである。
上記の条件を満たすための樹脂の組合せの一例として、本発明のフィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルムに用いる少なくとも一つの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がスピログリコールを含んでなるポリエステルであることが好ましい。スピログリコールを含んでなるポリエステルとは、スピログリコールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。スピログリコールを含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。より好ましくは、少なくともひとつの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、少なくともひとつの熱可塑性樹脂がスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含んでなるポリエステルであることが好ましい。スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含んでなるポリエステルであると、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとの面内屈折率差が大きくなるため、高い反射率が得られやすくなる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さく、接着性にも優れるため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくい。
また、本発明のフィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルムに用いる少なくとも一つの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり単一の組成であっても少量の他の繰り返し単位が共重合され、あるいは、少量の他のポリエステル樹脂がブレンドされたものであって良く、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がシクロヘキサンジメタノールを含んでなるポリエステルであることが好ましい。シクロヘキサンジメタノールを含んでなるポリエステルとは、シクロヘキサンジメタノールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。シクロヘキサンジメタノールを含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になることがなりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。より好ましくは、少なくともひとつの熱可塑性樹脂がシクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体である。このようにすることにより、高いブルーライトカット性能、熱線反射性能を有しながら、層間での剥離も生じにくくなる。シクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体は、ポリエチレンテレフタレートと非常に強く接着する。また、そのシクロヘキサンジメタノール基は幾何異性体としてシス体あるいはトランス体があり、また配座異性体としてイス型あるいはボート型もあるので、ポリエチレンテレフタレートと共延伸しても配向結晶化しにくく、高いブルーライトカット率、熱線反射率で、製膜時のやぶれも生じにくいものである。
また、本発明のフィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルムに用いる異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂の少なくとも1種の熱可塑性樹脂は結晶性ポリエステル(以下結晶性ポリエステルAと記載する)であり、少なくとも1種の熱可塑性樹脂は非晶性ポリエステル(以下非晶性ポリエステルBと記載する)と結晶性ポリエステル(以下結晶性ポリエステルBと記載する)からなるポリエステル樹脂であることも好ましい。ここでいう結晶性とは、示差走査熱量測定(DSC)において、融解熱量が20J/g以上であることをいう。一方、非晶性とは、同様に融解熱量が5J/g以下であることをいう。非晶性ポリエステルBと結晶性ポリエステルBを混合して用いる場合には、非晶性ポリエステルB中に結晶性ポリエステルBが微分散したアロイ状態を形成する。ここでいうアロイ状態とは、混合した非晶性ポリエステルBと結晶性ポリエステルBとが完全に相溶していない状態をさし、例えば、フィルムの断面観察において、10nm以上の非晶性もしくは結晶性ポリエステルのドメインを確認できたり、DSC測定において、非晶性ポリエステルBと結晶性ポリエステルBに由来するガラス転移や結晶化・融解ピークを観測できるような状態を指す。このようにアロイ状態を形成することで、延伸工程で配向が生じにくくガラス転移温度以上で配向が緩和する非晶性ポリエステルBは、熱処理温度によらず非晶性の状態を保持するため結晶性ポリエステルAとの十分な屈折率差を付与できる。また、アロイ状態を形成する結晶性ポリエステルBは延伸工程で設けられた配向が融点近傍まで保持され、この配向状態の制御により熱収縮を大きくすることができるようになる。このように非晶性ポリエステルBと結晶性ポリエステルBがアロイ状態を形成している場合、結晶性ポリエステルBの配向状態を制御するのに適した熱処理温度を選択することで、結晶性ポリエステルAとの十分な屈折率差を維持しつつ、熱収縮の大きさを制御することが可能となる。結晶性ポリエステルAの熱収縮の大きさを制御できることも同様である。好ましくは、非晶性ポリエステルBと結晶性ポリエステルBにおいて、非晶性ポリエステルBの割合が60%以上90%以下であることが好ましい。非晶性ポリエステルBの割合が結晶性ポリエステルBの割合より多くなることで、屈折率差や熱収縮挙動の制御が容易になる一方で、非晶性ポリエステルBの割合が90%以下、すなわち結晶性ポリエステルBの割合が10%以上であることにより、結晶性ポリエステルBによる配向の制御も容易となる。また、非晶性ポリエステルB中の結晶性ポリエステルBのアロイ状態のドメインの大きさは100nm以下であることが好ましい。非晶状態のポリエステルと結晶状態のポリエステルとは屈折率が異なるため、ドメインの大きさが100nmよりも大きくなるにしたがい、ドメイン界面での光の散乱が生じ、ヘイズが上昇する可能性がある。非晶性ポリエステルB中の結晶性ポリエステルBのアロイ状態のドメインの大きさは100nm以下であるには、ヘイズを上昇させることなく、ポリエステルAとの屈折率差や熱収縮の大きさのみを制御できるものである。
本発明のフィルムは本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、フィルム製膜時の熱処理時(第1熱処理時、または第2熱処理時)、または製品の長期信頼性試験時にフィルム表面からブリードアウトするという観点からA層およびB層は、紫外線吸収剤を実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、各層全体に対する含有量が500ppm以下であることをあらわし、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。紫外線吸収剤を実質的に含有しないことにより、高品質の、かつ、透明性、色調の優れたフィルムとすることができる。
本発明の本発明のフィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルムの層厚みは、特に熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)と熱可塑性樹脂Aとは異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)が交互に積層されてなる場合には、干渉反射の原理の下記式1に従い反射率が決定される。通常、本目的で使用される積層フィルムにおいては、下記式2にて規定される光学厚みの比kが1となるように設計することにより、1次反射である波長900nm〜1150nmの光を反射し、2次の反射である波長420nm〜780nmの反射は打ち消しあうため抑制され、3次の反射である波長300nm〜420nmの光を反射している。上述の反射波長は各層の屈折率、各層の厚みで調整することが可能である。
2×(na・da+nb・db)=mλ 式1
|(na・da)/(nb・db)|=k 式2
na:A層の面内平均屈折率
nb:B層の面内平均屈折率
da:A層の層厚み(nm)
db:B層の層厚み(nm)
λ:主反射波長(反射波長)
k:光学厚みの比
m:1、2,3・・・(m:1=1次反射、m:2=2次反射、m:3=3次反射、・・・)
次に、本発明のフィルムの好ましい製造方法を、熱可塑性樹脂A,Bからなる積層フィルムを例にとり以下に説明する。もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるわけではない。また、積層フィルムの積層構造の形成自体は、例えば特開2007−307893号公報の〔0053〕〜〔0063〕段に記載を参考とすれば実現できるものである。
熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ここで、非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルとをアロイ状とするためには、事前に2軸押出機などで混練したペレットを準備することが好ましい。ここで、結晶性ポリエステルBの分散状態を制御は、2軸押出機のスクリューの選択、吐出量とスクリューの回転数、混練温度などを制御することで可能であり、さらには、ポリエステルエラストマーのような相溶化剤などを添加することによっても分散状態を制御できる。このように事前に2軸押出機などで混練したペレットを準備することにより、非晶性ポリエステル中の結晶性ポリエステルBの分散状態やドメインサイズを制御できるようになる。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。これらの樹脂はダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させる方法も好ましい。
また、複数の熱可塑性樹脂からなる多層積層フィルムを作製する場合には、複数の樹脂を2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出し、多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の構成を効率よく得るためには、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、任意の層厚み構成を形成することも可能となる。この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となったものである。
このようにして所望の層構成に形成した溶融多層積層体をダイへと導き、上述と同様にキャスティングフィルムが得られる。
このようにして得られたキャスティングフィルムは、必要に応じて二軸延伸することが好ましい。ここで、二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二方向に延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。
ここでは逐次二軸延伸の場合について説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、多層積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては多層積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
また、幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をフィルムの走行方向に対して垂直な方向にフィルムをクリップなどで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性、後加工時の成型性、好適なフィルムの熱収縮率を付与するために、引き続きテンター内で熱処理を行うのが好ましい。ここでいうテンター内での熱処理を第1熱処理とする。また、この第1熱処理温度は後加工時の成型性、好適なフィルムの熱収縮率を付与させるために、第1熱処理温度は165℃以上225℃以下で行うことが好ましく、170℃以上220℃以下で行うことがより好ましく、175℃以上215℃以下で行うことがさらに好ましく、特には180℃以上210℃以下で行うことが好ましい。第1の熱処理時間は、3秒以上200秒以下であることが好ましく、5秒以上100秒以下であることがより好ましく、10秒以上30秒以下であることがさらに好ましい。また、この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
また、上記の弛緩処理は熱収縮挙動を抑制するために実施されるものであるため、本発明のフィルムは、弛緩処理を施さないこともまた好ましく、好ましい弛緩処理の程度は、弛緩処理前のフィルム幅に対する弛緩処理の割合が0%以上5%以下である。
後加工時の成型性を向上させるためには、第1熱処理後の150℃30分の熱収縮率は2.0%以上5.0%以下であることが好ましい。後加工時の成型性の観点から第1熱処理後の150℃30分の熱収縮率は2.2%以上4.5%以下であることがより好ましく、2.4%以上4.0%以下であることがさらに好ましく、2.6%以上3.5%以下がとくに好ましい。
また、フィルムの最終的な可視光線の透明性、ブルーライトカット性能、熱線反射性能からは、第1熱処理後のフィルムは波長400nm〜450nmの平均反射率が3%以上18%未満であり、波長460nm〜780nmの平均反射率が15%以下であり、波長900nm〜1150nmの平均反射率が50%以上であることが好ましい。第1熱処理後のフィルムをかかる特性とすることで、後述の第2熱処理を施し、熱収縮によりフィルムを膨張させ各層の厚みを厚くすることにより、反射波長帯域をシフトさせ、所望の反射帯域である波長400nm〜450nmの平均反射率が18%以上50%以下であり、波長460nm〜780nmの平均反射率が15%以下であり、波長900nm〜1150nmの平均反射率が50%以上のフィルムを得ることが容易となる。こうして得られたフィルムは、色調、フィルム表面キズの良化につながる。
次に、本発明のフィルムは寸法安定性に優れ、かつキズの少ないフィルムを作製するために、第1熱処理を施した後に第2熱処理を施すことが好ましい。ここでいう、第2熱処理工程はフィルムの製膜工程中で張力が掛かった状態ではなく、無張力の状態で120℃以上160℃以下の温度で行うのが好ましい。第2熱処理の例としては、第1熱処理を終えたロールを巻き上げた状態で、熱の掛かったオーブンにロールの状態で投入し、加熱する方法や、フィルムを所望の大きさにカットした、カットシートの状態で熱の掛かったオーブンに投入し、加熱する方法が挙げられる。また、フィルムにキズを与えずに、より加熱を促進するために加圧した状態で行うことも好適に選択することができる。第2の熱処理時間は、30秒以上1000分以下であることが好ましく、10分以上500分以下であることがより好ましく、30分以上300分以下であることがさらに好ましい。
本発明のフィルムは本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、ブルーライトカット性能、熱線反射性能を本発明の好ましい範囲としつつ、寸法安定性に優れ、かつ表面のキズの少ないフィルムを作製するために、第1熱処理後のフィルムの厚みに対して第2熱処理後のフィルムの厚みを1.02以上1.15倍以下に厚くすることが好ましい。製膜工程における、通常の延伸工程においてはロールの周速差により延伸が施されるが、フィルムの厚みが厚いほど延伸工程において、表面にキズが入りやすい傾向にある。表面のキズを抑制する観点から第1熱処理後のフィルムにおいて、本来所望する厚みより薄いフィルムを作製し、第2熱処理においてフィルムを膨張させることにより、本来所望する厚みのフィルムを作製することが好ましい。
第1熱処理後のフィルムの厚みに対して第2熱処理後のフィルムの厚みが1.02倍未満であると本発明の効果である充分なブルーライトカット性能、熱線反射性能を出しにくくなる場合がある。第1熱処理後のフィルムの厚みに対して第2熱処理後のフィルムの厚みが1.15倍より大きくなると、ブルーライトカット性能、熱線反射性能を本発明の範囲にしにくくなる場合がある、かつ第2熱処理時にフィルムに大きな収縮力が働き、大幅な収縮により表面のキズが発生しやすくなる。ブルーライトカット性能、熱線反射性能を本発明の好ましい範囲としつつ、寸法安定性に優れ、かつ表面のキズの少ないフィルムを作製するという観点から第1熱処理後のフィルムの厚みに対して第2熱処理後のフィルムの厚みを1.02以上1.10倍未満とすることがより好ましい。
表面のキズの少ないフィルムを作製するという観点から、第1熱処理後のフィルムの厚みに対して第2熱処理後のフィルムの厚みを1.03以上1.14倍厚くすることが好ましく、1.04以上1.13倍厚くすることがより好ましく、1.05以上1.12倍厚くすることがさらに好ましく、1.06以上1.10倍厚くすることがとくに好ましい。
このようにして得られたフィルムは示差走査熱量測定(DSC)において観測される微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が160℃以上220℃以下であることが好ましい。本発明においてTmetaは、フィルムが受けた熱履歴を示す指標であり、Tmetaを上記の範囲となるように熱処理を行うことで、本発明の効果を発揮することが容易となる。Tmeta(℃)は165℃以上215℃以下であることがより好ましく、170℃以上210℃以下であることがさらに好ましく、175℃以上205℃以下がとくに好ましい。
このようにして得られたフィルムは、透明度が高く、ブルーライトカット性能、熱線反射性能に優れるため、建材やアミューズメント用などに好適に使用することができる。
以下、本発明のフィルムの実施例を用いて説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)層厚み、積層数、積層構造
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いてフィルム幅方向中央部から断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を10000〜40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuOやOsOなどを使用した染色技術を用いた。
(2)フィルム厚み
フィルム幅方向において、フィルム幅方向中央部と、それからフィルム幅方向の両端部にむけて10cm間隔で幅方向5cm×長手方向5cmのサイズでサンプルを切り出した。そのサンプルの中心部をダイヤルゲージ式厚み計(JIS B7503(1997)、PEACOCK製UPRIGHT DIAL GAUGE(0.001×2mm)、No.25、測定子5mmφ平型)を用いて、フィルム厚みを測定し、その平均値をフィルムの厚みとした。
(3)熱可塑性樹脂A,Bの面内平均屈折率
JIS K7142(2014)A法に従って測定した。
(4)熱可塑性樹脂A,Bの融解熱量
熱可塑性樹脂A、Bからサンプル質量5gを採取し、示差走査熱量分析計(DSC) セイコー電子工業(株)製ロボットDSC−RDC220を用い、JIS−K−7122(1987年)に従って測定、算出した。測定は25℃から290℃まで5℃/minで昇温しこのときの融点±20℃の範囲におけるベースラインからの積分値を融解熱量とした。また、ここでの融点とは、DSCのベースラインからの差異が最大となる点とした。ここで、融解熱量が20J/g以上の樹脂を結晶性樹脂、5J/g以下である樹脂を非晶性樹脂とした。
(5)微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)
本発明のフィルムからサンプル質量5gを採取し、示差走査熱量分析計(DSC) セイコー電子工業(株)製ロボットDSC−RDC220を用い、JIS−K−7122(1987年)に従って測定、算出した。測定は25℃から290℃まで20℃/minで昇温しこのときの融点(Tm)より低温側でTm近傍にある微小吸熱ピークをTmetaとした。Tmetaは第1熱処理の熱固定温度に対応する熱履歴となる。TmetaはDSCのファーストランで観測され一度Tm以上に昇温し熱履歴を消したセカンドランでは観測されないことから確認できる。Tmetaは任意のフィルム位置から10点測定し、その平均値から算出した。
(6)波長400nm〜450nm、波長460nm〜780nm、波長900nm〜1150nmの平均反射率の測定
フィルム幅方向中央部から5cm×5cmのサイズでサンプルを切り出し、サンプルの測定面の裏面に黒テープ(日東電工(株) No.21 トクハバ、黒、厚み0.2mm×幅50mm)をゴムローラーを用いて空気を挟まないように貼り付けた。次いで、分光光度計((株)日立製作所製、U−4100 Spectrophotometer)を用いて、入射角度Φ=10度における反射率を測定した。付属の積分球の内壁は、硫酸バリウムであり、標準板は、酸化アルミニウムである。測定波長は、250〜2600nm、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲイン2と設定し、走査速度600nm/分で測定した。次いで、波長400nm〜450nm、波長460nm〜780nm、波長900nm〜1150nmにおける平均反射率を算出した。平均反射率の算出方法は、前述の測定条件に基づき測定した波長1nm毎の反射率のデータを用いて、該反射帯域内の反射率を平均化して求めた。
(7)熱収縮率測定
フィルム幅方向中央部から幅方向1cm×長手方向20cmのサイズでサンプルを切り出した。サンプルに15cmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊るして150℃に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し、加熱処理を行った。熱処理後に標線間の距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出した。同じ測定を各サンプルについて5回ずつ行い、5回測定した結果の平均値を長手方向の150℃の熱収縮率を算出した。また、フィルム幅方向中央部から長手方向1cm×幅手方向20cmのサイズでサンプルを切り出した。サンプルに15cmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊るして150℃に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し、加熱処理を行った。熱処理後に標線間の距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出した。同じ測定を各サンプルについて5回ずつ行い、5回測定した結果の平均値を幅方向の150℃の熱収縮率を算出した。長手方向と幅方向の平均値を本発明のフィルムの150℃の熱収縮率とした。
(8)キズの評価
フィルム幅方向中央部から幅方向100cm×長手方向100cmのサイズでサンプルを切り出し、暗室で3波長蛍光灯の透過光にて目視でキズの確認を行った。長さが5mm以上のキズの個数をカウントし、キズの評価を行った。キズの発生個数が15個以下のものを◎、15個を超えて30個以下のものを〇、30個を超えるものを×と判定した。
(実施例1)
熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂Bを用いた。熱可塑性樹脂Aは固有粘度0.65、融点255℃のポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも表す、延伸・熱処理後のフィルムでの屈折率(面内平均屈折率)は約1.66)[東レ製F20K]を用い、熱可塑性樹脂Bは固有粘度0.72で非晶性であるポリエチレンテレフタレートの共重合体(ジオール全成分に対して、スピログリコール成分を20mol%、ブチレングリコール成分を5mol%共重合したPETであり、以下SPG共重合PETとも表す(延伸・熱処理後のフィルムでの屈折率(面内平均屈折率)は1.549))である。
このようにして準備した熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bは、それぞれ、ベント付き二軸押出機にて280℃の溶融状態とした後、ギヤポンプおよびフィルターを介して、501層のフィードブロックにて合流させた。なお、両表層部分は熱可塑性樹脂Aとなるようにし、かつ隣接する熱可塑性樹脂Aからなる層Aと熱可塑性樹脂Bからなる層Bの層厚みは、ほぼ同じになるようにした。つづいて501層フィードブロックにて合流させ、口金に導いてシート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。なお、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの重量比が約1になるように吐出量を調整し、隣接する層の厚み比が約1となるにようにした。
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却した。延伸時のフィルム温度は85℃であった。
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、115℃の温度で横方向に3.7倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で190℃の熱風にて12秒間、第1熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に2%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、フィルム幅1500mmとなるようにして巻き取った。得られたフィルムの第1熱処理後の厚みは、100μmであった。得られた第1熱処理を終えた製品ロールをロールの状態で150℃に温度調整した熱風オーブンに投入し、第2熱処理として3時間熱し、本発明のフィルムを得た。得られたフィルムの厚み(第2熱処理後)は、107μmであった。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(実施例2)
第1熱処理温度を、210℃に調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(実施例3)
第1熱処理温度を、223℃に調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(実施例4)
第1熱処理温度を、160℃に調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(実施例5)
第2熱処理温度を、110℃に調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(実施例6)
第2熱処理温度を、170℃に調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(実施例7)
第1熱処理温度を、175℃に調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(実施例8)
第1熱処理後の厚みを95μmとなるように調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(実施例9)
第1熱処理後の厚みを104μmとなるように調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(比較例1)
第1熱処理温度を、240℃に調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(比較例2)
第1熱処理温度を、150℃に調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(比較例3)
第2熱処理温度を、90℃に調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(比較例4)
第2熱処理温度を185℃に調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(比較例5)
第2熱処理を施さないこと以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。第1熱処理後の得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
(比較例6)
実施例1で使用していた層Bに用いる熱可塑性樹脂Bを熱可塑性樹脂Cに変更し、層Aと層Cの積層とした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。結果は表1、2に示す。
熱可塑性樹脂Cは熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを重量比で60:40の配合比となるように調整し、ベント付き二軸押出機にて280℃の温度にて溶融混練し、均質化した樹脂(延伸・熱処理後のフィルムでの屈折率(面内平均屈折率)は1.616)である。
(比較例7)
第1熱処理後の厚みを130μmとなるように調整し、また厚み倍率(第2熱処理後フィルム厚み/第1熱処理後フィルム厚み)を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムの結果は表1、2に示す。
Figure 2020095261
Figure 2020095261
本発明は、青色波長光(ブルーライト)をカットするフィルムであり、かつ太陽光などからもたらされる熱線をカットできる熱線反射フィルムに関するものである。さらに詳しくは、透過光の透明性を保持しつつ高い効率でブルーライト、及び熱線をカットできるものであり、電建材やアミューズメント用など、主に屋外での使用を目的とする用途に好適なフィルムである。

Claims (8)

  1. 波長400nm〜450nmの平均反射率が18%以上50%以下であり、波長460nm〜780nmの平均反射率が15%以下であり、波長900nm〜1150nmの平均反射率が50%以上であるフィルム。
  2. 示差走査熱量測定(DSC)において観測される微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が160℃以上220℃以下である請求項1に記載のフィルム。
  3. 150℃30分の熱収縮率が1.0%以下である請求項1または2に記載のフィルム。
  4. A層とB層を交互に積層してなる積層フィルムであって、A層およびB層は、紫外線吸収剤を実質的に含有しない層である請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム。
  5. フィルムの厚みが50μmを超え150μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
  6. フィルムを構成する樹脂をフィードブロックより押出し、少なくともフィルムの走行方向に対して垂直な方向にフィルムを延伸した後に、第1熱処理として、165℃以上225℃以下のテンターに導き熱処理を施す工程を有して得られたフィルムを、無張力の状態で120℃以上160℃以下の温度で第2熱処理を施してなる請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
  7. 第1熱処理後のフィルムが以下の特徴を有する請求項6に記載のフィルムの製造方法。
    波長400nm〜450nmの平均反射率が3%以上18%未満であり、波長460nm〜780nmの平均反射率が15%以下であり、波長900nm〜1150nmの平均反射率が50%以上であること。
  8. 第1熱処理後のフィルムの厚みに対して第2熱処理後のフィルムの厚みを1.02以上1.15倍厚くすることを特徴とする請求項6に記載のフィルムの製造方法。
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